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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】負荷回生システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/10 20060101AFI20240709BHJP
   B66C 25/00 20060101ALI20240709BHJP
   H02P 103/20 20150101ALN20240709BHJP
【FI】
H02P9/10
B66C25/00
H02P103:20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021129293
(22)【出願日】2021-08-05
(65)【公開番号】P2023023619
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荏本 俊樹
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-68497(JP,U)
【文献】特開2009-38851(JP,A)
【文献】特開平10-150726(JP,A)
【文献】特開平4-275100(JP,A)
【文献】特開2018-121379(JP,A)
【文献】特開平1-274679(JP,A)
【文献】特開平8-84445(JP,A)
【文献】米国特許第04471286(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/10
B66C 25/00
H02P 103/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源に接続された誘導電動機と同期発電機とが軸直結され、エネルギーを前記商用電源に回生可能なMGセットと、
前記同期発電機の出力電圧を検出する電圧検出器と、
前記同期発電機の出力側に接続された回生要求のある負荷と、
前記負荷と並列に接続され、前記電圧検出器によって検出される電圧値に応じて動作する回生電力消費装置と、
前記回生電力消費装置に接続され、前記回生電力消費装置の動作に応じて回生電力を消費する抵抗器と、
を備え、
前記回生電力消費装置は、
前記負荷からの前記回生要求に対し、前記MGセットよりも高速に応答するコンバータと、
前記負荷からの前記回生要求に対し、前記MGセットよりも高速に応答し、前記抵抗器の電流を制御する抵抗器電流制御手段と、
前記コンバータと前記抵抗器電流制御手段とを制御する制御部と、
を備えることを特徴とする負荷回生システム。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷回生システムにおいて、
前記制御部は、前記コンバータの力率を略1且つ、前記コンバータの直流電圧が所定の直流電圧基準に追従するように前記コンバータの動作を制御するとともに、前記電圧値に応じて前記回生電力を前記抵抗器に出力するよう前記抵抗器電流制御手段の動作を制御し、
前記抵抗器は、前記抵抗器電流制御手段の動作に応じて前記回生電力を消費する
ことを特徴とする負荷回生システム。
【請求項3】
請求項2に記載の負荷回生システムにおいて、
前記制御部は、前記電圧値が所定の閾値を超えたときに、前記電圧値と前記閾値の差分に応じた電力指令値を出力し、前記抵抗器電流制御手段の出力電流が、前記電力指令値から変換された電流指令値に追従するように前記抵抗器電流制御手段の動作を制御し、
前記抵抗器は、前記抵抗器電流制御手段の前記出力電流に応じて前記回生電力を消費する
ことを特徴とする負荷回生システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の負荷回生システムにおいて、
前記負荷は、前記MGセットの応答速度よりも急峻な力行及び回生の要求のある荷役機械である
ことを特徴とする負荷回生システム。
【請求項5】
商用電源に接続された誘導電動機と同期発電機とが軸直結され、エネルギーを前記商用電源に回生可能なMGセットと、
前記同期発電機の出力電圧を検出する電圧検出器と、
前記同期発電機の出力側に接続された回生要求のある負荷と、
前記負荷と並列に接続され、前記電圧検出器によって検出される電圧値に応じて動作する回生電力蓄積装置と、
前記回生電力蓄積装置に設けられ、前記回生電力蓄積装置の動作に応じて回生電力を充電又は放電する蓄電装置と、
を備え、
前記回生電力蓄積装置は、
前記負荷からの前記回生要求に対し、前記MGセットよりも高速に応答するコンバータと、
前記コンバータの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記コンバータの力率を略1で動作するように制御するとともに、前記電圧値が前記同期発電機の定格電圧より高い所定の第一閾値を超えたとき、前記電圧値と前記第一閾値との差に対応した電力で前記蓄電装置を充電するように前記コンバータを制御し、
前記電圧値が前記同期発電機の定格電圧より低い所定の第二閾値より低いとき、前記第二閾値と前記電圧値との差に対応した電力で前記蓄電装置を放電するように前記コンバータを制御し、
前記電圧値が前記第一閾値と前記第二閾値との間にあるときは、前記蓄電装置の充電率が所定充電率以下となるように前記コンバータを制御する
ことを特徴とする負荷回生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生可能なMGセットに用いられる負荷回生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷役機械として、巨大なものや重いものを吊り上げて運ぶクレーンや、バース(岸壁)においてばら積み貨物を陸揚げするためのアンローダや、重量物を引き上げたり引き寄せたりするのに用いられる巻上機(ウインチ)などが知られている。このような荷役機械は、荷物を上方に巻上げるときは大きな電力を要し(力行)、巻下げるときはこの巻下げたエネルギーを放出する(回生)という特異性を有する。
【0003】
そして、このような荷役機械は、電源事情により専用発電機を電源として電動機で駆動される場合も多いが、この巻下げるとき放出されるエネルギーを何かで消費しなければ、発電機や電動機等を始め、設備やシステムに影響を及ぼす場合がある。このため、巻下げるとき放出されるエネルギー、すなわち回生エネルギー(回生電力)を消費できる回生電力吸収装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭62-68497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の回生電力吸収装置は、負荷に並列に接続したサイリスタと抵抗器の直列回路、及び負荷の大きさを検出する検出器を備え、検出器の出力で当該サイリスタを制御し、抵抗により回生電力を消費する。しかし、特許文献1の回生電力吸収装置では、回生電力は全て抵抗で消費されるため、大きな抵抗を用意しなければならず、コンパクトな装置とすることができない。
【0006】
また、特許文献1では、サイリスタを用いているため、リアクトルも設けられており、余分な無効電力を吸収して消費してしまう。しかし、一般に、電源装置は、基本的に出せる無効電力量が決まっているため、有効電力以外に無効電力を多く消費してしまうと、システムの安定性を欠くことになる。
【0007】
また、特許文献1では、電源装置としてエンジン発電機が利用されている。しかし、エンジン発電機によると、回生エネルギーを再利用することができないため、エネルギー効率が悪く不経済である。このため、例えば、回生要求のあるクレーン試験設備等では、電源装置として、エネルギーを回生可能な電動発電機(以下、「MGセット(Motor-Generator Set)」という。)が用いられている。エネルギーを回生可能なMGセットが用いられることで、例えば、クレーンの巻下げ時に発生する回生エネルギー(回生電力)を電源に戻すことが可能となるため、効率よくエネルギーを利用することができ、省エネルギー(省エネ)に繋げることができる。
【0008】
しかし、例えば、上記のような試験設備において、回生可能なMGセットが用いられた場合であっても、回生エネルギーが急峻であると当該MGセットでは制御しきれず、過電圧となるなどシステムに異常を来すこともあった。このため、このような試験設備においては、システムの安定化のため、故意に負荷を軽くして回生エネルギーの速度を遅くしたり、試験項目を制限したりして、発電機系統や設備に異常が出ないような運用がなされ、そのために試験性能が制限されることがあった。
【0009】
そこで、本件開示は、回生可能なMGセットが用いられた設備において、急峻な回生エネルギーを時間遅れ無く吸収することによる、発電機系統への影響の軽減、システムの安定度の向上、及び設備の性能の向上を、コンパクトな装置で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、負荷回生システムは、商用電源に接続された誘導電動機と同期発電機とが軸直結され、エネルギーを商用電源に回生可能なMGセットと、同期発電機の出力電圧を検出する電圧検出器と、同期発電機の出力側に接続された回生要求のある負荷と、負荷と並列に接続され、電圧検出器によって検出される電圧値に応じて動作する回生電力消費装置と、回生電力消費装置に接続され、回生電力消費装置の動作に応じて回生電力を消費する抵抗器と、を備え、回生電力消費装置は、負荷からの回生要求に対し、MGセットよりも高速に応答するコンバータと、負荷からの回生要求に対し、MGセットよりも高速に応答し、抵抗器の電流を制御する抵抗器電流制御手段と、コンバータと抵抗器電流制御手段とを制御する制御部と、を備える。
【0011】
別の態様によれば、負荷回生システムは、商用電源に接続された誘導電動機と同期発電機とが軸直結され、エネルギーを商用電源に回生可能なMGセットと、同期発電機の出力電圧を検出する電圧検出器と、同期発電機の出力側に接続された回生要求のある負荷と、負荷と並列に接続され、電圧検出器によって検出される電圧値に応じて動作する回生電力蓄積装置と、回生電力蓄積装置に設けられ、回生電力蓄積装置の動作に応じて回生電力を充電又は放電する蓄電装置と、を備え、回生電力蓄積装置は、負荷からの回生要求に対し、MGセットよりも高速に応答するコンバータと、コンバータの動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、コンバータの力率を略1で動作するように制御するとともに、電圧値が同期発電機の定格電圧より高い所定の第一閾値を超えたとき、電圧値と第一閾値との差に対応した電力で蓄電装置を充電するようにコンバータを制御し、電圧値が同期発電機の定格電圧より低い所定の第二閾値より低いとき、第二閾値と電圧値との差に対応した電力で蓄電装置を放電するようにコンバータを制御し、電圧値が第一閾値と第二閾値との間にあるときは、蓄電装置の充電率が所定充電率以下となるようにコンバータを制御する。
【発明の効果】
【0012】
本件開示によれば、回生可能なMGセットが用いられた設備において、急峻な回生エネルギーを時間遅れ無く吸収することによる、発電機系統への影響の軽減、システムの安定度の向上、及び設備の性能の向上を、コンパクトな装置で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る負荷回生システムの構成例を示す図である。
図2図1に示す負荷回生システムにおける電力と電圧との関係の一例を説明するグラフである。
図3図1に示す負荷回生システムにおける電力と時間との関係の一例を説明するグラフである。
図4図1に示す負荷回生システムにおける動作の一例を示すタイムチャートである。
図5】別の実施形態に係る負荷回生システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本件開示の負荷回生システムの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
<一実施形態>
図1は、一実施形態に係る負荷回生システム1の構成例を示す図である。
【0016】
図1において、負荷回生システム1は、例えば、クレーンやアンローダや巻上機等の荷役機械が使用される設備で用いられる。なお、本明細書では、負荷回生システム1が、荷役機械が使用される設備の一例として、クレーン試験設備40で用いられている場合を例にとって説明する。
【0017】
負荷回生システム1は、クレーン試験設備40等で用いられ、商用電源11と、遮断器12と、変圧器13と、電動機駆動装置20と、MGセット(電動発電機)30とを有する。また、負荷回生システム1は、遮断器51と、変圧器52と、計器用変圧器53と、電圧検出器54と、励磁制御回路55と、回生電力消費装置60と、抵抗器64とを有する。
【0018】
例えば、クレーン試験設備40等の急峻な回生と力行とが頻繁に繰り返される設備では、回生可能なMGセット30が用いられた場合であっても、応答遅れが生ずるMGセット30では回生エネルギーを制御しきれないことがあるためである。なお、以下、本明細書のMGセット30は、特に断りが無い限り、エネルギーを回生可能なものであるとする。
【0019】
図1に示すとおり、負荷回生システム1において、商用電源11と、遮断器12と、変圧器13と、電動機駆動装置20と、MGセット30とは、直列に接続される。
【0020】
商用電源11は、電力会社から、工場、ビル、一般家庭等に送電される交流電力の電力系統であり、周波数は、日本では、50Hzと60Hzの2種類である。
【0021】
遮断器12は、負荷回生システム1における電源設備等の正常動作時の負荷電流を開閉するとともに、不図示の保護継電器と連携して事故電流などを遮断することにより負荷側の設備を保護し、上流側への事故波及を防止する開閉器である。
【0022】
変圧器13は、例えば、商用電源11の電圧を所定の電圧に変換する。
【0023】
電動機駆動装置20は、変圧器13と、MGセット30との間に配置され、フィルタ21と、コンバータ22と、インバータ23と、制御部24とを有する。電動機駆動装置20は、制御部24がコンバータ22とインバータ23とを動作させることによって、MGセット30の動作を制御する。例えば、電動機駆動装置20は、MGセット30が、クレーン試験設備40へ電力を供給する力行運転と、商用電源11へ電源回生を行う回生運転とを切り替えて運転する動作を制御する。
【0024】
フィルタ21は、インバータ23が発生させた高調波が商用電源11の電源系統に流れないよう高調波成分を除去するフィルタとして機能する。
【0025】
コンバータ22は、商用電源11とインバータ23との間に配置され、商用電源11とインバータ23との間の電力変換を行う。コンバータ22は、自励式変換装置であり、順変換器として動作するだけでなく、例えば、電源回生コンバータとしても動作し、交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から交流電力への変換の双方向の電力変換を行うことができる。
【0026】
インバータ23は、コンバータ22とMGセット30における後述の誘導電動機31との間に配置され、例えば、誘導電動機31を所定の速度で動かすため、直流又は交流から、交流を発生させる自励式変換装置である。インバータ23は、例えば、その出力交流電力の電圧と周波数とを任意に制御する手法である可変電圧可変周波数制御(VVVF制御:Variable voltage variable frequency control)を行う。
【0027】
電動機駆動装置20において、コンバータ22とインバータ23とが組み合わされていることにより、力行運転時には、コンバータ22は、商用電源11から供給される交流電力を直流電力へ変換する。そして、インバータ23は、コンバータ22によって変換された直流電力を交流電力へ変換して誘導電動機31へ供給し、誘導電動機31を駆動する。
【0028】
一方、回生運転時には、インバータ23は、誘導電動機31の減速によって誘導電動機31に生じる誘導起電力を直流電力へ変換するように内部のスイッチング素子を駆動し、直流電力をコンバータ22へ供給する。そして、コンバータ22は、インバータ23から供給される直流電力を交流電力へ変換して商用電源11へ供給することによって電源回生を行う。
【0029】
制御部24は、例えば、プログラムを実行することにより動作するCPU(Central Processing Unit)等の不図示のプロセッサを有する。制御部24は、例えば、不図示の記憶部に記憶された所定のプログラムを実行することにより不図示のプロセッサを動作させて、電動機駆動装置20やMGセット30の動作を統括的に制御する。制御部24は、直流電圧一定制御回路25と、速度制御回路26とを有する。
【0030】
直流電圧一定制御回路25は、コンバータ22の直流電圧が所定の直流電圧基準に追従するようにコンバータ22の入力電流を制御する。
【0031】
速度制御回路26は、後述の速度センサ33からの速度フィードバック信号が所定の速度基準に追従するようにインバータ23の出力電圧を制御する。例えば、速度フィードバック信号が、同期発電機32の出力周波数が所定の周波数(例えば、50Hz又は60Hz)となる回転速度となるようインバータ23を制御する。
【0032】
MGセット(電動発電機)30は、誘導電動機31と同期発電機32とを有し、誘導電動機31と同期発電機32とを軸30aを介して同軸で軸直結して電力を変換することを目的とする電力機器である。MGセット30は、商用電源11から変換元の電力(電気エネルギー)を誘導電動機31が受け、誘導電動機31の回転運動(機械エネルギー)を同軸上の同期発電機32に伝達する。そして、同期発電機32は、誘導電動機31から受けた回転運動(機械エネルギー)を変換先の電力(電気エネルギー)に戻す。すなわち、同期発電機32は、誘導電動機31から受けた回転エネルギーによって発電する。
【0033】
MGセット30は、電力、電圧、位相、周波数の変換にも使用される。すなわち、MGセット30は、例えば、誘導電動機31の回転数を制御することで、同期発電機32からの出力周波数を自由に設定することができ、高調波のない綺麗な正弦波で出力することができる。このため、MGセット30は、例えば、製造地と使用地とで電源周波数の異なる製品の試験をする場合や、電力会社が供給する電力とは異なる周波数の電力が必要な場合に用いられる。例えば、後述のクレーン46が、60Hz地区で製作されて、50Hz地区で使用されるものである場合、製作された60Hz地区において、性能試験用に50Hzの電源が必要な場合がある。例えば、このような場合に、電源設備として、MGセット30が用いられ、製作された60Hz地区において、使用される50Hzでの性能試験が行われる。
【0034】
なお、本明細書におけるMGセット30は、上述のとおり、エネルギーを回生可能なものであるため、誘導電動機31と同期発電機32とは、可逆に動作する。すなわち、MGセット30は、回生時には、同期発電機32が電動機として動作し、誘導電動機31が発電機として動作する。これにより、MGセット30は、例えば、後述のクレーン46が巻き下げるときなどに放出されるエネルギーを吸収する(電源系統へ戻す)。なお、誘導電動機31と同期発電機32とは、力行時と回生時とで、回転方向は同一であり、電圧と電流の位相が略180度相違する。
【0035】
誘導電動機31(IM:Induction Motor)は、軸30aを介して同期発電機32と同軸で軸直結されるとともに、速度センサ33とも接続される。誘導電動機31は、速度センサ33によって測定される速度が、所定の速度、例えば、同期発電機32の出力周波数(例えば、50Hz又は60Hz)に見合う速度となるよう電動機駆動装置20によって制御される。
【0036】
同期発電機(SG:Synchronous Generator)32は、例えば、誘導電動機31の回転数に同期した周波数の正弦波の電力を負荷(クレーン試験フィーダ41)に供給する。同期発電機32は、商用電源11とは異なる周波数の電源を歪の少ない綺麗な正弦波で供給することができる。なお、同期発電機32は、軸30aを介して誘導電動機31と同軸で軸直結されるとともに、励磁制御回路55により制御される。
【0037】
速度センサ(SS:Speed Sensor)33は、誘導電動機31と接続され、誘導電動機31の回転速度を測定して、速度フィードバック信号を速度制御回路26に出力する。
【0038】
また、図1に示すとおり、MGセット30の出力側には、クレーン試験設備40における例えば複数のクレーン試験フィーダ41が接続される。なお、本実施形態において、MGセット30の出力側は、クレーン試験設備40には限られず、力行と回生とが行われる装置や設備であれば適用可能である。
【0039】
クレーン試験設備40は、クレーン試験フィーダ41と、遮断器42と、クレーン試験場43とを有する。クレーン試験設備40では、クレーン試験場43に配置された後述のクレーン46の性能試験や動作試験が行われる。例えば、クレーン試験設備40では、クレーン46の出荷前や修理後等に、クレーン46の上昇性、下降性、スピード、制御性、又は安全性などについて種々の試験や測定が行われ、クレーン46の性能確認や動作確認等が行われる。なお、クレーン試験設備40、クレーン試験フィーダ41及びクレーン46は、請求項の「負荷」又は「回生要求のある負荷」の一例である。
【0040】
クレーン試験フィーダ41は、一端がMGセット30の同期発電機32の出力と接続され、他端がクレーン試験場43と接続される。クレーン試験フィーダ41は、MGセット30から供給される電力をクレーン試験場43に供給する。また回生時には、クレーン試験フィーダ41は、クレーン試験場43から供給される電力をMGセット30や後述の回生電力消費装置60に供給する。
【0041】
遮断器42は、同期発電機32の出力とクレーン試験場43との間に設けられ、例えば、クレーン試験設備40で試験が行われているときの負荷電流を開閉するとともに、不図示の保護継電器と連携して事故電流などを遮断する。これにより、遮断器42は、MGセット30側やクレーン試験場43側の設備へ流れる事故電流を遮断し、これらの設備への事故波及が防止される。
【0042】
クレーン試験場43には、電動機駆動装置44を介して誘導電動機45を有する試験対象のクレーン46が配置される。図1に示すとおり、本実施形態においては、クレーン試験場43には、一例として、3台のクレーン46a、46b、46cが配置されているが、設備の面積や機能等により、試験対象のクレーン46の台数等は、適宜変更される。同様に、クレーン46に付随する電動機駆動装置44と誘導電動機45との台数も適宜変更される。
【0043】
電動機駆動装置44は、クレーン試験場43において、クレーン46の台数や、面積、機能等に応じてクレーン試験フィーダ41と誘導電動機45との間にそれぞれ配置され、上述の電動機駆動装置20と同様の構成を有し、同様の動作を行う。すなわち、例えば、電動機駆動装置44は、不図示のフィルタとコンバータとインバータと制御部とを有し、誘導電動機45が、クレーン46へ電力を供給する力行運転と、MGセット30へ電源回生を行う回生運転とを切り替えて運転する動作を制御する。電動機駆動装置44を構成するコンバータとインバータも自励式変換装置である。
【0044】
誘導電動機(IM)45は、クレーン46に付随するものであり、上述の誘導電動機31と同様の構成を有し、同様の動作を行う。すなわち、誘導電動機45は、力行時には電動機として動作し、回生時には発電機として動作して電源回生を行う。これにより、誘導電動機45は、例えば、クレーン46が巻き下げるときなどに放出されるエネルギーを、電動機駆動装置44を介してMGセット30側に回生する。
【0045】
クレーン46は、誘導電動機45を有するものであり、誘導電動機45を介して、上述のとおり、荷物を上方に巻上げるときは大きな電力を要し(力行)、巻下げるときはこの巻下げたエネルギーを放出する(回生)という特異性を有する荷役機械である。なお、クレーン46は、このような荷役機械の一例であり、例えば、アンローダや巻上機等であってもよい。例えば、通常のブロア、ポンプ、圧延装置なども存在するが、これらの機械は、クレーン46等とは異なり急峻な回生が行われることはほとんど無い。一方、クレーン46等は、急峻な力行と回生とが連続して行われるため、通常のモータ等と比べると特異性を有する機械である。
【0046】
本実施形態において、クレーン46からの回生エネルギーは、MGセット30が吸収するが、MGセット30を構成する誘導電動機31や同期発電機32は回転機であり、慣性もあるため、力行から回生には所定の応答時間を要し、例えば1~2秒を要する。一方、クレーン試験設備40において、誘導電動機45とMGセット30との間には、不図示のコンバータとインバータとを有する電動機駆動装置44が配置されている。電動機駆動装置44が有する不図示のコンバータとインバータとは高速応答性を有し、例えば、0.1秒前後で応答するため、電動機駆動装置44パワーの上げ下げの要求に、例えば1~2秒を要するMGセット30の応答速度がついていけない。このため、本実施形態では、MGセット30よりも早く回生エネルギーを吸収するための下記の構成を有する。
【0047】
図1に示すとおり、MGセット30の同期発電機32の出力側には、上述の例えば複数のクレーン試験フィーダ41と並列に、遮断器51と、変圧器52と、回生電力消費装置60と、抵抗器64とが直列に接続される。また、同期発電機32の出力側には、計器用変圧器53と、電圧検出器54とが、同期発電機32の出力電圧を計測可能に接続される。そして、電圧検出器54(又は、計器用変圧器53及び電圧検出器54)は、励磁制御回路55と、回生電力消費装置60とに、電圧検出信号Vfを送信可能に信号線で接続される。
【0048】
遮断器51は、同期発電機32の出力と変圧器52との間に設けられ、例えば、同期発電機32やクレーン試験設備40からの負荷電流を開閉するとともに、不図示の保護継電器と連携して事故電流などを遮断する。これにより、遮断器42は、MGセット30側や回生電力消費装置60側の設備へ流れる事故電流を遮断し、これらの設備への事故波及が防止される。
【0049】
変圧器52は、MGセット30やクレーン試験設備40からの電圧を所定の電圧に変換する。
【0050】
計器用変圧器(VT:Voltage Transformer)53は、同期発電機32の出力電圧を、制御回路に使用しやすい電圧(例えば、AC110V等)に降圧させ、例えば電圧計等の計器や保護継電器を動作させるために配置される。以下、本明細書において、計器用変圧器53を「VT53」とも称する。VT53は、電圧検出器54が同期発電機32の出力側の電圧を測定可能な位置に配置される。
【0051】
電圧検出器54は、VT53を介して降圧された電圧を検出し、検出された電圧値に基づく電圧検出信号Vfを、励磁制御回路55と、回生電力消費装置60の後述の電力指令設定回路72とに出力する。なお、電圧値が問題となるのは、MGセット30の応答遅れの短い時間(例えば、1~2秒)に関するものであるため、電圧検出器54によって検出される電圧値は、例えば、実効値である。なお、VT53及び電圧検出器54は、請求項の「電圧検出器」の一例である。以下、VT53と電圧検出器54とを合わせて電圧検出器54とも称する。
【0052】
励磁制御回路55は、電圧検出器54からの電圧検出信号Vfに基づき、当該電圧検出信号Vfが所定の交流電圧値になるよう同期発電機32の励磁電流(界磁)を制御する。なお、以下、電圧検出信号Vfは、「検出値Vf」とも称される。なお、電圧検出信号Vf及び検出値Vfは、請求項の「電圧値」の一例である。
【0053】
回生電力消費装置60は、フィルタ61と、コンバータ62と、インバータ63と、制御部70とを有し、抵抗器(抵抗)64と接続される。回生電力消費装置60は、電圧検出信号Vfに基づいてインバータ63を動作させ、クレーン試験フィーダ41からの回生電力を、MGセット30よりも高速応答性を有するコンバータ62とインバータ63とを介して時間遅れ無く抵抗器64に吸収(消費)させる。例えばコンバータ62およびインバータ63は自励式変換器である。
【0054】
フィルタ61は、例えば、インバータ63が発生させた高調波がMGセット30側に流れないよう高次の高調波成分を除去するフィルタとして機能する。
【0055】
コンバータ62は、MGセット30の出力側とインバータ63との間に配置され、MGセット30又はクレーン試験フィーダ41とインバータ63との間の電力変換を行う。コンバータ62は、上述のコンバータ22と同様に、順変換器として動作するだけでなく、例えば、電源回生コンバータとしても動作し、交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から交流電力への変換の双方向の電力変換を行うものであってもよい。コンバータ62は、後述の直流電圧一定制御回路71によって制御される。コンバータ62は、MGセット30よりも高速に応答する。コンバータ62は自励式変換器であるので、略力率1(例えば力率1)で運転することが可能であり、無効電力消費がなくMGセット30の出力側(同期発電機32の出力側)の不安定性が減少する。なお、コンバータ62は、2現象である必要は無く、ダイオード整流器であってもよい。この場合、若干の無効電力消費はあるが直流電圧一定制御回路71は省略可能である。
【0056】
インバータ63は、上述のインバータ23と同様に、直流又は交流から、周波数の異なる交流を発生させる電源回路である。インバータ63は、コンバータ62と抵抗器64との間に配置され、電圧検出信号Vfに応じて制御部70によって動作が制御され、クレーン試験フィーダ41から回生された電力を、抵抗器64に吸収(消費)させる。例えば、電圧検出信号Vfが所定の閾値Vcを超えた場合、インバータ63は、制御部70の制御に従って動作し、クレーン試験フィーダ41から回生された電力を、抵抗器64に出力し、抵抗器64に当該電力を吸収(消費)させる。インバータ63は、MGセット30よりも高速に応答する。
【0057】
抵抗器(抵抗)64は、例えば、電圧検出信号Vfに基づいてインバータ63から出力された電力(電気エネルギー)を熱エネルギーに変換して吸収(消費)する。
【0058】
制御部70は、例えば、プログラムを実行することにより動作するCPU等の不図示のプロセッサを有し、不図示の記憶部に記憶された所定のプログラムを実行することにより当該プロセッサを動作させて、回生電力消費装置60の動作を統括的に制御する。制御部70は、直流電圧一定制御回路71と、電力指令設定回路72と、換算回路73と、電流制御回路74とを有する。
【0059】
直流電圧一定制御回路71は、コンバータ62の直流電圧が所定の直流電圧基準に追従するようにコンバータ62の入力電流を制御する。
【0060】
電力指令設定回路72は、例えば、電圧検出器54から電圧検出信号(検出値)Vfを取得して、取得した検出値Vfに基づいて電力指令値を換算回路73に出力する。
【0061】
図1に示すとおり、図中、電力指令設定回路72のボックス内には、電力指令(縦軸)と検出値Vf(横軸)との関係を表すグラフが示されている。電力指令設定回路72は、取得した検出値Vfに応じて、当該グラフに基づいて、電力指令値を換算回路73に出力する。なお、当該グラフ中Vcは、所定の閾値(所定値)である。
【0062】
例えば、当該グラフに示されるように、検出値Vfが所定の閾値Vc以下(Vf≦Vc)である場合、電力指令設定回路72から出力される電力指令値はゼロである。すなわち、この場合、電力指令は、電力指令設定回路72から換算回路73に出力されない。一方、例えば、当該グラフに示されるように、検出値Vfが所定の閾値Vcを超えた(Vf>Vc)場合、電力指令値は、検出値Vfと閾値Vcとの差分に応じて出力する。例えば、電力指令値は、検出値Vf-閾値Vc(Vf-Vc)に比例して電力指令設定回路72から換算回路73に出力される。
【0063】
換言すれば、電力指令設定回路72が電圧検出器54から電圧検出信号Vfを取得した場合において、制御部70が、検出値Vfが所定の閾値Vc以下(Vf≦Vc)であると判定したときは、電力指令設定回路72は、電力指令を換算回路73に出力しない。一方、制御部70が、検出値Vfが所定の閾値Vcを超えた(Vf>Vc)と判定したときは、電力指令設定回路72は、検出値Vf-閾値Vc(Vf-Vc)に比例した電力指令値を換算回路73に出力する。
【0064】
換算回路73は、電力指令設定回路72から出力された電力指令値を電流指令値に変換し、電流制御回路74に出力する。
【0065】
電流制御回路74は、換算回路73から出力された電流指令値にインバータ63の出力電流が追従するようにインバータ63を制御する。すなわち、これらの制御部70及び制御部70内の電力指令設定回路72と換算回路73と電流制御回路74とにより、検出値Vfに基づいて、インバータ63は、動作が制御される。
【0066】
なお、インバータ63自身が、制御部70の機能を有していてもよい。すなわち、インバータ63自身が検出値Vfを取得し、インバータ63自身が、上述の制御部70と同様に、検出値Vfの大きさを判定し、検出値Vfに基づいて動作してもよい。また、電力指令設定回路72において、ハンチング防止のため、検出値Vf-閾値Vc(Vf-Vc)にヒステリス特性を持たせてもよい。
【0067】
図2は、図1に示す負荷回生システム1における電力と電圧との関係の一例を説明するグラフである。図2において、縦軸は、力行又は回生の電力(上側が力行電力P、下側が回生電力-P)であり、横軸は、電圧検出器54で検出されたMGセット30の二次側電圧(出力電圧)Vfである。
【0068】
図1で説明したとおり、本実施形態では、電圧検出器54で検出された検出値Vfは、回生電力消費装置60の制御部70における電力指令設定回路72によって取得される。そして、電力指令設定回路72が電圧検出器54から検出値Vfを取得した場合において、制御部70が、検出値Vfが所定の閾値Vcを超えたと判定したときは、電力指令設定回路72は、Vf-Vcに比例した電力指令値を換算回路73に出力する。換算回路73は、電力指令設定回路72から受けた電力指令値を電流指令値に変換し、電流制御回路74に出力する。電流制御回路74は、換算回路73から受けた電流指令値にインバータ63の出力電流が追従するようにインバータ63を制御する。すなわち、これらの電力指令設定回路72と換算回路73と電流制御回路74とにより(すなわち、制御部70により)、検出値Vfに基づいて、インバータ63は、動作が制御される。
【0069】
この場合において、図2に示すとおり、MGセット30の2次側すなわち同期発電機32の出力電圧Vfは、通常は所定の100%の電圧値すなわち定格電圧に保たれている。しかし、クレーン46の巻下げ等により回生エネルギー(回生電力)が発生すると、当該電圧値Vfが所定の閾値Vcを超過する。これにより、回生電力消費装置60の制御部70が、検出値Vfが所定の閾値Vcを超えたと判定し、インバータ63を動作させて、抵抗器64に電流を通電し、当該回生エネルギー(回生電力)を吸収(消費)させる(-P)。
【0070】
図3は、図1に示す負荷回生システム1における電力と時間との関係の一例を説明するグラフである。図3において、縦軸は、力行又は回生の電力(上側が力行電力P、下側が回生電力-P)であり、横軸は、時間Tである。
【0071】
図3に示すとおり、本実施形態において、急峻な回生が生じたときは、回生エネルギーは、抵抗器(抵抗)64で吸収される(図3中斜線部分)。そして、回生エネルギーは、時間の経過とともに徐々に抵抗64で吸収される量が少なくなり、MGセット30から電源へ回生される量が多くなる。そして、所定時間(例えば、1~2秒)が経過すると、抵抗64で吸収される回生電力が完全に無くなり、全ての回生エネルギーが、MGセット30から電源へ回生される(図3中斜線の無い部分)。
【0072】
本実施形態において、クレーン試験フィーダ41等の負荷からの回生エネルギーは、上述のとおり、通常時は、MGセット30から電源へ回生される。しかし、MGセット30を構成する誘導電動機31や同期発電機32は回転機であるため、力行から回生に要する応答時間が決まっており、例えば1~2秒の応答遅れが生ずる。このため、このような応答遅れが生ずるMGセット30では、クレーン試験フィーダ41等の負荷からの急峻な回生エネルギーを制御しきれない。
【0073】
しかし、本実施形態において、負荷回生システム1は、MGセット30よりも高速応答性を有する(例えば、0.1秒前後で応答する)コンバータ62とインバータ63とを有するため、回生エネルギーを時間遅れ無く吸収することができる。そして、図3に示すとおり、MGセット30の動作が追従し、MGセットの二次側電圧が所定の閾値Vc以下になれば、抵抗64での回生エネルギー吸収は無くなるように制御される。このため、残りの緩徐な回生エネルギーはMGセット30によって電源に戻される。
【0074】
これにより、本実施形態では、設備(クレーン試験設備40)の性能を下げる必要もなく、また、抵抗64や回生電力消費装置60などの負荷回生システム1は、従来よりも小型(コンパクト)でよく、システムの効率化を図ることが可能となる。次に、本実施形態の動作について、タイムチャートに基づいて説明する。
【0075】
<一実施形態の動作>
図4は、図1に示す負荷回生システム1における動作の一例を示すタイムチャートである。図4(a)は、負荷と時間との関係を示すタイムチャートである。図4(b)は、MGセット30の出力側電圧と時間との関係を示すタイムチャートである。図4(c)は、回生電力消費装置60(抵抗器64)の吸収電力と時間との関係を示すタイムチャートである。図4(d)は、MGセット30の出力側電力と時間との関係を示すタイムチャートである。
【0076】
図4(a)において、縦軸は、負荷の力行(電動)と回生とを示し、縦軸の上側が、クレーン46が力行(電動機巻上げあるいは、巻下げ加速状態)していることを示し、縦軸の下側が、クレーン46が回生(電動機巻下げ定速状態)していることを示す。
【0077】
図4(b)において、縦軸は、MGセット30の出力側電圧のパーセンテージ、すなわち、電圧検出器54による検出値Vfを示す。MGセット30は、通常(クレーン46の力行時)は出力100%の電圧で動作しているが、回生がかかると、出力側電圧のパーセンテージ、すなわち、電圧検出器54による検出値Vfが上昇する。図4においては、電圧(検出値Vf)が所定の値、例えば120%を超えると、システムの過電圧による保護リレーが動作すると仮定する。この場合、MGセット30の出力側電圧(検出値Vf)が、当該120%を超えない値、例えば110%を超えないように制御されるように、出力側電圧(検出値Vf)の所定の閾値Vcが例えば105%に設定されたものとする。
【0078】
図4(c)において、縦軸は、回生電力消費装置60(抵抗器64)によって吸収(消費)される電力の量を示す。縦軸の下側が、電力が回生電力消費装置60(抵抗器64)によって吸収(消費)されていることを示す。
【0079】
図4(d)において、縦軸は、MGセット30の出力側電力の発電と吸収(回生)とを示し、縦軸の上側がMGセット30によって発電されていることを示し、縦軸の下側がMGセット30によって電力が吸収(回生)されていることを示す。
【0080】
なお、図4(a)~(d)において、横軸は、共通の時間t(t0~t7)を示す。
【0081】
時間t0~t1において、クレーン46の誘導電動機45は巻上げを行っており(図4(a))、MGセット30の出力側電圧の検出値Vfは、100%である(図4(b))。この場合、制御部70は取得した検出値Vfが所定の閾値Vc(105%)以下(Vf≦Vc)であると判定し、電力指令設定回路72は電力指令を出力しないため、回生電力消費装置60は動作せず、電力は吸収されていない(図4(c))。また、このとき、MGセット30は、発電を行っている(図4(d))。
【0082】
時間t1~t2において、クレーン46の誘導電動機45は巻上げを減速しており(図4(a))、MGセット30の出力側電圧の検出値Vfは、100%である(図4(b))。この場合、制御部70は取得した検出値Vfが所定の閾値Vc(105%)以下(Vf≦Vc)であると判定し、電力指令設定回路72は電力指令を出力しないため、回生電力消費装置60は動作せず、電力は吸収されていない(図4(c))。また、このとき、MGセット30は、発電を行っているが、発電量が減少している(図4(d))。
【0083】
時間t2~t3において、クレーン46の誘導電動機45は巻上げから巻下げに転じており(図4(a))、MGセット30の出力側電圧の検出値Vfは、100%から上昇を始めている(図4(b))。この場合においても、制御部70は、取得した検出値Vfがまだ所定の閾値Vc(105%)以下(Vf≦Vc)であると判定し、電力指令設定回路72は電力指令を出力しないため、回生電力消費装置60は動作せず、電力は吸収されていない(図4(c))。また、このとき、MGセット30は、発電を停止している(図4(d))。
【0084】
時間t3~t4において、クレーン46の誘導電動機45は巻下げを加速しており(図4(a))、MGセット30の出力側電圧の検出値Vfは、所定の閾値Vcである105%を超え始める(図4(b))。
【0085】
この場合、制御部70は、取得した検出値Vfが所定の閾値Vcを超えた(Vf>Vc)と判定し、電力指令設定回路72は、検出値Vf-閾値Vc(Vf-Vc)に比例した電力指令値を出力する。そして、換算回路73は、電力指令設定回路72から出力された電力指令値を電流指令値に変換し、電流制御回路74に出力する。そして、電流制御回路74は、換算回路73から出力された電流指令値にインバータ63の出力電流が追従するようにインバータ63を制御する。
【0086】
これにより、MGセット30よりも高速応答性を有するコンバータ62とインバータ63とが電力指令値(電流指令値)に応じて時間遅れ無く動作し、抵抗器64によって、電力指令値(電流指令値)に比例した量の電力が時間遅れ無く吸収(消費)される。すなわち、検出値Vfが所定の閾値Vcを超えた(Vf>Vc)場合、検出値Vf-閾値Vc(Vf-Vc)に比例した量の電力が、回生電力消費装置60を介して、抵抗器64によって時間遅れ無く吸収(消費)される(図4(c))。
【0087】
なお、このとき、MGセット30は、検出値Vfを取得した励磁制御回路55の制御によって発電から回生に転じようとしているが、応答遅れ(例えば、1~2秒)があるためまだ回生に転じることが出来ていない(図4(d))。
【0088】
時間t4~t5において、クレーン46の誘導電動機45は巻下げが一定速度に落ち着いている(図4(a))。そして、MGセット30の出力側電圧の検出値Vfは、所定の閾値Vcである105%を超えているが、回生電力消費装置60(抵抗器64)による電力の吸収により、110%には到達していない値で落ち着いている(図4(b))。
【0089】
この場合、制御部70は、取得した検出値Vfが所定の閾値Vcを超えた(Vf>Vc)と判定し、回生電力消費装置60の各要素は、時間t3~t4と同様の動作を行う。これにより、検出値Vf-閾値Vc(Vf-Vc)に比例した量の電力が、回生電力消費装置60を介して、抵抗器64によって時間遅れ無く吸収(消費)される。なお、時間t4~t5では、検出値Vf-閾値Vc(Vf-Vc)が一定であるため、これと比例して、抵抗器64によって吸収(消費)される電力も一定である(図4(c))。
【0090】
なお、このとき、MGセット30は、検出値Vfを取得した励磁制御回路55の制御によって発電から回生に転じようとしているが、応答遅れ(例えば、1~2秒)があるため、まだ回生に転じることが出来ていない(図4(d))。
【0091】
時間t5~t6において、クレーン46の誘導電動機45は巻下げが一定速度に落ち着いている(図4(a))。そして、MGセット30の出力側電圧の検出値Vfは、所定の閾値Vcである105%を超えているが、ここにきて徐々に低下してきている(図4(b))。
【0092】
この場合、制御部70は、取得した検出値Vfが所定の閾値Vcを超えた(Vf>Vc)と判定し、回生電力消費装置60の各要素は、時間t3~t4及び時間t4~t5と同様の動作を行う。これにより、検出値Vf-閾値Vc(Vf-Vc)に比例した量の電力が、回生電力消費装置60を介して、抵抗器64によって時間遅れ無く吸収(消費)される。なお、時間t5~t6では、検出値Vf-閾値Vc(Vf-Vc)が徐々に低下してきているため、これに比例して、抵抗器64によって吸収(消費)される電力の量も減少している(図4(c))。
【0093】
なお、このとき、MGセット30は、応答遅れ(例えば、1~2秒)の時間が経過したことにより、検出値Vfを取得した励磁制御回路55の制御によって発電から回生に転じ始め、電力を回生(吸収)して電源系統に戻し始めている(図4(d))。
【0094】
時間t6~t7において、クレーン46の誘導電動機45は巻下げが一定速度に落ち着いており(図4(a))、MGセット30の出力側電圧の検出値Vfも低下し続け、所定の閾値Vcである105%を下回ってきている(図4(b))。この場合、制御部70は取得した検出値Vfが所定の閾値Vc(105%)以下(Vf≦Vc)であると判定し、電力指令設定回路72は電力指令を出力しないため、回生電力消費装置60は動作せず、電力は吸収されていない(図4(c))。
【0095】
このとき、MGセット30は、検出値Vfを取得した励磁制御回路55の制御により、電力を回生(吸収)して電源系統に戻している。なお、MGセット30は、速度センサ33による速度フィードバック信号に基づいて、速度制御回路26によって、出力側電圧の検出値Vfが所定の出力側電圧(100%)となるよう制御されている。これにより、t6~t7では、MGセット30の回生(吸収)電力の量は一定であるが(図4(d))、検出値Vfは100%に戻りつつある(図4(b))。
【0096】
時間t7以降において、クレーン46の誘導電動機45は巻下げが一定速度に落ち着いており(図4(a))、MGセット30の出力側電圧の検出値Vfは平時の100%に戻っている(図4(b))。この場合、制御部70は取得した検出値Vfが所定の閾値Vc(105%)以下(Vf≦Vc)であると判定し、電力指令設定回路72は電力指令を出力しないため、回生電力消費装置60は動作せず、電力は吸収されていない(図4(c))。また、MGセット30は、検出値Vfを取得した励磁制御回路55の制御により、一定の量の電力を回生(吸収)して電源に戻しており(図4(d))、検出値Vfは100%を保っている(図4(b))。
【0097】
<一実施形態の作用効果>
以上、図1から図4に示す実施形態によれば、負荷回生システム1は、電源装置としてエネルギーを回生可能なMGセット30と抵抗器64とを備える。このため、例えばエンジン発電機等の回生不可能な電源装置と抵抗とを用いた場合と異なり、回生電力が全て抵抗で消費されるわけではなく、抵抗器64で消費されなかった電力をMGセット30が電源系統に戻すことができる。また、負荷回生システム1は、すべての回生エネルギーを処理するわけではなく、MGセット30が追従するまでの短時間の回生エネルギーを処理すればよい。これにより、図1から図4に示す実施形態によれば、省エネやシステムの効率化に貢献することができ、回生不可能な電源装置と抵抗とを用いた場合よりも抵抗器64などのシステムを小型(コンパクト)にすることができる。
【0098】
また、図1から図4に示す実施形態によれば、負荷回生システム1は、MGセット30と、コンバータ62とインバータ63とを有する回生電力消費装置60と、抵抗器64とを備える。コンバータ62とインバータ63とは、MGセット30よりも高速応答性を有するため、回生電力が急峻であったとしても、コンバータ62とインバータ63とを動作させることで、抵抗器64で電力を時間遅れ無く吸収することができる。また、残りの緩徐な回生電力は、MGセット30を介して電源系統に戻すことができる。これにより、故意に回生エネルギーの速度を遅くすることでシステムに異常が出ないように運用する必要もなく、そのために試験性能が制限されることもないようにすることができる。
【0099】
また、図1から図4に示す実施形態によれば、負荷回生システム1は、VT53及び電圧検出器54と、これらにより検出された検出値Vfに応じて抵抗器64に電力を消費させる回生電力消費装置60とを備える。これにより、回生電力が全て抵抗器64で消費されるわけではなく、抵抗器64で消費されなかった電力をMGセット30が電源系統に戻すことができる。これにより、省エネやシステムの効率化に貢献することができる。
【0100】
また、図1から図4に示す実施形態によれば、回生電力消費装置60は、制御部70が、検出値Vfが閾値Vcを超えたか否かを判定し、検出値Vfが閾値Vcを超えたときにのみ、検出値Vf-閾値Vcに比例した量の電力を抵抗器64によって消費させる。これにより、MGセット30が吸収できなかった分の電力だけ抵抗器64に消費させることができ、MGセット30が回生を始めた後は、MGセット30が電力を電源系統に戻すことができる。これにより、上記の制御がなされない場合よりも、省エネやシステムの効率化に貢献することができ、短時間定格で良くなるため、抵抗器64や回生電力消費装置60などの負荷回生システム1全体を小型(コンパクト)にすることができる。
【0101】
また、図1から図4に示す実施形態によれば、負荷回生システム1は、コンバータ62とインバータ63とを有する回生電力消費装置と、抵抗器64とを備える。このため、例えばリアクトルとサイリスタとを用いた場合よりも、高調波を少なくすることができ、また、コンバータ62を略力率1(例えば力率1)で運転することができるため、無効電力の消費も少なくすることができる。これにより、リアクトルとサイリスタとを用いた場合よりも、システムの安定化を図ることができる。
【0102】
以上より、図1から図4に示す実施形態によれば、急峻な回生エネルギーを時間遅れ無く吸収することによる、発電機系統への影響の軽減、システムの安定度の向上、及び設備の性能の向上を、コンパクトな装置で実現することができる。
【0103】
<別の実施形態>
図5は、別の実施形態に係る負荷回生システム1Aの構成例を示す図である。図5において、図1から図4に示す実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0104】
図5において、負荷回生システム1Aは、図1から図4に示す実施形態における回生電力消費装置60と抵抗器64との代わりに、回生電力蓄積装置80を有する。このため、以下、回生電力蓄積装置80を中心に説明する。
【0105】
図5に示すとおり、回生電力蓄積装置80は、フィルタ81と、コンバータ82と、二次電池85と、制御部90とを有する。回生電力蓄積装置80は、電圧検出信号Vfに基づいてコンバータ82を動作させ、クレーン試験フィーダ41から回生された電力を、MGセット30よりも高速応答性を有するコンバータ82を介して時間遅れ無く二次電池85に充電(蓄電)又は放電させる。
【0106】
フィルタ81は、上述のフィルタ61と同様の構成及び機能を有し、例えば、コンバータ82又は二次電池85が発生させた高調波がMGセット30側に流れないよう高次の高調波成分を除去するフィルタとして機能する。
【0107】
コンバータ82は、MGセット30の出力側と二次電池85との間に配置され、上述のコンバータ62と同様の構成及び機能を有し、MGセット30又はクレーン試験フィーダ41と二次電池85との間の電力変換を行う。コンバータ82は、MGセット30よりも高速に応答する。なお、コンバータ82は、電圧検出信号(検出値)Vfに応じて制御部90によって動作が制御され、クレーン試験フィーダ41から回生された電力を、二次電池85に充電又は放電させる。
【0108】
例えば、電圧検出信号(検出値)Vfが同期発電機32の定格電圧(クレーン試験フィーダ41の定格電圧)より高い所定の閾値Vc1を超えた場合、コンバータ82は、制御部90の制御に従って動作し、クレーン試験フィーダ41から回生された電力を、二次電池85に充電させる。また、例えば、電圧検出信号Vfが同期発電機32の定格電圧(クレーン試験フィーダ41の定格電圧)より低い所定の閾値Vc2未満だった場合、コンバータ82は、制御部90の制御に従って動作し、二次電池85に充電された電力を放電させて、クレーン試験フィーダ41に供給する。なお、電圧検出信号Vf又は検出値Vfは、請求項の「電圧値」の一例であり、閾値Vc1は、請求項の「第一閾値」の一例であり、閾値Vc2は、請求項の「第二閾値」の一例である。
【0109】
二次電池85は、充電を行うことにより繰り返し使用することが出来る電池(化学電池)のことであり、蓄電池、充電池又はバッテリーとも言われる。二次電池85は、例えば、電圧検出信号Vfに基づいてコンバータ82から出力された電力(電気エネルギー)を充電し、又は二次電池85に充電された電力をコンバータ82に向けて放電する。
【0110】
制御部90は、例えば、プログラムを実行することにより動作するCPU等の不図示のプロセッサを有し、不図示の記憶部に記憶された所定のプログラムを実行することにより当該プロセッサを動作させて、回生電力蓄積装置80の動作を統括的に制御する。制御部90は、電力指令設定回路92と、換算回路93と、電流制御回路94とを有する。
【0111】
電力指令設定回路92は、例えば、電圧検出器54から電圧検出信号(検出値)Vfを取得して、取得した検出値Vfに基づいて電力指令値を換算回路93に出力する。
【0112】
図5に示すとおり、図中、電力指令設定回路92のボックス内には、電力指令(縦軸)と検出値Vf(横軸)との関係を表すグラフが示されている。電力指令設定回路92は、取得した検出値Vfに応じて、当該グラフに基づいて、電力指令値を換算回路93に出力する。なお、当該グラフ中Vc1及びVc2は、所定の閾値(所定の第一閾値及び所定の第二閾値)である。
【0113】
例えば、当該グラフに示されるように、検出値Vfが所定の閾値Vc2以上Vc1以下(Vc2≦Vf≦Vc1)である場合、電力指令設定回路92から出力される電力指令値はゼロである。すなわち、この場合、電力指令は、電力指令設定回路92から換算回路93に出力されない。
【0114】
一方、例えば、当該グラフに示されるように、検出値Vfが所定の閾値Vc1を超える(Vf>Vc1)場合、二次電池85に充電させる電力指令が、検出値Vfと閾値Vc1の差(Vf-Vc1)に対応する値、例えば比例する値が、電力指令設定回路92から換算回路93に出力される。また、例えば、当該グラフに示されるように、検出値Vfが所定の閾値Vc2未満(Vc2>Vf)である場合、二次電池85に放電させる電力指令が、閾値Vc2と検出値Vfとの差(Vc2-Vf)に対応する値、例えば比例する値が、電力指令設定回路92から換算回路93に出力される。
【0115】
換言すれば、電力指令設定回路92が電圧検出信号Vfを取得した場合において、制御部90が、検出値Vfが所定の閾値Vc2以上Vc1以下(Vc2≦Vf≦Vc1)であると判定したときは、電力指令設定回路92は、後述のSOC(充電率)を所定の値に維持する場合を除いて、電力指令を換算回路93に出力しない。ここで、出力しないとは電力指令が零であることを示す。尚、二次電池を充電するときは、電力指令は正の値とし、放電するときは、電力指令は負の値とする様にしてもよい。
【0116】
一方、制御部90が、検出値Vfが所定の閾値Vc1を超える(Vf>Vc1)と判定したときは、電力指令設定回路92は、検出値Vf-閾値Vc1(Vf-Vc1)に比例した二次電池85に充電させる旨の電力指令値を、換算回路93に出力する。また、制御部90が、検出値Vfが所定の閾値Vc2未満(Vc2>Vf)であると判定したときは、電力指令設定回路92は、閾値Vc2-検出値Vf(Vc2-Vf)に比例した二次電池85に放電させる旨の電力指令値を、換算回路93に出力する。
【0117】
換算回路93は、電力指令設定回路92から出力された電力指令値を電流指令値に変換し、電流制御回路94に出力する。
【0118】
電流制御回路94は、換算回路93から出力された電流指令値にコンバータ82の直流の出力電流が追従するようにコンバータ82を制御する。すなわち、これらの制御部90及び制御部90内の電力指令設定回路92と換算回路93と電流制御回路94とにより、検出値Vfに基づいて、コンバータ82は、動作が制御され、その結果として二次電池85の充電および放電が制御される。
【0119】
なお、コンバータ82自身が、制御部90の機能を有していてもよい。すなわち、コンバータ82自身が検出値Vfを取得し、コンバータ82自身が、上述の制御部90と同様に、検出値Vfの大きさを判定し、検出値Vfに基づいて動作してもよい。また、電力指令設定回路92において、ハンチング防止のため、検出値Vf-閾値Vc1(Vf-Vc1)及び閾値Vc2-検出値Vf(Vc2-Vf)にヒステリス特性を持たせてもよい。
【0120】
<別の実施形態の作用効果>
以上、図5に示す実施形態によれば、図1から図4に示す実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、図5に示す実施形態によれば、急峻な回生エネルギーを時間遅れ無く吸収することによる、発電機系統への影響の軽減、システムの安定度の向上、及び設備の性能の向上を、コンパクトな装置で実現することができる。
【0121】
また、図5に示す実施形態によれば、負荷回生システム1Aは、MGセット30と、コンバータ82と二次電池85とを有する回生電力蓄積装置80を備える。コンバータ82は、MGセット30よりも高速応答性を有するため、回生電力が急峻であったとしても、コンバータ82を動作させることで、二次電池85で電力を時間遅れ無く充電することができる。また、残りの緩徐な回生電力は、MGセット30を介して電源系統に戻すことができる。これにより、故意に回生エネルギーの速度を遅くすることでシステムに異常が出ないように運用する必要もなく、そのために試験性能が制限されることもないようにすることができる。
【0122】
また、図5に示す実施形態によれば、負荷回生システム1Aは、VT53及び電圧検出器54と、これらにより検出された検出値Vfに応じて二次電池85に電力を充電又は放電させる回生電力蓄積装置80とを備える。これにより、図1から図4に示す実施形態のように、回生電力が全て抵抗器64で消費されるわけではなく、二次電池85によって放電されるため再利用することができる。これにより、図1から図4に示す実施形態よりも、さらに電力の無駄を省くことができ、省エネやシステムの効率化に貢献することができる。
【0123】
また、図5に示す実施形態によれば、回生電力蓄積装置80は、制御部90が、検出値Vfが閾値Vc1を超えたと判定したときにのみ検出値Vf-閾値Vc1に比例した量の電力を二次電池85に充電させる。これにより、MGセット30が吸収できなかった分の電力だけ二次電池85に充電させることができ、MGセット30が回生を始めた後は、MGセット30が電力を電源系統に戻すことができる。また、回生電力蓄積装置80は、制御部90が、検出値Vfが所定の閾値Vc2未満であると判定したときにのみ閾値Vc2-検出値Vfに比例した量の電力を二次電池85から放電させる。これにより、上記の制御がなされない場合よりも、省エネやシステムの効率化に貢献することができ、短時間定格で良くなるため、回生電力蓄積装置80などの負荷回生システム1A全体を小型(コンパクト)にすることができる。
【0124】
また、図5に示す実施形態によれば、試験におけるクレーンの回生電力量は試験内容から予測可能であり、また、MGセット30において力行から回生に対する応答遅れも実測等により、あらかじめ把握することが可能である。即ち、二次電池85に回生すべき電力量(すなわち図3における斜線部に相当する電力量)は試験開始前に把握可能である。従って、試験開始前に、二次電池85の放電を行い、クレーン試験における回生電力蓄積装置80の回生動作中に二次電池85の充電率が100%を超えない様に所定充電率以下になる様に制御するようにしてもよい。例えば、検出値Vfが閾値Vc1と閾値Vc2との間にあるときは、二次電池85の充電率が所定充電率以下となるようにコンバータを制御するようにしてもよい。このときの放電電力量はクレーン試験フィーダ―41の電圧に影響を与えない様な電力、例えば、コンバータ82の定格より十分低い予め定められた値、例えば10%で放電するようにしてもよい。
【0125】
一方、図1から図4に示す実施形態によれば、負荷回生システム1は、MGセット30よりも高速応答性を有する(例えば、0.1秒前後で応答する)コンバータ62とインバータ63とを有する回生電力消費装置60と抵抗器64とを備える。また、図5に示す実施形態によれば、負荷回生システム1Aは、MGセット30よりも高速応答性を有する(例えば、0.1秒前後で応答する)コンバータ82と二次電池85とを有する回生電力蓄積装置80を備える。これにより、図1から図4及び図5に示す実施形態では、回生エネルギーを時間遅れ無く吸収することができるため、故意に回生エネルギーの速度を遅くすることでシステムに異常が出ないように運用する必要もなく、そのために試験性能が制限されることもない。
【0126】
<実施形態の補足事項>
以上、図1から図4に示す実施形態によれば、コンバータ62は、直流電圧一定制御回路71によって制御され、インバータ63は、電流制御回路74によって制御されているが、これには限られない。コンバータ62が電流制御回路74によって制御され、インバータ63が直流電圧一定制御回路71によって制御されていてもよい。すなわち、制御部70による制御方式が、検出値Vfに応じて抵抗器64に出力される電力が調整可能な方式であればよい。
【0127】
また、図1から図4に示す実施形態によれば、インバータ63を備えるが、これには限られず、例えば、チョッパであってもよい。抵抗器64に出力される電力は直流であっても交流であってもよく、インバータ63以外であっても、抵抗器64に出力される電力が調整可能なものであれば何でもよい。なお、チョッパによる制御は、電流のオンオフを繰り返すことによって直流または交流の電源から、実効値として任意の電圧や電流を擬似的に作り出す電源回路の制御方式である。例えば、入力電圧より下げる制御は、「降圧チョッパ」と呼ばれ、スイッチング時に発生するスパイク電流を用いて入力電圧より上げる制御は、「昇圧チョッパ」と呼ばれる。チョッパによりこのような制御が行われることによって、電圧検出信号Vfに応じて抵抗器64に出力される電力が調整される。インバータ63やチョッパは、請求項の「抵抗器電流制御手段」の一例である。
【0128】
また、図5に示す実施形態によれば、回生電力蓄積装置80は、二次電池85を備えるが、これには限られず、例えば、スーパーキャパシタやウルトラキャパシタあるいはその他のコンデンサ(キャパシタ)であってもよい。二次電池あるいはコンデンサは、請求項の「蓄電装置」の一例である。
【0129】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0130】
1,1A…負荷回生システム;11…商用電源;12…遮断器;13…変圧器;20…電動機駆動装置;21…フィルタ;22…コンバータ;23…インバータ;24…制御部;25…直流電圧一定制御回路;26…速度制御回路;30…MGセット(電動発電機);30a…軸;31…誘導電動機(IM);32…同期発電機(SG);33…速度センサ(SS);40…クレーン試験設備;41…クレーン試験フィーダ;42,42a,42b,42c…遮断器;43…クレーン試験場;44,44a,44b,44c…電動機駆動装置;45,45a,45b,45c…誘導電動機(IM);46,46a,46b,46c…クレーン;51…遮断器;52…変圧器;53…計器用変圧器(VT);54…電圧検出器;55…励磁制御回路;60…回生電力消費装置;61…フィルタ;62…コンバータ;63…インバータ;64…抵抗器(抵抗);70…制御部;71…直流電圧一定制御回路;72…電力指令設定回路;73…換算回路;74…電流制御回路;80…回生電力蓄積装置;81…フィルタ;82…コンバータ;85…二次電池;90…制御部;92…電力指令設定回路;93…換算回路;94…電流制御回路;140…クレーン試験設備;141…クレーン試験フィーダ;P…電力;T,t,t0~t7…時間;V…電圧(二次側電圧、出力電圧);Vc…閾値;Vc1…閾値(第一閾値);Vc2…閾値(第二閾値);Vf…電圧検出信号(検出値、電圧値、二次側電圧、出力電圧)
図1
図2
図3
図4
図5