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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】給電システム、給電装置及び給電方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20240709BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240709BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240709BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240709BHJP
   B60K 6/20 20071001ALI20240709BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240709BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20240709BHJP
   B60L 50/53 20190101ALI20240709BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240709BHJP
   B60L 53/68 20190101ALI20240709BHJP
   B60L 53/67 20190101ALI20240709BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240709BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240709BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240709BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20240709BHJP
【FI】
H02J50/40 ZHV
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
H02J50/12
H02J13/00 301A
H02J13/00 311A
B60K6/20
B60L50/16
B60L53/12
B60L50/53
B60M7/00 X
B60L53/68
B60L53/67
B60L58/12
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021103017
(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公開番号】P2023002030
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-248647(JP,A)
【文献】特開2009-298278(JP,A)
【文献】特開2021-037819(JP,A)
【文献】特開2009-241804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
H02J 7/00
H02J 50/12
H02J 13/00
B60K 6/20
B60L 50/16
B60L 53/12
B60L 50/53
B60M 7/00
B60L 53/68
B60L 53/67
B60L 58/12
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両へ電力を非接触で伝送するように構成された複数の給電装置を備える給電システムであって、
前記複数の給電装置は、
内燃機関の駆動が禁止又は制限されるエリア内に位置すると共に該エリアの出口に直接接続された道路上に位置し且つ少なくとも一時的に車両の交通量が所定の閾値以上となる第1の領域に設置された第1の給電装置と、
前記第1の領域とは異なる第2の領域に設置された第2の給電装置と
を備え、
前記第1の給電装置から車両への給電量が前記第2の給電装置から車両への給電量よりも多くされる、給電システム。
【請求項2】
前記第1の給電装置は、前記第1の領域における車両の交通量が前記閾値以上であるときに、該交通量が該閾値未満であるときと比べて、車両への給電量を多くする、請求項1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記第1の給電装置と通信可能なサーバを更に備え、
前記サーバは、前記第1の領域における車両の交通量を取得し、該交通量が前記閾値以上であるときに、前記第1の給電装置に車両への給電量の増加指示を送信する、請求項に記載の給電システム。
【請求項4】
前記サーバは、前記エリアの出口付近における大気中の二酸化炭素濃度を取得し、該二酸化炭素濃度に基づいて前記閾値を設定する、請求項に記載の給電システム。
【請求項5】
前記第1の給電装置は、ハイブリッド車両が前記第1の領域を通過する場合にのみ、車両への給電量を多くする、請求項1からのいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項6】
前記第1の給電装置は、バッテリのSOCが所定値以下であるハイブリッド車両が前記第1の領域を通過する場合にのみ、車両への給電量を多くする、請求項1からのいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項7】
前記エリアは、所定の時間帯において内燃機関の駆動が禁止又は制限される時間限定エリアであり、
前記第1の給電装置は、前記時間帯の少なくとも一部を含む所定の設定時間においてのみ、車両への給電量を多くする、請求項1からのいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項8】
前記設定時間の終了時点が前記時間帯よりも後の時点に設定される、請求項に記載の給電システム。
【請求項9】
ハイブリッド車両へ電力を非接触で伝送するように構成された給電装置であって、
内燃機関の駆動が禁止又は制限されるエリア内に位置すると共に該エリアの出口に直接接続された道路上の所定領域に設置され、該所定領域における車両の交通量が所定の閾値以上であるときに、該交通量が該閾値未満であるときと比べて、車両への給電量を多くする、給電装置。
【請求項10】
ハイブリッド車両へ電力を非接触で伝送するように構成された複数の給電装置を用いた給電方法であって、
前記複数の給電装置は、
内燃機関の駆動が禁止又は制限されるエリア内に位置すると共に該エリアの出口に直接接続された道路上に位置し且つ少なくとも一時的に車両の交通量が閾値以上となる第1の領域に設置された第1の給電装置と、
前記第1の領域とは異なる第2の領域に設置された第2の給電装置と
を備え、
前記第1の給電装置から車両への給電量が前記第2の給電装置から車両への給電量よりも多くされる、給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電システム、給電装置及び給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界共鳴方式のような伝送方式を用いて、地面に設けられた給電装置から車両へ非接触で電力を伝送する技術が知られている(例えば特許文献1)。斯かる技術を用いることで、車両の走行中に給電装置によって車両のバッテリを充電させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-157686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、大気汚染を低減すべく、交通量の多い都市部のような場所において、車両の走行時に内燃機関の駆動が禁止又は制限されるエリア(機関制限エリア)が設定されてきている。ハイブリッド車両が斯かるエリアを走行するときには、内燃機関を停止させてモータのみによって走行用の動力を出力するEV走行を行う必要がある。
【0005】
この結果、機関制限エリア内における車両の電力消費量が多くなり、車両のバッテリの充電率(SOC:State Of Charge)が低下する。このため、車両が機関制限エリアから出た直後に、車両のバッテリを充電するために車両の内燃機関が始動されることが多くなる。しかしながら、多くの車両において機関制限エリアの周囲で内燃機関が始動されると、騒音、排気エミッション等によって機関制限エリアの周囲の環境が悪化するおそれがある。
【0006】
このため、内燃機関の始動を回避すべく、機関制限エリアから出る車両のバッテリが充電されるように給電装置から車両への非接触給電を行うことが考えられる。しかしながら、給電装置から車両への非接触給電が闇雲に行われると、非接触給電のための電力消費量が過大となる。
【0007】
そこで、上記課題に鑑みて、本発明の目的は、給電装置から車両への非接触給電による電力消費量を抑制しつつ、機関制限エリアの周囲の環境が悪化することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0009】
(1)非接触で車両へ電力を伝送するように構成された複数の給電装置を備える給電システムであって、前記複数の給電装置は、内燃機関の駆動が禁止又は制限されるエリアの出口に直接接続された道路上に位置し且つ少なくとも一時的に車両の交通量が所定の閾値以上となる第1の領域に設置された第1の給電装置と、前記第1の領域とは異なる第2の領域に設置された第2の給電装置とを備え、前記第1の給電装置から車両への給電量が前記第2の給電装置から車両への給電量よりも多くされる、給電システム。
【0010】
(2)前記第1の領域は前記エリア内に位置する、上記(1)に記載の給電システム。
【0011】
(3)前記第1の給電装置は、前記第1の領域における車両の交通量が前記閾値以上であるときに、該交通量が該閾値未満であるときと比べて、車両への給電量を多くする、上記(1)又は(2)に記載の給電システム。
【0012】
(4)前記第1の給電装置と通信可能なサーバを更に備え、前記サーバは、前記第1の領域における車両の交通量を取得し、該交通量が前記閾値以上であるときに、前記第1の給電装置に車両への給電量の増加指示を送信する、上記(3)に記載の給電システム。
【0013】
(5)前記サーバは、前記エリアの出口付近における大気中の二酸化炭素濃度を取得し、該二酸化炭素濃度に基づいて前記閾値を設定する、上記(4)に記載の給電システム。
【0014】
(6)前記第1の給電装置は、ハイブリッド車両が前記第1の領域を通過する場合にのみ、車両への給電量を多くする、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の給電システム。
【0015】
(7)前記第1の給電装置は、バッテリのSOCが所定値以下であるハイブリッド車両が前記第1の領域を通過する場合にのみ、車両への給電量を多くする、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の給電システム。
【0016】
(8)前記エリアは、所定の時間帯において内燃機関の駆動が禁止又は制限される時間限定エリアであり、前記第1の給電装置は、前記時間帯の少なくとも一部を含む所定の設定時間においてのみ、車両への給電量を多くする、上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の給電システム。
【0017】
(9)前記設定時間の終了時点が前記時間帯よりも後の時点に設定される、上記(8)に記載の給電システム。
【0018】
(10)非接触で車両へ電力を伝送するように構成された給電装置であって、内燃機関の駆動が禁止又は制限されるエリアの出口に直接接続された道路上の所定領域に設置され、該所定領域における車両の交通量が所定の閾値以上であるときに、該交通量が該閾値未満であるときと比べて、車両への給電量を多くする、給電装置。
【0019】
(11)非接触で車両へ電力を伝送するように構成された複数の給電装置を用いた給電方法であって、前記複数の給電装置は、内燃機関の駆動が禁止又は制限されるエリアの出口に直接接続された道路上に位置し且つ少なくとも一時的に車両の交通量が閾値以上となる第1の領域に設置された第1の給電装置と、前記第1の領域とは異なる第2の領域に設置された第2の給電装置とを備え、前記第1の給電装置から車両への給電量が前記第2の給電装置から車両への給電量よりも多くされる、給電方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、給電装置から車両への非接触給電による電力消費量を抑制しつつ、機関制限エリアの周囲の環境が悪化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、給電装置から車両への非接触給電を行うための構成を概略的に示す図である。
図2図2は、コントローラの概略的な構成図である。
図3図3は、ECUの概略的な構成及び他の車載機器を示す図である。
図4図4は、第一実施形態に係る給電システムを概略的に示す図である。
図5図5は、第二実施形態に係る給電システムを概略的に示す図である。
図6図6は、サーバの構成を概略的に示す図である。
図7図7は、第二実施形態においてサーバにおいて実行される制御ルーチンを示すフローチャートである。
図8図8は、第二実施形態において第1の給電装置において実行される制御ルーチンを示すフローチャートである。
図9図9は、第三実施形態においてサーバにおいて実行される制御ルーチンを示すフローチャートである。
図10図10は、第四実施形態において第1の給電装置において実行される制御ルーチンを示すフローチャートである。
図11図11は、第五実施形態において第1の給電装置において実行される制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0023】
<第一実施形態>
最初に、図1図4を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。
【0024】
近年、大気汚染を低減すべく、交通量の多い都市部のような場所において、車両の走行時に内燃機関の駆動が禁止又は制限されるエリア(以下、「機関制限エリア」と称する)が設定されてきている。ハイブリッド車両が斯かるエリアを走行するときには、内燃機関を停止させてモータのみによって走行用の動力を出力するEV走行を行う必要がある。
【0025】
この結果、機関制限エリア内における車両の電力消費量が多くなり、車両のバッテリの充電率(SOC:State Of Charge)が低下する。このため、車両が機関制限エリアから出た直後に、車両のバッテリを充電するために車両の内燃機関が始動されることが多くなる。しかしながら、多くの車両において機関制限エリアの周囲で内燃機関が始動されると、騒音、排気エミッション等によって機関制限エリアの周囲の環境が悪化するおそれがある。
【0026】
このため、内燃機関の始動を回避すべく、走行中の車両への非接触給電が可能な給電装置を道路に設け、機関制限エリアから出る車両のバッテリが充電されるように給電装置から車両への非接触給電を行うことが考えられる。以下、非接触給電を行うための構成の一例を説明する。
【0027】
図1は、給電装置2から車両3への非接触給電を行うための構成を概略的に示す図である。給電装置2は道路に設けられ、車両3がその道路を通過するときに給電装置2から車両3への非接触給電が行われる。すなわち、給電装置2は非接触で車両3へ電力を伝送するように構成され、車両3は給電装置2から非接触で給電されるように構成される。具体的には、給電装置2は、非接触で電力を送信するように構成された送電装置4を備え、車両3は、非接触で送電装置4から電力を受信するように構成された受電装置5を備える。
【0028】
特に、本実施形態では、磁界共振結合(磁界共鳴)によって給電装置2から車両3への非接触給電が行われる。すなわち、給電装置2は磁界を媒体として車両3へ電力を伝送する。なお、非接触給電は、非接触電力伝送、ワイヤレス電力伝送又はワイヤレス給電とも称される。
【0029】
図1に示されるように、給電装置2は、送電装置4に加えて、電源21、コントローラ6及び通信装置22を備える。給電装置2は、車両3が通過する道路(車線)に設けられ、例えば地中(路面の下)に埋め込まれる。なお、給電装置2の少なくとも一部(例えば、電源21、コントローラ6及び通信装置22)は路面の上に配置されてもよい。
【0030】
電源21は、送電装置4の電力源であり、送電装置4に電力を供給する。電源21は、例えば、単相交流電力を供給する商用交流電源である。なお、電源21は、三相交流電力を供給する交流電源等であってもよい。
【0031】
送電装置4は、送電側整流回路41、インバータ42及び送電側共振回路43を備える。送電装置4では、送電側整流回路41及びインバータ42を介して送電側共振回路43に適切な交流電力(高周波電力)が供給される。
【0032】
送電側整流回路41は電源21及びインバータ42に電気的に接続される。送電側整流回路41は、電源21から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力をインバータ42に供給する。送電側整流回路41は例えばAC/DCコンバータである。
【0033】
インバータ42は送電側整流回路41及び送電側共振回路43に電気的に接続される。インバータ42は、送電側整流回路41から供給された直流電力を、電源21の交流電力よりも高い周波数の交流電力(高周波電力)に変換し、高周波電力を送電側共振回路43に供給する。
【0034】
送電側共振回路43は、コイル44及びコンデンサ45から構成される共振器を有する。コイル44及びコンデンサ45の各種パラメータ(コイル44の外径及び内径、コイル44の巻数、コンデンサ45の静電容量等)は、送電側共振回路43の共振周波数が所定の設定値になるように定められる。所定の設定値は、例えば10kHz~100GHzであり、好ましくは、車両の非接触給電用の周波数帯域としてSAE TIR J2954規格によって定められた85kHzである。
【0035】
送電側共振回路43は、コイル44の中心が車線の中央に位置するように、車両3が通過する車線の中央に配置される。インバータ42から供給された高周波電力が送電側共振回路43に印加されると、送電側共振回路43は、電力を送信するための交流磁界を発生させる。なお、電源21は燃料電池又は太陽電池のような直流電源であってもよく、この場合に送電側整流回路41が省略されてもよい。
【0036】
コントローラ6は、例えば汎用コンピュータであり、給電装置2の各種制御を行う。例えば、コントローラ6は、送電装置4のインバータ42に電気的に接続され、送電装置4による電力送信を制御すべくインバータ42を制御する。
【0037】
図2は、コントローラ6の概略的な構成図である。コントローラ6はメモリ61及びプロセッサ62を備える。メモリ61及びプロセッサ62は信号線を介して互いに接続されている。なお、コントローラ6は、コントローラ6をインターネットのような通信ネットワークに接続するための通信インターフェース等を更に備えていてもよい。
【0038】
メモリ61は、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えばRAM)及び不揮発性の半導体メモリ(例えばROM)を有する。メモリ61は、プロセッサ62において実行されるプログラム、プロセッサ62によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を記憶する。
【0039】
プロセッサ62は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有し、各種処理を実行する。なお、プロセッサ62は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。プロセッサ62は給電装置2の制御部の一例である。
【0040】
通信装置22は、給電装置2と給電装置2の外部との通信を可能とする機器(例えば近距離無線通信モジュール)である。通信装置22はコントローラ6に電気的に接続され、コントローラ6は通信装置22を介して車両3と通信する。
【0041】
一方、車両3は、図1に示されるように、受電装置5に加えて、内燃機関30、モータ31、バッテリ32、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)33及び電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)7を備える。本実施形態では、車両3は、ハイブリッド車両(HV)であり、内燃機関30及びモータ31の少なくとも一方によって走行用の動力を出力する。
【0042】
内燃機関30は、燃料と空気との混合気を気筒内で燃焼させて動力を出力し、例えばガソリンエンジン又はディーゼルエンジンである。内燃機関30の出力は減速機及び車軸を介して車輪90に伝達される。
【0043】
モータ31は、例えば交流同期モータであり、電動機及び発電機として機能する。モータ31は、電動機として機能するとき、バッテリ32に蓄えられた電力を動力源として駆動される。モータ31の出力は減速機及び車軸を介して車輪90に伝達される。一方、車両3の減速時には車輪90の回転によってモータ31が駆動され、モータ31は発電機として機能して回生電力を発電する。
【0044】
バッテリ32は、充電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等から構成される。バッテリ32は車両3の走行に必要な電力(例えばモータ31の駆動電力)を蓄える。モータ31によって発電された回生電力がバッテリ32に供給されると、バッテリ32が充電され、バッテリ32の充電率が回復する。また、バッテリ32は、車両3に設けられた充電ポートを介して給電装置2以外の外部電源によっても充電可能である。
【0045】
PCU33はバッテリ32及びモータ31に電気的に接続される。PCU33は、インバータ、昇圧コンバータ及びDC/DCコンバータを有する。インバータは、バッテリ32から供給された直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ31に供給する。一方、インバータは、モータ31によって発電された交流電力(回生電力)を直流電力に変換し、直流電力をバッテリ32に供給する。昇圧コンバータは、バッテリ32に蓄えられた電力がモータ31に供給されるときに、必要に応じてバッテリ32の電圧を昇圧する。DC/DCコンバータは、バッテリ32に蓄えられた電力がヘッドライト等の電子機器に供給されるときに、バッテリ32の電圧を降圧する。
【0046】
受電装置5は、受電側共振回路51、受電側整流回路54及び充電回路55を備える。受電装置5は、送電装置4から電力を受信し、受信した電力をバッテリ32に供給する。
【0047】
受電側共振回路51は、路面との距離が小さくなるように車両3の底部に配置される。本実施形態では、受電側共振回路51は、車幅方向において車両3の中央に配置され、車両3の前後方向において前輪90と後輪90との間に配置される。
【0048】
受電側共振回路51は、送電側共振回路43と同様の構成を有し、コイル52及びコンデンサ53から構成される共振器を有する。コイル52及びコンデンサ53の各種パラメータ(コイル52の外径及び内径、コイル52の巻数、コンデンサ53の静電容量等)は、受電側共振回路51の共振周波数が送電側共振回路43の共振周波数と一致するように定められる。なお、受電側共振回路51の共振周波数と送電側共振回路43の共振周波数とのずれ量が小さければ、例えば受電側共振回路51の共振周波数が送電側共振回路43の共振周波数の±20%の範囲内であれば、受電側共振回路51の共振周波数は送電側共振回路43の共振周波数と必ずしも一致している必要はない。
【0049】
図1に示されるように受電側共振回路51が送電側共振回路43と対向しているときに、送電側共振回路43に交流磁界が発生すると、交流磁界の振動が、送電側共振回路43と同一の共振周波数で共鳴する受電側共振回路51に伝達する。この結果、電磁誘導によって受電側共振回路51に誘導電流が流れ、誘導電流によって受電側共振回路51において電力が発生する。すなわち、送電側共振回路43は磁界を介して受電側共振回路51へ電力を送信し、受電側共振回路51は磁界を介して送電側共振回路43から電力を受信する。
【0050】
受電側整流回路54は受電側共振回路51及び充電回路55に電気的に接続される。受電側整流回路54は、受電側共振回路51から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力を充電回路55に供給する。受電側整流回路54は例えばAC/DCコンバータである。
【0051】
充電回路55は受電側整流回路54及びバッテリ32に電気的に接続される。充電回路55は、受電側整流回路54から供給された直流電力をバッテリ32の電圧レベルに変換してバッテリ32に供給する。送電装置4から送信された電力が受電装置5によってバッテリ32に供給されると、バッテリ32が充電され、バッテリ32のSOCが回復する。充電回路55は例えばDC/DCコンバータである。
【0052】
ECU7は車両3の各種制御を行う。例えば、ECU7は、受電装置5の充電回路55に電気的に接続され、送電装置4から送信された電力によるバッテリ32の充電を制御すべく充電回路55を制御する。また、ECU7は、PCU33に電気的に接続され、バッテリ32と電気負荷(例えばモータ31)との間の電力の授受を制御すべくPCU33を制御する。なお、受電装置5は、送電装置4から受信した電力をバッテリ32の代わりに電気負荷(例えばモータ31)に供給してもよい。
【0053】
図3は、ECU7の概略的な構成及び他の車載機器を示す図である。ECU7は、通信インターフェース71、メモリ72及びプロセッサ73を有する。通信インターフェース71、メモリ72及びプロセッサ73は信号線を介して互いに接続されている。
【0054】
通信インターフェース71は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワークにECU7を接続するためのインターフェース回路を有する。
【0055】
メモリ72は、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えばRAM)及び不揮発性の半導体メモリ(例えばROM)を有する。メモリ72は、プロセッサ73において実行されるプログラム、プロセッサ73によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を記憶する。
【0056】
プロセッサ73は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有し、各種処理を実行する。なお、プロセッサ73は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。
【0057】
また、図3に示されるように、車両3は、GNSS受信機34、地図データベース35及び通信装置36を更に備える。GNSS受信機34、地図データベース35通信装置36はECU7に電気的に接続される。
【0058】
GNSS受信機34は、複数(例えば3つ以上)の測位衛星から得られる測位情報に基づいて、車両3の現在位置(例えば車両3の緯度及び経度)を検出する。具体的には、GNSS受信機34は、複数の測位衛星を捕捉し、測位衛星から発信された電波を受信する。そして、GNSS受信機34は、電波の発信時刻と受信時刻との差に基づいて測位衛星までの距離を算出し、測位衛星までの距離及び測位衛星の位置(軌道情報)に基づいて車両3の現在位置を検出する。GNSS受信機34の出力、すなわちGNSS受信機34によって検出された車両3の現在位置はECU7に送信される。
【0059】
なお、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)は、米国のGPS、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、日本のQZSS、中国のBeiDou、インドのIRNSS等の衛星測位システムの総称である。したがって、GNSS受信機34にはGPS受信機が含まれる。
【0060】
地図データベース35は地図情報を記憶している。地図情報には、給電装置2の位置情報、機関制限エリアの位置情報等が含まれる。ECU7は地図データベース35から地図情報を取得する。なお、地図データベース35が車両3の外部(例えばサーバ等)に設けられ、ECU7は車両3の外部から地図情報を取得してもよい。
【0061】
通信装置36は、車両3と車両3の外部との通信を可能とする機器(例えば、近距離無線通信モジュール、インターネットのような通信ネットワークに車両3を接続するためのデータ通信モジュール(DCM:Data communication module)等)である。ECU7は通信装置36を介して給電装置2と通信する。
【0062】
例えば、ECU7は、給電装置2が設置された給電エリアに車両3が接近したときに、通信装置36を用いて、給電装置2から車両3への給電を要求する給電要求信号を発信する。給電装置2のコントローラ6は、車両3から給電要求信号を受信すると、送電装置4によって交流磁界を発生させる。この結果、給電装置2から車両3への非接触給電が行われる。
【0063】
したがって、上述したような給電装置を用いて、機関制限エリアから出るハイブリッド車両のバッテリを充電することによって、ハイブリッド車両が機関制限エリアから出た直後にハイブリッド車両の内燃機関が始動されることを抑制することができる。しかしながら、給電装置から車両への非接触給電が闇雲に行われると、非接触給電のための電力消費量が過大となる。そこで、本実施形態では、給電装置の設置位置を考慮して給電装置から車両への給電量が設定される。
【0064】
図4は、第一実施形態に係る給電システム1を概略的に示す図である。図4の破線は機関制限エリアELAの境界を示し、破線によって囲まれた範囲が機関制限エリアELAに相当する。図4の例では、機関制限エリアELAの周囲の複数の道路が機関制限エリアELA内の道路に接続されている。なお、機関制限エリアELAは、低排出ゾーン(LEZ)、Eドライブゾーン、ジオフェンシングゾーン等とも称される。
【0065】
給電システム1は、非接触で車両へ電力を伝送するように構成された複数の給電装置を備える。本実施形態では、複数の給電装置は、第1の領域に設置された第1の給電装置2aと、第1の領域とは異なる第2の領域に設置された第2の給電装置2bとを備える。第1の給電装置2a及び第2の給電装置2bは、それぞれ、上述した給電装置2と同様の構成を有する。
【0066】
第1の領域は、機関制限エリアELAの出口に直接接続された道路上に位置しており、少なくとも一時的に車両の交通量が所定の閾値以上となる領域である。なお、機関制限エリアの出口とは、車両が道路に沿って機関制限エリアから出るときの機関制限エリアの境界地点を意味する。また、機関制限エリアの出口に直接接続された道路には、機関制限エリア内の道路と機関制限エリア外の道路とが含まれる。
【0067】
一方、第2の領域は、機関制限エリアELAの出口に直接接続されていない道路上に位置している。本実施形態では、第2の領域は、機関制限エリアELA外に位置し、機関制限エリアELAの出口に直接接続された道路から分岐した道路に位置している。なお、第2の領域は、機関制限エリアELAの出口に直接接続された道路上に位置し且つ車両の交通量が閾値未満である領域であってもよい。
【0068】
本実施形態では、第1の領域に設置された第1の給電装置2aから車両への給電量が、第2の領域に設置された第2の給電装置2bから車両への給電量よりも多くされる。車両が機関制限エリアELA内から機関制限エリアELA外へ移動する場合には、多くの車両が第1の領域を通過することになる。このため、第1の給電装置2aから車両への給電量を多くすることによって、機関制限エリアELAから出るハイブリッド車両への給電を効率的に行うことができる。したがって、給電装置から車両への非接触給電による電力消費量を抑制しつつ、機関制限エリアの周囲の環境が悪化することを抑制することができる。
【0069】
例えば、第1の給電装置2a及び第2の給電装置2bは、第1の給電装置2aから車両への単位時間当たりの給電量が第2の給電装置2bから車両への単位時間当たりの給電量よりも多くなるように構成される。また、第1の給電装置2a及び第2の給電装置2bは、車両が所定速度で第1の給電装置2aを通過するときの第1の給電装置2aから車両への給電量が、車両が所定速度で第2の給電装置2bを通過するときの第2の給電装置2bから車両への給電量よりも多くなるように構成されてもよい。
【0070】
給電装置2a、2bから車両への給電量は、例えば、送電装置4から発せられる交流磁界の強度及び発生範囲の少なくとも一方を変更することによって調整される。交流磁界の強度が高いほど車両への給電量が多くなり、交流磁界の発生範囲が広いほど車両への給電量が多くなる。交流磁界の強度は、送電側共振回路43の物理的なパラメータ(例えばコイル44の巻数等)、送電側共振回路43に供給される交流電力の電圧値等に応じて変化し、交流磁界の発生範囲は、送電側共振回路43のコイル44の設置範囲等に応じて変化する。
【0071】
また、本実施形態では、第1の給電装置2aが設置される第1の領域は機関制限エリアELA内に位置している。このため、ハイブリッド車両が機関制限エリアELAから出る前にハイブリッド車両のバッテリを充電することができ、ハイブリッド車両が機関制限エリアELAから出た直後の内燃機関の始動をより効果的に抑制することができる。
【0072】
また、給電システム1は、複数の第1の領域に設置された複数の第1の給電装置と、複数の第2の領域に設置された複数の第2の給電装置とを備えていてもよい。この場合、複数の第1の給電装置のそれぞれから車両への給電量が複数の第2の給電装置のそれぞれから車両への給電量よりも多くされる。
【0073】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る給電システムは、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る給電システムと同様である。このため、以下、本発明の第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0074】
図5は、第二実施形態に係る給電システム1’を概略的に示す図である。給電システム1’は複数の給電装置及びサーバ8を備える。第一実施形態と同様に、複数の給電装置は、第1の領域に設置された第1の給電装置2aと、第1の領域とは異なる第2の領域に設置された第2の給電装置2bとを備える。第二実施形態では、第1の給電装置2aのコントローラ6は、第1の給電装置2aを通信ネットワーク9に接続するための通信インターフェースを有する。すなわち、第1の給電装置2aは通信ネットワーク9を介して第1の給電装置2aの外部と通信可能である。
【0075】
図6は、サーバ8の構成を概略的に示す図である。サーバ8は、通信インターフェース81、ストレージ装置82、メモリ83及びプロセッサ84を備える。通信インターフェース81、ストレージ装置82及びメモリ83は、信号線を介してプロセッサ84に接続されている。なお、サーバ8は、キーボード及びマウスのような入力装置、ディスプレイのような出力装置等を更に備えていてもよい。また、サーバ8は複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0076】
通信インターフェース81は、サーバ8を通信ネットワーク9に接続するためのインターフェース回路を有し、サーバ8とサーバ8の外部との通信を可能とする。例えば、サーバ8は通信ネットワーク9を介して第1の給電装置2aと通信可能である。通信インターフェース81はサーバ8の通信部の一例である。
【0077】
ストレージ装置82は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SDD)、又は光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。ストレージ装置82は、各種データを記憶し、例えば、機関制限エリアELAに関する情報、第1の給電装置2aに関する情報、プロセッサ84が各種処理を実行するためのコンピュータプログラム等を記憶する。ストレージ装置82はサーバ8の記憶部の一例である。
【0078】
メモリ83は不揮発性の半導体メモリ(例えばRAM)を有する。メモリ83は、例えばプロセッサ84によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を一時的に記憶する。メモリ83はサーバ8の記憶部の一例である。
【0079】
プロセッサ84は、一つ又は複数のCPU及びその周辺回路を有し、各種処理を実行する。なお、プロセッサ84は、論理演算ユニット、数値演算ユニット又はグラフィック処理ユニットのような他の演算回路を更に有していてもよい。プロセッサ84はサーバ8の制御部の一例である。
【0080】
上述したように、第1の給電装置2aから車両への給電を行うことによって、機関制限エリアELAから出る車両のバッテリを充電することができる。しかしながら、第1の給電装置2aが設置された第1の領域を通過する車両が少ない場合、第1の給電装置2aから車両への給電量を増加させる必要性は低い。
【0081】
このため、第二実施形態では、サーバ8は、第1の領域における車両の交通量を取得し、第1の領域における車両の交通量が所定の閾値以上であるときに、第1の給電装置2aに車両への給電量の増加指示を送信する。第1の給電装置2aは、車両への給電量の増加指示を受信すると、車両への給電を多くする。すなわち、第1の給電装置2aは、第1の領域における車両の交通量が閾値以上であるときに、交通量が閾値未満であるときと比べて、車両への給電量を多くする。上記のように、多くの車両が第1の領域を通過するときにのみ第1の給電装置2aから車両への給電量を多くすることで、車両への非接触給電による電力消費量をより効果的に抑制することができる。なお、第1の領域における車両の交通量とは、所定時間の間に第1の領域を通過する車両の数を意味する。
【0082】
なお、第2の給電装置2bから車両への給電量は、第1の領域における車両の交通量が閾値以上であるときの第1の給電装置2aから車両への給電量よりも少なくされ、例えば第1の領域における車両の交通量が閾値未満であるときの第1の給電装置2aから車両への給電量と同じにされる。
【0083】
図7は、第二実施形態においてサーバ8において実行される制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはサーバ8のプロセッサ84によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。
【0084】
最初に、ステップS101において、プロセッサ84は第1の領域における車両の交通量を取得する。例えば、複数の車両のそれぞれについて車両の位置情報が定期的に通信ネットワーク9を介してサーバ8に送信され、サーバ8のプロセッサ84は、車両の位置情報に基づいて、現在時刻までの所定時間の間に第1の領域を通過した車両の数を算出することによって第1の領域における車両の交通量を取得する。
【0085】
なお、金属探知機、光電センサ、カメラ又は路側機のような車両を検出可能な装置が第1の領域に設けられ、斯かる装置の出力が車両の位置情報の代わりにサーバ8に送信されてもよい。また、サーバ8のオペレータ等が第1の領域における車両の交通量をサーバ8に入力し、プロセッサ84は、サーバ8に入力された値を第1の領域における車両の交通量として取得してもよい。また、プロセッサ84はVICS(登録商標)情報のような道路交通情報から第1の領域における車両の交通量を取得してもよい。
【0086】
次いで、ステップS102において、プロセッサ84は、第1の領域における車両の交通量が閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、予め定められ、例えば、一時間当たり10台~一時間当たり1000台に設定される。
【0087】
ステップS102において交通量が閾値以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS103に進む。ステップS103では、プロセッサ84は、給電フラグFが1であるか否かを判定する。給電フラグFは、車両への給電量の増加指示が第1の給電装置2aに送信されたときに1に設定され、車両への給電量の初期化指示が第1の給電装置2aに送信されたときにゼロに設定される。なお、給電フラグFの初期値はゼロである。
【0088】
ステップS103において給電フラグFがゼロであると判定された場合、本制御ルーチンはステップS104に進む。ステップS104では、プロセッサ84は、通信ネットワーク9を介して、車両への給電量の増加指示を第1の給電装置2aに送信する。次いで、ステップS105において、プロセッサ84は給電フラグFを1に設定する。ステップS105の後、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS103において給電フラグFが1であると判定された場合、車両への給電量の増加指示が送信済みであるため、本制御ルーチンはステップS104及びS105をスキップして終了する。
【0089】
また、ステップS102において交通量が閾値未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS106に進む。ステップS106では、プロセッサ84は、給電フラグFがゼロであるか否かを判定する。給電フラグFが1であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS107に進む。
【0090】
ステップS107では、プロセッサ84は、通信ネットワーク9を介して、車両への給電量の初期化指示を第1の給電装置2aに送信する。次いで、ステップS108において、プロセッサ84は給電フラグFをゼロに設定する。ステップS108の後、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS106において給電フラグFがゼロであると判定された場合、車両への給電量の初期化指示が送信済みであるため、本制御ルーチンはステップS107及びS108をスキップして終了する。
【0091】
図8は、第二実施形態において第1の給電装置2aにおいて実行される制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは第1の給電装置2aのコントローラ6のプロセッサ62によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。
【0092】
最初に、ステップS201において、プロセッサ62は、車両への給電量の増加指示を受信したか否かを判定する。車両への給電量の増加指示を受信したと判定された場合、本制御ルーチンはステップS202に進む。
【0093】
ステップS202では、プロセッサ62は第1の給電装置2aから車両への給電量を初期値から増加させる。例えば、プロセッサ62は、給電時に送電装置4の送電側共振回路43に供給される交流電力の電圧値の設定値を初期値よりも高くする。ステップS202の後、本制御ルーチンは終了する。
【0094】
一方、ステップS201において車両への給電量の増加指示を受信しなかったと判定された場合、本制御ルーチンはステップS203に進む。ステップS203では、プロセッサ62は、車両への給電量の初期化指示を受信したか否かを判定する。車両への給電量の初期化指示を受信したと判定された場合、本制御ルーチンはステップS204に進む。
【0095】
ステップS204では、プロセッサ62は第1の給電装置2aから車両への給電量を初期化する。すなわち、プロセッサ62は第1の給電装置2aから車両への給電量を初期値に戻す。例えば、プロセッサ62は、給電時に送電装置4の送電側共振回路43に供給される交流電力の電圧値の設定値を初期値に設定する。ステップS204の後、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS203において車両への給電量の初期化指示を受信しなかったと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。
【0096】
なお、サーバ8が省略され、第1の給電装置2aが、第1の領域における車両の交通量を取得し、交通量が閾値以上であるときに車両への給電量を増加させ、交通量が閾値未満であるときに車両への給電量を初期化してもよい。また、サーバ8が通信ネットワーク9を介して第1の領域における車両の交通量を第1の給電装置2aに送信し、第1の給電装置2aが、交通量が閾値以上であるときに車両への給電量を増加させ、交通量が閾値未満であるときに車両への給電量を初期化してもよい。
【0097】
<第三実施形態>
第三実施形態に係る給電システムは、以下に説明する点を除いて、基本的に第二実施形態に係る給電システムと同様である。このため、以下、本発明の第三実施形態について、第二実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0098】
第二実施形態では、サーバ8は、第1の領域における車両の交通量が所定の閾値以上であるときに、第1の給電装置2aに車両への給電量の増加指示を送信する。すなわち、第1の領域における車両の交通量が多いときに、第1の給電装置2aから車両への給電量が増加される。しかしながら、機関制限エリアELAの出口付近における大気中の二酸化炭素濃度が既に高い場合には、車両が機関制限エリアELAから出るときに内燃機関が始動されることを可及的に回避する必要がある。
【0099】
このため、第三実施形態では、サーバ8は、機関制限エリアELAの出口付近における大気中の二酸化炭素濃度を取得し、この二酸化炭素濃度に基づいて上記閾値を設定する。このことによって、車両の交通量だけでなく大気の状態を考慮して車両への給電量が設定されるため、機関制限エリアELAの周囲の環境が悪化することをより効果的に抑制することができる。
【0100】
図9は、第三実施形態においてサーバ8において実行される制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはサーバ8のプロセッサ84によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。
【0101】
最初に、ステップS301において、プロセッサ84は機関制限エリアELAの出口付近における大気中の二酸化炭素濃度を取得する。例えば、大気中の二酸化炭素濃度を検出するCO2センサが機関制限エリアELAの出口付近に設置され、このCO2センサの出力が定期的に通信ネットワーク9を介してサーバ8に送信される。CO2センサは、第1の給電装置2aが設置された第1の領域が機関制限エリアELA内に位置している場合には機関制限エリアELAの出口等に設置され、第1の領域が機関制限エリアELA外に位置している場合には第1の領域等に設置される。
【0102】
次いで、ステップS302において、プロセッサ84は、機関制限エリアELAの出口付近における大気中の二酸化炭素濃度に基づいて、閾値を設定する。具体的には、プロセッサ84は、大気中の二酸化炭素濃度が所定濃度以上であるときには、大気中の二酸化炭素濃度が所定濃度未満であるときと比べて、閾値を小さくする。例えば、大気中の二酸化炭素濃度が高くなるにつれて閾値が線形的又は段階的(ステップ状)に小さくされる。
【0103】
次いで、ステップS303において、図7のステップS101と同様に、プロセッサ84は第1の領域における車両の交通量を取得する。次いで、ステップS304において、プロセッサ84は、第1の領域における車両の交通量が閾値以上であるか否かを判定する。この判定における閾値の値として、ステップS302において設定された値が用いられる。
【0104】
ステップS304において交通量が閾値以上であると判定された場合、図7のステップS103~S105と同様に、ステップS305~S307が実行される。一方、ステップS304において交通量が閾値未満であると判定された場合、図7のステップS106~S108と同様に、ステップS308~S310が実行される。
【0105】
<第四実施形態>
第四実施形態に係る給電システムは、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る給電システムと同様である。このため、以下、本発明の第四実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0106】
上述したように、第1の給電装置2aでは、第2の給電装置2bよりも車両への給電量が多くされる。しかしながら、第1の給電装置2aが設置された第1の領域を通過する車両が内燃機関を備えていない場合、第1の給電装置2aから車両への給電量を増加させる必要性は低い。
【0107】
このため、第四実施形態では、第1の給電装置2aは、ハイブリッド車両が第1の領域を通過する場合にのみ、車両への給電量を多くする。すなわち、第1の給電装置2aは、ハイブリッド車両が第1の領域を通過するときには、電気自動車が第1の領域を通過するときと比べて、車両への給電量を多くする。このことによって、機関制限エリアELAの周囲の環境が悪化することを抑制しつつ、給電装置から車両への非接触給電による電力消費量をより一層抑制することができる。
【0108】
なお、第2の給電装置2bから車両への給電量は、ハイブリッド車両が第1の領域を通過するときの第1の給電装置2aから車両への給電量よりも少なくされ、例えば電気自動車が第1の領域を通過するときの第1の給電装置2aから車両への給電量と同じにされる。
【0109】
図10は、第四実施形態において第1の給電装置2aにおいて実行される制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは第1の給電装置2aのコントローラ6のプロセッサ62によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。
【0110】
最初に、ステップS401において、プロセッサ62は、車両から給電要求信号を受信したか否かを判定する。給電要求信号を受信していないと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、給電要求信号を受信したと判定された場合、本制御ルーチンはステップS402に進む。
【0111】
ステップS402では、プロセッサ62は、給電要求信号を発信した車両がハイブリッド車両であるか否かを判定する。例えば、給電要求信号と共に車種情報が車両から第1の給電装置2aへ送信され、プロセッサ62は、車種情報に基づいて、給電要求信号を発信した車両がハイブリッド車両であるか否かを判定する。
【0112】
ステップS402において車両がハイブリッド車両ではないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS404に進む。ステップS404では、プロセッサ62は、給電量を増加させることなく、車両への給電を行う。例えば、プロセッサ62は、送電装置4の送電側共振回路43に供給される交流電力の電圧値を初期値に設定する。ステップS404の後、本制御ルーチンは終了する。
【0113】
一方、ステップS402において車両がハイブリッド車両であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS403に進む。ステップS403では、プロセッサ62は、給電量を増加させて車両への給電を行う。例えば、プロセッサ62は、送電装置4の送電側共振回路43に供給される交流電力の電圧値を初期値よりも高い値に設定する。ステップS403の後、本制御ルーチンは終了する。
【0114】
また、ハイブリッド車両のバッテリのSOCが高いときには、車両への給電量を増加させる必要性は低い。このため、第1の給電装置2aは、バッテリのSOCが所定値以下であるハイブリッド車両が第1の領域を通過する場合にのみ、車両への給電量を多くしてもよい。所定値は、内燃機関の始動が必要となるSOCの値よりも高い値に設定される。この場合、ステップS402とステップS403との間で、プロセッサ62は、ハイブリッド車両のバッテリのSOCが所定値以下であるか否かを判定し、判定が肯定された場合にはステップS403が実行され、判定が否定された場合にはステップS404が実行される。バッテリのSOCの値は、例えば、給電要求信号と共に車両から第1の給電装置2aへ送信される。
【0115】
<第五実施形態>
第五実施形態に係る給電システムは、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る給電システムと同様である。このため、以下、本発明の第五実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0116】
第五実施形態では、機関制限エリアELAは、所定の時間帯において内燃機関の駆動が禁止又は制限される時間限定エリアとして設定されている。例えば、機関制限エリアELAでは、一日のうち、6時から10時までの時間帯において内燃機関の駆動が禁止又は制限され、他の時間帯において内燃機関の駆動が許可される。なお、所定の時間帯は、曜日、日付等に応じて変更されてもよい。
【0117】
機関制限エリアELAが時間限定エリアである場合、所定の時間帯において機関制限エリアELAの外側で内燃機関が始動される機会が増える。そこで、第五実施形態では、第1の給電装置2aは、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定の時間帯の少なくとも一部を含む所定の設定時間においてのみ、車両への給電を多くする。すなわち、第1の給電装置2aは、現在時刻が所定の設定時間内であるときには、現在時刻が所定の設定時間外であるときと比べて、車両への給電量を多くする。このことによって、機関制限エリアELAの周囲の環境が悪化することを抑制しつつ、給電装置から車両への非接触給電による電力消費量をより一層抑制することができる。
【0118】
例えば、設定時間の終了時点は、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定の時間帯よりも後の時点に設定される。このことによって、所定の時間帯が終了した後にハイブリッド車両が機関制限エリアELAから出る場合に内燃機関が始動されることを抑制することができる。したがって、機関制限エリアELAの周囲の環境が悪化することをより効果的に抑制することができる。一方、設定時間の開始時点は、例えば、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定の時間帯の開始時点に設定される。
【0119】
なお、第2の給電装置2bから車両への給電量は、設定時間における第1の給電装置2aから車両への給電量よりも少なくされ、例えば設定時間以外の時間における第1の給電装置2aから車両への給電量と同じにされる。
【0120】
図11は、第五実施形態において第1の給電装置2aにおいて実行される制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは第1の給電装置2aのコントローラ6のプロセッサ62によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。
【0121】
最初に、ステップS501において、プロセッサ62は、車両から給電要求信号を受信したか否かを判定する。給電要求信号を受信していないと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、給電要求信号を受信したと判定された場合、本制御ルーチンはステップS502に進む。
【0122】
ステップS502では、プロセッサ62は、現在時刻が設定時間内であるか否かを判定する。現在時刻は、例えば、コントローラ6に設けられたデジタル時計から取得される。なお、現在時刻はコントローラ6の外部から取得されてもよい。設定時間は、機関制限エリアELAにおいて内燃機関の駆動が禁止又は制限される時間帯に応じて予め設定され、コントローラ6のメモリ61等に記憶される。なお、機関制限エリアELAにおいて内燃機関の駆動が禁止又は制限される時間帯が変更された場合には、その変更内容に応じて第1の給電装置2aの管理者等によって設定時間が再設定される。
【0123】
ステップS502において現在時刻が設定時間外であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS504に進む。ステップS504では、プロセッサ62は、給電量を増加させることなく、車両への給電を行う。例えば、プロセッサ62は、送電装置4の送電側共振回路43に供給される交流電力の電圧値を初期値に設定する。ステップS504の後、本制御ルーチンは終了する。
【0124】
一方、ステップS502において現在時刻が設定時間内であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS503に進む。ステップS503では、プロセッサ62は、給電量を増加させて車両への給電を行う。例えば、プロセッサ62は、送電装置4の送電側共振回路43に供給される交流電力の電圧値を初期値よりも高い値に設定する。ステップS503の後、本制御ルーチンは終了する。
【0125】
<その他の実施形態>
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【0126】
例えば、給電装置2a、2bから車両への非接触給電の手法として、磁界共鳴方式を含む電磁誘導方式に限られず、電界を媒体として電力を伝送する電界結合方式のような様々な手法を用いることができる。
【0127】
また、上述した実施形態は、任意に組み合わせて実施可能である。例えば、第二実施形態又は第三実施形態において、給電量の増加指示がサーバ8から第1の給電装置2aに送信された場合に、第1の給電装置2aは、ハイブリッド車両が第1の領域を通過する場合にのみ、車両への給電量を多くしてもよい。
【0128】
また、第二実施形態又は第三実施形態において、給電量の増加指示がサーバ8から第1の給電装置2aに送信された場合に、第1の給電装置2aは、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定の時間帯の少なくとも一部を含む所定の設定時間においてのみ、車両への給電を多くしてもよい。また、第二実施形態又は第三実施形態において、サーバ8は、第1の領域における車両の交通量が閾値以上であり且つ現在時刻が設定時間内であるときに、第1の給電装置2aに車両への給電量の増加指示を送信してもよい。
【0129】
また、第四実施形態と第五実施形態とが組み合わされる場合、第1の給電装置2aは、ハイブリッド車両が第1の領域を通過し且つ現在時刻が所定の設定時間内である場合にのみ、車両への給電量を多くしてもよい。
【符号の説明】
【0130】
1、1’ 給電システム
2 給電装置
2a 第1の給電装置
2b 第2の給電装置
3 車両
30 内燃機関
ELA 機関制限エリア
図1
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