(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】モデル作成装置、モデル作成方法、及びモデル作成システム
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20240709BHJP
【FI】
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2021162690
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】岸川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 一樹
(72)【発明者】
【氏名】高巣 祐介
(72)【発明者】
【氏名】江原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】岡 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】森山 修司
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/184070(WO,A1)
【文献】特開2020-144555(JP,A)
【文献】特開2021-135726(JP,A)
【文献】WANG, Leye et al.,Smart City Development With Urban Transfer Learning,arXiv [online],2018年10月21日,https://arxiv.org/abs/1808.01552,[2024年5月28日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的環境に適した目的モデルであって目的入力が入力されると目的出力を出力するように構成されている目的モデルを作成するためのモデル作成装置であって、
前記目的環境と異なる複数の候補環境にそれぞれ適した複数の候補モデルであってそれぞれ参照入力が入力されると参照出力を出力するように構成されている複数の候補モデルを決定するように構成されている候補モデル決定部であって、前記参照入力及び前記参照出力は、前記参照入力が前記目的入力と異なることと、前記参照出力が前記目的出力と異なることとのうちの一方又は両方を満たしている、候補モデル決定部と、
前記複数の候補モデルに前記目的環境に関連する前記参照入力の教師データをそれぞれ入力して得られる前記参照出力のデータと、前記参照入力の教師データに対応する前記参照出力の教師データとに基づいて、前記複数の候補環境のなかから基準環境を決定するように構成されている基準環境決定部と、
前記基準環境に適したモデルであって前記目的入力が入力されると前記目的出力を出力するように構成されているモデルを基準モデルに決定するように構成されている基準モデル決定部と、
前記基準モデルに基づいて前記目的モデルを作成するように構成されている目的モデル作成部と、
を備える、モデル作成装置。
【請求項2】
前記参照入力は前記目的入力と異なりかつ前記参照出力は前記目的出力と異なる、請求項1に記載のモデル作成装置。
【請求項3】
前記基準環境決定部は、前記複数の候補モデルに前記参照入力の教師データをそれぞれ入力して得られる前記参照出力のデータと、前記参照出力の教師データとの間の相関が最も高い候補モデルを決定するとともに、前記相関が最も高い候補モデルが適する前記候補環境を前記基準環境に決定するように構成されている、請求項1又は2に記載のモデル作成装置。
【請求項4】
前記目的モデル作成部は、前記基準モデルをそのまま前記目的モデルとするように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のモデル作成装置。
【請求項5】
前記目的モデル作成部は、前記基準モデルをファインチューニングすることにより前記目的モデルを作成するように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のモデル作成装置。
【請求項6】
前記目的モデル作成部は、前記基準モデルを転移学習することにより前記目的モデルを作成するように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のモデル作成装置。
【請求項7】
前記目的環境及び前記候補環境が街である、請求項1から6までのいずれか1項に記載のモデル作成装置。
【請求項8】
目的環境に適した目的モデルであって目的入力が入力されると目的出力を出力するように構成されている目的モデルを作成するモデル作成方法であって、
前記目的環境と異なる複数の候補環境にそれぞれ適した複数の候補モデルであってそれぞれ参照入力が入力されると参照出力を出力するように構成されている複数の候補モデルを決定することであって、前記参照入力及び前記参照出力は、前記参照入力が前記目的入力と異なることと、前記参照出力が前記目的出力と異なることとのうちの一方又は両方を満たしている、複数の候補モデルを決定することと、
前記複数の候補モデルに前記目的環境に関連する前記参照入力の教師データをそれぞれ入力して得られる前記参照出力のデータと、前記参照入力の教師データに対応する前記参照出力の教師データとに基づいて、前記複数の候補環境のなかから基準環境を決定することと、
前記基準環境に適したモデルであって前記目的入力が入力されると前記目的出力を出力するように構成されているモデルを基準モデルに決定することと、
前記基準モデルに基づいて前記目的モデルを作成することと、
を含む、モデル作成方法。
【請求項9】
目的環境に適した目的モデルであって目的入力が入力されると目的出力を出力するように構成されている目的モデルを作成するためのモデル作成システムであって、
前記目的環境と異なる複数の候補環境にそれぞれ適した複数の候補モデルであってそれぞれ参照入力が入力されると参照出力を出力するように構成されている複数の候補モデルを決定するように構成されている候補モデル決定部であって、前記参照入力及び前記参照出力は、前記参照入力が前記目的入力と異なることと、前記参照出力が前記目的出力と異なることとのうちの一方又は両方を満たしている、候補モデル決定部と、
前記目的環境に関連する前記参照入力の教師データと、前記参照入力の教師データに対応する前記参照出力の教師データとを取得するように構成されている教師データ取得部と、
前記複数の候補モデルに前記参照入力の教師データをそれぞれ入力して得られる前記参照出力のデータと、前記参照出力の教師データとに基づいて、前記複数の候補環境のなかから基準環境を決定するように構成されている基準環境決定部と、
前記基準環境に適したモデルであって前記目的入力が入力されると前記目的出力を出力するように構成されているモデルを基準モデルに決定するように構成されている基準モデル決定部と、
前記基準モデルに基づいて前記目的モデルを作成するように構成されている目的モデル作成部と、
を備える、モデル作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はモデル作成装置、モデル作成方法、及びモデル作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザ側装置から取得した利用要求に応じて、データベースに予め保管されている複数の学習済みモデルからユーザ側装置の利用目的に適合する1または複数の学習済みモデルを選択してユーザ側装置に提供するための学習済みモデル提供システムが公知である(例えば、特許文献1、段落0037参照)。特許文献1には、選択された学習済みモデルをファインチューニングしてユーザ側装置に提供することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ユーザ側装置で必要とされる学習済みモデルを短時間で提供できるかもしれない。しかしながら、特許文献1において、データベースから選択される学習済みモデルは、ユーザ側装置の利用目的に適合するものに限られる。すなわち、ユーザ側装置が要求する学習済みモデルが、例えば、ユーザの顔画像が入力されるとユーザの年齢を出力する学習済みモデルである場合、選択される学習済みモデルは、データベースに保管されている学習済みモデルのうち、ユーザの顔画像が入力されるとユーザの年齢を出力する学習済みモデルに限定される。その結果、選択された学習済みモデルが適切でないおそれがあり、ユーザ側装置に提供された学習済みモデルが正確な結果を与えることができないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、以下が提供される。
[構成1]
目的環境に適した目的モデルであって目的入力が入力されると目的出力を出力するように構成されている目的モデルを作成するためのモデル作成装置であって、
前記目的環境と異なる複数の候補環境にそれぞれ適した複数の候補モデルであってそれぞれ参照入力が入力されると参照出力を出力するように構成されている複数の候補モデルを決定するように構成されている候補モデル決定部であって、前記参照入力及び前記参照出力は、前記参照入力が前記目的入力と異なることと、前記参照出力が前記目的出力と異なることとのうちの一方又は両方を満たしている、候補モデル決定部と、
前記複数の候補モデルに前記目的環境に関連する前記参照入力の教師データをそれぞれ入力して得られる前記参照出力のデータと、前記参照入力の教師データに対応する前記参照出力の教師データとに基づいて、前記複数の候補環境のなかから基準環境を決定するように構成されている基準環境決定部と、
前記基準環境に適したモデルであって前記目的入力が入力されると前記目的出力を出力するように構成されているモデルを基準モデルに決定するように構成されている基準モデル決定部と、
前記基準モデルに基づいて前記目的モデルを作成するように構成されている目的モデル作成部と、
を備える、モデル作成装置。
[構成2]
前記参照入力は前記目的入力と異なりかつ前記参照出力は前記目的出力と異なる、構成1に記載のモデル作成装置。
[構成3]
前記基準環境決定部は、前記複数の候補モデルに前記参照入力の教師データをそれぞれ入力して得られる前記参照出力のデータと、前記参照出力の教師データとの間の相関が最も高い候補モデルを決定するとともに、前記相関が最も高い候補モデルが適する前記候補環境を前記基準環境に決定するように構成されている、構成1又は2に記載のモデル作成装置。
[構成4]
前記目的モデル作成部は、前記基準モデルをそのまま前記目的モデルとするように構成されている、構成1から3までのいずれか1項に記載のモデル作成装置。
[構成5]
前記目的モデル作成部は、前記基準モデルをファインチューニングすることにより前記目的モデルを作成するように構成されている、構成1から3までのいずれか1項に記載のモデル作成装置。
[構成6]
前記目的モデル作成部は、前記基準モデルを転移学習することにより前記目的モデルを作成するように構成されている、構成1から3までのいずれか1項に記載のモデル作成装置。
[構成7]
前記目的環境及び前記候補環境が街である、構成1から6までのいずれか1項に記載のモデル作成装置。
[構成8]
目的環境に適した目的モデルであって目的入力が入力されると目的出力を出力するように構成されている目的モデルを作成するモデル作成方法であって、
前記目的環境と異なる複数の候補環境にそれぞれ適した複数の候補モデルであってそれぞれ参照入力が入力されると参照出力を出力するように構成されている複数の候補モデルを決定することであって、前記参照入力及び前記参照出力は、前記参照入力が前記目的入力と異なることと、前記参照出力が前記目的出力と異なることとのうちの一方又は両方を満たしている、複数の候補モデルを決定することと、
前記複数の候補モデルに前記目的環境に関連する前記参照入力の教師データをそれぞれ入力して得られる前記参照出力のデータと、前記参照入力の教師データに対応する前記参照出力の教師データとに基づいて、前記複数の候補環境のなかから基準環境を決定することと、
前記基準環境に適したモデルであって前記目的入力が入力されると前記目的出力を出力するように構成されているモデルを基準モデルに決定することと、
前記基準モデルに基づいて前記目的モデルを作成することと、
を含む、モデル作成方法。
[構成9]
目的環境に適した目的モデルであって目的入力が入力されると目的出力を出力するように構成されている目的モデルを作成するためのモデル作成システムであって、
前記目的環境と異なる複数の候補環境にそれぞれ適した複数の候補モデルであってそれぞれ参照入力が入力されると参照出力を出力するように構成されている複数の候補モデルを決定するように構成されている候補モデル決定部であって、前記参照入力及び前記参照出力は、前記参照入力が前記目的入力と異なることと、前記参照出力が前記目的出力と異なることとのうちの一方又は両方を満たしている、候補モデル決定部と、
前記目的環境に関連する前記参照入力の教師データと、前記参照入力の教師データに対応する前記参照出力の教師データとを取得するように構成されている教師データ取得部と、
前記複数の候補モデルに前記参照入力の教師データをそれぞれ入力して得られる前記参照出力のデータと、前記参照出力の教師データとに基づいて、前記複数の候補環境のなかから基準環境を決定するように構成されている基準環境決定部と、
前記基準環境に適したモデルであって前記目的入力が入力されると前記目的出力を出力するように構成されているモデルを基準モデルに決定するように構成されている基準モデル決定部と、
前記基準モデルに基づいて前記目的モデルを作成するように構成されている目的モデル作成部と、
を備える、モデル作成システム。
【発明の効果】
【0006】
より適切な結果を与えるモデルを、より簡単に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示による実施例のモデル作成システムの概略全体図である。
【
図2】本開示による実施例のユーザ装置の概略図である。
【
図3】本開示による実施例のサーバの概略図である。
【
図4】本開示による実施例のモデル作成方法を説明する模式図である。
【
図5】本開示による実施例の目的モデル作成ルーチンを示すフローチャートである。
【
図6】本開示による実施例のユーザ装置のプロセッサの機能ブロック図である。
【
図7】本開示による実施例のサーバのプロセッサの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本開示による実施例のモデル作成システム1を概略的に示している。
図1を参照すると、本開示による実施例のモデル作成システム1は、ユーザ装置10及びサーバ20を備える。本開示による実施例のユーザ装置10は、目的環境ETに関連付けて設けられる。
図1に示される例では、ユーザ装置10は目的環境ET内に設置される。一方、
図1に示される例では、サーバ20は目的環境ET外に設置される。本開示による実施例のユーザ装置10及びサーバ20は、インターネットのような通信ネットワークNを介して互いに通信可能に接続される。
【0009】
本開示による実施例のユーザ装置10は
図2に示されるように、1以上のプロセッサ11、1以上のメモリ12、記憶装置13、及び入出力インターフェース(IF)14を備え、これらは双方向性バスによって互いに通信可能に接続される。
【0010】
本開示による実施例のメモリ12は揮発性又は不揮発性のメモリを含む。メモリ12には種々のプログラムなどが記憶されており、これらプログラムはプロセッサ11で実行される。本開示による実施例の記憶装置13には、作成済みモデルなどが記憶される。
【0011】
本開示による実施例の入出力IF14には、通信装置15、入出力装置16、及び、1以上のセンサ17が通信可能に接続される。本開示による実施例の通信装置15は上述の通信ネットワークNに通信可能に接続される。本開示による実施例の入出力装置16には、例えば、キーボード、マウス、メディアリーダ/ライタ、ディスプレイ、などが含まれる。本開示による実施例のセンサ17は、目的環境ETに関連する1以上のデータを取得する。一例では、センサ17は目的環境ET内に設置される。センサ17は、例えば、目的環境ETの天候に関するデータ(気温、降水量、湿度、など)、交通量、消費電力量、などのうちの1以上を検出する。
【0012】
一方、本開示による実施例のサーバ20は
図3に示されるように、1以上のプロセッサ21、1以上のメモリ22、記憶装置23、入出力インターフェース(IF)24を備え、これらは双方向性バスによって互いに通信可能に接続される。
【0013】
本開示による実施例のメモリ22は揮発性又は不揮発性のメモリを含む。メモリ22には種々のプログラムなどが記憶されており、これらプログラムはプロセッサ21で実行される。本開示による実施例の記憶装置23には、作成済みモデルなどが記憶される。
【0014】
本開示による実施例の入出力IF24には、通信装置25、及び、入出力装置26が通信可能に接続される。本開示による実施例の通信装置25は上述の通信ネットワークNに通信可能に接続される。本開示による実施例の入出力装置26には、例えば、キーボード、マウス、メディアリーダ/ライタ、ディスプレイ、などが含まれる。
【0015】
さて、本開示による実施例のモデル作成システム1は、目的環境ETに適したモデルを作成する。本開示による実施例において、或る環境に適したモデルは、当該或る環境に関連する入力が入力されると、当該入力に対応する出力であって当該或る環境に関連する出力を出力するのに適している。言い換えると、或る環境に適したモデルは、当該或る環境に関連する入力と当該或る環境に関連する出力との関係を表すのに適している。
【0016】
本開示による実施例において、目的環境ETは、ビッグデータなどを利用するスマートシティ又はコネクティッドシティのような街である。一例では、目的環境ETは新規のスマートシティである。
【0017】
また、本開示による実施例のモデル作成システム1は、目的モデルMTを作成する。本開示による実施例の目的モデルMTは、目的入力ITが入力されると目的出力OTを出力するモデル、あるいは、入力が目的入力ITであり出力が目的出力OTであるモデルである。なお、本開示による実施例では、モデルは、例えば、AI又は人工知能、特に機械学習又は深層学習(ディープラーニング)により作成される。また、モデルは、例えば、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、などを用いる。一例では、スマートシティの特徴量の推定、車両の自動運転のための制御パラメータの算出、などを行うためにモデルが用いられる。なお、モデルの入力は1以上のパラメータを含む。同様に、モデルの出力は1以上のパラメータを含む。
【0018】
一例では、目的入力ITは目的環境ETにおける気温であり、目的出力OTは目的環境ETにおける消費電力量である。
【0019】
本開示による実施例では目的モデルMTが次のようにして作成される。すなわち、まず、目的入力IT及び目的出力OTがユーザによって入出力装置16を介しユーザ装置10に入力される。次いで、ユーザ装置10では、参照入力IR及び参照出力ORが設定される。本開示による実施例では、参照入力IR及び参照出力ORは、参照入力IRが目的入力ITと異なることと、参照出力ORが目的出力OTと異なることのうちの一方又は両方を満たしている。言い換えると、「IR≠ITかつOR≠OT」、又は「IR=ITかつOR≠OT」、又は「IR≠ITかつOR=OT」が満たされるように参照入力IR及び参照出力ORが設定される。更に言い換えると、「IR=ITかつOR=OT」が満たされないように参照入力IR及び参照出力ORが設定される。
【0020】
一例では、目的入力ITが目的環境ETにおける気温であり目的出力OTが目的環境ETにおける消費電力量の場合には、参照入力IRは目的環境ETにおける曜日であり、参照出力ORは目的環境ETにおける交通量である。
【0021】
本開示による実施例では次いで、目的環境ETに関連する教師データが取得される。この場合の教師データは、参照入力IRの教師データIRTと、参照入力IRの教師データに対応する参照出力ORの教師データORTと、を含む。一例では、教師データは目的環境ET内に設置されたセンサ17によって取得される。別の例では、目的環境ETに関連してあらかじめ取得された教師データが記憶装置13又は入出力装置16から取得される。教師データの取得が完了すると、すなわち例えば取得された教師データの数があらかじめ定められた値に達すると、目的モデルMTを作成すべき指示とともに、教師データがユーザ装置10からサーバ20に送信される。
【0022】
サーバ20が当該指示を受信すると、サーバ20では、サーバ20の記憶装置23内に記憶されているモデルのなかから、複数の候補モデルMCが決定される。候補モデルMCは、目的環境ETとは異なる複数の候補環境ECにそれぞれ適したモデルであって、参照入力IRが入力されると参照出力ORを出力するモデルである。一例では、候補環境ECは既存のスマートシティである。
【0023】
図4には、候補モデルMCの一例が示される。
図4に示される例の候補モデルMCには、候補環境ECXに適したモデルであって参照入力IRが入力されると参照出力ORを出力するモデルMECX(IR,OR)と、候補環境ECYに適したモデルであって参照入力IRが入力されると参照出力ORを出力するモデルMECY(IR,OR)と、候補環境ECZに適したモデルであって参照入力IRが入力されると参照出力ORを出力するモデルMECZ(IR,OR)と、が含まれる。ここで、候補環境ECX,ECY,ECZは目的環境ETと異なっている。
【0024】
次いで、候補モデルMCに参照入力IRの教師データがそれぞれ入力され、候補モデルMCからそれぞれ参照出力ORのデータが出力される。
【0025】
図4に示される例では、候補モデルMECX(IR,OR)に参照入力IRの教師データIRTが入力され、参照出力ORのデータORXが出力される。同様に、候補モデルMECY(IR,OR),MECZ(IR,OR)に参照入力IRの教師データIRTがそれぞれ入力され、参照出力ORのデータORY,ORZがそれぞれ出力される。
【0026】
次いで、候補モデルMCの参照出力ORのデータと、参照出力ORの教師データORTとに基づいて、複数の候補環境ECのなかから基準環境EBが決定される。本開示による実施例では、候補モデルECの参照出力ORのデータと、参照出力ORの教師データORTとの間の相関が算出される。一例では、この相関は相関係数CCによって表される。
【0027】
図4に示される例では、候補モデルMECX(IR,OR)の出力データORXと、参照出力ORの教師データORTとの間の相関係数CCXが算出される。同様に、候補モデルMECY(IR,OR),MECZ(IR,OR)の出力データORY,ORZと、参照出力ORの教師データORTとの間の相関係数CCY,CCZがそれぞれ算出される。
【0028】
次いで、候補モデルECの参照出力ORのデータと参照出力ORの教師データORTとの間の相関が最も高い候補モデルMCが決定される。更に、当該候補モデルMCが適する候補環境ECが基準環境EBに決定される。
【0029】
図4に示される例において、相関係数CCXが相関係数CCY,CCZよりも大きい場合には、相関が最も高い候補モデルMCとして候補モデルMECX(IR,OR)が決定される。この場合、候補環境ECXが基準環境EBに決定される。
【0030】
次いで、基準環境EBに適したモデルであって目的入力ITが入力されると目的出力OTを出力するモデルMEB(IT,OT)が基準モデルMBに決定される。本開示による実施例のサーバ20の記憶装置23内には基準環境EBに適した少なくとも1つのモデルが記憶されており、これらモデルの中から基準モデルMBが決定される。
【0031】
図4に示される例において、候補環境ECXが基準環境EBに決定された場合には、基準環境ECXに適したモデルであって目的入力ITが入力されると目的出力OTを出力するモデルMECX(IT,OT)が基準モデルMBに決定される。
【0032】
次いで、基準モデルMBに基づいて目的モデルMTが作成される。
【0033】
本開示による実施例を具体例により更に説明する。目的環境ETは新規のスマートシティであり、目的入力ITは曜日であり、目的出力OTは交通量である。この場合、目的モデルMTは、新規のスマートシティに適したモデルであって曜日が入力されると交通量を出力するモデルMN(曜日,交通量)である。一方、参照入力IRは気温であり、参照出力ORは消費電力量である。候補環境ECは既存のスマートシティX,Y,Zである。候補モデルは、既存のスマートシティXに適したモデルであって気温が入力されると消費電力量を出力するモデルMX(気温、消費電力量)、既存のスマートシティYに適したモデルであって気温が入力されると消費電力量を出力するモデルMY(気温、消費電力量)、既存のスマートシティZに適したモデルであって気温が入力されると消費電力量を出力するモデルMZ(気温、消費電力量)である。次いで、候補モデルMX(気温,消費電力量)に新規のスマートシティにおける気温が入力され、消費電力量のデータが出力される。同様に、候補モデルMY(気温,消費電力量),MZ(気温,消費電力量)に新規のスマートシティにおける気温がそれぞれ入力され、消費電力量のデータがそれぞれ出力される。次いで、候補モデルMX(気温,消費電力量),MY(気温,消費電力量),MZ(気温,消費電力量)からそれぞれ出力された消費電力量のデータと、新規のスマートシティにおける消費電力量と間の相関係数がそれぞれ算出される。相関係数が最も大きい候補モデルがMX(気温,消費電力量)である場合には、既存のスマートシティXが基準環境EBに決定される。次いで、既存のスマートシティXに適したモデルであって曜日が入力されると交通量を出力するモデルMX(曜日,交通量)が基準モデルMBに決定される。この基準モデルMX(曜日,交通量)に基づいて目的モデルMN(曜日,交通量)が作成される。
【0034】
目的モデルMTの第1作成例では、基準モデルMBがそのまま目的モデルMTとされる。
【0035】
目的モデルMTの第2作成例では、基準モデルMBをファインチューニングすることにより目的モデルMTが作成される。本開示による実施例のファインチューニングでは、基準モデルMBの層の数を変更することなく、教師データ(目的入力の教師データ及び目的出力の教師データ)を用いて、基準モデルMBの層の重みが再学習される。
【0036】
目的モデルMTの第3作成例では、基準モデルMBを転移学習することにより目的モデルMTが作成される。本開示による実施例の転移学習では、基準モデルMBの層の重みを変更することなく、基準モデルMBに少なくとも1つの層を追加するとともに、教師データ(目的入力の教師データ及び目的出力の教師データ)を用いて、追加された層の重みが学習される。
【0037】
本開示による実施例では、目的モデルMTが作成されると、次いで目的モデルMTがサーバ20から送信され、ユーザ装置10で受信される。目的モデルMTはユーザ装置10の例えば記憶装置13に記憶される。
【0038】
本開示による実施例では、次いで、ユーザ装置10において目的モデルMTが使用される。すなわち、目的入力ITのデータが目的モデルMTに入力され、目的モデルMTから目的出力OTのデータが出力される。
【0039】
このように本開示による実施例では、作成済みのモデルを利用して新たなモデル(目的モデルMT)が作成されるので、新たなモデルがより簡単に作成される。しかも、基準環境EBは目的環境ETと相関が高いと考えられるので、基準環境EBに適した基準モデルMBに基づいて作成される目的モデルMTは、目的環境ETについて、より適切な結果を与えることができる。
【0040】
図5は本開示による実施例における目的モデルMTの作成ルーチンを示している。
図5を参照すると、ステップ100では、ユーザ装置10において、目標入力IT及び目標出力OTが取得される。続くステップ101では、ユーザ装置10において、参照入力IR及び参照出力ORが設定される。続くステップ102では、ユーザ装置10において、教師データが取得される。続くステップ103では、ユーザ装置10において、教師データの取得が完了したか否かが判別される。教師データの取得が完了していないと判別されたときにはステップ102に戻る。教師データの取得が完了したと判別されたときにはステップ104に進み、ユーザ装置10において、教師データと、目的モデルMTを作成すべき指示とがサーバ20に送信される。
【0041】
続くステップ200では、サーバ20において、教師データ及び作成指示が受信される。続くステップ201では、サーバ20において、候補モデルMCが決定される。続くステップ202では、サーバ20において、候補モデルMCから出力された参照出力ORのデータが取得される。続くステップ203では、サーバ20において、相関係数CCが算出される。続くステップ204では、サーバ20において、基準環境EBが決定される。続くステップ205では、サーバ20において、基準モデルMBが決定される。続くステップ206では、サーバ20において、目的モデルMTが作成される。続くステップ207では、サーバ20において、目的モデルMTが送信される。
【0042】
続くステップ300では、ユーザ装置10において、目的モデルMTが受信される。続くステップ301では、ユーザ装置10において、目的モデルMTが使用される。
【0043】
図6は、目的モデルMTの作成に関する、本開示による実施例のユーザ装置10のプロセッサ11の機能ブロック図である。
図6を参照すると、プロセッサ11は教師データ取得部11aを含む。教師データ取得部11aは、目的環境に関連する参照入力の教師データと、参照入力の教師データに対応する参照出力の教師データとを取得するように構成されている。
【0044】
図7は、目的モデルMTの作成に関する、本開示による実施例のサーバ20のプロセッサ11の機能ブロック図である。
図7を参照すると、プロセッサ21は、候補モデル決定部21aと、基準環境決定部21bと、基準モデル決定部21cと、目的モデル作成部21dと、を含む。候補モデル決定部21aは、目的環境と異なる複数の候補環境にそれぞれ適した複数の候補モデルであってそれぞれ参照入力が入力されると参照出力を出力するように構成されている複数の候補モデルを決定するように構成されている。ここで、参照入力及び参照出力は、参照入力が目的入力と異なることと、参照出力が目的出力と異なることとのうちの一方又は両方を満たしている。基準環境決定部21bは、複数の候補モデルに参照入力の教師データをそれぞれ入力して得られる参照出力のデータと、参照出力の教師データとに基づいて、複数の候補環境のなかから基準環境を決定するように構成されている。基準モデル決定部21cは、基準環境に適したモデルであって目的入力が入力されると目的出力を出力するように構成されているモデルを基準モデルに決定するように構成されている。目的モデル作成部21dは、基準モデルに基づいて目的モデルを作成するように構成されている。なお、本開示による実施例のサーバ20はモデル作成装置として機能する。
【符号の説明】
【0045】
1 モデル作成システム
10 ユーザ装置
20 サーバ(モデル作成装置)
21 プロセッサ
21a 候補モデル決定部
21b 基準環境決定部
21c 基準モデル決定部
21d 目的モデル作成部