(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240709BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20240709BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240709BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240709BHJP
H05B 45/50 20220101ALI20240709BHJP
H05B 47/20 20200101ALI20240709BHJP
G09G 3/34 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B60K35/23
G09G3/36
G09G3/20 670N
G02B27/01
H05B45/50
H05B47/20
G09G3/34 J
G09G3/20 680B
(21)【出願番号】P 2021520879
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2020020369
(87)【国際公開番号】W WO2020235683
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019096968
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】石田 兼太郎
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017878(JP,A)
【文献】特開2007-108519(JP,A)
【文献】特開2013-109921(JP,A)
【文献】特開2010-272410(JP,A)
【文献】特開2013-021116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20
G09G 3/00-3/38
G02F 1/133-1/1334
H05B 39/00-39/10,45/00-45/59,
47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を被投射部材に投射することにより虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
光源と、
前記光源からの光を受けて前記表示光を出射する表示パネルと、
前記表示パネルを制御するとともに、第1PWM信号を出力し、前記光源のカソード電圧を取得するマイコンと、
前記マイコンからの前記第1PWM信号を受けて、前記第1PWM信号を増幅した第2PWM信号を前記光源に出力することにより前記光源を点灯させる光源ドライバと、を備え、
前記マイコンは、
前記カソード電圧と前記第1PWM信号のデューティ比の、前記光源の輝度に関する輝度異常故障がない正常時を含む正常範囲、及び前記第1PWM信号の前記デューティ比に対して前記カソード電圧が前記正常範囲を外れて低くなる高輝度異常範囲を示すデータを記憶する記憶部と、
取得された前記カソード電圧と出力された前記第1PWM信号の前記デューティ比により特定される特定点が前記データの前記高輝度異常範囲内に存在する場合に、前記輝度異常故障と判定する処理部と、を備える、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記輝度異常故障と判定すると、前記第1PWM信号の出力を停止して前記光源を消灯する、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記データは、前記第1PWM信号の前記デューティ比に対して前記カソード電圧が前記正常範囲を外れて高くなる低輝度異常範囲の情報を含み、
前記処理部は、前記特定点が前記データの前記低輝度異常範囲内に存在する場合に前記輝度異常故障と判定し前記第1PWM信号の出力を停止して前記光源を消灯する、
請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記データにおいて、前記正常時の前記特定点から前記高輝度異常範囲までの前記カソード電圧の第1差分値は、前記正常時の前記特定点から前記低輝度異常範囲までの前記カソード電圧の第2差分値よりも小さい、
請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記光源ドライバは、
前記カソード電圧がショート閾値を超えたときに前記光源に関す
る回路のショート故障を検出するショート故障検出部と、
前記カソード電圧がオープン閾値未満となったとき前記光源に関する前記回路のオープン故障を検出するオープン故障検出部と、を備え、
前記処理部は、前記ショート故障検出部によりショート故障が検出されず、かつ、前記オープン故障検出部によりオープン故障が検出されない状態で、前記特定点が前記データの前記低輝度異常範囲内又は前記高輝度異常範囲内に存在する場合に前記輝度異常故障と判定し前記第1PWM信号の出力を停止して前記光源を消灯する、
請求項3又は4に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両の運転者に対して、表示光をフロントガラス等の被投射部材に投射することにより虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、液晶表示部と、液晶表示部に光を照射するLED(Light Emitting Diode)と、液晶表示部及びLEDを制御する制御部と、を備える。この制御部は、PWM信号を生成して出力するPWMマイコンと、PWMマイコンからのPWM信号に基づき駆動電流を生成し、生成した駆動電流をLEDに出力するLEDドライバIC(Integrated Circuit)と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、LEDドライバICは、LED回路のショート又はオープン等の故障を検出する故障検出機能を有している。しかしながら、例えば、電子部品や回路の不具合により、故障検出機能によりショートであると検出されない程度に所望の駆動電流値よりも大きい電流が流れた場合には、LEDドライバICは、故障検出機能を通じて故障を検出できない。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、故障を精度よく検出するヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置は、表示光を被投射部材に投射することにより虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
光源と、前記光源からの光を受けて前記表示光を出射する表示パネルと、前記表示パネルを制御するとともに、第1PWM信号を出力し、前記光源のカソード電圧を取得するマイコンと、前記マイコンからの前記第1PWM信号を受けて、前記第1PWM信号を増幅した第2PWM信号を前記光源に出力することにより前記光源を点灯させる光源ドライバと、を備え、 前記マイコンは、前記カソード電圧と前記第1PWM信号のデューティ比の、前記光源の輝度に関する輝度異常故障がない正常時を含む正常範囲、及び前記第1PWM信号の前記デューティ比に対して前記カソード電圧が前記正常範囲を外れて低くなる高輝度異常範囲を示すデータを記憶する記憶部と、取得された前記カソード電圧と出力された前記第1PWM信号の前記デューティ比により特定される特定点が前記データの前記高輝度異常範囲内に存在する場合に、前記輝度異常故障と判定する処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヘッドアップディスプレイ装置において、故障を精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が搭載された車両の模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置のブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る平滑部の回路図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る第2PWM信号のデューティ比とカソード電圧の関係の、正常範囲、高輝度異常範囲及び低輝度異常範囲を示すデータを表す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る輝度異常判定処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る正常時における第2PWM信号、光源電流、カソード電圧及び故障検出信号を示すタイミングチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係るショート故障時における第2PWM信号、光源電流、カソード電圧及び故障検出信号を示すタイミングチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係るオープン故障時における第2PWM信号、光源電流、カソード電圧及び故障検出信号を示すタイミングチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態に係る輝度異常故障時における第2PWM信号、光源電流、カソード電圧及び故障検出信号を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両200のダッシュボード内に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両200の被投射部材の一例であるフロントガラス201に向けて像を表す表示光Lを出射する。表示光Lはフロントガラス201で反射して視認者1(主に車両200の運転者)に到達する。これにより、虚像Vが視認者1により視認可能に表示される。
【0010】
まず、ヘッドアップディスプレイ装置100の機械的構成について説明する。
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示部10と、平面鏡20と、凹面鏡30と、筐体60と、制御部70と、を備える。
【0011】
表示部10は、制御部70による制御のもと、像を表す表示光Lを出射する。表示部10は、表示パネル14と、照明装置18と、を備える。
平面鏡20は、表示部10が出射した表示光Lを凹面鏡30に向けて反射させる。凹面鏡30は、平面鏡20で反射した表示光Lをフロントガラス201に向けて拡大させつつ反射させる。
【0012】
筐体60は、非透光性の樹脂又は金属で形成されるとともに、中空の略直方体をなす。筐体60内には、ヘッドアップディスプレイ装置100の各構成が収納されている。
筐体60には、フロントガラス201に対向する位置に開口部61が形成されている。筐体60は、開口部61を塞ぐ湾曲板状の窓部50を備える。窓部50は、表示光Lが透過するアクリル等の透光性の樹脂からなる。
【0013】
表示パネル14は、制御部70により制御されるTFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示パネルである。表示パネル14は、照明装置18からの光を受けて表示光Lを出射する。
【0014】
照明装置18は、表示パネル14の裏側に位置し、制御部70による制御のもと表示パネル14を照明する複数のLEDからなる複数の光源18aを備える。
【0015】
次に、ヘッドアップディスプレイ装置100の電気的構成について説明する。
図3に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、制御部70であるマイコン(マイクロコンピュータ)71及びLEDドライバIC72と、複数の光源18aと、表示パネル14と、コンデンサC1と、平滑部73と、を備える。
マイコン71は、表示パネル14を制御するとともに、LEDドライバIC72を介して光源18aを点灯制御する。マイコン71は、動作プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)からなる処理部71aと、処理部71aの動作プログラム及びテーブルTb等が記憶されるROM(Read Only Memory)71bと、処理部71aのワークエリアとして利用されるRAM(Random Access Memory)71cと、を備える。
マイコン71は、車載されるECU(Electronic Control Unit)からの車両情報に含まれる周囲の明るさを示す外光強度検出信号Saを受けて、外光強度検出信号Saに応じたデューティ比の第1PWM信号Spwm1を生成し、生成した第1PWM信号Spwm1をLEDドライバIC72に出力する。外光強度検出信号Saが示す外光の光強度が高いほど、第1PWM信号Spwm1のデューティ比が高く設定される。
マイコン71は、LEDドライバIC72から後述する故障の有無を示す故障検出信号Sfを入力する。マイコン71は、故障がある旨を示す故障検出信号Sfを入力すると、第1PWM信号Spwm1の出力を停止し、これにより光源18aを消灯させる。
また、マイコン71は、後述するカソード電圧Vk2が入力され、テーブルTbを参照しつつ入力されたカソード電圧Vk2と出力された第1PWM信号Spwm1のデューティ比に基づき虚像Vの輝度異常の有無を判定し、輝度異常があると判定したときに光源18aを消灯する輝度異常判定処理を行う。この輝度異常判定処理については後述する。
【0016】
LEDドライバIC72は、電圧源Vcからの電圧を受けて、第1PWM信号Spwm1を昇圧(増幅)させた第2PWM信号Spwm2を生成するスイッチ回路である。第2PWM信号Spwm2は、第1PWM信号Spwm1に同期した信号となる。LEDドライバIC72は、第2PWM信号Spwm2を介して直列接続された複数の光源18aに光源電流Iledを供給する。
図7に示すように、光源電流Iledは、第2PWM信号Spwm2に同期した信号となる。これにより、第2PWM信号Spwm2のデューティ比に応じた輝度で光源18aが点灯し虚像Vが表示される。
【0017】
また、LEDドライバIC72は、光源18aのカソード端子側の電圧であるカソード電圧Vk1が入力される。LEDドライバIC72は、カソード電圧Vk1に基づき光源18aに関する回路のショート故障を検出するショート故障検出部72aと、カソード電圧Vk1に基づき光源18aに関する回路のオープン故障を検出するオープン故障検出部72bと、電圧源Vcからの電圧が低下した低電圧故障を検出する低電圧故障検出部72cと、を備える。
LEDドライバIC72は、ショート故障検出部72a、オープン故障検出部72b及び低電圧故障検出部72cの少なくとも何れかにより故障が検出されたときには、故障がある旨を示す故障検出信号Sfをマイコン71に出力する。
【0018】
光源18aのアノード端子はLEDドライバIC72に接続され、光源18aのカソード端子はマイコン71及びLEDドライバIC72それぞれに接続される。
コンデンサC1の一端は光源18aのカソード端子とLEDドライバIC72の間に接続され、コンデンサC1の他端はグランドに接続されている。コンデンサC1はカソード電圧Vk1に重畳するノイズを抑制する機能を有する。コンデンサC1は互いに並列に複数設けられていてもよい。
【0019】
平滑部73は、光源18aのカソード端子とマイコン71の間に接続され、カソード電圧Vk1のデューティ比に応じた電圧値に定電圧化したカソード電圧Vk2を生成し、生成したカソード電圧Vk2をマイコン71に出力する。
詳しくは、
図4に示すように、平滑部73は、コンデンサC2,C3と、ツェナーダイオードZDと、抵抗R1,R2と、を備える。
抵抗R1,R2は、光源18aのカソード端子とマイコン71の間に直列に接続されている。コンデンサC3の一端は2つの抵抗R1,R2の間に接続され、コンデンサC3の他端はグランドに接続されている。
コンデンサC3及び抵抗R1,R2は、カソード電圧Vk1のデューティ比に応じた電圧値に定電圧化したカソード電圧Vk2を生成する機能を有する。
ツェナーダイオードZDのカソード端子は抵抗R2と光源18aのカソード端子の間に接続され、ツェナーダイオードZDのアノード端子はグランドに接続されている。ツェナーダイオードZDは、サージ電流が入力されたときに降伏してサージ電流をグランドに流すことにより、サージ電流がマイコン71に入力されることを抑制する機能を有する。
また、コンデンサC2の一端は抵抗R1とマイコン71の間に接続され、コンデンサC2の他端はグランドに接続されている。コンデンサC2は、カソード電圧Vk2に重畳するノイズを抑制する機能を有する。
【0020】
図5に示すように、テーブルTbは、正常範囲A1、高輝度異常範囲A2及び低輝度異常範囲A3を備える。
次に、ROM71bに記憶されるテーブルTbの生成方法について説明する。テーブルTbの生成は設計者により行われる。
まず、正常時における第1PWM信号Spwm1のデューティ比とカソード電圧Vk2の関係が
図5の三角形の図形で示す点でプロットされ、プロットされた点が線Lnで結ばれる。正常時には、ショート故障、オープン故障、低電圧故障及び後述する輝度異常故障の何れも発生していない。正常範囲A1は、線Lnを中心に第1差分値Th1を下限として、第2差分値Th2を上限とした範囲に設定される。第1差分値Th1及び第2差分値Th2はカソード電圧Vk2の差分値である。低輝度異常範囲A3は第2差分値Th2を超える範囲に設定される。高輝度異常範囲A2は第1差分値Th1未満の範囲に設定される。
第1差分値Th1は第2差分値Th2よりも小さい値に設定されている。よって、高輝度異常範囲A2は、低輝度異常範囲A3に比べて線Lnに近い領域に設定される。
このテーブルTbの利用方法については後述する。
【0021】
次に、
図6のフローチャートを参照しつつ、マイコン71(処理部71a)により実行される輝度異常判定処理について説明する。この輝度異常判定処理は、マイコン71から第1PWM信号Spwm1が出力されている期間においては繰り返し実行される。
まず、マイコン71は、出力している第1PWM信号Spwm1のデューティ比とカソード電圧Vk2を取得する(ステップS101)。そして、マイコン71は、ROM71bに記憶されるテーブルTbを参照し、取得したデューティ比とカソード電圧Vk2により特定される特定点Pが正常範囲A1内に存在しているか否かを判別する(ステップS102)。
図5の特定点P1に例示するように、特定点Pが正常範囲A1内に存在していると判別すると(ステップS102:YES)、輝度異常がないと判定し(ステップS103)、当該輝度異常判定処理を終了する。
【0022】
一方、マイコン71は、特定点Pが正常範囲A1内に存在していないと判別すると(ステップS102:NO)、
図5の特定点P2に例示するように特定点Pが高輝度異常範囲A2に存在しているとして、又は
図5の特定点P3に例示するように特定点Pが低輝度異常範囲A3に存在しているとして、輝度異常故障があると判定する(ステップS104)。
特定点P2が高輝度異常範囲A2に存在する場合には、虚像Vの輝度が所望の値よりも高くなり、視認者1は虚像Vが背景(実風景)に対し明るくなりすぎて眩しく感じるため、視認性が下がる。また、特定点P3が低輝度異常範囲A3に存在する場合には、虚像Vの輝度が所望の値よりも低くなり、視認者1は虚像Vと背景(実像)とのコントラストが低下して視認性が下がる。
【0023】
マイコン71は、輝度異常故障があると判定すると(ステップS104)、複数の光源18aを消灯し(ステップS105)、当該輝度異常判定処理を終了する。これにより、輝度異常故障となり所望の値と異なった輝度の虚像Vの表示が停止する。
【0024】
上述した輝度異常故障は、LEDドライバIC72によって検出できない故障である。この点について、
図7~
図10を参照しつつ、説明する。
図7に示すように、正常時には、第2PWM信号Spwm2に同期して光源電流Iledが光源18aに供給される。また、カソード電圧Vk1は、光源18aによって電流が消費されるため、第2PWM信号Spwm2及び光源電流IledのHiとLoを反転させた信号となる。正常時には、カソード電圧Vk1が予め設定される正常範囲C内で変化する。LEDドライバIC72は、カソード電圧Vk1が正常範囲C内であるときに故障検出信号Sfを故障がない旨を示すHi(3.3V)とし、カソード電圧Vk1が正常範囲C外であるときに故障検出信号Sfを故障がある旨を示すLo(0V)とする。
【0025】
次に、
図8に示すように、ショート故障時には、光源電流Iledは、第2PWM信号Spwm2に同期せずに大電流となる。ショート故障時には、カソード電圧Vk1が正常範囲Cの上限値であるショート閾値Tsを超える。LEDドライバIC72は、カソード電圧Vk1がショート閾値Tsを超えたとき、故障検出信号SfをLoとする。
【0026】
次に、
図9に示すように、オープン故障時には、光源電流Iledは、第2PWM信号Spwm2に同期せずにゼロとなる。オープン故障時には、カソード電圧Vk1が正常範囲Cの下限値であるオープン閾値To未満となる。LEDドライバIC72は、カソード電圧Vk1がオープン閾値To未満となったとき、故障検出信号SfをLoとする。
【0027】
次に、輝度異常故障時について説明する。この輝度異常故障は、一例として、
図3に示すコンデンサC1が故障により抵抗を持つことにより、光源電流Iledは正常時よりも大きく、かつショート時よりも小さくなる。
この輝度異常故障時には、
図10に示すように、第2PWM信号Spwm2に同期して光源電流Iledが光源18aに供給されるものの、振動する光源電流Iledの波形の中心値が
図7に示す正常時の光源電流Iledの波形の中心値よりも大きくなる。よって、光源18aの輝度が高くなる。しかしながら、この輝度異常故障時には、カソード電圧Vk1が正常範囲C内で変化する。LEDドライバIC72は、カソード電圧Vk1が正常範囲C内であるとき、故障検出信号Sfを故障がない旨を示すHiとする。よって、LEDドライバIC72によりこの輝度異常故障が検出されない。このLEDドライバIC72により検出されない輝度異常故障は、上述の輝度異常判定処理により検出される。すなわち、上述の輝度異常判定処理は、LEDドライバIC72により検出されない輝度異常故障の有無を判定し、輝度異常故障があると判定したときに光源18aを消灯できる。
【0028】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示光Lを被投射部材の一例であるフロントガラス201に投射することにより虚像Vを表示する。ヘッドアップディスプレイ装置100は、LEDからなる光源18aと、光源18aからの光を受けて表示光Lを出射する表示パネル14と、表示パネル14を制御するとともに、第1PWM信号Spwm1を出力し、光源18aのカソード電圧Vk2を取得するマイコン71と、マイコン71からの第1PWM信号Spwm1を受けて、第1PWM信号Spwm1を増幅した第2PWM信号Spwm2を光源18aに出力することにより光源18aを点灯させる光源ドライバの一例であるLEDドライバIC72と、を備える。マイコン71は、カソード電圧Vk2と第1PWM信号Spwm1のデューティ比の関係を示し、虚像Vの輝度に関する輝度異常故障がない正常時における正常範囲A1、及び第1PWM信号Spwm1のデューティ比に対してカソード電圧Vk2が正常範囲A1を外れて低くなる高輝度異常範囲A2を有するテーブルTbを記憶する記憶部の一例であるROM71bと、取得されたカソード電圧Vk2と出力された第1PWM信号Spwm1のデューティ比により特定される特定点P2がデータであるテーブルTbの高輝度異常範囲A2内に存在する場合に輝度異常故障と判定する処理部71aと、を備える。処理部71aは、輝度異常故障と判定すると、第1PWM信号Spwm1の出力を停止して光源18aを消灯する。
この構成によれば、ショート故障以外の電子部品の不具合により光源18aに供給される電流値がショート故障時の過電流ほどではないものの所望の値に対して大きくなった場合、取得されたカソード電圧Vk2と出力された第1PWM信号Spwm1のデューティ比により特定される特定点P2がテーブルTbの高輝度異常範囲A2内となる。このとき、処理部71aは輝度異常故障と判定する。よって、ショート故障であると検出されない輝度異常故障が検出可能となり、これにより、故障が精度よく検出可能となる。また、処理部71aは、輝度異常故障と判定すると、第1PWM信号Spwm1の出力を停止して光源18aを消灯する。よって、ショート故障であると検出されない電子部品や回路の不具合により視認者1が眩しさを感じるような虚像Vは表示されない。
【0029】
(2)テーブルTbは、第1PWM信号Spwm1のデューティ比に対してカソード電圧Vk2が正常範囲A1を外れて高くなる低輝度異常範囲A3を有する。処理部71aは、特定点P3がテーブルTbの低輝度異常範囲A3内に存在する場合に輝度異常故障と判定し第1PWM信号Spwm1の出力を停止して光源18aを消灯する。
この構成によれば、オープン故障以外の電子部品の不具合により光源18aに供給される光源電流Iledがオープン故障時ほどではないものの所望の値に対して小さくなった場合、取得されたカソード電圧Vk2と出力された第1PWM信号Spwm1のデューティ比により特定される特定点P3がテーブルTbの低輝度異常範囲A3内となる。このとき、処理部71aは、輝度異常故障と判定し、第1PWM信号Spwm1の出力を停止して光源18aを消灯する。よって、オープン故障であると検出されない電子部品の不具合により虚像Vの輝度が低下することが抑制され、視認性が低下した状態で虚像Vの表示が継続されることが抑制される。
【0030】
(3)テーブルTbにおける正常時の特定点P1(
図5の三角形のプロット)から高輝度異常範囲A2までのカソード電圧Vk2の第1差分値Th1は、正常時の特定点P1から低輝度異常範囲A3までのカソード電圧Vk2の第2差分値Th2よりも小さい。正常時の特定点P1は、例えば、ヘッドアップディスプレイ装置100が製造された初期時のデューティ比とカソード電圧Vk2に基づき定まる。
この構成によれば、電子部品の不具合により虚像Vの輝度が高まった場合には、電子部品の不具合により虚像Vの輝度が低下した場合に比べて、迅速に、光源18aが消灯される。よって、視認者1が眩しさを感じるような虚像Vは表示されない。
【0031】
(4)LEDドライバIC72は、カソード電圧Vk1がショート閾値Tsを超えたときに光源18aに関する回路のショート故障を検出するショート故障検出部72aと、カソード電圧Vk1がオープン閾値To未満となったとき光源18aに関する回路のオープン故障を検出するオープン故障検出部72bと、を備える。処理部71aは、ショート故障検出部72aによりショート故障が検出されず、かつ、オープン故障検出部72bによりオープン故障が検出されない状態で、特定点PがテーブルTbの低輝度異常範囲A3内又は高輝度異常範囲A2内に存在する場合に輝度異常故障と判定し第1PWM信号Spwm1の出力を停止して光源18aを消灯する。
この構成によれば、ショート故障検出部72a及びオープン故障検出部72bにより検出できない輝度異常故障が発生した場合でも、特定点Pが高輝度異常範囲A2内又は低輝度異常範囲A3内となり、光源18aが消灯される。
【0032】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0033】
(変形例)
上記実施形態においては、テーブルTbは、正常範囲A1、高輝度異常範囲A2及び低輝度異常範囲A3を備えていたが、低輝度異常範囲A3が省略されてもよい。
また、上記実施形態においては、第1差分値Th1は第2差分値Th2よりも小さい値に設定されていたが、第1差分値Th1は第2差分値Th2と同一値に設定されてもよいし、第1差分値Th1は第2差分値Th2よりも大きい値に設定されてもよい。
【0034】
上記実施形態においては、表示部10は、TFT型の液晶表示パネルである表示パネル14を備えていたが、これに限らず、有機EL(Electro-Luminescence)型の表示パネルを備えていてもよい。
【0035】
上記実施形態においては、LEDドライバIC72は、ショート故障検出部72a、オープン故障検出部72b及び低電圧故障検出部72cを備えていたが、ショート故障検出部72a、オープン故障検出部72b及び低電圧故障検出部72cのうち少なくとも何れか一つが省略されてもよい。
【0036】
上記実施形態においては、マイコン71は、輝度異常故障があると判定すると(ステップS104)、複数の光源18aを消灯し(ステップS105)、輝度異常判定処理を終了するように構成した。
車両の周囲が暗い状況下(外光強度検出信号Saが示す外光の光強度が低い状況下)において虚像Vの輝度が所望の値よりも高くなる場合には、特に、視認者1が虚像Vを眩しく感じやすく、視認性が低下しやすい。
よって、マイコン71は、外光強度検出信号Saが示す外光の光強度が所定の閾値よりも低く車両の周囲が暗いと判断したときに、輝度異常故障があると判定すると(ステップS104)、複数の光源18aを消灯(ステップS105)することが好ましい。
【0037】
上記実施形態において、マイコン71は、輝度異常故障があると判定すると(ステップS104)、複数の光源18aを消灯しつつ、又は複数の光源18aを消灯せずに、輝度異常故障がある旨をインジケータ等の通知手段を通じて視認者1に通知してもよい。
【0038】
上記実施形態においては、ヘッドアップディスプレイ装置100は車両200に搭載されていたが、車両200以外の飛行機、船等の乗り物に搭載されていてもよい。また、被投射部材はフロントガラスに限らず、専用のコンバイナであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 視認者
10 表示部
14 表示パネル
18 照明装置
18a 光源
20 平面鏡
30 凹面鏡
50 窓部
60 筐体
61 開口部
70 制御部
71 マイコン
71a 処理部
71b ROM
71c RAM
72 LEDドライバIC
72a ショート故障検出部
72b オープン故障検出部
72c 低電圧故障検出部
73 平滑部
100 ヘッドアップディスプレイ装置
200 車両
201 フロントガラス
A1 正常範囲
A2 高輝度異常範囲
A3 低輝度異常範囲
C 正常範囲
C1,C2,C3 コンデンサ
L 表示光
P,P1,P2,P3 特定点
R1,R2 抵抗
V 虚像
ZD ツェナーダイオード
Sa 外光強度検出信号
Tb テーブル
Sf 故障検出信号
Vc 電圧源
Th1 第1差分値
Th2 第2差分値
Vk1,Vk2 カソード電圧
Ts ショート閾値
To オープン閾値
Iled 光源電流
Spwm1 第1PWM信号
Spwm2 第2PWM信号