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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】インダクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20240709BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/04 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021156215
(22)【出願日】2021-09-25
(65)【公開番号】P2023047358
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【弁理士】
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】菊地 星矢
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-286125(JP,A)
【文献】国際公開第2013/108862(WO,A1)
【文献】特開平10-172831(JP,A)
【文献】特開2019-057580(JP,A)
【文献】特開2020-194806(JP,A)
【文献】国際公開第2020/175477(WO,A1)
【文献】特開2017-017116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の非導電性材料層が積層されてなる積層構造を有する、部品本体と、
前記部品本体の内部に配置されるものであって、前記非導電性材料層間の界面に沿ってそれぞれ延びる複数のライン導体と、前記非導電性材料層を厚み方向に貫通する複数のビア導体と、をもって構成され、前記ライン導体と前記ビア導体とが交互に接続されることによって螺旋状の軌道に沿って延びる形態とされた、コイルと、
を備え、
前記ビア導体は、前記ライン導体に沿って延びる長手形状の長手ビア導体を含み、
前記長手ビア導体は、曲がりをもって延びる曲がりビア導体を含み、
前記曲がりビア導体は、曲がり角度が180度を超えかつ270度以下である曲がり部を有するものを含む、
インダクタ。
【請求項2】
前記曲がりビア導体は、曲がり角度が90度以上かつ180度未満である曲がり部を有するものを含む、請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
複数の非導電性材料層が積層されてなる積層構造を有する、部品本体と、
前記部品本体の内部に配置されるものであって、前記非導電性材料層間の界面に沿ってそれぞれ延びる複数のライン導体と、前記非導電性材料層を厚み方向に貫通する複数のビア導体と、をもって構成され、前記ライン導体と前記ビア導体とが交互に接続されることによって螺旋状の軌道に沿って延びる形態とされた、コイルと、
を備え、
前記ビア導体は、前記ライン導体に沿って延びる長手形状の長手ビア導体を含み、
前記長手ビア導体は、曲がりをもって延びる曲がりビア導体を含み、
前記曲がりビア導体は、2箇所以上において、曲がり部を有するものを含む、
インダクタ。
【請求項4】
前記曲がりビア導体は、3箇所以上において、曲がり部を有するものを含む、請求項に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記螺旋状の軌道は、角を形成する角部分を有し、前記曲がりビア導体は、前記角部分に沿って位置する、請求項1ないし4のいずれかに記載のインダクタ。
【請求項6】
前記非導電性材料層間の同一界面内における前記ライン導体のターン数は、0.7ターン以上かつ2ターン未満である、請求項1ないしのいずれかに記載のインダクタ。
【請求項7】
前記非導電性材料層間の同一界面内における前記ライン導体のターン数は、1ターン未満であり、前記非導電性材料層間の各界面にそれぞれ沿う前記ライン導体のターン数は一定である、請求項1ないしのいずれかに記載のインダクタ。
【請求項8】
前記非導電性材料層間の同一界面内における前記ライン導体の幅方向寸法は、均一である、請求項1ないしのいずれかに記載のインダクタ。
【請求項9】
複数の非導電性材料層が積層されてなる積層構造を有する、部品本体と、
前記部品本体の内部に配置されるものであって、前記非導電性材料層間の界面に沿ってそれぞれ延びる複数のライン導体と、前記非導電性材料層を厚み方向に貫通する複数のビア導体と、をもって構成され、前記ライン導体と前記ビア導体とが交互に接続されることによって螺旋状の軌道に沿って延びる形態とされた、コイルと、
を備え、
前記ビア導体は、前記ライン導体に沿って延びる長手形状の長手ビア導体を含み、
前記長手ビア導体は、曲がりをもって延びる曲がりビア導体を含み、
前記部品本体は直方体形状を有し、前記非導電性材料層の主面は短辺および長辺を持つ長方形状をなしており、
前記ライン導体は、前記短辺に沿って延びる短辺部分と前記長辺に沿って延びる長辺部分とを有し、前記短辺部分において、前記長辺部分よりも線幅が大きくされ、
前記曲がりビア導体は、前記短辺部分に接続される部分において、前記長辺部分に接続される部分よりも幅広とされる、
インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インダクタに関するもので、特に、複数の非導電性材料層からなる積層構造を有する部品本体の内部にコイルが配置された、インダクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明にとって興味あるインダクタは、複数の非導電性材料層が積層されてなる積層構造を有する、部品本体を備える。部品本体の内部には、コイルが配置される。コイルは、非導電性材料層間の界面に沿ってそれぞれ延びる複数のライン導体と、非導電性材料層を厚み方向に貫通する複数のビア導体と、をもって構成され、ライン導体とビア導体とが交互に接続されることによって全体として螺旋状の軌道に沿って延びる形態とされる。
【0003】
図32には、上述したインダクタ1が模式的に図示されている。図32において、インダクタ1に備える部品本体2、および部品本体2の内部に配置されるコイル3が、コイル3の軸線方向(図32紙面に直交する方向)に透視した状態で図示されている。
【0004】
部品本体2は、図32紙面方向に延びる、複数の非導電性材料層が積層されてなる積層構造を有する。コイル3は、非導電性材料層間の界面に沿ってそれぞれに延びる複数のライン導体4と、非導電性材料層を厚み方向に貫通する複数のビア導体5と、をもって構成され、ライン導体4とビア導体5とが交互に接続されることによって全体として螺旋状の軌道に沿って延びる形態とされる。部品本体2の外表面上には、コイル3の一方端および他方端にそれぞれ接続される第1外部端子電極6および第2外部端子電極7が設けられる。
【0005】
図32を参照しながら、コイル3における複数のライン導体4のつながりについて、より具体的に説明する。図示された、たとえば4つのビア導体5を互いに区別するため、4つのビア導体5の各々に、「5-1」、「5-2」、「5-3」、「5-4」の参照符号を付す。また、4つのビア導体5-1、5-2、5-3および5-4の各々を介して接続される5つのライン導体4の各々に、「4-1」、「4-2」、「4-3」、「4-4」、「4-5」の参照符号を付す。ライン導体4-1、4-2、4-3、4-4および4-5は、それぞれ、非導電性材料層間の異なる界面に沿って延びるように設けられているが、ライン導体4-1が設けられる界面と、ライン導体4-2が設けられる界面と、ライン導体4-3が設けられる界面と、ライン導体4-4が設けられる界面と、ライン導体4-5が設けられる界面とは、非導電性材料層の積層方向に並んでいる。
【0006】
第1外部端子電極6に第1引き出し導体8を介して接続されたライン導体4-1は、ビア導体5-1の位置まで時計回り方向に延びる。ビア導体5-1は、ライン導体4-1とライン導体4-2とを接続する。ライン導体4-2は、ビア導体5-1の位置からビア導体5-2の位置まで時計回り方向に延びる。ビア導体5-2は、ライン導体4-2とライン導体4-3とを接続する。ライン導体4-3は、ビア導体5-2の位置からビア導体5-3の位置まで時計回り方向に延びる。ビア導体5-3は、ライン導体4-3とライン導体4-4とを接続する。ライン導体4-4は、ビア導体5-3の位置からビア導体5-4の位置まで時計回り方向に延びる。ビア導体5-4は、ライン導体4-4とライン導体4-5とを接続する。ライン導体4-5は、ビア導体5-4の位置から時計回り方向に延び、第2引き出し導体9を介して第2外部端子電極7に接続される。
【0007】
ライン導体4の各々における、ビア導体5の各々と接続される端部には、パッド部10が設けられる。パッド部10は、通常、ビア導体5の断面積より広い面積を有しており、ライン導体4とビア導体5との接続信頼性を確保するものである。また、ビア導体5は、ライン導体4の線幅より大きい直径の円形の断面を有している。
【0008】
たとえば特開2018-184582号公報(特許文献1)には、図32に示すように、ビア導体5の断面は、ライン導体4の線幅より大きい直径の円形であり、パッド部10は、ビア導体5の断面積より広く、ビア導体5の断面と同心円の形状である、インダクタ1が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-184582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図32に示したインダクタ1の実使用時において、磁束は、複数のライン導体4が集合して形成する螺旋状の軌道によって囲まれた領域Rにおいて、図32紙面に直交するように通過する。一方、上記領域Rには、ライン導体4の内周側から張り出して、ビア導体5の一部、さらにはパッド部10の一部が存在している。
【0011】
このような状態において、ビア導体5およびパッド部10は、磁束を遮り、このことによって、インダクタ1の特性、特にQ値へ影響を及ぼすことが最近わかってきた。
【0012】
そこで、この発明の目的は、上述した課題を解決し得るインダクタを提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、複数の非導電性材料層が積層されてなる積層構造を有する、部品本体を備えるとともに、部品本体の内部に配置されるものであって、非導電性材料層間の界面に沿ってそれぞれ延びる複数のライン導体と、非導電性材料層を厚み方向に貫通する複数のビア導体と、をもって構成され、ライン導体とビア導体とが交互に接続されることによって螺旋状の軌道に沿って延びる形態とされた、コイルを備える、インダクタに向けられる。
【0014】
この発明では、上述した技術的課題を解決するため、ビア導体は、ライン導体に沿って延びる長手形状の長手ビア導体を含むことを特徴としている。さらに、この発明では、長手ビア導体は、曲がりをもって延びる曲がりビア導体を含むことを基本的な特徴としている。
上記基本的な特徴に加えて、この発明の第1の局面では、曲がりビア導体は、曲がり角度が180度を超えかつ270度以下である曲がり部を有するものを含むことをさらなる特徴としている。
この発明の第2の局面では、上記基本的な特徴に加えて、曲がりビア導体は、2箇所以上において、曲がり部を有するものを含むことをさらなる特徴としている。
この発明の第3の局面では、上記基本的な特徴に加えて、部品本体は直方体形状を有し、非導電性材料層の主面は短辺および長辺を持つ長方形状をなしており、ライン導体は、短辺に沿って延びる短辺部分と長辺に沿って延びる長辺部分とを有し、短辺部分において、長辺部分よりも線幅が大きくされ、曲がりビア導体は、短辺部分に接続される部分において、長辺部分に接続される部分よりも幅広とされることをさらなる特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、ビア導体は、ライン導体に沿って延びる長手形状の長手ビア導体を含むので、長手ビア導体は、円形のビア導体に比べて、ライン導体の内周側に張り出す度合いを低減すること、あるいは、ライン導体の内周側に張り出さないようにすることができる。したがって、ビア導体による磁束の遮りを低減したり、なくしたりすることができ、ビア導体が、インダクタの特性、特にQ値へ影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0016】
また、この発明によれば、長手ビア導体は、曲がりをもって延びる曲がりビア導体を含むので、部品本体を得るための積層工程、およびライン導体やビア導体を形成するための露光工程などにおける加工ばらつきの影響を低減することができる。したがって、ライン導体とビア導体との接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の第1の実施形態によるインダクタ11の外観を示す斜視図である。
図2図1に示したインダクタ11を、コイル20の軸線方向に透視して示す図である。
図3図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、コイル20の第1端部21を与えるライン導体23-1が設けられた非導電性材料層19-1を示す平面図である。
図4図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ライン導体23-1に接続されるビア導体24-1が設けられた非導電性材料層19-2を示す断面図である。
図5図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ビア導体24-1に接続されるライン導体23-2が設けられた非導電性材料層19-2を示す平面図である。
図6図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ライン導体23-2に接続されるビア導体24-2が設けられた非導電性材料層19-3を示す断面図である。
図7図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ビア導体24-2に接続されるライン導体23-3が設けられた非導電性材料層19-3を示す平面図である。
図8図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ライン導体23-3に接続されるビア導体24-3が設けられた非導電性材料層19-4を示す断面図である。
図9図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ビア導体24-3に接続されるライン導体23-4が設けられた非導電性材料層19-4を示す平面図である。
図10図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ライン導体23-4に接続されるビア導体24-4が設けられた非導電性材料層19-5を示す断面図である。
図11図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ビア導体24-4に接続されるライン導体23-5が設けられた非導電性材料層19-5を示す平面図である。
図12図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ライン導体23-5に接続されるビア導体24-5が設けられた非導電性材料層19-6を示す断面図である。
図13図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ビア導体24-5に接続されるライン導体23-6が設けられた非導電性材料層19-6を示す平面図である。
図14図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ライン導体23-6に接続されるビア導体24-6が設けられた非導電性材料層19-7を示す断面図である。
図15図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ビア導体24-6に接続されるライン導体23-7が設けられた非導電性材料層19-7を示す平面図である。
図16図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ライン導体23-7に接続されるビア導体24-7が設けられた非導電性材料層19-8を示す断面図である。
図17図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ビア導体24-7に接続されるライン導体23-8が設けられた非導電性材料層19-8を示す平面図である。
図18図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ライン導体23-8に接続されるビア導体24-8が設けられた非導電性材料層19-9を示す断面図である。
図19図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ビア導体24-8に接続されるライン導体23-9が設けられた非導電性材料層19-9を示す平面図である。
図20図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ライン導体23-9に接続されるビア導体24-9が設けられた非導電性材料層19-10を示す断面図である。
図21図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ビア導体24-9に接続されるライン導体23-10が設けられた非導電性材料層19-10を示す平面図である。
図22図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ライン導体23-10に接続されるビア導体24-10が設けられた非導電性材料層19-11を示す断面図である。
図23図2に示したインダクタ11の一部を示すもので、ビア導体24-10に接続されかつコイル20の第2端部22を与えるライン導体23-11が設けられた非導電性材料層19-10を示す平面図である。
図24】ライン導体23とビア導体24とのずれの状態を、(A)ビア導体24が曲がらずに延びる場合と、(B)ビア導体24が曲がりをもって延びる場合と、で比較して模式的に示す図である。
図25】曲がりビア導体の曲がり角度を説明する図である。
図26】この発明の第2の実施形態によるインダクタ11aを示す、図2に相当する図である。
図27】この発明の第3の実施形態によるインダクタ11bを示す、図2に相当する図である。
図28】この発明の第4の実施形態によるインダクタ11cを示す、図2に相当する図である。
図29】この発明の第5の実施形態によるインダクタ11dを示す、図2に相当する図である。
図30】この発明の第6の実施形態によるインダクタ11eを示す、図2に相当する図である。
図31】この発明の第7の実施形態によるインダクタ11fを示す、図2に相当する図である。
図32】従来のインダクタ1を、コイル3の軸線方向に透視して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1ないし図25を参照して、この発明の第1の実施形態によるインダクタ11について説明する。
【0019】
インダクタ11は、部品本体12を備える。部品本体12は、たとえばガラス、樹脂およびフェライトの少なくとも1種を含む非導電性材料からなる。また、部品本体12が樹脂などの成形体からなる場合は、シリカなどの非磁性フィラーや、フェライトまたは金属磁性体などの磁性フィラーを含有していてもよい。さらに、これらガラス、フェライト、樹脂の複数を組み合わせた構造であってもよい。部品本体12は直方体形状を有している。直方体形状は、たとえば、稜線部分および角部分に丸みや面取りが付与された形状であってもよい。
【0020】
直方体形状の部品本体12は、より具体的には、図1に示すように、実装基板側に向く実装面13と、実装面13に対向する天面14と、実装面13および天面14間を連結しかつ互いに対向する第1側面15および第2側面16と、実装面13および天面14間ならびに第1側面15および第2側面16間をそれぞれ連結しかつ互いに対向する第1端面17および第2端面18と、を有している。
【0021】
部品本体12は、上述した非導電性材料からなる複数の非導電性材料層19を積層した積層構造を有している。複数の非導電性材料層19は、第1側面15から第2側面16に向かって積層され、積層方向の各端部に位置する非導電性材料層19の主面によって、部品本体12の第1側面15および第2側面16がそれぞれ与えられる。
【0022】
部品本体12の内部には、図2に示すように、コイル20が配置されている。コイル20は、螺旋状の軌道に沿って延びる。コイル20の軸線は、側面15および16に直交する方向、すなわち、実装面13に平行な方向に向けられる。コイル20は、互いに逆の第1端部21および第2端部22を備えるとともに、第1端部21および第2端部22間において、複数の非導電性材料層19のいずれかの界面に沿って延びる複数のライン導体23と、非導電性材料層19のいずれかを厚み方向に貫通する複数のビア導体24と、を備えている。コイル20において、上述のライン導体23とビア導体24とが交互に接続されることによって全体として螺旋状の軌道に沿って延びる形態が与えられる。複数のライン導体23は、各々の端部において、ビア導体24と接続されるパッド部25を有する。
【0023】
図2に示すように、コイル20の軸線方向に透視したとき、ライン導体23およびパッド部25の延びる方向に直交する方向を、ライン導体23およびパッド部25の幅方向とする。この実施形態では、ライン導体23の幅方向寸法が維持されて、パッド部25の幅方向寸法とされ、ビア導体24の幅方向寸法は、ライン導体23の幅方向寸法とほぼ同等とされる。
【0024】
部品本体12の外表面上には、コイル20の第1端部21および第2端部22にそれぞれ接続される第1外部端子電極26および第2外部端子電極27が設けられる。第1外部端子電極26および第2外部端子電極27は、部品本体12の実装面13とこれに隣接する第1端面17および第2端面18の各々との2面にわたって設けられる。このような形態をもって第1外部端子電極26および第2外部端子電極27を設ければ、インダクタ11が実装基板に実装されたとき、適正な形態のはんだフィレットが形成され得るので、電気的接続および機械的接合の双方において信頼性の高い実装状態を得ることができる。第1外部端子電極26および第2外部端子電極27は、積層方向での両端部に位置するいくつかの非導電性材料層19を除く複数の非導電性材料層19の各々の厚み方向に貫通するように設けられる。
【0025】
上述したコイル20ならびに外部端子電極26および27は、たとえば銀を導電成分として含む導電性ペーストからなる導体膜をパターニングすることによって形成される。また、非導電性材料層19は、たとえばガラス、樹脂およびフェライトの少なくとも1種を含む非導電性材料を含むペーストからなる非導電性材料膜を必要に応じてパターンニングすることによって形成される。導体膜のパターニングや非導電性材料膜のパターニングには、たとえば、フォトリソグラフィ法、セミアディティブ法、スクリーン印刷法、転写法などが適用される。
【0026】
図示しないが、外部端子電極26および27の、部品本体12から露出している部分にめっき膜が形成されてもよい。めっき膜は、たとえば、Niめっき層およびその上のSnめっき層を含む。
【0027】
ビア導体24は、ライン導体23に沿って延びる長手形状の長手ビア導体を含む。この実施形態では、図示されたビア導体24のすべてが長手ビア導体である。また、この実施形態では、長手ビア導体のすべてが曲がりをもって延びる曲がりビア導体である。
【0028】
ここで、「ビア導体」と「長手ビア導体」と「曲がりビア導体」との関係について確認すると、「ビア導体」は「長手ビア導体」の上位概念であり、「長手ビア導体」は「曲がりビア導体」の上位概念である。したがって、「曲がりビア導体」というときは、それは「長手ビア導体」でもあり、さらに「ビア導体」でもある。また、「長手ビア導体」であるが、「曲がりビア導体」ではないとき、「長手ビア導体」という。
【0029】
図3ないし図23を主として参照しながら、コイル20における複数のライン導体23のつながりについて、より具体的に説明する。
【0030】
複数のビア導体24を互いに区別するため、ビア導体24の各々の参照符号の末尾に、「-1」、「-2」、…の数字を付す。図2では、曲がりビア導体24-1、曲がりビア導体24-2、曲がりビア導体24-3、…が、反時計回り方向に並んで図示されている。
【0031】
また、複数のビア導体24の各々を介して接続される複数のライン導体23の各々に、「23-1」、「23-2」、「23-3」、…の参照符号を付す。ライン導体23-1、23-2、23-3、…は、それぞれ、非導電性材料層19間の異なる界面に沿って延びるように設けられている。より具体的には、ライン導体23-1が設けられる界面、ライン導体23-2が設けられる界面、ライン導体23-3が設けられる界面、…という順序で、非導電性材料層19の積層方向に並んでいる。
【0032】
また、ライン導体23-1、23-2、23-3、…の各々の端部が与えるパッド部25に、「25-1」、「25-2」、「25-3」、…の参照符号を付す。
【0033】
また、ライン導体23-1、23-2、23-3、…の各々を主面上に設けた非導電性材料層19に、「19-1」、「19-2」、「19-3」、…の参照符号を付す。非導電性材料層19-1、19-2、19-3、…は、この順に下から上へ積層される。
【0034】
コイル20の第1端部21および第2端部22には、それぞれ、第1引き出し導体28および第2引き出し導体29が接続される。これら第1引き出し導体28および第2引き出し導体29は、コイル20の第1端部21および第2端部22をそれぞれ位置させるライン導体23-1および23-11の延長部分によって与えられる。
【0035】
なお、この明細書において、「ライン導体」、「引き出し導体」および「外部端子電極」は、次にように定義されかつ互いに区別される。「ライン導体」は、コイルの軸線方向に透視した状態で周回している部分を言い、「引き出し導体」は、上記周回している部分から外れて延びる部分を言い、「外部端子電極」は、部品本体から露出している部分を言う。
【0036】
まず、図3に示すように、非導電性材料層19-1上において、第1外部端子電極26に第1引き出し導体28を介して接続されたライン導体23-1は、パッド部25-1まで時計回り方向に延びる。
【0037】
次に、図4に示す非導電性材料層19-2が非導電性材料層19-1の上に積層される。非導電性材料層19-2を貫通するように、曲がりビア導体24-1が設けられる。曲がりビア導体24-1は、パッド部25-1を介して、ライン導体23-1と図5に示すライン導体23-2とを接続する。
【0038】
次に、図5に示すように、非導電性材料層19-2上において、ライン導体23-2は、曲がりビア導体24-1の位置からパッド部25-2まで時計回り方向に延びる。
【0039】
次に、図6に示す非導電性材料層19-3が非導電性材料層19-2の上に積層される。非導電性材料層19-3を貫通するように、曲がりビア導体24-2が設けられる。曲がりビア導体24-2は、パッド部25-2を介して、ライン導体23-2と図7に示すライン導体23-3とを接続する。
【0040】
次に、図7に示すように、非導電性材料層19-3上において、ライン導体23-3は、曲がりビア導体24-2の位置からパッド部25-3まで時計回り方向に延びる。
【0041】
次に、図8に示す非導電性材料層19-4が非導電性材料層19-3の上に積層される。非導電性材料層19-4を貫通するように、曲がりビア導体24-3が設けられる。曲がりビア導体24-3は、パッド部25-3を介して、ライン導体23-3と図9に示すライン導体23-4とを接続する。
【0042】
次に、図9に示すように、非導電性材料層19-4上において、ライン導体23-4は、曲がりビア導体24-3の位置からパッド部25-4まで時計回り方向に延びる。
【0043】
次に、図10に示す非導電性材料層19-5が非導電性材料層19-4の上に積層される。非導電性材料層19-5を貫通するように、曲がりビア導体24-4が設けられる。曲がりビア導体24-4は、パッド部25-4を介して、ライン導体23-4と図11に示すライン導体23-5とを接続する。
【0044】
次に、図11に示すように、非導電性材料層19-5上において、ライン導体23-5は、曲がりビア導体24-4の位置からパッド部25-5まで時計回り方向に延びる。
【0045】
次に、図12に示す非導電性材料層19-6が非導電性材料層19-5の上に積層される。非導電性材料層19-6を貫通するように、曲がりビア導体24-5が設けられる。曲がりビア導体24-5は、パッド部25-5を介して、ライン導体23-5と図13に示すライン導体23-6とを接続する。
【0046】
次に、図13に示すように、非導電性材料層19-6上において、ライン導体23-6は、曲がりビア導体24-5の位置からパッド部25-6まで時計回り方向に延びる。
【0047】
次に、図14に示す非導電性材料層19-7が非導電性材料層19-6の上に積層される。非導電性材料層19-7を貫通するように、曲がりビア導体24-6が設けられる。曲がりビア導体24-6は、パッド部25-6を介して、ライン導体23-6と図15に示すライン導体23-7とを接続する。
【0048】
次に、図15に示すように、非導電性材料層19-7上において、ライン導体23-7は、曲がりビア導体24-6の位置からパッド部25-7まで時計回り方向に延びる。
【0049】
次に、図16に示す非導電性材料層19-8が非導電性材料層19-7の上に積層される。非導電性材料層19-8を貫通するように、曲がりビア導体24-7が設けられる。曲がりビア導体24-7は、パッド部25-7を介して、ライン導体23-7と図17に示すライン導体23-8とを接続する。
【0050】
次に、図17に示すように、非導電性材料層19-8上において、ライン導体23-8は、曲がりビア導体24-7の位置からパッド部25-8まで時計回り方向に延びる。
【0051】
次に、図18に示す非導電性材料層19-9が非導電性材料層19-8の上に積層される。非導電性材料層19-9を貫通するように、曲がりビア導体24-8が設けられる。曲がりビア導体24-8は、パッド部25-8を介して、ライン導体23-8と図19に示すライン導体23-9とを接続する。
【0052】
次に、図19に示すように、非導電性材料層19-9上において、ライン導体23-9は、曲がりビア導体24-8の位置からパッド部25-9まで時計回り方向に延びる。
【0053】
次に、図20に示す非導電性材料層19-10が非導電性材料層19-9の上に積層される。非導電性材料層19-10を貫通するように、曲がりビア導体24-9が設けられる。曲がりビア導体24-9は、パッド部25-9を介して、ライン導体23-9と図21に示すライン導体23-10とを接続する。
【0054】
次に、図21に示すように、非導電性材料層19-10上において、ライン導体23-10は、曲がりビア導体24-9の位置からパッド部25-10まで時計回り方向に延びる。
【0055】
次に、図22に示す非導電性材料層19-11が非導電性材料層19-10の上に積層される。非導電性材料層19-11を貫通するように、曲がりビア導体24-10が設けられる。曲がりビア導体24-10は、パッド部25-10を介して、ライン導体23-10と図23に示すライン導体23-11とを接続する。
【0056】
次に、図23に示すように、非導電性材料層19-11上において、ライン導体23-11は、曲がりビア導体24-10の位置から時計回り方向に延び、第2引き出し導体29を介して第2外部端子電極27に接続される。
【0057】
以上、第1の実施形態によれば、ビア導体24が長手形状を有しているので、コイル20の軸線方向に透視したとき、ビア導体24がライン導体23の内周側に張り出さないようにすることが容易である。したがって、ビア導体24による磁束の遮りが生じる懸念が減り、ビア導体24が、インダクタの特性、特にQ値へ影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0058】
また、ビア導体24が、曲がりをもって延びる長手形状を有しているので、部品本体12を得るための積層工程、およびライン導体23やビア導体24を形成するための露光工程などにおける加工ばらつきの影響を低減することができる。したがって、ライン導体23とビア導体24との接続信頼性を向上させることができる。このことを、以下に、図24を参照して、より具体的に説明する。
【0059】
図24は、ライン導体23とビア導体24とのずれの状態を、(A)ビア導体24が曲がらずに延びる場合と、(B)ビア導体24が曲がりをもって延びる場合と、で比較して模式的に示す図である。図24において、「Y方向のずれ」とは、曲がらずに延びるビア導体24の長手方向のずれを言い、「X方向のずれ」とは、曲がらずに延びるビア導体24の幅方向のずれを言う。
【0060】
まず、図24(A)に示すように、ビア導体24が曲がらずに延びる場合には、「ずれなし」および「Y方向のずれ」のときには、ライン導体23とビア導体24とがビア導体24の全域において互いに接触し、接続状態が維持されているが、「X方向のずれ」のときには、ライン導体23とビア導体24とが互いに離れ、接続状態が維持されない。なお、「X方向のずれ」が比較的小さいとき、ライン導体23とビア導体24とがビア導体24の一部において互いに接触することもあり得るが、信頼性の高い接続状態とは言い難い。いずれにしても、ビア導体24の幅方向のずれである「X方向のずれ」が接続状態に与える影響が大きいことがわかる。
【0061】
他方、図24(B)に示すように、ビア導体24が曲がりをもって延びる場合には、「ずれなし」のときは、当然のことながら、ライン導体23とビア導体24とがビア導体24の全域において互いに接触する。次に、「Y方向のずれ」のときは、曲がりビア導体24のうち、Y方向に沿って延びる部分の全域において、ライン導体23と接触し、「X方向のずれ」のときは、曲がりビア導体24のうち、X方向に延びる部分の全域において、ライン導体23と接触する。したがって、曲がりビア導体24全体で見たとき、ライン導体23とビア導体24との互いの接触が保証され、信頼性の高い接続状態が維持される。
【0062】
なお、図24に示した曲がりビア導体24は、90度の曲がり角度(後述する図25に示す角度θ1、θ2に相当)を有しているので、「X方向のずれ」および「Y方向のずれ」の2方向のずれのいずれに対しても、信頼性の高い接続状態を維持することができる。しかし、曲がりビア導体は、その曲がり角度が90度以外でも、「ずれ」に対する接続状態の維持効果を発揮することができる。すなわち、一般に、曲がりビア導体の曲がり部を介して両側にそれぞれ延びる方向に沿う2方向のずれのいずれに対しても、信頼性の高い接続状態を維持することができることになる。
【0063】
このようなことから、ビア導体24が、曲がりをもって延びる長手形状を有していると、積層工程および露光工程などにおける加工ばらつきの影響を低減することができ、ライン導体23とビア導体24との接続信頼性を向上させることができる。
【0064】
なお、曲がりをもって延びる曲がりビア導体を含む長手ビア導体は、ライン導体に沿って延びる長手形状を有している。見方を変えると、曲がりビア導体と接触するライン導体も、曲がりビア導体と接する部分において、曲がりをもって延びている。したがって、曲がりビア導体は、曲がりをもって延びるライン導体との接触面積を大きくしやすいという利点がある。
【0065】
第1の実施形態において、図2に示すように、ライン導体23の複数のつながりが形成する螺旋状の軌道は、角を形成する角部分31、32、33、34、35および36を有し、これら角部分31~36にそれぞれ沿って、曲がりビア導体24が位置している。この構成によれば、電流が集中しやすい角部分31~36の断面積をビア導体24によって増大させることができ、電流集中が緩和し、電流集中による損失を抑制することができる。
【0066】
また、曲がりビア導体24の各々について、曲がり角度を検討する。曲がりビア導体の曲がり角度を、曲がりビア導体の幅方向中心を結ぶ線が交差する角度であって、コイルの内周側から測定した角度と定義する。図25を参照して、より具体的に説明する。図25に示した曲がりビア導体は、たとえば図6に示した曲がりビア導体24-2に相当する。曲がりビア導体24-2は、2つの曲がり部BaおよびBbを有する。曲がりビア導体24-2には、その幅方向中心を結ぶ線として、線CL1、線CL2および線CL3を引くことができる。曲がりビア導体24-2の曲がり角度としては、線CL1と線CL2とがなす角度θ1、および線CL2と線CL3とがなす角度θ2がある。
【0067】
上述したθ1は、90度以上かつ180度未満である。このような曲がり角度θ1を有する曲がりビア導体は、コイルにおける電流が集中しやすい角部分での断面積の増大に寄与することにより、電流集中を緩和し、損失を抑制することができる。
【0068】
他方、θ2は、180度を超えかつ270度以下である。このような大きい曲がり角度を有するビア導体は、信号反射による損失を生じにくくすることができる。
【0069】
図4に示した曲がりビア導体24-1、図10に示した曲がりビア導体24-4、図12に示した曲がりビア導体24-5、図14に示した曲がりビア導体24-6、図16に示した曲がりビア導体24-7および図22に示した曲がりビア導体24-10は、90度以上かつ180度未満の曲がり角度θ1を持つ曲がり部を有している。
【0070】
一方、図6に示した曲がりビア導体24-2、図8に示した曲がりビア導体24-3、図18に示した曲がりビア導体24-8および図20に示した曲がりビア導体24-9は、90度以上かつ180度未満の曲がり角度θ1を持つ曲がり部Baと180度を超えかつ270度以下の曲がり角度θ2を持つ曲がり部Bbとの双方を有している。このように、2つの曲がり部BaおよびBbを有する曲がりビア導体は、1つの曲がり部を有する曲がりビア導体に比べて、損失を抑制する効果がより高められる。
【0071】
また、上述した実施形態は、非導電性材料層19間の同一界面内におけるライン導体23のターン数は、0.7ターン以上かつ2ターン未満であるという特徴を有している。上記ターン数が0.7ターン以上であれば、漏れ磁束を低減することができ、2ターン未満であれば、磁束の通過エリアを広く確保することができる。
【0072】
なお、上述のターン数に関して、1ターンは、以下のように定義される。ライン導体23の始端から終端にかけて、ライン導体23の外周に沿って接線を順次引き、この接線が360度回転した段階で1ターンと定義される。
【0073】
第1の実施形態において得られた曲がりビア導体24による上述した効果は、以下に説明する第2以降の実施形態においても奏される。
【0074】
次に、図26を参照して、この発明の第2の実施形態によるインダクタ11aについて説明する。図26は、図2に相当する図である。図26において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0075】
前述したように、2つの曲がり部を有する曲がりビア導体は、1つの曲がり部を有する曲がりビア導体に比べて、損失を抑制する効果がより高められる。図26に示すインダクタ11aでは、コイル20aにおけるライン導体23に沿って延びる長手形状の曲がりビア導体24が、6つの曲がり部B1~B6を有している。したがって、損失を抑制する効果がより高められる。
【0076】
次に、図27を参照して、この発明の第3の実施形態によるインダクタ11bについて説明する。図27は、図2に相当する図である。図27において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0077】
図27に示すインダクタ11bでは、コイル20bにおけるライン導体23に沿って延びる長手形状の曲がりビア導体24は、2つの曲がり部B1およびB2を有している。また、図26およびそれより前の図面で示された曲がりビア導体24の曲がり部は、どちらかと言えば、屈曲した曲がりを呈していたが、図27で示された曲がりビア導体24の曲がり部B1およびB2は、どちらかと言えば、湾曲した曲がりを呈している。このことから、「曲がり」は、「屈曲」から「湾曲」まで幅広い意味を有していると理解すべきである。
【0078】
なお、図27に示したコイル20bの形態は、図2等に示したコイル20の形態と異なっている。このことは、まず、コイルは種々の形態を取り得ることを示している。また、図27に示したコイル20bは、軸線方向の透視形状が単純な長円形であるので、その内周縁側で凹凸を少なくすることができる。したがって、電流集中などによる損失を抑制することができる。
【0079】
次に、図28を参照して、この発明の第4の実施形態によるインダクタ11cについて説明する。図28は、図2に相当する図である。図28において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0080】
図28に示すインダクタ11cに備えるコイル20cは、非導電性材料層19間の同一界面内におけるライン導体23のターン数が1ターン未満であり、非導電性材料層19間の各界面にそれぞれ沿うライン導体23のターン数が一定であるという特徴を有している。この構成によれば、図28からわかるように、曲がりビア導体24-1、24-2、24-3および24-4の各々の間隔が等しくなり、コイル20cが与える電流経路における断面積によるボトルネックがなくなり、電流集中などによる損失を生じにくくすることができる。
【0081】
以上説明した第1ないし第4の実施形態は、共通して、非導電性材料層19間の同一界面内におけるライン導体23の幅方向寸法は、均一であるという特徴を有している。この構成によれば、コイル20、20a、20bおよび20cの内周縁側の凹凸を少なくすることができるので、電流集中などによる損失を生じにくくすることができる。
【0082】
次に、図29を参照して、この発明の第5の実施形態によるインダクタ11dについて説明する。図29は、図2に相当する図である。図29において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0083】
図29に示すインダクタ11dは、第1ないし第4の実施形態の場合とは異なり、非導電性材料層19間の同一界面内におけるライン導体23の幅方向寸法は、均一ではない。図29に示すインダクタ11dでは、非導電性材料層19の主面は短辺37および長辺38を持つ長方形をなしており、コイル20dの軸線方向の透視形状がほぼ長方形である。ライン導体23は、短辺37に沿って延びる短辺部分23Sと長辺38に沿って延びる長辺部分23Lとを有し、短辺部分23Sにおいて、長辺部分23Lよりも線幅が大きくされている。
【0084】
このような構成によれば、ライン導体23において、短辺部分23Sの線幅が長辺部分23Lの線幅より大きくされているので、コイル20dの内周縁形状を正方形により近づけることができ、そのため、磁束の干渉を起こしにくく、すなわち、インダクタンスの取得効率をそれほど落とさず、高いQ値を取得することができる。
【0085】
また、図29に示すインダクタ11dでは、曲がりビア導体24は、ライン導体23の短辺部分23Sから長辺部分23Lにわたって延び、短辺部分23Sに接続される部分において、長辺部分23Lに接続される部分よりも幅広とされる。このような構成によれば、ライン導体23とビア導体24との接触面積が増し、接続信頼性を向上させることができる。
【0086】
次に、図30を参照して、この発明の第6の実施形態によるインダクタ11eについて説明する。図30は、図2に相当する図である。図30において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0087】
図30に示すインダクタ11eにおいても、上述の図29に示したインダクタ11dの場合と実質的に同様、非導電性材料層19は短辺37および長辺38を持つ長方形をなしており、ライン導体23は、短辺37に沿って延びる短辺部分23Sと長辺38に沿って延びる長辺部分23Lとを有し、短辺部分23Sにおいて、長辺部分23Lよりも線幅が大きくされている。しかし、図30に示すインダクタ11eでは、図29に示すインダクタ11dの場合とは異なり、コイル20eの軸線方向の透視形状が長円形である。
【0088】
このような構成によれば、ライン導体23において、短辺部分23Sの線幅が長辺部分23Lの線幅より大きくされているので、コイル20eの内周縁形状を円形により近づけることができ、そのため、磁束の干渉を起こしにくく、すなわち、インダクタンスの取得効率をそれほど落とさず、高いQ値を取得することができる。
【0089】
また、図30に示すインダクタ11eにおいても、曲がりビア導体24は、ライン導体23の短辺部分23Sから長辺部分23Lにわたって延び、短辺部分23Sに接続される部分において、長辺部分23Lに接続される部分よりも幅広とされる。このような構成によれば、ライン導体23とビア導体24との接触面積が増し、接続信頼性を向上させることができる。
【0090】
次に、図31を参照して、この発明の第7の実施形態によるインダクタ11fについて説明する。図31は、図2に相当する図である。
【0091】
図31に示すインダクタ11fは、ビア導体24の形態を除いて、前述の図29に示したインダクタ11dの構成と実質的に同様の構成を有している。したがって、図31において、図29に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0092】
図31に示すインダクタ11fでは、2つの曲がりビア導体24aと2つのスポット状ビア導体24bとを備えている。コイル20fの軸線方向の透視形状からは、前述の図29に示したインダクタ11dにおける曲がりビア導体24の各々が、曲がりビア導体24aとスポット状ビア導体24bとに分割されていると見ることができる。
【0093】
図31に示すように、曲がりビア導体24aは、ライン導体23の比較的細い長辺部分23Lに接するように設けられ、スポット状ビア導体24bは、ライン導体23の比較的幅広の短辺部分23Sに接するように設けられる。
【0094】
以上、この発明を図示したいくつかの実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の変形例が可能である。
【0095】
たとえば、図示の実施形態では、コイル20、20a、20b、20c、20d、20eおよび20fは、部品本体12の内部において、その軸線を実装面13に平行な方向に向けた状態で配置されたが、非導電性材料層の積層方向を変更して、コイルの軸線は実装面に直交する方向に向けられてもよい。また、コイルの軸線が、実装面に平行な方向に向けられながら、部品本体の長手方向(たとえば図2における左右方向)に向けられることもある。
【0096】
また、図示の実施形態では、外部端子電極26および27は、部品本体12の実装面13とこれに隣接する第1端面17および第2端面18の各々との2面にわたって設けられたが、たとえば、天面14ならびに第1側面15および第2側面16にまで延びるように形成されても、あるいは、実装面13のみに形成されてもよく、外部端子電極の形成領域は、必要に応じて任意に変更することができる。
【0097】
また、コイルに備える複数のライン導体の総ターン数は、ライン導体とビア導体との接続数を変更することにより、任意に変更することができる。
【0098】
また、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0099】
11,11a~11f インダクタ
12 部品本体
19 非導電性材料層
20,20a~20f コイル
23 ライン導体
23S 短辺部分
23L 長辺部分
24,24a,24b ビア導体
31~36 角部分
37 短辺
38 長辺
θ1,θ2 曲がり角度
Ba,Bb,B1~B6 曲がり部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32