(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240709BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240709BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240709BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240709BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240709BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240709BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240709BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20240709BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240709BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240709BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240709BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M50/105
H01M50/119
H01M50/121
H01M50/129
H01M50/178
H01M50/55 301
H01M50/531
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2021110888
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】大友 崇督
(72)【発明者】
【氏名】水野 史教
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 真也
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153663(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163514(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/158873(WO,A1)
【文献】特開2003-100266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058-10/0565
H01M 50/102-50/178
H01M 50/531-50/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体の内部に電極構造体が封止された全固体電池であって、
前記外装体は外部樹脂層と、内部樹脂層と、前記外部樹脂層及び前記内部樹脂層の間に配置された金属層とを備えており、
前記電極構造体は、電極積層体と、ポリマー電解質を含む最外固体電解質層と、を備えており、
前記電極積層体は第1の集電体層、活物質及び無機固体電解質を含む第1の活物質層、第1の固体電解質層、Si又はSn系合金活物質及びポリマー電解質を含む第2の活物質層、第2の集電体層、Si又はSn系合金活物質及びポリマー電解質を含む第2の活物質層、第2の固体電解質層、活物質及び無機固体電解質を含む第1の活物質層、第1の集電体層をこの順で備えた電極体を少なくとも1つ含み、
前記第1の集電体層及び
前記第2の集電体層はそれぞれ延出部と平板部とを備えており、
前記第1の集電体層が前記電極積層体の積層方向の少なくとも一方の端部に配置されており、
前記電極積層体の積層方向の少なくとも一方の端部に配置された前記第1の集電体層を最外第1の集電体層としたとき、
前記最外固体電解質層は前記最外第1の集電体層の前記第1の活物質層側とは反対の面に積層されており、
積層方向視において、前記最外固体電解質層の面積は前記最外第1の集電体層の平板部の面積よりも大きく、
積層方向視において、前記最外固体電解質層は前記最外第1の集電体層の平板部全体を覆うように積層されている、
全固体電池。
【請求項2】
前記電極構造体において、前記最外固体電解質層及び前記第1の固体電解質層に挟まれる前記最外第1の集電体層の平板部及び
前記第1の活物質層を積層体Aとしたとき、
積層方向視において、前記最外固体電解質層及び前記第1の固体電解質層の少なくとも一方の面積は前記積層体Aよりも大きく、
積層方向視において、前記最外固体電解質層及び前記第1の固体電解質層の少なくとも一方は前記積層体A全体を覆うように積層されており、
前記最外固体電解質層及び前記第1の固体電解質層は少なくとも前記積層体Aの前記第1の集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うようにその外縁で一体となっており、前記積層体Aをその内部に収容しており、
積層方向視において、前記最外第1の集電体層の延出部は一体となった前記最外固体電解質層及び前記第1の固体電解質層の側面から延出している、
請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記電極体において、前記第1の固体電解
質層及び前記第2の固体電解質層に挟まれる前記第2の活物質層、前記第2の集電体層の平板部、及び前記第2の活物質層を積層体Bとしたとき、
積層方向視において、前記第1の固体電解
質層及び前記第2の固体電解質層の少なくとも一方の面積は前記積層体Bよりも大きく、
積層方向視において、前記第1の固体電解
質層及び前記第2の固体電解質層の少なくとも一方は前記積層体B全体を覆うように積層されており、
前記第1の固体電解
質層及び前記第2の固体電解質層は少なくとも前記積層体Bの前記第2の集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うようにその外縁で一体となっており、前記積層体Bをその内部に収容しており、
積層方向視において、前記第2の集電体層の延出部は一体となった前記第1の固体電解
質層及び前記第2の固体電解質層の側面から延出している、
請求項1又は2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記電極構造体は前記電極体が複数積層された前記電極積層体を備え、
前記電極体は電気的に並列となるように接続されており、
隣接する一方の前記電極体の前記第2の固体電解質層及び隣接する他方の前記電極体の前記第2の固体電解質層に挟まれる前記第1の活物質層、前記第1の集電体層の平板部、前記第1の集電体層の平板部、及び前記第1の活物質層を積層体Cとしたとき、
積層方向視において、隣接する一方の前記電極体の前記第2の固体電解質層及び他方の前記電極体の前記第2の固体電解質層の少なくとも一方の面積は前記積層体Cよりも大きく、
積層方向視において、隣接する一方の前記電極体の前記第2の固体電解質層及び他方の前記電極体の前記第2の固体電解質層の少なくとも一方は前記積層体C全体を覆うように積層されており、
隣接する一方の前記電極体の前記第2の固体電解質層及び他方の前記電極体の前記第2の固体電解質層は少なくとも前記積層体Cの前記第1の集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うようにその外縁で一体となっており、前記積層体Cをその内部に収容しており、
積層方向視において、前記第1の集電体層の延出部の少なくとも一方は一体となった隣接する一方の前記電極体の前記第2の固体電解質層及び他方の前記電極体の前記第2の固体電解質層の側面から延出している、
請求項1~3のいずれか1項に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池の安全性を高めるために、非水系電解液に代えて、固体電解質を用いた全固体電池の開発が進められている。
【0003】
一方で、固体電解質を用いた全固体電池は、充放電による体積変化により構造が不安定になる問題や、空気中の水分との反応によって固体電解質が劣化する問題等がある。このような問題に対し、次のような技術が知られている。
【0004】
特許文献1は、電極積層体の側面に樹脂層を配置し、電極積層体と樹脂層との接着性を向上する全固体電池に関する技術を開示している。特許文献2は、強度向上のために、外装体と電極積層体との間に固体電解質を配置する全固体電池に関する技術を開示している。特許文献3は、異なる電極層間の直接接触による短絡を防止するために、固体電解質層を電極層に比べて大面積とし、固体電解質層がこれらの電極層を覆うように配置する全固体電池に関する技術を開示している。特許文献4は、耐湿性を向上するために、電極積層体全体を樹脂層で覆う全固体電池に関する技術を開示している。特許文献5は、ズレを抑制するために、粘着性樹脂層を介して単セル同士を積層したバイポーラ型リチウムイオン電池に関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-192610号公報
【文献】特開2014-235990号公報
【文献】特開2018-142534号公報
【文献】国際公開第2014/007215号
【文献】特開2017-73374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、全固体電池の外装体として、金属層を樹脂層で覆ったラミネート外装体が知られている。全固体電池はこのような外装体に電極構造体を封止することで製造される。
【0007】
一方で、ラミネート外装材を用いて全固体電池を製造する際に、外装体と電極構造体の最外層に配置される集電体層やタブ部との間に導電性異物が混入する場合がある。このような導電性異物が存在していると、外部からの圧力により、導電性異物に応力が集中し、これによりラミネート外装体の内部樹脂層が欠損することがある。また、外部からの圧力により、電極構造体の最外層に配置される集電体層の角部に応力が集中し、これによりラミネート外装体の内部樹脂層が欠損することがある。ラミネート外装体の樹脂層が欠損すると、外装体内の金属層と集電体層とが直接又は導電性異物を介して電気的に接続され、これにより電池が短絡する問題がある。上記した応力は、全固体電池の製造後だけでなく、電極構造体をラミネート外装体に封止するための熱圧着時にも全固体電池にかかることがあるため、ラミネート外装体の内部樹脂層の欠損による短絡を抑制することは全固体電池の製造上及び安全使用上の観点から重要な問題である。
【0008】
そこで、本開示の主な目的は、外装体の内部樹脂層の欠損による短絡を抑制可能な全固体電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は上記課題を解決するための一つの手段として、外装体の内部に電極構造体が封止された全固体電池であって、外装体は外部樹脂層と、内部樹脂層と、外部樹脂層及び内部樹脂層の間に配置された金属層とを備えており、電極構造体は電極積層体と最外固体電解質層とを備えており、電極積層体は第1の集電体層、第1の活物質層、第1の固体電解質層、第2の活物質層、第2の集電体層、第2の活物質層、第2の固体電解質層、第1の活物質層、第1の集電体層をこの順で備えた電極体を少なくとも1つ含み、第1の集電体層及び第2の集電体層はそれぞれ延出部と平板部とを備えており、第1の集電体層が電極積層体の積層方向の少なくとも一方の端部に配置されており、電極積層体の積層方向の少なくとも一方の端部に配置された第1の集電体層を最外第1の集電体層としたとき、最外固体電解質層は最外第1の集電体層の第1の活物質層側とは反対の面に積層されており、積層方向視において、最外固体電解質層の面積は最外第1の集電体層の平板部の面積よりも大きく、積層方向視において、最外固体電解質層は最外第1の集電体層の平板部全体を覆うように積層されている、全固体電池を提供する。
【0010】
上記全固体電池において、最外固体電解質層はポリマー電解質を含んでいてもよい。
【0011】
上記全固体電池は次の構成を備えていてもよい。すなわち、電極構造体において、最外固体電解質層及び第1の固体電解質層に挟まれる最外第1の集電体層の平板部及び第1の活物質層を積層体Aとしたとき、積層方向視において、最外固体電解質層及び第1の固体電解質層の少なくとも一方の面積は積層体Aよりも大きく、積層方向視において、最外固体電解質層及び第1の固体電解質層の少なくとも一方は積層体A全体を覆うように積層されており、最外固体電解質層及び第1の固体電解質層は少なくとも積層体Aの第1の集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うようにその外縁で一体となっており、積層体Aをその内部に収容しており、積層方向視において、最外第1の集電体層の延出部は一体となった最外固体電解質層及び第1の固体電解質層の側面から延出していてもよい。
【0012】
上記全固体電池は次の構成を備えていてもよい。すなわち、電極体において、第1の固体電解層及び第2の固体電解質層に挟まれる第2の活物質層、第2の集電体層の平板部、及び第2の活物質層を積層体Bとしたとき、積層方向視において、第1の固体電解層及び第2の固体電解質層の少なくとも一方の面積は積層体Bよりも大きく、積層方向視において、第1の固体電解層及び第2の固体電解質層の少なくとも一方は積層体B全体を覆うように積層されており、第1の固体電解層及び第2の固体電解質層は少なくとも積層体Bの第2の集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うようにその外縁で一体となっており、積層体Bをその内部に収容しており、積層方向視において、第2の集電体層の延出部は一体となった第1の固体電解層及び第2の固体電解質層の側面から延出していてもよい。
【0013】
上記全固体電池は次の構成を備えていてもよい。すなわち、電極構造体は電極体が複数積層された電極積層体を備え、電極体は電気的に並列となるように接続されており、隣接する一方の電極体の第2の固体電解質層及び隣接する他方の電極体の第2の固体電解質層に挟まれる第1の活物質層、第1の集電体層の平板部、第1の集電体層の平板部、及び第1の活物質層を積層体Cとしたとき、積層方向視において、隣接する一方の電極体の第2の固体電解質層及び他方の電極体の第2の固体電解質層の少なくとも一方の面積は積層体Cよりも大きく、積層方向視において、隣接する一方の電極体の第2の固体電解質層及び他方の電極体の第2の固体電解質層の少なくとも一方は積層体C全体を覆うように積層されており、隣接する一方の電極体の第2の固体電解質層及び他方の電極体の第2の固体電解質層は少なくとも積層体Cの第1の集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うようにその外縁で一体となっており、積層体Cをその内部に収容しており、積層方向視において、第1の集電体層の延出部の少なくとも一方は一体となった隣接する一方の電極体の第2の固体電解質層及び他方の電極体の第2の固体電解質層の側面から延出していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示の全固体電池においては、外装体と最外第1の集電体層との間に、絶縁体層である最外固体電解質層が配置されている。これにより、製造時において外装体と電極構造体との間に導電性異物が混入し、外部からの圧力により導電性異物に応力が集中して外装体の内部樹脂層が欠損し、金属層が露出した場合であっても、最外固体電解質層の存在により、外装体の金属層と最外第1の集電体層との接触を抑制することができる。
【0015】
また、本開示の全固体電池は、積層方向視において、最外固体電解質層の面積が最外第1の集電体層の平板部の面積よりも大きく、また積層方向視において、最外固体電解質層が最外第1の集電体層の平板部全体を覆うように積層されている。これにより、外部から圧力がかかった場合であっても、最外固体電解質層の存在により、最外第1の集電体層の平板部の角部に応力が集中することを抑制することができる。従って、最外第1の集電体層の平板部の角部への応力集中による外装体の内部樹脂層の欠損を抑制することができる。
【0016】
以上より、本開示の全固体電池によれば、外装体の内部樹脂層の欠損による短絡を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】全固体電池1から取り出した電極構造体20の斜視図である。
【
図3】
図2のIII-IIIで切断した電極構造体20の断面図である。
【
図4】積層方向から見た正極集電体層2111の概略図である。
【
図5】
図2のVの方向から観察した電極構造体20の模式図である。
【
図6】(A)
図2のVIaの方向から観察した電極構造体20の側面の模式図である。(B)
図2のVIbの方向から観察した電極構造体20の側面の模式図である。(C)
図2のVIcの方向から観察した電極構造体20の側面の模式図である。
【
図7】袋状負極構造体又は袋状正極構造体の作製方法の一例である。
【
図8】他の態様の全固体電池から取り出した電極構造体1020の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の全固体電池について、一実施形態である全固体電池1及び他の形態の全固体電池を用いて説明する。
【0019】
[全固体電池1]
全固体電池1は外装体10の内部に電極構造体20が封止されたものである。
図1に全固体電池1の概略図を示した。
図2に全固体電池1から取り出した電極構造体20の斜視図を示した。また、
図3に
図2のIII-IIIで切断した電極構造体20の断面図を示した。
【0020】
<外装体10>
外装体10は一般的な絶縁性を有するラミネート外装体である。外装体10は外部樹脂層と、内部樹脂層と、外部樹脂層及び内部樹脂層の間に配置された金属層とを備えている。ただし、本開示の外装体はこれに限定されず、その他の層が含まれていてもよい。例えば、本開示の外装体はさらに樹脂層等が配置された多層構造となっていてもよい。
【0021】
外部樹脂層は外装体10の最も外側に配置される層である。外部樹脂層は耐久性を向上させるための層である。外部樹脂層の材料としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)等が用いられる。
【0022】
内部樹脂層は、外装体10の最も内側に配置される層である。内部樹脂層は熱溶着を可能にするための層である。内部樹脂層の材料としては、例えばポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂が用いられる。
【0023】
金属層は、外装体10の内部に配置される層である。上述した通り、全固体電池1において、金属層は外部樹脂層及び内部樹脂層の間に配置される。金属層は、湿気や空気、又は全固体電池1の内部で発生したガスの出入りを遮断するための層(ガスバリア層)である。また、金属層は外装体10の剛性を補強する役割も有する。金属層の材料としては、例えば、アルミニウムや鉄等が用いられる。
【0024】
<電極構造体20>
図2に示した通り、電極構造体20は集電体層の延出部を除き、全体が固体電解質層で被覆されている。ただし、本開示の全固体電池において、電極構造体20の集電体層の延出部が配置されている側の側面に固体電解質層が配置されていない部分があってもよい。
【0025】
図3に示した通り、電極構造体20は電極積層体210と電極積層体210の積層方向の両方の端部に積層された最外固体電解質層220とを備えている。ただし、本開示の全固体電池において、最外固体電解質層は電極積層体の積層方向の少なくとも一方の端部に積層されていればよい。
【0026】
(電極積層体210)
電極積層体210は1つの電極体211からなる。ただし、本開示の全固体電池において、電極積層体は少なくとも1つの電極体を含むものであればよい。電極積層体が複数の電極体を含む全固体電池の例については後述する。
【0027】
(電極体211)
電極体211は正極集電体層(第1の集電体層)2111、正極活物質層(第1の活物質層)2112、第1の固体電解質層2113、負極活物質層(第2の活物質層)2114、負極集電体層(第2の集電体層)2115、負極活物質層(第2の活物質層)2116、第2の固体電解質層2117、正極活物質層(第1の活物質層)2118、及び第1の集電体層(第1の集電体層)2119をこの順で備えている。
【0028】
上記したように、電極体211では、第1の集電体層を正極集電体層とし、第1の活物質層を正極活物質層とし、第2の集電体層を負極集電体層とし、第2の活物質層を負極活物質層としている。ただし、本開示の全固体電池はこれに限定されず、第1の集電体層を負極集電体層とし、第1の活物質層を負極活物質層とし、第2の集電体層を正極集電体層とし、第2の活物質層を正極活物質層としてもよい。
【0029】
(正極集電体層2111、2119、負極集電体層2115)
図4に積層方向上側から見た正極集電体層2111の概略図を示した。
図4に示したとおり、正極集電体層2111は延出部2111aと平板部2111bとを備えている。延出部2111aは電極体211の側面から延出する部材であり、直接又は金属製のタブ(不図示)を介して正極端子1aと接続される。延出部2111aの位置は特に限定されるものではなく、正極端子1aの配置位置に応じて適宜設定することができる。平板部2111bは電極体211の各電極層に積層されるものである。平板部2111bは矩形であるため、4つの角部2111cを有している。正極集電体層2119は正極集電体層2111と同様の構成である。負極集電体層2115も同様に延出部2115aと平板部2115bとを備えているが、負極集電体層2115の延出部2115aは直接又は金属製のタブを介して負極端子1bと接続するものである。
【0030】
なお、全固体電池1では、正極端子1a及び負極端子1bは同じ側面に形成されているため、正極集電体層2111、2119及び負極集電体層2115の延出部も同じ側面から延出しているが、本開示の全固体電池はこれに限定されず、正極端子及び負極端子がそれぞれ異なる側面に形成されていてもよく、その場合、正極集電体層及び負極集電体層の延出部の位置も電極端子の位置に合わせて適宜設定してよい。
【0031】
また、
図2に示した通り、正極集電体層2111、2119は電極積層体210(電極体211)の積層方向の両方の端部に配置されている。以下において、電極積層体210の積層方向の両方の端部に配置された正極集電体層2111、2119を最外正極集電体層2111、2119ということがある。ただし、本開示の全固体電池において、最外正極集電体層(最外第1の集電体層)は電極積層体の積層方向の少なくとも一方の端部に配置されていればよい。
【0032】
正極集電体層の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、カーボンが挙げられる。正極集電体の形状としては、例えば、箔状が挙げられる。負極集電体層の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケル、カーボンが挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば、箔状が挙げられる。また、正極集電体層及び負極集電体層は導電性を向上させるために、所定のカーボンコート処理が施されていてもよい。
【0033】
(正極活物質層2112、2118)
正極活物質層2112、2118は同一の構成の正極活物質層でもよく、異なる構成の正極活物質層でもよい。以下、これらに適用可能な正極活物質層について説明する。
【0034】
正極活物質層は正極活物質を含有する。正極活物質としては、例えば、酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、例えば、LiCoO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等の岩塩層状型活物質、LiMn2O4、Li4Ti5O12等のスピネル型活物質、LiFePO4等のオリビン型活物質が挙げられる。酸化物活物質の表面には、Liイオン伝導性酸化物を含有する保護層が形成されていてもよい。酸化物活物質と、固体電解質との反応を抑制できるからである。Liイオン伝導性酸化物としては、例えば、LiNbO3が挙げられる。保護層の厚さは、例えば、1nm以上30nm以下である。また、正極活物質として、例えばLi2Sを用いることもできる。正極活物質の形状としては、例えば、粒子状が挙げられる。正極活物質の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、正極活物質の平均粒径(D50)は、例えば50μm以下であり、20μm以下であってもよい。
正極活物質層における正極活物質の含有量は従来と同様でよい。例えば50重量%~99重量%の範囲である。
【0035】
本開示における平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折式粒度分布計、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定から算出できる。
【0036】
正極活物質層は、任意に導電材を含有していてもよい。導電材の添加により、負極層の電子伝導性が向上する。導電材としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)等の粒子状炭素材料、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の繊維状炭素材料が挙げられる。正極活物質層における導電材の含有量は従来と同様でよい。例えば0.1重量%~10重量%の範囲である。
【0037】
正極活物質層は、任意にバインダーを含有していてもよい。バインダーの添加により、正極活物質層の構成材料が強固に結着される。バインダーとしては、例えば、フッ化物系バインダー、ポリイミド系バインダー、ゴム系バインダーが挙げられる。正極活物質層におけるバインダーの含有量は従来と同様でよい。例えば0.1重量%~10重量%の範囲である。
【0038】
正極活物質層は、任意に固体電解質を含有してもよい。正極活物質層に用いることができる固体電解質としては、無機固体電解質とポリマー電解質とがある。正極活物質層に用いられる好ましい固体電解質は高イオン伝導性を示す無機固体電解質(特に硫化物固体電解質)である。
【0039】
無機固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質が挙げられる。また、無機固体電解質は、ガラス(非晶質体)であってもよく、ガラスセラミックスであってもよく、結晶であってもよい。ガラスは、例えば、原料を非晶質化することで得られる。ガラスセラミックスは、例えば、ガラスに熱処理を行うことで得られる。結晶は、例えば、原料を加熱することで得られる。
【0040】
硫化物固体電解質は、例えば、Li、A(Aは、P、As、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、Inの少なくとも一種である)、および、Sを含有することが好ましい。硫化物固体電解質は、O(酸素)およびハロゲンの少なくとも一方をさらに含有していてもよい。ハロゲンとしては、例えば、F、Cl、Br、Iが挙げられる。硫化物固体電解質は、1種のハロゲンのみを含有していてもよく、2種以上のハロゲンを含有していてもよい。また、硫化物固体電解質が、S以外のアニオン元素(例えば、Oおよびハロゲン)を含有する場合、全てのアニオン元素において、Sのモル割合が最も多いことが好ましい。
【0041】
硫化物固体電解質は、オルト組成のアニオン構造(PS4
3-構造、SiS4
4-構造、GeS4
4-構造、AlS3
3-構造、BS3
3-構造)を、アニオン構造の主成分として有することが好ましい。化学安定性の高いからである。オルト組成のアニオン構造の割合は、硫化物固体電解質における全てのアニオン構造に対して、例えば50mol%以上であり、60mol%以上であってもよく、70mol%以上であってもよい。
【0042】
硫化物固体電解質は、イオン伝導性を有する結晶相を備えていてもよい。上記結晶相としては、例えば、Thio-LISICON型結晶相、LGPS型結晶相、アルジロダイト型結晶相が挙げられる。
【0043】
酸化物固体電解質は、例えば、Li、Z(Zは、Nb、B、Al、Si、P、Ti、Zr、Mo、W、Sの少なくとも一種である)、および、Oを含有することが好ましい。酸化物固体電解質の具体例としては、Li7La3Zr2O12等のガーネット型固体電解質;(Li,La)TiO3等のペロブスカイト型固体電解質;Li(Al,Ti)(PO4)3等のナシコン型固体電解質;Li3PO4等のLi-P-O系固体電解質;Li3BO3等のLi-B-O系固体電解質が挙げられる。また、酸化物固体電解質が、O以外のアニオン元素(例えば、Sおよびハロゲン)を含有する場合、全てのアニオン元素において、Oのモル割合が最も多いことが好ましい。
【0044】
ハロゲン化物固体電解質は、ハロゲン(X)を含有する電解質である。ハロゲンとしては、例えば、F、Cl、Br、Iが挙げられる。ハロゲン化物固体電解質としては、例えば、Li3YX6(Xは、F、Cl、Br、Iの少なくとも一種である)が挙げられる。また、ハロゲン化物固体電解質が、ハロゲン以外のアニオン元素(例えば、SおよびO)を含有する場合、全てのアニオン元素において、ハロゲンのモル割合が最も多いことが好ましい。
【0045】
無機固体電解質の形状としては、例えば、粒子状が挙げられる。無機固体電解質の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、無機固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば50μm以下であり、20μm以下であってもよい。
【0046】
ポリマー電解質は、ポリマー成分を含有する。ポリマー成分としては、例えば、ポリエーテル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミン系ポリマー、ポリスルフィド系ポリマーが挙げられ、中でもポリエーテル系ポリマーが好ましい。イオン伝導度が高く、ヤング率および破断強度等の機械特性に優れているからである。
【0047】
ポリエーテル系ポリマーは、繰り返し単位内に、ポリエーテル構造を有する。また、ポリエーテル系ポリマーは、繰り返し単位の主鎖内に、ポリエーテル構造を有することが好ましい。ポリエーテル構造としては、例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)構造、ポリプロピレンオキサイド(PPO)構造が挙げられる。ポリエーテル系ポリマーは、主な繰り返し単位として、PEO構造を有することが好ましい。ポリエーテル系ポリマーにおいて、全ての繰り返し単位における、PEO構造の割合は、例えば50mol%以上であり、70mol%以上であってもよく、90mol%以上であってもよい。また、ポリエーテル系ポリマーは、例えば、エポキシ化合物(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキシド)の単独重合体または共重合体であってもよい。
【0048】
ポリマー成分は、以下に示すイオン伝導性ユニットを有していてもよい。イオン伝導性ユニットとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレンビニルアセテート、ポリイミド、ポリアミン、ポリアミド、ポリアルキルカーボネート、ポリニトリル、ポリホスファゼン、ポリオレフィン、ポリジエンが挙げられる。
【0049】
ポリマー成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、1000,000以上10,000,000以下である。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる。また、ポリマー成分のガラス転移温度(Tg)は、例えば60℃以下であり、40°以下であってもよく、25℃以下であってもよい。また、ポリマー成分は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0050】
ポリマー電解質は、ポリマー成分が架橋された架橋ポリマー電解質であってもよく、ポリマー成分が架橋されていない未架橋ポリマー電解質であってもよい。ポリマー成分を架橋するための重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシオクトエート、クメンヒドロキシペルオキシド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。
【0051】
ポリマー電解質は、ドライポリマー電解質であってもよく、ゲル電解質であってもよい。ドライポリマー電解質とは、溶媒成分の含有率が5重量%以下である電解質をいう。溶媒成分の含有率は3重量%以下であってもよく、1重量%以下であってもよい。
【0052】
ドライポリマー電解質は、支持塩を含有していてもよい。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6等の無機リチウム塩、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(FSO2)2、LiC(CF3SO2)3等の有機リチウム塩が挙げられる。ドライポリマー電解質に対する支持塩の割合は、特に限定されない。例えば、ドライポリマー電解質がEO単位(C2H5O単位)を有する場合、支持塩1モル部に対して、EO単位は、例えば5モル部以上であり、10モル部以上であってもよく、15モル部以上であってもよい。一方、支持塩1モル部に対して、EO単位は、例えば40モル部以下であり、30モル部以下であってもよい。
【0053】
ゲル電解質は、通常、ポリマー成分に加えて、電解液成分を含有する。電解液成分は、支持塩および溶媒を含有する。支持塩については、上記と同様である。溶媒としては、例えば、カーボネートが挙げられる。カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状エステル(環状カーボネート);ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状エステル(鎖状カーボネート)が挙げられる。また、溶媒として、例えば、メチルアセテート、エチルアセテート等のアセテート類、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテルが挙げられる。さらに、溶媒として、例えば、γ-ブチロラクトン、スルホラン、N-メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)が挙げられる。また、溶媒は、水であってもよい。
【0054】
正極活物質層における固体電解質の含有量は従来と同様でよい。例えば1重量%~50重量%の範囲である。
【0055】
正極活物質層の厚さは、例えば0.1μm以上、1000μm以下の範囲である。
【0056】
(負極活物質層2114、2116)
負極活物質層2114、2116は同一の構成の負極活物質層でもよく、異なる構成の負極活物質層でもよい。以下、これらに適用可能な負極活物質層について説明する。
【0057】
負極活物質層は、負極活物質を含有する。負極活物質としては、例えば、Si、Sn、Li等の金属活物質;グラファイト等のカーボン活物質;チタン酸リチウム等の酸化物活物質が挙げられる。また、負極活物質は、Siを少なくとも含むSi系活物質であってもよい。Si系活物質としては、例えば、Si単体、Si合金、Si酸化物が挙げられる。Si合金は、Si元素を主成分として含有することが好ましい。Si合金において、Siの割合は、例えば50at%以上であり、70at%以上であってもよく、90at%以上であってもよい。
【0058】
負極活物質の形状としては、例えば、粒子状が挙げられる。負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば50μm以下であり、20μm以下であってもよい。
【0059】
負極活物質層における負極活物質の含有量は従来と同様でよい。例えば、20重量%以99重量%以下の範囲である。
【0060】
負極活物質層は、任意に導電材、バインダー又は固体電解質を含有していてもよい。導電材、バインダー、固体電解質については上述した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。負極活物質層が固体電解質を含む場合、固体電解質としてポリマー電解質を用いることが好ましい。なお、正極に極性溶媒と反応性が高い硫化物固体電解質を用いる場合は、ドライポリマーが好ましい。
【0061】
負極活物質層の厚さは、例えば0.1μm以上、1000μm以下の範囲である。Liデンドライトを抑制する観点から、負極活物質層の面積を正極活物質層よりも大きくしてもよい。
【0062】
(第1の固体電解質層2113、第2の固体電解質層2117、最外固体電解質層220)
第1の固体電解質層2113、第2の固体電解質層2117、及び最外固体電解質層220は同一の構成の固体電解質層であってもよく、異なる構成の固体電解質層であってもよい。以下、これらに適用可能な固体電解質層について説明する。
【0063】
固体電解質層は固体電解質を含む。固体電解質層の用いられる固体電解質は上述した通りである。固体電解質層が無機固体電解質を含む場合、固体電解質層における無機固体電解質の含有量は特に限定されないが、例えば50重量%~100重量%の範囲である。また、固体電解質層が無機固体電解質を含む場合、任意にバインダーを備えていてもよい。固体電解質層の用いられるバインダーは上述した通りである。固体電解質層におけるバインダーの含有量は特に限定されないが、例えば0.1重量%~10重量%の範囲である。
【0064】
固体電解質層がポリマー電解質を含む場合、ポリマー電解質として架橋ポリマー電解質を用いることが好ましい。また、ポリマー電解質を含む固体電解質層は自立可能であることが好ましい。「自立可能」とは、他の支持体が存在しなくても形状を保つことができることをいう。例えば、対象となる固体電解質層を基板上に配置し、その基板を、剥離した際に、固体電解質層が、その形状を保持している場合は、「自立可能」であるといえる。固体電解質層におけるポリマー電解質の割合は50体積%以上であり、70体積%以上であってもよく、90体積%以上であってもよい。固体電解質層はポリマー電解質のみを含有していてもよい。
【0065】
固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm以上、1000μm以下の範囲である。
【0066】
(電極構造体20の構造)
(1)
図5に
図2のVの方向(積層方向の上側)から観察した電極構造体20の模式図を示した。
図5に記載されている点線は透過した最外正極集電体層2111を表している。
図3、
図5に記載されている通り、最外固体電解質層220は最外正極集電体層2111の正極活物質層2112側とは反対の面に積層されている。このように最外固体電解質層220を配置することにより、外装体10と最外正極集電体層2111との間に、絶縁層である最外固体電解質層220が存在することとなる。これにより、全固体電池1の製造時において外装体10と電極構造体20との間に導電性異物が混入され、その後外部からの圧力により導電性異物に応力が集中して、外装体10の内部樹脂層が欠損し、金属層が露出した場合であっても、最外固体電解質層220の存在により、外装体10の金属層と最外正極集電体層2111との接触を抑制することができ、全固体電池1の短絡を抑制することができる。
【0067】
また、
図5に示した通り、積層方向視において、最外固体電解質層220の面積は最外正極集電体層2111の平板部2111bの面積よりも大きいものである。また、積層方向視において、最外固体電解質層220は最外正極集電体層2111の平板部2111b全体を覆うように積層されている。言い換えると、最外固体電解質層220の外縁が最外正極集電体層2111の平板部2111bの外縁よりも大きく形成されている。これにより、外部から圧力がかかった場合であっても、最外固体電解質層220の存在により、最外正極集電体層2111の平板部2111bの角部2111cに応力が集中することを抑制することができる。すなわち、平板部2111bの角部2111cの応力集中による外装体10の内部樹脂層の欠損を抑制することができ、全固体電池1の短絡を抑制することができる。
【0068】
さらに、最外固体電解質層220にポリマー電解質が含まれる場合、短絡抑制効果が向上する。電極積層体210(電極体211)は充放電によって膨張収縮するものである。特に負極活物質として、Si又はSn系合金負極活物質を用いた場合、より体積変化が大きくなる。そのような場合に、最外固体電解質層220に無機固体電解質を用いると、充放電による電極積層体210の体積変化に最外固体電解質層220が追従できず割れや滑落が生じる虞がある。特に、端部では伸びが大きく割れやすいため、平板部2111bの角部2111cの応力集中による外装体10の内部樹脂層が欠損する恐れがある。これに対し、最外固体電解質層220に柔軟性の高いポリマー電解質が含まれていると、充放電による電極積層体210の体積変化に最外固体電解質層220が追従することができ、割れが抑制される。
【0069】
なお、上記(1)で説明した事項は、電極構造体20の積層方向下側に配置されている正極活物質層2118、最外正極集電体層2119、及び最外固体電解質層220にも適用されることは言うまでもない。
【0070】
(2)
図6(A)に
図2のVIaの方向から観察した電極構造体20の側面の模式図、
図6(B)に
図2のVIbの方向から観察した電極構造体20の側面の模式図、
図6(C)に
図2のVIcの方向から観察した電極構造体20の側面の模式図を示した。また、
図6(A)に記載されている点線は透過した固体電解質層以外の電極層を表している。ここで、
図3に記載されている通り、電極構造体20において、最外固体電解質層220及び第1の固体電解質層2113に挟まれる最外正極集電体層2111の平板部2111b及び正極活物質層2112を積層体Aとした。
【0071】
図2、
図3、
図5、
図6からわかるように、積層方向視において、最外固体電解質層220及び第1の固体電解質層2113の面積は積層体Aよりも大きく、積層方向視において、最外固体電解質層220及び第1の固体電解質層2113は積層体A全体を覆うように積層されており、最外固体電解質層220及び第1の固体電解質層2113は積層体Aの側面全体(延出部を除く)を覆うようにその外縁で一体となっており、積層体Aをその内部に収容している。また、積層方向視において、最外正極集電体層2111の延出部2111aは一体となった最外固体電解質層220及び第1の固体電解質層2113の側面から延出している。
ただし、本開示の全固体電池において、積層方向視において、最外固体電解質層及び第1の固体電解質層の少なくとも一方の面積が積層体Aよりも大きく、積層方向視において、最外固体電解質層及び第1の固体電解質層の少なくとも一方が積層体A全体を覆うように積層されており、最外固体電解質層及び第1の固体電解質層が少なくとも積層体Aの第1の集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うようにその外縁で一体となっており、積層体Aをその内部に収容していてもよい。
【0072】
このように、最外固体電解質層220及び第1の固体電解質層2113を積層体Aの全ての側面で一体化し、その内部に積層体Aを収容することにより、積層体Aと後述する積層体B(負極活物質層、負極集電体層)との間での短絡を防止することができる。また、最外固体電解質層220及び第1の固体電解質層2113がポリマー電解質を含むことにより、最外固体電解質層220及び第1の固体電解質層2113を積層体Aの側面で一体化させる際に、UVや熱処理を行うことにより、化学的にポリマー電解質を架橋して一体化させることができ、積層ズレを抑制することができる。化学的に一体化させない場合であっても、ポリマー電解質を含む固体電解質層は粘着性を有するため、単に固体電解質層同士を接触させるだけでも一体化可能である。
【0073】
また、最外正極集電体層2111の延出部2111aが延出している積層体Aの側面において、最外固体電解質層220及び第1の固体電解質層2113を一体化し、延出部2111aのみを延出させることにより、負極集電体層2115の延出部2115aが最外正極集電体層2111の平板部2111b又は正極活物質層2112に接触することによる短絡を抑制することができる。
【0074】
ただし、本開示の全固体電池において、最外正極集電体層2111の延出部2111aが延出している積層体Aの側面において、最外固体電解質層220及び第1の固体電解質層2113を一体化しなくてもよい。すなわち、最外正極集電体層2111の延出部2111aが延出している積層体Aの側面以外の側面のみにおいて、最外固体電解質層220及び第1の固体電解質層2113を一体化してもよい。そのような場合、最外正極集電体層2111の延出部2111aに負極集電体層2115の延出部2115bが接触し得る位置に絶縁性の樹脂等をコーティングしてもよい。
【0075】
なお、上記(2)で説明した事項は、電極構造体20の積層方向下側に配置されている第2の固体電解質層2117、正極活物質層2118、最外正極集電体層2119、及び最外固体電解質層220にも適用されることは言うまでもない。
【0076】
(3)
図2、
図3、
図5、
図6を参照しつつさらに電極構造体20の構造について説明する。
図3に記載して通り、電極体211において、第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117に挟まれる負極活物質層2114、負極集電体層2115の平板部2115b、及び負極活物質層2116を積層体Bとする。
【0077】
図2、
図3、
図5、
図6からわかるように、積層方向視において、第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117の面積は積層体Bよりも大きく、積層方向視において、第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117は積層体B全体を覆うように積層されており、第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117は積層体Bの側面全体(延出部を除く)を覆うようにその外縁で一体となっており、積層体Bをその内部に収容している。また、積層方向視において、負極集電体層2115の延出部2115aは一体となった第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117の側面から延出している。
ただし、本開示の全固体電池において、積層方向視において、積層方向視において、第1の固体電解層及び第2の固体電解質層の少なくとも一方の面積が積層体Bよりも大きく、積層方向視において、第1の固体電解層及び第2の固体電解質層の少なくとも一方が積層体B全体を覆うように積層されており、第1の固体電解層及び第2の固体電解質層が少なくとも積層体Bの第2の集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うようにその外縁で一体となっており、積層体Bをその内部に収容していてもよい。
【0078】
このように、第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117を積層体Bの全ての側面で一体化し、その内部に積層体Bを収容することにより、負極活物質としてSi又はSn系合金負極を用いた場合に発生する負極層内割れによる滑落を抑制することができる。また、第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117がポリマー電解質を含むことにより、第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117を積層体Bの側面で一体化させる際に、UVや熱処理を行うことにより、化学的にポリマー電解質を架橋して一体化させることができ、積層ズレを抑制することができる。化学的に一体化させない場合であっても、ポリマー電解質を含む固体電解質層は粘着性を有するため、単に固体電解質層同士を接触させるだけでも一体化可能である。さらに、最外固体電解質層220、第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117がポリマー電解質を含み、第1の固体電解質層2113を上層と下層との2つの層に分け、最外固体電解質層220と第1の固体電解質層2113を上層とを一体化し、第1の固体電解質層2113と下層と第2の固体電解質層2117とを一体化することにより、一体化構造物間での積層ズレも抑制される。
【0079】
また、負極集電体層2115の延出部2115aが延出している積層体Bの側面において、第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117を一体化し、延出部2115aのみを延出させることにより、正極集電体層2111、2119の延出部2111a、2119aが負極集電体層2115の平板部2115b又は負極活物質層2114、2116に接触することによる短絡を抑制することができる。
【0080】
ただし、本開示の全固体電池において、負極集電体層2115の延出部2115aが延出している積層体Bの側面において、第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117を一体化しなくてもよい。すなわち、負極集電体層2115の延出部2115aが延出している積層体Bの側面以外の側面のみにおいて、第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117を一体化してもよい。そのような場合、負極集電体層2115の延出部2115aに正極集電体層2111、2119の延出部が接触し得る位置に絶縁性の樹脂等をコーティングしてもよい。
【0081】
さらに、ポリマー電解質を含む第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117を一体化させることにより、次のような問題を解決することができる。従来、負極活物質層及び固体電解質層において硫化物固体電解質等の固体電解質を用いた場合、充放電による負極活物質の膨張収縮により、負極活物質層/固体電解質層の界面に剥離や割れが生じたり、固体電解質内に割れが生じたりする問題があった。このような問題を解決するために、本発明者らは固体電解質として柔軟性の高いポリマー電解質を採用することを考えた。しかし、負極活物質層にポリマー電解質を用い、負極活物質層の面積を正極活物質層よりも大きくすると、電極層を接合するためのプレスによって、電極積層体に反りが発生して、異種電極間が接触し、短絡する問題が新たに発生することを知見した。これに対し、本発明者らはさらに検討を進め、上記で説明したように、ポリマー電解質を含む第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117を一体化させることにより、電極を接合するためのプレスによる異種電極間の接触を抑制することができることを知見した。従って、ポリマー電解質を含む第1の固体電解層2113及び第2の固体電解質層2117を一体化させることにより、上記の製造上の問題を解決しつつ、充放電による体積変化による電極の割れを抑制し、全固体電池1のサイクル特性を向上することができる。
【0082】
[他の態様の全固体電池]
他の態様の全固体電池は、全固体電池1の電極構造体20に代えて、複数の電極体1211、2211が積層された電極積層体1210を備えた電極構造体1020を用いるものである。電極構造体1020以外の構成は全固体電池1と共通するため、以下において説明は省略する。
図8に、
図2に対応する図であって、他の態様の全固体電池から取り出した電極構造体1020の概略断面図を示した。
【0083】
図8に示した通り、全固体電池2の電極構造体1020は2つの電極体1211、2211が積層された電極積層1210を備えている。電極体1211、2211は電気的に並列となるように接続されている。具体的には、隣接する一方の電極体1211の正極集電体層12119と隣接する他方の電極体2211の正極集電体層22111とが接触するように、電極体1211、2211が積層されている。
【0084】
ここで、隣接する一方の電極体1211の第2の固体電解質層12117及び他方の電極体2211の第1の固体電解質層22113(以下、「隣接固体電解質層」ということがある。)に挟まれる隣接する一方の電極体1211の正極活物質層12118、隣接する一方の電極体1211の正極集電体層12119の平板部12119b、隣接する他方の電極体2211の正極集電体層22111の平板部22111b、及び隣接する他方の電極体2211の正極活物質層22112を積層体Cとする。
【0085】
積層方向視において、隣接固体電解質層の面積は積層体Cよりも大きく、積層方向視において、隣接固体電解質層は積層体C全体を覆うように積層されており、隣接固体電解質層は積層体Cの側面全体(延出部を除く)を覆うようにその外縁で一体となっており、積層体Cをその内部に収容している。また、積層方向視において、正極集電体層12119、22111の延出部12119a、22111aは一体となった隣接固体電解質層の側面から延出している。
ただし、本開示の全固体電池において、積層方向視において、隣接する一方の電極体の第2の固体電解質層及び他方の電極体の第2の固体電解質層の少なくとも一方の面積が積層体Cよりも大きく、積層方向視において、隣接する一方の電極体の第2の固体電解質層及び他方の電極体の第2の固体電解質層の少なくとも一方が積層体C全体を覆うように積層されており、隣接する一方の電極体の第2の固体電解質層及び他方の電極体の第2の固体電解質層が少なくとも積層体Cの第1の集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うようにその外縁で一体となっており、積層体Cをその内部に収容していてもよい。また、本開示の全固体電池において、一体となった隣接固体電解質層の側面から延出する正極集電体層(第1の集電体層)の延出部は少なくとも一方でよい。
【0086】
このように、隣接固体電解質層を積層体Cの全ての側面で一体化し、その内部に積層体Cを収容することにより、これらの層の積層ズレを抑制することができる。また、隣接固体電解質層がポリマー電解質を含むことにより、隣接固体電解質層の側面で一体化させる際に、UVや熱処理を行うことにより、化学的にポリマー電解質を架橋して一体化させることができ、さらに積層ズレを抑制することができる。化学的に一体化させない場合であっても、ポリマー電解質を含む固体電解質層は粘着性を有するため、単に固体電解質層同士を接触させるだけでも一体化可能である。
【0087】
また、正極集電体層12119、22111の延出部12119a、22111aが延出している積層体Cの側面において、隣接固体電解質層を一体化し、延出部12119a、22111aを延出させることにより、負極集電体層の延出部が正極集電体層12119、22111の平板部12119a、22111a又は正極活物質層12118、22112に接触することによる短絡を抑制することができる。
【0088】
ただし、本開示の全固体電池において、正極集電体層の延出部が延出している積層体Cの側面において、隣接固体電解質層を一体化しなくてもよい。すなわち、正極集電体層の延出部が延出している積層体Cの側面以外の側面のみにおいて、隣接固体電解質層を一体化してもよい。そのような場合、正極集電体層の延出部に負極集電体層の延出部が接触し得る位置に絶縁性の樹脂等をコーティングしてもよい。
【0089】
[全固体電池の製造方法]
本開示の全固体電池の製造方法は特に限定されないが、例えば次のように全固体電池を製造することができる。
【0090】
まず、正極活物質層の構成材料と分散媒とを混合し、それらを混錬することで、スラリーを作製する。得られたスラリーを、正極集電体層又は基材に塗工し、その後、乾燥により分散媒を除去し、塗工層を形成する。その後、塗工層にプレス処理を行い、塗工層を緻密化し、正極活物質層を形成する。また、プレス処理後、基材を剥がし、正極集電体層を張り付けてもよい。これにより、正極集電体およびその片面に正極活物質層を有する正極構造体を作製する。また、同様の方法で、負極集電体およびその両面に負極活物質層を有する負極構造体を作製する。
【0091】
次に、固体電解質として無機固体電解質を用いる場合、上記と同様の方法により固体電解質層を作製することができる。すなわち、固体電解質層の構成材料と分散媒とを混合し、それらを混錬することで、スラリーを作製する。得られたスラリーを、基材に塗工し、その後、乾燥により分散媒を除去し、塗工層を形成する。その後、塗工層にプレス処理を行い、塗工層を緻密化し、固体電解質層を形成する。
【0092】
固体電解質としてポリマー電解質を用いる場合、例えば次のように固体電解質層を作製することができる。すなわち、固体電解質層の構成材料と、重合開始剤と、溶媒とを混合し、それらを混錬することで、均質なポリマー電解質溶液を作製する。得られたスラリーを、基材に塗工し、その後、乾燥により分散媒を除去し、同時に重合反応を行う。これにより、基材上に、ポリマー成分が架橋された架橋ポリマー電解質を含有する固体電解質層を作製する。
【0093】
また、固体電解質層は内部に電極層の収容空間を有する袋状固体電解質としてもよい。袋状固体電解質は次のように作製することができる。
図7(A)~(D)に袋状固体電解質の作製工程を示した。まず、
図7(A)のとおり、固体電解質(S)を配置する。次に、
図7(B)のとおり、固体電解質の内部であって、両面に負極活物質層を有する負極構造体又は片面に正極活物質層を有する正極構造体(X)を配置する。そして、
図7(C)の通り、固体電解質を折り曲げる。最後に、図(D)の通り、固体電解質の外縁を貼り合わせることで、袋状固体電解質に収容された負極構造体又は正極構造体(袋状負極構造体又は袋状正極構造体)を作製することができる。なお、上記工程において、負極構造体に代えてPETフィルムなどの剥離シートを配置して袋状固体電解質を作製し、その後負極構造体又は正極構造体を内部に挿入してもよい。また、上記では固体電解質を2つ折りにして袋状固体電解質を作製しているがこれに限定されず、2枚の固体電解質で負極構造体又は正極構造体を挟み、これらの外縁を貼り合わせることでも袋状固体電解質を作製することができる。
【0094】
ここで、本開示の固体電解質層は、電極層を積層後に固体電解質層同士を側面で一体化させるために、他の電極層よりも面積を大きく作製してもよい。
【0095】
最後に、作製した電極層を積層し、得られた電極構造体をラミネートで包装する。
例えば、電極層を所定の順序で積層しプレスする。続いて、プレスにより固体電解質層同士を側面で一体化している場合を除き、固体電解質層同士を側面で一体化させる。そして、得られた電極構造体に正極端子及び負極端子を取り付け、ラミネート外装体の内部に収容し、熱溶着により封止する。これにより全固体電池が得られる。
【0096】
また、袋状固体電解質を用いた例について、以下に説明する。まず、電極体が1つである全固体電池を作製する場合について説明する。
袋状負極構造体の両面に袋状正極構造体を積層し、プレス成型して一体化することにより、電極構造体を得る。あるいは、負極構造体の両面に袋状正極構造体を積層し、プレス成形して一体化する。続いて、負極集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うように、上下の袋状正極構造体の外縁を接触させて一体化させて、電極構造体を得る。得られた電極構造体に正極端子及び負極端子を取り付け、ラミネート外装体の内部に収容し、熱溶着により封止する。これにより全固体電池が得られる。
【0097】
次に、電極体が複数である全固体電池を作製する場合について説明する。
袋状正極構造体、袋状負極構造体、及び正極構造体をこの順に積層し、電極体を得る。そして、正極集電体層同士を接触させるように、2つの電極体を積層する。続いて、内部に配置された正極集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うように、上下の袋状負極構造体の外縁を接触させて一体化させる。これにより、電極構造体が得られる。
あるいは、正極集電体層同士が接触するように配置された2つの正極構造体が袋状固体電解質に収容された袋状正極構造体(2)を作製する。そして、袋状正極構造体、袋状負極構造体、袋状正極構造体(2)、袋状負極構造体、及び袋状正極構造体をこの順で積層し、プレス成型して一体化させる。これにより、電極構造体が得られる。
得られた電極構造体に正極端子及び負極端子を取り付け、ラミネート外装体の内部に収容し、熱溶着により封止する。これにより全固体電池が得られる。
【0098】
また、袋状正極構造体、負極構造体、及び正極構造体をこの順に積層し、電極体1を得る。また、正極構造体、袋状負極構造体、及び正極構造体をこの順に積層し、電極体2を得る。そして、正極集電体層同士を接触させるように、電極体1、電極体2、及び電極体1をこの順で積層する。続いて、内部に配置された正極集電体層及び負極集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面を覆うように、上下の袋状正極構造体と袋状負極構造体との外縁をそれぞれ接触させて一体化させる。これにより、電極構造体が得られる。得られた電極構造体に正極端子及び負極端子を取り付け、ラミネート外装体の内部に収容し、熱溶着により封止する。これにより全固体電池が得られる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例に基づいて、本開示の全固体電池についてさらに説明する。
【0100】
[全固体電池の作製]
<実施例1>
(負極構造体の作製)
負極活物質(Si粒子、平均粒径2.5μm)と、導電材(VGCF-H:気相法炭素繊維)と、バインダー(PVdF-HFP:ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)を、重量比で、負極活物質:導電材:バインダー=94:4:2となるように秤量し、分散媒(ジイソブチルケトン)とともに混合した。得られた混合物を、超音波ホモジナイザー(UH-50、株式会社エスエムテー製)で分散させることにより、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを、負極集電体層(Ni箔、厚さ15μm)上に、アプリケーターによるブレードコート法により塗工し、100℃で30分間乾燥させた。その後、負極集電体の反対側の面にも同様に塗工を行うことで、負極集電体層の両面に負極活物質層を有する負極構造中間体を得た。
【0101】
また、PEO(polyethylene oxide、Mw約4,000,000)とLiTFSI(LiN(SO2CF3)2)をEO単位:Li=20:1のモル比になるように秤量し、アセトニトリルに混合した後、均質な溶液になるまで攪拌した。得られたPEO-LiTFSI溶液を、負極構造中間体の一方の面に、アプリケーターによるブレードコート法により塗工し、100℃で60分間乾燥させた。その後、負極構造中間体の他方の面にも同様にPEO-LiTFSI溶液を塗工し、負極構造体を得た。なお、乾燥後に、重量比で、負極活物質:ポリマー電解質=68:32となるようにブレードのギャップを調整した。その後、プレスにより緻密化することで負極集電体層の両面のそれぞれに負極活物質層が配置された負極積層体を得た。
【0102】
(正極構造体の作製)
転動流動造粒コーティング装置でLiNbO3コートを行った正極活物質(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、平均粒径10μm)と、硫化物固体電解質(10LiI・15LiBr・75(0.75Li2S・0.25P2S5)(mol%)、平均粒径0.5μm)と、導電材(VGCF-H)と、バインダー(SBR:スチレンブタジエンゴム)を、重量比で、正極活物質:硫化物固体電解質:導電材:バインダー=85:13:1:1となるように秤量し、分散媒(ジイソブチルケトン)とともに混合した。得られた混合物を、超音波ホモジナイザー(UH-50、株式会社エスエムテー製)で分散させることにより、正極スラリーを得た。得られた正極スラリーを、Al箔(厚さ15μm)上に、アプリケーターによるブレードコート法により塗工し、100℃で30分間乾燥し、プレスにより緻密化することで正極層とAl箔を有する正極構造体を得た。
【0103】
(固体電解質層の作製)
PEO(polyethylene oxide、Mw約4,000,000)とLiTFSI(LiN(SO2CF3)2)をEO単位:Li=20:1のモル比になるように秤量し、アセトニトリルに混合した。得られた溶液に開始剤BPO(Benzoyl peroxide)をPEO-LiTFSIの10wt%になるように混合した後、均質な溶液になるまで撹拌した。作製したポリマー電解質溶液を、PETフィルム上に、アプリケーターによるブレードコート法により幅7.4cmとなるように塗工し、100℃で60分間乾燥した後、長さ14.2cmとなるように切断することでポリマー電解質を含む固体電解質層を得た。
【0104】
(全固体電池の作製)
正極活物質層が7.0cm×7.0cmとなるように切り出された正極構造体と、固体電解質層とを、正極構造体と固体電解質層とが直接接触し、延出部が配置されている側とは反対の正極集電体層の端面の中央部が固体電解質層の端面の中央部と一致するように貼り合わせ、固体電解質層を長辺方向に折り曲げることで袋状正極構造体を得た。続いて、7.0cmX7.0cmとなるように切り出された負極積層体の両面に、袋状正極構造体を正極活物質層側が直接接触するように張り合わせ、0.5t/cm2でプレスした。そして、各端子を溶接後、Al金属層を含むラミネート外装体の内部に電極構造体を封止し、実施例1の全固体電池を得た。
【0105】
<実施例2>
負極構造体の作製、正極構造体の作製、及び固体電解質層の作製は実施例1と同様である。
【0106】
(全固体電池の作製)
正極活物質層が7.0cm×7.0cmとなるように切り出された正極構造体と、固体電解質層とを、正極構造体と固体電解質層とが直接接触し、延出部が配置されている側とは反対の正極集電体層の端面の中央部が固体電解質層の端面の中央部と一致するように貼り合わせ、固体電解質層を長辺方向に折り曲げることで袋状正極構造体を得た。続いて、負極活物質層が7.0cmX7.0cmとなるように切り出された負極積層体の一面に、袋状正極構造体を正極活物質層側が直接接触するように張り合わせ、もう一面に正極構造体を正極活物質側が直接接触するように張り合わせた後、0.5t/cm2でプレスすることで、電極体1を得た。
また、負極活物質層が7.0cm×7.0cmとなるように切り出された負極積層体と、固体電解質層とを、負極積層体と固体電解質層とが直接接触し、延出部が配置されている側とは反対の負極集電体層の端面の中央部が固体電解質層の端面の中央部と一致するように貼り合わせ、固体電解質層を長辺方向に折り曲げることで袋状負極構造体を得た。続いて、袋状負極構造体の両面に、正極活物質層が7.0cm×7.0cmとなるように切り出された正極構造体を、正極活物質層と固体電解質層とが直接接触するように張り合わせた後、0.5t/cm2でプレスすることで、電極体2を得た。
正極集電体層同士が直接接触するように、電極体2の両面に電極体1を積層した。続いて、集電体層の延出部が配置されている側面以外の側面において、3つの袋状固体電解質の外縁をそれぞれ接合させることで電極間を固定した。そして、各端子を溶接後、Al金属層を含むラミネート外装体の内部に電極構造体を封止し、実施例2の全固体電池を得た。
【0107】
<比較例1>
負極構造体の作製、正極構造体の作製、及び固体電解質層の作製は実施例1と同様である。
【0108】
(全固体電池の作製)
負極活物質層が7.2cm×7.2cmとなるように切り出された負極構造体の両面に、7.2cm×7.2cmとなるように切り出された固体電解質層を、負極活物質層と固体電解質層とが直接接触し、かつ、延出部が配置されている側の端面が一致するように貼り合せた。得られた積層体の両面に、正極活物質層が7.0cm×7.0cmとなるように切り出された正極構造体を、正極活物質層と固体電解質層とが直接接触するように張り合わせ、0.5t/cm2でプレスし、電極体を得た。そして、得られた電極体に各端子を溶接後、Al金属層を含むラミネート外装体の内部に電極体を封止し、比較例1の全固体電池を得た。
【0109】
<比較例2>
比較例1で得られた電極体を3個積層し、各端子を溶接後、Al金属層を含むラミネート外装体の内部に電極体を封止し、比較例2の全固体電池を得た。
【0110】
[評価]
得られた全固体電池について、ラミネート外装体の溶着部を削ってAl金属層を露出させた。そして、テスターを用いてAl金属層と各端子間の電圧を計測し、ラミネート外装体を介した短絡率を評価した。計測電圧が0Vの場合短絡と判定し、0Vより大きい場合短絡していないと判定した。試験はそれぞれ10個ずつ行った。結果を以下に示した。
実施例1:短絡率0/10
実施例2:短絡率0/10
比較例1:短絡率2/10
比較例2:短絡率4/10
【0111】
上記の結果より、最外固体電解質層を有する電極構造体を用いた実施例1、2はラミネート外装体を介した短絡を防止できていた。一方で、最外固体電解質層を有さない電極構造体を用いた比較例1、2ではラミネート外装体を介した短絡を防止できていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本開示における全固体電池は、典型的には全固体リチウムイオン二次電池である。全固体電池の用途は、特に限定されないが、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド自動車または電気自動車の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における全固体電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 全固体電池
10 外装体
20 電極構造体
210 電極積層体
211 電極体
2111 正極集電体層(第1の集電体層)
2112 正極活物質層(第1の活物質層)
2113 第1の固体電解質層
2114 負極活物質層(第2の活物質層)
2115 負極集電体層(第2の集電体層)
2116 負極活物質層(第2の活物質層)
2117 正極活物質層(第1の活物質層)
2118 正極集電体層(第1の集電体層)
2119 正極活物質層(第1の活物質層)
220 最外固体電解質層
1020 電極構造体
1210 電極積層体
1211 電極体
2211 電極体
12117 第2の固体電解質層
12118 正極活物質層(第1の活物質層)
12119 正極集電体層(第1の集電体層)
22111 正極集電体層(第1の集電体層)
22112 正極活物質層(第1の活物質層)
22113 第1の固体電解質層