IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

特許7517360車両用駆動装置及び遊星歯車機構の製造方法
<>
  • 特許-車両用駆動装置及び遊星歯車機構の製造方法 図1
  • 特許-車両用駆動装置及び遊星歯車機構の製造方法 図2
  • 特許-車両用駆動装置及び遊星歯車機構の製造方法 図3
  • 特許-車両用駆動装置及び遊星歯車機構の製造方法 図4
  • 特許-車両用駆動装置及び遊星歯車機構の製造方法 図5
  • 特許-車両用駆動装置及び遊星歯車機構の製造方法 図6
  • 特許-車両用駆動装置及び遊星歯車機構の製造方法 図7
  • 特許-車両用駆動装置及び遊星歯車機構の製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】車両用駆動装置及び遊星歯車機構の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/10 20120101AFI20240709BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F16H48/10
H02K7/116
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022059333
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2023150298
(43)【公開日】2023-10-16
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光彦
(72)【発明者】
【氏名】松田 慎太郎
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-085509(JP,A)
【文献】特開2015-075139(JP,A)
【文献】特開2011-231842(JP,A)
【文献】特開2004-019900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/10
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源に駆動連結される入力部材と、
前記入力部材の回転を減速して車輪に駆動連結される出力部材に出力する減速機と、
を備えた車両用駆動装置であって、
前記減速機は、第1ギヤ部と前記第1ギヤ部とは歯数が異なる第2ギヤ部とを備えた2N(Nは2以上の整数を表す)個の遊星ギヤと、2N個の前記遊星ギヤをそれぞれ回転自在に支持するキャリヤと、を備えた遊星歯車機構を備え、
2N個の前記遊星ギヤが周方向に等間隔で配置され、
前記周方向に隣り合う前記遊星ギヤの噛み合い位相が逆位相であり、
前記遊星歯車機構における前記第1ギヤ部及び前記第2ギヤ部に噛み合う全てのギヤの歯数が、2Nで除算した場合に余りがNとなる値であり、
2N個の前記遊星ギヤには、N個の第1種遊星ギヤと、N個の第2種遊星ギヤとが含まれ、
前記第1種遊星ギヤと前記第2種遊星ギヤとは、前記第1ギヤ部のギヤ歯に対する前記第2ギヤ部のギヤ歯の位相が互いに異なっており、
前記第1種遊星ギヤと前記第2種遊星ギヤとが前記周方向に沿って交互に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
2N個の前記遊星ギヤのそれぞれの回転軸心を遊星ギヤ軸心として、前記第1種遊星ギヤの前記第1ギヤ部のギヤ歯に対する前記第2ギヤ部のギヤ歯の位相と、前記第2種遊星ギヤの前記第1ギヤ部のギヤ歯に対する前記第2ギヤ部のギヤ歯の位相と、の差である位相差が、180°を前記第1ギヤ部に噛み合うリングギヤの歯数で除算した角度と180°を前記第2ギヤ部に噛み合うリングギヤの歯数で除算した角度との差に対応した前記遊星ギヤ軸心上での角度差、又は、180°を前記第1ギヤ部に噛み合うサンギヤの歯数で除算した角度と180°を前記第2ギヤ部に噛み合うサンギヤの歯数で除算した角度との差に対応した前記遊星ギヤ軸心上での角度差に設定されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記駆動源は、前記入力部材と一体的に回転するように連結されたロータを備えた回転電機であり、
前記出力部材が一対設けられ、
前記減速機を介して伝達される前記ロータの回転を一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構をさらに備え、
前記減速機は、前記第1ギヤ部に噛み合うサンギヤ及び第1リングギヤと、前記第2ギヤ部に噛み合う第2リングギヤと、をさらに備え、
前記サンギヤが、前記ロータと一体的に回転するように連結され、
前記第1リングギヤが、非回転部材に固定され、
前記第2リングギヤが、前記差動歯車機構の入力要素と一体的に回転するように連結されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記駆動源は、前記入力部材と一体的に回転するように連結されたロータを備えた回転電機であり、
前記出力部材が一対設けられ、
前記減速機を介して伝達される前記ロータの回転を一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構をさらに備え、
前記ロータの回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記ロータと前記減速機と前記差動歯車機構とが同軸上に配置されているとともに、
前記ロータ、前記減速機、及び前記差動歯車機構が、前記軸方向第1側から前記軸方向第2側に向けて記載の順に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
第1ギヤ部と前記第1ギヤ部とは歯数が異なる第2ギヤ部とを備えた2N(Nは2以上の整数を表す)個の遊星ギヤと、2N個の前記遊星ギヤをそれぞれ回転自在に支持するキャリヤと、を備えた遊星歯車機構の製造方法であって、
前記第1ギヤ部及び前記第2ギヤ部に噛み合う全てのギヤの歯数を、2Nで除算した場合に余りがNとなる値とし、
2N個の前記遊星ギヤとして、前記第1ギヤ部のギヤ歯に対する前記第2ギヤ部のギヤ歯の位相が予め定められた設定位相差だけ互いに異なる、N個の第1種遊星ギヤと、N個の第2種遊星ギヤと、を準備し、
2N個の前記遊星ギヤを周方向に等間隔で配置し、かつ、前記第1種遊星ギヤと前記第2種遊星ギヤとを前記周方向に沿って交互に配置し、
2N個の前記遊星ギヤのそれぞれの回転軸心を遊星ギヤ軸心として、前記設定位相差を、180°を前記第1ギヤ部に噛み合うリングギヤの歯数で除算した角度と180°を前記第2ギヤ部に噛み合うリングギヤの歯数で除算した角度との差に対応した前記遊星ギヤ軸心上での角度差、又は、180°を前記第1ギヤ部に噛み合うサンギヤの歯数で除算した角度と180°を前記第2ギヤ部に噛み合うサンギヤの歯数で除算した角度との差に対応した前記遊星ギヤ軸心上での角度差に設定する、遊星歯車機構の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動装置及び遊星歯車機構の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機と、車輪に駆動連結される一対の出力部材と、ロータの回転を減速する減速機と、減速機を介して伝達されるロータの回転を一対の出力部材に分配する差動歯車機構とを備えた車両用駆動装置が利用されている。このような車両用駆動装置の一例が、特開2002-104001号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置(電気自動車の駆動装置)は、減速機(減速装置3)として、第1ギヤ部(第1プラネタリギアP1)と第1ギヤ部とは歯数が異なる第2ギヤ部(第2プラネタリギアP2)とを備えた遊星ギヤを回転自在に支持するキャリヤ(キャリアC)を備えた遊星歯車機構を備えている。また、減速機を構成する遊星歯車機構は、第1ギヤ部に噛み合うとともにロータと一体的に回転するように連結されたギヤ(サンギアS1)と、第1ギヤ部に噛み合うとともに非回転部材(ハウジング1)に固定されたギヤ(第1リングギアR1)と、第2ギヤ部に噛み合うとともに差動歯車機構(差動機4)の入力要素(リングギアDR)と一体的に回転するように連結されたギヤ(第2リングギアR2)とを備えている。特許文献1の車両用駆動装置は、このような構成の減速機を採用することで、軽量化及び低コスト化を実現している。
【0004】
しかし、特許文献1の車両用駆動装置では、第1ギヤ部とそれに対応するギヤとの噛み合い及び第2ギヤ部とそれに対応するギヤとの噛み合いによって、比較的大きいギヤノイズが生じる(すなわち、キャリヤの回転軸心に径方向振動が生じたり捩り振動が生じたりする)可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-104001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、減速機を構成する遊星歯車機構におけるギヤノイズが低減された車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る車両用駆動装置は、
駆動源に駆動連結される入力部材と、
前記入力部材の回転を減速して車輪に駆動連結される出力部材に出力する減速機と、
を備えた車両用駆動装置であって、
前記減速機は、第1ギヤ部と前記第1ギヤ部とは歯数が異なる第2ギヤ部とを備えた2N(Nは2以上の整数を表す)個の遊星ギヤと、2N個の前記遊星ギヤをそれぞれ回転自在に支持するキャリヤと、を備えた遊星歯車機構を備え、
2N個の前記遊星ギヤが周方向に等間隔で配置され、
前記周方向に隣り合う前記遊星ギヤの噛み合い位相が逆位相であり、
前記遊星歯車機構における前記第1ギヤ部及び前記第2ギヤ部に噛み合う全てのギヤの歯数が、2Nで除算した場合に余りがNとなる値であり、
2N個の前記遊星ギヤには、N個の第1種遊星ギヤと、N個の第2種遊星ギヤとが含まれ、
前記第1種遊星ギヤと前記第2種遊星ギヤとは、前記第1ギヤ部のギヤ歯に対する前記第2ギヤ部のギヤ歯の位相が互いに異なっており、
前記第1種遊星ギヤと前記第2種遊星ギヤとが前記周方向に沿って交互に配置されている。
【0008】
この構成によれば、N個の第1種遊星ギヤとN個の第2種遊星ギヤとで、それぞれのギヤの噛み合いによって生じる径方向の力を互いに相殺させて総和をゼロに近づけることができるとともに、それぞれのギヤの噛み合い部に作用する接線方向のモーメントを互いに相殺させて総和をゼロに近づけることができる。よって、キャリヤの回転軸心周りでの径方向振動の発生を抑制することができるとともに、捩り振動の発生を抑制することができる。これらのことから、ギヤノイズが低減された車両用駆動装置を実現することができる。
【0009】
また、本開示に係る遊星歯車機構の製造方法は、
第1ギヤ部と前記第1ギヤ部とは歯数が異なる第2ギヤ部とを備えた2N(Nは2以上の整数を表す)個の遊星ギヤと、2N個の前記遊星ギヤをそれぞれ回転自在に支持するキャリヤと、を備えた遊星歯車機構の製造方法であって、
前記第1ギヤ部及び前記第2ギヤ部に噛み合う全てのギヤの歯数を、2Nで除算した場合に余りがNとなる値とし、
2N個の前記遊星ギヤとして、前記第1ギヤ部のギヤ歯に対する前記第2ギヤ部のギヤ歯の位相が予め定められた設定位相差だけ互いに異なる、N個の第1種遊星ギヤと、N個の第2種遊星ギヤと、を準備し、
2N個の前記遊星ギヤを周方向に等間隔で配置し、かつ、前記第1種遊星ギヤと前記第2種遊星ギヤとを前記周方向に沿って交互に配置し、
2N個の前記遊星ギヤのそれぞれの回転軸心を遊星ギヤ軸心として、前記設定位相差を、180°を前記第1ギヤ部に噛み合うリングギヤの歯数で除算した角度と180°を前記第2ギヤ部に噛み合うリングギヤの歯数で除算した角度との差に対応した前記遊星ギヤ軸心上での角度差、又は、180°を前記第1ギヤ部に噛み合うサンギヤの歯数で除算した角度と180°を前記第2ギヤ部に噛み合うサンギヤの歯数で除算した角度との差に対応した前記遊星ギヤ軸心上での角度差に設定する。
【0010】
この構成によれば、第1ギヤ部に噛み合うギヤと第2ギヤ部に噛み合うギヤとの回転方向の相対位置が固定されている場合であっても、2N個の遊星ギヤの第1ギヤ部及び第2ギヤ部をそれぞれ対応するギヤに適切に噛み合わせることができ、これらを容易に組み付けることができる。また、N個の第1種遊星ギヤとN個の第2種遊星ギヤとで、それぞれのギヤの噛み合いによって生じる径方向の力を互いに相殺させて総和をゼロに近づけることができるとともに、それぞれのギヤの噛み合い部に作用する接線方向のモーメントを互いに相殺させて総和をゼロに近づけることができる。よって、キャリヤの回転軸心周りでの径方向振動の発生を抑制することができるとともに、捩り振動の発生を抑制することができる。これらのことから、ギヤノイズが低減された遊星歯車機構を製造することができる。
【0011】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の車両用駆動装置のスケルトン図
図2】減速機の近傍の断面図
図3】遊星ギヤ及びリングギヤを軸方向から見た模式図
図4図3の部分拡大図
図5】サンギヤと遊星ギヤとの噛み合いによって生じる力の概念図
図6】回転位置に応じた径方向の噛み合い力を示すグラフ
図7】回転位置に応じた径方向の噛み合い力を示すグラフ
図8】回転位置に応じた接線方向の噛み合いモーメントを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、車両用駆動装置1は、回転電機2と、減速機3と、差動歯車機構4と、車輪Wに駆動連結される出力部材5とを備えている。これらは、ケース(駆動装置ケース)7内に収容されている。
【0014】
以下の説明において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を意味する。この概念には、2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態や、1つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態が含まれる。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(軸、歯車機構、ベルト等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等)が含まれても良い。
【0015】
また、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いる。
【0016】
本実施形態では、回転電機2(ロータ22)と減速機3と差動歯車機構4とが、同軸上に配置されている。以下の説明では、これらに共通の回転軸心に沿う方向を「軸方向L」と言う。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」と言い、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」と言う。回転電機2(ロータ22)、減速機3、及び差動歯車機構4は、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向けて記載の順に配置されている。
【0017】
このように、
回転電機2は、ロータ軸25と一体的に回転するように連結されたロータ22を備えた回転電機2であり、
出力部材5が一対設けられ、
減速機3を介して伝達されるロータ22の回転を一対の出力部材5に分配する差動歯車機構4をさらに備え、
ロータ22の回転軸心に沿う方向を軸方向Lとし、軸方向Lの一方側を軸方向第1側L1とし、軸方向Lの他方側を軸方向第2側L2として、
ロータ22と減速機3と差動歯車機構4とが同軸上に配置されているとともに、
ロータ22、減速機3、及び差動歯車機構4が、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向けて記載の順に配置されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、回転電機2、減速機3、及び差動歯車機構4が同軸上に配置されているため、車両用駆動装置1の小型化、特に径方向寸法の小型化を図りやすい。
【0019】
回転電機2は、車輪Wの駆動力源として設けられている。回転電機2は、非回転部材であるケース7に固定されたステータ21と、このステータ21の径方向内側に回転自在に支持されたロータ22とを備えている。回転電機2は、蓄電装置(図示せず)から電力の供給を受けて力行し、或いは、車両の慣性力等によって発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。回転電機2のロータ22は、ロータ軸25と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、回転電機2が「駆動源」に相当し、ロータ軸25が「入力部材」に相当する。
【0020】
ロータ軸25は、ロータ22から軸方向第2側L2に向けて延出している。ロータ軸25の軸方向第2側L2の端部には、減速機3を構成する遊星歯車機構30のサンギヤ31が一体的に回転するように連結されている。
【0021】
減速機3は、ロータ22の回転を減速する。図1及び図2に示すように、本実施形態の減速機3は、遊星歯車機構30を備えている。減速機3を構成する遊星歯車機構30は、サンギヤ31と、キャリヤ32と、第1リングギヤ36と、第2リングギヤ37との4つの回転要素を備えている。サンギヤ31は、減速機3の入力回転要素であり、ロータ軸25及びロータ22と一体的に回転するように連結されている。第1リングギヤ36は、非回転部材であるケース7に固定されている。第2リングギヤ37は、減速機3の出力回転要素であり、差動歯車機構4の差動ケース41と一体的に回転するように連結されている。キャリヤ32は、サンギヤ31及び第1リングギヤ36に噛み合う第1ギヤ部34と第2リングギヤ37に噛み合う第2ギヤ部35とを一体的に備えた複数の遊星ギヤ33をそれぞれ回転自在に支持している。
【0022】
このように、
回転電機2は、ロータ軸25と一体的に回転するように連結されたロータ22を備えた回転電機2であり、
出力部材5が一対設けられ、
減速機3を介して伝達されるロータ22の回転を一対の出力部材5に分配する差動歯車機構4をさらに備え、
減速機3は、第1ギヤ部34に噛み合うサンギヤ31及び第1リングギヤ36と、第2ギヤ部35に噛み合う第2リングギヤ37と、をさらに備え、
サンギヤ31が、ロータ22と一体的に回転するように連結され、
第1リングギヤ36が、ケース7に固定され、
第2リングギヤ37が、差動歯車機構4の差動ケース41と一体的に回転するように連結されていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、比較的簡素な構成の減速機3により、ロータ22の回転を比較的大きい減速比で減速して差動歯車機構4に伝達することができる。よって、車両用駆動装置1の小型化及び軽量化を図りやすい。
【0024】
キャリヤ32は、キャリヤ軸心X1周りに回転する。キャリヤ軸心X1は、減速機3の回転軸心でもあり、回転電機2(ロータ22)及び差動歯車機構4と共通の回転軸心となっている。複数の遊星ギヤ33は、それぞれ遊星ギヤ軸心X2周りに回転(自転)しながら、キャリヤ32と共にキャリヤ軸心X1周りに回転(公転)する(図3を参照)。
【0025】
また、遊星ギヤ33の第1ギヤ部34と第2ギヤ部35とは、互いに異なる外径に形成されているとともに、歯数も互いに異なっている。本実施形態では、第1ギヤ部34は、第2ギヤ部35に比べて、大径に形成されているとともに歯数が多く設定されている。
【0026】
第2リングギヤ37と一体的に回転するように連結された差動ケース41は、差動歯車機構4の入力回転要素である。本実施形態では、差動ケース41が「入力要素」に相当する。差動歯車機構4は、差動ケース41と差動本体部42とを備えている。差動本体部42は、互いに噛み合う複数の傘歯車(例えばピニオンギヤ及びサイドギヤ)を備えており、差動動作を担っている。差動歯車機構4には、一対の出力部材5が駆動連結されている。差動歯車機構4は、減速機3を介して伝達されるロータ22の回転を一対の出力部材5に分配する。
【0027】
一対の出力部材5は、それぞれが車輪Wに駆動連結されている。本実施形態では、軸方向第1側L1の出力部材5は、減速機3及び回転電機2の径方向内側を貫通するように配置されており、回転電機2よりも軸方向第1側L1で車輪Wに駆動連結されている。
【0028】
本実施形態の車両用駆動装置1は、減速機3を構成する遊星歯車機構30に備えられるキャリヤ32に支持された遊星ギヤ33の個数との関係における、サンギヤ31、第1リングギヤ36、及び第2リングギヤ37の歯数設定に1つの特徴を有している。また、それとの関係で、キャリヤ32に支持される複数の遊星ギヤ33が、多くの場合そうであるように単一種で構成されるのではなく、互いに異なる2種を含んで構成される点にも1つの特徴を有している。以下、この点について説明する。
【0029】
本実施形態のキャリヤ32に支持されている遊星ギヤ33の個数は、4以上の偶数個である。すなわち、代数「N」を2以上の整数としたとき、2N個の遊星ギヤ33が、それぞれキャリヤ32に回転自在に支持されている。遊星ギヤ33の個数は、4以上の偶数個であれば特に限定されないが、複数の遊星ギヤ33を支持するキャリヤ32の強度を確保する観点からは4個(N=2)であることが好ましい。本実施形態では、図3に示すように、キャリヤ32は4つの遊星ギヤ33を回転自在に支持している。
【0030】
遊星ギヤ33の個数が2N個であることの関係で、遊星歯車機構30における第1ギヤ部34及び第2ギヤ部35に噛み合う全てのギヤ(本例では、サンギヤ31、第1リングギヤ36、第2リングギヤ37)の歯数は、2Nで除算した場合に余りがNとなる値とされている。このような歯数設定とすることで、2N個の遊星ギヤ33を周方向に均等に配置することを前提に、周方向に隣り合う遊星ギヤ33が互いに(1/N)歯分ずれて噛み合うことになる。
【0031】
例えば遊星ギヤ33が、キャリヤ32の強度確保の観点から好ましい4個である場合には、周方向に隣り合う遊星ギヤ33が互いに半歯分ずれて噛み合い、周方向に対向する遊星ギヤ33どうしが同時に噛み合うことになる。言い換えれば、周方向に隣り合う遊星ギヤ33の噛み合い位相が互いに逆位相となり、かつ、周方向に対向する遊星ギヤ33の噛み合い位相が互いに同位相となる。
【0032】
例えば図3に示す例では、上下に位置する2つの遊星ギヤ33は、0°及び180°の位置で、第1ギヤ部34のギヤ歯34aが第1リングギヤ36の谷部に係入して噛み合い、第2ギヤ部35のギヤ歯35aが第2リングギヤ37の谷部に係入して噛み合っている。一方、左右に位置する2つの遊星ギヤ33は、90°及び270°の位置で、第1ギヤ部34の谷部に第1リングギヤ36のギヤ歯36aが係入して噛み合い、第2ギヤ部35の谷部に第2リングギヤ37のギヤ歯37aが係入して噛み合っている。
【0033】
このような事情を考慮し、本実施形態では、減速機3を構成する遊星歯車機構30は、2N個の遊星ギヤ33として、N個の第1種遊星ギヤ33Xと、この第1種遊星ギヤ33Xとは異なるN個の第2種遊星ギヤ33Yとを備えている。第1種遊星ギヤ33Xと第2種遊星ギヤ33Yとは、第1ギヤ部34のギヤ歯34aの緒元(ピッチ円の直径や歯数等)と第2ギヤ部35のギヤ歯35aの緒元とが互いに同一で、第1ギヤ部34のギヤ歯34aに対する第2ギヤ部35のギヤ歯35aの位相だけが互いに異なっている。
【0034】
ここで、第1種遊星ギヤ33Xの第1ギヤ部34のギヤ歯34aに対する第2ギヤ部35のギヤ歯35aの位相と、第2種遊星ギヤ33Yの第1ギヤ部34のギヤ歯34aに対する第2ギヤ部35のギヤ歯35aの位相との差を「位相差θ」とする。例えば図4に示す例では、0°に位置する第1種遊星ギヤ33Xの第1ギヤ部34のギヤ歯34aと第2ギヤ部35のギヤ歯35aとは共に0°の位置で対応するリングギヤ36,37に噛み合っている。図示の例では、これらのギヤ歯34a,ギヤ歯35aの組を代表歯として第1種遊星ギヤ33Xの位相を決めるものとし、その位相は0°である。
【0035】
一方、90°に位置する第2種遊星ギヤ33Yの第1ギヤ部34と第2ギヤ部35とは、共に90°の位置で、それらの谷部に、対応するリングギヤ36,37のギヤ歯36a,37aが噛み合い、第1ギヤ部34のギヤ歯34a及び第2ギヤ部35のギヤ歯35aはそれぞれ半歯分ずれた位置に位置している。これらのギヤ歯34a,ギヤ歯35aの組は、第1種遊星ギヤ33Xの代表歯に対応するものであり、本例では第1種遊星ギヤ33Xの位相は0°であることから、これらの第1ギヤ部34のギヤ歯34aと第2ギヤ部35のギヤ歯35aとの角度差が、そのまま位相差θとなる。
【0036】
そして、第1ギヤ部34のギヤ歯34aは第1リングギヤ36の谷部に係入して噛み合い、第2ギヤ部35のギヤ歯35aは第2リングギヤ37の谷部に係入して噛み合うという制約があるから、位相差θは以下のようにして設定される。すなわち、位相差θは、180°を第1ギヤ部34に噛み合うリングギヤ(本例では第1リングギヤ36)の歯数で除算した角度と180°を第2ギヤ部35に噛み合うリングギヤ(本例では第2リングギヤ37)の歯数で除算した角度との差(図4においてαで示す角度差)に対応した遊星ギヤ軸心X2上での角度差βに設定される。位相差θは、概ね、第1リングギヤ36の半歯分に対応する遊星ギヤ軸心X2上での中心角と第2リングギヤ37の半歯分に対応する遊星ギヤ軸心X2上での中心角との差に近い値となる。
【0037】
そして、図3に示すように、第1種遊星ギヤ33Xと第2種遊星ギヤ33Yとの2種を含む2N個の遊星ギヤ33は、周方向に等間隔で配置されている。加えて、第1種遊星ギヤ33Xと第2種遊星ギヤ33Yとが、周方向に沿って交互に配置されている。このようにすることで、N個の第1種遊星ギヤ33XとN個の第2種遊星ギヤ33Yとで、それぞれのギヤの噛み合いによって生じる径方向の力を互いに相殺させて総和をゼロに近づけることができる。加えて、それぞれのギヤの噛み合い部に作用する接線方向のモーメントを互いに相殺させて総和をゼロに近づけることができる。
【0038】
この点について、図5のモデルを参照して補足する。この図に示すように、第1種遊星ギヤ33Xである第1遊星ギヤ33A及び第3遊星ギヤ33Cの径方向の噛み合い力をそれぞれF1,F3とし、接線方向の噛み合いモーメントをそれぞれM1,M3とする。また、第2種遊星ギヤ33Yである第2遊星ギヤ33B及び第4遊星ギヤ33Dの径方向の噛み合い力をそれぞれF2,F4とし、接線方向の噛み合いモーメントをそれぞれM2,M4とする。
【0039】
図6及び図7は、いずれもキャリヤ32の回転位置に応じた径方向の噛み合い力を示すグラフであり、図6は第1遊星ギヤ33A及び第2遊星ギヤ33Bの組と第3遊星ギヤ33C及び第4遊星ギヤ33Dの組とに分けて算出している。図7は第1遊星ギヤ33A及び第4遊星ギヤ33Dの組と第2遊星ギヤ33B及び第3遊星ギヤ33Cの組とに分けて算出している。いずれも、各組が互いに逆位相の噛み合い力で噛み合い、全体として、キャリヤ32の回転位置によらずに噛み合い総合力が変動のない一定値に維持されていることが分かる。
【0040】
図8は、キャリヤ32の回転位置に応じた接線方向の噛み合いモーメントを示すグラフであり、第1遊星ギヤ33A及び第3遊星ギヤ33Cの組と第2遊星ギヤ33B及び第4遊星ギヤ33Dの組とに分けて算出している。各組が互いに逆位相の噛み合いモーメントで噛み合い、全体として、キャリヤ32の回転位置によらずに噛み合い総合モーメントが変動のない一定値に維持されていることが分かる。
【0041】
このように、本実施形態の遊星歯車機構30を用いることにより、噛み合い総合力及び噛み合い総合モーメントを一定値に維持することができ、ギヤノイズを低減することができる。
【0042】
このように、本実施形態の車両用駆動装置1は、
回転電機2に駆動連結されるロータ軸25と、
ロータ軸25の回転を減速して車輪Wに駆動連結される出力部材5に出力する減速機3と、
を備えた車両用駆動装置1であって、
減速機3は、第1ギヤ部34と第1ギヤ部34とは歯数が異なる第2ギヤ部35とを備えた2N(Nは2以上の整数を表す)個の遊星ギヤ33と、2N個の遊星ギヤ33をそれぞれ回転自在に支持するキャリヤ32と、を備えた遊星歯車機構30を備え、
2N個の遊星ギヤ33が周方向に等間隔で配置され、
周方向に隣り合う遊星ギヤ33の噛み合い位相が逆位相であり、
遊星歯車機構30における第1ギヤ部34及び第2ギヤ部35に噛み合う全てのギヤの歯数が、2Nで除算した場合に余りがNとなる値であり、
2N個の遊星ギヤ33には、N個の第1種遊星ギヤ33Xと、N個の第2種遊星ギヤ33Yとが含まれ、
第1種遊星ギヤ33Xと第2種遊星ギヤ33Yとは、第1ギヤ部34のギヤ歯34aに対する第2ギヤ部35のギヤ歯35aの位相が互いに異なっており、
第1種遊星ギヤ33Xと第2種遊星ギヤ33Yとが周方向に沿って交互に配置されている。
【0043】
この構成によれば、N個の第1種遊星ギヤ33XとN個の第2種遊星ギヤ33Yとで、それぞれのギヤの噛み合いによって生じる径方向の力を互いに相殺させて総和をゼロに近づけることができるとともに、それぞれのギヤの噛み合い部に作用する接線方向のモーメントを互いに相殺させて総和をゼロに近づけることができる。よって、キャリヤ32の回転軸心周りでの径方向振動の発生を抑制することができるとともに、捩り振動の発生を抑制することができる。これらのことから、ギヤノイズが低減された車両用駆動装置1を実現することができる。
【0044】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第1ギヤ部34が、第2ギヤ部35に比べて大径に形成されているとともに歯数が多く設定されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第1ギヤ部34が、第2ギヤ部35に比べて小径に形成されているとともに歯数が少なく設定されていても良い。また、少なくとも第1ギヤ部34と第2ギヤ部35とで歯数が異なっていれば、外径は等しくても良い。
【0045】
(2)上記の実施形態では、遊星歯車機構30が、4つの回転要素として、サンギヤ31と、キャリヤ32と、第1リングギヤ36と、第2リングギヤ37とを備えている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、遊星歯車機構30が、例えば第1サンギヤと、第2サンギヤと、キャリヤ32と、リングギヤとを備えて構成されても良い。この場合、第1ギヤ部34は例えば第1サンギヤ及びリングギヤに噛み合い、第2ギヤ部35は例えば第2サンギヤに噛み合う。また、この場合、例えば、リングギヤがロータ22と一体的に回転するように連結され、第1サンギヤ及び第2サンギヤの一方がケース7に固定され、第1サンギヤ及び第2サンギヤの他方が差動歯車機構4の差動ケース41と一体的に回転するように連結される。このような構成では、第1種遊星ギヤ33Xの第1ギヤ部34のギヤ歯34aに対する第2ギヤ部35のギヤ歯35aの位相と、第2種遊星ギヤ33Yの第1ギヤ部34のギヤ歯34aに対する第2ギヤ部35のギヤ歯35aの位相との位相差θは、180°を第1ギヤ部34に噛み合う第1サンギヤの歯数で除算した角度と180°を第2ギヤ部35に噛み合う第2サンギヤの歯数で除算した角度との差に対応した遊星ギヤ軸心X2上での角度差に設定されることが好ましい。
【0046】
このように、
2N個の遊星ギヤ33のそれぞれの回転軸心を遊星ギヤ軸心X2として、第1種遊星ギヤ33Xの第1ギヤ部34のギヤ歯34aに対する第2ギヤ部35のギヤ歯35aの位相と、第2種遊星ギヤ33Yの第1ギヤ部34のギヤ歯34aに対する第2ギヤ部35のギヤ歯35aの位相と、の差である位相差が、180°を第1ギヤ部34に噛み合うリングギヤの歯数で除算した角度と180°を第2ギヤ部35に噛み合うリングギヤの歯数で除算した角度との差に対応した遊星ギヤ軸心X2上での角度差、又は、180°を第1ギヤ部34に噛み合うサンギヤ31の歯数で除算した角度と180°を第2ギヤ部35に噛み合うサンギヤ31の歯数で除算した角度との差に対応した遊星ギヤ軸心X2上での角度差に設定されていることが好ましい。
【0047】
この構成によれば、第1ギヤ部34に噛み合うギヤと第2ギヤ部35に噛み合うギヤとの回転方向の相対位置が固定されている場合であっても、2N個の遊星ギヤ33の第1ギヤ部34及び第2ギヤ部35をそれぞれ対応するギヤに適切に噛み合わせることができる。よって、2N個の遊星ギヤ33とそれに噛み合う各ギヤとを容易に組み付けることができ、かつ、ギヤノイズが低減された遊星歯車機構30を実現できる。
【0048】
また、本実施形態の遊星歯車機構30の製造方法は、
第1ギヤ部34と第1ギヤ部34とは歯数が異なる第2ギヤ部35とを備えた2N(Nは2以上の整数を表す)個の遊星ギヤ33と、2N個の遊星ギヤ33をそれぞれ回転自在に支持するキャリヤ32と、を備えた遊星歯車機構30の製造方法であって、
第1ギヤ部34及び第2ギヤ部35に噛み合う全てのギヤの歯数を、2Nで除算した場合に余りがNとなる値とし、
2N個の遊星ギヤ33として、第1ギヤ部34のギヤ歯34aに対する第2ギヤ部35のギヤ歯35aの位相が予め定められた設定位相差だけ互いに異なる、N個の第1種遊星ギヤ33Xと、N個の第2種遊星ギヤ33Yと、を準備し、
2N個の遊星ギヤ33を周方向に等間隔で配置し、かつ、第1種遊星ギヤ33Xと第2種遊星ギヤ33Yとを周方向に沿って交互に配置し、
2N個の遊星ギヤ33のそれぞれの回転軸心を遊星ギヤ軸心X2として、設定位相差を、180°を第1ギヤ部34に噛み合うリングギヤの歯数で除算した角度と180°を第2ギヤ部35に噛み合うリングギヤの歯数で除算した角度との差に対応した遊星ギヤ軸心X2上での角度差、又は、180°を第1ギヤ部34に噛み合うサンギヤ31の歯数で除算した角度と180°を第2ギヤ部35に噛み合うサンギヤ31の歯数で除算した角度との差に対応した遊星ギヤ軸心X2上での角度差に設定する。
【0049】
この構成によれば、第1ギヤ部34に噛み合うギヤと第2ギヤ部35に噛み合うギヤとの回転方向の相対位置が固定されている場合であっても、2N個の遊星ギヤ33の第1ギヤ部34及び第2ギヤ部35をそれぞれ対応するギヤに適切に噛み合わせることができ、これらを容易に組み付けることができる。また、N個の第1種遊星ギヤ33XとN個の第2種遊星ギヤ33Yとで、それぞれのギヤの噛み合いによって生じる径方向の力を互いに相殺させて総和をゼロに近づけることができるとともに、それぞれのギヤの噛み合い部に作用する接線方向のモーメントを互いに相殺させて総和をゼロに近づけることができる。よって、キャリヤ32の回転軸心周りでの径方向振動の発生を抑制することができるとともに、捩り振動の発生を抑制することができる。これらのことから、ギヤノイズが低減された遊星歯車機構30を製造することができる。
【0050】
(3)上記の実施形態では、回転電機2、出力部材5、減速機3、及び差動歯車機構4が同軸上に配置された一軸構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、これらのうちの1つ以上が異なる軸上に配置された複軸構成とされても良い。
【0051】
(4)上記の実施形態では、車両用駆動装置1に備えられる回転電機2が駆動源として機能する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、駆動源としての内燃機関が車両用駆動装置1の外に設けられていても良い。この場合、車両用駆動装置1は、内燃機関に駆動連結される入力部材を備え、車両用駆動装置1には入力部材を介して内燃機関の駆動力が入力される。
【0052】
(5)上記の実施形態では、車両用駆動装置1に、減速機3を介して伝達されるロータ22の回転を一対の出力部材5に分配する差動歯車機構4が備えられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、減速機3を介して伝達されるロータ22の回転が単一の出力部材5(ひいては単一の車輪W)に伝達されても良い。このような構成は、いわゆるインホイールモータ型の車両に備えられる車両用駆動装置1に好適に適用することができる。
【0053】
(6)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:車両用駆動装置、2:回転電機(駆動源)、3:減速機、4:差動歯車機構、5:出力部材、7:ケース(非回転部材)、21:ステータ、22:ロータ、25:ロータ軸(入力部材)、30:遊星歯車機構、31:サンギヤ、32:キャリヤ、33:遊星ギヤ、33A:第1遊星ギヤ、33B:第2遊星ギヤ、33C:第3遊星ギヤ、33D:第4遊星ギヤ、33X:第1種遊星ギヤ、33Y:第2種遊星ギヤ、34:第1ギヤ部、34a:ギヤ歯、35:第2ギヤ部、35a:ギヤ歯、36:第1リングギヤ、36a:ギヤ歯、37:第2リングギヤ、37a:ギヤ歯、41:差動ケース(入力部材)、42:差動本体部、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、W:車輪、X1:キャリヤ軸心、X2:遊星ギヤ軸心、θ:位相差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8