(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】車両用表示装置、車両用表示システム、車両用表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240709BHJP
B60K 35/22 20240101ALI20240709BHJP
【FI】
B60K35/23
B60K35/22
(21)【出願番号】P 2021094283
(22)【出願日】2021-06-04
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】張 玉テイ
(72)【発明者】
【氏名】戸高 純一
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113809(JP,A)
【文献】特開2014-192770(JP,A)
【文献】国際公開第2011/108218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/21-35/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の複数の障害物に関する情報を取得する障害物情報取得部と、
車室内の表示領域に、前記障害物へ個別に注意を促す所定の個別マークを重畳表示させ、かつ、所定の条件を満たした場合に、複数の前記障害物へ注意を促す所定の群マークを重畳表示させるマーク表示部と、
を有
し、
マーク表示部は、複数の前記障害物のうち、最も車両に近い前記障害物を基準として、当該障害物から路面に沿って車両前後方向に延在するように前記群マークを重畳表示させる、車両用表示装置。
【請求項2】
前記マーク表示部は、前記障害物情報取得部によって取得された情報から複数の前記障害物が近接している場合に前記群マークを表示させる請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記マーク表示部は、
前記群マークを表示する条件を満たしている場合において、車両との距離が所定値以下である前記障害物に対して
は、前記個別マークを表示させる請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記マーク表示部は、
前記群マークを表示する条件を満たしている場合において、車両へ向かって歩行又は走行している前記障害物に対して
は、前記個別マークを表示させる請求項1~3の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記マーク表示部は、前記障害物の数が所定値以上である場合に前記群マークを表示させ
、前記障害物の数が所定値より少ない場合であっても、複数の前記障害物が車両に近接している場合には、群マークを表示させる請求項1~4の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の車両用表示装置と、
車室内に設けられ、前記マーク表示部によって前記個別マーク及び前記群マークの少なくとも一方が表示される前記表示領域を備えた表示部と、
を有する車両用表示システム。
【請求項7】
前記表示領域は、ヘッドアップディスプレイ装置によってドライバの視線の先に画像が投影される領域を含んで構成され、
前記マーク表示部は、前記障害物に重畳して前記個別マーク及び前記群マークの少なくとも一方を表示させる請求項6に記載の車両用表示システム。
【請求項8】
前記表示領域は、インストルメントパネルに設けられたディスプレイを含んで構成され、
前記マーク表示部は、前記ディスプレイに前記障害物の画像と共に前記個別マーク及び前記群マークの少なくとも一方を表示させる請求項6に記載の車両用表示システム。
【請求項9】
車両周辺の複数の障害物に関する情報を取得し、
複数の前記障害物に対して、個別の前記障害物への注意を促す所定の個別マーク、及び複数の前記障害物への注意を促す所定の群マークの少なくとも一方を車室内の表示領域に表示させる、
車両用表示方法において、
複数の前記障害物のうち、最も車両に近い前記障害物を基準として、当該障害物から路面に沿って車両前後方向に延在するように前記群マークを重畳表示させる、車両用表示方法。
【請求項10】
車両周辺の複数の障害物に関する情報を取得し、
複数の前記障害物に対して、個別の前記障害物への注意を促す所定の個別マーク、及び複数の前記障害物への注意を促す所定の群マークの少なくとも一方を車室内の表示領域に表示させる、
処理をコンピュータに実行させる
プログラムにおいて、
複数の前記障害物のうち、最も車両に近い前記障害物を基準として、当該障害物から路面に沿って車両前後方向に延在するように前記群マークを重畳表示させる、処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置、車両用表示システム、車両用表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドアップディスプレイ装置によって虚像をドライバの視界に重畳して表示する技術が開示されている。この特許文献1では、ドライバから見た障害物の視認性が高い場合には、枠状の表示像を表示させ、障害物の視認性が低い場合には、障害物を模した表示像を障害物の位置に表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、障害物が多い場合に全ての障害物に対して表示像(マーク)を表示させると、かえってドライバから障害物が見えにくくなる虞がある。
【0005】
本発明は、障害物が多い場合であってもドライバに対して障害物を適切に認識させることができる車両用表示装置、車両用表示システム、車両用表示方法及びプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る車両用表示装置は、車両周辺の複数の障害物に関する情報を取得する障害物情報取得部と、車室内の表示領域に、前記障害物へ個別に注意を促す所定の個別マークを重畳表示させ、かつ、所定の条件を満たした場合に、複数の前記障害物へ注意を促す所定の群マークを重畳表示させるマーク表示部と、を有し、マーク表示部は、複数の前記障害物のうち、最も車両に近い前記障害物を基準として、当該障害物から路面に沿って車両前後方向に延在するように前記群マークを重畳表示させる。
【0007】
請求項1に係る車両用表示装置では、障害物情報取得部によって車両周辺の複数の障害物に関する情報が取得される。また、マーク表示部は、車室内の表示領域に所定の個別マークを重畳表示させる。さらに、マーク表示部は、所定の条件を満たした場合に所定の群マークを重畳表示させる。ここで、個別マークは、個別の障害物への注意を促すためのマークであり、群マークは、複数の障害物への注意を促すためのマークである。そして、これらの個別マーク及び群マークによって、ドライバに対して車両周辺の障害物に注意を向けるように促すことができる。
【0008】
また、所定の条件を満たした場合に個別マークから群マークへ切り替えて表示すれば、障害物が多い場合であっても、ドライバから障害物が見えにくくなるのを抑制することができる。なお、ここでいう「重畳表示させる」とは、ウインドシールドガラス越しに見える障害物に対して重畳表示を行う構成に限定されず、車室内のディスプレイなどに表示された障害物の画像に重畳表示を行う構成を広く含む概念である。
【0009】
請求項2に係る車両用表示装置は、請求項1において、前記マーク表示部は、前記障害物情報取得部によって取得された情報から複数の前記障害物が近接している場合に前記群マークを表示させる。
【0010】
請求項2に係る車両用表示装置では、近接している複数の障害物に対して群マークを表示することで、ドライバに対して近接した複数の障害物をまとめて障害物の群として認識させることができる。
【0011】
請求項3に係る車両用表示装置は、請求項1又は2において、前記マーク表示部は、前記群マークを表示する条件を満たしている場合において、車両との距離が所定値以下である前記障害物に対しては、前記個別マークを表示させる。
【0012】
請求項3に係る車両用表示装置では、車両との距離が近い障害物に対して個別マークを表示させることで、障害物の数が多い場合であっても、より注意が必要な障害物をドライバへ認識させることができる。
【0013】
請求項4に係る車両用表示装置は、請求項1~3の何れか1項において、前記マーク表示部は、車前記群マークを表示する条件を満たしている場合において、車両へ向かって歩行又は走行している前記障害物に対しては、前記個別マークを表示させる。
【0014】
請求項4に係る車両用表示装置では、車両へ向かって歩行している歩行者、及び車両へ向かって走行している自転車などの障害物に対して個別マークを表示させることで、障害物の数が多い場合であっても、より注意が必要な障害物をドライバへ認識させることができる。
【0015】
請求項5に係る車両用表示装置は、請求項1~4の何れか1項において、前記マーク表示部は、前記障害物の数が所定値以上である場合に前記群マークを表示させ、前記障害物の数が所定値より少ない場合であっても、複数の前記障害物が車両に近接している場合には、群マークを表示させる。
【0016】
請求項5に係る車両用表示装置では、障害物の数が所定値以上の場合に群マークが表示されるため、ドライバに障害物の数が多いことを迅速に認識させることができる。
【0017】
請求項6に係る車両用表示システムは、請求項1~5の何れか1項に記載の車両用表示装置と、車室内に設けられ、前記マーク表示部によって前記個別マーク及び前記群マークの少なくとも一方が表示される前記表示領域を備えた表示部と、を有する。
【0018】
請求項6に係る車両用表示システムでは、車両用表示装置のマーク表示部によって車室内の表示領域に個別マーク及び群マークの少なくとも一方が表示される。これにより、ドライバが表示領域を見ることで障害物の情報を把握することができる。
【0019】
請求項7に係る車両用表示システムは、請求項6において、前記表示領域は、ヘッドアップディスプレイ装置によってドライバの視線の先に画像が投影される領域を含んで構成され、前記マーク表示部は、前記障害物に重畳して前記個別マーク及び前記群マークの少なくとも一方を表示させる。
【0020】
請求項7に係る車両用表示システムでは、ドライバが視線を前方に向けている状態で、個別マーク及び群マークの少なくとも一方が前方の障害物に重畳して表示される。これにより、運転中のドライバが視線を変えることなく障害物の情報を認識させることができる。
【0021】
請求項8に係る車両用表示システムは、請求項6において、前記表示領域は、インストルメントパネルに設けられたディスプレイを含んで構成され、前記マーク表示部は、前記ディスプレイに前記障害物の画像と共に前記個別マーク及び前記群マークの少なくとも一方を表示させる。
【0022】
請求項8に係る車両用表示システムでは、インストルメントパネルに設けられたディスプレイに個別マーク及び群マークの少なくとも一方が表示される。これにより、実際の障害物に重畳表示させる構成と比較して、ドライバが視線を前方へ向けている状態で個別マーク及び群マークによる煩わしさを低減することができる。
【0023】
請求項9に係る車両用表示方法は、車両周辺の複数の障害物に関する情報を取得し、
複数の前記障害物に対して、個別の前記障害物への注意を促す所定の個別マーク、及び複数の前記障害物への注意を促す所定の群マークの少なくとも一方を車室内の表示領域に表示させる車両用表示方法において、複数の前記障害物のうち、最も車両に近い前記障害物を基準として、当該障害物から路面に沿って車両前後方向に延在するように前記群マークを重畳表示させる。
【0024】
請求項10に係るプログラムは、車両周辺の複数の障害物に関する情報を取得し、複数の前記障害物に対して、個別の前記障害物への注意を促す所定の個別マーク、及び複数の前記障害物への注意を促す所定の群マークの少なくとも一方を車室内の表示領域に表示させる、処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、複数の前記障害物のうち、最も車両に近い前記障害物を基準として、当該障害物から路面に沿って車両前後方向に延在するように前記群マークを重畳表示させる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明に係る車両用表示装置、車両用表示システム、車両用表示方法及びプログラムによれば、ドライバに対して障害物を適切に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係る車両用表示システムが適用された車両における車室内の前部を車両後方側から見た概略図である。
【
図2】実施形態に係る車両用表示装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る車両用表示装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態における表示領域の表示例を示す図であり、個別マークが表示された例を示す図である。
【
図5】実施形態における表示領域の表示例を示す図であり、群マークが表示された例を示す図である。
【
図6】実施形態における表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】第1変形例に係る車両用表示装置の表示例を示す図である
【
図8】第2変形例に係る車両用表示装置の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態に係る車両用表示システム10について、図面を参照して説明する。なお、
図1に記載された矢印UPは車両上下方向の上方側を示し、矢印RHは車両幅方向の右方側を示す。以下の説明中の上下方向及び左右方向はそれぞれ、車両上下方向の上下及び車両幅方向の左右を意味する。
【0028】
図1に示されるように、車両12における車室内の前部には、インストルメントパネル14が設けられている。インストルメントパネル14は、車両幅方向に延在されており、このインストルメントパネル14の車両右側にはステアリングホイール16が設けられている。すなわち、本実施形態では一例として、右側にステアリングホイール16が設けられた右ハンドル車とされており、運転席が車両右側に設定されている。
【0029】
インストルメントパネル14の前端部にはウインドシールドガラス18が設けられている。ウインドシールドガラス18は、車両上下方向及び車両幅方向に延在されて車室内部と車室外部とを区画している。
【0030】
ウインドシールドガラス18の車両右側端部は、車両右側のフロントピラー20に固定されている。フロントピラー20は、車両上下方向に延在されており、このフロントピラー20の車両幅方向内側端部にはウインドシールドガラス18が固定されている。また、フロントピラー20の車両幅方向外側端部にはフロントサイドガラス22の前端部が固定されている。なお、ウインドシールドガラス18の車両左側端部は、図示しない車両左側のフロントピラーに固定されている。
【0031】
ここで、インストルメントパネル14には、画像の表示領域V1を備えた第一表示部24が設けられている。第一表示部24は、インストルメントパネル14の車両右側において、運転席の車両前方に設けられたメータディスプレイによって構成されている。第一表示部24は、車両12に搭載された各種メータ機器と接続されており、運転者が車両前方へ視線を向けた状態で視界に入る位置に設けられている。
【0032】
インストルメントパネル14には、画像の表示領域V2を備えた第二表示部25が設けられている。第二表示部25は、インストルメントパネル14の車両幅方向の中央部に配設されたセンタディスプレイによって構成されている。
【0033】
ウインドシールドガラス18には、画像の表示領域V3を有する第三表示部26が設けられている。第三表示部26は、第一表示部24の車両上方側に設定されており、ヘッドアップディスプレイ装置44(
図2参照)によって投影された投影面によって構成されている。具体的には、インストルメントパネル14の車両前方側にヘッドアップディスプレイ装置44が設けられており、このヘッドアップディスプレイ装置44からウインドシールドガラス18の第三表示部26へ画像が投影されるように構成されている。すなわち、第三表示部26は、ヘッドアップディスプレイ装置44の投影面とされたウインドシールドガラス18の一部とされている。
【0034】
ここで、車両12には、車両用表示システム10を構成する車両用表示装置28が設けられている。本実施形態の車両用表示装置28は、例えば、種々の制御を行うECU(Electronic Control Unit)である。
【0035】
(車両用表示装置28のハードウェア構成)
図2に示されるように、車両用表示装置28は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)30、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)34、ストレージ36、通信インターフェース(通信I/F)38及び入出力インターフェース(入出力I/F)40を含んで構成されている。各構成は、内部バス42を介して相互に通信可能に接続されている。
【0036】
CPU30は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU30は、ROM32又はストレージ36からプログラムを読み出し、RAM34を作業領域としてプログラムを実行する。また、CPU30は、ROM32又はストレージ36に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0037】
ROM32は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM34は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ36は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する非一時的記録媒体である。本実施形態では、ROM32又はストレージ36には、表示処理を行うための表示プログラム等が格納されている。また、入出力インターフェース38には各種の入出力装置が接続される。
【0038】
入出力インターフェース38には、第一表示部24、第二表示部25、ヘッドアップディスプレイ装置44及びセンサ類46が接続されている。また、ヘッドアップディスプレイ装置44によって第三表示部26へ画像が投影される。
【0039】
センサ類46には、カメラ、レーダ、ライダ(LIDAR;Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)、GPS(global positioning system)センサなどの各種センサのうちの複数のセンサが含まれる。カメラは、車両12の周辺を撮影する。本実施形態のカメラは少なくとも、車両前方を撮像するフロントカメラを含んで構成されている。
【0040】
レーダは、電波により車両12の周辺の物体との距離および方向を検出する。ライダは、レーザ光により車両12の周辺の物体との距離および方向を検出する。GPSセンサは、車両12の現在位置を検出する。この他に、センサ類46は、乗員の視線位置を検出するセンサなどを含んで構成されている。
【0041】
(車両用表示装置28の機能構成)
車両用表示装置28は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。車両用表示装置28が実現する機能構成について
図3を参照して説明する。
【0042】
図3に示されるように、車両用表示装置28は、機能構成として、障害物情報取得部52、表示マーク判定部54、マーク表示部56及び表示先設定部58を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU30がROM32又はストレージ36に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0043】
障害物情報取得部52は、車両周辺の複数の障害物に関する情報を取得する。具体的には、障害物情報取得部52は、センサ類46によって検出された障害物の情報を取得する。例えば、障害物情報取得部52は、フロントカメラが撮像した車両前方の撮像画像データを取得する。また、障害物情報取得部52は、レーダ及びライダなどによって検出された障害物の位置に関するデータを取得する。
【0044】
表示マーク判定部54は、障害物情報取得部52で取得された障害物のデータから、マーク表示の有無を判定すると共に、マークを表示する場合には、個別の障害物への注意を促す個別マークを表示するか、複数の障害物への注意を促す群マークを表示するかを判定する。個別マーク及び群マークの詳細については後述する。
【0045】
本実施形態では一例として、表示マーク判定部54は、障害物が特定の種類であり、かつ、障害物と車両12との距離が所定の距離よりも近い場合にマークを表示する。例えば、表示マーク判定部54は、障害物が歩行者又は二輪車の場合にマークを表示すると判定してもよい。また、本実施形態の表示マーク判定部54は一例として、車両前方の障害物のみに対してマーク表示の有無を判定する。
【0046】
ここで、表示マーク判定部54は、障害物情報取得部52によって取得された情報から障害物の数が所定値以上である場合には、群マークを表示させると判定する。例えば、表示マーク判定部54は、表示領域を3等分した各領域における障害物の数が5つ以上であれば、群マークを表示させると判定してもよい。
【0047】
さらにまた、表示マーク判定部54は、障害物の数が所定値より少ない場合であっても、複数の障害物が近接している場合には、群マークを表示させると判定するように構成されている。例えば、ドライバから見て車両前方の障害物の一部が重なって見える場合には、表示マーク判定部54が群マークを表示させると判定する。すなわち、フロントカメラで撮像された画像データの画像解析において、障害物同士の境界が認識できない場合、ドライバから見て車両前方の障害物の一部が重なって見えるので、群マークを表示させると判定する。
【0048】
一方、表示マーク判定部54は、レーダ及びライダなどを用いて検出された車両12と障害物との距離が所定値以下である障害物に対して個別マークを表示させると判定する。また、表示マーク判定部54は、車両12へ向かって歩行又は走行している障害物に対して個別マークを表示させると判定する。すなわち、車両12の速度と障害物の距離から車両12と障害物との相対速度を算出し、この相対速度から障害物が車両12へ近づいている場合には、表示マーク判定部54が個別マークを表示させると判定する。
【0049】
マーク表示部56は、表示マーク判定部54によって判定された表示マークを表示する。すなわち、マーク表示部56は、表示マーク判定部54によって個別マークを表示させると判定された障害物に対して、所定の個別マークを表示する。また、マーク表示部56は、表示マーク判定部54によって群マークを表示させると判定された障害物に対して、所定の群マークを表示する。
【0050】
さらに、本実施形態では一例として、マーク表示部56は、個別マーク及び群マークを第三表示部26の表示領域V3(
図1参照)に表示する場合、ドライバの視線位置に基づいて、車両外部の障害物とマークとが重畳されるようにマークの表示態様を変化させる。例えば、センサ類46を構成する室内カメラによってドライバの目の高さなどの視線位置を検出する。そして、マーク表示部56は、検出されたドライバの目の位置から表示領域V3を見た場合に、障害物の位置と個別マーク及び群マークの位置とがずれないように、個別マーク及び群マークの表示位置を調整する。また、マーク表示部56は、ドライバから見て自然な立体画像となるように個別マーク及び群マークの形状を適宜変化させる。
【0051】
表示先設定部58は、個別マーク及び群マークを表示する表示先を設定する。具体的には、表示先設定部58は、
図1において、インストルメントパネル14に設けられた第一表示部24及び第二表示部25と、ウインドシールドガラス18に設定された第三表示部26の中から、個別マーク及び群マークを表示する表示先を設定する。
【0052】
表示先設定部58は、例えば、ドライバの操作によって個別マーク及び群マークを表示する表示先を設定してもよい。また、表示先設定部58は、例えば、車両12が自動車専用道路を走行している場合には第一表示部24又は第二表示部25にマークを表示し、車両12が市街地などを走行している場合に第三表示部26にマークを表示するように、車両12の走行状況に応じて自動的にマークの表示先を変更してもよい。
【0053】
(表示例)
次に、
図4及び
図5を参照して、第三表示部26の表示領域V3に表示される表示例について説明する。
【0054】
図4に示されるように、表示領域V3には、ウインドシールドガラス18越しに車両前方の景色が見えている。なお、説明の便宜上、表示領域V3に見えている景色のみを図示しているが、実際には、車両前方の景色は、第三表示部26の境界で区切られていない。
【0055】
表示領域V3には、ヘッドアップディスプレイ装置44によって個別マークM1及び車速マークM2が表示されている。個別マークM1は、障害物としての歩行者Pの足元に重畳して表示されており、本実施形態の個別マークM1は一例として、略円状に表示されている。なお、個別マークM1は、車両12との距離に応じて色が変化するように設定されており、例えば、歩行者Pが車両12から所定距離よりも離れている場合には個別マークM1が緑色で表示され、歩行者Pが車両12から所定距離以内に位置している場合には、個別マークM1が赤色で表示される。このように、個別マークM1によってドライバへ個別の障害物への注意を促すようになっている。
【0056】
車速マークM2は、図示しない車速センサで検知された車両12の現在の速度が表示されている。
【0057】
一方、
図5には、個別マークM1に代えて群マークM3が重畳表示されている。群マークM1は、複数の歩行者Pよりも車両12に近い位置を車両前後方向に延在された略直線状に表示されている。また、
図5では、車両12の進行方向に対して右側及び左側の両側に複数の歩行者Pが存在しているため、左右両側に群マークM3が表示されており、最も車両12に近い歩行者Pを基準として、この歩行者Pの足元から路面に沿って車両前後方向に延在されている。
【0058】
右側の群マークM3は、歩行者Pの足元から僅かに車両側(左側)へオフセットされた位置に重畳して表示されており、車両後方側から車両前方側へ流れるように表示される。また、左側の群マークM3は、歩行者Pの足元から僅かに車両側(右左側)へオフセットされた位置に重畳して表示されており、車両後方側から車両前方側へ流れるように表示される。すなわち、左右の群マークM3を重畳表示することで、左右の群マークM3よりも外側に複数の障害物が存在していることをドライバへ認識させている。このように、群マークM3によってドライバへ複数の障害物への注意を促すようになっている。
【0059】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0060】
(表示処理)
ヘッドアップディスプレイ装置44の投影面である第三表示部26に個別マークM1及び群マークM3の少なくとも一方を表示させる表示処理の一例について、
図6に示されるフローチャートを用いて説明する。この表示処理は、CPU30がROM32又はストレージ36から表示プログラムを読み出して、RAM34に展開して実行することによって実行される。また、表示処理は、所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0061】
CPU30は、ステップS102で障害物の情報を取得する。具体的には、CPU30は、障害物情報取得部52の機能によってセンサ類46で検出された障害物の位置、種類及び移動方向などの情報を取得する。
【0062】
CPU30は、ステップS104で障害物の数が所定値以上であるか否かについて判定する。本実施形態では一例として、CPU30は、表示領域V3を3等分した領域内の障害物の数が所定値以上であれば、ステップS104が肯定判定となりステップS108の処理へ移行する。ステップS108の処理については後述する。
【0063】
CPU30は、表示領域V3を3等分した領域内の障害物の数が所定値よりも少ない場合は、ステップS104が否定判定となりステップS106の処理へ移行する。CPU30は、ステップS106で障害物が近接しているか否かについて判定する。本実施形態では一例として、CPU30は、車両前方の障害物の一部が重なって見える場合には、障害物が近接していると判断し、ステップS108の処理へ移行する。
【0064】
CPU30は、ステップS106で障害物の一部が重なっていない場合には、ステップS114の処理へ移行し、個別マークM1を表示する。具体的には、CPU30は、マーク表示部56の機能によって、表示領域V3における障害物に個別マークM1を重畳表示する(
図4参照)。また、CPU30は、群マークM3の表示を行わずに表示処理を終了する。
【0065】
一方、ステップS104又はステップS106で肯定判定となった場合、CPU30は、ステップS108の処理へ移行し、車両12へ向かって走行又は歩行している障害物があるか否かについて判定する。車両12へ向かって走行又は歩行している障害物がある場合、CPU30は、ステップS110の処理へ移行する。
【0066】
CPU30は、ステップS110で個別マークM1及び群マークM3を表示する。具体的には、CPU30は、マーク表示部56の機能によって、表示領域V3における複数の障害物に対して群マークM3を重畳表示する(
図5参照)。また、CPU30は、車両12へ向かって走行又は歩行している障害物に対して個別マークM1を表示する。このため、ステップS110では、表示領域V3に個別マークM1と群マークM3とが混在して表示されることとなる。
【0067】
CPU30は、ステップS108で車両12へ向かって走行又は歩行している障害物が無いと判定された場合、ステップS112の処理へ移行し、群マークを表示する。具体的には、CPU30は、マーク表示部56の機能によって、表示領域V3における障害物に個別マークM1を重畳表示する(
図5参照)。また、CPU30は、個別マークM1の表示を行わずに表示処理を終了する。
【0068】
以上のように、本実施形形態に係る車両用表示システム10及び車両用表示装置28では、マーク表示部56は、複数の障害物に対して、所定の個別マークM1及び所定の群マークM3の少なくとも一方を車室内の表示領域に障害物と重畳して表示させる。これにより、ドライバに対して車両周辺の障害物に注意を向けるように促すことができる。
【0069】
また、本実施形態では、障害物の種類や数などの障害物の情報に応じて個別マークM1と群マークM3を切り替えて表示すれば、障害物が多い場合であっても、ドライバから障害物が見えにくくなるのを抑制することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、障害物の数が所定値以上の場合に群マークM3が表示されるため、ドライバに障害物の数が多いことを迅速に認識させることができる。また、近接している複数の障害物に対して群マークM3を表示することで、ドライバに対して近接した複数の障害物をまとめて障害物の群として認識させることができる。特に、本実施形態では、群マークM3を流れるように表示させることにより、ドライバへ障害物に意識を向けさせることができる。
【0071】
さらにまた、本実施形態では、車両との距離が近い障害物に対して個別マークM1を表示させることで、障害物の数が多い場合であっても、より注意が必要な障害物をドライバへ認識させることができる。
【0072】
また、車両12へ向かって歩行している歩行者、及び車両へ向かって走行している自転車などの障害物に対して個別マークM1を表示させることで、車両12との距離が離れている障害物であっても、より注意が必要な障害物をドライバへ認識させることができる。
【0073】
さらに、本実施形態では、ヘッドアップディスプレイ装置44によって投影される第三表示部26の表示領域V3に個別マークM1及び群マークM3を表示させることで、運転中のドライバが視線を変えることなく障害物の情報を認識させることができる。
【0074】
なお、上記実施形態では、
図5に示されるように、車両後方側から車両前方側へ流れるように群マークM3を表示したが、これに限定されない。例えば、
図7に示される第1変形例の群マークM4を採用してもよい。
【0075】
(第1変形例)
図7に示されるように、群マークM4は、車両前後方向に延びる長尺帯状のマークとされている。また、群マークM4は、路面に重畳して表示されており、所定の色で表示されている。
【0076】
ここで、群マークM4は、上記実施形態の群マークM3と同様に、最も車両12に近い歩行者Pを基準として、この歩行者Pの足元から路面に沿って車両前後方向に延在されている。
【0077】
このように、本変形例では、群マークM4が長尺帯状に表示されているため、ドライバは、群マークM4が表示された領域を走行禁止領域として認識しやすくなる。なお、上記実施形態と同様に、群マークM4よりも車両12へ向かって近づいてくる歩行者Pがいる場合には、この歩行者Pに個別マークM1を表示させてドライバへ注意を促す。
【0078】
(第2変形例)
第2変形例として、
図8を参照して第二表示部25の表示領域V2に表示を行う場合の一例について説明する。
【0079】
図8に示されるように、本変形例では、第二表示部25の表示領域V2が上下に分割されている。また、表示領域V2の下側には、ナビゲーションシステムの画面が表示されている。ナビゲーションシステムの画面では、例えば、車両12の現在位置と車両周辺の道路が表示されている。
【0080】
表示領域V2の上側には、車両前方の画像が表示されている。具体的には、センサ類46を構成するフロントカメラで撮像された画像が表示領域V2に表示されている。また、表示領域V2には、歩行者Pの画像と共に群マークM3が表示されている。具体的には、上記実施形態と同様に、複数の歩行者Pよりも車両12に近い位置を車両前後方向に延在された略直線状に表示されている。また、表示領域V2には、車速マークM2が表示されている。
【0081】
このように、本変形例では、インストルメントパネル14に設けられた第二表示部25に個別マークM1及び群マークM3の少なくとも一方が表示される。これにより、実際の障害物に重畳表示させる構成と比較して、ドライバが視線を前方へ向けている状態で個別マークM1及び群マークM3による煩わしさを低減することができる。
【0082】
以上、実施形態に係る車両用表示システム10及び車両用表示装置28について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、第二表示部25及び第三表示部26に個別マーク及び群マークを表示する構成について説明したが、これに限定されず、第一表示部24に個別マーク及び群マークを表示してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、
図4に示されるように、個別マークM1を略円状に表示したが、これに限定されない。例えば、歩行者Pの頭部上方に矢印を模したマークを表示してもよい。さらに、歩行者と二輪車とで異なる個別マークを表示してもよい。
【0084】
さらに、上記実施形態では、
図5及び
図7に示されるように、群マークM3、M4を着直線状に表示したが、これに限定されず、群であることが認識できれば他の形状の群マークを採用してもよい。例えば、複数の歩行者Pを囲うような群マークを表示してもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 車両用表示システム
12 車両
14 インストルメントパネル
24 第一表示部
25 第二表示部
26 第三表示部
28 車両用表示装置
52 障害物情報取得部
56 マーク表示部
M1 個別マーク
M3 群マーク
M4 群マーク
V1 表示領域
V2 表示領域
V3 表示領域