(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】遠隔運転車両、遠隔運転システム、蛇行運転抑制方法、及び蛇行運転抑制プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240709BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240709BHJP
G05D 1/221 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/222 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/223 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/224 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/226 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/229 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/24 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/242 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/245 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240709BHJP
G05D 1/69 20240101ALI20240709BHJP
G05D 107/00 20240101ALN20240709BHJP
G05D 107/20 20240101ALN20240709BHJP
G05D 111/00 20240101ALN20240709BHJP
G05D 111/30 20240101ALN20240709BHJP
G05D 111/63 20240101ALN20240709BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/09 F
G08G1/09 V
G05D1/221
G05D1/222
G05D1/223
G05D1/224
G05D1/226
G05D1/229
G05D1/24
G05D1/242
G05D1/245
G05D1/43
G05D1/69
G05D107:00
G05D107:20
G05D111:00
G05D111:30
G05D111:63
(21)【出願番号】P 2021095275
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 敏暢
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-071585(JP,A)
【文献】特開2021-060764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G05D 1/00- 1/87
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔運転者によって遠隔運転される遠隔運転車両であって、
遠隔運転者の遠隔操作情報をサーバから通信ネットワークを介して受け取る車両側通信部と、
前記遠隔運転車両の運転環境情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部によって取得された前記運転環境情報に基づいて、前記遠隔運転車両の蛇行状態の検出有無を含む蛇行状態情報を取得する蛇行検出部と、
前記
蛇行状態情報が前記遠隔運転車両の蛇行状態の検出を含む場合、前記遠隔操作情報又は前記遠隔操作情報から演算される運動制御量に対して蛇行状態を防止するための調整を加える蛇行防止部と、
を備える遠隔運転車両。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔運転車両において、
前記運転環境情報は、前記遠隔運転車両の車両挙動に関する車両挙動情報を含む
ことを特徴とする遠隔運転車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の遠隔運転車両において、
前記蛇行状態が検出された場合、前記蛇行防止部は、
前記蛇行状態が検出される前よりも車両速度の上限速度を小さな値に設定する上限速度設定処理と、
前記車両速度が前記上限速度を超えないように前記遠隔操作情報又は前記運動制御量を調整する調整処理と、
を実行するように構成されることを特徴とする遠隔運転車両。
【請求項4】
請求項3に記載の遠隔運転車両において、
前記上限速度設定処理は、前記上限速度が第一上限速度から第二上限速度へ向かって徐々に小さくなるように設定する
ように構成されることを特徴とする遠隔運転車両。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の遠隔運転車両において、
前記蛇行状態が検出された場合、前記蛇行防止部は、
前記遠隔運転車両の後続車両の検出有無を取得し、
前記後続車両が検出された場合、前記上限速度設定処理の実行を保留する
ように構成されることを特徴とする遠隔運転車両。
【請求項6】
請求項4に記載の遠隔運転車両において、
前記蛇行状態が検出された場合、前記蛇行防止部は、
前記遠隔運転車両の後続車両の検出有無を取得し、
前記後続車両が検出された場合、前記上限速度設定処理は、前記後続車両が検出されない場合よりも前記上限速度を前記第一上限速度から前記第二上限速度へと変化させるための時定数を大きな値に設定する
ように構成されることを特徴とする遠隔運転車両。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の遠隔運転車両において、
前記蛇行状態が検出された場合、前記蛇行防止部は、
前記蛇行状態が検出される前よりも車両舵角の限界舵角を小さな値に設定する限界舵角設定処理と、
前記車両舵角が前記限界舵角を超えないように前記遠隔操作情報又は前記運動制御量を調整する調整処理と、
を実行するように構成されることを特徴とする遠隔運転車両。
【請求項8】
請求項7に記載の遠隔運転車両において、
前記限界舵角設定処理は、前記限界舵角が第一限界舵角から第二限界舵角へ向かって徐々に小さくなるように設定する
ように構成されることを特徴とする遠隔運転車両。
【請求項9】
遠隔運転車両と、前記遠隔運転車両の遠隔運転を行うサーバと、を備える遠隔運転システムであって、
前記サーバは、
前記遠隔運転車両を運転する遠隔運転者によって操作される遠隔操作情報を取得する遠隔操作情報取得部と、
前記遠隔操作情報を通信ネットワークを介して前記遠隔運転車両へ送信する遠隔側通信部と、を備え、
前記遠隔運転車両は、
前記遠隔操作情報を前記サーバから前記通信ネットワークを介して受け取る車両側通信部と、
前記遠隔運転車両の運転環境情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部によって取得された前記運転環境情報に基づいて、前記遠隔運転車両の蛇行状態の検出有無を含む蛇行状態情報を取得する蛇行検出部と、
前記
蛇行状態情報が前記遠隔運転車両の蛇行状態の検出を含む場合、前記遠隔操作情報又は前記遠隔操作情報から演算される運動制御量に対して蛇行状態を防止するための調整を加える蛇行防止部と、
を備える遠隔運転システム。
【請求項10】
遠隔運転者によって遠隔運転される遠隔運転車両の蛇行運転を、コンピュータが抑制する蛇行運転抑制方法であって、
前記コンピュータは、
遠隔運転者の遠隔操作情報を受け取り、
前記遠隔運転車両の運転環境情報を取得し、
前記運転環境情報に基づいて、前記遠隔運転車両の蛇行状態の検出有無を含む蛇行状態情報を取得し、
前記
蛇行状態情報が前記遠隔運転車両の蛇行状態の検出を含む場合、前記遠隔操作情報又は前記遠隔操作情報から演算される運動制御量に対して蛇行状態を防止するための調整を加える
ことを特徴とする蛇行運転抑制方法。
【請求項11】
遠隔運転者によって遠隔運転される遠隔運転車両の蛇行運転を抑制することをコンピュータに実行させる蛇行運転抑制プログラムであって、
前記蛇行運転抑制プログラムは、
遠隔運転者の遠隔操作情報をサーバから通信ネットワークを介して受け取り、
前記遠隔運転車両の運転環境情報を取得し、
前記運転環境情報に基づいて、前記遠隔運転車両の蛇行状態の検出有無を含む蛇行状態情報を取得し、
前記
蛇行状態情報が前記遠隔運転車両の蛇行状態の検出を含む場合、前記遠隔操作情報又は前記遠隔操作情報から演算される運動制御量に対して蛇行状態を防止するための調整を加える
ことを前記コンピュータに実行させる蛇行運転抑制プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔運転車両、遠隔運転システム、蛇行運転抑制方法、及び蛇行運転抑制プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動運転車両の遠隔操作に関する技術が開示されている。この従来技術によれば、無線通信の遅延時間が閾値以上になった場合、車両の運転制御を通常制御から安全制御に変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両を遠隔地にて運転する遠隔運転サービスでは、遠隔監視サーバから車両への遠隔操作情報の通信に遅延が起こる。このため、車両の遠隔操作情報と実際の機体運動とを同時系列で評価することができない。したがって、遠隔運転サービスでは、通信遅延に起因する車両の蛇行が発生した場合の対策が求められる。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、自動運転車両の遠隔運転が行われる場合、通信遅延に起因する自動運転車両の蛇行運転を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の開示は、上記目的を達成するため、遠隔運転者によって遠隔運転される遠隔運転車両に適用される。遠隔運転車両は、遠隔運転者の遠隔操作情報をサーバから通信ネットワークを介して受け取る車両側通信部と、遠隔運転車両の運転環境情報を取得する情報取得部と、情報取得部によって取得された運転環境情報に基づいて、遠隔運転車両の蛇行状態の検出有無を含む蛇行状態情報を取得する蛇行検出部と、蛇行状態情報が遠隔運転車両の蛇行状態の検出を含む場合、遠隔操作情報又は遠隔操作情報から演算される運動制御量に対して蛇行状態を防止するための調整を加える蛇行防止部と、を備える。
【0007】
第2の開示は、第1の開示において、更に以下の特徴を有している。
運転環境情報は、遠隔運転車両の車両挙動に関する車両挙動情報を含む。
【0008】
第3の開示は、第1又は第2の開示において、更に以下の特徴を有している。
蛇行状態が検出された場合、蛇行防止部は、
蛇行状態が検出される前よりも車両速度の上限速度を小さな値に設定する上限速度設定処理と、
車両速度が上限速度を超えないように遠隔操作情報又は運動制御量を調整する調整処理と、
を実行するように構成される。
【0009】
第4の開示は、第3の開示において、更に以下の特徴を有している。
上限速度設定処理は、上限速度が第一上限速度から第二上限速度へ向かって徐々に小さくなるように設定するように構成される。
【0010】
第5の開示は、第3又は第4の開示において、更に以下の特徴を有している。
蛇行状態が検出された場合、蛇行防止部は、遠隔運転車両の後続車両の検出有無を取得し、後続車両が検出された場合、上限速度設定処理の実行を保留するように構成される。
【0011】
第6の開示は、第4の開示において、更に以下の特徴を有している。
蛇行状態が検出された場合、蛇行防止部は、遠隔運転車両の後続車両の検出有無を取得し、後続車両が検出された場合、上限速度設定処理は、後続車両が検出されない場合よりも上限速度を第一上限速度から第二上限速度へと変化させるための時定数を大きな値に設定するように構成される。
【0012】
第7の開示は、第1又は第2の開示において、更に以下の特徴を有している。
蛇行状態が検出された場合、蛇行防止部は、蛇行状態が検出される前よりも車両舵角の限界舵角を小さな値に設定する限界舵角設定処理と、車両舵角が限界舵角を超えないように遠隔操作情報又は運動制御量を調整する調整処理と、を実行するように構成される。
【0013】
第8の開示は、第7の開示において、更に以下の特徴を有している。
限界舵角設定処理は、限界舵角が第一限界舵角から第二限界舵角へ向かって徐々に小さくなるように設定するように構成される。
【0016】
第9の開示は、上記目的を達成するため、遠隔運転車両と、遠隔運転車両の遠隔運転を行うサーバと、を備える遠隔運転システムに適用される。サーバは、遠隔運転車両を運転する遠隔運転者によって操作される遠隔操作情報を取得する遠隔操作情報取得部と、遠隔操作情報を通信ネットワークを介して遠隔運転車両へ送信する遠隔側通信部と、を備える。遠隔運転車両は、遠隔操作情報をサーバから通信ネットワークを介して受け取る車両側通信部と、遠隔運転車両の運転環境情報を取得する情報取得部と、情報取得部によって取得された運転環境情報に基づいて、遠隔運転車両の蛇行状態の検出有無を含む蛇行状態情報を取得する蛇行検出部と、蛇行状態情報が遠隔運転車両の蛇行状態の検出を含む場合、遠隔操作情報又は当該遠隔操作情報から演算される運動制御量に対して蛇行状態を防止するための調整を加える蛇行防止部と、を備える。
【0017】
第10の開示は、上記目的を達成するため、遠隔運転者によって遠隔運転される遠隔運転車両の蛇行運転を、コンピュータが抑制する蛇行運転抑制方法に適用される。蛇行運転抑制方法において、コンピュータは、遠隔運転者の遠隔操作情報を受け取り、遠隔運転車両の運転環境情報を取得し、運転環境情報に基づいて、遠隔運転車両の蛇行状態の検出有無を含む蛇行状態情報を取得し、蛇行状態情報が遠隔運転車両の蛇行状態の検出を含む場合、遠隔操作情報又は遠隔操作情報から演算される運動制御量に対して蛇行状態を防止するための調整を加える。
【0018】
第11の開示は、上記目的を達成するため、遠隔運転者によって遠隔運転される遠隔運転車両の蛇行運転を抑制することをコンピュータに実行させる蛇行運転抑制プログラムに適用される。蛇行運転抑制プログラムは、遠隔運転者の遠隔操作情報をサーバから通信ネットワークを介して受け取り、遠隔運転車両の運転環境情報を取得し、運転環境情報に基づいて、遠隔運転車両の蛇行状態の検出有無を含む蛇行状態情報を取得し、蛇行状態情報が遠隔運転車両の蛇行状態の検出を含む場合、遠隔操作情報又は遠隔操作情報から演算される運動制御量に対して蛇行状態を防止するための調整を加えることをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本開示に係る技術によれば、遠隔運転者によって遠隔運転される遠隔運転車両の蛇行状態が検出された場合、遠隔操作情報又は当該遠隔操作情報から演算される運動制御量に対して蛇行状態を防止するための調整が加えられる。これにより、通信遅延に起因する自動運転車両の蛇行運転を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】遠隔運転システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】自動運転車両の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】遠隔操作センタの構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る遠隔運転システムの構成を示すブロック図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係る蛇行防止処理において車両の上限速度を制限する方法の一例を説明するための図である。
【
図6】本開示の第1実施形態に係る蛇行防止処理において車両の上限速度を制限する方法の他の例を説明するための図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係る蛇行防止処理において車両の限界舵角を制限する方法の一例を説明するための図である。
【
図8】本開示の第1実施形態に係る蛇行防止処理において車両の限界舵角を制限する方法の他の例を説明するための図である。
【
図9】本開示の第2実施形態に係る蛇行防止処理において車両の上限速度を制限する方法の一例を説明するための図である。
【
図10】本開示の第2実施形態に係る蛇行防止処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図11】本開示の第3実施形態に係る蛇行防止処理において車両の上限速度を制限する方法の一例を説明するための図である。
【
図12】本開示の第3実施形態に係る蛇行防止処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図13】本開示の第4実施形態に係る蛇行防止処理において車両の限界舵角を制限する方法の一例を説明するための図である。
【
図14】本開示の第4実施形態に係る蛇行防止処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図15】本開示の遠隔運転システムの変形例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る技術思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本開示に係る技術思想に必ずしも必須のものではない。
【0022】
1.遠隔運転システムの概略構成
図1は、後述する全ての実施形態に共通する遠隔運転システムの構成を概略的に示す図である。遠隔運転システム100は、遠隔操作センタ30から自動運転車両20を遠隔運転するシステムである。自動運転車両20の自動運転レベルとしては、例えば、SAE(Society of Automotive Engineers)のレベル定義におけるレベル4又はレベル5が想定される。以下、遠隔運転が可能な自動運転車両20を遠隔運転車両20或いは単に車両20と呼ぶ。
【0023】
遠隔運転は、車両20が自動運転を継続することが困難になった場合或いは困難になることが予測される場合に、遠隔運転者(遠隔オペレータ)OPによって行われる。
【0024】
遠隔運転では、車両20の運転、詳しくは、操舵操作又は加減速操作の少なくとも一部を遠隔運転者OPが行う。遠隔運転では、運転に必要な認知、判断、及び操作は遠隔運転者OPによって担われる。遠隔運転者OPは、遠隔の場所から車両20の運転席で行うのと同じように車両20を運転する。ただし、遠隔運転では、必ずしも認知、判断、及び操作の全てを遠隔運転者OPが行う必要はない。認知、判断、及び操作のうち少なくとも一部が車両20の機能によって補助されてもよい。
【0025】
遠隔操作センタ30には、サーバ32、及び遠隔運転端末34が設置されている。車両20は、4Gや5Gを含む通信ネットワーク10を介してサーバ32に接続されている。サーバ32と通信可能な車両20の台数は1台又は複数台である。
【0026】
遠隔運転端末34は、遠隔運転者OPによって操作される遠隔運転のための操作端末である。遠隔運転端末34は少なくとも1台以上好ましくは複数台設けられている。遠隔操作センタ30には、遠隔運転端末34の台数に応じた人数の遠隔運転者OPが用意されている。
【0027】
各遠隔運転端末34は、LANやインターネットを含む通信ネットワークを介してサーバ32に接続されている。なお、遠隔操作センタ30は、必ずしも実在する施設である必要はない。ここでは、遠隔運転端末34がサーバ32と通信ネットワークで接続されてなるシステムを遠隔操作センタ30と称する。ゆえに、クラウド上にサーバ32が設置され、各地のサテライトオフィスや遠隔操作者の自宅に遠隔運転端末34が設置されていてもよい。
【0028】
図2は、車両20の構成の一例を示すブロック図である。車両20は、車載コンピュータ21を備える。車載コンピュータ21は、車両20に搭載される複数のECU(Electronic Control Unit)の集合体である。また、車両20は、外部センサ22、内部センサ23、アクチュエータ24、及び通信装置25を備える。これらは、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを用いて車載コンピュータ21に接続されている。
【0029】
車載コンピュータ21は、1つ又は複数のプロセッサ21a(以下、単にプロセッサ21aと呼ぶ)とプロセッサ21aに結合された1つ又は複数のメモリ21b(以下、単にメモリ21bと呼ぶ)とを備えている。メモリ21bには、プロセッサ21aで実行可能な1つ又は複数のプログラム21c(以下、単にプログラム21cと呼ぶ)とそれに関連する種々の情報とが記憶されている。
【0030】
プロセッサ21aがプログラム21cを実行することにより、プロセッサ21aによる各種処理が実現される。プログラム21cには、例えば、自動運転を実現するためのプログラムと、遠隔運転を実現するためのプログラムとが含まれる。また、プログラム21cには、車載コンピュータ21を後述する蛇行運転を抑制するための装置として機能させる蛇行運転抑制プログラムが含まれる。メモリ21bは主記憶装置と補助記憶装置とを含む。プログラム21cは、主記憶装置に記憶されることもできるし、補助記憶装置であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されることもできる。また、補助記憶装置には、自動運転のための地図情報を管理する地図データベースが記憶されていてもよい。
【0031】
外部センサ22は、車両20の周囲、特に前方を撮像するカメラを含む。カメラは、単眼カメラでもよいしステレオカメラでもよい。カメラは、複数台設けられていてもよく、車両20の前方の他、側方及び後方を撮像してもよい。また、カメラは、自動運転用と遠隔操作用とで共用されてもよいし、自動運転用のカメラと遠隔操作用のカメラとが別々に設けられてもよい。
【0032】
外部センサ22は、カメラ以外の認識センサを含む。認識センサは、車両20の周囲の状況を認識するためのセンサである。カメラ以外の認識センサとしては、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、及びミリ波レーダが例示される。また、外部センサ22は、車両20の位置及び方位を検出する位置センサを含む。位置センサとしては、GPS(Global Positioning System)センサが例示される。外部センサ22で得られた情報は車載コンピュータ21に送信される。
【0033】
内部センサ23は、車両20の運動に関する情報を取得する状態センサを含む。状態センサとしては、例えば、車輪速センサ、加速度センサ、角速度センサ、及び舵角センサが例示される。加速度センサと角速度センサとは、IMUであってもよい。内部センサ23で得られた情報は車載コンピュータ21に送信される。以下、内部センサ23で得られた情報を内部情報INTと称し、外部センサ22で得られた情報を外部情報EXTと称する。内部情報INT及び外部情報EXTは、車両20の運転環境を示す運転環境情報DINFとして、車載コンピュータ21のメモリ21bに格納される。
【0034】
アクチュエータ24は、車両20を操舵する操舵装置、車両20を駆動する駆動装置、及び車両20を制動する制動装置を含んでいる。操舵装置には、例えば、パワーステアリングシステム、ステアバイワイヤ操舵システム、及び後輪操舵システムが含まれる。駆動装置には、例えば、エンジン、EVシステム、及びハイブリッドシステムが含まれる。制動装置には、例えば、油圧ブレーキ、及び電力回生ブレーキが含まれる。アクチュエータ24は、車載コンピュータ21から送信される制御信号によって動作する。
【0035】
通信装置25は、車両20の外部との無線通信を制御する装置である。通信装置25は、通信ネットワーク10を介してサーバ32と通信を行う。車載コンピュータ21で処理された情報は、通信装置25を用いてサーバ32に送信される。サーバ32で処理された情報は、通信装置25を用いて車載コンピュータ21に取り込まれる。また、自動運転のために他の車両との車車間通信やインフラ施設との路車間通信が必要な場合、それら外部装置との通信も通信装置25によって行われる。
【0036】
図3は、遠隔操作センタ30の構成の一例を示すブロック図である。遠隔操作センタ30は、サーバ32を備える。サーバ32は、1つのコンピュータ、又は、通信ネットワークで接続された複数のコンピュータの集合体である。また、遠隔操作センタ30は、遠隔運転端末34、及び通信装置38を備える。これらは、通信ネットワークを用いてサーバ32に接続されている。前述のとおり、1又は複数台
の遠隔運転端末34は、サーバ32に接続されていてもよい。
【0037】
サーバ32は、1つ又は複数のプロセッサ32a(以下、単にプロセッサ32aと呼ぶ)とプロセッサ32aに結合された1又は複数のメモリ32b(以下、単にメモリ32bと呼ぶ)とを備えている。メモリ32bには、プロセッサ32aで実行可能な1つ又は複数のプログラム32c(以下、単にプログラム32cと呼ぶ)とそれに関連する種々の情報とが記憶されている。
【0038】
プロセッサ32aがプログラム32cを実行することにより、プロセッサ32aによる各種処理が実現される。プログラム32cには、例えば、遠隔運転を実現するためのプログラムとが含まれる。メモリ32bは主記憶装置と補助記憶装置とを含む。プログラム32cは、主記憶装置に記憶されることもできるし、補助記憶装置であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されることもできる。また、補助記憶装置には、自動運転のための地図情報を管理する地図データベースが記憶されていてもよい。地図データベースは、サーバ32と車載コンピュータ21の少なくとも一方に記憶されていればよい。
【0039】
遠隔運転端末34は、情報出力部34aを備える。情報出力部34aは、遠隔運転者OPに対して車両20の遠隔運転に必要な情報を出力する機器である。情報出力部34aは、画像を出力するディスプレイを含む。ディスプレイには、例えば、車両20のカメラが撮像した車両20の前方の画像が表示される。その表示方法として、例えば、車両20の運転席から前方を見た場合と同じ景色がディスプレイに表示されるようにしてもよい。ディスプレイは、複数の表示画面を有していてもよく、車両20の側方及び/又は後方の画像が表示されてもよい。
【0040】
遠隔運転端末34は、操作入力部34bを備える。操作入力部34bは、遠隔運転者OPの遠隔運転のための操作を入力する機器である。車両20を実際に運転した場合に必要な操作を模擬するため、操作入力部34bは、操舵操作のためのステアリングホイール、加速操作のためのアクセルペダル、及び減速操作のためのブレーキペダルを備える。また、車両20が変速機を備えるのであれば、操作入力部34bも変速機のレバー或いはスイッチを備えてもよい。その他にも、車両20の方向指示器を操作するための操作レバーやワイパーを動作させる操作レバー等、安全な運転に必要な操作を入力するための機器が操作入力部34bに備えられる。
【0041】
通信装置38は、遠隔操作センタ30の外部との通信を制御する装置である。通信装置38は、通信ネットワーク10を介して1台又は複数台の車両20と通信を行う。サーバ32で処理された情報は、通信装置38を用いて車両20に送信される。車両20で処理された情報は、通信装置38を用いてサーバ32に取り込まれる。
【0042】
遠隔運転を行う場合、遠隔操作センタ30のサーバ32は、遠隔運転者OPによって操作された操作入力部34bの操作量を含んだ遠隔操作情報RINFを取得する。具体的には、遠隔操作情報RINFは、ステアリングホイール、アクセルペダル、及びブレーキペダルの操作量を含む。遠隔操作情報RINFは、通信ネットワーク10を介して車両20に送信される。車両20の車載コンピュータ21は、遠隔操作情報RINFに基づいて、車両20のアクチュエータ24を操作する。
【0043】
ここで、通信ネットワーク10を介した通信には遅延が発生する。このため、遠隔操作センタ30のサーバ32から車両20の車載コンピュータ21へ遠隔操作情報RINFを送信する際の通信に遅延が発生すると、遠隔操作情報RINFと車両20の実際の挙動とを同時系列で評価することができない。この場合、遠隔運転時の車両20の挙動が不安定となり、車両20が左右に蛇行する蛇行運転が行われるおそれがある。
【0044】
本実施形態に係る遠隔運転システム100では、遠隔運転時の蛇行運転を抑制する制御に特徴を有している。以下、遠隔運転時の蛇行運転抑制方法について、さらに詳しく説明する。
【0045】
2.第1実施形態に係る蛇行運転抑制方法
遠隔運転における蛇行運転抑制方法は、
図4に示す構成を有する第1実施形態に係る遠隔運転システム100によって実現することができる。
図4には、車載コンピュータ21が有する機能とサーバ32が有する機能とがそれぞれブロックで表されている。以下、車載コンピュータ21とサーバ32の各機能を中心に第1実施形態に係る遠隔運転システム100について説明する。ただし、既に説明した構成や機能については説明を省略するか或いは簡略化する。
【0046】
サーバ32は、遠隔操作情報取得部321と、送信部322と、を備える。遠隔操作情報取得部321と送信部322とは、それぞれが独立したECUでもよいし、1つのECUが有する機能であってもよい。
【0047】
遠隔運転が行われる場合、遠隔運転者OPは、操作入力部34bを操作する。遠隔操作情報取得部321は、遠隔運転者OPによる操作入力部34bの操作を受けて、当該操作入力部34bの操作量を含んだ遠隔操作情報RINFを取得する。取得された遠隔操作情報RINFは送信部322に送られる。
【0048】
送信部322は、通信装置38を用いて遠隔操作情報RINFを自動運転車両20の車載コンピュータ21へ送信する遠隔側通信部として機能する。
【0049】
車載コンピュータ21は、運転環境情報取得部211と、蛇行検出部212と、受信部213と、蛇行防止部214と、運動制御量演算部215と、を備える。これらの機能は、それぞれが独立したECUでもよいし、1つのECUが有する機能であってもよい。
【0050】
運転環境情報取得部211は、内部情報INT及び外部情報EXTを含んだ運転環境情報DINFをメモリ21bから取得する情報取得部として機能する。運転環境情報取得部211は、取得した運転環境情報DINFを蛇行検出部212に送る。
【0051】
蛇行検出部212は、遠隔運転時の車両20の蛇行状態の有無を検出し、蛇行状態情報として出力する。以下の説明では、この処理を「蛇行検出処理」と呼ぶ。蛇行検出処理では、蛇行検出部212は、運転環境情報DINFを用いて、車両20挙動に表される蛇行状態の有無を検出する。典型的には、蛇行検出部212は、内部情報INTに含まれる車両20の前方の画像に基づいて道路の白線を認識し、車両20が当該白線を所定回数跨いだか否かによって蛇行状態の有無を検出する。或いは、蛇行検出部212は、内部情報INT或いは外部情報EXTに含まれる車両挙動情報に基づいて車両挙動を検出する。ここでの車両挙動は、白線と車両20との角度或いは相対距離、車両20の横加速度、車両20の横位置、車両20の実操舵角、等が例示される。蛇行検出部212は、公知の周波数分析或いは機械学習の技術を用いて、車両挙動に蛇行を表す周期動作が含まれているかどうかを判定し、当該周期動作が含まれているか否かによって蛇行状態の有無を検出する。蛇行検出処理において検出された蛇行状態の検出有無は、蛇行状態情報として蛇行防止部214に随時送られる。
【0052】
受信部213は、遠隔操作センタ30から送信された遠隔操作情報RINFを通信装置25を用いて受信する車両側通信部として機能する。受信した遠隔操作情報RINFは、蛇行防止部214に送られる。
【0053】
蛇行防止部214は、蛇行検出処理において蛇行状態が検出されたことを示す蛇行状態情報が蛇行検出部212から送られた場合に、車両20の蛇行状態を抑えるための車両制御処理を実行する。以下の説明では、この処理を「蛇行防止処理」と呼ぶ。蛇行防止処理では、蛇行防止部214は、車両20の蛇行状態を抑えるための制限を遠隔操作情報RINFに加える。
図5は、蛇行防止処理において車両の上限速度を制限する方法の一例を説明するための図である。この図に示す例では、蛇行防止部214は、蛇行状態が検出された場合、蛇行状態が検出される前よりも車両20の上限速度Vmaxが小さくなるように設定する。この処理は、以下「上限速度設定処理」と呼ばれる。典型的には、上限速度設定処理では、蛇行防止部214は、蛇行状態が検出された場合、上限速度Vmaxを第一上限速度Vmax1から第二上限速度Vmax2(<Vmax1)に制限する。ここでの第二上限速度Vmax2は、車両20の蛇行運転を抑制可能な上限速度Vmaxとして、予め設定された値を用いることができる。
【0054】
蛇行防止部214は、車両20の車両速度が上限速度Vmaxを超えないように、遠隔操作情報RINFを調整する。この処理は、以下「調整処理」と呼ばれる。蛇行防止部214は、調整処理において、例えば遠隔操作情報RINFに含まれるアクセルペダルの操作量或いはブレーキペダルの操作量に対してガード処理、嵩上げ処理、ゲイン調整処理、等を行う。蛇行防止処理が施された後の遠隔操作情報RINFは、以下「調整遠隔操作情報」と呼ばれる。
【0055】
なお、上限速度設定処理における上限速度Vmaxの制限の方法に限定はない。ただし、急激な速度制限は後続車両の安全に係わるため、
図5に示す例では所定の時間をかけて徐々に第一上限速度Vmax1から第二上限速度Vmax2となるように上限速度Vmaxを段階的に制限している。
【0056】
図6は、蛇行防止処理において車両の上限速度を制限する方法の他の例を説明するための図である。この図に示すように、蛇行防止部214は、車両20の蛇行状態が検出された場合、車両20の第一上限速度Vmax1が第二上限速度Vmax2(<Vmax1)に向かって一次遅れ的に小さくなるように制限してもよい。
【0057】
或いは、蛇行防止部214は、蛇行防止処理において、上限速度Vmaxの制限に替えて或いは上限速度Vmaxの制限に加えて、車両20の舵角の限界値(限界舵角)に制限を設けてもよい。
図7は、蛇行防止処理において車両の限界舵角を制限する方法の一例を説明するための図である。この図に示す例では、蛇行防止部214は、蛇行状態が検出された場合、蛇行状態が検出される前よりも車両20の限界舵角θlimが小さくなるように設定する。この処理は、以下「限界舵角設定処理」と呼ばれる。典型的には、限界舵角設定処理では、蛇行防止部214は、蛇行状態が検出された場合、限界舵角θlimを第一限界舵角θlim1から第二限界舵角θlim2(<θlim1)に制限する。ここでの第二限界舵角θlim2は、車両20の蛇行運転を抑制可能な限界舵角θlimとして、予め設定された値を用いることができる。蛇行防止部214は、調整処理において、車両20の車両舵角が限界舵角θlimを超えないように、遠隔操作情報RINFに含まれるステアリングホイールの操作量に対してガード処理、嵩上げ処理、ゲイン調整処理、等を行う。
【0058】
なお、上限速度Vmaxと同様に、限界舵角設定処理における舵角の限界舵角θlimの制限の方法に限定はない。ただし、急激な舵角制限は車両挙動に影響を与えるおそれがあるため、
図7に示す例では所定の時間をかけて徐々に第一限界舵角θlim1から第二限界舵角θlim2となるように舵角の限界舵角θlimを段階的に制限する。
図8は、蛇行防止処理において車両の限界舵角を制限する方法の他の例を説明するための図である。この図に示すように、蛇行防止部214は、車両20が蛇行状態が検出された場合、車両20の第一限界舵角θlim1が第二限界舵角θlim2(<θlim1)に向かって一次遅れ的に小さくなるように時定数を調整してもよい。
【0059】
蛇行防止部214において蛇行防止処理が施された調整遠隔操作情報は、運動制御量演算部215に送られる。運動制御量演算部215では、調整遠隔操作情報に基づいて、車両20の運動制御量を生成する。ここでの運動制御量は、車両20の転舵角、加速度、減速度が例示される。車載コンピュータ21は、生成された運動制御量を実現するようにアクチュエータ24を操作する。
【0060】
以上のような遠隔運転時における蛇行運転抑制方法によれば、通信遅延に起因する車両20の蛇行運転を抑えることができる。これにより、遠隔運転における安全性を高めることが可能となる。
【0061】
3.第2実施形態に係る蛇行運転抑制方法
次に、本開示の第2実施形態に係る蛇行運転抑制方法について
図9及び
図10を用いて説明する。第1実施形態に係る蛇行運転抑制方法では、遠隔運転時の車両20が蛇行状態になった場合、車両20の蛇行状態を抑えるための蛇行防止処理を実行する。第2実施形態に係る蛇行運転抑制方法では、車両20の後続車両の検出有無に応じて、蛇行防止処理の実施有無を決定する。
【0062】
図9は、第2実施形態に係る蛇行防止処理において車両の上限速度を制限する方法の一例を説明するための図である。
図10は、第2実施形態に係る蛇行防止処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図10に示すルーチンのフローチャートは、蛇行検出処理において車両20の蛇行運転が検出された場合に実行される。
図10のルーチンのステップS100では、蛇行防止部214は、外部情報EXTに基づいて車両20に後続車両が存在するかどうかを判定する。外部センサ22は車両20の後方を撮像するバックモニタを含んでいる。ここでは、蛇行防止部214は、バックモニタによって得られる画像に公知の画像認識技術を適用することにより、所定のTTC(Time-To-Collision)の範囲に含まれる後続車両の有無を検出する。その結果、車両20の後続車両が検出された場合、車両20の上限速度Vmaxを下げると後続車両の交通阻害や安全性への問題が生じることも考えられる。そこで、蛇行防止部214は、上限速度設定処理の実行を保留し、車両20の上限速度Vmaxを第一上限速度Vmax1に維持して本ルーチンを終了する。一方、車両20の後続車両が検出されない場合、処理はステップS102に進む。ステップS102では、蛇行防止部214は、上限速度設定処理を実行することによって、車両20の上限速度Vmaxを第一上限速度Vmax1から第二上限速度Vmax2(<Vmax1)に制限する。なお、上限速度設定処理での上限速度Vmaxの制限方法は、第1実施形態と同様である。
【0063】
以上のような第2実施形態の蛇行防止処理によれば、車両20の後続車両の安全性を確保しつつ車両20の蛇行運転を抑制することが可能となる。
【0064】
4.第3実施形態に係る蛇行運転抑制方法
次に、本開示の第3実施形態に係る蛇行運転抑制方法について
図11及び
図12を用いて説明する。第2実施形態に係る蛇行運転抑制方法では、遠隔運転時の車両20が蛇行状態になった場合、後続車両の有無に応じて車両20の蛇行状態を抑えるための蛇行防止処理の実施タイミングを調整する。第3実施形態に係る蛇行運転抑制方法では、車両20の後続車両の有無に応じて、蛇行防止処理の制限度合を調整する。
【0065】
図11は、第3実施形態に係る蛇行防止処理において車両の上限速度を制限する方法の一例を説明するための図である。
図12は、第3実施形態に係る蛇行防止処理の流れを説明するためのフローチャートである。図
12に示すルーチンのフローチャートは、蛇行検出処理において車両20の蛇行運転が検出された場合に実行される。
図12のルーチンのステップS200では、蛇行防止部214は、外部情報EXTに基づいて車両20に後続車両が存在するかどうかを判定する。ここでは、蛇行防止部214は、上記ステップS100の処理と同様の処理を実行する。その結果、車両20の後続車両が検出されない場合、処理はステップS20
4に進み、車両20の後続車両が検出された場合、処理はステップS20
2に進む。
【0066】
ステップS202では、蛇行防止部214は、所定の時間をかけて徐々に第二上限速度Vmax2となるように、所定の大時定数にて車両20の上限速度Vmaxを第一上限速度Vmax1から第二上限速度Vmax2(<Vmax1)へと変化させる。一方、ステップS204では、蛇行防止部214は、大時定数よりも小さな所定の小時定数にて車両20の上限速度Vmaxを第一上限速度Vmax1から第二上限速度Vmax2(<Vmax1)へと変化させる。これにより、車両20の後続車両が検出された場合、後続車両が検出されない場合よりも第一上限速度Vmax1から第二上限速度Vmax2へと変化させる速度が低くなる。その結果、車両20の後続車両の安全性を確保しつつ車両20の蛇行運転を抑制することが可能となる。
【0067】
5.第4実施形態に係る蛇行運転抑制方法
次に、本開示の第4実施形態に係る蛇行運転抑制方法について
図13及び
図14を用いて説明する。第1実施形態に係る蛇行運転抑制方法では、遠隔運転時の車両20が蛇行状態になった場合、車両20の蛇行状態を抑えるための蛇行防止処理を実行する。第4実施形態に係る蛇行運転抑制方法では、車両20の車線逸脱の可能性の有無に応じて、蛇行防止処理の実施有無を決定する。
【0068】
図13は、第4実施形態に係る蛇行防止処理において車両の限界舵角を制限する方法の一例を説明するための図である。
図14は、第4実施形態に係る蛇行防止処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図14に示すルーチンのフローチャートは、蛇行検出処理において車両20の蛇行運転が検出された場合に実行される。
図14のルーチンのステップS300では、蛇行防止部214は、運転環境情報DINFに基づいて、車両20が車線を逸脱する可能性があるかどうかを判定する。ここでは、蛇行防止部214は、公知のレーンデパーチャ―アラート(LDA: Lane Departure Alert)に用いられる車線逸脱の検出技術を用いることができる。
【0069】
ステップS300の判定の結果、車両20の車線逸脱の可能性があると判定された場合、限界舵角θlimに更に制限を設けることで車両20が車線に戻るための転舵を阻害する可能性があると判断することができる。そこで、車両20の車線逸脱の可能性があると判定された場合、蛇行防止部214は、限界舵角設定処理の実行を保留し、車両20の限界舵角θlimを第一限界舵角θlim1に維持して本ルーチンを終了する。一方、車両20の車線逸脱の可能性がないと判定された場合、処理はステップS302に進む。ステップS302では、蛇行防止部214は、限界舵角設定処理を実行することによって、車両20の限界舵角θlimを第一限界舵角θlim1から第二限界舵角θlim2(<θlim1)に制限する。なお、限界舵角設定処理での限界舵角θlimの制限方法は、第1実施形態と同様である。
【0070】
以上のような第4実施形態の蛇行防止処理によれば、車両20の安全性を確保しつつ車両20の蛇行運転を抑制することが可能となる。
【0071】
6.その他実施形態
蛇行防止処理は、運動制御量演算部215において演算された運動制御量に対して制限を設ける構成でもよい。
図15は、遠隔運転システム100の変形例を示す機能ブロック図である。この図に示す変形例では、受信部213が受信した遠隔操作情報RINFは、運動制御量演算部216に送られる。運動制御量演算部216は、遠隔操作情報RINFに基づいて、車両20の運動制御量を演算する。演算した運動制御量は蛇行防止部217に送られる。
【0072】
蛇行防止部217は、蛇行検出処理において蛇行状態が検出されたことを示す蛇行状態情報が蛇行検出部212から送られた場合に蛇行防止処理を実行する。蛇行防止処理では、蛇行防止部214は、車両20の蛇行状態を抑えるための制限を運動制御量に対して加える。このような処理によっても、車両20の安全性を確保しつつ車両20の蛇行運転を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
10 通信ネットワーク
20 自動運転車両
21 車載コンピュータ
21a プロセッサ
21b メモリ
21c プログラム
22 外部センサ
23 内部センサ
24 アクチュエータ
25 通信装置
30 遠隔操作センタ
32 サーバ
32a プロセッサ
32b メモリ
32c プログラム
34 遠隔運転端末
34a 情報出力部
34b 操作入力部
38 通信装置
100 遠隔運転システム
211 運転環境情報取得部
212 蛇行検出部
213 受信部
214,217 蛇行防止部
215,216 運動制御量演算部
321 遠隔操作情報生成部
322 送信部