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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】前後輪独立駆動型車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/356 20060101AFI20240709BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B60K17/356 B
F16H1/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022003339
(22)【出願日】2022-01-12
(65)【公開番号】P2023102684
(43)【公開日】2023-07-25
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】板津 直樹
(72)【発明者】
【氏名】笠舞 智
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-098985(JP,A)
【文献】特開2021-063558(JP,A)
【文献】特開2021-084525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/356
F16H 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を回転駆動する前側駆動源と、前記前側駆動源と前記前輪との間の動力伝達経路に配設された一定の変速比の前側変速機構と、を有する前輪駆動ユニットと、
後輪を回転駆動する後側駆動源と、前記後側駆動源と前記後輪との間の動力伝達経路に配設された一定の変速比の後側変速機構と、を有する後輪駆動ユニットと、
を車両の前後に離間して別々に備えている前後輪独立駆動型車両において、
前記後側変速機構の変速比は前記前側変速機構の変速比よりも大きい
ことを特徴とする前後輪独立駆動型車両。
【請求項2】
前記前側変速機構および前記後側変速機構は、何れも車両幅方向と略平行に配設された3軸以上の複数の回転軸と、該回転軸に設けられた複数のギヤとを備えているギヤ式の変速機構であり、
前記前側変速機構および前記後側変速機構の変速比を相違させるために、前記3軸以上の回転軸の中のドライブシャフトに動力伝達可能に連結されるデフ回転軸に設けられた最終ギヤと、該最終ギヤと噛み合わされた最終直前ギヤとの歯数比が、前記前側変速機構と前記後側変速機構とで相違させられている
ことを特徴とする請求項1に記載の前後輪独立駆動型車両。
【請求項3】
前記複数の回転軸および前記複数のギヤは、前記前側変速機構と前記後側変速機構とでそれぞれ同数であるとともに、
前記複数の回転軸の相互の位置関係、および前記複数のギヤの相互の位置関係は、前記前側変速機構と前記後側変速機構とでそれぞれ同じであり、
前記最終ギヤおよび前記最終直前ギヤの両方の歯数が、前記前側変速機構と前記後側変速機構とで相違させられ、前記最終ギヤについては前記後側変速機構の方が歯数が多く、前記最終直前ギヤについては前記前側変速機構の方が歯数が多くされることにより、前記後側変速機構の方が前記前側変速機構よりも変速比が大きくされており、
前記複数のギヤの中の前記最終ギヤおよび前記最終直前ギヤを除く他のギヤは、何れも前記前側変速機構と前記後側変速機構とで歯数等が等しい同一のギヤが用いられている
ことを特徴とする請求項2に記載の前後輪独立駆動型車両。
【請求項4】
前記前側駆動源および前記後側駆動源は、それぞれ出力軸の軸線が車両幅方向と略平行な第1軸線上に位置する横置き姿勢で配設されている一方、
前記前側変速機構および前記後側変速機構は、それぞれ前記複数の回転軸として入力回転軸、中間回転軸、および前記デフ回転軸の3軸を備えており、
前記前側変速機構および前記後側変速機構の前記入力回転軸は、何れも前記第1軸線上に配置されているとともに、該入力回転軸にはドライブギヤが設けられており、前記前側変速機構の前記入力回転軸は前記前側駆動源に動力伝達可能に連結され、前記後側変速機構の前記入力回転軸は前記後側駆動源に動力伝達可能に連結されており、
前記前側変速機構および前記後側変速機構の前記中間回転軸は、何れも前記第1軸線と平行な第2軸線上に配置されているとともに、該中間回転軸には、前記ドライブギヤから回転が伝達される大径ギヤと、該大径ギヤよりも小径の前記最終直前ギヤとが軸方向に離間して設けられており、
前記前側変速機構および前記後側変速機構の前記デフ回転軸は、何れも前記第1軸線と平行な第3軸線上に配置されて前記ドライブシャフトと動力伝達可能に連結されているとともに、該デフ回転軸には前記最終直前ギヤと噛み合わされて回転が伝達される前記最終ギヤが設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の前後輪独立駆動型車両。
【請求項5】
前記前輪の回転速度変化に基づいて路面の凹凸を検知し、該凹凸を検知した場合には前記後側駆動源のトルクを制限する制御装置を有する
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の前後輪独立駆動型車両。
【請求項6】
前記前側駆動源および前記後側駆動源は何れも電動モータで、該電動モータのロータの積厚および径寸法は、前記前側駆動源と前記後側駆動源とで互いに等しい
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の前後輪独立駆動型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪を回転駆動する前側駆動源および前側変速機構と、後輪を回転駆動する後側駆動源および後側変速機構と、を別々に備えている前後輪独立駆動型車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 左車輪を回転駆動する左側駆動源および左側変速機構を有する左側駆動ユニットと、(b) 右車輪を回転駆動する右側駆動源および右側変速機構を有する右側駆動ユニットとを有し、(c) 前後輪の何れか一方を回転駆動する車両用駆動装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、NV〔Noise(騒音) 、Vibration(振動) 〕を抑制するために、左右の変速機構の変速比を相違させることが提案されている。特許文献2には、(a) 前輪を回転駆動する前側駆動源および前側変速機構を有する前輪駆動ユニットと、(b) 後輪を回転駆動する後側駆動源および後側変速機構を有する後輪駆動ユニットと、を車両の前後に別々に備えている前後輪独立駆動型車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-162542号公報
【文献】特開2014-84102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記前後輪独立駆動型車両についてもNVを抑制する要求があり、未だ公知ではないが、車両の前後に離間して配置される前側変速機構および後側変速機構の変速比を相違させることが考えられる。しかしながら、変速比を相違させると前後輪の駆動トルクが変化し、加速性能等のドライバビリティに影響する可能性があるため、前側変速機構および後側変速機構の変速比をどのように設定するかが問題になる。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、前輪駆動ユニットと後輪駆動ユニットとを別々に備えている前後輪独立駆動型車両に関し、ドライバビリティを確保しつつNV性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 前輪を回転駆動する前側駆動源と、前記前側駆動源と前記前輪との間の動力伝達経路に配設された一定の変速比の前側変速機構と、を有する前輪駆動ユニットと、(b) 後輪を回転駆動する後側駆動源と、前記後側駆動源と前記後輪との間の動力伝達経路に配設された一定の変速比の後側変速機構と、を有する後輪駆動ユニットと、を車両の前後に離間して別々に備えている前後輪独立駆動型車両において、(c) 前記後側変速機構の変速比は前記前側変速機構の変速比よりも大きいことを特徴とする。
上記変速比は、変速機構の出力回転速度に対する入力回転速度の比〔=入力回転速度/出力回転速度〕で、変速比が大きいことは、出力回転速度に対して入力回転速度が速いことで、所謂ローギヤであることを意味する。
【0007】
第2発明は、第1発明の前後輪独立駆動型車両において、(a) 前記前側変速機構および前記後側変速機構は、何れも車両幅方向と略平行に配設された3軸以上の複数の回転軸と、その回転軸に設けられた複数のギヤとを備えているギヤ式の変速機構であり、(b) 前記前側変速機構および前記後側変速機構の変速比を相違させるために、前記3軸以上の回転軸の中のドライブシャフトに動力伝達可能に連結されるデフ回転軸に設けられた最終ギヤと、その最終ギヤと噛み合わされた最終直前ギヤとの歯数比が、前記前側変速機構と前記後側変速機構とで相違させられていることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第2発明の前後輪独立駆動型車両において、(a) 前記複数の回転軸および前記複数のギヤは、前記前側変速機構と前記後側変速機構とでそれぞれ同数であるとともに、(b) 前記複数の回転軸の相互の位置関係、および前記複数のギヤの相互の位置関係は、前記前側変速機構と前記後側変速機構とでそれぞれ同じであり、(c) 前記最終ギヤおよび前記最終直前ギヤの両方の歯数が、前記前側変速機構と前記後側変速機構とで相違させられ、前記最終ギヤについては前記後側変速機構の方が歯数が多く、前記最終直前ギヤについては前記前側変速機構の方が歯数が多くされることにより、前記後側変速機構の方が前記前側変速機構よりも変速比が大きくされており、(d) 前記複数のギヤの中の前記最終ギヤおよび前記最終直前ギヤを除く他のギヤは、何れも前記前側変速機構と前記後側変速機構とで歯数等が等しい同一のギヤが用いられていることを特徴とする。
【0009】
第4発明は、第3発明の前後輪独立駆動型車両において、(a) 前記前側駆動源および前記後側駆動源は、それぞれ出力軸の軸線が車両幅方向と略平行な第1軸線上に位置する横置き姿勢で配設されている一方、(b) 前記前側変速機構および前記後側変速機構は、それぞれ前記複数の回転軸として入力回転軸、中間回転軸、および前記デフ回転軸の3軸を備えており、(c) 前記前側変速機構および前記後側変速機構の前記入力回転軸は、何れも前記第1軸線上に配置されているとともに、その入力回転軸にはドライブギヤが設けられており、前記前側変速機構の前記入力回転軸は前記前側駆動源に動力伝達可能に連結され、前記後側変速機構の前記入力回転軸は前記後側駆動源に動力伝達可能に連結されており、(d) 前記前側変速機構および前記後側変速機構の前記中間回転軸は、何れも前記第1軸線と平行な第2軸線上に配置されているとともに、その中間回転軸には、前記ドライブギヤから回転が伝達される大径ギヤと、その大径ギヤよりも小径の前記最終直前ギヤとが軸方向に離間して設けられており、(e) 前記前側変速機構および前記後側変速機構の前記デフ回転軸は、何れも前記第1軸線と平行な第3軸線上に配置されて前記ドライブシャフトと動力伝達可能に連結されているとともに、そのデフ回転軸には前記最終直前ギヤと噛み合わされて回転が伝達される前記最終ギヤが設けられていることを特徴とする。
【0010】
第5発明は、第1発明~第4発明の何れかの前後輪独立駆動型車両において、前記前輪の回転速度変化に基づいて路面の凹凸を検知し、その凹凸を検知した場合には前記後側駆動源のトルクを制限する制御装置を有することを特徴とする。
【0011】
第6発明は、第1発明~第5発明の何れかの前後輪独立駆動型車両において、前記前側駆動源および前記後側駆動源は何れも電動モータで、その電動モータのロータの積厚および径寸法は、前記前側駆動源と前記後側駆動源とで互いに等しいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このような前後輪独立駆動型車両においては、後側変速機構の変速比が前側変速機構の変速比よりも大きいため、変速比の相違に伴う各部の回転速度の相違で共振が抑制されてNV性能が向上するとともに、加速性能等のドライバビリティを適切に確保することができる。すなわち、ドライバビリティが要求されるのは一般に車両発進時等の加速時であるが、その加速時には後輪側に掛かる荷重が大きくなる一方、前輪側の荷重が小さくなってスリップが発生し易くなるのに対し、変速比の相違で後輪側の駆動トルクが前輪側の駆動トルクに対して相対的に大きくなるため、スリップを抑制しつつ前輪および後輪に対して駆動トルクを適切に伝達して動力性能を十分に引き出すことができる。
【0013】
第2発明では、前側変速機構および後側変速機構がギヤ式の変速機構で、それ等の変速比を相違させるために、デフ回転軸に設けられた最終ギヤと最終直前ギヤとの歯数比が相違させられているため、それ等の最終ギヤおよび最終直前ギヤを含めてそれよりも駆動源側のギヤの噛合い周波数が総て前側変速機構と後側変速機構とで相違させられ、それ等の共振が抑制されてNV性能が適切に向上させられる。
【0014】
第3発明、第4発明では、前側変速機構および後側変速機構の複数の回転軸および複数のギヤがそれぞれ同数で、且つそれ等の相互の位置関係がそれぞれ同じであり、最終ギヤおよび最終直前ギヤの歯数が相違しているだけで、他のギヤは前側変速機構と後側変速機構とで同一のギヤが用いられているため、最終ギヤおよび最終直前ギヤだけ変更すれば良く、前輪駆動ユニットおよび後輪駆動ユニットを安価に構成できる。
【0015】
第5発明では、前輪の回転速度変化に基づいて路面の凹凸を検知し、その凹凸を検知した場合には後側駆動源のトルクを制限するため、駆動トルクが相対的に大きい後輪が凹凸に起因する上下変動でスリップおよびグリップを繰り返すスリップグリップが発生した場合に、後側変速機構や後側駆動源に加えられる衝撃荷重が軽減され、耐久性が向上する。特に、先行する前輪の回転速度変化に基づいて路面の凹凸を検知するため、前輪よりも後から凹凸路に進入する後輪のスリップグリップに起因する衝撃荷重を適切に軽減することができる。
【0016】
第6発明では、前側駆動源および後側駆動源が何れも電動モータで、その電動モータのロータの積厚および径寸法が互いに等しいため、回転速度変化が同じであればイナーシャトルクも同じになるが、後側変速機構の変速比が大きい分だけ後側駆動源の回転速度変化は大きくなり、イナーシャトルクも大きくなるため、スリップグリップが発生した時の衝撃荷重が大きくなる。このため、例えば第5発明のように前輪の回転速度変化に基づいて後側駆動源のトルクを制限することにより、後側変速機構に加えられる衝撃荷重を適切に軽減することができる。また、電動モータはトルク制御の応答性が早いため、前輪の回転速度変化に基づく後側駆動源のトルク制限により、後側変速機構に加えられる衝撃荷重を一層適切に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例である電気自動車の前後に設けられた駆動ユニットを説明する概略平面図である。
図2図1の電気自動車に搭載された前輪駆動ユニットの概略構成を説明する図で、車両幅方向に切断し且つ複数の軸線Sf1~Sf3が一平面内に位置するように展開して示した骨子図である。
図3図1の電気自動車に搭載された後輪駆動ユニットの概略構成を説明する図で、車両幅方向に切断し且つ複数の軸線Sr1~Sr3が一平面内に位置するように展開して示した骨子図である。
図4図1の電気自動車の電子制御装置が機能的に備えているトルク制限制御部の作動を説明する図で、凹凸を有する波状路を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の前後輪独立駆動型車両は、例えば前側駆動源および後側駆動源として電動モータを備えている電動車両に好適に適用されるが、駆動源としてエンジン(内燃機関)のみを有するエンジン駆動車両にも適用され得る。電動モータは、発電機としても機能するモータジェネレータであっても良い。電動車両は、駆動源として電動モータのみを有する電気自動車や、駆動源として電動モータおよびエンジンを備えているハイブリッド型電動車両である。前側駆動源および後側駆動源は、同一の種類で同一のトルク特性の駆動源が適当であるが、前側駆動源および後側駆動源としてトルク特性等が異なる駆動源を採用することも可能である。例えば前側駆動源および後側駆動源として電動モータが用いられる場合、ロータの積厚および径寸法が等しい電動モータでも、ロータの積厚や径寸法が異なる電動モータでも良い。これ等の駆動源は、例えば出力軸の軸線が車両幅方向と略平行になる横置き姿勢で、車両幅方向の同一方向を向く同一姿勢で配置しても良いし、反対方向を向く対称姿勢で配置しても良い。駆動源だけでなく、駆動ユニット全体を、前輪側および後輪側で左右反対向きの対称姿勢で配置することも可能である。出力軸の軸線が車両前後方向と略平行になる縦置き姿勢で駆動源を配置したり、回転軸の軸線が車両前後方向と略平行になる縦置き姿勢で変速機構を配置したりすることもできる。本発明は、前後輪が何れも左右2輪を有する4輪駆動車両に好適に適用されるが、前後輪の何れか一方が1輪の3輪駆動車両にも適用できるなど、前後輪独立駆動型の種々の車両に適用され得る。
【0019】
前側変速機構および後側変速機構としては、例えば遊星歯車式や外歯車噛合い式等のギヤ式の変速機が用いられるが、チェーンベルト式等のギヤ式以外の変速機構を採用することもできる。また、一定の変速比で減速する減速機でも、一定の変速比で増速する増速機でも良い。ギヤ式の変速機構を構成する複数のギヤは回転軸に設けられるが、それとは別に、例えば変速機構を構成している遊星歯車機構のリングギヤ等が回転不能にケース等に固定されても良い。変速機構が、駆動源に連結される入力回転軸と、中間回転軸と、ドライブシャフトに連結されるデフ回転軸との3軸を有する場合、中間回転軸を複数設けることも可能である。中間回転軸を省略して、入力回転軸およびデフ回転軸の2軸で構成することもできる。入力回転軸およびデフ回転軸は、例えば互いに平行な異なる軸線上に設けられるが、変速機構およびディファレンシャル装置としてそれぞれ遊星歯車機構を採用するなどして、入力回転軸およびデフ回転軸を共通の軸線上に設けることも可能である。変速機構の複数のギヤとしては、歯すじが捩じれたはすば歯車が好適に用いられるが、歯すじがギヤの軸線と平行な平歯車が用いられても良い。
【0020】
変速機構が3軸以上の複数の回転軸を備えている場合、デフ回転軸に設けられた最終ギヤおよび最終直前ギヤの少なくとも一方の歯数を、前側変速機構と後側変速機構とで相違させ、その最終ギヤと最終直前ギヤとの歯数比を変更して、後側変速機構の変速比を前側変速機構よりも大きくすることが望ましいが、その最終直前ギヤよりも駆動源側のギヤの歯数を相違させて変速比を変更しても良い。3つ以上のギヤの歯数を相違させて変速比を変更することも可能である。
【0021】
本発明の前後輪独立駆動型車両では、前輪の回転速度変化に基づいて路面の凹凸を検知し、その凹凸を検知した場合に後側駆動源のトルクを制限することが望ましいが、後側駆動源に加えて前側駆動源のトルクも制限するようにしても良い。前輪の回転速度変化の代わりに後輪の回転速度変化に基づいて路面の凹凸を検知するようにしても良いし、前後輪の両方の回転速度変化に基づいて路面の凹凸を検知することも可能である。車輪の回転速度変化は、車輪そのものの回転速度変化を検出しても良いが、左右の車輪に動力分配するデフ回転軸等の変速機構の回転軸の回転速度や駆動源の回転速度も車輪の回転速度に対応して変化するため、それ等の回転速度の変化に基づいて路面の凹凸を検知することもできる。路面の凹凸判定は、例えば回転速度の変化速度である回転加速度の絶対値が予め定められた凹凸判定値以上になったか否かによって行なうことができるが、例えば周期的に増減する回転速度の増減変動の振幅や周期に基づいて凹凸判定を行なうこともできるなど、種々の態様が可能である。車両の上下変動の加速度など、回転速度以外の変数(物理量)を併用して凹凸判定を行なうこともできる。なお、本発明の実施に際しては、必ずしもこのように駆動源のトルク制限制御を行なう制御装置が設けられる必要はない。
【実施例
【0022】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の形状や寸法比、角度等は必ずしも正確に描かれていない。
【0023】
図1は、本発明が適用された前後輪独立駆動型車両の一例である電気自動車10に設けられた駆動ユニットを説明する概略平面図である。電気自動車10は、車両前側に搭載されて左右の前輪12L、12Rを回転駆動する前輪駆動ユニット14と、車両後側に搭載されて左右の後輪16L、16Rを回転駆動する後輪駆動ユニット18とを、互いに離間して別々に備えている。この電気自動車10は、例えば車両搭載バッテリーのみを電力源として走行するが、燃料電池等の電力発生装置を搭載していても良い。
【0024】
図2は、前輪駆動ユニット14の概略構成を説明する図で、車両幅方向に切断し且つ複数の回転軸が配設された複数の第1軸線Sf1~第3軸線Sf3が一平面内に位置するように展開して示した骨子図である。第1軸線Sf1~第3軸線Sf3は互いに平行で、前輪駆動ユニット14は、これ等の第1軸線Sf1~第3軸線Sf3が車両幅方向と略平行になる姿勢で電気自動車10に搭載される。この前輪駆動ユニット14は、前側駆動源として前側MG22を備えているとともに、その前側MG22と左右の前輪12L、12Rとの間の動力伝達経路に設けられて一定の変速比γfで減速するギヤ式の前側変速機構24を備えている。前側MG22は、電動モータおよび発電機として択一的に機能するモータジェネレータで、出力軸であるMG軸30が第1軸線Sf1上に位置する横置き姿勢で、本実施例では左向きで配置されており、前側MG22の左側に隣接して配設された前側変速機構24と共に共通のケース60内に収容されている。
【0025】
前側変速機構24は、複数の回転軸として入力回転軸40f、中間回転軸42f、およびデフ回転軸44fの3軸を備えている。入力回転軸40fは、前記第1軸線Sf1上に配置されているとともに、その入力回転軸40fにはドライブギヤ46fおよびスプライン48fが設けられており、入力回転軸40fはスプライン48fを介して前側MG22のMG軸30に動力伝達可能に連結されている。中間回転軸42fは、第1軸線Sf1と平行な第2軸線Sf2上に配置されているとともに、その中間回転軸42fには、前記ドライブギヤ46fと噛み合わされて回転が伝達される大径ギヤ50f、および大径ギヤ50fよりも小径の最終直前ギヤ52fが、軸方向に離間して設けられている。デフ回転軸44fは、第1軸線Sf1と平行な第3軸線Sf3上に配置されており、スプライン等を介して前輪ドライブシャフト56L、56Rと動力伝達可能に連結されているとともに、デフ回転軸44fには前記最終直前ギヤ52fと噛み合わされて回転が伝達される最終ギヤ54fが設けられている。
【0026】
デフ回転軸44fは、傘歯車式のディファレンシャル装置55fのデフケースで、このデフ回転軸44fに設けられた最終ギヤ54fは最終直前ギヤ52fよりも大径で歯数が多く、減速回転させられて左右の前輪ドライブシャフト56L、56Rに動力が分配される。すなわち、前側変速機構24はトランスアクスルであり、前側MG22から出力された回転は、前側変速機構24により減速されて左右の前輪ドライブシャフト56L、56Rに伝達され、左右の前輪12L、12Rが差動回転可能に回転駆動される。この前側変速機構24の変速比γfは、出力回転速度ωfoに対する入力回転速度ωfiの比〔ωfi/ωfo〕で、γf>1の減速機である。入力回転速度ωfiは入力回転軸40fの回転速度で、出力回転速度ωfoはデフ回転軸44fの回転速度である。なお、ディファレンシャル装置55fと前輪ドライブシャフト56L、56Rとの間、前輪ドライブシャフト56L、56Rと前輪12L、12Rとの間には、必要に応じて等速ジョイント等が設けられる。また、図1では、前輪ドライブシャフト56L、56Rの車両前側に前輪駆動ユニット14が搭載された例が記載されているが、前輪ドライブシャフト56L、56Rの上方(図1の紙面の表側)や車両後側に前輪駆動ユニット14を搭載しても良い。
【0027】
前記ケース60は、車両幅方向に3分割された3つのケース部材62f、64f、および66fを備えている。これ等のケース部材62f、64f、66fは、外周縁部が互いに突き合わされてそれぞれ複数のボルト70fにより一体的に結合されている。中間に位置するケース部材64fには、軸線Sf1~Sf3と略垂直になる姿勢でケース60の内側に向かって延び出すように仕切り壁68fが一体に設けられており、その仕切り壁68fとケース部材66fとの間に前側MG22を収容するMG収容空間72fが形成されている。仕切り壁68fには外壁68foutが連続して設けられており、それ等の仕切り壁68fおよび外壁68foutとケース部材62fとの間には、前側変速機構24を収容するギヤ収容空間74fが形成されている。また、前側MG22の冷却やギヤ46f、50f、52f、54f等の潤滑のため、各収容空間72f、74fには、オイルポンプ等を有する図示しない油圧回路を介して潤滑油が供給されるようになっている。収容空間72f、74fは、切欠や連通穴等を介して互いに連通させられており、潤滑油が流通できるようになっている。
【0028】
図3は、後輪駆動ユニット18の概略構成を説明する図で、車両幅方向に切断し且つ複数の回転軸が配設された複数の第1軸線Sr1~第3軸線Sr3が一平面内に位置するように展開して示した骨子図である。図3は、図2に比較して上下が反転しているだけで、実質的に前記前輪駆動ユニット14と同じ構成であり、対応する部材には同一の数字でfをrに代えた符号を用いて説明する。また、以下の説明で特に前後を区別しない場合は、数字の後のf、rを省略した符号を用いて説明する。
【0029】
第1軸線Sr1~第3軸線Sr3は互いに平行で、後輪駆動ユニット18は、これ等の第1軸線Sr1~第3軸線Sr3が車両幅方向と略平行になる姿勢で電気自動車10に搭載される。この後輪駆動ユニット18は、後側駆動源として後側MG26を備えているとともに、その後側MG26と左右の後輪16L、16Rとの間の動力伝達経路に設けられて一定の変速比γrで減速するギヤ式の後側変速機構28を備えている。後側MG26は、電動モータおよび発電機として択一的に機能するモータジェネレータで、出力軸であるMG軸32が第1軸線Sr1上に位置する横置き姿勢で、本実施例では左向きで配置されており、後側MG26の左側に隣接して配設された後側変速機構28と共に共通のケース61内に収容されている。後側MG26は、前記前側MG22とロータの積厚および径寸法やトルク特性等が等しい同じ規格の同一のモータジェネレータが用いられている。
【0030】
後側変速機構28は、複数の回転軸として入力回転軸40r、中間回転軸42r、およびデフ回転軸44rの3軸を備えている。入力回転軸40rは、前記第1軸線Sr1上に配置されているとともに、その入力回転軸40rにはドライブギヤ46rおよびスプライン48rが設けられており、入力回転軸40rはスプライン48rを介して後側MG26のMG軸32に動力伝達可能に連結されている。中間回転軸42rは、第1軸線Sr1と平行な第2軸線Sr2上に配置されているとともに、その中間回転軸42rには、前記ドライブギヤ46rと噛み合わされて回転が伝達される大径ギヤ50r、および大径ギヤ50rよりも小径の最終直前ギヤ52rが、軸方向に離間して設けられている。デフ回転軸44rは、第1軸線Sr1と平行な第3軸線Sr3上に配置されており、スプライン等を介して後輪ドライブシャフト58L、58Rと動力伝達可能に連結されているとともに、デフ回転軸44rには前記最終直前ギヤ52rと噛み合わされて回転が伝達される最終ギヤ54rが設けられている。
【0031】
デフ回転軸44rは、傘歯車式のディファレンシャル装置55rのデフケースで、このデフ回転軸44rに設けられた最終ギヤ54rは最終直前ギヤ52rよりも大径で歯数が多く、減速回転させられて左右の後輪ドライブシャフト58L、58Rに動力が分配される。すなわち、後側変速機構28はトランスアクスルであり、後側MG26から出力された回転は、後側変速機構28により減速されて左右の後輪ドライブシャフト58L、58Rに伝達され、左右の後輪16L、16Rが差動回転可能に回転駆動される。この後側変速機構28の変速比γrは、出力回転速度ωroに対する入力回転速度ωriの比〔ωri/ωro〕で、γr>1の減速機である。入力回転速度ωriは入力回転軸40rの回転速度で、出力回転速度ωroはデフ回転軸44rの回転速度である。なお、ディファレンシャル装置55rと後輪ドライブシャフト58L、58Rとの間、後輪ドライブシャフト58L、58Rと後輪16L、16Rとの間には、必要に応じて等速ジョイント等が設けられる。また、図1では、後輪ドライブシャフト58L、58Rの車両後側に後輪駆動ユニット18が搭載された例が記載されているが、後輪ドライブシャフト58L、58Rの上方(図1の紙面の表側)や車両前側に後輪駆動ユニット18を搭載しても良い。
【0032】
前記ケース61は、車両幅方向に3分割された3つのケース部材62r、64r、および66rを備えている。これ等のケース部材62r、64r、66rは、外周縁部が互いに突き合わされてそれぞれ複数のボルト70rにより一体的に結合されている。中間に位置するケース部材64rには、軸線Sr1~Sr3と略垂直になる姿勢でケース61の内側に向かって延び出すように仕切り壁68rが一体に設けられており、その仕切り壁68rとケース部材66rとの間に後側MG26を収容するMG収容空間72rが形成されている。仕切り壁68rには外壁68routが連続して設けられており、それ等の仕切り壁68rおよび外壁68routとケース部材62rとの間には、後側変速機構28を収容するギヤ収容空間74rが形成されている。また、後側MG26の冷却やギヤ46r、50r、52r、54r等の潤滑のため、各収容空間72r、74rには、オイルポンプ等を有する図示しない油圧回路を介して潤滑油が供給されるようになっている。収容空間72r、74rは、切欠や連通穴等を介して互いに連通させられており、潤滑油が流通できるようになっている。
【0033】
このように、前輪駆動ユニット14の前側変速機構24および後輪駆動ユニット18の後側変速機構28は、何れも3本の回転軸40、42、44と、それ等の回転軸40、42、44に設けられた4つのギヤ46、50、52、54とを備えて構成されている。また、それ等の回転軸40、42、44の相互の位置関係、およびギヤ46、50、52、54の相互の位置関係は、前側変速機構24と後側変速機構28とでそれぞれ同じであるが、最終直前ギヤ52および最終ギヤ54の歯数は前側変速機構24と後側変速機構28とで相違させられている。すなわち、後側変速機構28の変速比γrが前側変速機構24の変速比γfよりも大きくなるように、最終直前ギヤ52については、前側変速機構24の最終直前ギヤ52fの歯数Z52fが後側変速機構28の最終直前ギヤ52rの歯数Z52rよりも多くされ、最終ギヤ54については逆に、後側変速機構28の最終ギヤ54rの歯数Z54rが前側変速機構24の最終ギヤ54fの歯数Z54fよりも多くされている。言い換えれば、最終直前ギヤ52については、後輪側の最終直前ギヤ52rよりも前輪側の最終直前ギヤ52fの方がかみあいピッチ円の直径が大きく、最終ギヤ54については、前輪側の最終ギヤ54fよりも後輪側の最終ギヤ54rの方がかみあいピッチ円の直径が大きい。これにより、前側変速機構24の歯数比Z52f/Z54fが後側変速機構28の歯数比Z52r/Z54rよりも大きくなり、歯数比に反比例して変速比は増減するため、後側変速機構28の変速比γrが前側変速機構24の変速比γfよりも大きくなる。上記最終直前ギヤ52および最終ギヤ54を除く他のギヤであるドライブギヤ46および大径ギヤ50については、何れも前側変速機構24と後側変速機構28とで歯数等が等しい同一のギヤが用いられており、最終直前ギヤ52および最終ギヤ54の歯数が変更されることによって後側変速機構28の変速比γrが前側変速機構24の変速比γfよりも大きくされている。
【0034】
図1に戻って、電気自動車10は、前輪駆動ユニット14および後輪駆動ユニット18のトルク制御を含む各種の制御を実行する制御装置として電子制御装置80を備えている。電子制御装置80は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより電気自動車10の各種の制御を実行する。例えば、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度θacc や車速V等に基づいて、電気自動車10の駆動輪(前輪12L、12R、後輪16L、16R)における要求駆動トルクを算出し、予め定められたトルク分配比に従って前輪側駆動トルクおよび後輪側駆動トルクを算出する。そして、その前輪側駆動トルクおよび後輪側駆動トルクを実現できる前側MG22および後側MG26のトルク指令値を変速比γf、γr等に基づいて算出し、そのトルク指令値に従って前側MG22、後側MG26の各トルクを制御する。前後輪のトルク分配比は、例えば50:50等の一定値が定められても良いが、電気自動車10の加速度やヨーレート等の走行状態に基づいて可変設定されても良い。
【0035】
一方、このような電気自動車10が、例えば図4に示されるような凹凸を有する波状路78に進入すると、前輪12L、12Rや後輪16L、16Rが上下変動し、路面との間の摩擦が変化することにより、前輪12L、12Rや後輪16L、16Rがスリップおよびグリップを繰り返すスリップグリップが発生し、前後の変速機構24、28やMG22、26に衝撃荷重が加えられる。特に、本実施例では後輪駆動ユニット18の変速比γrが大きく、後輪16L、16Rに大きな駆動トルクが加えられるため、スリップグリップに起因して後側変速機構28に加えられる衝撃荷重が大きくなり、その衝撃荷重によって後側変速機構28の耐久性が損なわれる可能性がある。
【0036】
これに対し、本実施例の電子制御装置80は、路面の凹凸に基づいて後輪駆動ユニット18の後側MG26のトルクを制限するトルク制限制御部を機能的に備えている。その後側MG26のトルク制限制御に関連して、電子制御装置80には、左右の前輪12L、12Rの回転速度Vwl、Vwrを検出する回転速度センサ82L、82Rから、その回転速度Vwl、Vwrを表す信号が供給されるようになっている。そして、その回転速度Vwl、Vwrの変化に基づいて波状路78の凹凸を検知し、凹凸を検知した場合には後側MG26の上限トルクを制限する。回転速度Vwl、Vwrの変化に基づく波状路78の凹凸判定は、例えば回転速度Vwl、Vwrの変化速度である回転加速度の絶対値が予め定められた凹凸判定値以上になったか否かによって行なうことができる。また、この凹凸判定は、例えば左右の回転速度Vwl、Vwrの平均値を用いて行なっても良いし、左右の回転速度Vwl、Vwrの何れか一方でも凹凸判定値を超えた場合には、凹凸判定が行なわれるようにしても良い。デフ回転軸44rの回転速度変化に基づいて凹凸判定を行なうこともできる。なお、凹凸判定が行なわれた場合に、後側MG26に加えて前側MG22の上限トルクも制限するようにしても良い。
【0037】
このように、本実施例の前後輪独立駆動型の電気自動車10においては、後側変速機構28の変速比γrが前側変速機構24の変速比γfよりも大きいため、変速比γr、γfの相違に伴う各部の回転速度の相違で共振が抑制されてNV性能が向上するとともに、加速性能等のドライバビリティを適切に確保することができる。すなわち、ドライバビリティが要求されるのは一般に車両発進時等の加速時であるが、その加速時には後輪16L、16R側に掛かる荷重が大きくなる一方、前輪12L、12R側の荷重が小さくなってスリップが発生し易くなるのに対し、変速比γr、γfの相違で後輪16L、16R側の駆動トルクが前輪12L、12R側の駆動トルクに対して相対的に大きくなるため、スリップを抑制しつつ前輪12L、12R、および後輪16L、16Rに対して駆動トルクを適切に伝達して動力性能を十分に引き出すことができる。
【0038】
また、前側変速機構24および後側変速機構28がギヤ式の変速機構で、それ等の変速比γf、γrを相違させるために、デフ回転軸44f、44rに設けられた最終ギヤ54f、54rと最終直前ギヤ52f、52rとの歯数比Z52f/Z54f、Z52r/Z54rが相違させられているため、それ等の最終ギヤ54f、54rおよび最終直前ギヤ52f、52rを含めてそれよりも駆動源(MG22、26)側のギヤ46、50の噛合い周波数が総て前側変速機構24と後側変速機構28とで相違させられ、それ等の共振が抑制されてNV性能が適切に向上させられる。
【0039】
また、前側変速機構24および後側変速機構28の複数の回転軸40、42、44、および複数のギヤ46、50、52、54がそれぞれ同数で、且つそれ等の相互の位置関係がそれぞれ同じであり、最終ギヤ54f、54rおよび最終直前ギヤ52f、52rの歯数が相違しているだけで、他のギヤ46、50は前側変速機構24と後側変速機構28とで同一のギヤが用いられているため、最終ギヤ54f、54rおよび最終直前ギヤ52f、52rだけ変更すれば良く、前輪駆動ユニット14および後輪駆動ユニット18を安価に構成できる。
【0040】
また、前輪12L、12Rの回転速度Vwl、Vwrの変化に基づいて波状路78の凹凸を検知し、その凹凸を検知した場合には後側MG26の上限トルクを制限するため、駆動トルクが相対的に大きい後輪16L、16Rが凹凸に起因する上下変動でスリップグリップが発生した場合に、後側変速機構28や後側MG26に加えられる衝撃荷重が軽減され、耐久性が向上する。特に、先行する前輪12L、12Rの回転速度変化に基づいて波状路78の凹凸を検知するため、前輪12L、12Rよりも後から波状路78に進入する後輪16L、16Rのスリップグリップに起因する衝撃荷重を適切に軽減することができる。
【0041】
また、前側MG22および後側MG26が何れもモータジェネレータで、そのモータジェネレータのロータの積厚および径寸法が互いに等しいため、回転速度変化が同じであればイナーシャトルクも同じになるが、後側変速機構28の変速比γrが大きい分だけ後側MG26の回転速度変化は大きくなり、イナーシャトルクも大きくなるため、スリップグリップが発生した時の衝撃荷重が大きくなる。このため、前輪12L、12Rの回転速度変化に基づいて後側MG26の上限トルクを制限することにより、後側変速機構28に加えられる衝撃荷重を適切に軽減することができる。また、モータジェネレータである後側MG26はトルク制御の応答性が早いため、前輪12L、12Rの回転速度変化に基づく後側MG26のトルク制限により、後側変速機構28に加えられる衝撃荷重を一層適切に軽減できる。
【0042】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
10:電気自動車(前後輪独立駆動型車両) 12L、12R:前輪 14:前輪駆動ユニット 16L、16R:後輪 18:後輪駆動ユニット 22:前側MG(前側駆動源、電動モータ) 24:前側変速機構 26:後側MG(後側駆動源、電動モータ) 28:後側変速機構 30、32:MG軸(出力軸) 40f、40r:入力回転軸(回転軸) 42f、42r:中間回転軸(回転軸) 44f、44r:デフ回転軸(回転軸) 46f、46r:ドライブギヤ(ギヤ) 50f、50r:大径ギヤ(ギヤ) 52f、52r:最終直前ギヤ(ギヤ) 54f、54r:最終ギヤ(ギヤ) 56L、56R:前輪ドライブシャフト 58L、58R:後輪ドライブシャフト 80:電子制御装置(制御装置) Sf1、Sr1:第1軸線 Sf2、Sr2:第2軸線 Sf3、Sr3:第3軸線
図1
図2
図3
図4