(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 38/10 20060101AFI20240709BHJP
B32B 37/02 20060101ALI20240709BHJP
B32B 37/15 20060101ALI20240709BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20240709BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20240709BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B32B38/10
B32B37/02
B32B37/15
B05D1/28
B05D3/12 E
B05D3/00 D
(21)【出願番号】P 2021539109
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2021024926
(87)【国際公開番号】W WO2022024655
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2020129967
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 年矢
(72)【発明者】
【氏名】池田 龍太郎
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-177084(JP,A)
【文献】特開2003-292916(JP,A)
【文献】特開2016-069474(JP,A)
【文献】特開2003-113356(JP,A)
【文献】特開2004-047975(JP,A)
【文献】特開2019-056101(JP,A)
【文献】特開2020-034623(JP,A)
【文献】特開2009-220496(JP,A)
【文献】特開2013-063606(JP,A)
【文献】特開2012-051186(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187249(WO,A1)
【文献】特開2013-203799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00-7/26
C09D 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂膜と該樹脂膜との積層を目的とされた基材(基材A)との積層体を得る積層体の製造方法であって、
樹脂膜を、支持材(支持材A)上に形成する工程(工程A)と、
前記樹脂膜の前記支持材Aが設けられた側とは反対側の面に、他の支持材(支持材B)を貼り合わせて積層体を得る工程(工程B)と、
前記工程Bで得られた積層体について、前記支持材Aと前記樹脂膜との界面で剥離して、樹脂膜と支持材Bの積層体を得る工程(工程C)と、
前記工程Cで得られた積層体の前記支持材Bが設けられた側とは反対側の面に基材Aを貼り合わせて積層体を得る工程(工程D)と、
前記工程Dで得られた積層体について、前記支持材Bと前記樹脂膜との界面で剥離して、樹脂膜と基材Aとの積層体を得る工程(工程E)とを含み、
前記樹脂膜の
引っ張り弾性率をEa、前記支持材Bの
引っ張り弾性率をEbとしたときのEb/(Ea+Eb)が0.04以下である、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂膜が透明ポリイミドからなる層を1層以上有する2層以上の積層体であり、前記樹脂膜に線幅が1μm~9μmの不透明導電パターンを有する、請求項
1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記不透明導電パターンが金属と樹脂の混合物によって構成されており、かつ、前記不透明導電パターン中に占める樹脂の割合が30~80体積%である、請求項
2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項
2または請求項
3記載の積層体の製造法によって得られた積層体を部材として用いたタッチセン
サー用の部材
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルなタッチセンサーや画面表示器等に使用される積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット等の電子端末について、フレキシブルな用途が検討されており、屈曲性を高めるために、タッチセンサー機能を有する樹脂膜や、有機発光ダイオードパネル、液晶パネル、電子ペーパー等の画像表示部材を薄くすることが要求されている。その製造方法として、ガラス等の支持材上に、ポリイミドやCOP(シクロオレフィンポリマー)などの樹脂膜を形成して、その上にタッチセンサー用の電極等を形成し、ガラスと樹脂膜との界面で剥離し、その後、PETフィルム、OLEDパネル、偏光板、カラーフィルター、TFT基板、カバーガラス等の基材に貼り合わせることで、薄くて屈曲性の高い電子端末を作製する方法が知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-116859号公報
【文献】特開2018-132768号公報
【文献】特開2014-34590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、タッチセンサーや画像表示部材の更なる薄肉化への要求が高まっており、これらに使用される樹脂膜および基材について、さらに薄いものを用いる必要がある。従来技術に知られたガラス基板にポリイミドやCOP(シクロオレフィンポリマー)などの樹脂膜を形成し、これをガラス基板から剥がしてPETフィルム等に積層する方法では樹脂膜が薄くなると剥離時の応力で樹脂膜自身が裂けてしまったり、コシが無いためにハンドリングが困難になるという課題がある。
【0005】
そこで、目的とするPETフィルム等に直接にポリイミドやCOP(シクロオレフィンポリマー)などの樹脂膜を形成することが考えられる。しかし、例えば、ポリイミドフィルムは、溶媒に溶かしたポリイミドをPETフィルム上に塗布・乾燥し、必要に応じて閉環させて得るのが一般的であるが、溶媒の蒸発や閉環に伴う脱水反応により体積が収縮し、ポリイミドフィルム中に収縮応力が発生する。このポリイミドフィルムの収縮応力によって、薄いPETフィルムとともに積層体が反るという課題があった。これはポリオレフィン膜などで用いられる溶融キャストによる積層においても同様であり、溶融された樹脂が冷却・固化される時の体積収縮によって、やはり樹脂膜中に収縮応力が発生し、PETフィルムとの積層体に反りが生じるという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、収縮性の強い材料が用いられたときであっても積層体の反りを抑制させて積層体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、主として以下の構成を有する。
【0008】
本発明は、樹脂膜と該樹脂膜との積層を目的とされた基材(基材A)との積層体を得る積層体の製造方法であって、
樹脂膜を、支持材(支持材A)上に形成する工程(工程A)と、
前記樹脂膜の前記支持材Aとは反対側が設けられた側の面に、他の支持材(支持材B)を貼り合わせて積層体を得る工程(工程B)と、
前記工程Bで得られた積層体について、前記支持材Aと前記樹脂膜との界面で剥離して、樹脂膜と支持材Bの積層体を得る工程(工程C)と、
前記工程Cで得られた積層体の前記支持材Bが設けられた側とは反対側の面に基材Aを貼り合わせて積層体を得る工程(工程D)と、
前記工程Dで得られた積層体について、前記支持材Bと前記樹脂膜との界面で剥離して、樹脂膜と基材Aとの積層体を得る工程(工程E)とを含み、
前記樹脂膜の弾性率をEa、前記支持材Bの弾性率をEbとしたときのEb/(Ea+Eb)が0.04以下である、積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、収縮性の強い材料が用いられたときであっても積層体の反りを高度に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一の実施形態に係る積層体の製造方法を示す概略図である。
【
図2】第二の実施形態に係る支持材Bを引き延ばすための治具の一例を示す概略図であり、(a)は正面図、(b)はA-A’での断面図である。
【
図3】実施例13で作製したタッチセンサーにおける導電ペーストの塗布パターンを説明する図である。
【
図4】実施例13で作製したタッチセンサーをモデル的に表した図であり、(a)は上面図、(b)はA側からみた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明者らは検討の結果、収縮応力を緩和するための特別な処理を行えば、収縮性の強い材料が用いられたときであっても、積層体の反りを抑制でき、かつ、良好なハンドリング性もあわせ持った積層体の製造方法を発明するに到った。
【0012】
以下、本発明に係る積層体の製造方法を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を説明する。なお、図面は模式的なものである。また、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0013】
[第一の実施形態]
本実施形態に係る積層体の製造方法は
樹脂膜と該樹脂膜との積層を目的とされた基材(基材A)との積層体を得る積層体の製造方法であって、
樹脂膜を、支持材(支持材A)上に形成する工程(工程A)と、
前記樹脂膜の前記支持材Aが設けられた側とは反対側の面に、他の支持材(支持材B)を貼り合わせて積層体を得る工程(工程B)と、
前記工程Bで得られた積層体について、前記支持材Aと前記樹脂膜との界面で剥離して、樹脂膜と支持材Bの積層体を得る工程(工程C)と、
前記工程Cで得られた積層体の前記支持材Bが設けられた側とは反対側の面に基材Aを貼り合わせて積層体を得る工程(工程D)と、
前記工程Dで得られた積層体について、前記支持材Bと前記樹脂膜との界面で剥離して、樹脂膜と基材Aとの積層体を得る工程(工程E)とを含み、
前記樹脂膜の弾性率をEa、前記支持材Bの弾性率をEbとしたときのEb/(Ea+Eb)が0.04以下である。
【0014】
本実施形態に係る積層体の製造方法は、樹脂膜と該樹脂膜との積層を目的とされた基材(基材A)との積層体を得る積層体の製造方法である。
【0015】
樹脂膜としては、例えば、ポリイミド、COP、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PC(ポリカーボネート)、アクリル等が挙げられる。中でも、屈曲性や光学特性の観点からポリイミドが好ましい。また、黄色度(YI値)が0.0以上2.0以下、好ましく0.0以上1.5以下、である透明ポリイミドが好ましい。これらが二層以上積層されていてもよく、樹脂膜の上に電極、発光層、無機薄膜等が形成されていてもよい。
【0016】
樹脂膜の弾性率Eaは、後述するEb/(Ea+Eb)が0.04以下となればよいが、通常とりうる樹脂膜の弾性率に鑑みれば108.5Pa~109.8Paとできる。
【0017】
樹脂膜の弾性率Eaは引張り試験機を用いて、応力―歪曲線の傾きから実施例に記載の方法により求めることができる。樹脂膜が、二層以上の層が積層されたものであっても同様に求めることができる。
【0018】
樹脂膜の厚さは3~50μmが好ましい。樹脂膜の厚さが3μm以上であることで、樹脂膜の強度が向上し工程Cにおいて樹脂膜を剥離する時に樹脂膜に亀裂がはいるのを防ぐことができる。また、樹脂膜の厚さが50μm以下であることで高い屈曲性を得ることができる。
【0019】
基材Aとしては、PETフィルム、PP(ポリプロピレン)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、OLED(Organic Light Emitting Diode)パネル、偏光板、カラーフィルター、TFT(Thin Film Transistor)基板、カバーガラス等が挙げられる。
【0020】
<工程A>
本実施形態に係る積層体の製造方法は、樹脂膜を、支持材(支持材A)上に形成する工程を有する。上述したように樹脂膜は収縮しようとするが支持材Aに固定されているため収縮できず、樹脂膜には残留応力が生じ、残留応力は膜内に残存する。
【0021】
樹脂膜の形成方法としては、例えば、支持材A上にワニスを塗布し、塗布されたワニスを乾燥させ、得られた乾燥膜を露光し、露光後の膜を加熱する方法が挙げられる。
【0022】
支持材A上にワニスを塗布する際、ワニスは樹脂又は樹脂前駆体を含み、溶剤を含有してもよい。溶剤の種類にとくに限定はなく、使用する樹脂の溶解性や塗布方法に応じて、適宜選択することができ、エステル系溶剤、ケトン系、グリコールエーテル系、脂肪族系、脂環族系、芳香族系、アルコール系、水系のうち1種または2種以上混合したものを用いることができる。具体的には、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、2-ジメチルアミノエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0023】
ワニスの塗布方法としては、例えば、スピナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーターまたはバーコーターを用いた塗布などが挙げられる。
【0024】
塗布されたワニスを乾燥させる方法としては、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線等による加熱乾燥や、真空乾燥などが挙げられる。加熱乾燥は50℃から180℃の範囲で1分間から数時間行うのが好ましい。
【0025】
得られた乾燥膜に対して、露光による光硬化を実施する。露光を行う際は光源として水銀灯、LED、LD、キセノンランプ等を用いることができる。熱キュアする方法としては、オーブン、イナートオーブン、ホットプレート、赤外線などによる加熱乾燥や真空乾燥などが挙げられる。
【0026】
さらに、露光後の膜に対して加熱を行う。加熱温度は100~300℃の範囲が好ましい。
【0027】
樹脂膜が二層以上の層によって形成される場合には、同様な操作を繰り返して積層させることができる。また、本発明に用いられる樹脂膜は、樹脂製の膜を具備していれば良く、発明の効果を阻害しない範囲において樹脂製の膜上に樹脂以外の材料による構造物が設けられていてもよい。樹脂膜の上に電極、発光層、無機薄膜等を形成する場合は、スパッタ、蒸着、イオンプレーティング、スクリーン印刷、スピンコーター、スリットダイコーター、グラビア印刷、フレキソ印刷等により形成することができる。
【0028】
支持材Aとしては、ガラス、石英、アルミナ、ジルコニア、SUS、ポリイミド、アクリル等を用いることができる。後述する工程Cにおいて、支持材Aと樹脂膜とを、レーザーを用いて剥離をする場合は、光の透過性が高く、耐熱性が高いガラスが好ましい。また、支持材Aの表面に剥離層を設けてあっても構わない。剥離層を設けることで、支持材Aと樹脂膜との密着力が低下するため、工程Cにて僅かな力で剥離することができ、簡単に剥離することができる。
【0029】
<工程B>
本実施形態に係る積層体の製造方法は、樹脂膜の支持材Aが設けられた側とは反対側の面に、他の支持材(支持材B)を貼り合わせて積層体を得る工程を有する。
【0030】
支持材Bとしては、例えば、インテリマー(登録商標)テープCS2350NA4、CS2325NA4、CS2325NA3(いずれもニッタ株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
支持材Bの弾性率Ebは、後述するEb/(Ea+Eb)が0.04以下となればよいが、通常とりうる樹脂膜の弾性率に鑑みれば106.0Pa~108.5Paとできる。支持材Bの弾性率Ebが106.0Pa以上であることにより、樹脂膜を変形させることなく支持することができる。一方、支持材Bの弾性率Ebが108.5Pa以下であることにより、工程Cにおいて樹脂膜と支持材Bの積層体を得た際に、樹脂膜とともに収縮して、樹脂膜の残留応力をより低減させることができる。支持材Bの弾性率Ebは、より好ましくは106.8Pa以下である。
【0032】
支持材Bの厚さは15μm~500μmが好ましい。支持材Bの厚さが15μm以上であることにより、取り扱いが容易となる。一方、支持材Bの厚さが500μm以下であることにより、工程Cにおいて樹脂膜が支持材Bとともに収縮しやすくなり、樹脂膜の残留応力をより低減させることができる。支持材Bの厚さは、より好ましくは30μm以下である。
【0033】
本実施形態に係る積層体の製造方法は、樹脂膜の弾性率をEa、支持材Bの弾性率をEbとしたときのEb/(Ea+Eb)が0.04以下である。Eb/(Ea+Eb)が0.04より大きいと、後述する工程Cにおいて、樹脂膜と支持材Bの積層体が十分に収縮せず、樹脂膜の残留応力が大きくなる。結果として、工程Eにおいて、樹脂膜と基材Aとの積層体を形成した後に反りが発生する。
【0034】
<工程C>
本実施形態に係る積層体の製造方法は、工程Bで得られた積層体からと支持材Aと樹脂膜との界面で剥離して、樹脂膜と支持材Bの積層体を得る工程を有する。本工程において、樹脂膜は支持材Aから離れ、残留応力により支持材Bとともに収縮する。収縮が十分でない場合には樹脂膜内に応力が残る。
【0035】
剥離方法としては、機械的に剥離する方法、支持材Aの裏面より、支持材Aと樹脂膜の界面にレーザーを照射する方法などが挙げられる。
【0036】
<工程D>
本実施形態に係る積層体の製造方法は、工程Cで得られた積層体の支持材Bが設けられた側とは反対側の面に基材Aを貼り合わせて積層体を得る工程を有する。
【0037】
工程Cで得られた積層体と基材Aとは、貼り合わせ装置を用いて、それぞれの貼り合わせるべき面とは反対側の面を吸着ステージで固定し、貼り合わせる面同士を接合した後に固定を解除することで貼り合わせることができる。貼り合わせる際に、吸着ステージとしてスクリーンメッシュ等の容易に変形できる部材を用いて、ローラー又はブレード等で擦りながら貼り合わせることで泡や皺の発生を防止することができる。貼り合わせをする装置として、例えば、手動枚葉貼合機SE650n(クライムプロダクツ製)等が挙げられる。
【0038】
<工程E>
本実施形態に係る積層体の製造方法は、工程Dで得られた積層体からと前記支持材Bと前記樹脂膜との界面で剥離して、樹脂膜と基材Aとの積層体を得る工程を有する。本工程において、樹脂膜の残留応力が大きい場合には、樹脂膜と基材Aとの積層体に反りが生じるが、樹脂膜の残留応力が小さい場合には、反りを抑制することができる。
【0039】
[第二の実施形態]
本実施形態に係る積層体の製造方法は、樹脂膜と該樹脂膜との積層を目的とされた基材(基材A)との積層体を得る積層体の製造方法であって、
樹脂膜を、支持材(支持材A)上に形成する工程(工程A)と、
前記樹脂膜の前記支持材Aが設けられた側とは反対側の面に、他の支持材(支持材B)を貼り合わせて積層体を得る工程(工程B)と、
前記工程Bで得られた積層体からと前記支持材Aと前記樹脂膜との界面で剥離して、樹脂膜と支持材Bの積層体を得る工程(工程C)と、
樹脂膜と支持材Bの積層体を2000ppm以上収縮させる工程(工程F)と、
前記工程Fの後、前記工程Cで得られた積層体の前記支持材Bが設けられた側とは反対側の面に基材Aを貼り合わせて積層体を得る工程(工程D’)と、
前記工程D’で得られた積層体からと前記支持材Bと前記樹脂膜との界面で剥離して、樹脂膜と基材Aとの積層体を得る工程(工程E’)とを含む。
【0040】
本実施形態に係る積層体の製造方法は、工程Cの後、樹脂膜と支持材Bの積層体を2000ppm以上収縮させる工程(工程F)を有する。本工程により、樹脂膜の残留応力が緩和される。樹脂膜と支持材Bの積層体の収縮量が2000ppm未満であると、工程Eにおいて、樹脂膜と基材Aとの積層体を得た際に、反りが生じやすい。樹脂膜と支持材Bの積層体の収縮量はより好ましくは4000ppm以上である。
【0041】
樹脂膜と支持材Bの積層体を収縮させる方法としては、樹脂膜と支持材Bの積層体の温度を低下させる方法や、予め延ばしておいた支持材Bに支持材Aと樹脂膜との積層体を貼り合わせ、さらに支持材Aが剥離した状態とし、ついで樹脂膜が貼り合わされた支持材Bを収縮させることによって行う方法等が挙げられる。なおここで、支持材Bを伸ばすことの意義は、熱あるいは外力を印加してその表面積を拡大し、当該熱あるいは外力が除かれたときの復元によって、貼りあわされる樹脂膜の残留応力を取り除くことといえる。
【0042】
樹脂膜と支持材Bの積層体の温度を低下させる場合、支持材Bの熱膨張係数に応じて低下させる温度を調整することにより、樹脂膜と支持材Bの積層体を2000ppm以上とすることができる。支持材Bとしては、例えば、ウレタンゲル、シリコンゲル、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、マグネシウム合金AZ91等が挙げられる。また、支持材Bには別途粘着層を設けても構わない。これにより粘着性を有さない材質であっても、支持材Bとして用いることができる。
【0043】
工程Bにおいて、支持材Aと樹脂膜の温度と支持材Bの温度を一定にして貼り合わせた後、工程Fにおいて樹脂膜と支持材Bの積層体を収縮させる場合、支持材Bの熱膨張係数は、20ppm/K~230ppm/Kであることが好ましい。支持材Bの熱膨張係数を20ppm/K以上にすることにより、小さな温度変化でも熱膨張による容易に寸法変化を大きくすることがきる。一方、支持材Bの熱膨張係数を230ppm/K以下にすることにより、支持材Bの温度バラつきに伴う寸法変化のバラつきを小さくすることができる。
【0044】
冷却する際に降下させる温度は10℃以上150℃以下であることが好ましい。10℃以上とすることで熱膨張係数の小さな材質を支持材Bとして用いることができる。より好ましくは30℃以上である。また、150℃以下とすることで、支持材Bの熱劣化を抑制することができる。また、支持材Bの昇温及び降温を短時間で行うことができる。より好ましくは100℃以下である。
【0045】
予め延ばしておいた支持材Bに支持材Aと樹脂膜との積層体を貼り合わせ、さらに支持材Aが剥離された状態とし、ついで樹脂膜が貼り合わされた支持材Bを収縮させることによって、樹脂膜と支持材Bの積層体を2000ppm以上収縮させる場合において、支持材Bを予め延ばし、貼り合わせ後に収縮させる方法としては、治具を用いて支持材Bを引き延ばし、貼り合わせ後に引き延ばしを解除する方法が挙げられる。この時の引き延ばし量は0.2~1.5%が好ましい。引き延ばし量が0.2%以上であることにより、工程Eにおいて、樹脂膜と基材Aとの積層体を得た際に反りをより抑制することができる。一方、引き延ばし量が1.5%以下であることにより、工程Fにおいて、収縮時に樹脂膜に皺や亀裂が発生するのを防ぐことができる。
【0046】
支持材Bを引き延ばす治具としては例えば
図2に示すものを使用することができる。本治具は、ガイド22を固定しながらネジ21を回すことにより、クランプ23をガイド22の中心から外側に向かって動かすことができる機能を有する。ネジ21とクランプ23の間に潤滑油により湿潤させた鋼球を挟むことによりクランプ23の回転が防止される。支持材B24をクランプ23により固定することにより、支持材B24を中心から外側に向かって引き延ばすことができる。支持材B24の引き延ばしは全方位に均等にするのが好ましい。
【0047】
支持材Bとしては、ウレタンゲルシート等が挙げられる。
【0048】
<工程D’、工程E’>
工程Fを経た後の積層体について、前記工程Dおよび工程Eの項で説明したと同様の方法を適用することができる。そして、樹脂膜と基材Aとの積層体を得ることができる。
【0049】
本発明において、工程Aにおいて得た樹脂膜上に導電パターンなどの機能性をもった構成を設けることができる。導電性パターンが設けられた樹脂膜はタッチセンサー用の部材として好適に利用することができる。導電性パターンとしては、インジウムスズ酸化物(ITO)といった透明な導電パターンとすることや、樹脂に銀粒子が分散された導電ペーストを付与することで不透明な導電パターンをとすることが挙げられる。銀粒子が分散された導電ペーストは感光性を付与することで多様なパターンが形成でき、また、導電パターン自体の柔軟性や樹脂膜への接着性の点において有利である。導電パターンの線幅は1μm~9μmとすることが好ましく、より好ましくは1μm~5μmである。
【実施例】
【0050】
以下に本発明を実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0051】
<弾性率の測定>
実施例に記載する手順と同様な方法により、無アルカリガラス基板上に厚み7μmのポリイミド膜および厚み3μmの保護膜の二層の合計厚み10μmの樹脂膜を形成した後、樹脂膜に片刃カミソリを用いて長さ50.4mm×幅10.1mmの短冊状に切れ込みを入れ、これを基板から剥離することで長さ約50mm×幅約10mm×厚み約10μmの樹脂膜の試験片を得た。
【0052】
弾性率の測定は、まず、ノギスにより試験片の幅を求め、マイクロメーターにより試験片の厚みを求め、次いで、得られた短冊状試験片について、恒温槽内引張試験装置AG-5kNI(株式会社島津製作所製)を用いて、試験片の上下約10mmずつをチャックで固定することにより試験長さ30mmにして、50mm/minで引っ張り、伸び量が0~2%の範囲の応力-歪曲線の傾きから弾性率を算出した。試験は10回行い、その算術平均値を求めた。
【0053】
支持材Bについても、長さ約50mm×幅約10mmの短冊状に切り出した短冊状試験片を作製し、同様にして弾性率を測定した。
【0054】
<反りの評価>
各実施例及び比較例により得られたPETフィルムと樹脂膜の積層体をPETフィルム側が下になるようにステージに乗せて、ステージからの最大高さをノギスで測定した。下に凸の場合に反り量をプラス、上に凸の場合に反り量をマイナスとした。測定は10枚実施して算術平均値を求めた。
【0055】
<導電パターンに占める樹脂の割合測定>
導電パターンが設けられた積層体を、導電パターンの断面が潰れないように片刃カミソリを用いて切断した後、イオンミリング装置IB-9010CP(日本電子株式会社製)により断面を平滑にし、電界放出型分析走査電子顕微鏡JSM-7610F(日本電子株式会社製)を用いて断面を観察した。金属、樹脂及び空隙が識別できるコントラストを有する条件で観察し、該断面に占める金属と樹脂の面積を求め、百分率で以てその断面における体積占有率とした。1層目及び2層目の導電パターンの各20箇所、合計40箇所の平均を求めることで体積占有率を求めた。
【0056】
<タッチセンサーの評価>
導電パターンが設けられた積層体を、導電パターンが内側になるように曲率半径3mmで180度折り曲げて元に戻し、ついで導電パターンが外側になるように曲率半径3mmで180度折り曲げて元に戻す一組の操作を5万回繰り返した後に、次の導電性評価及び外観検査を実施した。
【0057】
・導電性評価
1層目及び2層目の導電パターンの各20箇所、合計40箇所の両端を抵抗計(RM3544;HIOKI製)でつないで抵抗値を測定して、平均値、最大値、最小値を求めた。抵抗計の測定上限3.5MΩ以上の場合は測定不可とし、平均値の算出からは除外した。
【0058】
・外観検査
1層目及び2層目の導電パターンに、クラック、剥がれおよび断線が生じていない場合を合格、それ以外を不合格、と判定した。
【0059】
各実施例及び比較例で用いた材料は、以下のとおりである。
[溶剤]
・ジメチルエタノールアミン(DMEA。東京化成工業株式会社製)
・N-メチルピロリドン(NMP。東京化成工業株式会社製)
・セロソルブアセテート(CA。東京化成工業株式会社製)
[エポキシ樹脂]
・jeR828(三菱ケミカル株式会社製)
[光重合開始剤]
・IRGACURE 369(チバジャパン株式会社製)
[シリカ分散液]
・DMAC-ST(日産化学製)。
【0060】
(合成例1)
窒素気流下で、300mlのセパラブルフラスコの中に、NMPを100g投入して55℃になるまで加熱攪拌した。1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを2.47g、3,3’-ジアミノジフェニルスルホンを4.31g投入してNMPに溶解させた。この溶液に、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)を9.77g、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を0.687加えて、この溶液を55℃で90分間攪拌を続けて重合反応を行った。得られた溶液にシリカ分散液DMAC-STを3g投入して、室温で60分攪拌してポリアミド酸溶液(A-1)を得た。
【0061】
(合成例2)
エチレンジアミン(以下、「EA」/メタクリル酸2-エチルヘキシル(以下、「2-EHMA」)/スチレン(以下、「St」)/アクリル酸(以下、「AA」)のアクリル系共重合体(共重合比率(質量部):20/40/20/15)に、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)を5質量部付加反応させたもの
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのDMEAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2-EHMA、20gのSt、15gのAA、0.8gの2,2’-アゾビスイソブチロニトリル及び10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライド及び10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、アクリル系共重合体(B-1)を得た。得られたアクリル系共重合体(B-1)の酸価は103mgKOH/gであった。
【0062】
(合成例3)
100mLクリーンボトルに、10.0gのアクリル系共重合体(B-1)、3.0gのライトアクリレートBP-4EA、2.0gのエポキシ樹脂jeR828、0.6gのIRGACURE 369及び60.0gのDMEAを入れ、“あわとり錬太郎”(ARE-310;株式会社シンキー社製)で混合して、75.6gのオーバーコート溶液(C-1)を得た。
【0063】
(合成例4)
100mLクリーンボトルに、アクリル系共重合体(B-1)を10.0g、2.0gのライトアクリレートBP-4EA、光重合開始剤IRGACURE369(チバジャパン株式会社製)を0.60g、CAを8.0gいれ、“あわとり錬太郎”(商品名、ARE-310、株式会社シンキー社製)で混合し、感光性樹脂溶液20.6g(全固形分61.2質量%)を得た。得られた感光性樹脂溶液10.0gと平均粒子径0.2μmのAg粒子22.0gを混ぜ合わせ、3本ローラー“EXAKT M-50”(商品名、EXAKT社製)を用いて混練し、32.0gの導電ペースト(D-1)を得た。
【0064】
(実施例1)
厚み0.7mm、150mm角の無アルカリガラス基板AN100(旭硝子株式会社製)上にポリアミド酸溶液(A-1)を全面に塗布し、熱風オーブンで90℃15分乾燥させた。その後、熱風オーブンで260℃60分間熱硬化を行い、厚み7μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜の上にオーバーコート溶液(C-1)を全面に塗布し、熱風オーブンで90℃8分間乾燥させた。露光装置PEM-6M(ユニオン光学株式会社製)を用いて露光量200mJ/cm2(波長365nm換算)で全線露光を行った後に、熱風オーブンで230℃60分間熱硬化を行い、厚み3μmの保護膜を形成することで厚み10μmの樹脂膜を得た。その後、樹脂膜の上に合計厚み50μmのインテリマーテープCS2350NA4(ニッタ株式会社製)を150mm角のサイズで貼り合わせた後、樹脂膜及びインテリマーテープをガラス基板から剥離した。その後、貼り合わせ装置SE650n(クライムプロダクツ製)を用いて、この剥離物の樹脂膜側(ガラス基板との剥離面側)に厚み50μmの自己粘着性を有するPETフィルムを貼り合わせた。さらに、インテリマーテープを剥離することで、10μmの樹脂膜に50μmのPETフィルムを貼り合わせた積層体を得た。
【0065】
(実施例2)
合計厚み50μmのインテリマーテープCS2350NA4の代わりに合計厚み25μmのインテリマーテープCS2325NA4(ニッタ株式会社製)を使用する以外は実施例1と同様に実施した。
【0066】
(実施例3)
インテリマーテープCS2350NA4の代わりにインテリマーテープCS2350NA3を使用する以外は実施例1と同様に実施した。
【0067】
(比較例1)
インテリマーテープCS2325NA4の代わりにPETを使用する以外は実施例1と同様に実施した。
【0068】
実施例1~3、比較例1の評価結果を表1に示す。
【0069】
(実施例4)
厚み0.7mm、150mm角の無アルカリガラス基板AN100(旭硝子株式会社製)上にポリアミド酸溶液(A-1)を全面に塗布し、熱風オーブンで90℃15分乾燥させた。その後、熱風オーブンで260℃60分間熱硬化を行い、厚み7μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜の上にオーバーコート溶液(C-1)を全面に塗布し、熱風オーブンで90℃8分間乾燥させた。その後、露光装置PEM-6M(ユニオン光学株式会社製)を用いて露光量200mJ/cm2(波長365nm換算)で全線露光を行った後に、熱風オーブンで230℃60分間熱硬化を行い、厚み3μmの保護膜を形成することで合計厚み10μmの樹脂膜を得た。その後、ガラス基板及び樹脂膜を100℃に保持し、樹脂膜の上に予め100℃に加熱した自己粘着性を有する厚み5mmのウレタンゲルシート(熱膨張係数93ppm/K)を貼り合わせた。100℃に保った状態でウレタンゲルシートと樹脂膜をガラス基板と樹脂膜の界面より分離し、ウレタンゲルシート及び樹脂膜を25℃まで冷却した。貼り合わせ装置SE650n(クライムプロダクツ製)を用いて、この剥離物の樹脂膜側(ガラス基板との剥離面側)に厚み50μmの自己粘着性を有するPETフィルムを貼り合わせた。ウレタンゲルシートを剥離することで、10μmの樹脂膜に50μmのPETフィルムを貼り合わせた積層体を得た。
【0070】
(実施例5)
貼り合わせ前の温度を100℃から70℃に変更する以外は実施例4と同様に実施した。
【0071】
(実施例6)
貼り合わせ前の温度を100℃から120℃に変更する以外は実施例4と同様に実施した。
【0072】
(実施例7)
ウレタンゲルシートの代わりに厚み5mmのシリコンゲルシート(熱膨張係数204ppm/K)を用い、貼り合わせ前の温度を100℃から60℃に変更する以外は実施例4と同様に実施した。
【0073】
(実施例8)
ウレタンゲルシートの代わりに厚さ0.5mmのPMMA(熱膨張係数50ppm/K)を用い貼り合わせ前の温度を100℃から115℃に変更する以外は実施例4と同様に実施した。
【0074】
(実施例9)
ウレタンゲルシートの代わりに厚さ0.3mmのマグネシウム合金AZ91板(熱膨張係数28ppm/K)を用い、貼り合わせ前の温度を100℃から150℃、貼り合わせ後の温度を25℃から0℃にする以外は実施例4と同様に実施した。
【0075】
(実施例10)
ウレタンゲルシートの代わりに厚さ5mmのシリコンゲルシートを用い、貼り合わせ前の温度を100℃から35℃に変更する以外は実施例4と同様に実施した。
【0076】
(比較例2)
貼り合わせ前の温度を100℃から25℃に変更する以外は実施例4と同様に実施した。
【0077】
(比較例3)
ウレタンゲルシートの代わりに厚さ5mmのシリコンゲルシートを用い、貼り合わせ前の温度を100℃から30℃に変更する以外は実施例4と同様に実施した。
【0078】
実施例4~10、比較例2~3の評価結果を表2に示す。
【0079】
(実施例11)
厚み0.7mm、150mm角の無アルカリガラス基板AN100(旭硝子株式会社製)上にポリアミド酸溶液(A-1)を全面に塗布し、熱風オーブンで90℃15分乾燥させた。その後、熱風オーブンで260℃60分熱硬化を行い、厚み7μmのポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜の上にオーバーコート溶液(C-1)を全面に塗布し、熱風オーブンで90℃8分乾燥させた。露光装置PEM-6M(ユニオン光学株式会社製)を用いて露光量200mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行った後に、熱風オーブンで230℃60分間熱硬化を行い、厚み3μmの保護膜を形成することで合計厚み10μmの樹脂膜を得た。
図2に示す治具を用いて、ウレタンゲルシートを面方向の全方位に均等に0.69%引き延ばした。0.69%引き延ばした状態のウレタンゲルシートを樹脂膜の上に貼り合わせた。その後、ウレタンゲルシートと樹脂膜をガラス基板と樹脂膜との界面より剥離し、ウレタンゲルシートの引き延ばしを解除してウレタンゲルシート及び樹脂膜を収縮させた。この剥離物の樹脂膜側(ガラス基板との剥離面側)に厚み50μmの自己粘着性を有するPETフィルムを貼り合わせた。さらに、ウレタンゲルシートを剥離することで、10μmの樹脂膜に50μmのPETフィルムを貼り合わせた積層体を得た。
【0080】
(実施例12)
ウレタンゲルシートの引き延ばし量を0.89%にする以外は実施例11と同様に実施した。
【0081】
(比較例4)
ウレタンゲルシートの引き延ばし量を0.15%にする以外は実施例11と同様に実施した。
【0082】
実施例11~12、比較例4の評価結果を表3に示す。
【0083】
(実施例13)
厚み0.7mm、150mm角の無アルカリガラス基板AN100(旭硝子株式会社製)上にポリアミド酸溶液(A-1)を全面に塗布し、熱風オーブンで90℃15分乾燥させた。その後、熱風オーブンで260℃60分熱硬化を行い、厚み7μmのポリイミド膜を形成した。ポリイミド膜の上に導電ペースト(D-1)をスクリーン印刷機LS-150(ニューロング精密工業株式会社製)で全面に塗布し、100℃の乾燥オーブンで10分間乾燥することで1.0μmの塗布膜を得た。
図3に示す、3μmの幅で対角線の長さが0.5mmである菱形の連続体からなる格子状の透光部及び1.5mm角の透光部を両端に有するパターンを、4mm間隔で20個有しているフォトマスクを基板の中央に配置し、露光装置PEM-6M(ユニオン光学株式会社製)を用いて露光量200mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行った後に、0.1質量%のTMAH溶液に基板を30秒浸漬させて現像を実施し、超純水によるリンス処理を施すことにより、導電パターンの前駆体を得た。その後、熱風オーブンで230℃60分間熱硬化を行い、線幅4.0μmである1層目の導電パターンを形成した。この上にオーバーコート溶液(C-1)を導電パターンの格子状部分のみを被せるように80mm×85mmの範囲に塗布し、熱風オーブンで90℃8分乾燥させた。露光装置PEM-6M(ユニオン光学株式会社製)を用いて露光量200mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行った後に、熱風オーブンで230℃60分間熱硬化を行い、厚み3μmの1層目の保護膜を形成した。1層目の保護膜の上に、1層目の導電パターンと同様の手順で、1層目の導電パターンと互いに直交するように2層目の導電パターンを形成した。この上にオーバーコート溶液(C-1)を、導電パターンの格子状部分のみを被せるように80mm×80mmの範囲に塗布し、熱風オーブンで90℃8分乾燥させた。露光装置PEM-6M(ユニオン光学株式会社製)を用いて露光量200mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行った後に、熱風オーブンで210℃60分間熱硬化を行い、厚み2μmの2層目の保護膜を形成することで、
図4に示す構成のタッチセンサーを形成した。その後、タッチセンサーの上に合計厚み50μmのインテリマーテープCS2350NA4(ニッタ株式会社製)を150mm角のサイズで貼り合わせた後、樹脂膜及びインテリマーテープをガラス基板から剥離した。その後、貼り合わせ装置SE650n(クライムプロダクツ製)を用いて、この剥離物の樹脂膜側(ガラス基板との剥離面側)に厚み50μmのPETフィルムを貼り合わせた。さらに、インテリマーテープを剥離することで、タッチセンサーに50μmのPETフィルムを貼り合わせた積層体を得た。
【0084】
実施例13の評価結果を表4及び表5に示す。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【符号の説明】
【0090】
11 支持材A
12 樹脂膜
13 支持材B
14 基材A
21 ネジ
22 ガイド
23 クランプ
24 支持材B
31 フォトマスクの透光部
41 ポリイミド膜
42 1層目の導電パターン
43 1層目の保護膜
44 2層目の導電パターン
45 2層目の保護膜