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特許7517340情報処理装置、および情報処理方法、並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、および情報処理方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/622 20240101AFI20240709BHJP
【FI】
G05D1/622
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021537634
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2020026610
(87)【国際公開番号】W WO2021024683
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019143653
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(74)【代理人】
【識別番号】110000763
【氏名又は名称】弁理士法人大同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆盛
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-77265(JP,A)
【文献】特開2010-143349(JP,A)
【文献】特許第5746347(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/622
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行するデータ処理部と、
前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記移動体を駆動する駆動部を有し、
前記データ処理部は、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行する構成であり、さらに、
前記データ処理部は、
前記移動体の複数の走行ルート候補を解析して、障害物に接触しない安全な走行ルートを選択する処理を実行する構成であり、
前記複数の走行ルート候補の各々について、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更するシミュレーションを実行して、安全な走行ルートを選択する情報処理装置。
【請求項2】
前記データ処理部は、
前記移動体のサイズに相当するサイズを許容最小サイズとして、前記フレキシブル仮想バンパーのサイズを、前記許容最小サイズ以下にならない範囲で制御する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記データ処理部は、
前記走行ルート候補のルート上に設定した複数の解析点の各々について、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更するシミュレーションを実行して、安全な走行ルートを選択する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記データ処理部は、
前記シミュレーション結果を記録した走行ルート候補解析リストを生成する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記データ処理部は、
前記シミュレーション結果を記録した走行ルート候補解析リストに、各走行ルート候補を走行した場合のバンパーサイズの制御結果であるバンパーサイズ推移データを記録する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記データ処理部は、
前記シミュレーション結果として、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の変更により、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しない設定が可能な走行ルート候補を有効走行ルート候補とし、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の変更により、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しない設定が不可能な走行ルート候補を棄却走行ルート候補とする有効棄却判別処理を実行し、
前記有効棄却判別処理の結果を、前記シミュレーション結果を記録した走行ルート候補解析リストに記録する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記データ処理部は、
前記シミュレーション結果を記録した走行ルート候補解析リストから、有効走行ルート候補のみを選択し、選択した有効走行ルート候補から1つの走行ルートを決定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記データ処理部は、
前記選択した有効走行ルート候補に対して、予め規定したアルゴリズムに従ったソート処理を実行し、
ソート結果に基づいて1つの走行ルートを決定する請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記予め規定した優先度に従ったアルゴリズムに従ったソート処理は、
(a)平均バンパーサイズが大きい順にソートする処理、
(b)平均バンパーサイズが小さい順にソートする処理、
(c)ルート走行距離が短い順にソートする処理、
上記(a)~(c)のいずれかのソート処理である請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記情報処理装置は、
障害物検出手段としてのセンサを有する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記データ処理部は、
回避優先度の高い障害物側に大きいクリアランスを有する形状のフレキシブル仮想バンパーを設定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記移動体は、荷物搭載車両であり、
前記データ処理部は、
前記荷物搭載車両に荷物が搭載されていない場合は、前記荷物搭載車両の周囲を囲むフレキシブル仮想バンパーを設定し、
前記荷物搭載車両に荷物が搭載されている場合は、前記荷物搭載車両と荷物の周囲を囲むフレキシブル仮想バンパーを設定する請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
自動走行ロボットと障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行するデータ処理部と、
前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記自動走行ロボットを駆動する駆動部を有し、
前記データ処理部は、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行する構成であり、さらに、
前記データ処理部は、
前記自動走行ロボットの周囲を囲む形状を有し、前記自動走行ロボットの充電用接点位置に接する形状のフレキシブル仮想バンパーを設定する情報処理装置。
【請求項14】
移動体であり、把持動作を行う手形状ロボットと障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行するデータ処理部と、
前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記手形状ロボットを駆動する駆動部を有し、
前記データ処理部は、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行する構成であり、さらに、
前記データ処理部は、
前記手形状ロボットの指先による物の把持や接触を許すように、腕部のみを囲むフレキシブル仮想バンパーを設定する情報処理装置。
【請求項15】
情報処理装置において実行する情報処理方法であり、
データ処理部が、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行するバンパー制御ステップと、
駆動部が、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記移動体を駆動する駆動ステップを有し、
前記バンパー制御ステップでは、
前記データ処理部が、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行し、さらに、
前記データ処理部は、
前記移動体の複数の走行ルート候補各々について、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更するシミュレーションを実行して、障害物に接触しない安全な走行ルートを選択する処理を実行する情報処理方法。
【請求項16】
情報処理装置において情報処理を実行させるプログラムであり、
データ処理部に、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行させるバンパー制御ステップと、
駆動部に、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記移動体を駆動させる駆動ステップを実行させ、
前記バンパー制御ステップでは、
前記データ処理部に、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行させ、さらに、
前記プログラムは、前記データ処理部に、
前記移動体の複数の走行ルート候補各々について、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更するシミュレーションを実行させて、障害物に接触しない安全な走行ルートを選択する処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、および情報処理方法、並びにプログラムに関する。さらに詳細には、自動走行ロボットや自動走行車両の安全な走行を可能とする情報処理装置、および情報処理方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動走行型のロボットや自動走行型車両の開発や利用が急速に進んでいる。例えば倉庫やオフィス内で荷物を搭載して無人で走行するロボットや、道路を走行する自動運転車両等の開発や利用が進んでいる
【0003】
自動走行型のロボットや自動走行型車両は他のロボットや車両、歩行者等との衝突を回避して安全に走行することが要求される。
【0004】
なお、自動走行ロボットの安全走行技術を開示した従来技術として例えば特許文献1(特開2014-211759号公報)がある。
この文献は、複数の経路から障害物との離反距離等に基づく評価値を算出して、算出した評価値に従って安全に走行する経路を決定する構成を開示している。
【0005】
しかし、この開示文献を含め、これまで開示された従来技術の多くは、自装置と障害物との間に許容される最低限の離間距離を固定した上で、安全に走行するルートを決定するという処理を行うものがほとんどである。
【0006】
従って、例えば、実際の自装置の幅より広い通路であっても、自装置と壁等の障害物間の間隔が予め規定された許容間隔でない場合、通行不可能と判定してしまうといった処理がなされていた。
このような処理を行うと、自動走行型のロボットの走行可能な領域やルートが限定されてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-211759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、自装置と障害物との間の離間距離を固定せず、状況に応じて変更することで走行可能な領域やルートを拡大して、かつ安全な走行を実現する情報処理装置、および情報処理方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の側面は、
移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行するデータ処理部と、
前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記移動体を駆動する駆動部を有し、
前記データ処理部は、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行する情報処理装置にある。
【0010】
さらに、本開示の第2の側面は、
情報処理装置において実行する情報処理方法であり、
データ処理部が、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行するバンパー制御ステップと、
駆動部が、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記移動体を駆動する駆動ステップを有し、
前記バンパー制御ステップでは、
前記データ処理部が、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行する情報処理方法にある。
【0011】
さらに、本開示の第3の側面は、
情報処理装置において情報処理を実行させるプログラムであり、
データ処理部に、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行させるバンパー制御ステップと、
駆動部に、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記移動体を駆動させる駆動ステップを実行させ、
前記バンパー制御ステップでは、
前記データ処理部に、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行させるプログラムにある。
【0012】
なお、本開示のプログラムは、例えば、様々なプログラム・コードを実行可能な情報処理装置、画像処理装置やコンピュータ・システムに対して、コンピュータ可読な形式で提供する記憶媒体、通信媒体によって提供可能なプログラムである。このようなプログラムをコンピュータ可読な形式で提供することにより、情報処理装置やコンピュータ・システム上でプログラムに応じた処理が実現される。
【0013】
本開示のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本開示の実施例や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。なお、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【0014】
本開示の一実施例の構成によれば、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するフレキシブル仮想バンパーの変更制御を行う装置、方法が実現される。
具体的には、例えば、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行するデータ処理部と、フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように移動体を駆動する駆動部を有する。データ処理部は、フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行する。データ処理部は、移動体の複数の走行ルート候補各々について、フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないようにバンパーサイズを変更するシミュレーションを実行して、安全な走行ルートを選択する。
本構成により、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するフレキシブル仮想バンパーの変更制御を行う装置、方法が実現される。
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】仮想バンパーを利用した走行ルート決定例について説明する図である。
図2】仮想バンパーを利用した走行制御における問題点について説明する図である。
図3】本開示のフレキシブル仮想バンパーを利用した走行制御処理の概要について説明する図である。
図4】本開示のフレキシブル仮想バンパーを利用した走行制御処理の概要について説明する図である。
図5】本開示のフレキシブル仮想バンパーを利用した走行制御処理におけるバンパーサイズの変更例について説明する図である。
図6】本開示のフレキシブル仮想バンパーを利用した走行制御処理におけるバンパーサイズの変更例について説明する図である。
図7】本開示のフレキシブル仮想バンパーを利用した走行制御処理について説明する図である。
図8】本開示のフレキシブル仮想バンパーを利用した走行制御処理について説明する図である。
図9】本開示のフレキシブル仮想バンパーの設定例について説明する図である。
図10】本開示のフレキシブル仮想バンパーを利用した走行制御処理について説明する図である。
図11】本開示の情報処理装置の構成例について説明する図である。
図12】本開示の情報処理装置の構成例について説明する図である。
図13】本開示の情報処理装置の実行する処理シーケンスについて説明するフローチャートを示す図である。
図14】本開示の情報処理装置の実行する処理の具体例について説明する図である。
図15】本開示の情報処理装置の実行する処理の具体例について説明する図である。
図16】本開示の情報処理装置の実行する処理の具体例について説明する図である。
図17】本開示の情報処理装置が生成する「走行ルート候補解析リスト」の具体例について説明する図である。
図18】本開示の情報処理装置の実行する処理シーケンスについて説明するフローチャートを示す図である。
図19】本開示の情報処理装置の実行する処理の具体例について説明する図である。
図20】本開示の情報処理装置のハードウェア構成例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本開示の情報処理装置、および情報処理方法、並びにプログラムの詳細について説明する。なお、説明は以下の項目に従って行なう。
1.仮想バンパーを用いた自動走行制御とその問題点について
2.本開示の情報処理装置の実行する処理の概要について
3.本開示の情報処理装置の構成例について
4.本開示の情報処理装置の実行する処理のシーケンスについて
5.各装置のハードウェア構成例について
6.本開示の構成のまとめ
【0017】
[1.仮想バンパーを用いた自動走行制御とその問題点について]
まず、仮想バンパーを用いた自動走行制御とその問題点について説明する。
【0018】
図1は、自動走行ロボット10の走行ルート決定例を示す図である。図1には、
(1)安全な走行ルート決定例
(2)危険な走行ルート棄却例
これら2つの図を示している。
【0019】
(1)、(2)とも、自動走行ロボット10は、図下部の現在位置におり、前方方向(図の上部方向)に進む想定である。
自動走行ロボット10は、現在位置において、複数の走行ルート候補から、最適な1つの走行ルートを選択して、選択した走行ルートに従って移動する。
【0020】
走行ルート候補は、図に点線矢印として示す走行ルート候補20であり、多数の候補によって構成される。
ただし、自動走行ロボット10の前方右側には障害物30が存在する。自動走行ロボット10はこの障害物30に接触しないルートを選択する処理を行うことになる。なお、障害物30の位置については、自動走行ロボット10に装着されたカメラ等のセンサによって検出することが可能である。あるいは自動走行ロボット10内の記憶部に格納された地図データ、あるいは外部サーバ等から取得した地図データを用いて障害物検知を行ってもよい。
【0021】
自動走行ロボット10は、障害物30との接触を避けるルートを選択する処理を行う。このルート選択処理に際して、自動走行ロボット10は、障害物30との間隔を一定距離以上、維持して走行することを可能とするため、自動走行ロボット10の周囲に仮想バンパー11を設定する。自動走行ロボット10は、仮想バンパー11が障害物30と接触しないような走行ルートを選択する。
【0022】
仮想バンパー11は、例えば自動走行ロボット10の走行時のふらつき等により、自動走行ロボット10と障害物30が誤って接触してしまうことを防止するため,自動走行ロボット10と障害物30の間に一定の離間距離(クリアランス)を設定するための仮想的なバンパーである。
【0023】
仮想バンパー11と障害物30とが接触しないようなルートを選択することで、例えば図1の「(1)安全な走行ルート決定例」に示すように障害物30を避けた左方向にカーブする走行ルートを、走行ルート候補20の中から選択することが可能となる。自動走行ロボット10は、この選択ルートに従って走行することで障害物30から一定の距離、離れて安全に走行することができる。
【0024】
一方、図1の「(2)危険な走行ルート棄却例」は、障害物30に向かうルートを示している。このような走行ルートは、自動走行ロボット10が障害物30に接触することが予測されるため、走行ルート候補20の中から選択されず棄却される。
【0025】
このように、自動走行ロボット10は、多数の走行ルート候補20から、障害物30に接触せず、かつ一定距離離れて走行可能とするため、自動走行ロボット10の周囲に仮想バンパー11を設定し、仮想バンパー11と障害物30との接触が発生しないルートを選択して走行する。
【0026】
しかし、このような仮想バンパーを利用した走行制御を行うと、自動走行ロボット10が障害物30と接触していない場合でも、自動走行ロボット10が走行不可能になる場合がある。
これは、自動走行ロボット10の走行制御部が、仮想バンパー11内に障害物がない状態でのみ走行を許容し、仮想バンパー11内に障害物が検出された場合は走行を停止するという走行制御ルールに従った走行を行うことに起因する。
【0027】
自動走行ロボット10が障害物30と接触していない場合でも、自動走行ロボット10が走行不可能になる具体例について図2を参照して説明する。
【0028】
図2は、自動走行ロボット10が仮想バンパー11を利用して、仮想バンパー11と障害物30を接触させないように走行制御を行った場合、自動走行ロボット10が走行不可能になる場合の具体例を示した図である。図2には、以下の3種類の具体例を示している。
(a)障害物の移動による障害物との接近
(b)観測誤差発生による障害物との接近
(c)走行制御限界による障害物との接近
【0029】
(a)障害物の移動による障害物との接近は、障害物30が移動する物体である場合の例である。図2(a)に示すように、障害物30が移動する物体であり、自動走行ロボット10に向かって進んできた場合、障害物30が、自動走行ロボット10の周囲に設定した仮想バンパー11内に侵入してしまう場合がある。
【0030】
この場合、自動走行ロボット10自体が障害物30と接触していなくても、自動走行ロボット10の制御部は、障害物30の一部が仮想バンパー11内に侵入したことを検知し、自動走行ロボット10の走行を停止する。
これは、自動走行ロボット10が、仮想バンパー11内にいかなる障害物もない状態でのみ走行を許容し、仮想バンパー11内に障害物が検出された場合は走行を停止するという基本ルールに従って走行するためである。
【0031】
(b)観測誤差発生による障害物との接近は、自動走行ロボット10が周囲の障害物との距離を誤って認識してしまったような場合の事象である。
このような認識誤差が発生した場合、障害物30が、自動走行ロボット10の周囲に設定した仮想バンパー11内に侵入してしまう可能性がある。
この場合も、自動走行ロボット10の制御部は、障害物30の一部が仮想バンパー11内に侵入したことを検知し、自動走行ロボット10の走行を停止する。
【0032】
(c)走行制御限界による障害物との接近は、例えば、自動走行ロボット10の高速走行等により、所定の選択ルートに従って正確に走行できず、ルートから少しずれた位置を走行して周囲の障害物に近づいてしまった場合の事象である。
このような場合も、障害物30が、自動走行ロボット10の周囲に設定した仮想バンパー11内に侵入してしまう可能性がある。
この場合も、自動走行ロボット10の制御部は、障害物30の一部が仮想バンパー11内に侵入したことを検知し、自動走行ロボット10の走行を停止する。
【0033】
このように、仮想バンパー11を利用して走行を行う自動走行ロボット10の多くは、仮想バンパー11内に障害物がない状態でのみ走行を許容し、仮想バンパー11内に障害物が検出された場合は走行を停止するという走行制御ルールに従った走行を行う。このため、自動走行ロボット10が障害物30と接触していない場合でも、自動走行ロボット10が走行不可能になるという問題が発生する。
本開示の情報処理装置は、例えば、このような問題を解決するものである。
【0034】
[2.本開示の情報処理装置の実行する処理の概要について]
次に、本開示の情報処理装置の実行する処理の概要について説明する。
【0035】
図3に本開示の情報処理装置を搭載した自動走行ロボット100を示す。本開示の情報処理装置を搭載した自動走行ロボット100も仮想バンパーを設定し、仮想バンパーと障害物30との接触を回避した走行制御を実行する。
【0036】
ただし、本開示の自動走行ロボット100が設定する仮想バンパーは、バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更可能としたフレキシブル仮想バンパー111である。
【0037】
フレキシブル仮想バンパー111は、サイズ、または形状の少なくともいずれかを自由に変更できる仮想バンパーである。
図3に示す例は、先に図2を参照して説明した従来の固定サイズの仮想バンパーを適用した場合に、自動走行ロボットが走行不可能に陥る場合の例と同様の状態である。すなわち、仮想バンパー内に障害物30が侵入してしまった状態態である。
【0038】
本開示の自動走行ロボット100に内蔵された情報処理装置は、例えば、このような場合、フレキシブル仮想バンパー111のサイズまたは形状の変更を行う。具体的には、フレキシブル仮想バンパー111内に障害物30が含まれないようにバンパーのサイズまたは形状の変更を行う。
【0039】
なお、フレキシブル仮想バンパー111の形状はさまざまな形状とすることが可能である。図3では、一例として矩形形状のバンパーを利用し、サイズのみを変更し、形状は矩形形状に維持する場合の例について説明している。
【0040】
図3に示す例は、フレキシブル仮想バンパー111のサイズを縮小した例である。このバンパーサイズ縮小処理により、フレキシブル仮想バンパー111内に障害物30が含まれないようにすることができる。
この結果、自動走行ロボット100に内蔵された情報処理装置は、自動走行ロボット100の走行を再開することができる。
【0041】
すなわち、仮想バンパー内に障害物がない状態でのみ走行を許容し、仮想バンパー内に障害物が検出された場合は走行を停止するという基本的な走行制御ルールに従って、走行を再開することが可能となる。
【0042】
ただし、フレキシブル仮想バンパー111の最小縮小サイズは、自動走行ロボット100より大きいサイズとする。
すなわち、自動走行ロボット100に内蔵された情報処理装置は、フレキシブル仮想バンパー111の形状やサイズを、自動走行ロボット100自体の形状やサイズより大きい範囲で様々に変更する制御を行うことができる。
【0043】
図4は、フレキシブル仮想バンパー111のサイズを自動走行ロボット100の走行に併せて徐々に変更するパンパーサイズ変更制御例を示した図である。
【0044】
図4に示す自動走行ロボット100は、障害物30の左側を通過し、その後、左方向に旋回して進むものとする。
自動走行ロボット100が障害物30の左側を通過する地点では、自動走行ロボット100と障害物30との離間距離は非常に小さい。自動走行ロボット100に内蔵された情報処理装置は、障害物30の左側を通過する区間において、フレキシブル仮想バンパー111のサイズを最小サイズに設定する。このサイズ縮小処理により、フレキシブルバンパー111内部に障害物30を侵入させることなく、障害物30の左側を通過することが可能となる。
【0045】
その後、障害物30の左側を通過後、自動走行ロボット100は左方向に旋回して進む。自動走行ロボット100の情報処理装置は、自動走行ロボット100が障害物30の左側を通過後、左方向に旋回して進むにつれて、フレキシブル仮想バンパー111のサイズを徐々に大きくして、規定の通常サイズ(規定通常サイズ)に戻す処理を行う。
【0046】
本開示の自動走行ロボット100の情報処理装置は、このようにフレキシブル仮想パンパー111の変形処理を行う。すなわち通常時は、フレキシブル仮想パンパー111を予め規定された規定の通常サイズと形状に維持し、障害物がフレキシブル仮想パンパー111内に侵入する可能性がある場合や、侵入してしまった場合に、フレキシブル仮想パンパー111のサイズや形状を変更して、障害物がフレキシブル仮想パンパー111内に侵入しないように制御する。
ただし、フレキシブル仮想バンパー111の形状やサイズの変更許容範囲は、自動走行ロボット100自体の形状やサイズより大きい範囲とする。
【0047】
次に、図5を参照して、本開示の自動走行ロボット100の情報処理装置が実行する走行ルート選択処理の一例について説明する。
【0048】
図5左に示すように、自動走行ロボット100は現在位置から前方に向けて走行する。
自動走行ロボット100の前方右側には障害物30が存在する。自動走行ロボット100はこの障害物30に接触しないルートを図に示す複数の走行ルート候補20の中から選択する処理を行う。
【0049】
なお、障害物30の位置については、自動走行ロボット100に装着されたカメラ等のセンサによって検出することが可能である。あるいは自動走行ロボット100内の記憶部に格納された地図データ、あるいは外部サーバ等から取得した地図データを用いて障害物検知を行ってもよい。
【0050】
自動走行ロボット100は、図に示す複数の走行ルート候補20の中から1つの最適なルートを走行ルートとして選択する際、各ルートを走行する際に必要となるバンパーサイズ(または形状)の変化推移データを生成する。
具体的には、図5の右側に示すグラフのようなデータである。
【0051】
図5右側のグラフは、横軸が自動走行ロボット100の移動距離、縦軸が各ルートを走行する際に、障害物30をフレキシブル仮想バンパー111内に侵入させないために必要となるフレキシブル仮想バンパー111のバンパーサイズを示したグラフである。
【0052】
縦軸には、規定通常サイズと、許容最小サイズを示している。規定通常サイズは、障害物が近くに存在しない場合等の通常走行時の規定のバンパーサイズである。許容最小サイズは、フレキシブル仮想バンパー111に許容される最小サイズであり、例えば自動走行ロボットの外周に接触しない最小の矩形形状に相当するサイズである。
【0053】
なお、前述したように、フレキシブル仮想バンパー111の形状はさまざまな形状とすることが可能である。本例では一例としてサイズのみを変更し、形状は矩形形状に維持する場合の例について説明する。
図5のグラフには、図5左に示す多数の走行ルート候補20から選択された3つのルート(ルート1~3)に関するバンパーサイズの変化推移を示している。
【0054】
ルート1は、障害物30から遠ざかるように左に旋回するルートである。
ルート2は、障害物30にやや近づいていくように右側にゆるく旋回するルートである。
ルート3は、障害物30に近づくように右側に大きく旋回するルートである。
【0055】
これら各ルートのバンパーサイズの変化推移は、グラフから理解されるように以下の設定となる。なお、いずれのルートの場合も、初期サイズ(現在位置のサイズ)はサイズAとする。
【0056】
ルート1は、フレキシブル仮想バンパー111サイズを初期サイズAから、次第に大きくする設定であり、フレキシブル仮想バンパー111内に障害物30が侵入することなく、初期サイズAから規定通常サイズまでサイズを単調的に拡大する設定となる。
【0057】
ルート2は、フレキシブル仮想バンパー111サイズを初期サイズAから、次第に小さくし、許容最小サイズに設定して障害物30の左側を通過後、次第にバンパーサイズを大きくする設定であり、フレキシブル仮想バンパー111内に障害物30が侵入することはない。しかし、許容最小サイズまでバンパーサイズを縮小することが必要となる。
【0058】
ルート3は、フレキシブル仮想バンパー111サイズを初期サイズAから、次第に小さくし、許容最小サイズ以下まで小さくし、その後、次第にバンパーサイズを大きくする設定である。
【0059】
これら各ルート中、ルート3は、フレキシブル仮想バンパー111の最小許容サイズ以下までバンパーを小さくすることが要請されるルートとなる。これは、最小許容サイズのフレキシブル仮想バンパー111内に障害物30が侵入することを意味する。
最小許容サイズのフレキシブル仮想バンパー111は、ほぼ、自動走行ロボット100自体のサイズに相当し、ルート3は、自動走行ロボット100が障害物30に接触または衝突する可能性がある。
従って、自動走行ロボット100の情報処理装置は、このルート3を選択候補から棄却する。
【0060】
自動走行ロボット100の情報処理装置は、ルート1またはルート2から、最終的な走行ルートを選択する。
【0061】
先に説明したように、ルート2は、フレキシブル仮想バンパー111サイズを初期サイズAから、次第に小さくし、許容最小サイズに設定して障害物30の左側を通過後、次第にバンパーサイズを大きくする設定であり、フレキシブル仮想バンパー111内に障害物30が侵入することはない。しかし、許容最小サイズまでバンパーサイズを縮小することが必要となる。
【0062】
これに対して、ルート1は、フレキシブル仮想バンパー111サイズを初期サイズAから、次第に大きくする設定であり、フレキシブル仮想バンパー111内に障害物30が侵入することなく、初期サイズAから規定通常サイズまでサイズを単調的に拡大する設定となる。
【0063】
このように、ルート1は、ルート2に比較して、より規定通常サイズに近いバンパーサイズで走行することが可能となる。
この結果に基づいて、自動走行ロボット100の情報処理装置は、ルート1を最終的な走行ルートとして決定する。
【0064】
なお、どのルートを最終走行ルートとして選択するかについては、例えば安全を優先するか、走行距離や時間の短さを優先するか等、何を優先するかによって異なることになる。この優先度設定については予め規定しておくことかが好ましい。自動走行ロボット100の情報処理装置は、規定された優先度に従ってルート選択処理を行う。
【0065】
図6に走行ルート選択処理のもう一つの具体例を示す。
図5を参照して説明したルート選択例は、より規定通常サイズに近いバンパーサイズで走行することが可能なルート1を選択した例である。ルート1は、バンパーサイズを初期サイズのサイズAから単調膨張させて規定通常サイズに復帰させることが可能なルートであった。
【0066】
障害物の近辺を通過する場合、障害物から離れるに従って縮小したバンパーサイズを徐々に大きくして規定通常サイズに戻すことが好ましい。しかし、図6に示すように自動走行ロボット30が障害物30の通過途中で方向を変更する旋回処理を行う場合、フレキシブル仮想バンパー111のサイズは、障害物30の側面に沿って走行する際のサイズより小さくすることが必要となる場合がある。
【0067】
本例では、フレキシブル仮想バンパー111の形状が矩形形状であり、矩形形状のバンパーを旋回すると、フレキシブル仮想バンパー111の頂点が障害物30の内部に入りこんでしまうためである。
【0068】
このような事態を防止するため、図6の右側のグラフに示すように、自動走行ロボット100の情報処理装置は、ルート1の走行途中、自動走行ロボット30が障害物30の通過途中で方向を変更する旋回処理を行う場合、フレキシブル仮想バンパー111のサイズを、障害物30の側面に沿って走行する際のサイズより小さくする制御を行う。
【0069】
次に、図7以下を参照して、様々な装置におけるフレキシブル仮想バンパーの設定例について説明する。
【0070】
図7は、荷物搭載車両に対するフレキシブル仮想バンパーの設定例を示している。
荷物搭載車両に内蔵された情報処理装置は、荷物搭載車両に荷物が搭載されていないか搭載されているかを検出し、それぞれの状態に応じて異なるサイズや形状のフレキシブル仮想バンパーを設定する。
【0071】
図7(1)は、荷物搭載車両に荷物が搭載されていない状態のフレキシブル仮想バンパー111aの設定例である。
この場合、荷物搭載車両に内蔵された情報処理装置は、荷物搭載車両の外周を一回り大きくしたサイズと形状を持つフレキシブル仮想バンパー111aを設定する。
【0072】
ー一方、図7(2)は、荷物搭載車両に荷物が搭載されている状態のフレキシブル仮想バンパー111bの設定例である。
この場合、荷物搭載車両に内蔵された情報処理装置は、荷物搭載車両のみならず搭載した荷物も含む構成の外周を一回り大きくしたサイズと形状を持つフレキシブル仮想バンパー111bを設定する。
この場合、フレキシブル仮想バンパー111bは荷物の大きさによって変更される。
【0073】
図8(3)は、自動走行ロボット100に内蔵されたバッテリに対する充電を行う充電ステーションに近づいて充電を行う場合の処理例を示している。
【0074】
図8(3)に示すように、自動走行ロボット100が内蔵バッテリに充電を行う場合、充電ステーションに接触しなければならない。しかし、自動走行ロボット100の外周より大きなフレキシブル仮想バンパー111が設定されると、自動走行ロボット100は、充電ステーションに接触することができず、バッテリに対する充電ができなくなる。
【0075】
このような問題を避けるため、自動走行ロボット100内の情報処理装置は、予め規定された装置、例えば充電ステーション等に近づく際は、フレキシブル仮想バンパー111の形状やサイズを変更し、自動走行ロボット100が充電ステーション等の規定装置に接触することを許容する。
すなわち、図8に示すように、自動走行ロボット100の充電用接点120の形成位置が、充電ステーションの給電用接点に接触可能なように、フレキシブル仮想バンパー111を自動走行ロボット100の充電用接点120の形成位置の面位置に設定されるように変形する。
【0076】
このようなパンパー変形処理により、自動走行ロボット100は、充電ステーションの給電用接点に充電用接点120を接触させて充電を行うことが可能となる。
【0077】
図9(4),(5)は、歩行型ロボットに対するフレキシブル仮想バンパーの設定例と、把持動作を行う手形状ロボットに対するフレキシブル仮想バンパーの設定例を示す図である。
【0078】
図9(4)は、歩行型ロボットに対するフレキシブル仮想バンパー111の設定例である。歩行ロボットの場合、歩行中の手足が包含されるようフレキシブル仮想バンパー111の形状を設定する。ただし、足の下面は、フレキシブル仮想バンパー111が接するように設定する。
このような形状のフレキシブル仮想バンパー111を設定することで、手足が障害物と接触することを避け、狭い場所を歩行可能となる。
【0079】
図9(5)は、把持動作を行う手形状ロボットに対するフレキシブル仮想バンパー111の設定例を示す図である。
手形状ロボットの場合、手で把持動作を行う際、指先による物の把持や接触を許すようにバンパー形状を設定する。図に示すように腕の部分のみを囲むようなバンパー形状とし手や指の部分にはバンパーを形成しない。
このような形状の仮想バンパーを設定することで腕が障害物と接触するのを避け、
指先での把持が可能となる。
【0080】
図10(6)は、自動走行ロボット100が、ガードレール131に沿って走行する走行路上に歩行者130が近づく場合のフレキシブル仮想バンパー111の変形例を示す図である。
【0081】
このように、自動走行ロボット100の情報処理装置は、回避優先度の高い障害物である歩行者130を検出した場合、歩行者130から離れ、回避優先度の低い障害物であるガードレール131に、より近づくことが可能となるようにフレキシブル仮想バンパー111の形状を変形する。
すなわち、回避優先度の高い障害物側に大きいクリアランスを有する形状のフレキシブル仮想バンパーを設定する。
【0082】
図に示すように、地点aでは、自動走行ロボット100の左右に均等距離、離れたフレキシブル仮想バンパー111aが設定されているが、地点bでは、歩行者130が近づいていることを検知し、フレキシブル仮想バンパー111bの矩形枠を自動走行ロボット100の左側のカードレール側でロボット側面に近づける設定とする変形処理を行う。
【0083】
この変形処理により、自動走行ロボット100はガードレール131側にぎりぎりまで近づくことが可能となり、回避優先度の高い障害物である歩行者130との衝突や接触の発生可能性を低減することが可能となる。
【0084】
[3.本開示の情報処理装置の構成例について]
次に本開示の情報処理装置の構成例について説明する。
図11は、本開示の情報処理装置200の一構成例を示すブロック図である。
情報処理装置200は、例えば図3等に示す自動走行ロボット100内部に構成される。また、図7に示す荷物搭載車両や、図9に示すロボットの制御装置として構成される。
【0085】
図11に示すように、情報処理装置200は、制御部(データ処理部)201、入力部202、出力部203、センサ群204、駆動部205、通信部206、記憶部207を有する。
【0086】
制御部(データ処理部)201は、情報処理装置200において実行する処理の制御を行う。例えば記憶部207に格納されている制御プログラムに従った処理を実行する。制御部201はプログラム実行機能を有するプロセッサを有するデータ処理部である。
【0087】
制御部(データ処理部)201は、例えば走行ルート候補からの走行ルートの選択処理や、フレキシブル仮想バンパーの設定、サイズや形状の変更制御等を実行する。
具体的には、自動走行ロボット等の移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御として、フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御処理等を実行する。
【0088】
さらに、制御部(データ処理部)201は、複数の走行ルート候補の各々について、フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように、フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更するシミュレーションを実行して、安全な走行ルートを選択する処理を実行する。
これらの処理は、記憶部207に格納されたプログラムに従って実行可能である。
【0089】
入力部202は、ユーザにより、様々なデータ入力が可能なインタフェースであり、タッチパネルや各種スイッチ等によって構成される。
出力部203はアラートや音声を出力するスピーカ、画像出力するディスプレイ、さらにライト等を出力する出力部である。
【0090】
センサ群204はカメラ、マイク、レーダ、距離センサ等の様々なセンサによって構成される。
駆動部205はロボットや車両の駆動、移動処理等の制御を実行する。例えば車輪駆動部や方向制御機構等によって構成される。
具体的には、例えば、制御部(データ処理部)201によって決定されたフレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように自動走行ロボット等の移動体を駆動する。
【0091】
通信部206は、例えばコントローラや、ロボット管理サーバ、地図情報提供サーバ、ビル管理サーバ等の外部装置等との通信処理を実行する。
記憶部207は、制御部201において実行するプログラムの他、例えばロボット情報や、輸送機器情報を格納する。
【0092】
なお、制御部(データ処理部)201は、制御対象に応じた制御を行う。例えば、図3等に示す自動走行ロボット100を制御する場合、また、図7に示す荷物搭載車両や、図9に示すロボットを制御する場合に応じてそれぞれ異なる処理を行う。
【0093】
一例として、図3等に示す自動走行ロボット100を制御する場合の制御部(データ処理部)201の制御構成について、図12を参照して説明する。
【0094】
図12には、図3等に示す自動走行ロボット100を制御する場合の制御部(データ処理部)201の制御構成を各制御処理単位のブロックで示したブロック図である。
車速検出部221は、駆動部205からの駆動情報に基づいて車速を検出し、走行ルート候補生成部222に入力する。
【0095】
走行ルート候補生成部222は、走行ルート候補を生成する。例えば現在位置から目的地まで到達するために走行可能な複数のルートを生成する。
具体的には、例えば図3図6に示すような複数の走行ルート候補20を生成、または入力する。
なお、この走行ルート候補の生成に際しては、現在の車速を考慮した生成処理を行う。
【0096】
なお、走行ルート候補は、例えば予め取得した地図データに基づいて情報処理装置自身が生成してもよいし、外部のコントローラやサーバ等から取得する構成としてもよい。
【0097】
走行ルート候補生成部222が生成した走行ルート候補はフレキシブル仮想バンパー生成部224に入力される。
【0098】
フレキシブル仮想バンパー生成部224は、図3等に示す自動走行ロボット100の周囲に設定するフレキシブル仮想バンパーを生成する。
フレキシブル仮想バンパー生成部224は、走行ルート候補生成部222が生成した走行ルート候補の各々に対して、障害物を避けた安全な走行が可能か否かを判定し、安全走行が可能なルートを最終走行ルートとして決定する処理を行う。
【0099】
このルート決定処理に際しては、障害物位置解析部223の解析した障害物の位置を用いる。障害物位置は、例えばセンサ群204の取得情報や、予め取得した地図データに基づいて生成してもよいし、外部のコントローラやサーバ等から取得する構成としてもよい。
【0100】
フレキシブル仮想バンパー生成部224は、走行ルート候補の各々に対して、フレキシブル仮想バンパーのサイズや形状を変更により障害物を避けた安全な走行が可能か否かを判定する処理を行う。
この処理の具体例については、後述するフローチャートの処理の説明において図面を参照して説明する。
【0101】
フレキシブル仮想バンパー生成部224は走行ルート候補の各々の解析結果としての評価値を走行ルート決定部225に出力する。
走行ルート決定部225は、フレキシブル仮想バンパー生成部224の生成した走行ルート候補各々の評価結果に基づいて最終的な1つの走行ルートを決定する。
【0102】
なお、この最終走行ルート決定処理は、例えば完全優先、走行時間優先、走行距離優先等、予め決定された優先度に従って実行される。
【0103】
[4.本開示の情報処理装置の実行する処理のシーケンスについて]
次に本開示の情報処理装置の実行する処理のシーケンスについて説明する。
【0104】
図13に本開示の情報処理装置が実行する処理シーケンスを説明するフローチャートを示す。
図13に示すフローに従った処理を実行する情報処理装置は、図11に示す構成を有し、例えば図3等に示す自動走行ロボット100内部に構成される。
【0105】
なお、図13に示すフローチャートに従った処理は、情報処理装置の制御部(データ処理部)が、記憶部に格納されたプログラムに従って実行することが可能である。例えばプログラム実行機能を有するCPU等のプロセッサによるプログラム実行処理として行うことができる。
以下、図13に示すフローの各ステップの処理について説明する。
【0106】
(ステップS101)
まず、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS101において、走行ルート候補を生成、または入力する。
例えば現在位置から目的地まで到達するために走行可能な複数のルートを生成、または入力する。
【0107】
具体的には、例えば図3図6に示すような複数の走行ルート候補20を生成、または入力する。
なお、前述したように、この走行ルート候補の生成に際しては、現在の車速を考慮した生成処理を行う。ただし、車速=0の場合は自由に設定可能である。
走行ルート候補は、例えば予め取得した地図データに基づいて情報処理装置自身が生成してもよいし、外部のコントローラやサーバ等から取得する構成としてもよい。
【0108】
(ステップS102)
次に、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS102において、障害物情報を生成、または入力する。
【0109】
障害物情報は、例えば例えばセンサ群204の取得情報や、予め取得した地図データに基づいて情報処理装置自身が生成してもよいし、外部のコントローラやサーバ等から取得する構成としてもよい。
【0110】
(ステップS103)
次に、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS103において、フレキシブル仮想バンパーのサイズと形状を初期値に設定する。
初期値は、例えば近接障害物がない場合に設定されるフレキシブル仮想バンパーのサイズと形状を持ち、規定通常サイズと規定通常形状によって構成される初期値である。
【0111】
(ステップS104)
次に、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS104において、ステップS101で生成または入力した複数の走行ルート候補から、処理対象とする1つの走行ルート候補を選択する。
以下のステップS105~S120の処理は、各走行ルート単位で繰り返し実行する。
【0112】
(ステップS105)
次に、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS105において、ステップS104で選択した処理対象とする1つの走行ルート候補のルート上に複数の解析点を設定する。
【0113】
図14を参照してこの処理について説明する。
まず、自動走行ロボット100の周囲に初期値を持つフレキシブル仮想バンパー250が設定される。この処理はステップS103の処理である。
【0114】
ステップS105では、ステップS104で選択した処理対象とする1つの走行ルート候補、例えば図14に示す処理対象走行ルート候補260のルート上に複数の解析点261を設定する。
以下のステップS106~S112の処理は、各解析点単位で繰り返し実行する。
【0115】
(ステップS106)
次に、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS106において、処理対象走行ルート候補から1つの解析点を処理対象解析点として選択する。
【0116】
(ステップS107~S108)
次に、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS107において、処理対象走行ルート候補から選択した1つの解析点について、フレキシブル仮想バンパー内への障害物の侵入可能性を解析する。
【0117】
さらに、ステップS108においてフレキシブル仮想バンパー内へ障害物が侵入すると判定した場合は、ステップS109に進む。
一方、ステップS108においてフレキシブル仮想バンパー内へ障害物が侵入しないと判定した場合は、ステップS112に進む。
【0118】
具体例について図15(a)を参照して説明する。
図15(a)には、1つの解析点261の位置に自動走行ロボット100が進んだと仮定した図である。情報処理装置の制御部(データ処理部)は、このように1つの解析点261の位置に自動走行ロボット100が進んだと仮定した推定データを生成してステップS107~S108の処理を実行する。
【0119】
図15(a)に示す例では、フレキシブル仮想バンパー250内へ障害物が侵入すると判定される。この場合、ステップS108の判定がYesとなり、ステップS109に進む。
【0120】
(ステップS109)
ステップS108においてフレキシブル仮想バンパー内へ障害物が侵入すると判定した場合は、ステップS109に進む。
【0121】
ステップS109において、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、フレキシブル仮想バンパー内に障害物を侵入させないように、フレキシブル仮想バンパーのサイズや形状の変更を行う。
【0122】
具体例について図15(a),(b)を参照して説明する。先に説明したように図15(a)は、フレキシブル仮想バンパー250内へ障害物が侵入すると判定される例である。
このような場合、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS109において、図15(b)に示すように、フレキシブル仮想バンパーのサイズや形状の変更を行い、フレキシブル仮想バンパー271内に障害物を侵入させないようにする。
【0123】
(ステップS110)
次に、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS110において、フレキシブル仮想バンパーのバンパーサイズが、許容最小サイズ以上に維持されているか否かを判定する。
【0124】
前述したように、許容最小サイズは、フレキシブル仮想バンパーに許容される最小サイズであり、例えば自動走行ロボットの外周に接触しない最小の矩形形状に相当するサイズである。
【0125】
ステップS110において、フレキシブル仮想バンパーのバンパーサイズが、許容最小サイズ以上に維持されていると判定した場合はステップS112に進む。
一方、フレキシブル仮想バンパーのバンパーサイズが、許容最小サイズ以上でないと判定した場合はステップS111に進む。
【0126】
(ステップS111)
ステップS110において、フレキシブル仮想バンパーのバンパーサイズが、許容最小サイズ以上でないと判定した場合はステップS111に進む。
この場合、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、現在、処理対象としている解析点を含む走行ルート候補を棄却する。すなわち、再私有的な走行ルートから除外するルート棄却処理を実行する。
【0127】
この処理の具体例について図16を参照して説明する。
図16(a)は、先に図15(a)を参照して説明したと同様の図であり、フレキシブル仮想バンパー250内へ障害物が侵入すると判定される例である。
このような場合、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS109において、図16(b)に示すように、フレキシブル仮想バンパーのサイズや形状の変更を行い、フレキシブル仮想バンパー272内に障害物を侵入させないようにする。
【0128】
しかし、図16(b)に示す縮小後のフレキシブル仮想バンパー272は、自動走行ロボット100のサイズより小さいサイズとなっている。すなわち、縮小後のフレキシブル仮想バンパー272のサイズが許容最小サイズ以上でない。この場合、ステップS110の判定がNoとなり、ステップS111においてこの解析点を含む走行ルート候補が棄却されることになる。
ステップS111においてこの解析点を含む走行ルート候補の棄却処理を行った後、ステップS113に進む。
【0129】
(ステップS112)
一方、ステップS110において、フレキシブル仮想バンパーのバンパーサイズが、許容最小サイズ以上であると判定した場合はステップS112に進む。
ステップS112では、処理対象としている走行ルート候補上のすべての解析点についての解析処理が完了したか否かを判定する。
【0130】
未処理の解析点が残存する場合は、ステップS106に戻り、未処理解析点についてステップS106以下の処理を実行する。
一方、ステップS112において、すべての解析点の処理が完了したと判定した場合は、ステップS113に進む。
【0131】
(ステップS113)
ステップS111の走行ルート声補の棄却処理、またはステップS112の走行ルート候補の全解析点の解析処理が完了するとステップS113に進む。
【0132】
情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS113において、処理対象走行ルート候補の解析情報、例えば、バンパーサイズ情報や形状情報等を「走行ルート候補解析リスト」に記録する。
【0133】
図17を参照して、「走行ルート候補解析リスト」の具体例について説明する。
図17は、情報処理装置の制御部(データ処理部)が生成する「走行ルート候補解析リスト」の一例を示す図である。
【0134】
図17に示すように、「走行ルート候補解析リスト」は以下の各データが対応付けた記録されたリストである。
(a)走行ルート候補
(b)バンパーサイズ距離対応推移データ
(c)バンパーサイズ平均値(サイズ比率(初期値=1.0))
(d)バンパーサイズ最小値(サイズ比率(初期値=1.0))
(e)有効or棄却(最小値≧許容最小サイズなら有効)
(f)バンパー形状
(g)ルート走行距離(m)
【0135】
(a)走行ルート候補は、各走行ルート候補の識別子である。
(b)バンパーサイズ距離対応推移データは、先に図5図6を参照して説明したと同様の走行ルート候補上の移動距離に対応するフレキシブル仮想バンパーのバンパーサイズの変化を示す推移データである。
【0136】
(c)バンパーサイズ平均値(サイズ比率(初期値=1.0))は、各走行ルート候補において設定されるフレキシブル仮想バンパーのサイズの平均値である。なお、フレキシブル仮想バンパーのバンパーサイズの初期値を1.0として、バンパーサイズ平均値には、初期値(1.0)に対する比率が記録される。
【0137】
(d)バンパーサイズ最小値(サイズ比率(初期値=1.0))は、各走行ルート候補において設定されるフレキシブル仮想バンパーのサイズの最小値である。なお、この最小値も、フレキシブル仮想バンパーのバンパーサイズの初期値を1.0として、初期値(1.0)に対する比率が記録される。
【0138】
(e)有効or棄却(最小値≧許容最小サイズなら有効)には、各走行ルート候補が有効であるか棄却されたルートであるかが記録される。
最小値≧許容最小サイズなら「有効」と記録され、最小値<許容最小サイズなら「棄却」と記録される。
なお、図に示す例では、許容最小サイズを0.6(初期値=1/0に対する比率)としている。
【0139】
(f)バンパー形状にはバンパーの形状が記録される。なお、時間推移に伴い形状が変化する場合は時間推移に伴う形状変化データが記録される。
(g)ルート走行距離(m)には、各走行ルート候補の距離が記録される。
【0140】
情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS113において、処理対象走行ルート候補の解析情報を、例えば図17に示すようなデータ構成を持つ「走行ルート候補解析リスト」に記録する。
【0141】
(ステップS114)
最後に情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS114において、全ての走行ルート候補に対する解析処理が終了したか否かを判定する。
【0142】
全ての走行ルート候補に対する解析処理が終了していないと判定した場合は、ステップS104に戻り、未処理の走行ルメート候補について、ステップS104以下の処理を実行する。
一方、全ての走行ルート候補に対する解析処理が終了したと判定した場合は、ステップS201に進む。
【0143】
図13に示すフローチャートを参照して説明したように、本開示の情報処理装置の制御部(データ処理部)は、複数の走行ルート候補の各々について、フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように、フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更するシミュレーションを実行し、このシミュレーション結果を記録した走行ルート候補解析リストを生成する。
【0144】
次に、ステップS114において、全ての走行ルート候補に対する解析処理が終了したと判定した後の処理、すなわちシミュレーション結果を記録した「走行ルート候補解析リスト」が完成した後のステップS201以下の処理について図18に示すフローチャートを参照して説明する。
【0145】
(ステップS201)
ステップS114において、全ての走行ルート候補に対する解析処理が終了し、全ての走行ルート候補に対する解析結果が「走行ルート候補解析リスト」に記録された後、ステップS201以下の処理を実行する。
【0146】
情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS201において、「走行ルート候補解析リスト」を読み出す。
【0147】
(ステップS202)
次に、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS202において、読み出した「走行ルート候補解析リスト」に有効な走行ルート候補が存在するか否かを判定する。
【0148】
すなわち、先に図15を参照して説明した「走行ルート候補解析リスト」の項目「(e)有効or棄却(最小値≧許容最小サイズなら有効)」に「有効」と記録されたエントリがあるか否かを判定する。
【0149】
前述したように、「(e)有効or棄却(最小値≧許容最小サイズなら有効)」には、各走行ルート候補が有効であるか棄却されたルートであるかが記録される。
最小値≧許容最小サイズなら「有効」と記録され、最小値<許容最小サイズなら「棄却」と記録される。
【0150】
読み出した「走行ルート候補解析リスト」に有効な走行ルート候補が存在すると判定した場合はステップS203に進む。
一方、読み出した「走行ルート候補解析リスト」に有効な走行ルート候補が存在しないと判定した場合はステップS211に進む。
【0151】
(ステップS203)
ステップS202の判定処理において、読み出した「走行ルート候補解析リスト」に有効な走行ルート候補が存在すると判定した場合はステップS203に進む。
【0152】
情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS203において、「走行ルート候補解析リスト」中の有効な走行ルート候補を選択し、選択した走行ルート候補に対して、予め規定した優先順位に従ってソート処理を実行する。
【0153】
例えば、ソート処理例としては以下のようなソート処理がある。
(a)平均バンパーサイズが大きい順にソート
(b)平均バンパーサイズが小さい順にソート
(c)ルート走行距離が短い順にソート
これらのソート処理が実行可能である。
【0154】
(a)平均バンパーサイズが大きい順にソートする場合は、例えば、安全を最も優先して走行ルートを決定するアルゴリズムを適用した場合の処理である。
(b)平均バンパーサイズが小さい順にソートする場合は、例えば、走行路の有効活用を最も優先して走行ルートを決定するアルゴリズムを適用した場合の処理である。
(c)ルート走行距離が短い順にソートは、例えば、目的地までの到達時間の短縮を最も優先して走行ルートを決定するアルゴリズムを適用した場合の処理である。
このように、様々な異なる優先度設定に応じて異なるソート処理を実行する。
【0155】
(ステップ204)
最後に、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS204において、ステップS203のソート処理において最上位にリストされた走行ルート候補を選択して全宅した走行ルート候補を最終的な走行ルートとして決定する。
【0156】
(ステップS211)
一方、ステップS202の判定処理において、読み出した「走行ルート候補解析リスト」に有効な走行ルート候補が存在しないと判定した場合はステップS211に進む。
【0157】
情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS211において、緊急対応走行ルート決定処理を実行する。
【0158】
これは、「走行ルート候補解析リスト」に有効な走行ルート候補が存在しない場合の処理であり、「走行ルート候補解析リスト」に記録された走行ルート候補がすべて棄却されたルートである場合の緊急対応処理である。
この場合、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS211において、緊急対応走行ルート決定処理を実行する。
【0159】
図19に具体例を示す。
「走行ルート候補解析リスト」に有効な走行ルート候補が存在しない場合とは、例えば図19(a)状態aに示すような状態である。
【0160】
図19(a)に示す走行ルート候補20はいずれの候補も障害物30に衝突してしまい、走行ルート候補20から走行可能なルートを選択することができない。すなわち、「走行ルート候補解析リスト」に登録される走行ルート候補はすべて棄却された走行ルートとなってしまう。
【0161】
このような場合、情報処理装置の制御部(データ処理部)は、ステップS211において、例えば、図19(b)に示すような緊急対応走行ルート280を決定する。
【0162】
図19(b)に示すような緊急対応走行ルート280は、障害物30を避けてUターンするルートである。
このようなルートで、自動走行ロボット100の位置を変更し、変更した後、新たな位置で走行ルート候補の生成処理を実行することになる。
【0163】
[5.情報処理装置のハードウェア構成例について]
次に、図20を参照して、情報処理装置のハードウェア構成例について説明する。
図20に示すハードウェア構成は、情報処理装置として適用可能なハードウェア構成の一例を示すものである。
【0164】
CPU(Central Processing Unit)301は、ROM(Read Only Memory)302、または記憶部308に記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行するデータ処理部として機能する。例えば、上述した実施例において説明したシーケンスに従った処理を実行する。RAM(Random Access Memory)303には、CPU301が実行するプログラムやデータなどが記憶される。これらのCPU301、ROM302、およびRAM303は、バス304により相互に接続されている。
【0165】
CPU301はバス304を介して入出力インタフェース305に接続され、入出力インタフェース305には、各種スイッチ、キーボード、タッチパネル、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部306、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部307が接続されている。
【0166】
入出力インタフェース305に接続されている記憶部308は、例えばハードディスク等からなり、CPU301が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。通信部309は、インターネットやローカルエリアネットワークなどのネットワークを介したデータ通信の送受信部として機能し、外部の装置と通信する。
【0167】
入出力インタフェース305に接続されているドライブ310は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいはメモリカード等の半導体メモリなどのリムーバブルメディア311を駆動し、データの記録あるいは読み取りを実行する。
【0168】
[6.本開示の構成のまとめ]
以上、特定の実施例を参照しながら、本開示の実施例について詳解してきた。しかしながら、本開示の要旨を逸脱しない範囲で当業者が実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、限定的に解釈されるべきではない。本開示の要旨を判断するためには、特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0169】
なお、本明細書において開示した技術は、以下のような構成をとることができる。
(1) 移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行するデータ処理部と、
前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記移動体を駆動する駆動部を有し、
前記データ処理部は、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行する情報処理装置。
【0170】
(2) 前記データ処理部は、
前記移動体のサイズに相当するサイズを許容最小サイズとして、前記フレキシブル仮想バンパーのサイズを、前記許容最小サイズ以下にならない範囲で制御する(1)に記載の情報処理装置。
【0171】
(3) 前記データ処理部は、
前記移動体の複数の走行ルート候補を解析して、障害物に接触しない安全な走行ルートを選択する処理を実行する構成であり、
前記複数の走行ルート候補の各々について、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更するシミュレーションを実行して、安全な走行ルートを選択する(1)または(2)に記載の情報処理装置。
【0172】
(4) 前記データ処理部は、
前記走行ルート候補のルート上に設定した複数の解析点の各々について、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更するシミュレーションを実行して、安全な走行ルートを選択する(3)に記載の情報処理装置。
【0173】
(5) 前記データ処理部は、
前記シミュレーション結果を記録した走行ルート候補解析リストを生成する(3)または(4)に記載の情報処理装置。
【0174】
(6) 前記データ処理部は、
前記シミュレーション結果を記録した走行ルート候補解析リストに、各走行ルート候補を走行した場合のバンパーサイズの制御結果であるバンパーサイズ推移データを記録する(3)~(5)いずれかに記載の情報処理装置。
【0175】
(7) 前記データ処理部は、
前記シミュレーション結果として、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の変更により、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しない設定が可能な走行ルート候補を有効走行ルート候補とし、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の変更により、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しない設定が不可能な走行ルート候補を棄却走行ルート候補とする有効棄却判別処理を実行し、
前記有効棄却判別処理の結果を、前記シミュレーション結果を記録した走行ルート候補解析リストに記録する(3)~(6)いずれかに記載の情報処理装置。
【0176】
(8) 前記データ処理部は、
前記シミュレーション結果を記録した走行ルート候補解析リストから、有効走行ルート候補のみを選択し、選択した有効走行ルート候補から1つの走行ルートを決定する(3)~(7)いずれかに記載の情報処理装置。
【0177】
(9) 前記データ処理部は、
前記選択した有効走行ルート候補に対して、予め規定したアルゴリズムに従ったソート処理を実行し、
ソート結果に基づいて1つの走行ルートを決定する(8)に記載の情報処理装置。
【0178】
(10) 前記予め規定した優先度に従ったアルゴリズムに従ったソート処理は、
(a)平均バンパーサイズが大きい順にソートする処理、
(b)平均バンパーサイズが小さい順にソートする処理、
(c)ルート走行距離が短い順にソートする処理、
上記(a)~(c)のいずれかのソート処理である(9)に記載の情報処理装置。
【0179】
(11) 前記情報処理装置は、
障害物検出手段としてのセンサを有する(1)~(10)いずれかに記載の情報処理装置。
【0180】
(12) 前記移動体は、自動走行ロボットであり、
前記データ処理部は、
前記自動走行ロボットの周囲を囲むフレキシブル仮想バンパーを設定する(1)~(11)いずれかに記載の情報処理装置。
【0181】
(13) 前記データ処理部は、
前記自動走行ロボットの充電用接点位置に接する形状のフレキシブル仮想バンパーを設定する(12)に記載の情報処理装置。
【0182】
(14) 前記データ処理部は、
回避優先度の高い障害物側に大きいクリアランスを有する形状のフレキシブル仮想バンパーを設定する(1)~(13)いずれかに記載の情報処理装置。
【0183】
(15) 前記移動体は、荷物搭載車両であり、
前記データ処理部は、
前記荷物搭載車両に荷物が搭載されていない場合は、前記荷物搭載車両の周囲を囲むフレキシブル仮想バンパーを設定し、
前記荷物搭載車両に荷物が搭載されている場合は、前記荷物搭載車両と荷物の周囲を囲むフレキシブル仮想バンパーを設定する(1)~(11)いずれかに記載の情報処理装置。
【0184】
(16) 前記移動体は、把持動作を行う手形状ロボットであり、
前記データ処理部は、
前記手形状ロボットの指先による物の把持や接触を許すように、腕部のみを囲むフレキシブル仮想バンパーを設定する(1)~(11)いずれかに記載の情報処理装置。
【0185】
(17) 情報処理装置において実行する情報処理方法であり、
データ処理部が、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行するバンパー制御ステップと、
駆動部が、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記移動体を駆動する駆動ステップを有し、
前記バンパー制御ステップでは、
前記データ処理部が、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行する情報処理方法。
【0186】
(18) 情報処理装置において情報処理を実行させるプログラムであり、
データ処理部に、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行させるバンパー制御ステップと、
駆動部に、前記フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように前記移動体を駆動させる駆動ステップを実行させ、
前記バンパー制御ステップでは、
前記データ処理部に、
前記フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行させるプログラム。
【0187】
なお、明細書中において説明した一連の処理はハードウェア、またはソフトウェア、あるいは両者の複合構成によって実行することが可能である。ソフトウェアによる処理を実行する場合は、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれたコンピュータ内のメモリにインストールして実行させるか、あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。例えば、プログラムは記録媒体に予め記録しておくことができる。記録媒体からコンピュータにインストールする他、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介してプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることができる。
【0188】
また、明細書に記載された各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。また、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【産業上の利用可能性】
【0189】
以上、説明したように、本開示の一実施例の構成によれば、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するフレキシブル仮想バンパーの変更制御を行う装置、方法が実現される。
具体的には、例えば、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するためのフレキシブル仮想バンパーの変更制御を実行するデータ処理部と、フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないように移動体を駆動する駆動部を有する。データ処理部は、フレキシブル仮想バンパーのサイズまたは形状の少なくともいずれかを変更する制御を実行する。データ処理部は、移動体の複数の走行ルート候補各々について、フレキシブル仮想バンパー内に障害物が侵入しないようにバンパーサイズを変更するシミュレーションを実行して、安全な走行ルートを選択する。
本構成により、移動体と障害物との間隔を所定距離以上に維持するフレキシブル仮想バンパーの変更制御を行う装置、方法が実現される。
【符号の説明】
【0190】
10 自動走行ロボット
11 仮想バンパー
20 走行ルート候補
30 障害物
100 自動走行ロボット
111 フレキシブル仮想バンパー
120 充電用接点
130 歩行者
131 ガードレール
200 情報処理装置
201 制御部(データ処理部)
202 入力部
203 出力部
204 センサ群(カメラ、レーダ等)
205 駆動部
206 通信部
207 記憶部
221 車速検出部
222 走行ルート候補生成部
223 障害物位置解析部
224 フレキシブル仮想バンパー生成部
225 走行ルート決定部
250 フレキシブル仮想バンパー
260 処理対象走行ルート候補
261 解析点
271,272 フレキシフブル仮想バンパー
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 バス
305 入出力インタフェース
306 入力部
307 出力部
308 記憶部
309 通信部
310 ドライブ
311 リムーバブルメディア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20