(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 37/24 20060101AFI20240709BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20240709BHJP
F02B 37/02 20060101ALI20240709BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20240709BHJP
F01D 17/16 20060101ALI20240709BHJP
F01D 9/06 20060101ALI20240709BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F02B37/24
F02B39/00 E
F02B37/02 C
F01D9/02 101
F01D17/16 A
F01D9/06
F01D25/24 E
(21)【出願番号】P 2021101850
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2023-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】水野 智仁
(72)【発明者】
【氏名】樹杉 剛
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-329032(JP,A)
【文献】特開平03-233137(JP,A)
【文献】特公昭46-014170(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0345433(US,A1)
【文献】実開昭54-040313(JP,U)
【文献】特開2012-159089(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129192(WO,A1)
【文献】特開2001-263083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0102473(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009014004(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F02B 39/00
F02B 37/02
F01D 9/02
F01D 17/16
F01D 9/06
F01D 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンホイールと、
前記タービンホイールの外周に配置されたタービンスクロール部と、
内燃機関の排気ガスを前記タービンスクロール部へ導くガス導入路と、
前記タービンスクロール部の内側に配置され、当該タービンスクロール部の周方向に間隔を空けて配置され
るとともに、ピンの中心軸線を回動中心として回動する複数のノズルベーンと、
前記タービンスクロール部での前記排気ガスの流れ方向に隣り合う前記ノズルベーン同士の間に画成されるガス流路と、
を有し、前記排気ガスのエネルギーを用いて過給するターボチャージャであって、
前記ノズルベーンは、前記ガス流路への前記排気ガスの入口側に位置する前端を含む入口前縁部と、前記ガス流路での前記排気ガスの出口側に位置する後端を含む出口後縁部と、
前記入口前縁部と前記出口後縁部を繋ぐ接続部と、を有し、
前記前端と前記後端を結ぶ翼中心線に沿う前記ノズルベーンの長さを全長とすると、
前記入口前縁部は、前記前端から前記全長の10~40%の長さの領域に設けられた円弧状であり、前記入口前縁部の円弧の曲率半径は前記全長の10%以上の長さである、
又は前記入口前縁部は、前記前端から前記全長の10~40%の長さの領域に設けられた複数の円弧を含む形状であり、前記複数の円弧のうち最小の円弧の曲率半径は、前記全長の10%以上の長さであり
、
前記ピンは前記接続部に一体化されているとともに、前記ピンの軸線方向に前記ノズルベーンを見た平面視において、前記ピンよりも前記前端側に、前記入口前縁部における前記円弧の前記曲率半径での円が位置しているターボチャージャ。
【請求項2】
タービンホイールと、
前記タービンホイールの外周に配置されたタービンスクロール部と、
内燃機関の排気ガスを前記タービンスクロール部へ導くガス導入路と、
前記タービンスクロール部の内側に配置され、当該タービンスクロール部の周方向に間隔を空けて配置され
るとともに、ピンの中心軸線を回動中心として回動する複数の可動式のノズルベーンと、
前記タービンスクロール部での前記排気ガスの流れ方向に隣り合う前記ノズルベーン同士の間に画成されるガス流路と、
を有し、前記タービンスクロール部は、前記ガス導入路の出口にて二股に分岐した二つの流路を含み、
二股に分岐した一方の流路に流入した前記排気ガスの流れる向きと、他方の流路に流入した前記排気ガスの流れる向きは、前記タービンスクロール部の周方向に相反しており、
前記排気ガスのエネルギーを用いて過給するとともに前記ノズルベーンによって前記ガス流路を流れる前記排気ガスの流れを調整するターボチャージャであって、
前記ノズルベーンは、前記ガス流路への前記排気ガスの入口側に位置する前端を含む入口前縁部と、前記ガス流路での前記排気ガスの出口側に位置する後端を含む出口後縁部と、
前記入口前縁部と前記出口後縁部を繋ぐ接続部と、前記前端と前記後端を繋ぐ外表面及び内表面と、を有し、
前記前端から前記後端に向けた前記ノズルベーンの板厚の変化の割合を変化率とすると、
前記入口前縁部は、前記変化率を前記出口後縁部を含む部位での前記変化率より大きくした変化率大部であり、
前記出口後縁部は、前記変化率大部よりも前記変化率の小さい変化率小部を含み、
前記変化率大部は前記前端を含む円弧状であ
り、
前記ピンは前記接続部に一体化されているとともに、前記ピンの軸線方向に前記ノズルベーンを見た平面視において、前記ピンよりも前記前端側に、前記変化率大部における円弧の曲率半径での円が位置しているターボチャージャ。
【請求項3】
前記ノズルベーンは、前記前端と前記後端とを結ぶ翼中心線を有し、前記翼中心線に沿う前記ノズルベーンの長さを全長とすると、前記変化率大部は、前記前端から前記全長の10~40%の長さの領域に設けられた円弧状であり、前記変化率大部の円弧の曲率半径は前記全長の10%以上の長さである、又は前記変化率大部は、前記前端から前記全長の10~40%の長さの領域に設けられた複数の円弧を含む形状であり、前記複数の円弧のうち最小の円弧の曲率半径は、前記全長の10%以上の長さである請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記ノズルベーンは、前記翼中心線が直線状である、又は前記翼中心線が、前記後端から前記前端に向けて直線状に延びた後、前記前端に向かうに従い前記タービンスクロール部に近づくように前記外表面が湾曲している請求項3に記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記翼中心線は、前記後端から前記前端に向けて直線状に延びた後、前記前端に向かうに従い前記タービンスクロール部に近づくように前記外表面が湾曲している請求項4に記載のターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャは、内燃機関の排気ガスのエネルギーを用いて内燃機関に過給する。ターボチャージャは、タービンホイールと、タービンホイールの外周に配置されたタービンスクロール部を有する。また、ターボチャージャは、タービンスクロール部内に複数のノズルベーンを有する。複数のノズルベーンは、タービンホイールの外周部に、タービンホイールの周方向へ等間隔おきに配置されている。周方向に隣り合うノズルベーン同士の間は、排気ガスの流れるガス流路である。ノズルベーンは、タービンスクロール部からタービンホイールに向かう排気ガスの流れを整えるとともに、流速を調節する。
【0003】
特許文献1に開示されるノズルベーンは、所謂可変ノズルベーンである。可変ノズルベーンを備えるターボチャージャでは、排気ガスの流量の少ないときは、可変ノズルベーンによってガス流路を閉じる。すると、タービンホイールへ向かう排気ガスの流れが速められる。このようにして可変ノズルベーンを備えるターボチャージャではタービンホイールへの排気ガスの流入効率を高めている。
【0004】
固定ノズルベーンを備えるターボチャージャでは、ノズルベーンは、設計段階で設定された所定の傾き角度に固定されている。所定の傾き角度とは、狙いの排気ガスの流量域で、所望する排気ガスの流入効率が得られる角度である。このようにして固定ノズルベーンを備えるターボチャージャではタービンホイールへの排気ガスの流入効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ターボチャージャでは、タービンホイールへの排気ガスの流入効率の向上が常に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するためのターボチャージャは、タービンホイールと、前記タービンホイールの外周に配置されたタービンスクロール部と、内燃機関の排気ガスを前記タービンスクロール部へ導くガス導入路と、前記タービンスクロール部の内側に配置され、当該タービンスクロール部の周方向に間隔を空けて配置された複数のノズルベーンと、前記タービンスクロール部での前記排気ガスの流れ方向に隣り合う前記ノズルベーン同士の間に画成されるガス流路と、を有し、前記排気ガスのエネルギーを用いて過給するターボチャージャであって、前記ノズルベーンは、前記ガス流路への前記排気ガスの入口側に位置する前端を含む入口前縁部と、前記ガス流路での前記排気ガスの出口側に位置する後端を含む出口後縁部と、を有し、前記前端と前記後端を結ぶ翼中心線に沿う前記ノズルベーンの長さを全長とすると、前記入口前縁部は、前記前端から前記全長の10~40%の長さの領域に設けられた円弧状であり、前記入口前縁部の円弧の曲率半径は前記全長の10%以上の長さである、又は前記入口前縁部は、前記前端から前記全長の10~40%の長さの領域に設けられた複数の円弧を含む形状であり、前記複数の円弧のうち最小の円弧の曲率半径は、前記全長の10%以上の長さであることを要旨とする。
【0008】
全長の10%未満の長さを曲率半径とする円弧を単独、又は複数の円弧のうちの一つとして有する入口前縁部を比較例とする。この比較例と比べると、入口前縁部の円弧の長さを長くできるため、入口前縁部に沿ってガス流路に至るまでの円弧の長さを長くできる。その結果、排気ガスの流れ方向に隣り合うノズルベーン同士の入口前縁部と出口後縁部との間で、ノズルとして機能する部位を比較例より長くできる。その結果、隣り合うノズルベーン同士の間でのノズル機能により、排気ガスの流速を比較例より速めることができるため、入口前縁部からガス流路に向けて排気ガスが流れ易くなる。したがって、ターボチャージャでは、タービンホイールへの排気ガスの流入効率を向上できる。
【0009】
上記問題点を解決するためのターボチャージャは、タービンホイールと、前記タービンホイールの外周に配置されたタービンスクロール部と、内燃機関の排気ガスを前記タービンスクロール部へ導くガス導入路と、前記タービンスクロール部の内側に配置され、当該タービンスクロール部の周方向に間隔を空けて配置された複数の可動式のノズルベーンと、前記タービンスクロール部での前記排気ガスの流れ方向に隣り合う前記ノズルベーン同士の間に画成されるガス流路と、を有し、前記タービンスクロール部は、前記ガス導入路の出口にて二股に分岐した二つの流路を含み、二股に分岐した一方の流路に流入した前記排気ガスの流れる向きと、他方の流路に流入した前記排気ガスの流れる向きは、前記タービンスクロール部の周方向に相反しており、前記排気ガスのエネルギーを用いて過給するとともに前記ノズルベーンによって前記ガス流路を流れる前記排気ガスの流れを調整するターボチャージャであって、前記ノズルベーンは、前記ガス流路への前記排気ガスの入口側に位置する前端を含む入口前縁部と、前記ガス流路での前記排気ガスの出口側に位置する後端を含む出口後縁部と、前記前端と前記後端を繋ぐ外表面及び内表面と、を有し、前記前端から前記後端に向けた前記ノズルベーンの板厚の変化の割合を変化率とすると、前記入口前縁部は、前記変化率を前記出口後縁部を含む部位での前記変化率より大きくした変化率大部であり、前記出口後縁部は、前記変化率大部よりも前記変化率の小さい変化率小部を含み、前記変化率大部は前記前端を含む円弧状であることを要旨とする。
【0010】
これによれば、二股に分岐した二つの流路に沿って排気ガスが流れるに従い、排気ガスの流れが遅くなる。加えて、ノズルベーンの入口前縁部が変化率小部で形成されている場合では、排気ガスは、入口前縁部から剥離しやすい。しかし、入口前縁部を変化率大部とし、変化率小部よりも円弧を長くすることにより、排気ガスが、入口前縁部の円弧に沿って流れて入口前縁部から剥離し難くなる。その結果、ノズルベーンの内表面付近に排気ガスを効率良く流れ込ませることができる。このため、ノズルベーンの内表面付近が排気ガスより負圧になることが抑制される。その結果、ノズルベーンの入口前縁部側が排気ガスの圧力を受けて、ガス流路を閉じる方向にノズルベーンが回動することを抑制できる。したがって、ターボチャージャでは、タービンホイールへの排気ガスの流入効率を向上できる。
【0011】
ターボチャージャについて、前記ノズルベーンは、前記前端と前記後端とを結ぶ翼中心線を有し、前記翼中心線に沿う前記ノズルベーンの長さを全長とすると、前記変化率大部は、前記前端から前記全長の10~40%の長さの領域に設けられた円弧状であり、前記変化率大部の円弧の曲率半径は前記全長の10%以上の長さである、又は前記変化率大部は、前記前端から前記全長の10~40%の長さの領域に設けられた複数の円弧を含む形状であり、前記複数の円弧のうち最小の円弧の曲率半径は、前記全長の10%以上の長さであることが好ましい。
【0012】
これによれば、変化率大部での円弧を長く確保でき、ノズルベーンによってガス流路を開いたとき、排気ガスが入口前縁部からより一層剥離し難くなる。
ターボチャージャについて、前記ノズルベーンは、前記翼中心線が直線状である、又は前記翼中心線が、前記後端から前記前端に向けて直線状に延びた後、前記前端に向かうに従い前記タービンスクロール部に近づくように前記外表面が湾曲していてもよい。
【0013】
参考例のノズルベーンを以下のようにする。参考例のノズルベーンは、翼中心線が、後端から前端に向けて直線状に延びた後、入口前縁部付近において内表面が膨らむように湾曲している。この参考例と比べると、排気ガスが入口前縁部の円弧に沿って流れて入口前縁部から剥離し難くなる。
【0014】
ターボチャージャについて、前記翼中心線は、前記後端から前記前端に向けて直線状に延びた後、前記前端に向かうに従い前記タービンスクロール部に近づくように前記外表面が湾曲していてもよい。
【0015】
これによれば、参考例と比べると、排気ガスが入口前縁部の円弧に沿って流れて入口前縁部から剥離し難くなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タービンホイールへの排気ガスの流入効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】ユニソンリング、連結アーム、及びノズルベーンを示す図。
【
図6】ガス流路の流路断面積が最小の状態を示す拡大図。
【
図7】タービン入口ガス流量とターボ総合効率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、ターボチャージャを具体化した一実施形態を
図1~
図7にしたがって説明する。
<全体構成>
図1及び
図2に示すように、ターボチャージャ10は、コンプレッサ11とタービン12とを有する。ターボチャージャ10は、図示しない内燃機関の排気ガスのエネルギーを用いて過給する。
【0019】
<コンプレッサ11>
コンプレッサ11は、タービン12のタービンホイール13とともに回転する図示しないコンプレッサホイールと、吸気流入口18と、図示しない吸気吐出口を有している。
【0020】
<タービン12>
タービン12は、タービンホイール13と、タービンスクロール部14と、第1ガス導入路15a及び第2ガス導入路15bと、第1ガス流入口16a及び第2ガス流入口16bと、ガス吐出口17と、可動式の複数のノズルベーン30と、を有する。
【0021】
タービンホイール13は、回転軸線Lを中心に回転する。タービンスクロール部14は、タービンホイール13の外周に配置されている。タービンスクロール部14は、タービンホイール13の外周の周方向に連続する1周分のみが形成されている。タービンスクロール部14は、第1ガス導入路15aの出口と第2ガス導入路15bの出口から二股に分岐してタービンホイール13を取り囲む。
【0022】
タービンスクロール部14は、第1ガス導入路15aの出口と第2ガス導入路15bの出口にて二股に分岐した第1流路14aと第2流路14bを含む。第1流路14aには、第1ガス導入路15aから排気ガスが流入する。第2流路14bには、第2ガス導入路15bから排気ガスが流入する。回転軸線Lに沿ってタービンスクロール部14を見た平面視では、第1流路14aに流入した排気ガスは、一方方向としての時計回り方向に流れるとともに、第2流路14bに流入した排気ガスは、他方方向としての反時計回り方向に流れる。したがって、一方の流路である第1流路14aに流入した排気ガスの流れる向きと、他方の流路である第2流路14bに流入した排気ガスの流れる向きは、タービンスクロール部14の周方向に相反している。
【0023】
したがって、本実施形態のターボチャージャ10は、タービン12に流入した排気ガスを、二つの流路に分岐させてタービンスクロール部14に流す方式を採用している。この方式のターボチャージャ10では、第1流路14aの流路断面積と、第2流路14bの流路断面積は、タービンスクロール部14の周方向のいずれの位置でも同じ又は略同じである。このため、タービンスクロール部14の周方向に沿った、第1流路14aの流路断面積の変化量はゼロ又は僅かである。同じく、タービンスクロール部14の周方向に沿った、第2流路14bの流路断面積の変化量はゼロ又は僅かである。なお、第1流路14aの流路断面積と、第2流路14bの流路断面積とは同じ又は略同じである。
【0024】
第1ガス導入路15aと第2ガス導入路15bは、図示しない排気管に接続されている。第1ガス導入路15a及び第2ガス導入路15bは、図示しない内燃機関の排気ガスをタービンスクロール部14へ導く。
【0025】
第1ガス流入口16aは、第1ガス導入路15aの流入側に配置されている。第2ガス流入口16bは、第2ガス導入路15bの流入側に配置されている。第1ガス流入口16a及び第2ガス流入口16bは、開口面積がほぼ同じとなるように隔壁27aによって分割されている。隔壁27aは、第1ガス導入路15a内における第1ガス流入口16aからノズルベーン30に達するまでの位置に設けられるとともに、第2ガス導入路15b内における第2ガス流入口16bからノズルベーン30に達するまでの位置に設けられている。
【0026】
タービンスクロール部14内における第1ガス導入路15a及び第2ガス導入路15bとは反対側となる位置の周辺には、流路末端隔壁27bが配置されている。流路末端隔壁27bは、タービンスクロール部14の内周面からノズルベーン30に至るように設けられている。流路末端隔壁27bは、タービンスクロール部14を、時計回り方向に排気ガスを旋回させる第1流路14aと、反時計回り方向に排気ガスを旋回させる第2流路14bと、に分割している。そして、流路末端隔壁27bは、第1流路14aに沿って時計回り方向に旋回してきた排気ガスと、第2流路14bに沿って反時計回り方向に旋回してきた排気ガスとが衝突して干渉することを防止している。
【0027】
複数のノズルベーン30は、タービンスクロール部14の内側に配置されている。複数のノズルベーン30は、タービンスクロール部14内におけるタービンホイール13の外周部に配置されている。各ノズルベーン30は、ノズルプレート24に支持されている。各ノズルベーン30は、タービンホイール13に吹き付けられる排気ガスの流れを整える。複数のノズルベーン30は、タービンホイール13の周方向に沿って等間隔おきに配置されている。タービンスクロール部14での排気ガスの流れ方向に隣り合うノズルベーン30同士の間には、ガス流路39が画成される。ガス流路39の流路断面積は、ノズルベーン30の開度を調節することにより変更される。したがって、各ノズルベーン30は、ガス流路39を流れる排気ガスの流れを調整する。
【0028】
各ノズルベーン30には、当該ノズルベーン30から突出するピン29が一体化されている。各ノズルベーン30はピン29の中心軸線を回動中心として回動する。ピン29は、ノズルプレート24を貫通している。
【0029】
図3に示すように、ノズルプレート24を貫通したピン29は、連結アーム50の第1端部50aに取り付けられている。連結アーム50の第2端部50bは、ユニソンリング25に連結されている。ユニソンリング25は、ノズルベーン30と同じ数の連結溝26を有する。ユニソンリング25は、当該ユニソンリング25の中心軸線とタービンホイール13の回転軸線Lと一致するようにノズルプレート24に重ねて配置されている。
【0030】
ユニソンリング25の連結溝26の各々には、連結アーム50の第2端部50bが連結されている。なお、連結溝26の内面と、連結アーム50の第2端部50bとの間には、ユニソンリング25の周方向に若干の隙間が存在する。
【0031】
図1及び
図2に示すように、ターボチャージャ10は、ノズルベーン駆動部21と、エンコーダ等のノズルベーン開度検出部22と、ノズルベーン駆動部21からの動力をユニソンリング25に伝達するアーム23及びリンク部材28と、を有する。アーム23の先端部にはリンク部材28の第1端部が揺動可能に連結されている。リンク部材28の第2端部には図示しない軸が回動可能に支持されている。図示しない軸には駆動アーム49の第1端部が揺動可能に連結されている。駆動アーム49の第2端部は、ユニソンリング25に連結されている。
【0032】
ターボチャージャ10において、図示しない制御装置は、図示しない内燃機関の運転状態に基づいて、ノズルベーン30の目標開度を算出する。制御装置は、ノズルベーン開度検出部22を用いて検出したノズルベーン30の開度が目標開度に近づくようにノズルベーン駆動部21を制御する。ノズルベーン駆動部21によってアーム23が駆動される結果、リンク部材28が揺動するとともに、図示しない軸が回動する。すると、駆動アーム49が揺動してユニソンリング25が回動する。ユニソンリング25の回動に伴ってノズルベーン30は、ユニソンリング25の回動する方向に移動する。
【0033】
ノズルベーン30の移動によりノズルベーン30の開度が調節されると、隣り合うノズルベーン30の同士の間隔が調節される。これにより、ガス流路39の流路断面積が調節されるとともに、タービンスクロール部14からタービンホイール13へ流れる排気ガスの流れ方向と流速が調整される。
【0034】
<ノズルベーン30の詳細>
次に、ノズルベーン30について詳細に説明する。
ノズルベーン30をピン29の軸線方向に沿って見ることを平面視とする。
【0035】
図2及び
図4に示すように、ノズルベーン30は、入口前縁部31と、出口後縁部32と、接続部33と、を有する。入口前縁部31は、タービンスクロール部14からタービンホイール13に向けて排気ガスが流入する方向の入口側に位置する。出口後縁部32は、タービンスクロール部14からタービンホイール13に向けて排気ガスが流入する方向の出口側に位置する。接続部33は、入口前縁部31と出口後縁部32を繋ぐ。
【0036】
ノズルベーン30の入口前縁部31と出口後縁部32を結ぶ複合曲線を翼中心線35とする。ノズルベーン30は、入口前縁部31と翼中心線35とが交わる位置に前端30aを有するとともに、出口後縁部32と翼中心線35とが交わる位置付近に後端30bを有する。したがって、ノズルベーン30は、ガス流路39への排気ガスの入口側に位置する前端30aを含む入口前縁部31と、ガス流路39での排気ガスの出口側に位置する後端30bを含む出口後縁部32と、を有する。
【0037】
ノズルベーン30は、平面視で前端30aと後端30bを繋ぐ内表面41及び外表面42を有する。外表面42は、内表面41よりもタービンスクロール部14寄りの面である。平面視で、内表面41と外表面42の間の寸法をノズルベーン30の板厚とすると、外表面42は、内表面41とは板厚方向に反対の面である。翼中心線35は、平面視でノズルベーン30の板厚方向の中心を通る。
【0038】
入口前縁部31は、第1曲率半径R1の円弧によって画定されている。つまり、入口前縁部31は、単独の円弧によって画定されている。平面視で、入口前縁部31は滑らかに湾曲する円弧状である。出口後縁部32は、第1曲率半径R1より遙かに小さい第2曲率半径R2の円弧によって画定されている。
【0039】
ノズルベーン30は、平面視で入口前縁部31と接続部33との境界となる位置に前側変曲点Pfを有する。また、ノズルベーン30は、平面視で出口後縁部32と接続部33との境界となる位置に後側変曲点Pbを有する。
【0040】
接続部33での内表面41は、平面視で複合曲線状である。接続部33での内表面41は、前側変曲点Pfと後側変曲点Pbとの間を延びる。入口前縁部31での内表面41は、前側変曲点Pfから前端30aに至るまで円弧状に延びる。
【0041】
接続部33での外表面42は、平面視で複合曲線状に延びる。接続部33での外表面42は、後側変曲点Pbからピン29付近までは緩やかに膨らむように湾曲しつつ、ピン29付近で内表面41に向けて緩やかに凹むように湾曲して前側変曲点Pfに至る。入口前縁部31での外表面42は、前側変曲点Pfから前端30aに至るまで円弧状に延びる。入口前縁部31全体は、一定の曲率半径を有する円弧状である。
【0042】
したがって、平面視で、ノズルベーン30は、翼中心線35が、後端30bから前端30aに向けて複合曲線状に延びた後、ピン29付近、つまり入口前縁部31付近において前端30aに向かうに従いタービンスクロール部14に近づくように湾曲している。このため、平面視で、入口前縁部31は、タービンスクロール部14に向けて外表面42が膨らむ形状となっている。言い換えると、入口前縁部31は、内表面41側においてはタービンホイール13に向けて膨らんでいないといえる。
【0043】
ここで、ノズルベーン30の前端30aから後端30bに向けた板厚の変化の割合を変化率とする。平面視で、入口前縁部31は第1曲率半径R1の円弧を有する。このため、ノズルベーン30の板厚は、入口前縁部31では、前端30aから前側変曲点Pfに向けて一定の変化率で大きくなる。さらに、ノズルベーン30の板厚は、前側変曲点Pfから後端30bに向けて、ピン29付近で、入口前縁部31より小さい変化率で小さくなる。そして、ノズルベーン30の板厚は、ピン29付近から後端30bに向けて入口前縁部31より小さい変化率で徐々に小さくなる。
【0044】
言い換えると、ノズルベーン30の板厚の変化率は、前端30aから前側変曲点Pfに向けて急激に大きくなった後、前側変曲点Pfを越えると急激に小さくなる。入口前縁部31は、前側変曲点Pfよりも後端30b側でタービンスクロール部14に向けて外表面42が急激に膨らんでいる。
【0045】
ノズルベーン30について、入口前縁部31を変化率大部51とする。これに対し、ノズルベーン30の後端30bからピン29に至るまでの部位は、変化率が入口前縁部31よりも小さい。このため、ノズルベーン30の後端30bからピン29に至るまでの部位を変化率小部52とする。したがって、ノズルベーン30は、前端30aを含む部位に変化率大部51を有するとともに、後端30bを含む部位に、変化率大部51よりも変化率の小さい変化率小部52を有する。よって、入口前縁部31は、変化率を出口後縁部32を含む部位での変化率より大きくした変化率大部51であるといえる。
【0046】
翼中心線35は、ノズルベーン30の板厚の中心を通る。このため、本実施形態では、翼中心線35の形状は、板厚の変化率を示しているといえる。翼中心線35は、ピン29よりも前端30a側で傾きを大きくして傾斜している。このため、ノズルベーン30は、ピン29よりも前端30a側に位置する入口前縁部31に変化率大部51を有するといえる。
【0047】
前端30aと後端30bを結ぶ翼中心線35に沿うノズルベーン30の長さを全長Mとする。変化率大部51、つまり入口前縁部31は、前端30aから翼中心線35に沿って全長Mの10~40%の長さの領域に設けられている。また、変化率大部51、つまり入口前縁部31の第1曲率半径R1は、全長Mの10%以上の長さである。本実施形態では、第1曲率半径R1は、翼中心線35の全長Mの15%に設定されている。このように第1曲率半径R1を設定することにより、出口後縁部32を含む変化率小部52を有するノズルベーン30であっても、入口前縁部31の外表面42側をタービンスクロール部14側に急激に膨らませた形状にしている。
【0048】
ノズルベーン30において、内表面41側の前側変曲点Pf付近は、排気ガスの流れ方向において上流側に隣り合うノズルベーン30との間にガス流路39の流路断面積が最小となるスロート部を構成するスロート部構成部44として構成されている。
【0049】
各ノズルベーン30において、このスロート部構成部44よりも前端30a側に位置する面は平面視円弧状のノズル形成面34である。ノズル形成面34は、上流側に隣り合うノズルベーン30の外表面42との間で、ガス流路39を絞るノズルとして機能する。
【0050】
<作用>
次に、ターボチャージャ10の作用を説明する。
まず、比較例のノズルベーン70について説明する。
【0051】
図5に示すように、比較例のノズルベーン70をピン80の軸線方向に沿って見ることを平面視とする。ノズルベーン70は、タービンスクロール部14からタービンホイール13に向けて排気ガスが流入する側に入口前縁部71を有する。ノズルベーン70は、タービンホイール13に近い縁部に出口後縁部72を有する。また、ノズルベーン70は、入口前縁部71と出口後縁部72を繋ぐ接続部73を有する。
【0052】
ノズルベーン70の入口前縁部71と出口後縁部72を結ぶ直線を翼中心線75とする。翼中心線75は、ノズルベーン70の板厚方向の中心を通る。ノズルベーン70は、当該ノズルベーン70の平面視で、入口前縁部71と翼中心線75と交わる位置に前端70aを有する。ノズルベーン70は、当該ノズルベーン70の平面視で、出口後縁部72と翼中心線75と交わる位置付近に後端70bを有する。
【0053】
入口前縁部71は、第3曲率半径R3、第4曲率半径R4及び第5曲率半径R5を有する曲線を含む多円弧状に画定されている。第4曲率半径R4は第3曲率半径R3より小さく、第5曲率半径R5は、第3曲率半径R3より大きい。ノズルベーン30の平面視で、入口前縁部71は多円弧状の部位である。第3~第5曲率半径R3~R5は、翼中心線75の全長の10%に満たない長さである。したがって、入口前縁部71は、翼中心線75の全長の10%未満を曲率半径とする円弧状である。出口後縁部72は、第3~第5曲率半径R3~R5より小さい第6曲率半径R6を有する曲線を含む円弧状に画定されている。
【0054】
比較例の第3~第5曲率半径R3~R5は、第1曲率半径R1より小さく、比較例の第6曲率半径R6は第2曲率半径R2とほぼ同じである。
ノズルベーン70は、前端70aと後端70bを繋ぐ内表面74と外表面76とを有する。内表面74及び外表面76は、入口前縁部71と出口後縁部72の間を複合曲線状に延びる。
【0055】
ノズルベーン70の平面視で、内表面74と外表面76との間の寸法を板厚とする。ノズルベーン70の板厚は、翼中心線75に沿って前端70aから後端70bに向けて板厚が徐々に大きくなった後、徐々に小さくなる。
【0056】
ノズルベーン70の板厚の変化率は、入口前縁部71では、前端70aから一定の変化率で大きくなる。その後、板厚の変化率は、出口後縁部72に向けてほぼ一定の変化率で小さくなる。したがって、ノズルベーン70は、前端70aと後端70bとの間の全体で変化率小部といえる。
【0057】
次に、ターボチャージャ10の作用効果を説明する。なお、内燃機関から排出された排気ガスの流量が少なく、ノズルベーン30の開度が閉じ側に調節されてガス流路39の流路断面積が小さくなるように調節されているとする。
【0058】
さて、
図2に示すように、タービンホイール13は反時計回り方向に回転する。第1ガス流入口16aから第1ガス導入路15aに流入した排気ガスは、第1流路14aを時計回り方向に旋回する。この時計回り方向に旋回する排気ガスは、ノズルベーン30によって反時計回り方向に旋回してガス流路39に向かうように流れ方向が整えられる。
【0059】
第2ガス流入口16bから第2ガス導入路15bに流入した排気ガスは、第2流路14bを反時計回り方向に旋回する。反時計回り方向に旋回する排気ガスは、ノズルベーン30によって、流れ方向はそのまま反時計回り方向にガス流路39に向かうように流れが整えられる。
【0060】
このようなターボチャージャ10では、排気ガスは、第1流路14aに流入する排気ガスと、第2流路14bに流入する排気ガスの二つに分かれてタービンスクロール部14を流れる。第1流路14a及び第2流路14bの流路断面積の各々は、タービンスクロール部14の周方向に変化量がゼロ又は僅かである。このため、第1流路14aに流入した排気ガスの流れが徐々に遅くなるとともに、第2流路14bに流入した排気ガスの流れが徐々に遅くなっていく。また、第1流路14aに流入した排気ガスは、ノズルベーン30付近で反時計回り方向に沿って流れ難く、ノズルベーン30に対し、放射方向に流れ込んでくる。同じく、第2流路14bに流入した排気ガスは、ノズルベーン30付近で反時計回り方向に沿って流れ難く、ノズルベーン30に対し、放射方向に流れ込んでくる。
【0061】
比較例のノズルベーン70と比べると、入口前縁部31の円弧の長さを長くできるため、前端30aからガス流路39に至るまでの円弧の長さを長くできる。その結果、
図6に示すように、ノズルベーン30の開度が閉じ側に調節されていても、排気ガスの流れ方向に隣り合うノズルベーン30同士の入口前縁部31と出口後縁部32との間で、ノズルとして機能する部位を比較例より長く確保できる。
【0062】
このため、隣り合うノズルベーン30同士の間でのノズルとしての機能により、排気ガスの流速を速めることができるため、入口前縁部31からガス流路39に向けて排気ガスが流れ易くなる。
【0063】
一方、内燃機関から排出された排気ガスの流量が多くなり、ノズルベーン30の開度が開き側に調節されてガス流路39の流路断面積が大きくなるように調節された場合であっても、排気ガスは、第1曲率半径R1の円弧に沿って流れやすい。このため、ノズルベーン30の入口前縁部31側の内表面41付近が排気ガスより負圧になることが抑制される。このため、ノズルベーン30が排気ガスの圧力を受けて、ノズルベーン30がガス流路39を閉じる方向に回動することを抑制できる。このため、ノズルベーン30の入口前縁部31付近には回転トルクが適切に発生することになる。
【0064】
すると、各ノズルベーン30に連結された連結アーム50において、第2端部50bは、ユニソンリング25の連結溝26の内面に押し当てられる。このため、連結溝26の内面と、連結アーム50の第2端部50bとの間の隙間は吸収される。よって、ノズルベーン30の角度が一定に決まる。つまり、ノズルベーン30は、タービンスクロール部14側からの排気ガスの流れを受けて本来回動すべき方向に回動する。
【0065】
図7のグラフの横軸にタービン入口ガス流量を示し、縦軸にターボ総合効率を示す。タービン入口ガス流量は、タービンスクロール部14に流入した排気ガスの総量である。ターボ総合効率は、排気ガスのエネルギーをタービンホイール13の回転エネルギーとしてどれだけ回収できたかを示す。実線のグラフに、ノズルベーン30を用いたターボチャージャ10での結果を示し、破線のグラフに比較例のノズルベーン70を用いたターボチャージャでの結果を示す。
【0066】
比較例のターボチャージャに対し、実施形態のターボチャージャ10では、タービン入口ガス流量の少ない領域において、ターボ総合効率が高められていることが示された。これは、排気ガスの流れ方向に隣り合うノズルベーン30同士の入口前縁部31と出口後縁部32との間で、ノズルとして機能する部位を比較例より長くしたためである。
【0067】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)入口前縁部31は、前端30aから全長Mの10~40%の長さの領域に設けられている。また、入口前縁部31の円弧は、全長Mの10%以上の長さを曲率半径とする。比較例のノズルベーン70と比べると、入口前縁部31の円弧の長さを長くできるため、隣り合うノズルベーン30同士の間でノズルとして機能する部位を比較例より長くできる。このため、ノズルベーン30がガス流路39の閉じ側に調節されたときであっても、ガス流路39での排気ガスの流速を速めることができるため、入口前縁部31からガス流路39に向けて排気ガスが流れ易くなる。したがって、ターボチャージャ10では、タービンホイール13への排気ガスの流入効率を向上できる。
【0068】
(2)ノズルベーン30がガス流路39の開き側に調節されたときであっても、排気ガスが入口前縁部31に沿って流れて入口前縁部31から剥離し難くなる。その結果、ノズルベーン30の内表面41付近に排気ガスが流れ込み、内表面41付近に負圧が発生することが抑制される。このため、ノズルベーン30が排気ガスの圧力を受けてガス流路39を閉じる方向に回動することを抑制できる。
【0069】
(3)ノズルベーン30の内表面41付近に排気ガスが流れ込み、負圧が発生することが抑制されるため、ノズルベーン30には、排気ガスの圧力を受けて回転トルクが適切に発生することになり、ノズルベーン30の角度が一定に決まりやすい。つまり、ノズルベーン30は、タービンスクロール部14側からの排気ガスの流れを受けて本来回動すべき方向に回動する。このため、タービンホイール13に向かう排気ガスの流量を適切に調節できる。
【0070】
(4)入口前縁部31の円弧は、翼中心線35の全長Mの10%以上の長さを曲率半径とする。このため、入口前縁部31での円弧を長く確保でき、ノズルベーン30によってガス流路39を開いたとき、排気ガスが入口前縁部31からより一層剥離し難くなる。
【0071】
(5)翼中心線35は、後端30bから前端30aに向けて複合曲線状に延びた後、ピン29付近において前端30aに向かうに従いタービンスクロール部14に近づくように外表面42が膨らむ形状である。入口前縁部31の内表面41側がタービンホイール13に近づくように膨らむ形状に比べると、ガス流路39の流路断面積を大きくできる。また、入口前縁部31に沿う排気ガスの剥離を抑制しやすい。
【0072】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○
図8に示すように、ノズルベーン30の翼中心線35は、前端30aと後端30bの間で直線状に延びていてもよい。ノズルベーン30の入口前縁部31は、内表面41側において、タービンホイール13に向けて膨らむとともに、外表面42側において、タービンスクロール部14に向けて膨らんでいる。内表面41は、後端30bからピン29付近までは緩やかに膨らむように湾曲しつつ、ピン29付近で緩やかに凹むように湾曲して前側変曲点Pfに至る。
【0073】
○
図9に示すように、ノズルベーン30は、翼中心線35が、後端30bから前端30aに向けて複合曲線状に延びた後、入口前縁部31付近において内表面41が膨らむように湾曲していてもよい。
【0074】
○ 入口前縁部31は複数の円弧を組み合わせた複合曲線であってもよい。この場合、入口前縁部31を構成する複数の円弧のうち、最小の円弧の曲率半径は全長Mの10%以上の長さである。そして、最小の曲率半径の円弧は、前端30aから全長Mの10~40%の長さの領域に設けられている。
【0075】
○ ターボチャージャ10は、隔壁27a及び流路末端隔壁27bを備えていなくてもよい。また、ターボチャージャ10は、隔壁27a及び流路末端隔壁27bのいずれか一方を備えていてもよい。
【0076】
○ ターボチャージャは、ノズルベーン30の開度が調節できない固定式であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
L…回転軸線、M…全長、10…ターボチャージャ、13…タービンホイール、14…タービンスクロール部、14a…第1流路、14b…第2流路、15a…第1ガス導入路、15b…第2ガス導入路、30…ノズルベーン、30a…前端、30b…後端、31…入口前縁部、32…出口後縁部、35…翼中心線、39…ガス流路、41…内表面、42…外表面、51…変化率大部、52…変化率小部。