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特許7517294対象車両認識装置及び対象車両認識装置の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】対象車両認識装置及び対象車両認識装置の処理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240709BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20240709BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/09
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021156437
(22)【出願日】2021-09-27
(65)【公開番号】P2023047493
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【弁理士】
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 征和
(72)【発明者】
【氏名】笹川 渉
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-114690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G06T 7/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の操舵制御による回避対象となる対象車両を認識するための対象車両認識装置であって、
前記自車両の前方カメラの撮像画像及び前記自車両の前方レーダセンサの検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、前記自車両の前方に位置する停止車両を検出する停止車両検出部と、
前記停止車両検出部による前記停止車両の検出結果と前記自車両の前方カメラの撮像画像とに基づいて、前記撮像画像上で前記停止車両の下端から画像水平方向に延びる基準軸線と、前記撮像画像上で前記停止車両の左端を前記基準軸線上に投影した車両左端位置と、前記撮像画像上で前記停止車両の右端を前記基準軸線上に投影した車両右端位置と、前記撮像画像上で前記自車両の走行レーンを形成する二本の境界線のうち少なくとも一方と前記基準軸線とが交差する位置である基準境界線位置と、を検出する画像位置検出部と、
前記停止車両の前記車両左端位置及び前記車両右端位置に挟まれた前記基準境界線位置が存在する場合には前記停止車両を前記操舵制御の前記対象車両として認識し、前記停止車両の前記車両左端位置及び前記車両右端位置に挟まれた前記基準境界線位置が存在しない場合には前記停止車両を前記操舵制御の前記対象車両として認識しない対象車両認識部と、
を備え
前記画像位置検出部は、前記停止車両の前記車両左端位置及び前記車両右端位置のうち前記自車両側の位置から前記基準境界線位置までの距離である第一距離と、前記車両左端位置及び前記車両右端位置のうち前記自車両と反対側の位置から前記基準境界線位置までの距離である第二距離とを算出し、
前記対象車両認識部は、前記停止車両の前記車両左端位置及び前記車両右端位置に挟まれた前記基準境界線位置が存在する場合であっても、当該基準境界線位置に対する前記第一距離が前記第二距離より大きいときには前記停止車両を前記操舵制御の前記対象車両として認識しない、対象車両認識装置。
【請求項2】
自車両の操舵制御による回避対象となる対象車両を認識するための対象車両認識装置であって、
前記自車両の前方カメラの撮像画像及び前記自車両の前方レーダセンサの検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、前記自車両の前方に位置する停止車両を検出する停止車両検出部と、
前記停止車両検出部による前記停止車両の検出結果と前記自車両の前方カメラの撮像画像とに基づいて、前記撮像画像上で前記停止車両の下端から画像水平方向に延びる基準軸線と、前記撮像画像上で前記停止車両の左端を前記基準軸線上に投影した車両左端位置と、前記撮像画像上で前記停止車両の右端を前記基準軸線上に投影した車両右端位置と、前記撮像画像上で前記自車両の走行レーンを形成する二本の境界線のうち少なくとも一方と前記基準軸線とが交差する位置である基準境界線位置と、を検出する画像位置検出部と、
前記停止車両の前記車両左端位置及び前記車両右端位置に挟まれた前記基準境界線位置が存在する場合には前記停止車両を前記操舵制御の前記対象車両として認識し、前記停止車両の前記車両左端位置及び前記車両右端位置に挟まれた前記基準境界線位置が存在しない場合には前記停止車両を前記操舵制御の前記対象車両として認識しない対象車両認識部と、
を備え、
前記画像位置検出部は、前記基準境界線位置として、前記自車両の走行レーンを形成する前記二本の境界線のうち一方の前記境界線と前記基準軸線とが交差する位置である第一基準境界線位置と、他方の前記境界線と前記基準軸線とが交差する位置である第二基準境界線位置とをそれぞれ検出し、
前記対象車両認識部は、前記停止車両の前記車両左端位置及び前記車両右端位置に挟まれた前記基準境界線位置が存在する場合であっても、前記車両左端位置及び前記車両右端位置のうち前記自車両側の位置と前記第一基準境界線位置及び前記第二基準境界線位置のうち前記車両左端位置及び前記車両右端位置に挟まれていない前記基準境界線位置との距離である隙間横距離が隙間横距離閾値未満であるときには、前記停止車両を前記操舵制御の前記対象車両として認識しない、対象車両認識装置。
【請求項3】
前記画像位置検出部は、前記基準境界線位置として、前記自車両の走行レーンを形成する前記二本の境界線のうち前記停止車両に近い方の前記境界線と前記基準軸線とが交差する位置を検出する、請求項2に記載の対象車両認識装置。
【請求項4】
自車両の操舵制御による回避対象となる対象車両を認識するための対象車両認識装置の処理方法であって、
前記自車両の前方カメラの撮像画像及び前記自車両の前方レーダセンサの検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、前記自車両の前方に位置する停止車両を検出する停止車両検出ステップと、
前記停止車両検出ステップにおける前記停止車両の検出結果と前記自車両の前方カメラの撮像画像とに基づいて、前記撮像画像上で前記停止車両の下端から画像水平方向に延びる基準軸線と、前記撮像画像上で前記停止車両の左端を前記基準軸線上に投影した車両左端位置と、前記撮像画像上で前記停止車両の右端を前記基準軸線上に投影した車両右端位置と、前記撮像画像上で前記自車両の走行レーンを形成する二本の境界線のうち少なくとも一方と前記基準軸線とが交差する位置である基準境界線位置と、を検出する画像位置検出ステップと、
前記停止車両の前記車両左端位置及び前記車両右端位置に挟まれた前記基準境界線位置が存在する場合には前記停止車両を前記操舵制御の前記対象車両として認識し、前記停止車両の前記車両左端位置及び前記車両右端位置に位置する前記基準境界線位置が存在しない場合には前記停止車両を前記操舵制御の前記対象車両として認識しない対象車両認識ステップと、
を含み、
前記画像位置検出ステップにおいて、前記停止車両の前記車両左端位置及び前記車両右端位置のうち前記自車両側の位置から前記基準境界線位置までの距離である第一距離と、前記車両左端位置及び前記車両右端位置のうち前記自車両と反対側の位置から前記基準境界線位置までの距離である第二距離とを算出し、
前記対象車両認識ステップにおいて、前記停止車両の前記車両左端位置及び前記車両右端位置に挟まれた前記基準境界線位置が存在する場合であっても、当該基準境界線位置に対する前記第一距離が前記第二距離より大きいときには前記停止車両を前記操舵制御の前記対象車両として認識しない、対象車両認識装置の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象車両認識装置及び対象車両認識装置の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の操舵制御による回避対象となる対象車両を認識するための対象車両認識装置に関する技術文献として、特表2019―524525号公報が知られている。この公報には、自車両の走行レーンにはみ出して駐車している駐車車両の影から歩行者が飛び出してくる可能性を考慮して、距離を取って駐車車両の側方を通過するように自車両の操舵制御を行うことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2019―524525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した公報には、自車両の走行レーンにはみ出して駐車している駐車車両を精度良く認識する方法について示されていない。隣接レーンで一時停止中の他車両を操舵制御の対象車両と誤って認識すると、自車両が不要な操舵制御を行うことになるため、操舵制御の対象車両を精度良く認識する手法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、自車両の操舵制御による回避対象となる対象車両を認識するための対象車両認識装置であって、自車両の前方カメラの撮像画像及び自車両の前方レーダセンサの検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、自車両の前方に位置する停止車両を検出する停止車両検出部と、停止車両検出部による停止車両の検出結果と自車両の前方カメラの撮像画像とに基づいて、撮像画像上で停止車両の下端から画像水平方向に延びる基準軸線と、撮像画像上で停止車両の左端を基準軸線上に投影した車両左端位置と、撮像画像上で停止車両の右端を基準軸線上に投影した車両右端位置と、撮像画像上で自車両の走行レーンを形成する二本の境界線のうち少なくとも一方と基準軸線とが交差する位置である基準境界線位置と、を検出する画像位置検出部と、停止車両の車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在する場合には停止車両を操舵制御の対象車両として認識し、停止車両の車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在しない場合には停止車両を操舵制御の対象車両として認識しない対象車両認識部と、を備え、画像位置検出部は、停止車両の車両左端位置及び車両右端位置のうち自車両側の位置から基準境界線位置までの距離である第一距離と、車両左端位置及び車両右端位置のうち自車両と反対側の位置から基準境界線位置までの距離である第二距離とを算出し、対象車両認識部は、停止車両の車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在する場合であっても、当該基準境界線位置に対する第一距離が第二距離より大きいときには停止車両を操舵制御の対象車両として認識しない
【0006】
本発明の一態様に係る対象車両認識装置によれば、自車両の前方に停止車両を検出した場合に、撮像画像において車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在するときに停止車両を操舵制御の対象車両として認識し、車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在しないときには停止車両を操舵制御の対象車両として認識しないので、隣接レーンで一時停止中の他車両を誤って対象車両と認識することが避けられ、操舵制御の回避対象となる対象車両を撮像画像から適切に認識することができる。
【0007】
本発明の一態様に係る対象車両認識装置において、画像位置検出部は、基準境界線位置として、自車両の走行レーンを形成する二本の境界線のうち停止車両に近い方の境界線と基準軸線とが交差する位置を検出してもよい。
この対象車両認識装置によれば、自車両の走行レーンを形成する二本の境界線のうち停止車両に近い境界線を停止車両が跨いで停車又は駐車している可能性が高いことから、停止車両に近い境界線に対応する基準境界線位置を検出することで、対象車両認識の演算処理を抑制することができる。
【0009】
本発明の他の態様は、自車両の操舵制御による回避対象となる対象車両を認識するための対象車両認識装置であって、自車両の前方カメラの撮像画像及び自車両の前方レーダセンサの検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、自車両の前方に位置する停止車両を検出する停止車両検出部と、停止車両検出部による停止車両の検出結果と自車両の前方カメラの撮像画像とに基づいて、撮像画像上で停止車両の下端から画像水平方向に延びる基準軸線と、撮像画像上で停止車両の左端を基準軸線上に投影した車両左端位置と、撮像画像上で停止車両の右端を基準軸線上に投影した車両右端位置と、撮像画像上で自車両の走行レーンを形成する二本の境界線のうち少なくとも一方と基準軸線とが交差する位置である基準境界線位置と、を検出する画像位置検出部と、停止車両の車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在する場合には停止車両を操舵制御の対象車両として認識し、停止車両の車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在しない場合には停止車両を操舵制御の対象車両として認識しない対象車両認識部と、を備え、画像位置検出部は、基準境界線位置として、自車両の走行レーンを形成する二本の境界線のうち一方の境界線と基準軸線とが交差する位置である第一基準境界線位置と、他方の境界線と基準軸線とが交差する位置である第二基準境界線位置とをそれぞれ検出し、対象車両認識部は、車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在する場合であっても、車両左端位置及び車両右端位置のうち自車両側の位置と第一基準境界線位置及び第二基準境界線位置のうち車両左端位置及び車両右端位置に挟まれていない基準境界線位置との距離である隙間横距離が隙間横距離閾値未満であるときには、停止車両を操舵制御の対象車両として認識しな
この対象車両認識装置によれば、走行レーンにおける停止車両の側方の隙間の距離である隙間横距離が隙間横距離閾値未満であるときには停止車両を操舵制御の対象車両として認識しないので、自車両が停止車両の側方を通過することが難しい場合にまで停止車両に対する操舵制御を実行することを避けることができる。
【0010】
本発明の他の態様は、自車両の操舵制御による回避対象となる対象車両を認識するための対象車両認識装置の処理方法であって、自車両の前方カメラの撮像画像及び自車両の前方レーダセンサの検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、自車両の前方に位置する停止車両を検出する停止車両検出ステップと、停止車両検出ステップにおける停止車両の検出結果と自車両の前方カメラの撮像画像とに基づいて、撮像画像上で停止車両の下端から画像水平方向に延びる基準軸線と、撮像画像上で停止車両の左端を基準軸線上に投影した車両左端位置と、撮像画像上で停止車両の右端を基準軸線上に投影した車両右端位置と、撮像画像上で自車両の走行レーンを形成する二本の境界線のうち少なくとも一方と基準軸線とが交差する位置である基準境界線位置と、を検出する画像位置検出ステップと、停止車両の車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在する場合には停止車両を操舵制御の対象車両として認識し、停止車両の車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた位置する基準境界線位置が存在しない場合には停止車両を操舵制御の対象車両として認識しない対象車両認識ステップと、を含み、画像位置検出ステップにおいて、停止車両の車両左端位置及び車両右端位置のうち自車両側の位置から基準境界線位置までの距離である第一距離と、車両左端位置及び車両右端位置のうち自車両と反対側の位置から基準境界線位置までの距離である第二距離とを算出し、対象車両認識ステップにおいて、停止車両の車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在する場合であっても、当該基準境界線位置に対する第一距離が第二距離より大きいときには停止車両を操舵制御の対象車両として認識しない。
【0011】
本発明の他の態様に係る対象車両認識装置の処理方法によれば、自車両の前方に停止車両を検出した場合に、撮像画像において車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在するときに停止車両を操舵制御の対象車両として認識し、車両左端位置及び車両右端位置に挟まれた基準境界線位置が存在しないときには停止車両を操舵制御の対象車両として認識しないので、隣接レーンで一時停止中の他車両を誤って対象車両と認識することが避けられ、操舵制御の回避対象となる対象車両を撮像画像から適切に認識することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の各態様によれば、操舵制御の回避対象となる対象車両を撮像画像から適切に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る操舵制御装置(対象車両認識装置)を示すブロック図である。
図2】停止車両が存在する状況の一例を示す平面図である。
図3】撮像画像上における各種の位置検出を説明するための図である。
図4】対象車両認識処理の一例を示すフローチャートである。
図5】変形例に係る撮像画像上の対象車両の認識を説明するための図である。
図6】変形例に係る対象車両認識処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示されるように、一実施形態に係る操舵制御装置(対象車両認識装置)100は、乗用車等の車両に搭載され、車両の操舵制御を実行する装置である。以下、操舵制御装置100が搭載された車両を自車両と呼ぶ。
【0016】
操舵制御は、一例として、PDA[Proactive Driving Assist]における操舵の制御を意味する。操舵制御は、自車両の操舵により回避対象を回避する制御が含まれる。操舵制御は、自車両の走行レーンにはみ出して停車又は駐車している車両を回避対象として、当該車両と距離を取りつつ、当該車両の側方を通過するように自車両の操舵を制御する。
【0017】
操舵制御装置100は、操舵制御の回避対象である対象車両の認識を行う。ここで、図2は、対象車両の一例を示す平面図である。図2に、自車両M、自車両Mが走行する走行レーンR1、走行レーンR1に隣接する隣接レーンR2、隣接レーンR2の一時停止線T、自車両Mの前方で停止中の他車両である停止車両N1及び停止車両N2を示す。
【0018】
停止車両N1は、走行レーンR1にはみ出して停車(又は駐車)している車両である。停止車両N1は、例えば走行レーンR1の脇の歩道に乗り上げて停車している車両である。このような停止車両N1においては、自車両Mから死角となる停止車両N1の前から歩行者Pが飛び出してくるおそれがある。停止車両N2は、隣接レーンR2上において一時停止線Tの手前で一時停止している車両である。本実施形態に係る操舵制御装置100では、停止車両N1を対象車両として側方を通過する操舵制御を行いつつ、隣接レーンR2上の停止車両N2を対象車両として認識しない。
【0019】
[操舵制御装置の構成]
操舵制御装置100は、装置を統括的に管理するECU[Electronic Control Unit]10を備えている。ECU10は、CPU[CentralProcessing Unit]とROM[Read Only Memory]又はRAM[Random Access Memory]などの記憶部を有する電子制御ユニットである。ECU10では、例えば、記憶部に記憶されているプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECU10は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。また、以下に説明するECU10の機能の一部は、自車両と通信可能なサーバにおいて実行される態様であってもよい。
【0020】
ECU10には、前方カメラ1、前方レーダセンサ2、車速センサ3、加速度センサ4、ヨーレートセンサ5、及びアクチュエータ6が接続されている。前方カメラ1は、自車両の前方を撮像するためのカメラである。前方カメラ1は、例えば自車両のフロントガラスの裏側に設けられ、自車両の前方の撮像画像をECU10へ送信する。前方カメラ1は、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。
【0021】
前方レーダセンサ2は、電波(例えばミリ波)又は光を利用して自車両の前方の物体を検出する検出機器である。前方レーダセンサ2には、例えば、ミリ波レーダ又はライダー[LIDAR:Light Detection and Ranging]が含まれる。前方レーダセンサ2は、電波又は光を自車両の周囲に送信し、物体で反射された電波又は光を受信することで物体を検出する。前方レーダセンサ2は、検出した先行車等の物体の情報をECU10へ送信する。前方レーダセンサ2の検出結果には物体の速度情報(例えば自車両との相対速度)も含まれる。
【0022】
車速センサ3は、自車両の速度を検出する検出器である。車速センサ3としては、例えば、自車両の車輪又は車輪と一体に回転するドライブシャフト等に対して設けられ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが用いられる。車速センサ3は、検出した車速情報(車輪速情報)をECU10に送信する。
【0023】
加速度センサ4は、自車両の加速度を検出する検出器である。加速度センサ4は、例えば、自車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサと、自車両の横加速度を検出する横加速度センサとを含んでいる。加速度センサ4は、例えば、自車両の加速度情報をECU10に送信する。
【0024】
ヨーレートセンサ5は、自車両の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサ5としては、例えばジャイロセンサを用いることができる。ヨーレートセンサ5は、検出した自車両のヨーレート情報をECU10へ送信する。
【0025】
アクチュエータ6は、自車両の制御に用いられる機器である。アクチュエータ6は、駆動アクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを少なくとも含む。駆動アクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を制御し、自車両の駆動力を制御する。なお、自車両がハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)である場合には、エンジンに対する空気の供給量の他に、動力源としてのモータにECU10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。自車両が電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である場合には、動力源としてのモータにECU10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。これらの場合における動力源としてのモータは、アクチュエータ6を構成する。
【0026】
ブレーキアクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、自車両の車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、例えば、液圧ブレーキシステムを用いることができる。操舵アクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を、ECU10からの制御信号に応じて制御する。これにより、操舵アクチュエータは、自車両の操舵トルクを制御する。
【0027】
次に、ECU10の機能的構成について説明する。ECU10は、停止車両検出部11、画像位置検出部12、対象車両認識部13、及び操舵制御部14を有している。なお、以下に説明するECU10の機能の一部は、自車両と通信可能なサーバにおいて実行される態様であってもよい。
【0028】
停止車両検出部11は、前方カメラ1の撮像画像及び前方レーダセンサ2の検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、自車両の前方に位置する停止車両を検出する。停止車両とは速度がゼロの車両である。車両は四輪車に限られず、二輪車であってもよい。停止車両の検出方法は特に限定されず、周知の手法を採用することができる。停止車両検出部11は、例えば自車両の前方の他車両と自車両の前方のガードレールその他の構造物との速度差から停止車両であることを検出してもよい。停止車両検出部11は、自車両の車速センサ3の検出した車速を踏まえて停止車両を検出してもよい。
【0029】
画像位置検出部12は、停止車両検出部11による停止車両の検出結果と自車両の前方カメラ1の撮像画像とに基づいて、撮像画像上の各種の位置を検出する。具体的に、画像位置検出部12は、撮像画像上で停止車両の下端から画像水平方向に延びる軸線である基準軸線と、撮像画像上で停止車両の左端を基準軸線上に投影した車両左端位置と、撮像画像上で停止車両の右端を基準軸線上に投影した車両右端位置と、撮像画像上で自車両の走行レーンR1を形成する二本の境界線のうち少なくとも一方と基準軸線とが交差する位置である基準境界線位置と、を検出する。
【0030】
画像位置検出部12は、例えばディープラーニングやパターンマッチングにより撮像画像上の停止車両や走行レーンR1の境界線などを認識することで、各種の位置を検出する。画像位置検出部12は、その他の周知の画像処理手法を採用してもよい。
【0031】
ここで、図3は、撮像画像上における各種の位置検出を説明するための図である。図3に、自車両Mの前方の撮像画像G、撮像画像G中の走行レーンR1、走行レーンR1を形成する二本の境界線BL,BR、撮像画像G中の停止車両N1、基準軸線CL、車両左端位置NL、車両右端位置NR、第一基準境界線位置C1、第二基準境界線位置C2、第一距離DA、及び第二距離DBを示す。
【0032】
図3に示すように、基準軸線CLは、撮像画像G上で停止車両N1の下端から画像水平方向に延びる軸線である。画像水平方向とは、撮像画像Gにおける水平方向である。停止車両N1の下端は、例えば撮像画像G上における停止車両N1のタイヤの下端となる。
【0033】
車両左端位置NLは、撮像画像G上で停止車両N1の左端を基準軸線CL上に投影した位置である。車両右端位置NRは、撮像画像G上で停止車両N1の右端を基準軸線CL上に投影した位置である。停止車両N1の左端とは、停止車両N1のうち最も左端に位置する部位である。停止車両N1の車体のうち最も左に突出している部位であってもよく、停止車両N1が貨物車である場合には荷台のうち最も左に突出している部位であってもよい。停止車両N1の左ミラーが最も左に突出している場合には、左ミラーの先端を左端としてもよい。停止車両N1の左端を基準軸線CLに対して垂直に投影した位置が車両左端位置NLとなる。車両右端位置NRは車両左端位置NLと同様であるため、説明を省略する。
【0034】
第一基準境界線位置C1は、撮像画像G上で自車両の走行レーンR1を形成する二本の境界線BL,BRのうち境界線BLと基準軸線CLとが交差する位置である。第二基準境界線位置C2は、境界線BRと基準軸線CLとが交差する位置である。第一基準境界線位置C1は、画像水平方向で境界線BLが複数の画素から構成されている場合(撮像画像G上で境界線BLがある程度の幅を有している場合)には、境界線BLの画像水平方向中央の位置としてもよく、境界線BLの画像水平方向で自車両側の端の位置又は自車両と反対側の端の位置としてもよい。
【0035】
第一距離DAは、基準軸線CL上で車両左端位置NL及び車両右端位置NRのうち自車両側の位置から第一基準境界線位置C1までの距離である。図3における第一距離DAは、第一基準境界線位置C1と車両右端位置NRとの間の距離となる。第二距離DBは、基準軸線CL上で車両左端位置NL及び車両右端位置NRのうち自車両側の位置から第一基準境界線位置C1までの距離である。図3における第二距離DBは、車両左端位置NLと第一基準境界線位置C1との間の距離となる。画像位置検出部12は、第二基準境界線位置C2に対応する第一距離及び第二距離を算出してもよい。
【0036】
なお、画像位置検出部12は、境界線BLの第一基準境界線位置C1と境界線BRの第二基準境界線位置C2を必ずしも検出する必要はない。画像位置検出部12は、境界線BL,BRのうち、停止車両N1に近い境界線BLに対応する第一基準境界線位置C1のみを検出する態様であってもよい。
【0037】
対象車両認識部13は、画像位置検出部12の検出結果に基づいて、停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置(第一基準境界線位置C1又は第二基準境界線位置C2)が存在するか否かを判定する。
【0038】
対象車両認識部13は、撮像画像Gにおいて、セマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation)により画素レベルで各位置の水平座標(画像水平方向の座標)を求め、その差分を用いて判定してもよい。例えば第一基準境界線位置C1の画素座標から車両左端位置NLの画素座標を減算すると、車両左端位置NLが第一基準境界線位置C1の左側に位置するときは差分が負の値となり、車両左端位置NLが第一基準境界線位置C1の右側に位置するときは差分が正の値となる。
【0039】
同様に、第一基準境界線位置C1の画素座標から車両右端位置NRの画素座標を減算すると、車両右端位置NRが第一基準境界線位置C1の左側に位置するときは差分が負の値となり、車両右端位置NRが第一基準境界線位置C1の右側に位置するときは差分が正の値となる。対象車両認識部13は、車両左端位置NLの差分と車両右端位置NRの差分との正負の符号が異なるとき、停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた第一基準境界線位置C1が存在すると判定する。
【0040】
第二基準境界線位置C2についても同様に判定することができる。図3に示す状況において、対象車両認識部13は、第二基準境界線位置C2及び車両左端位置NLの差分の正負の符号と第二基準境界線位置C2及び車両右端位置NRの差分の正負の符号とが同じとなることから、第二基準境界線位置C2は車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれていないと判定する。なお、各位置の画像座標の求め方は、セマンティックセグメンテーションに限定されず、周知の手法を採用することができる。
【0041】
対象車両認識部13は、停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた第一基準境界線位置C1が存在すると判定した場合、第一基準境界線位置C1と車両右端位置NRとの間の距離である第一距離DAが車両左端位置NLと基準境界線位置C1との間の距離である第二距離DBより大きいか否かを判定する。なお、第一距離DAは上述した車両右端位置NRと第一基準境界線位置C1との差分に相当し、第二距離DBは上述した車両左端位置NLと第一基準境界線位置C1との差分に相当する。
【0042】
対象車両認識部13は、第一距離DAが第二距離DBより大きいと判定した場合、停止車両N1を操舵制御の対象車両として認識しない。対象車両認識部13は、第一距離DAが第二距離DBより大きいと判定しなかった場合、停止車両N1を操舵制御の対象車両として認識する。
【0043】
操舵制御部14は、対象車両認識部13により操舵制御の回避対象である対象車両が認識された場合、対象車両を回避して対象車両の側方を通過するための操舵制御を実行する。操舵制御部14は、前方カメラ1の撮像画像及び/又は前方レーダセンサ2の検出結果に基づいて、自車両の車速、加速度、ヨーレートを踏まえて操舵制御を実行する。なお、操舵制御部14は、対象車両が認識された場合であっても必ずしも操舵制御を実行する必要はない。
【0044】
[操舵制御装置の処理方法]
次に、本実施形態に係る操舵制御装置(対象車両認識装置)100の処理方法について説明する。図4は、対象車両認識処理の一例を示すフローチャートである。対象車両認識処理は、例えば運転者による自車両の操舵制御の実行要否の設定が要に設定されている場合に行われる。
【0045】
図4に示すように、操舵制御装置100のECU10は、S10として、停止車両検出部11により自車両の前方に位置する停止車両N1を検出する(停止車両検出ステップ)。停止車両検出部11は、前方カメラ1の撮像画像及び前方レーダセンサ2の検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、停止車両N1を検出する。
【0046】
S11において、ECU10は、画像位置検出部12により車両左端位置NL、車両右端位置NR、基準境界線位置(第一基準境界線位置C1及び/又は第二基準境界線位置C2)を検出する(画像位置検出ステップ)。画像位置検出部12は、例えばディープラーニングやパターンマッチングにより撮像画像上の停止車両や走行レーンR1の境界線などを認識することで、各種の位置を検出する。
【0047】
S12において、ECU10は、対象車両認識部13により停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置が存在するか否かを判定する(基準境界線位置判定ステップ)。対象車両認識部13は、画像位置検出部12の検出結果に基づいて上記判定を行う。ECU10は、停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置が存在すると判定された場合(S12:YES)、S13に移行する。ECU10は、停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置が存在すると判定されなかった場合(S12:NO)、S16に移行する。
【0048】
S13において、ECU10は、画像位置検出部12により第一距離DA及び第二距離DBを算出する(距離算出ステップ)。画像位置検出部12は、車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置について、車両左端位置NL及び車両右端位置NRのうち自車両側の位置から基準境界線位置までの距離である第一距離DAと、車両左端位置NL及び車両右端位置NRのうち自車両と反対側の位置から基準境界線位置までの距離である第二距離DBとを算出する。なお、第一距離DA及び第二距離DBの算出は、S11で既に行われていてもよい。
【0049】
S14において、ECU10は、対象車両認識部13により第一距離DAが第二距離DBより大きいか否かを判定する(距離判定ステップ)。ECU10は、第一距離DAが第二距離DBより大きいと判定されなかった場合(S14:NO)、S15に移行する。ECU10は、第一距離DAが第二距離DBより大きいと判定された場合(S14:YES)、S16に移行する。
【0050】
S15において、ECU10は、対象車両認識部13により停止車両N1を操舵制御の対象車両として認識する(対象車両認識ステップ)。その後、ECU10は、停止車両N1に対する今回の処理を終了する。
【0051】
S16において、ECU10は、対象車両認識部13により停止車両N1を操舵制御の対象車両として認識しない(対象車両認識ステップ)。その後、ECU10は、停止車両N1に対する今回の処理を終了する。
【0052】
以上説明した本実施形態に係る操舵制御装置100によれば、自車両の前方に停止車両N1を検出した場合に、撮像画像Gにおいて車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置(第一基準境界線位置C1及び/又は第二基準境界線位置C2)が存在するときに停止車両N1を操舵制御の対象車両として認識し、車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置が存在しないときには停止車両を操舵制御の対象車両として認識しないので、隣接レーンで一時停止中の他車両(図2の停止車両N2)を誤って対象車両と認識することが避けられ、操舵制御の回避対象となる対象車両を撮像画像Gから適切に認識することができる。
【0053】
また、操舵制御装置100によれば、停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置が存在する場合であっても、停止車両N1の大部分が自車両の走行レーンR1上に位置するときには自車両の先行車が一時停止している可能性が高いので、基準軸線CL上で自車両側の第一距離DAが第二距離DBより大きいときには停止車両N1を操舵制御の対象車両として認識しないことにより、一時停止している自車両の先行車を誤って操舵制御の回避対象とすることを避けることができる。
【0054】
なお、操舵制御装置100では、基準境界線位置として、自車両の走行レーンR1を形成する二本の境界線BL,BRのうち停止車両N1に近い方の境界線と基準軸線CLとが交差する位置を検出した場合には、自車両の走行レーンを形成する二本の境界線のうち停止車両に近い境界線を停止車両が跨いで停車又は駐車している可能性が高いことから、停止車両に近い境界線に対応する基準境界線位置を検出することで、二本の境界線の基準境界線位置をそれぞれ検出する場合と比べて対象車両認識の演算処理を抑制することができる。
【0055】
[変形例]
続いて、操舵制御装置100の変形例について説明する。変形例に係る操舵制御装置100は、停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置が存在する場合に、停止車両の側方の隙間横距離を用いて対象車両の認識を行う点が上述の実施形態と比べて異なっている。隙間横距離DSとは、車両左端位置NL及び車両右端位置NRのうち自車両側の位置と第一基準境界線位置C1及び第二基準境界線位置C2のうち車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれていない基準境界線位置との距離である。
【0056】
図5は、変形例に係る撮像画像上の対象車両の認識を説明するための図である。図5に隙間横距離DSを示す。図5における隙間横距離DSは、車両右端位置NRと第二基準境界線位置C2との距離となる。画像位置検出部12は、撮像画像G上の車両右端位置NRと第二基準境界線位置C2との距離である隙間横距離DSを算出する。
【0057】
対象車両認識部13は、停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置が存在すると判定した場合であっても、隙間横距離DSが隙間横距離閾値未満であるときには、停止車両N1を対象車両として認識しない。隙間横距離閾値は、予め設定された値の閾値である。隙間横距離閾値は、例えば自車両の車幅より大きい値の閾値として設定される。
【0058】
図6は、変形例に係る対象車両認識処理の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、操舵制御装置100のECU10は、S20として、停止車両検出部11により自車両の前方に位置する停止車両N1を検出する(停止車両検出ステップ)。停止車両検出部11は、前方カメラ1の撮像画像及び前方レーダセンサ2の検出結果のうち少なくとも一方に基づいて、停止車両N1を検出する。
【0059】
S21において、ECU10は、画像位置検出部12により車両左端位置NL、車両右端位置NR、基準境界線位置(第一基準境界線位置C1及び第二基準境界線位置C2)を検出する(画像位置検出ステップ)。画像位置検出部12は、例えばディープラーニングやパターンマッチングにより撮像画像上の停止車両や走行レーンR1の境界線などを認識することで、各種の位置を検出する。
【0060】
S22において、ECU10は、対象車両認識部13により停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置が存在するか否かを判定する(基準境界線位置判定ステップ)。対象車両認識部13は、画像位置検出部12の検出結果に基づいて上記判定を行う。ECU10は、停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置が存在すると判定された場合(S22:YES)、S23に移行する。ECU10は、停止車両N1の車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれた基準境界線位置が存在すると判定されなかった場合(S22:NO)、S26に移行する。
【0061】
S23において、ECU10は、画像位置検出部12により隙間横距離DSを算出する(隙間横距離算出ステップ)。画像位置検出部12は、車両左端位置NL及び車両右端位置NRのうち自車両側の位置と第一基準境界線位置C1及び第二基準境界線位置C2のうち車両左端位置NL及び車両右端位置NRに挟まれていない基準境界線位置との距離として隙間横距離DSを算出する。なお、隙間横距離DSの算出は、S21で既に行われていてもよい。
【0062】
S24において、ECU10は、対象車両認識部13により隙間横距離DSが隙間横距離閾値未満であるか否かを判定する(隙間横距離判定ステップ)。ECU10は、隙間横距離DSが隙間横距離閾値未満であると判定されなかった場合(S24:NO)、S25に移行する。ECU10は、隙間横距離DSが隙間横距離閾値未満であると判定された場合(S24:YES)、S26に移行する。
【0063】
S25において、ECU10は、対象車両認識部13により停止車両N1を操舵制御の対象車両として認識する(対象車両認識ステップ)。その後、ECU10は、停止車両N1に対する今回の処理を終了する。
【0064】
S26において、ECU10は、対象車両認識部13により停止車両N1を操舵制御の対象車両として認識しない(対象車両認識ステップ)。その後、ECU10は、停止車両N1に対する今回の処理を終了する。
【0065】
以上説明した変形例に係る操舵制御装置100によれば、走行レーンR1における停止車両N1の側方の隙間の距離である隙間横距離が隙間横距離閾値未満であるときには停止車両を操舵制御の対象車両として認識しないので、自車両が停止車両の側方を通過することが難しい場合にまで停止車両に対する操舵制御を実行することを避けることができる。
【0066】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0067】
本開示に係る対象車両認識装置は、必ずしも操舵制御装置と一体である必要はない。対象車両認識装置は、操舵制御装置と別体であってもよく、その機能の一部は自車両と通信可能なサーバにて実行されてもよい。この場合の自車両は、対象車両認識装置の全ての構成が搭載された車両である必要はなく、操舵制御を実行する車両を意味する。
【0068】
実施形態に係る操舵制御装置100において、変形例のように隙間横距離DSを用いた判定を行ってもよい。すなわち、操舵制御装置100は、図4のS14で第一距離DAが第二距離DBより大きいと判定されなかった場合に、図6のS24のように隙間横距離DSが隙間横距離閾値未満であるか否かの判定を行ってもよい。操舵制御装置100は、第一距離DAが第二距離DBより大きいと判定されなかった場合であっても、隙間横距離DSが隙間横距離閾値未満であるときには、自車両が停止車両N1の側方を通過することが難しいため、停止車両N1を操舵制御の対象車両として認識しない。
【符号の説明】
【0069】
1…前方カメラ、2…前方レーダセンサ、10…ECU、11…停止車両検出部、12…画像位置検出部、13…対象車両認識部、100…操舵制御装置(対象車両認識装置)、BL,BR…境界線、C1…第一基準境界線位置(基準境界線位置)、C2…第二基準境界線位置(基準境界線位置)、CL…基準軸線、DA…第一距離、DB…第二距離、DS…隙間横距離、G…撮像画像、M…自車両、N1,N2…停止車両、NL…車両左端位置、NR…車両右端位置、R1…走行レーン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6