(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】内装部材
(51)【国際特許分類】
B60R 7/06 20060101AFI20240709BHJP
B60K 37/20 20240101ALI20240709BHJP
【FI】
B60R7/06 Z
B60K37/20
(21)【出願番号】P 2021090945
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】三村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】田口 清貴
(72)【発明者】
【氏名】上保 康彦
(72)【発明者】
【氏名】神谷 玲朗
(72)【発明者】
【氏名】水野 俊範
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/096688(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0142556(KR,A)
【文献】実開昭56-138740(JP,U)
【文献】特開2009-208575(JP,A)
【文献】実開昭48-111351(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/00 - 7/14
B60R 13/02
B60K 35/00 - 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられる内装部材であって、
物体が載置可能な載置部(10,40)と、
前記載置部の少なくとも一部に設けられ、前記載置部上で所定方向においては前記物体が滑ることを抑制するために摩擦係数が設定され、かつ、前記載置部上で他方向においては前記所定方向よりも前記物体が滑りやすくするために摩擦係数が設定された滑止部(20,21)と、を備えて
おり、
前記滑止部は、連続的に形成された凹部(20b,21b)と凸部(20a,21a)によって前記摩擦係数が設定されており、
前記凹部に設けられた前記凸部よりも柔らかい軟質部材(20i,21i)を、さらに備えており、
前記軟質部材は、前記凸部と面一に設けられている内装部材。
【請求項2】
前記滑止部は、前記凹部と前記凸部とによって模様が形成されている請求項1に記載の内装部材。
【請求項3】
前記凸部は、断面形状が三角形状であり、
前記凹部は、複数の前記凸部間に設けられている請求項
1または2に記載の内装部材。
【請求項4】
前記載置部は、計器盤の下端部から座席方向に突出して設けられており、
前記滑止部は、前記載置部の全域に設けられている請求項1~
3のいずれか1項に記載の内装部材。
【請求項5】
前記滑止部は、前記計器盤と対向する面に反射防止部材(20f,21f)を、さらに備えている請求項
4に記載の内装部材。
【請求項6】
前記滑止部は、前記他方向における端部に落下防止部材(20g,21g)を、さらに備えている請求項1~
5のいずれか1項に記載の内装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、滑り止め技術の一例として、特許文献1に開示された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術ではないが、車室内の内装部材は、物体を載置可能な載置部を備えた構成が考えられる。車室内では、内装部材に置かれた物体が滑って移動してほしくない方向もある。
【0005】
開示される一つの目的は、物体が滑る方向を規定できる内装部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された内装部材は、
車室内に設けられる内装部材であって、
物体が載置可能な載置部(10,40)と、
載置部の少なくとも一部に設けられ、載置部上で所定方向においては物体が滑ることを抑制するために摩擦係数が設定され、かつ、載置部上で他方向においては所定方向よりも物体が滑りやすくするために摩擦係数が設定された滑止部(20,21)と、を備えており、
滑止部は、連続的に形成された凹部(20b,21b)と凸部(20a,21a)によって摩擦係数が設定されており、
凹部に設けられた凸部よりも柔らかい軟質部材(20i,21i)を、さらに備えており、
軟質部材は、凸部と面一に設けられている。
【0007】
このように、内装部材は、滑止部を備えている。滑止部は、所定方向においては物体が滑ることを抑制するために摩擦係数が設定されており、かつ、他方向においては所定方向よりも物体が滑りやすくするために摩擦係数が設定されている。このため、載置部に置かれた物体は、所定方向に滑るよりも他方向に滑りやすい。よって、内装部材は、物体が滑る方向を規定できる。
【0008】
この明細書において開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における内装部材の概略構成を示すイメージ図である。
【
図3】変形例1における内装部材の概略構成を示すイメージ図である。
【
図4】変形例2における内装部材の概略構成を示すイメージ図である。
【
図6】第2実施形態における内装部材の概略構成を示すイメージ図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】
図6のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】変形例3における内装部材の概略構成を示すイメージ図である。
【
図12】変形例4の滑止部の概略構成を示す断面図である。
【
図13】変形例5の滑止部の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、図面を参照しながら、本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を参照し適用することができる。
【0011】
(第1実施形態)
図1、
図2を用いて、本実施形態の内装部材に関して説明する。内装部材は、車室内に設けることができる。内装部材は、第1載置部10と滑止部20とを備えている。
【0012】
<車室内構成>
図1は、車室内における前方を図示している。つまり、
図1は、座席(運転席および助手席)とフロントガラス50との間を図示している。車室内には、一例として、第1載置部10、滑止部20、表示部30、第2載置部40、フロントガラス50、ステアリングホイール60が設けられている。本実施形態では、第1載置部10と滑止部20を備えた内装部材を採用している。なお、
図1では、図面が煩雑になることを避けるためにステアリングホイールの輪郭を破線で図示している。
【0013】
第1載置部10は、物体100が載置可能な部位である。物体100は、例えばスマートフォンや財布などである。また、物体100は、これに限定されず、鍵、カバン、荷物などその他の物であっても採用できる。さらに、物体100は、運転者などのユーザが持ち歩き可能な物品ともいえる。なお、第1載置部10は、物体100を置くことができる部位であるため物置台や物置スペースともいえる。第1載置部10は、インパネ(インストルメントパネル)と称されることもある。第1載置部10は、載置部に相当する。
【0014】
第1載置部10は、表示部30の手前に設けられている。詳述すると、第1載置部10は、表示部30の下端部から座席方向に突出した部位である。なお、下端部は、床側の端部を示している。よって、表示部30の下端部は、表示部30の床側の端部といえる。
【0015】
本実施形態では、一例として、座席の前方にわたって設けられた第1載置部10を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されず、運転席の前方のみや、助手席の前方や、運転席と助手席の間の前方のみに設けられた第1載置部10を採用できる。
【0016】
第1載置部10は、表示部30側から座席側にわたって平坦に設けられている。つまり、第1載置部10は、後ほど説明する滑止部20における複数の頂点20cを通る仮想面が平坦といえる。
【0017】
滑止部20は、第1載置部10に設けられている。本実施形態では、一例として、第1載置部10の全域に設けられた滑止部20を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されず、第1載置部10の少なくとも一部に滑止部20が設けられていればよい。滑止部20は、第1載置部10に取り付けられていてもよいし、第1載置部10と一体物として形成されていてもよい。なお、滑止部20は、例えば、エラストマ、ゴム、発泡ウレタンなどによって構成することができる。また、滑止部20は、車載環境において、物体100が載置されていない状態で十分に初期形状を保持できる程度で硬質に設けられていると好ましい。なお、滑止部20に関しては、後ほど詳しく説明する。
【0018】
表示部30は、例えば速度や燃費などを表示可能に構成されている。よって、表示部30は、計器盤とも称される。また、表示部30は、ナビゲーションシステムの地図やテレビなどの映像を表示可能に構成されていてもよい。さらに、表示部30は、ヘッドアップディスプレイなどであっても採用できる。
【0019】
本実施形態では、一例として、一つの表示部30が運転席の前方から助手席の前方にわたって設けられた例を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されない。本開示は、運転席の前方のみに表示部30が設けられていてもよい。また、本開示は、複数の表示部30が運転席の前方から助手席の前方にわたって配列されていてもよい。
【0020】
本実施形態では、一例として、液晶ディスプレイやELディスプレイなどを備えた表示部30を採用している。ELは、electroluminescenceの略称である。しかしながら、本開示は、これに限定されず、アナログメータを備えた表示部30であっても採用できる。
【0021】
第2載置部40は、フロントガラス50の下端部から座席側に突出した部位である。第2載置部40は、第1載置部10と同様に物体100を置くことができる。このため、第2載置部40は、載置部とみなすことができる。第2載置部40は、ダッシュボードと称されることもある。なお、フロントガラス50の下端部は、フロントガラス50の床側の端部といえる。
【0022】
第2載置部40の表面は、座席側からフロントガラス50側に向かって下方に傾斜している曲面である。第2載置部40の表面は、平坦面であってもよい。第2載置部40は、表示部30の上方に設けられている。よって、第2載置部40は、表示部30の上カバーとみなすこともできる。なお、上方は、天井側を示している。よって、表示部30の上方とは、表示部30に対して天井側といえる。
【0023】
なお、載置部は、第1載置部10や第2載置部40に限定されない。載置部は、車室内において物体100が載置可能な部位であれば採用できる。載置部としては、例えば、運転席と助手席の間に設けられたコンソールやひじ掛けなどであっても適用できる。よって、滑止部20は、第1載置部10だけではなく、その他の載置部にも設けることができる。
【0024】
フロントガラス50は、座席の前方に設けられている。また、ステアリングホイール60は、運転者が把持可能な位置に設けられている。つまり、ステアリングホイール60は、運転席の前方に設けられている。なお、前方は、車両が前進する方向といえる。後方は、車両が後進する方向といえる。
【0025】
<滑止部>
ここで、
図1、
図2を用いて、滑止部20に関して詳しく説明する。
図2に示すように、滑止部20は、断面形状がのこぎり波状をなしている。言い換えると、滑止部20は、三角形状が連続して形成された断面形状をなしている。滑止部20は、複数の凸部20aと複数の凹部20bとを備えている。滑止部20は、凸部20aと凹部20bが交互に連続して設けられている。
【0026】
凸部20aは、断面形状が三角形状である。凸部20aは、三角形状の頂点20cと、頂点20cに連なる第1壁面20dおよび第2壁面20eとを備えている。第1壁面20dは、第1載置部10に対して傾斜した面である。一方、第2壁面20eは、第1載置部10に対して垂直な面である。言い換えると、第2壁面20eは、重力方向に沿う垂直面である。一方、第1壁面20dは、第2壁面20eに対して傾斜した面である。
【0027】
なお、第2壁面20eは、垂直面に限定されない。第2壁面20eは、重力方向に対して傾斜した面であってもよい。例えば、凸部20aは、
図2に示す形状よりも、第1壁面20dと第2壁面20eとなす角が鋭角になる形状であってもよい。これによって、滑止部20は、第2壁面20eと表示部30とが対向することを抑制できる。このため、滑止部20は、第2壁面20eが垂直面の場合よりも、表示部30への反射を減らすことができる。つまり、滑止部20は、第2壁面20eで反射した光が表示部30へ照射されることを抑制できる。
【0028】
また、凹部20bは、頂点20cに対して窪んだ部位である。よって、凹部20bは、複数の凸部20a間に設けられている。また、凹部20bは、隣り合う頂点20cどうしをつなぐ仮想平面と第1壁面20dと第2壁面20eとで囲まれた空間ともいえる。滑止部20は、複数の凸部20aと複数の凹部20bが連続的に形成されてのこぎ波状をなしている。
【0029】
滑止部20は、連続的に形成された凹部20bと凸部20aによって摩擦係数(摩擦力)が設定されている。つまり、滑止部20は、第1載置部10上で所定方向においては物体100が滑ることを抑制するために摩擦係数が設定されている。さらに、滑止部20は、第1載置部10上で他方向においては所定方向よりも物体100が滑りやすくするために摩擦係数が設定されている。矢印X2方向は、所定方向に相当する。矢印X1方向は、他方向に相当する。
【0030】
物体100は、X1方向に移動する場合、第1壁面20dに接触しながらX1方向に移動する。一方、物体100は、X2方向に移動する場合、頂点20cに引っ掛かる。このように、滑止部20は、X2方向において、X1方向よりも摩擦係数が高く設定されている。よって、滑止部20は、一方向(X2方向)への摩擦係数が他の方向よりも高く設定されている。
【0031】
図1では、点線矢印方向が滑りやすい方向(X1方向)である。つまり、滑止部20は、表示部30方向、第1載置部10の中央方向、および端部方向に比べて、運転席や助手席方向への物体100の移動を抑制できる。このため、滑止部20は、運転席の足元や助手席の足元に物体100が落下することを抑制できる。また、滑止部20は、助手席前に置かれた物体100が運転席前に移動することも抑制できる。
【0032】
このように、滑止部20は、摩擦係数を設定することで、物体100の滑る方向を規定している。よって、滑止部20は、滑り方向規定部ともいえる。
【0033】
滑止部20は、第2壁面20eが表示部30と対向している。第2壁面20eは、表示部30と対向する面に相当する。第2壁面20eには、反射防止部20fが設けられている。反射防止部20fは、例えば、シボ入れなどの表面処理で形成することができる。これによって、本開示は、第2壁面20eで反射した光が表示部30に照射されることを抑制できる。このため、本開示は、光の照射によって表示部30が見づらくなることを抑制できる。しかしながら、本開示は、これに限定されず、反射防止部20fが設けられていなくてもよい。反射防止部20fは、反射防止部材に相当する。
【0034】
図1に示すように、滑止部20は、凸部20aと凹部20bとによって模様が形成されている。つまり、滑止部20は、複数の凸部20aと複数の凹部20bとの各境界が模様を形成している。また、滑止部20は、表面形状が特有のパターンを形成しているともいえる。なお、凸部20aと凹部20bとの境界は、線状の頂点20cともいえる。
【0035】
本実施形態では、一例として、波紋の一部の模様をなした滑止部20を採用している。滑止部20は、部分的な波紋形状ともいえる。また、滑止部20は、同心円状の一部の模様をなしているともいえる。さらに、滑止部20は、第1載置部10における表示部30側ではなく座席側に中心を有する同心円状の模様をなしているともいえる。
【0036】
本実施形態では、運転席側と助手席側とに滑止部20が設けられた例を採用している。つまり、第1載置部10は、運転席の前方と助手席の前方の二か所に波紋形状の滑止部20が設けられている。このように、内装部材は、第1載置部10の全域に模様をなす滑止部20が設けられている。このため、内装部材は、第1載置部10においてデザインの一体化を演出することができる。
【0037】
<効果>
このように、内装部材は、滑止部20を備えている。滑止部20は、X2方向においては物体100が滑ることを抑制するために摩擦係数が設定されている。さらに、滑止部20は、X1方向においてはX2方向よりも物体100が滑りやすくするために摩擦係数が設定されている。このため、第1載置部10に置かれた物体100は、X2方向に滑るよりもX1方向に滑りやすい。よって、内装部材は、物体100が滑る方向を規定できる。
【0038】
特に、本実施形態の滑止部20は、運転席の足元に物体100が落下することや、助手席前に置かれた物体100が運転席前に移動することを抑制できる。このため、内装部材は、物体100が滑って移動することで、運転者の運転操作に影響をおよぼすことを抑制できる。これによって、内装部材は、運転者が運転操作に集中できる空間を継続的に創出できる。
【0039】
(変形例1)
図3を用いて、変形例1の内装部材に関して説明する。変形例1では、主に、上記実施形態と異なる箇所に関して説明する。変形例1では、滑止部20の模様が上記実施形態と異なる。
【0040】
図3の変形例1の内装部材は、滑止部20の模様が上記実施形態と異なる。滑止部20は、第1載置部10の座席側の中央付近を中心とする波紋形状をなしている。また、滑止部20は、第1載置部10の左右方向の両端部まで形成されている。このため、滑止部20は、第1載置部10の奥行方法への異方性摩擦力を高めることができる。これにより、変形例1の内装部材は、物体100が滑る方向を規定できる。また、内装部材は、表示部30への物体100の接触を避けることができる。
【0041】
なお、奥行方向は、座席側から表示部30側に向かう方向である。左右方向は、奥行方向に直交する方向である。
【0042】
(変形例2)
図4、
図5を用いて、変形例2の内装部材に関して説明する。変形例2では、主に、上記実施形態と異なる箇所に関して説明する。変形例2では、滑止部20の模様と落下防止部20gを備えている点が上記実施形態と異なる。なお、
図4では、落下防止部20gをわかりやすくするためにハッチングを施している。落下防止部20gは、落下防止部材に相当する。
【0043】
図4に示すように、滑止部20は、凸部20aと凹部20bによって並行な模様が形成されている。並行な模様とは、左右方向に延びる線が奥行方向に配列された形状である。滑止部20は、凸部20aと凹部20bの境界が左右方向に延びる線を形成している。そして、滑止部20は、複数の凸部20aと複数の凹部20bが奥行方向に形成されることで、左右方向に延びる線が奥行方向に配列されている。
【0044】
図3に示すように、滑止部20は、第1壁面20dが表示部30側に向いている。滑止部20は、第2壁面20eが座席側に向いている。よって、滑止部20は、第1壁面20dに反射防止部20fが設けられている。
【0045】
滑止部20は、第1載置部10上で座席側から表示部30に向かう方向においては物体100が滑ることを抑制するために摩擦係数が設定されている。さらに、滑止部20は、第1載置部10上で表示部30から座席側に向かう方向においては上記よりも物体100が滑りやすくするために摩擦係数が設定されている。つまり、座席側から表示部30に向かう方向は、所定方向に相当する。表示部30から座席側に向かう方向は、他方向に相当する。これにより、変形例2の内装部材は、物体100が滑る方向を規定できる。
【0046】
図4、
図5に示すように、滑止部20は、座席側の端部に落下防止部20gが設けられている。滑止部20は、表示部30から座席側に向かう方向の端部に落下防止部20gが設けられているといる。
【0047】
滑止部20は、物体100を落下防止部20gに誘導するために、上記のように摩擦係数が設定されている。このため、内装部材は、物体100が滑ったとしても、第1載置部10から落下することを抑制できる。また、滑止部20は、表示部30とは反対側の落下防止部20gに物体100が滑りやすい。よって、内装部材は、物体100が滑って移動したとしても表示部30に接触することを抑制できる。このため、内装部材は、表示部30および表示部30の表示品質を保護することができる。
【0048】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、上記実施形態に何ら制限されることはなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。以下に、本開示のその他の形態として、第2実施形態、変形例3~4に関して説明する。上記実施形態(変形例1、2)、および第2実施形態、変形例3~4は、それぞれ単独で実施することも可能であるが、適宜組み合わせて実施することも可能である。本開示は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【0049】
(第2実施形態)
図6、
図7、
図8を用いて、第2実施形態の内装部材に関して説明する。第2実施形態では、主に、上記実施形態と異なる箇所に関して説明する。第2実施形態では、滑止部21の構成が上記実施形態と異なる。
【0050】
図6に示すように、滑止部21の模様は、変形例2と同様である。
図7に示すように、滑止部21は、断面形状が矩形波状をなしている。言い換えると、滑止部21は、矩形状が連続して形成された断面形状をなしている。滑止部21は、複数の凸部21aと複数の凹部21bとを備えている。滑止部21は、左右方向において、凸部21aと凹部21bとが交互に連続して設けられている。
【0051】
凸部21aは、断面形状が矩形状である。凸部21aは、矩形状の上面21cと、上面21cに連なる二つの壁面21eとを備えている。上面21cは、第1載置部10に対して平行な面である。壁面21eは、第1載置部10に対して垂直な面である。言い換えると、壁面21eは、重力方向に沿う垂直面である。上面21cと壁面21eとのなす角は、直角である。しかしながら、壁面21eは、垂直面に限定されない。壁面21eは、重力方向に対して傾斜した面であってもよい。
【0052】
また、凸部21aは、片方の壁面21eが表示部30と対向する。よって、表示部30と対向する壁面21eには、反射防止部21fが設けられている。反射防止部21fは、反射防止部20fと同様に構成されている。しかしながら、反射防止部21fは、設けられていなくてもよい。反射防止部21fは、反射防止部材に相当する。
【0053】
凹部21bは、上面21cに対して窪んだ部位である。凹部21bは、底面21dを備えている。凹部21bは、複数の凸部21a間に設けられている。また、凹部21bは、隣り合う上面21cどうしをつなぐ仮想平面と底面21dと壁面21eで囲まれた空間ともいえる。滑止部21は、複数の凸部21aと複数の凹部21bが交互に連続的に形成されて矩形波状をなしている。
【0054】
また、各凸部21aおよび各凹部21bは、直線状に形成されている。本実施形態では、左右方向に延設された各凸部21aおよび各凹部21bを採用している。よって、滑止部21は、左右方向に直線的に延びる複数の溝が形成されているともいえる。なお、凸部21aと凹部21bが直線的に延びている方向は、長手方向と称する。一方、凸部21aと凹部21bが連続的に形成されている方向は、短手方向と称する。このため、本実施形態では、長手方向が左右方向に一致し、短手方向が奥行方向に一致する。また、長手方向は、延設方向ともいえる。短手方向は、配列方向ともいえる。
【0055】
滑止部21は、連続的に形成された凸部21aと凹部21bによって摩擦係数(摩擦力)が設定されている。つまり、滑止部21は、第1載置部10上で所定方向においては物体100が滑ることを抑制するために摩擦係数が設定されている。さらに、滑止部21は、第1載置部10上で他方向においては所定方向よりも物体100が滑りやすくするために摩擦係数が設定されている。
【0056】
滑止部21は、物体110の突起111の一部が凹部21bに入り込みやすい。つまり、滑止部21は、物体110が凸部21aに引っ掛かりやすくなっている。よって、物体110は、短手方向に移動する場合、物体110が凸部21aに引っ掛かる。また、物体110は、物体110が凸部21aに引っ掛かった状態で長手方向に移動できる。なお、本実施形態では、短手方向が所定方向に相当し、長手方向が他方向に相当する。
【0057】
このように、滑止部21は、短手方向において、長手方向よりも摩擦係数が高く設定されている。よって、滑止部21は、一方向(短手方向)への摩擦係数が他の方向よりも高く設定されている。
【0058】
滑止部21は、凸部21aに引っ掛かった物体110を左右方向の端部に誘導する構成となっている。そこで、
図8に示すように、滑止部21は、左右方向の端部に移動防止部21hが設けられている。移動防止部21hは、例えば、上面21cに設けられている。
【0059】
移動防止部21hは、移動防止部21hに接した物体110の移動を妨げる部位である。移動防止部21hは、高摩擦係数の部材、または、物体110を吸着可能な部材で構成されている。また、滑止部21は、移動防止部21hのかわりに、物体110を物理的に移動が制止できるような形状で弾性部材が設けられていてもよい。
【0060】
図6では、点線矢印方向が滑りやすい方向である。つまり、滑止部21は、左右方向に比べて、表示部30方向および座席方向への物体100の移動を抑制できる。よって、内装部材は、物体100が滑る方向を規定できる。
【0061】
内装部材は、運転席の足元や助手席の足元に物体100が落下することを抑制できる。また、内装部材は、表示部30への物体100の接触を避けることができる。よって、内装部材は、表示部30および表示部30の表示品質を保護することができる。
【0062】
なお、滑止部21は、複数の凸部21aの高さを異ならせてもよい。言い換えると、滑止部21は、重力方向における各上面21cの位置を異ならせてもよい。ここでの高さは、上面21cと底面21dとの間隔である。これによって、滑止部21は、短手方向においても摩擦係数を異ならせることができる。
【0063】
また、本開示は、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせて実施することもできる。つまり、内装部材は、一部に滑止部20を有し、滑止部20とは異なる部分に滑止部21を有していてもよい。
【0064】
(変形例3)
図9、
図10、
図11を用いて、変形例3の内装部材に関して説明する。変形例3では、主に、第2実施形態と異なる箇所に関して説明する。変形例3では、滑止部21の模様が第2実施形態と異なる。
【0065】
図9に示すように、滑止部21は、凸部20aと凹部20bによって垂直な模様が形成されている。垂直な模様とは、奥行方向に延びる線が左右方向に配列された形状である。滑止部21は、凸部21aと凹部21bの境界が奥行方向に延びる線を形成している。そして、滑止部21は、複数の凸部21aと複数の凹部21bが左右方向に形成されることで、奥行方向に延びる線が左右方向に配列されている。
【0066】
なお、凸部21aと凹部21bが直線的に延びている方向は、延設方向と称する。一方、凸部21aと凹部21bが連続的に形成されている方向は、配列方向と称する。このため、本変形例では、配列方向が左右方向に一致し、延設方向が奥行方向に一致する。
【0067】
図11に示すように、滑止部21は、第2実施形態と同様、断面形状が矩形波状をなしている。変形例3では、上面21cに反射防止部21fが設けられている。これによって、滑止部21は、上面21cで反射した光が、表示部30の対向領域に照射されることを抑制できる。しかしながら、反射防止部21fは、設けられていなくてもよい。
【0068】
物体110は、配列方向に移動する場合、物体110が凸部21aに引っ掛かる。また、物体110は、物体110が凸部21aに引っ掛かった状態で延設方向に移動できる。なお、本変形例では、配列方向が所定方向に相当し、延設方向が他方向に相当する。
【0069】
このように、滑止部21は、配列方向において、延設方向よりも摩擦係数が高く設定されている。よって、滑止部21は、一方向(配列方向)への摩擦係数が他の方向よりも高く設定されている。これにより、変形例2の内装部材は、物体100が滑る方向を規定できる。
【0070】
図10に示すように、凸部21aは、奥行方向において、表示部30側から座席側に向かって床方向に傾斜している。凸部21aは、座席側よりも表示部30側の方が摩擦係数を低くしてもよい。このように、滑止部21は、凸部21aに引っ掛かった物体110を座席側の端部に誘導する構成となっている。そこで、滑止部21は、変形例2と同様、落下防止部21gが設けられている。落下防止部21gは、奥行方向において、表示部30側ではなく、座席側の端部に設けられている。落下防止部21gは、落下防止部材に相当する。
【0071】
図9では、点線矢印方向が滑りやすい方向である。つまり、滑止部21は、奥行方向に比べて、左右方向への物体100の移動を抑制できる。また、滑止部21は、物体110を座席側の端部に誘導する構成となっており、座席側の端部に落下防止部21gが設けられていてる。このため、内装部材は、運転席の足元や助手席の足元に物体110が落下することを抑制できる。また、内装部材は、表示部30への物体110の接触を避けることができる。よって、内装部材は、表示部30および表示部30の表示品質を保護することができる。
【0072】
(変形例4)
図12を用いて、変形例4の内装部材に関して説明する。変形例4では、主に、第2実施形態と異なる箇所に関して説明する。変形例4では、軟質部材21iを備える点が第2実施形態と異なる。
【0073】
内装部材は、滑止部21の凹部21bに軟質部材21iが設けられている。軟質部材21iは、凹部21bに埋設されている。軟質部材21iは、凸部21a(上面21c)と面一に設けられている。このため、滑止部21は、凸部21aと凹部21bが設けられているものの、軟質部材21iによって表面が平滑化されている。よって、内装部材は、凸部21aと凹部21bが目立ちにくい見た目とすることができる。
【0074】
軟質部材21iは、凸部21aよりも柔らかい部位である。軟質部材21iは、突起111の一部が凹部21bに入り込んで、凸部21aに引っ掛かることができる程度の柔らかさである。変形例4の内装部材は、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0075】
(変形例5)
図13を用いて、変形例5の内装部材に関して説明する。変形例5では、主に、第1実施形態と異なる箇所に関して説明する。変形例5では、軟質部材20iを備える点が第1実施形態と異なる。変形例5では、第1実施形態と変形例4とを組み合わせた例といえる。
【0076】
内装部材は、滑止部20の凹部20bに軟質部材20iが設けられている。軟質部材20iは、軟質部材21iと同様である。軟質部材20iは、凸部20a(頂点20c)と面一に設けられている。このため、滑止部20は、凸部20aと凹部20bが設けられているものの、軟質部材20iによって表面が平滑化されている。よって、内装部材は、凸部20aと凹部20bが目立ちにくい見た目とすることができる。変形例5の内装部材は、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0077】
なお、各実施形態では、連続的に形成された凹部20b,21b凸部20a,21aによって摩擦係数が設定されてた滑止部20,21を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されず、滑止部20,21の材質や摩擦係数を部分的に異ならせることで、上記のように摩擦係数が設定されていてもよい。
【0078】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0079】
10…第1載置部、20,21…滑止部、20a…凸部、20b…凹部、20c…頂点、20d…第1壁面、20e…第2壁面、20f…反射防止部、20g…落下防止部、20i…軟質部、21a…凸部、21b…凹部、21c…上面、21d…底面、21e…壁面、21f…反射防止部、21g…落下防止部、21h…移動防止部、21i…軟質部材、30…表示部、40…第2載置部、50…フロントガラス、60…ステアリングホイール100,110…物体、111…突起