(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】建物調湿システム
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20240709BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20240709BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20240709BHJP
F24F 8/108 20210101ALI20240709BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20240709BHJP
E03B 3/28 20060101ALI20240709BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20240709BHJP
F24F 110/22 20180101ALN20240709BHJP
【FI】
E04B1/70 B
F24F11/70
F24F7/007 B
F24F8/108
F24F7/08 101B
E03B3/28
F24F110:20
F24F110:22
(21)【出願番号】P 2022044355
(22)【出願日】2022-03-18
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】片岡 奈々美
(72)【発明者】
【氏名】東田 豊彦
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-020770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0051477(US,A1)
【文献】特表2021-527193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/62 - 1/99
E03B1/00 - 11/16
F24F7/00 - 7/007
F24F11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に組み込まれる建物調湿システムであって、
上記建物内の空間又は屋外から流入した空気から水を抽出する水抽出装置と、
上記水抽出装置で抽出した水を貯留するタンクと、
上記タンクの水を上記建物内に供給する給水部と、
上記水抽出装置から空気を上記建物内の空間へ排出する換気装置と、
上記水抽出装置に流入する空気の湿度を検知する第1湿度センサと、
制御部と、を備えており、
上記換気装置は、上記水抽出装置から上記建物内の空間へ空気を排出する第1経路と、上記建物内の空間から空気を屋外へ排出する第2経路とを切り替え可能であり、
上記制御部は、上記第1湿度センサから取得した第1信号に基づいて上記水抽出装置を駆動しているときに、上記換気装置を上記第1経路として駆動し、上記第1湿度センサから取得した上記第1信号に基づいて上記水抽出装置を停止しているときに、上記換気装置を上記第2経路として駆動する建物調湿システム。
【請求項2】
上記水抽出装置は、流入した空気を浄化するフィルタを有している請求項1に記載の建物調湿システム。
【請求項3】
上記換気装置は、上記第1経路と上記第2経路との間で熱交換する熱交換器をさらに有している請求項
1または2に記載の建物調湿システム。
【請求項4】
上記水抽出装置は、上記建物内の空間から空気が流入する第3経路と、屋外から空気が流入する第4経路とを切り替え可能であり、
上記第1湿度センサは、上記第3経路を通じて上記水抽出装置に流入する空気の湿度を検知し、
上記第4経路を通じて上記水抽出装置に流入する空気の湿度を検知する第2湿度センサをさらに備えており、
上記制御部は、
上記第2湿度センサから取得した第2信号に基づいて、上記第4経路を通じて上記水抽出装置を駆動する請求項
1から3のいずれかに記載の建物調湿システム。
【請求項5】
上記換気装置は、屋外から空気が流入する第5経路を有しており、
上記制御部は、
上記換気装置を上記第2経路として駆動しているとき、上記第5経路を通じて上記換気装置から上記建物内の空間に空気を流入させる請求項
1から4のいずれかに記載の建物調湿システム。
【請求項6】
上記制御部は、
上記タンク内の水位を検知する水位センサから取得した第3信号に基づいて、上記水抽出装置の駆動を制御する請求項
1から5のいずれかに記載の建物調湿システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の空気を調湿する過程で水を確保することができる建物調湿システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物は室内における湿度が高くなると、カビや菌が繁殖し建材が腐食する他、人体にも悪影響を及ぼす。このため、室内の湿度が高いときには換気することで湿度の調整が行われる。このとき、水分を含んだ建物内の空気はそのまま室外に排出されることとなる。
【0003】
一方、空気中に含まれる水分から水を抽出することができる装置がある。例えば、特許文献1に示されるように、周囲空気から飲料水を抽出することができる水生成装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
災害が発生した際には断水になるおそれがあるため、建物内に水を備蓄しておくことが好ましい。しかし、水を備蓄するには、容器に入れた水を建物内に運び込んだり、備蓄した水の保存期間を管理したりする必要があり手間がかかる。
【0006】
他方、特許文献1に開示される水生成装置を用いることが考えられるが、建物内の湿度は季節や時間帯によって変化するので、水生成装置を常に運転すると、建物内の湿度が低くなりすぎるなどの問題が生じる。また、水生成装置の稼働を住人が監視するのは手間である。
【0007】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、建物内の湿度を調整しながら貯水することができる建物調湿システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る建物調湿システムは、建物に組み込まれ、上記建物内の空間又は屋外から流入した空気から水を抽出する水抽出装置と、上記水抽出装置で抽出した水を貯留するタンクと、上記タンクの水を上記建物内に供給する給水部と、上記水抽出装置から空気を上記建物内の空間へ排出する換気装置と、を備えている。
【0009】
上記構成によれば、水抽出装置は建物内の空間又は屋外の空気から水を抽出することができるため、抽出された水をタンクに貯留することができる。また、建物内の空間の空気から水を抽出して建物内の空間に戻して建物内の湿度を低下させることができる。これにより建物内において、水を確保するとともに湿度を調整できる。
【0010】
(2) 好ましくは、上記水抽出装置は、流入した空気を浄化するフィルタを有している。
【0011】
上記構成によれば、建物内の空間から水抽出装置に流入した空気をフィルタにかけて建物内の空間に送ることができるため、建物内の空気を浄化することができる。
【0012】
(3) 好ましくは、上記水抽出装置に流入する空気の湿度を検知する第1湿度センサと、制御部と、をさらに備えており、上記制御部は、上記第1湿度センサから取得した第1信号に基づいて上記水抽出装置の駆動を制御する。
【0013】
上記構成によれば、第1湿度センサの第1信号に基づいて水抽出装置を駆動することができるので、必要に応じて水の貯留と建物内の湿度を調整できる。
【0014】
(4) 好ましくは、上記換気装置は、上記水抽出装置から建物内の空間へ空気を排出する第1経路と、上記建物内の空間から空気を屋外へ排出する第2経路とを切り替え可能であり、上記制御部は、上記第1湿度センサから取得した上記第1信号に基づいて上記水抽出装置を駆動しているときに、上記換気装置を上記第1経路として駆動し、上記第1湿度センサから取得した上記第1信号に基づいて上記水抽出装置を停止しているときに、上記換気装置を上記第2経路として駆動する。
【0015】
上記構成によれば、建物内の空間の空気を水抽出装置を経由して建物内の空間へ排出するか、或いは水抽出装置を経由せずにそのまま屋外へ排出することで、タンクへの水の貯留を行ったり建物内の湿度を調整したりすることができる。
【0016】
(5) 好ましくは、上記換気装置は、上記第1経路と上記第2経路との間で熱交換する熱交換器をさらに有している。
【0017】
上記構成によれば、第1経路によって建物内の空間へ送られる空気の熱を熱交換器によって第2経路に伝達し第2経路から熱を屋外に排出できるため、建物内の温度を調整できる。
【0018】
(6) 好ましくは、上記水抽出装置は、上記建物内の空間から空気が流入する第3経路と、屋外から空気が流入する第4経路とを切り替え可能であり、上記第1湿度センサは、上記第3経路を通じて上記水抽出装置に流入する空気の湿度を検知し、上記第4経路を通じて上記水抽出装置に流入する空気の湿度を検知する第2湿度センサをさらに備えており、上記制御部は、上記第2湿度センサから取得した第2信号に基づいて、上記第4経路を通じて上記水抽出装置を駆動する。
【0019】
上記構成によれば、建物内または屋外のいずれからでも水抽出装置に空気を取り込むことができるため、建物内の湿度が低い場合には屋外から空気を取り込んで水を抽出してタンクに貯留できる。
【0020】
(7) 好ましくは、上記換気装置は、屋外から空気が流入する第5経路を有しており、上記制御部は、上記換気装置を上記第2経路として駆動しているとき、上記第5経路を通じて上記換気装置から建物内の空間に空気を流入させる。
【0021】
上記構成によれば、建物内の空気が第2経路を通って排出されるとき第5経路から屋外の空気が建物内に流入するため、建物内の気圧が低下するのを抑制できる。
【0022】
(8) 好ましくは、上記制御部は、タンク内の水位を検知する水位センサから取得した第3信号に基づいて、上記水抽出装置の駆動を制御する。
【0023】
上記構成によれば、タンクの水位に基づいて水抽出装置を駆動または停止することができるため、制御部は湿度に拘わらずタンクの水位に応じて貯水したり貯水を中断させたりすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る建物調湿システムは、建物内の湿度を調整しながら貯水できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、建物100に配置された本発明の一実施形態に係る建物調湿システム1,2を示す概略図である。
【
図2】
図2は、建物調湿システム1,2の概略構成図である。
【
図3】
図3は、建物調湿システム1,2の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る建物調湿システム1,2のプログラム38が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、変形例1に係る建物調湿システム3の機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、建物調湿システム3のプログラム38Aが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、変形例2に係る建物調湿システム4の概略構成図である。
【
図8】
図8は、建物調湿システム4の機能ブロック図である。
【
図9】
図9は、建物調湿システム4のプログラム38Bが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0027】
図1に示されるように、建物調湿システム1,2は、建物100内の各空間Sの湿度を調整しつつ水を抽出する。本実施形態では、建物100は2階建ての戸建て住宅であり、1階に、浴室105、キッチン106、ホール107が設けられている。建物100の2階には、納戸108、寝室109、子供部屋110が設けられている。これらの居室などの空間が各空間Sである。各空間Sは、
図1において1点鎖線で示される断熱ライン111の内側に位置する。本実施形態に係る建物調湿システム1においては、空間Sのうちホール107から空気が水抽出装置5に流入する場合を例にあげて説明している。また、建物調湿システム2においては、空間Sのうち納戸108から空気が水抽出装置5に流入する場合を例にあげて説明している。なお、建物100は一例であり、例えば、集合住宅などの他の形態であってもよいし、居室などのレイアウトも変更されてもよい。建物調湿システム1は、1階の天井と2階の床との間の空間102に配置されており、建物調湿システム2は、建物100の小屋裏空間101に配置されている。
【0028】
それぞれの建物調湿システム1,2は、配置する場所、空気を取り込む空間S、排出する空間Sが異なる以外、構成は同じであり便宜上各構成については同じ符号を付している。
図2に示されるように、建物調湿システム1,2は、水抽出装置5と、タンク6と、給水部7と、換気装置8と、第1湿度センサ9と、第2湿度センサ10と、端末装置11(
図3参照)と、コントローラ12(
図3参照、制御部の一例)と、を備えている。
【0029】
水抽出装置5は、水抽出装置5に流入した水蒸気を含む空気を装置内で循環させながら冷却して水を抽出する。水抽出装置5は、コントローラ12により駆動、停止が可能であり、常に駆動することで継続して水を抽出してタンク6に貯留することが可能である。
【0030】
図1および
図2に示されるように、第3経路22は、水抽出装置5にホール107または納戸108から空気が流入する流路である。水抽出装置5は、第3経路22から空気を取り込む第1ファン26を有している。第4経路23は、水抽出装置5に屋外Eから空気が流入する流路である。水抽出装置5は、第4経路23から空気を取り込む第2ファン27を有している。水抽出装置5は、第3湿度センサ18を有している。第3湿度センサ18は、水抽出装置5内で循環する空気の湿度を検知する。水抽出装置5は、フィルタ17を有している。フィルタ17は、水抽出装置5内において循環する空気を浄化する。
【0031】
水抽出装置5は、第1ファン26と第2ファン27との駆動切換によって装置内に取り込む空気の経路として第3経路22または第4経路23を用いる。建物調湿システム1では、ホール107から第3経路22を通って、或いは屋外Eから第4経路23を通って空気が水抽出装置5に流入する。水抽出装置5から排出された空気は、換気装置8を通じてキッチン106に排出される。建物調湿システム2では、納戸108から第3経路22を通って、或いは屋外Eから第4経路23を通って空気が水抽出装置5に流入する。水抽出装置5から排出された空気は換気装置8を通じて寝室109および子供部屋110に排出される。なお、建物調湿システム2において水抽出装置5から排出される空気は、寝室109のみに排出されてもよいし、子供部屋110のみに排出されてもよい。建物調湿システム1,2は、一時的に使用する部屋から空気を取り込んで、長く滞在する部屋に浄化した空気を排出するように配置されるのが望ましい。
【0032】
タンク6は、水抽出装置5と配管28によって水が流通可能に接続されている。タンク6は、水抽出装置5で抽出された水を貯留する。タンク6は、建物調湿システム1では浴室105の上方に配置されている。タンク6は、建物調湿システム2では納戸の天井に配置されている。タンク6は、断水と停電が同時に発生するような場合であっても、建物100内の各空間Sに水を供給できるように、水抽出装置5よりも下方に配置されており且つ給水部7よりも上方に配置されている。
【0033】
給水部7は、タンク6に貯留された水を建物100内の空間Sに生活用水として供給する。給水部7は、タンク6と配管29によって水が流通可能に接続されている。給水部7は、建物100内の空間Sに配置される(
図1参照)。具体的には、給水部7は、建物調湿システム1ではキッチン106に配置されている。給水部7は、建物調湿システム2では、寝室109に配置されている。給水部7には、タンク6の水を飲料水として利用できるように浄水殺菌装置が設置されていてもよい。
【0034】
換気装置8は、配管30によって水抽出装置5と接続されている。換気装置8は、第1経路20と、第2経路21と、熱交換器19と、を有している。
【0035】
第1経路20は、水抽出装置5から流入する空気を建物100内の空間Sに排出する。第1経路20には、水抽出装置5から空気を引き込み建物100内の空間Sに排出する第1吸引ファン42が配置されている。本実施形態における建物調湿システム1の第1経路20は、換気装置8がキッチン106に空気を排出する経路である。建物調湿システム2の第1経路20は、換気装置8が寝室109に空気を排出する経路と、子供部屋110に空気を排出する経路である。
【0036】
第2経路21は、建物100内の空間Sから空気を屋外Eへ排出する経路である。第2経路21には、建物100内の空間Sから空気を引き込み屋外Eに排出する第2吸引ファン43が配置されている。
【0037】
熱交換器19は、換気装置8内において第1経路20と第2経路21との間で熱交換可能である。本実施形態では、熱交換器19は、第2経路21を流通する空気の熱が第1経路20を流通する空気に伝達される。
【0038】
換気装置8は、第5経路24により屋外Eと通じている。第5経路24を通じて換気装置8の第1経路20に屋外Eの空気が流入する。
【0039】
建物調湿システム1においては、ホール107と屋外Eとが配管31により空気が流通可能に接続されている。また、キッチン106と屋外Eとが配管32により空気が流通可能に接続されている。建物調湿システム2においては、納戸108と屋外Eとが配管33により空気が流通可能に接続されている。寝室109と屋外Eとが配管34により空気が流通可能に接続されている。子供部屋110と屋外Eとが配管35により空気が流通可能に接続されている。
【0040】
第1湿度センサ9は、第3経路22を流れる空気の湿度を検知する。なお、第1湿度センサ9は、ホール107内の空気の湿度を検知してもよい。建物調湿システム2においては、第1湿度センサ9は、納戸108内の空気の湿度を検知してもよい。つまり、第1湿度センサ9は、第3経路22が水抽出装置5または換気装置8へ向かって配管が分岐する分岐位置よりも上流側に配置されていればよい。
【0041】
第2湿度センサ10は、第4経路23を流れる空気の湿度を検知する。なお、建物調湿システム1,2において第2湿度センサ10は屋外Eに設置されていてもよい。第2湿度センサ10は、屋外Eから水抽出装置5および換気装置8に向かって延びる配管が分岐する分岐位置よりも上流側に配置されていればよい。
【0042】
図3に示されるように、端末装置11は、建物調湿システム1,2を制御する装置である。建物調湿システム1,2のユーザは、建物100内に取り付けられた端末装置11のタッチパネル40を操作してコントローラ12にコマンドを入力する。
【0043】
コントローラ12は、中央演算処理装置であるCPU36と、メモリ37と、を有する。メモリ37は、ハードディスクなどの記憶領域や、各種プログラム38の実行に使用されるRAMなどの記憶領域を有する。メモリ37には、予め設定された各種閾値が記憶されている。
【0044】
CPU36、メモリ37、タッチパネル40、水抽出装置5、換気装置8、熱交換器19、第1湿度センサ9、第2湿度センサ10、第3湿度センサ18は、通信バス39を介して相互に電気信号を伝達可能に接続されている。CPU36によって実行される各種プログラム38は、メモリ37から情報やデータを読み出し或いは書き込むことができ、画面データを端末装置11に表示させ、第1湿度センサ9、第2湿度センサ10、第3湿度センサ18、タッチパネル40から各種信号を検知し、水抽出装置5、換気装置8、熱交換器19を駆動させることができる。
【0045】
以下、プログラム38が実行する処理であって、本実施形態に係る建物調湿システム1,2によって建物100内の空間Sの空気の湿度を調整する処理について、
図4を参照して説明する。
【0046】
建物調湿システム1,2は、ユーザが電源を入れることで起動する。建物調湿システム1,2が起動したとき、コントローラ12は第1湿度センサ9から第1信号を受信し、ホール107や納戸108の空気の湿度(以下、「室内湿度」とも称する。)が閾値55%より大きいかを判断する(S10)。
【0047】
コントローラ12は、室内湿度が閾値55%よりも大きいと判断したとき(S10:Yes)、第1ファン26を駆動するとともに水抽出装置5を駆動する(S11)。これにより、水抽出装置5には、第3経路22を通ってホール107や納戸108から空気が取り込まれる(以下、この空気の取り込みを「室内吸気」とも称する。)。このとき、水抽出装置5に取り込まれた空気は装置内において循環し水が抽出される。水抽出装置5において抽出された水はタンク6に貯留される。
【0048】
コントローラ12は、第3湿度センサ18から第4信号を受信して、水抽出装置5内を循環する空気の湿度が閾値50%以下であるかを判断する(S12)。
【0049】
コントローラ12は、水抽出装置5内の空気の湿度が閾値50%よりも大きいと判断したとき(S12:No)、水抽出装置5の駆動を継続する。コントローラ12は、水抽出装置5内の空気の湿度が閾値50%以下と判断したとき(S12:Yes)、換気装置8の第1吸引ファン42を駆動する(S13)。第1吸引ファン42の駆動により、第1経路20を通じて、水抽出装置5の空気がキッチン106、寝室109、子供部屋110にそれぞれ排出される(以下、この空気の排出を「室内排気」とも称する。)。コントローラ12は、ステップS13における室内排気を行った後、再び室内湿度が閾値55%より大きいかを判断する(S10)。
【0050】
コントローラ12は、室内湿度が閾値55%以下であると判断したとき(S10:No)、第1ファン26および水抽出装置5を停止する(S14)。続いて、コントローラ12は、換気装置8の第2吸引ファン43を駆動する(S15)。第2吸引ファン43の駆動により、ホール107や納戸108の空気が換気装置8を通じて屋外Eに排出される(以下、この空気の排出を「室外排気」とも称する。)。コントローラ12は、ステップ15における室外排気を行った後、再び室内湿度が閾値55%より大きいか否かについて判断する(S10)。つまり、コントローラ12は、ユーザによって建物調湿システム1の電源がOFFにされるまでステップS10からS15の工程を繰り返す。
【0051】
ステップS15において換気装置8の第2吸引ファン43が駆動されると、ホール107や納戸108の空気が屋外Eに排出される。空気が断熱ライン111内から屋外Eへ流出することにより、ホール107や納戸108が負圧になるが、第5経路24を通じて屋外Eの空気が換気装置8に取り込まれ、換気装置8の第1経路20からキッチン106、或いは寝室109および子供部屋110に空気が流れ込む。
【0052】
図1に示されるように、建物調湿システム1においては、キッチン106に空気が取り込まれることでキッチン106内の空気が配管32から排出された後に配管31を通ってホール107に取り込み可能である。建物調湿システム2においては、寝室109および子供部屋110に空気が取り込まれることで空気が配管34,35から排出された後に配管33を通って納戸108に取り込み可能である。このため、建物100の各空間Sにおける圧力は大気圧に保たれる。また、第1経路20を通じてホール107や納戸108へ空気が取り込まれるとき、換気装置8内では熱交換器19を介して第2経路21に流れる空気によって熱を回収してキッチン106、或いは寝室109および子供部屋110に戻すことが可能である。
【0053】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態に係る建物調湿システム1,2によれば、水抽出装置5はホール107や納戸108の空気に含まれる水蒸気から水を抽出することができるため、抽出された水をタンク6に貯留することができる。また、ホール107や納戸108の空気から水を抽出して空気をキッチン106、或いは寝室109および子供部屋110に戻すことで空間Sの湿度が低下する。これにより建物100内において、水を確保するとともに空間Sの湿度を調整できる。
【0054】
また、建物調湿システム1,2によれば、ホール107や納戸108から水抽出装置5に流入した空気をフィルタ17にかけて浄化した後にキッチン106、或いは寝室109および子供部屋110に送ることができる。これにより建物100内の空気を浄化できる。
【0055】
また、建物調湿システム1,2によれば、第1湿度センサ9の第1信号に基づいて水抽出装置5をコントローラ12によって駆動できるので、必要に応じて水の貯留と建物100内の空間Sの湿度を調整できる。
【0056】
また、建物調湿システム1,2によれば、ホール107や納戸108の空気を水抽出装置5を経由してキッチン106、或いは寝室109および子供部屋110へ排出するか、或いは水抽出装置5を経由せずにそのまま屋外Eへ排出できるため、タンク6への水の貯留を行ったり建物100内の湿度を調整したりすることができる。
【0057】
また、建物調湿システム1,2によれば、第1経路20によってキッチン106、或いは寝室109および子供部屋110へ送られる空気の熱を熱交換器19によって第2経路21に伝達して第2経路21から熱を屋外Eに排出できる。このため、建物100内の温度も調整できる。
【0058】
また、建物調湿システム1,2によれば、建物100内または屋外Eのいずれからでも水抽出装置5に空気を取り込むことができるため、建物100内の湿度が低い場合には屋外Eから空気を取り込んで水を抽出することができ、タンク6に常に水を貯留できる。
【0059】
また、建物調湿システム1,2によれば、ホール107や納戸108の空気が第2経路21を通って排出されるとき、第5経路24から屋外Eの空気が建物100内に流入するため、建物100内の気圧が低下するのを抑制できる。
【0060】
[変形例1]
上述の実施形態では、建物調湿システム1,2のコントローラ12が第1湿度センサ9、第2湿度センサ10、および第3湿度センサ18から第1信号、第2信号、および第4信号を受信して建物調湿システム1,2を駆動制御する場合を例にあげて説明したが、この構成に限らない。例えば、建物調湿システム3のタンク6が水位センサ60(
図5参照)をさらに備えていてもよい。水位センサ60は、タンク6に貯留された水の水位(液面)が所定の高さより高いとき、すなわちタンク6に所定量の水が貯留されているときときに第3信号を出力する。
【0061】
以下、変形例1に係る建物調湿システム3のプログラム38Aが実行する処理であって、建物100内の空間Sの空気の湿度を調整する処理について、
図6を参照して説明する。
【0062】
建物調湿システム3は、ユーザが電源を入れることで起動する。コントローラ12は、水位センサ60から第3信号を受信したかを判断する(S30)。
【0063】
コントローラ12は、水位センサ60から第3信号を受信しないとき(S30:No)、第1ファン26を駆動するとともに水抽出装置5を駆動する(S31)。これにより、水抽出装置5には、ホール107や納戸108から第3経路22を通って室内吸気される。このとき、水抽出装置5内で水が抽出され、抽出された水がタンク6に貯留される。
【0064】
コントローラ12は、第3湿度センサ18から第4信号を受信して、室内吸気の空気の湿度が閾値50%以下であるか否かを判断する(S32)。
【0065】
コントローラ12は、水抽出装置5の空気の湿度が閾値50%よりも大きいと判断したとき(S32:No)、水抽出装置5の駆動を継続する。このとき、湿度が閾値50%よりも大きい空気は、水抽出装置5内を循環する。コントローラ12は、水抽出装置5内の空気の湿度が50%以下と判断したとき(S32:Yes)、換気装置8の第1吸引ファン42を駆動する(S33)。第1吸引ファン42の駆動により、第1経路20を通じて、水抽出装置5の空気がキッチン106、或いは寝室109および子供部屋110に室内排気される。コントローラ12は、ステップS33における室内排気を行った後、再び水位センサ60から第3信号を受信したかを判断する(S30)。
【0066】
コントローラ12は、水位センサ60から第3信号を受信したとき(S30:Yes)、室内湿度が閾値55%より大きいかを判断する(S40)。
【0067】
コントローラ12は、室内湿度が55%よりも大きいと判断したとき(S40:Yes)、第1ファン26を駆動するとともに水抽出装置5を駆動する(S41)。これにより、水抽出装置5には、第3経路22を通ってホール107や納戸108から室内吸気される。このとき、水抽出装置5内の空気から水が抽出され、抽出された水がタンク6に貯留される。
【0068】
コントローラ12は、第3湿度センサ18から第4信号を受信して、水抽出装置5内を循環する空気の湿度が閾値50%以下であるかを判断する(S42)。
【0069】
コントローラ12は、水抽出装置5の空気の湿度が50%よりも大きいと判断したとき(S42:No)、水抽出装置5の駆動を継続する。コントローラ12は、水抽出装置5内の空気の湿度が50%以下と判断したとき(S42:Yes)、換気装置8の第1吸引ファン42を駆動する。第1吸引ファン42の駆動により、第1経路20を通じて水抽出装置5の空気がキッチン106、寝室109、子供部屋110にそれぞれ室内排気される(S43)。
【0070】
コントローラ12は、室内湿度が閾値55%以下であると判断したとき(S40:No)、第1ファン26および水抽出装置5を停止する(S44)。続いて、コントローラ12は、換気装置8の第2吸引ファン43を駆動する(S45)。第2吸引ファン43の駆動により、ホール107や納戸108の空気が換気装置8を通じて室外排気される。
【0071】
コントローラ12は、ステップS33、ステップS43における室内排気、および、ステップS45における室外排気を行った後、再びタンク6内の水位センサ60から第3信号を受信したかを判断する(S30)。コントローラ12は、ステップS30からS45の工程を繰り返す。
【0072】
ステップS45においてホール107や納戸108の空気が換気装置8を通じて室外排気されるとき、上述の実施形態と同様に、配管31および配管33を通って空気を取り込むことで建物100の各空間Sにおける圧力は大気圧に保たれる。また、換気装置8内において熱交換器19を介して第2経路21に流れる空気から熱を回収してキッチン106、寝室109、子供部屋110のそれぞれに戻すことが可能である。
【0073】
変形例1に係る建物調湿システム3によれば、タンク6の水位に基づいて水抽出装置5を駆動または停止できるため、コントローラ12は湿度に拘わらずタンク6の水位に応じて貯水したり貯水を中断させたりできる。
【0074】
なお、水位センサ60は、タンク6に貯留された水の水位が所定高さ以上になったときに、タンク6に貯留された水を浴槽や洗濯機などに排水するために設置されたものであってもよい。
【0075】
[変形例2]
上述の実施形態では、建物調湿システム1,2において、ホール107または納戸108、或いは屋外Eから空気が水抽出装置5に流入する場合を例にあげて説明したがこの構成に限らない。例えば、水抽出装置5に浴室105のみから空気が流入する建物調湿システム4であってもよい。
【0076】
より具体的には、
図7および
図8に示されるように、建物調湿システム4は屋外Eから空気を取り込むことなく浴室105の空気をキッチン106に排出する。建物調湿システム4は、水抽出装置5と、タンク6と、給水部7と、換気装置8と、端末装置11と、コントローラ12と、を備えている。
【0077】
水抽出装置5は、浴室105から第3経路22を通って水抽出装置5に空気を流入させる第3ファン80を有している。換気装置8は、第1経路20を有しており、水抽出装置5から排出された空気は換気装置8の第1経路20を通じてキッチン106に排出される。
【0078】
タッチパネル40はタンク6への水の貯留を行うスイッチ81を有している。なお、その他のタンク6、給水部7の構成は上述の実施形態と同様である。
【0079】
CPU36、メモリ37、タッチパネル40、水抽出装置5、換気装置8、第3湿度センサ18は、通信バス39を介して相互に電気信号を伝達可能に接続されている。CPU36によって実行される各種プログラム38Bは、第3湿度センサ18、タッチパネル40から各種信号を検知し、水抽出装置5、換気装置8を駆動させることができる。
【0080】
以下、変形例2に係る建物調湿システム4のプログラム38Bが実行する処理であって、建物100内の空間Sの空気の湿度を調整する処理について、
図9を参照して説明する。
【0081】
建物調湿システム4は、ユーザが電源を入れることで起動する。まず、コントローラ12は、第3ファン80を駆動するとともに水抽出装置5を駆動する(S60)。これにより、浴室105から水抽出装置5に空気が取り込まれる(以下、この空気の取り込みを「浴室吸気」とも称する。)。このとき、水抽出装置5内で水が抽出され、抽出された水がタンク6に貯留される。なお、タッチパネル40のスイッチ81は、建物調湿システム4の電源が入れられたことに連動してONの状態となるが、スイッチ81のONOFFは手動で行われるものであってもよい。
【0082】
コントローラ12は、第3湿度センサ18から第4信号を受信して、水抽出装置5内を循環する空気の湿度が閾値50%以下であるかを判断する(S61)。
【0083】
コントローラ12は、水抽出装置5の空気の湿度が閾値50%よりも大きいと判断したとき(S61:No)、水抽出装置5の駆動を継続する。このとき、湿度が閾値50%よりも大きい空気は水抽出装置5内を循環する。コントローラ12は、水抽出装置5内の空気の湿度が閾値50%以下と判断したとき(S61:No)、換気装置8の第1吸引ファン42を駆動する(S62)。第1吸引ファン42の駆動により、第1経路20を通じて、水抽出装置5の空気がキッチン106に排出される。
【0084】
コントローラ12は、スイッチ81がユーザによってOFFにされたか判断する(S63)。コントローラ12は、スイッチ81がONであると判断したとき(S63:No)、浴室吸気を継続する(S60)。つまり、コントローラ12は、ステップS60からS63の工程を繰り返す
【0085】
コントローラ12は、スイッチ81がOFFであると判断したとき(S63:Yes)、水抽出装置5を停止し(S64)、建物調湿システム4による建物100内の空間Sの空気の湿度調整を終了させる。
【0086】
建物調湿システム4は、浴室105内の除湿を行うだけでなく、浴室105内の湿気を水として抽出して有効に活用することができる。
【0087】
[その他の変形例]
上述の実施形態では、建物調湿システム1,2が建物100の小屋裏空間101、および1階と2階の間の空間102に配置される場合を例に挙げて説明したが、小屋裏空間101または1階と2階の間の空間102以外の場所に配置されるものであってもよい。
【0088】
また、建物調湿システム1,2の端末装置11は、タッチパネル40で建物調湿システム1を操作するものを例にあげて説明したが、この構成に限らない。端末装置11は、例えば、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)、或いは、NFCなどの近接無線通信によって接続されたスマートフォンやタブレット端末によって建物調湿システムが操作されるものであってもよい。
【0089】
また、建物調湿システム1,2は、ホール107や納戸108から空気を取り込んで、第1湿度センサ9、第2湿度センサ10、および第3湿度センサ18のセンサ群から受信した信号に基づいて水抽出装置5、換気装置8を駆動する場合を例にあげて説明したが、この構成に限らない。建物調湿システムは、例えば、センサおよびコントローラ12が配置されておらず、浴室105から取り込んだ空気から水抽出装置5において水を抽出し、換気装置8によって室内排気するものであってもよい。
【0090】
また、水抽出装置5が、第1ファン26と第2ファン27の駆動の切換によって装置内に取り込む空気の経路として第3経路22と第4経路23とを切換可能である場合を例にあげて説明したが、この構成に限らない。水抽出装置5は、例えば、水抽出装置5内に第3経路22と第4経路23との間で流路を切換可能な切換装置を有するものであってよい。
【符号の説明】
【0091】
1,2,3,4・・・建物調湿システム
5・・・水抽出装置
6・・・タンク
7・・・給水部
8・・・換気装置
9・・・第1湿度センサ
10・・・第2湿度センサ
12・・・コントローラ(制御部)
17・・・フィルタ
19・・・熱交換器
20・・・第1経路
21・・・第2経路
22・・・第3経路
23・・・第4経路
24・・・第5経路
60・・・水位センサ
100・・・建物
S・・・建物内の空間
E・・・屋外