(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】菌又はウイルスの不活化装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20240709BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L2/10
(21)【出願番号】P 2021183292
(22)【出願日】2021-11-10
(62)【分割の表示】P 2020195386の分割
【原出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 善彦
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/203754(WO,A1)
【文献】特開2017-033795(JP,A)
【文献】特開2019-062989(JP,A)
【文献】特開2019-030635(JP,A)
【文献】国際公開第2019/186880(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0193504(US,A1)
【文献】特表2019-536492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
190nm~235nmの範囲内に属する特定波長域に光出力を示す紫外線を出射する光源と、
前記光源の点灯制御を行う制御部と、
前記紫外線の照射領域の一部であるか又は前記照射領域に隣接する領域である検知対象領域内に人間が存在するか否かを検知する検知部とを備え、
前記制御部は、前記検知部の検知結果にかかわらず前記光源を点灯する制御を行うと共に、前記検知部が人間の不存在を検知すると、前記光源に対して、単位時間内における前記紫外線の積算照射量を増加させる制御を行うことを特徴とする、菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記光源に対して、相対的に高い発光強度で点灯する第一制御と、前記第一制御の実行時よりも相対的に低い発光強度で点灯するか又は消灯する第二制御とを繰り返す、特定動作モードの実行が可能な構成であり、
前記制御部は、前記検知部が人間の不存在を検知すると前記特定動作モードを実行することを特徴とする、請求項1に記載の、菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検知部が人間の存在を検知する時間帯において、前記検知部が人間の不存在を検知する時間帯よりも、前記光源の光出力を低下させる制御を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の、菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記検知部が人間の存在を検知する時間帯において、前記光源を連続的に点灯させる制御を行うことを特徴とする、請求項3に記載の、菌又はウイルスの不活化装置。
【請求項5】
190nm~235nmの範囲内に属する特定波長域に光出力を示す紫外線を出射する光源と、
前記光源の点灯制御を行う制御部と、
前記紫外線の照射領域の一部であるか又は前記照射領域に隣接する領域である検知対象領域内に動物が存在するか否かを検知する検知部とを備え、
前記制御部は、前記検知部の検知結果にかかわらず前記光源を点灯する制御を行うと共に、前記検知部が動物の不存在を検知すると、前記光源に対して、単位時間内における前記紫外線の積算照射量を増加させる制御を行うことを特徴とする、菌又はウイルスの不活化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌又はウイルスの不活化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間中又は物体表面に存在する菌(細菌や真菌等)やウイルスは、人や人以外の動物に対して感染症を引き起こすことがあり、感染症の拡大によって生活が脅かされることが懸念される。特に、医療施設、学校、役所等、頻繁に人が集まる施設や、自動車、電車、バス、飛行機、船等の乗物においては、感染症が蔓延しやすいことから、菌やウイルスを不活化させる有効な手段が必要とされている。
【0003】
従来、菌やウイルス(以下、「菌等」と総称することがある。)の不活化を行う方法として、紫外線を照射する方法が知られている。DNAは波長260nm付近に最も高い吸収特性を示す。そして、低圧水銀ランプは、波長254nm付近に高い発光スペクトルを示す。このため、低圧水銀ランプを用いて殺菌を行う技術が広く利用されている。
【0004】
しかし、このような波長帯の紫外線を人体に照射すると、人体に影響を及ぼすリスクがあることが知られている。皮膚は、表面に近い部分から表皮、真皮、その深部の皮下組織の3つの部分に分けられ、表皮は、更に表面に近い部分から順に、角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層に分けられる。波長254nmの紫外線が人体に照射されると、角質層を透過して、顆粒層や有棘層、場合によっては基底層に達し、これらの層内に存在する細胞のDNAに吸収される。この結果、皮膚がんのリスクが発生する。よって、このような波長帯の紫外線は、人が存在し得る場所で積極的に利用することは難しい。
【0005】
下記特許文献1には、波長240nm以上の紫外線(UVC光)は人体に対して有害であること、及び、波長240nm未満の紫外線は波長240nm以上の紫外線と比べて人体への影響度が抑制されることが記載されている。また、具体的に、波長207nm及び222nmの照射実験の結果が記載されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、除染対象空間としてのトイレ内に人が存在しないことを検知した後に、紫外線(UVC光)を照射させる内容が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6025756号公報
【文献】特表2017-528258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、人体への影響を考慮しつつ、人間が存在し得る空間内の不活化を効率的に行うことのできる、菌又はウイルスの不活化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る菌又はウイルスの不活化装置は、
190nm~235nmの範囲内に属する特定波長域に光出力を示す紫外線を出射する光源と、
前記光源の点灯制御を行う制御部と、
前記紫外線の照射領域の一部であるか又は前記照射領域に隣接する領域である検知対象領域内に人間が存在するか否かを検知する検知部とを備え、
前記制御部は、前記検知部の検知結果にかかわらず前記光源を点灯する制御を行うと共に、前記検知部が人間の不存在を検知すると、前記光源に対して、単位時間内における前記紫外線の積算照射量を増加させる制御を行うことを特徴とする。
【0010】
本明細書において、「不活化」とは、菌やウイルスを死滅させる又は感染力や毒性を失わせることを包括する概念を指し、「菌」とは、細菌や真菌(カビ)等の微生物を指す。以下において、「菌又はウイルス」を「菌等」と総称することがある。
【0011】
本願出願日の時点では、人体に対して1日(8時間)あたりの紫外線照射量に関して、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:米国産業衛生専門家会議)やJIS Z 8812(有害紫外放射の測定方法)等によって、波長ごとの許容限界値(TLV:Threshold Limit Value)が定められている。つまり、人間が存在する環境下で紫外線が利用される場合には、所定の時間内に照射される紫外線の積算照射量がTLVの基準値以内となるように、紫外線の照度や照射時間を決定することが推奨されている。
【0012】
一方で、紫外線が照射される領域(照射領域)内に人間が存在しない時間帯であれば、紫外線の照度を高めたり照射時間を長くしても、TLVの基準値を考慮する必要がない。そして、ある基準となる時間内において、紫外線の積算照射量を高めるほど、その空間内の不活化効果が高められる。
【0013】
上述した特許文献1の記載によれば、240nmよりも短い波長帯域の紫外線で、人体への影響度を抑制させている。本発明に係る不活化装置は、190~235nmの範囲内に属する特定波長域に光出力を示す紫外線を用いることで、人体への影響が抑制しつつ、菌又はウイルスの不活化を行うものである。
【0014】
なお、特許文献2には、UVC光としか記載されておらず、その波長の詳細は不明である。ただし、上述したように、従来、菌等の不活化に最も一般的に利用されている波長帯は254nm近傍の波長であること、UVC光としか記載せずに波長について特段の記載をしていないこと、及び、人の不存在を確認した後に紫外線の照射を行う制御が行われていること等に鑑みると、特許文献1で用いられている紫外線の波長は254nm近傍であると考えるのが自然である。
【0015】
なお、前記不活化装置が備える前記光源は、200~230nmの波長帯域の紫外線を出射する構成とするのが、人体への安全性をより担保しつつ不活化効果を実現する観点からは、より好ましい。この波長域の紫外線によれば、比較的長時間にわたって照射されても、人体への影響がほとんどないと考えられている。
【0016】
本発明に係る不活化装置は、190~235nmの波長域に光出力を示す紫外線を出射するため、240nm以上の波長域に光出力を示す紫外線と比べて、人体に対して許容可能な紫外線量が大幅に高くなる。この結果、TLVを超えない範囲で照射線量を制御することで、人体に対する影響を抑制しつつ、不活化効果を高めることができる。
【0017】
更に、上記構成によれば、人間が存在しない時間帯においては、紫外線の積算照射量が増加するように制御されるため、人体に対する影響を抑制しながらも、菌等の不活化効果を高めることが可能となる。
【0018】
なお、本明細書における「単位時間内における紫外線の積算照射量」とは、以下の時間を意味する。光源が、制御部によって周期的な点灯制御がされている場合において、人間の存在する時間帯と存在しない時間帯においてその点灯周期が異なるように調整されている場合には、それぞれの点灯周期(1周期)内における積算照射量を、点灯周期で除した値を指す。「発明を実施するための形態」で後述される
図8を例に挙げると、人間が存在する時間帯においては、時間Tn1と時間Tf1の合計によって1周期(ここでは便宜的に周期τaと呼ぶ。)とされる一方、人間が存在しない時間帯においては、時間Tn1と時間Tf2の合計によって1周期とされる(ここでは便宜的に周期τbと呼ぶ。)。この場合、人間が存在する時間帯においては、周期τaの時間にわたる積算照射量をこの周期τaで除した値をもって、単位時間あたりの積算照射量とする。一方、人間が存在しない時間帯においては、周期τbの時間にわたる積算照射量をこの周期τbで除した値をもって、単位時間あたりの積算照射量とする。すなわち、「単位時間あたりの紫外線の積算照射量」は、それぞれの点灯周期における積算照射量の平均値に対応する。
【0019】
光源が、人間が存在する時間帯に限って制御部によって周期的な点灯制御がされる場合、より詳細には、「発明を実施するための形態」で後述される
図15のような態様の場合には、この1周期に対応した時間内における紫外線の積算照射量を、前記周期に対応した時間で除した値によって、「単位時間あたりの紫外線の積算照射量」が設定される。逆に、光源が、人間が存在しない時間帯に限って制御部によって周期的な点灯制御がされる場合、より詳細には、「発明を実施するための形態」で後述される
図16のような態様の場合においても、同様に、1周期に対応した時間内における紫外線の積算照射量を、前記周期に対応した時間で除した値によって、「単位時間あたりの紫外線の積算照射量」が設定される。
【0020】
光源が、制御部によって周期的に点灯制御がされていない場合であっても、周期的な点灯制御が可能な構成である場合には、前述したのと同様の方法で「単位時間」が設定されるものとしても構わない。
【0021】
更に、光源が、制御部によって周期的に点灯制御がされていない場合であって、且つ、周期的な点灯制御ができないような構成である場合、言い換えれば、点灯時には連続的な点灯制御のみが行われている場合には、任意に設定された時間(例えば5分間、10分間等)内における紫外線の積算照射量を、設定された前記の時間(上の例であれば5分間、10分間等)で除した値によって、「単位時間あたりの紫外線の積算照射量」が設定される。この場合、「単位時間あたりの紫外線の積算照射量」は、連続点灯動作中における積算照射量の平均値に対応する。
【0022】
前記制御部は、前記光源に対して、相対的に高い発光強度で点灯する第一制御と、前記第一制御の実行時よりも相対的に低い発光強度で点灯するか又は消灯する第二制御とを繰り返す特定動作モードの実行が可能な構成であり、
前記制御部は、前記特定動作モードの実行中に、前記検知部が人間の不存在を検知すると、単位時間内における前記紫外線の積算照射量を増加させた状態で前記特定動作モードを引き続き実行するものとしても構わない。
【0023】
紫外線を高い照度で連続的に照射させた場合、光源に対して電力を供給するための電源部の発熱が顕著となり、大型の冷却系統が必要になる。このため、装置規模を縮小化する観点からは、人間が不存在である場合においても、紫外線の照度を高い照度と低い照度で切り替える、又は紫外線の照射と非照射を切り替える動作モード(以下、「特定動作モード」という。)が実行できる構成であることが好ましい。
【0024】
ところで、菌等の中には、例えば波長254nmの紫外光が照射されることで不活化された後、300nm以上500nm以下の波長域の光が照射されると、DNAの損傷を修復させる作用を起こすものがある。これは、菌が保有する光回復酵素(例えば、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド))の働きによるものであり、この現象を以下では「菌の光回復」と呼ぶ。300nm以上500nm以下の波長範囲には、太陽光や白色照明の可視光も含まれており、明るい環境において菌の光回復が進むことが知られている。このような事情の存在により、照明環境下で紫外光を照射することで菌等の不活化を行った場合には、この不活化された状態を維持することが困難となりやすい。かかる観点から、例えば、従来の低圧水銀ランプを用いて菌等の不活化を行うに際しては、原則として、連続的に点灯することが求められる。
【0025】
しかしながら、本発明に係る不活化装置が備える光源は、190nm~235nmの範囲内に属する特定波長域に光出力を示す紫外線を発する構成である。このような紫外線によれば、不活化の対象領域に対して照射された後に、上記可視光が照射されても「菌の光回復」が行われにくく、言い換えれば「菌の光回復」の阻害効果を奏する。この理由としてはいくつか推考できるが、その一つとして、この波長帯の紫外線が光回復酵素に対して作用し、光回復機能が阻害されるためと考えられる。このため、不活化処理時において、紫外線の照度を一時的に低下させたり、紫外線の照射を断続的に行ったとしても、照度が低い時間帯又は照射されていない時間帯に菌の増殖が進みにくい。よって、装置規模を小型化しながらも、高い不活化効果を奏することができる。
【0026】
そして、上記構成によれば、このような、紫外線の照射が断続的に行われている期間内、又は高照度と低照度で切り替えられながら紫外線が照射されている期間内(すなわち、特定動作モードの実行中)において、人の不存在が検知されると、その積算照射量を増加させた状態で引き続きこの特定動作モードが実行される。これにより、人体への影響を考慮しつつも、小型で且つ不活化効果の高い装置が実現される。
【0027】
なお、光回復機能を阻害する効果をより高める観点からは、光源から出射される紫外線が光出力を示す波長域は、200nm~235nmの範囲内であるのがより好ましく、215nm~230nmの範囲内であるのが特に好ましい。
【0028】
前記特定動作モードは、第一所定時間にわたって前記第一制御を実行した後、第二所定時間にわたって前記第二制御を実行する動作を繰り返すモードであり、
前記制御部は、前記検知部が人間の不存在を検知すると、前記第一所定時間を増加させるか、前記第二所定時間を減少させるかの少なくとも一方を実行するものとしても構わない。
【0029】
上記構成によれば、人間の不存在が検知されると、単位時間内における紫外線の積算照射量を増加させた状態で、紫外線の照射を断続的に行うことができる。
【0030】
前記制御部は、前記検知部が人間の不存在を検知すると、前記前記第一制御の実行時における前記光源の光出力を増加させる制御を行うものとしても構わない。ここでいう「光出力」としては、より具体的には輝度を採用することができる。
【0031】
この構成においても、人間の不存在が検知されると、単位時間内における紫外線の積算照射量を増加させることができる。
【0032】
前記紫外線は、200nm~230nmの範囲内にピーク波長を有するものとしても構わない。
【0033】
より詳細には、前記光源が、Kr及びClを含む発光ガスが封入されたエキシマランプや、Kr及びBrを含む発光ガスが封入されたエキシマランプで構成することができる。前者の場合は、紫外線のピーク波長が222nm近傍を示し、後者の場合は、紫外線のピーク波長が207nm近傍を示す。また、別の例として、前記光源は、LEDやLDといった固体光源で構成されても構わない。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、人体への影響を考慮しつつ、人間が存在し得る空間内の不活化を効率的に行うことのできる、菌又はウイルスの不活化装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明に係る菌又はウイルスの不活化装置が利用される場面の一例を模式的に示す図面である。
【
図2】不活化装置の構成を模式的に示す図面である。
【
図3】不活化装置の構成を説明するための機能ブロック図である。
【
図4】光源の外観の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】光源のランプハウスを分解した模式的な斜視図である。
【
図6】エキシマランプと電極との位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図7】光源から出射される紫外線のスペクトルの一例を示す図面である。
【
図8】制御部による光源に対する制御内容の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
【
図9】制御部による光源に対する制御内容の別の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
【
図10】制御部による光源に対する制御内容の更に別の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
【
図11A】波長254nmの紫外線を黄色ブドウ球菌に対して連続的に照射した場合と間欠的に照射した場合の、菌に対する不活化効果を対比したグラフである。
【
図11B】波長222nmの紫外線を黄色ブドウ球菌に対して連続的に照射した場合と間欠的に照射した場合の、菌に対する不活化効果を対比したグラフである。
【
図12】本発明に係る菌又はウイルスの不活化装置が利用される場面の別の一例を模式的に示す図面である。
【
図13】本発明に係る菌又はウイルスの不活化装置が利用される場面の更に別の一例を模式的に示す図面である。
【
図14】本発明に係る菌又はウイルスの不活化装置が利用される場面の更に別の一例を模式的に示す図面である。
【
図15】制御部による光源に対する制御内容の更に別の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
【
図16】制御部による光源に対する制御内容の更に別の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に係る菌又はウイルスの不活化装置の実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。なお、以下では、「菌又はウイルスの不活化装置」を単に「不活化装置」と略記することがある。
【0037】
図1は、本発明に係る菌又はウイルスの不活化装置が利用される場面の一例を模式的に示す図面である。
図1に示す例では、会議室などの部屋50に、不活化装置1が設置されている状況が図示されている。この不活化装置1は、部屋50内に設置された机51、椅子52、壁紙53、及び部屋50の空間内に対して、菌等の不活化を行う目的で設置されている。
【0038】
不活化装置1は、後述する紫外線L1を発する構成であり、この紫外線L1が照射されることで、不活化の対象となる物品や空間に対して不活化処理が行われる。
【0039】
図2は、不活化装置1の構成を模式的に示す図面である。
図3は、不活化装置1の構成を説明するための機能ブロック図である。
【0040】
不活化装置1は、紫外線L1を出射する光源2と、検知対象領域40内に人間が存在しないかどうかを検知するための検知部20と、光源2の点灯制御を行う制御部9を備える。ここでいう、検知対象領域40とは、検知部20において人間が存在しているか否かの検知が行われる領域であって、且つ、少なくとも一部分に対して紫外線L1が照射され得る領域である。ただし、この検知対象領域40は、紫外線L1が照射される領域に対して完全に一致していなくても構わない。言い換えれば、検知対象領域40は、紫外線L1の照射領域の一部であるか、又は前記照射領域に隣接する領域である。
【0041】
本実施形態では、検知部20は、赤外線L2を用いた人感センサで構成される。制御部9は、検知部20において、検知対象領域40内に人間が存在していないことが検知されると、光源2に対する点灯制御内容を変更する。この制御内容については後述される。
【0042】
図4は、光源2の外観の一例を模式的に示す斜視図である。
図5は、
図4から、光源2のランプハウス12の本体ケーシング部12aと蓋部12bとを分解した斜視図である。
【0043】
以下の
図4~
図6では、紫外線L1の取り出し方向をX方向とし、X方向に直交する平面をYZ平面とした、X-Y-Z座標系を参照して説明される。より詳細には、
図5及び
図6を参照して後述されるように、ランプハウス12内に配置されたエキシマランプ3の管軸方向をY方向とし、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0044】
図4及び
図5に示すように、光源2は、一方の面に光取り出し面10が形成されたランプハウス12を備える。ランプハウス12は、本体ケーシング部12aと蓋部12bとを備え、本体ケーシング部12a内には、エキシマランプ3と、電極(5,6)とが収容されている。
図5では、一例として、ランプハウス12内に4本のエキシマランプ3が収容されている場合が図示されている。電極(5,6)は、給電線18と電気的に接続されており、各エキシマランプ3に対して給電するための電極を構成する。
図6は、エキシマランプ3と、電極(5,6)との位置関係を模式的に示す平面図である。
【0045】
図4~
図6に示すように、この実施形態における光源2は、それぞれのエキシマランプ3の発光管の外表面に接触するように、2つの電極(5,6)が配置されている。電極(5,6)は、Y方向に離間した位置に配置されている。電極(5,6)は、導電性の材料からなり、好ましくは、エキシマランプ3から出射される紫外線L1に対する反射性を示す材料からなる。一例として、電極(5,6)は、共に、Al、Al合金、ステンレスなどで構成される。電極(5,6)は、いずれも各エキシマランプ3の発光管の外表面に接触しつつ、Z方向に関して各エキシマランプ3に跨るように配置されている。
【0046】
エキシマランプ3はY方向を管軸方向とした発光管を有し、Y方向に離間した位置において、エキシマランプ3の発光管の外表面が各電極(5,6)に対して接触している。エキシマランプ3の発光管には、発光ガス3Gが封入されている。制御部9(
図3参照)からの制御に基づいて、各電極(5,6)の間に給電線18(
図4参照)を通じて例えば数kHz~5MHz程度の高周波の交流電圧が印加されると、エキシマランプ3の発光管を介して発光ガス3Gに対して前記電圧が印加される。このとき、発光ガス3Gが封入されている放電空間内で放電プラズマが生じ、発光ガス3Gの原子が励起されてエキシマ状態となり、この原子が基底状態に移行する際にエキシマ発光を生じる。
【0047】
発光ガス3Gは、エキシマ発光時に、190nm~235nmの範囲内に属する特定波長域に光出力を示す紫外線L1を出射する材料からなる。一例として、発光ガス3Gとしては、KrCl、KrBr、ArFが含まれる。
【0048】
例えば、発光ガス3GにKrClが含まれる場合には、エキシマランプ3から主ピーク波長が222nm近傍の紫外線L1が出射される。発光ガス3GにKrBrが含まれる場合には、エキシマランプ3からは、主たるピーク波長が207nm近傍の紫外線L1が出射される。発光ガス3GにArFが含まれる場合には、エキシマランプ3からは、主たるピーク波長が193nm近傍の紫外線L1が出射される。なお、エキシマランプ3の発光管の管壁に蛍光体が塗布されることで、エキシマ光の波長に対して長波長の紫外線L1を発する構成としてもよい。
図7は、発光ガス3GにKrClが含まれるエキシマランプ3から出射される紫外線L1のスペクトルの一例を示す図面である。
【0049】
図8は、制御部9による光源2に対する制御内容の一例を模式的に示すタイミングチャートである。より詳細には、
図8では、制御部9による制御結果に応じて、光源2から出射される紫外線L1の光出力の変化が模式的に示されている。なお、この図示の方法は、後述する
図9、
図10及び
図15においても共通である。
【0050】
本実施形態では、制御部9は、光源2に対して通電を行う時間(ON時間)と、通電を行わない時間(OFF時間)とが交互に生じるように、光源2を制御する。言い換えれば、制御部9は、光源2に対して、点灯動作と消灯動作とを繰り返す動作モード(「特定動作モード」に対応する。)の実行が可能な構成である。この場合には、点灯動作が「第一制御」に対応し、消灯動作が「第二制御」に対応する。この用語を用いて説明すると、特定動作モードとは、ある時間にわたって第一制御が実行された後、ある時間にわたって第二制御が実行されるという動作が繰り返されるモードである。
【0051】
一例として、時間Tn1(「第一所定時間」に対応する。)にわたって、光源2に対して通電を行うことで、この時間にわたって光源2から紫外線L1が照射される。その後、時間Tf1(「第二所定時間」に対応する。)にわたって光源2に対する通電が停止され、紫外線L1の照射が停止される。一例として、時間Tn1は15秒であり、時間Tf1は250秒である。これらの時間は、制御部9において適宜変更が可能である。
【0052】
なお、
図8では、光源2からの光出力の変化、すなわち紫外線L1の照射/非照射が、極めて直線的に図示されているが、これは説明の都合上あくまで模式的に描かれたものである。時間軸を細かく分析すると、光出力が滑らかに減少/上昇しているものとしても構わない。制御部9からの制御信号が変化したことに対する、光源2からの光出力が変動する速度(応答性)は、光源2の構成に依存する。
図8は、制御部9からの制御信号に基づいて、光源2がON/OFF制御されることが模式的に示されているに過ぎず、光源2が極めて高い応答性を有していることを示唆するものではない。言い換えれば、本発明において、制御部9からの制御信号に基づく光源2からの光出力の変動速度は限定されない。この点は、後述する
図9、
図10及び
図15においても共通である。
【0053】
ここで、時刻Taにおいて、検知部20が検知対象領域40内に人間の不存在を検知したとする。制御部9は、検知部20から、人間の不存在を検知した旨の信号を受信すると、所定の単位時間にわたる紫外線L1の積算照射量を上昇させるよう、光源2に対する制御内容を変更する。
【0054】
具体的な一例として、制御部9は、時刻Ta以後における光源2のOFF時間を低下させる制御を行う(
図8参照)。すなわち、時刻Taよりも以前では、OFF時間がTf1に設定されていたが、時刻Taより後では、OFF時間がTf1よりも短いTf2に設定される。この結果、光源2がひとたび点灯してから、次に点灯するまでに要する時間に対する、光源2の連続点灯時間の割合(ONデューティ比)が増加する。
【0055】
検知対象領域40内に人間が存在しないことが検知されたことで、単位時間あたりの紫外線L1の積算照射量を増加させても、人間に対して照射される紫外線L1の積算照射量が増加するおそれはない。このため、ACGIHやJIS Z 8812などで定められている基準値を超過させることなく、部屋50(
図1参照)内の菌等の不活化効果を高めることができる。
【0056】
なお、
図8には図示されていないが、その後、ある時刻Tbにおいて検知部20が人間の存在を検知した場合には、再び、光源2のOFF時間がTf1に設定される。これにより、人間に対する紫外線L1の積算照射量を基準値以内に抑制しながらも、菌等の不活化効果を奏することができる。
【0057】
特に、光源2は、190nm~235nmの範囲内に属する特定波長域に光出力を示す紫外線L1を発する構成であり、この波長帯の紫外線L1の場合、一般的に殺菌等で広く用いられている低圧水銀ランプなどの波長254nmの紫外線と比較して、連続的に紫外線を照射しなくても高い不活化効果が実現できる。この点は、後述される。
【0058】
図9は、制御部9において行われる別の制御内容の一例を示すタイミングチャートである。
図9に示すように、時刻Taにおいて検知対象領域40内に人間が存在しないことが検知されると、光源2(エキシマランプ3)の光出力を高める制御が行われるものとしても構わない。この結果、光源2の輝度が上昇し、時刻Ta以前と比べて、単位時間あたりの紫外線L1の積算照射量を上昇させることができる。光源2の光出力を高める方法としては、例えば、光源2に対して印加されるパルス電圧の波高値を上昇させる方法や、前記パルス電圧の周波数を上昇させる方法を採用することができる。
【0059】
図10は、制御部9において行われる更に別の制御内容の一例を示すタイミングチャートである。
図10に示すように、時刻Taにおいて検知対象領域40内に人間が存在しないことが検知されると、光源2のON時間を上昇させる制御を行うものとしても構わない。すなわち、時刻Taよりも以前では、ON時間がTn1に設定されていたが、時刻Taより後では、ON時間がTn1よりも長いTn3に設定される。この結果、光源2がひとたび点灯してから、次に点灯するまでに要する時間に対する、光源2の連続点灯時間の割合(ONデューティ比)が増加する。
【0060】
なお、
図10の例では、OFF時間についても、Tf1よりも短いTf3に設定されている。ただし、OFF時間はTf1のままで制御されても構わない。
【0061】
図8~
図10に示した制御内容は、適宜組み合わせられても構わない。
【0062】
図11A及び
図11Bは、紫外線を連続的に照射した場合と間欠的に照射した場合とで、照射される紫外線の波長によって菌等に対する不活化効果に差が生じることを説明するためのグラフである。いずれのグラフも、以下の実験の結果である。
【0063】
φ35mmのシャーレに、濃度106CFU/mL程度の黄色ブドウ球菌を1mL入れ、シャーレの上方から、低圧水銀ランプからの紫外線(比較例)と、KrClエキシマランプからの紫外線(実施例)とを照射した。なお、CFUはコロニー形成単位(Colony forming unit)を意味する。その後、照射後のシャーレ内の溶液を、生理食塩水で所定の倍率に希釈し、希釈後の溶液0.1mLを標準寒天培地に播種した。そして、温度37℃、湿度70%の培養環境下で48時間培養し、コロニー数をカウントした。
【0064】
なお、比較例と実施例の双方において、紫外線を連続的に照射した場合と、紫外線を間欠的に照射した場合の双方の実験が行われた。なお、間欠的な紫外線照射は、50秒間照射した後、59分10秒間照射しないという制御が繰り返されることで行われた。また、この実験は、暗幕等が設置されていない、通常の室内で行われた。
【0065】
図11A及び
図11Bは、上記実験結果をグラフ化したものであり、横軸が紫外線の照射量、縦軸が黄色ブドウ球菌の生存率に対応する。なお、縦軸は、紫外線の照射前の時点における黄色ブドウ球菌のコロニー数を基準としたときの、照射後の黄色ブドウ球菌のコロニー数の比率のLog値に対応する。
【0066】
図11Aによれば、波長254nmの紫外線によれば、連続的に照射した場合と比べて、間欠的に照射すると、黄色ブドウ球菌の生存率が明らかに高くなっていることが分かる。これに対し、波長222nmの紫外線によれば、間欠的な照射であっても、黄色ブドウ球菌の生存率は、連続的な照射とほぼ同等の結果を示すことが分かる。特に、今回の実験では、50秒間照射した後、59分10秒間照射しないという照射モードであり、60分間という単位時間内における照射時間はたったの1.3%の時間であるにもかかわらず、ほぼ連続的な紫外線の照射と同等の不活化効果が得られたことが分かる。
【0067】
これは、波長254nmの紫外線が照射されて菌が不活化された後、紫外線が照射されていない時間内に、照明光や自然光が照射されたことで、菌が保有する光回復酵素によってDNAの損傷が修復されたことによるものと推察される。一方で、波長222nmの紫外線によれば、この光回復酵素に対しても作用したことで、紫外線が照射されていない時間内であっても光回復機能が阻害されたままの状態が実現されたものと推察される。このような機能は、190nm~235nmの範囲内に属する特定波長域に光出力を示す紫外線L1であれば実現され、特に200nm~235nmの波長であればその作用は高く、更に、215nm~230nmの波長であればその作用は顕著に現れる。
【0068】
つまり、本実施形態の不活化装置1によれば、検知部20において検知対象領域40内に人間が存在していることが検知されている時間帯においては、光源2のONデューティを低くするか、光出力(輝度)を低くすることで、単位時間あたりの積算照射量が低下される。これにより、人間に対する紫外線の積算照射量が基準値を超えることのないように設定される。なお、この時間帯においても、紫外線L1が間欠的に照射されるため、菌等の不活化の作用が確保される。一方で、検知部20において検知対象領域40内に人間が存在していないことが検知されている時間内においては、光源2のONデューティを高めるか、光出力(輝度)を高くすることで、単位時間あたりの積算照射量が上昇される。これにより、人間に対する紫外線の積算照射量が基準値を超えることなく、菌等の不活化効果が更に高められる。
【0069】
図12~
図14は、不活化装置1が利用される場面の別の一例を模式的に示す図面である。
【0070】
図12には、建物や乗り物内の通路60に対して不活化装置1が設置されている状況が示されている。不活化装置1aは、検知部20において人間61の存在を検知しなかったので、ONデューティが高められており、領域62内に紫外線L1が照射されている。一方、不活化装置1bは、検知部20において人間61の存在を検知したので、ONデューティが低下されており、
図12によって図示されている時間帯においては領域63に対して紫外線L1が照射されていない。
【0071】
図13には、部屋70に対して不活化装置1が設置されている状況が示されている。不活化装置1cは、例えば部屋70の空間内や床面に対して菌等の不活化を行う目的で設置されている。また、不活化装置1dは、部屋70の空調や照明を制御するためのリモコンなどの操作部71に対して菌等の不活化を行う目的で設置されている。この
図13に示す例においても、不活化装置1(1c,1d)において、人間(図示していない)の不存在を検知すると、単位時間あたりの紫外線L1の積算照射量が高められることで、人間に対する紫外線の積算照射量が基準値を超えることなく、部屋70の床面や空間、操作部71に対して菌等の不活化効果が高められる。
【0072】
図14には、自動販売機80に対して不活化装置1が設置されている状況が示されている。不活化装置1eは、例えば自動販売機80の操作部81や、釣り銭の取り出し口82や、商品の取り出し口83に対して、菌等の不活化を行う目的で設置されている。この
図14に示す例においても、不活化装置1(1e)において、人間(図示していない)の不存在を検知すると、単位時間あたりの紫外線L1の積算照射量が高められることで、人間に対する紫外線の積算照射量が基準値を超えることなく、操作部81、取り出し口(82,83)に対して菌等の不活化効果が高められる。
【0073】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0074】
〈1〉上記実施形態では、不活化装置1が、人間の存在/不存在を検知するための検知部20としての人感センサを内蔵する場合について説明した。しかし、不活化装置1が設置される場所に、予め別途の人感センサなどの検知手段が設けられている場合には、不活化装置1は、この検知手段からの信号を受信する受信部によって、検知部20を構成するものとして構わない。
【0075】
また、検知部20は人間の存在/不存在を直接的又は間接的に判定できるものであれば良い。例えば、検知部20は、接触センサや重量センサ、ドアセンサ等を単独で、又は、併用して人間の存在/不存在を判定するものであってもよく、不活化対象となる空間中に設けられた照明器具の点灯有無や室内の鍵の開閉状況等に基づき、判定を行うものであっても構わない。
【0076】
〈2〉
図15に示すように、検知部20が時刻Taにおいて人間の不存在を検知すると、制御部9は光源2を連続的に点灯するように制御しても構わない。ただし、光源2を連続的に点灯した場合には、光源2に対して電力を供給するために設けられている電源回路(インバータ等)が発熱するおそれがある。また、検知部20が仮に故障した場合においては、人間が存在しているにも関わらず、光源2から紫外線L1が照射され続ける事態が生じるリスクもある。かかる観点から、人間が存在していない場合であっても、紫外線L1が間欠的に照射されるように、制御部9において予め設定されるのが好ましい。
【0077】
ただし、本発明は、制御部9において、検知対象領域40内に人間が存在しない時間帯に、連続的に照射するモードと間欠的に照射するモードとを適宜変更できるような構成とすることを除外するものではない。
【0078】
〈3〉
図16に示すように、制御部9は、検知対象領域40内に人間が存在する時間帯においては、低い出力で光源2を連続的に点灯させる制御を行う一方、検知対象領域40内に人間が存在しないことを検知する(時刻Ta)と、光源2の出力を高めた上で周期的に点灯させる制御を行うものとしても構わない。
【0079】
この場合においても、上述した実施形態と同様に、検知対象領域40内に人間が存在しないことが検知されたことで、単位時間あたりの紫外線L1の積算照射量が増加されることになり、人間に対して照射される紫外線L1の積算照射量が増加するおそれはない。このため、ACGIHやJIS Z 8812などで定められている基準値を超過させることなく、部屋50(
図1参照)内の菌等の不活化効果を高めることができる。
【0080】
一方で、部屋50が会議室等である場合には、部屋50に人間が連続的に滞在する時間はある程度予想が可能であり、例えば18時間以上といった長時間にわたって滞在することはおよそ想定されない。このため、ACGIHやJIS Z 8812などで定められている基準値を超過しない範囲内の極めて低い照度で紫外線L1が照射されるよう、制御部9が光源2の出力を制御することで、部屋50に人間が存在する場合であっても人体への影響を生じさせずに、不活化の効果を奏することができる。
【0081】
なお、この場合において、制御部9は、直前に検知対象領域40内に人間が存在することを検知してから、検知対象領域40内に人間が存在しなくなったことを検知するまでの時間、言い換えれば、検知対象領域40内における人間の連続存在時間が長くなるほど、単位時間あたりの紫外線L1の積算照射量を高くするように制御するのが好適である。より具体的には、検知対象領域40内における人間の連続存在時間が長くなるほど、その直後における人間の不存在時間帯における光源2の光出力を高く設定したり、ONデューティ比を高く設定するものとしても構わない。
【0082】
〈4〉上記実施形態では、光源2としてエキシマランプ3を備える場合について説明したが、光源2は、190nm~235nmの範囲内に属する特定波長域に光出力を示す紫外線L1を発する構成であれば、その態様は限定されず、例えば、LEDやレーザダイオード等の固体光源で構成されていても構わない。
【0083】
〈5〉上記実施形態では、「特定動作モード」が、点灯動作が実行される第一制御と、消灯動作が実行される第二制御とが繰り返される動作モードである場合について説明した。しかし、「特定動作モード」が、相対的に高い発光強度で点灯する第一制御と、この第一制御の実行時よりも相対的に低い発光強度で点灯する第二制御とが繰り返される動作モードであるものとしても構わない。
【0084】
一例として、第一制御の実行時には、光取り出し面10上における紫外線L1の照度が0.3mW/cm2より高く、第二制御の実行時には、光取り出し面10上における紫外線L1の照度が0.3mW/cm2未満となるように、制御部9において、光源2の輝度が調整される。なお、ここでの照度の区分値(照度基準値)は、0.1mW/cm2~3mW/cm2の範囲内で任意に定めても構わない。例えば、光取り出し面10上における紫外線L1の照度基準値を、3mW/cm2、2.5mW/cm2、2mW/cm2、1.5mW/cm2、1mW/cm2、0.5mW/cm2、及び0.1mW/cm2からなる設定値群の中から選択された一の値で設定した上で、第一制御の実行時には前記照度基準値より高い照度となるよう制御し、第二制御の実行時には前記照度基準値未満となるよう制御するものであってもよい。
【0085】
また、第二制御の実行時における紫外線L1の照度は、第一制御の実行時における紫外線L1の照度に対して、50%未満であるのが好ましく、30%未満であるのがより好ましく、15%未満であるのが特に好ましい。第二制御の実行時における紫外線L1の照度が、第一制御の実行時における紫外線L1の照度に対して1%未満である場合には、第二制御が実質的に「消灯」動作であるものとして構わない。
【0086】
〈6〉上記実施形態では、検知部20は検知対象領域40内に人間が存在しないかどうかを検知した上で、制御部9は検知部20における検知結果に応じて光源2の制御を行うものとして説明した。しかし、検知部20は、人間以外の動物の不存在を検知するものとしても構わない。この場合、本発明に係る不活化装置1は、190nm~235nmの範囲内に属する特定波長域に光出力を示す紫外線L1を出射する光源2と、光源2の点灯制御を行う制御部9と、紫外線L1の照射領域の一部であるか又は前記照射領域に隣接する領域である検知対象領域40内に「動物」が存在するか否かを検知する検知部20とを備える。そして、制御部9は、検知部20が「動物」の不存在を検知すると、光源2に対して、単位時間内における紫外線L1の積算照射量を増加させる制御を行うものとしても構わない。
【0087】
なお、この場合において、検知対象となる動物としては、イヌ、ネコ、ウサギ等の愛玩動物(ペット)であっても構わないし、ウシ、ブタ、ニワトリ、ウマなどの家畜であっても構わないし、動物園で飼育された動物や、保護されている動物であっても構わない。
【符号の説明】
【0088】
1(1a,1b,1c,1d,1e) :不活化装置
2 :光源
3 :エキシマランプ
3G :発光ガス
9 :制御部
10 :光取り出し面
12 :ランプハウス
12a :本体ケーシング部
12b :蓋部
18 :給電線
20 :検知部
40 :検知対象領域
50 :部屋
51 :机
52 :椅子
53 :壁紙
60 :通路
61 :人間
62,63 :領域
70 :部屋
71 :操作部
80 :自動販売機
81 :操作部
82 :取り出し口
83 :取り出し口
L1 :紫外線
L2 :赤外線