(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】被覆軟磁性合金粒子、圧粉磁心、磁気応用部品及び被覆軟磁性合金粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/153 20060101AFI20240709BHJP
H01F 1/24 20060101ALI20240709BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H01F1/153 183
H01F1/153 108
H01F1/153 158
H01F1/24
H01F27/255
(21)【出願番号】P 2022511735
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2021009355
(87)【国際公開番号】W WO2021199970
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020064422
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ラン ケン
(72)【発明者】
【氏名】猪口 真志
(72)【発明者】
【氏名】坂口 健二
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-094406(JP,A)
【文献】特開2013-209693(JP,A)
【文献】特開2010-206087(JP,A)
【文献】特開2016-003366(JP,A)
【文献】特開2021-141203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/153
H01F 1/24
H01F 27/255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質相を含む軟磁性合金粒子と、
六方晶、三方晶又は単斜晶の結晶構造を有する無機化合物、及び、層状ケイ酸塩鉱物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有し、前記軟磁性合金粒子の表面を被覆する第一の皮膜と
、
酸化物を有し、前記第一の皮膜の表面を被覆する第二の皮膜とを備え、
その断面の外周輪郭の平均平滑度ζ_aveが0.92以上1.00以下である被覆軟磁性合金粒子を含み、
さらに結着材を含むことを特徴とする圧粉磁心。
【請求項2】
前記第二の皮膜が二酸化ケイ素を含む、請求項
1に記載の圧粉磁心。
【請求項3】
前記軟磁性合金粒子が、Fe
aSi
bB
cC
dP
eCu
fSn
gM1
hM2
iで表される化学組成を有し、
M1は、CoおよびNiのうちの1種類以上の元素であり、
M2は、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Cr、Al、Mn、Ag、V、Zn、As、Sb、Bi、Yおよび希土類元素のうちの1種類以上の元素であり、
79≦a+h+i≦86、0≦b≦5、4≦c≦13、0≦d≦3、5≦c+d≦14、1≦e≦10、0.4≦f≦2、0.3≦g≦6、0≦h≦30、0≦i≦5かつa+b+c+d+e+f+g+h+i=100(モル部)を満たす、請求項
1又は2に記載の圧粉磁心。
【請求項4】
前記第一の皮膜が二硫化モリブデンを含む請求項1~
3のいずれかに記載の圧粉磁心。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載の圧粉磁心を含むことを特徴とする磁気応用部品。
【請求項6】
軟磁性合金粒子を準備する工程と、
前記軟磁性合金粒子と、六方晶、三方晶又は単斜晶の結晶構造を有する無機化合物、及び、層状ケイ酸塩鉱物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを混合し、メカノフュージョン法により処理することにより前記軟磁性合金粒子の表面に第一の皮膜を形成する工程と
、前記第一の皮膜の表面に、酸化物を有する第二の皮膜を形成する工程とを行って、被覆軟磁性合金粒子を製造し、
該被覆軟磁性合金粒子と結着材とを混合し、成型することを特徴とする、圧粉磁心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆軟磁性合金粒子、圧粉磁心、磁気応用部品及び被覆軟磁性合金粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モーター、リアクトル、インダクタ、各種コイル等の磁気応用部品は高効率動作と大電流での動作が求められている。そのため、磁気応用部品の鉄芯(圧粉磁心)に用いられる軟磁性材料は、鉄損が低く、且飽和磁束密度が高いことが求められる。一般的に、鉄損にはヒステリシス損失と渦電流損失が含まれるが、磁気応用部品の小型化を背景に高い周波数で駆動させるために、渦電流損失の小さい圧粉磁心が望まれている。
【0003】
圧粉磁心は軟磁性材料からなる軟磁性粒子を少なくとも含み、さらに結着材及び潤滑剤等が必要に応じて含まれる。圧粉磁心に含まれる軟磁性材料間の電気抵抗が高いほど渦電流損失を小さくできる。
また、圧粉磁心における軟磁性材料の空間充填率が高いほどコイルの透磁率を高くでき、飽和磁束密度も高くできるため好ましい。
【0004】
飽和磁束密度を充分に高めながら鉄損を小さくするためには、軟磁性材料中に非晶質相を含むナノ結晶材料が適している。ナノ結晶材料の製造方法としてはアトマイズ法(特許文献1)と粉砕法(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/031463号
【文献】特開2018-50053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1に記載の方法では、作製できるナノ結晶材料の平均粒子径が小さく、飽和磁束密度が小さいという問題があった。
特許文献2に記載の方法は液体急冷法で作製した薄帯を粉砕することにより軟磁性粒子を製造する方法である。液体急冷法は冷却速度が速いため飽和磁束密度を大きくできるが、軟磁性粒子の粒子形状が球形ではなく扁平形状となる。そのため、軟磁性粒子を圧粉磁心とした際に軟磁性粒子の空間充填率が低くなるという問題があった。
また、薄帯の粉砕により軟磁性粒子を製造した場合、扁平形状の軟磁性粒子の表面には凹凸(エッジ)が形成されていた。
【0007】
さらに、圧粉磁心における軟磁性粒子の空間充填率が低いと、圧粉磁心の透磁率が低くなると同時に、軟磁性粒子間の接触面積が小さくなり、成型時の応力が軟磁性粒子間の接触点に集中して鉄損が大きくなるという問題があった。
【0008】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、圧粉磁心とした際に軟磁性粒子の空間充填率を高くできると同時に、鉄損を小さくできる軟磁性合金粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の被覆軟磁性合金粒子は、非晶質相を含む軟磁性合金粒子と、六方晶、三方晶又は単斜晶の結晶構造を有する無機化合物、及び、層状ケイ酸塩鉱物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有し、上記軟磁性合金粒子の表面を被覆する第一の皮膜とを備え、その断面の外周輪郭の平均平滑度ζ_aveが0.92以上1.00以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の圧粉磁心は、本発明の被覆軟磁性合金粒子を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の磁気応用部品は、本発明の被覆軟磁性合金粒子を含む又は本発明の圧粉磁心を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の被覆軟磁性合金粒子の製造方法は、軟磁性合金粒子を準備する工程と、上記軟磁性合金粒子と、六方晶、三方晶又は単斜晶の結晶構造を有する無機化合物、及び、層状ケイ酸塩鉱物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを混合し、メカノフュージョン法により処理することにより上記軟磁性合金粒子の表面に第一の皮膜を形成する工程とを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧粉磁心とした際に軟磁性粒子の空間充填率を高くできると同時に、鉄損を小さくできる軟磁性合金粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の被覆軟磁性合金粒子の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、メカノフュージョン法による処理に用いる被覆装置の断面模式図である。
【
図4】
図4は、磁気応用部品としてのコイルの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、試料番号2の被覆軟磁性合金粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図6】
図6は、試料番号6の軟磁性合金粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は、試料番号1の被覆軟磁性合金粒子の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の被覆軟磁性合金粒子、圧粉磁心、磁気応用部品及び被覆軟磁性合金粒子の製造方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0016】
[被覆軟磁性合金粒子]
図1は、本発明の被覆軟磁性合金粒子の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す被覆軟磁性合金粒子1は、軟磁性合金粒子10と、軟磁性合金粒子10の表面を被覆する第一の皮膜20と、第二の皮膜の表面を被覆する第二の皮膜30とを備える。
【0017】
軟磁性合金粒子10の表面には凹凸(エッジ)が形成されているが、第一の皮膜20によりその凹凸が埋められて平滑になる。また、第二の皮膜30が第一の皮膜20の表面上に形成されたのちの被覆軟磁性合金粒子1の表面も平滑となる。
【0018】
本発明の被覆軟磁性合金粒子は、その断面の平均平滑度ζ_aveが0.92以上1.00以下である。平均平滑度について図面を参照して説明する。
図2は、粒子の平均平滑度の説明図である。
図2の左側には粒子40の断面形状を示している。Lopは粒子40の輪郭の全周長を示している。全周長Lopは画像解析ソフト(例えばWinROOF2018:三谷商事株式会社製)による手動解析全周長IIとして得られる。
この粒子の長径をaとし、長径aに直交する径を短径bとする。また、この粒子の画像面積をSpとする。
【0019】
図2の右側には粒子40につき、粒子40の二次元投影画像の長短比λと画像面積Spとが等しい楕円を点線で描いている。楕円における長径a´及び短径b´の長さの値そのものは、長径a及び短径bとは異なる。
この楕円の全周長をLoeとする。
そして、Lopに対するLoeの比=Loe/Lopを平滑度ζとする。
【0020】
この平滑度ζは粒子が凹凸のない円又は楕円であれば1となるが、その表面に凹凸がある場合は1未満となる。
被覆軟磁性合金粒子の電子顕微鏡写真において撮像された任意の20個の粒子について平滑度ζを測定し、平均値をとって平均平滑度ζ_aveを求める。
そして、平均平滑度ζ_aveが0.92以上1.00以下であれば表面の平滑度が高い粒子であると判断する。被覆軟磁性合金粒子の平均平滑度ζ_aveは、0.92以上、0.94以下であることが好ましい。
【0021】
平均平滑度の高い被覆軟磁性合金粒子を使用すると、その粒子の表面の凹凸の存在による空間形成が生じにくくなる。そのため、軟磁性合金粒子を圧粉磁心とした際に軟磁性合金粒子の空間充填率を高くすることができ、鉄損を小さくすることができる。
【0022】
軟磁性合金粒子は、非晶質相を含む粒子である。また、軟磁性合金粒子は非晶質相を有するナノ結晶材料であることが好ましい。ナノ結晶材料は、主に平均結晶粒径が30nm以下の微細な結晶粒からなる材料である。
【0023】
軟磁性合金粒子に含まれる結晶の平均結晶粒径は保磁力に関連があり、平均結晶粒径に対して保磁力は極大値を示す。例えば50nmから100nm近傍に極大値が現れる。極大値を示す結晶粒径よりも小粒径側では保磁力が平均結晶粒径の-6乗に比例する強い相関を有するため、保磁力を低減するためには結晶粒径を小さくすることが有効である。
ナノ結晶材料は非晶質相を結晶化させて得ることができる。非晶質相は準安定相なので結晶化開始温度以上の温度による加熱や、長時間の加熱保持等によって結晶核が生成および成長する。
【0024】
例えばFe基のナノ結晶材料は非晶質相を形成させるために例えばBやP、C及びSiからなる群から選択された少なくとも1種の元素でFeが置換されていることが好ましい。また結晶核生成を促進させるためにCuでFeを置換することが好ましい。
さらに、結晶粒成長を抑制して微細な結晶粒を多数生成させるために例えばNb、Mo、Zr、Hf、Ta及びWからなる群から選択された少なくとも1種の元素でFeを置換してもよい。
飽和磁化や磁歪を調整するためにNi及びCoからなる群から選択された少なくとも1種の元素でFeを置換してもよい。
【0025】
Feに固溶できる溶質元素の種類と量は限られているため、非晶質相の結晶化が進行すると、溶質元素が非晶質相に拡散して非晶質相の熱的な安定性が高まる。そのため、結晶化後も非晶質相が残存する。
【0026】
非晶質相の存在の有無は、透過型電子顕微鏡を用いて局所部の電子線回折パターンを取得することで確認することができる。測定精度が高いため、ナノビームディフラクション法が好ましい。またはX線回折装置のθ-2θ法で測定したX線回折プロファイルから、2θ=44°近傍の非晶質構造に由来するハローパターンの有無によって非晶質相の有無を確認することができる。
【0027】
上記を踏まえた軟磁性合金粒子の化学組成は特に限定されないが、Feを主成分とする金属材料が好ましく、具体的には、純鉄系軟磁性材料(電磁軟鉄)、Fe系合金、Fe-Si系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Al系合金、Fe-Si-Al系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Ni-Si-Co系合金、又は、Fe系アモルファス合金であることがより好ましい。Fe系アモルファス合金としては、たとえば、Fe-Si-B系、Fe-Si-B-Cr-C系等が挙げられる。上記金属材料としては、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
また、軟磁性合金粒子は、FeaSibBcCdPeCufSngM1hM2iで表される化学組成を有することが好ましい。
上記化学組成において、a+b+c+d+e+f+g+h+i=100(モル部)を満たす。
【0029】
Feの一部は、CoおよびNiのうちの1種類以上の元素であるM1で置換されてもよい。その場合、M1は、化学組成全体の30原子%以下であることが好ましい。したがって、M1は、0≦h≦30を満たす。
【0030】
Feの一部は、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Cr、Al、Mn、Ag、V、Zn、As、Sb、Bi、Yおよび希土類元素のうちの1種類以上の元素であるM2で置換されてもよい。その場合、M2は、化学組成全体の5原子%以下であることが好ましい。したがって、M2は、0≦i≦5を満たす。
【0031】
なお、Feの一部は、M1およびM2の両方で置換されてもよい。Fe、M1およびM2の合計は、79≦a+h+i≦86を満たす。
【0032】
Siの割合は、0≦b≦5を満たし、好ましくは、0≦b≦3を満たす。
Bの割合は、4≦c≦13を満たす。
Cの割合は、0≦d≦3を満たす。0.1≦d≦3であるとより好ましい。
また、B及びCの合計の割合は、5≦c+d≦14を満たす。
Pの割合は、1≦e≦10を満たす。
Cuの割合は、0.4≦f≦2を満たす。
Snの割合は、0.3≦g≦6を満たす。
【0033】
また、軟磁性合金粒子は、上記化学組成の成分合計を100重量%としたとき、0.1重量%以下のS(硫黄)をさらに含んでもよい。
【0034】
第一の皮膜は、六方晶、三方晶又は単斜晶の結晶構造を有する無機化合物、及び、層状ケイ酸塩鉱物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有する。
第一の皮膜は層状に剥離する性質を持つ無機化合物であることが好ましい。
【0035】
六方晶、三方晶又は単斜晶の結晶構造を有する無機化合物としては、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、二硫化ジルコニウム(ZrS2)、二硫化バナジウム(VS2)、二硫化ニオブ(NbS2)、二硫化モリブデン(MoS2)、二硫化タングステン(WS2)、二硫化レニウム(ReS2)等の硫化物、セレン化タングステン(WSe)、セレン化モリブデン(MoSe)、セレン化ニオブ(NbSe)等のセレン化物、グラファイト、塩化カドミウム(CdCl2)、ヨウ化カドミウム(CdI2)等が挙げられる。
これらの中では二硫化モリブデン(MoS2)が好ましい。
【0036】
層状ケイ酸塩鉱物としては、マイカ、黒雲母、海緑石、イライト、リチア雲母、チンワルド雲母、タルク、パイロフィライト等が挙げられる。
【0037】
上記無機化合物及び層状ケイ酸塩鉱物は、応力が印加されたとき層状に剥離あるいは脆性破壊される性質を有する。そのため軟磁性合金粒子と混合して応力を印加したときに軟磁性合金粒子表面の凸部で引っかかれて剥離あるいは破壊された破片が軟磁性合金粒子表面の凹部を埋める。さらに混合と応力印加を続けることで軟磁性合金粒子の表面が第一の皮膜で被覆された、平滑な表面を有する粒子が形成される。
【0038】
第一の皮膜は、軟磁性合金粒子の絶縁被膜として機能する。軟磁性合金粒子の絶縁性を高めることにより軟磁性合金粒子の粒子間の電気抵抗が高くなるため、渦電流損失を低減させることができる。
【0039】
被覆軟磁性合金粒子は、酸化物を有し、第一の皮膜の表面を被覆する第二の皮膜をさらに備えることが好ましい。
被覆軟磁性合金粒子が第二の皮膜をさらに備えることにより、軟磁性合金粒子の粒子間の電気抵抗を高めることができ、渦電流をさらに低減させることができる。
第二の皮膜に含まれる酸化物としては、ケイ素を含む酸化物が好ましく、二酸化ケイ素(SiO2)がより好ましい。すなわち、第二の皮膜は、酸化ケイ素を含むことが好ましい。二酸化ケイ素は絶縁抵抗が高く皮膜強度が高いため、第二の皮膜として好ましい。
【0040】
軟磁性合金粒子の平均粒径は、10μm以上であることが好ましく、50μm以下であることが好ましい。
【0041】
また、第一の皮膜の平均厚さは50nm以上であることが好ましく、400nm以下であることが好ましい。第一の皮膜の平均厚さが50nm以上であると、軟磁性合金粒子の表面の凹凸を平滑化する効果が好適に発揮される。第一の皮膜の平均厚さが厚すぎると、軟磁性合金粒子の粒子間の磁気相互作用が抑制されるため、第一の皮膜の平均厚さが400nm以下であることが好ましい。
【0042】
また、第二の皮膜の平均厚さは10nm以上であることが好ましく、300nm以下であることが好ましい。
さらに、被覆軟磁性合金粒子の平均粒径は、10μm以上であることが好ましく、55μm以下であることが好ましい。
【0043】
軟磁性合金粒子の平均粒径、被覆軟磁性合金粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒子径、粒度分布測定装置で測定することができる。
【0044】
[被覆軟磁性合金粒子の製造方法]
はじめに、軟磁性合金粒子を準備する。
このような軟磁性合金粒子は例えば以下のように作製することができる。
所定の化学組成になるように秤量した原材料(軟磁性合金)を加熱溶解して溶湯を作製し、当該溶湯を冷却して薄帯を得る。非晶質相を含む薄帯を製造するために、冷却速度の速い冷却凝固方法および条件が好ましい。
【0045】
得られた薄帯に応力を印加して、粉砕粉を作製する。例えばピンミルやハンマーミル、フェザーミル、サンプルミル、ボールミル、スタンプミルなど、粉砕方法は特に限定されない。
【0046】
粉砕粉に、せん断応力および圧縮応力を同時に印加して塑性変形させることで、球形に近い粒子を作製してもよい。粉砕機は特に限定されないが、例えばハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製)などの高速回転式粉砕機が好ましい。軟磁性合金粒子どうしの接触点に応力が印加されることで、複数の粒子が集合して単一の粒子となる条件では、より球形に近い軟磁性合金粒子が得られるため好ましい。
【0047】
また、軟磁性合金粒子として市販の粉体[例えば、Fe系アモルファス合金粉体(エプソンアトミックス株式会社製)]を準備してもよい。
【0048】
軟磁性合金粒子は、2種類の篩径の異なる篩を用いて粗大粒子と微小粒子をそれぞれ除去して粒径を揃えて使用することが好ましい。
【0049】
次に、軟磁性合金粒子の表面に第一の皮膜を形成する。
第一の皮膜を形成する際には、軟磁性合金粒子と、六方晶、三方晶又は単斜晶の結晶構造を有する無機化合物、及び、層状ケイ酸塩鉱物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(以下、第一の皮膜用化合物ともいう)とを混合し、メカノフュージョン法による処理を行う。
【0050】
メカノフュージョン法による処理では、軟磁性合金粒子と第一の皮膜用化合物とを容器に投入し、機械的衝撃力を加えながら混合する。
図3は、メカノフュージョン法による処理に用いる被覆装置の断面模式図である。
図3に示す被覆装置51は、断面円筒状のチャンバ52を備え、このチャンバ52内で羽根53が矢印54で示すように回転するように構成されている。チャンバ52内に被処理物55(軟磁性合金粒子及び第一の皮膜用化合物)が投入され、その状態で、羽根53が回転することによって、被処理物55が処理される。
上記のような被覆装置としては、ホソカワミクロン株式会社製の粉体処理装置(ノビルタ、ノビルタミニ)等が挙げられる。
当該処理によって軟磁性合金粒子の表面の凹凸が第一の皮膜用化合物で埋められ、第一の皮膜の表面が平滑な表面となる。
【0051】
平滑な表面を得るための好ましい条件として、第一の皮膜用化合物の配合量が軟磁性合金粒子の表面の凹凸を埋めるために充分な量であることが挙げられる。第一の皮膜用化合物の配合量が軟磁性合金粒子100重量%に対して0.30重量%以上であることが好ましく、0.60重量%以上であることがより好ましい。
また、第一の皮膜用化合物の平均粒径は500nm以下であることが好ましい。
また、被覆装置における羽根の回転数を、例えば1rpm以上、10000rpm以下の回転数とすることが好ましい。また、処理時間を1分以上、60分以下とすることが好ましい。
上記手順により、本発明の被覆軟磁性合金粒子を製造することができる。
【0052】
第一の皮膜を形成した後、軟磁性合金粒子を第一結晶化開始温度以上に加熱することで、微細な結晶組織を生成することができる。第一結晶化開始温度とは、軟磁性合金粒子を構成する化学組成を有する非晶質相を室温から加熱したときに、体心立方構造を有する結晶相が生成し始める温度である。第一結晶化開始温度は加熱昇温速度に依存し、加熱昇温速度が速いほど第一結晶化開始温度は高くなり、加熱昇温速度が遅いほど第一結晶化開始温度は低くなる。体心立方構造を有する結晶相を充分生成させると、飽和磁束密度が向上し、保磁力は低下する。
【0053】
続いて、第一の皮膜の表面に、酸化物を有する第二の皮膜を形成する工程をさらに行うことが好ましい。
第二の皮膜の形成方法は特に限定されないが、均一で強固な皮膜を形成するためにゾルゲル法を用いることができる。
また、第二の皮膜を構成する化合物(以下、第二の皮膜用化合物ともいう)の配合量が軟磁性合金粒子100重量%に対して0.10重量%以上であることが好ましく、0.50重量%以下であることが好ましい。
第二の皮膜を形成する工程は、例えば、第二の皮膜用化合物又はその前駆体を含む溶液と、第一の皮膜を形成した被覆軟磁性合金粒子を混合して、加熱乾燥する方法により行うことができる。
【0054】
[圧粉磁心]
本発明の圧粉磁心は、本発明の被覆軟磁性合金粒子を含む。
本発明の圧粉磁心は、モーター、リアクトル、インダクタ、各種コイルなどの磁気応用部品に使用することができる。
圧粉磁心は、溶剤で溶解した結着材と被覆軟磁性合金粒子とを混錬し、金型に充填して圧力を加えることで作製することができる。結着材を構成する樹脂は特に限定されず、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂などの熱硬化性樹脂でもよく、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合してもよい。成形した圧粉磁心は余分な溶剤を乾燥させたのち、加熱して機械強度を高めることができる。
圧粉成型の条件は、従来公知の方法を採用できるが、例えば、250℃以下、0.1MPa以上、800MPa以下で圧粉成型することが好ましい。
成形時の圧力によって導入された被覆軟磁性合金粒子の歪を緩和するため、熱処理を施してもよい。例えば、樹脂が燃焼あるいは揮発して磁気特性に悪影響を及ぼさない条件で300℃以上450℃以下の温度で熱処理すると歪を緩和させやすい。
本発明の圧粉磁心は、本発明の被覆軟磁性合金粒子を用いるので、軟磁性粒子の空間充填率が高くなる。そのため、透磁率が高く、飽和磁束密度の高いコイルを形成することができる。
【0055】
[磁気応用部品]
本発明の磁気応用部品は、本発明の被覆軟磁性合金粒子を含む、又は、本発明の圧粉磁心を含む。
磁気応用部品としては、モーター、リアクトル、インダクタ、各種コイル等が挙げられる。例えば、圧粉磁心の周囲に導線を巻いたコイルが挙げられる。
図4は、磁気応用部品としてのコイルの一例を模式的に示す斜視図である。
図4に示すコイル100は、本発明の被覆軟磁性合金粒子を含む圧粉磁心110と、圧粉磁心110に巻回される一次巻線120および二次巻線130とを備える。
図4に示すコイル100では、環状のトロイダル形状を有する圧粉磁心110に、一次巻線120および二次巻線130がバイファイラ巻きされている。
【0056】
コイルの構造は、
図4に示すコイル100の構造に限定されない。例えば、環状のトロイダル形状を有する圧粉磁心に1本の巻線が巻回されてもよい。また、本発明の被覆軟磁性合金粒子を含む素体と、上記素体に埋め込まれたコイル導体とを備える構造などであってもよい。
本発明の磁気応用部品としてのコイルは、圧粉磁心における軟磁性粒子の空間充填率が高いので、透磁率が高く、飽和磁束密度の高いコイルとなる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
化学組成式Fe84.2Si1B9C1P3Cu0.8Sn1を満たすように原材料を秤量した。原材料の合計の重量は150gとした。Feの原材料は東邦亜鉛株式会社製のマイロン(純度99.95%)を用いた。Siの原材料は株式会社高純度化学研究所製の粒状シリコン(純度99.999%)を用いた。Bの原材料は株式会社高純度化学研究所製の粒状硼素(純度99.5%)を用いた。Cの原材料は株式会社高純度化学研究所製の粉末状黒鉛(純度99.95%)を用いた。Pの原材料は株式会社高純度化学研究所製の塊状リン化鉄Fe3P(純度99%)を用いた。Cuの原材料は株式会社高純度化学研究所製のチップ状銅(純度99.9%)を用いた。Snの原材料は株式会社高純度化学研究所製の粒状錫(純度99.9%)を用いた。
【0059】
上記原材料をTEP株式会社製アルミナるつぼ(U1材質)に充填し、誘導加熱で試料温度が1300℃になるまで加熱して、1分間保持して溶解した。溶解雰囲気はアルゴンとした。原材料を溶解して得た溶湯を銅製の鋳型に流し込み、冷却凝固させて母合金を得た。母合金をジョークラッシャーで3mm~10mm程度の大きさに粉砕した。次に単ロール液体急冷装置で粉砕した母合金を薄帯に加工した。具体的には、石英材質のノズルに母合金を15g充填し、アルゴン雰囲気中で誘導加熱によって1200℃に加熱して溶解した。母合金を溶解して得た溶湯を銅材質の冷却ロールの表面に供給して、厚さ15μm~25μm、幅1mm~4mmの薄帯を得た。出湯ガス圧は0.015MPaとした。石英ノズルの穴径は0.7mmとした。冷却ロールの周速度は50m/sとした。冷却ロールと石英ノズル間の距離は0.27mmとした。
【0060】
得られた薄帯を株式会社奈良機械製作所製のサンプルミルSAMを用いて粉砕した。SAMの回転数は15000rpmとした。
【0061】
SAMによる粉砕で得られた粉砕粉に対して、高速回転式粉砕機を用いて球形化処理を施した。高速回転式粉砕機は株式会社奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムNHS-0型を用いた。回転数は13000rpmとし、処理時間は30分とした。
【0062】
球形化処理が施された粉砕粉末を目開き38μmの篩に通して、篩上に残った粗大な粒子を除去した。次いで、粉末を目開き20μmの篩に通して、篩を通過した微小な粒子を除去し、篩上に残った軟磁性合金粒子を回収した。
【0063】
その次に、以下の手順で軟磁性合金粒子に第一の皮膜を形成した。
上記篩で分級して回収した軟磁性合金粒子40gに対して、0.24gの二硫化モリブデン粒子を混合した。軟磁性合金粒子100重量%に対する二硫化モリブデンの配合量は0.60重量%となる。
二硫化モリブデン粒子の平均粒径は500nm以下である。
【0064】
上記混合粉末をメカノフュージョン法で処理し、第一の皮膜を形成した。使用した装置はホソカワミクロン株式会社製ノビルタミニで、回転速度を6000rpmに設定し、処理時間を30分と設定した。
【0065】
その後、軟磁性合金粒子を、軟磁性合金粒子の第一結晶化開始温度より20℃高い温度で熱処理して、非晶質相からナノ結晶を生成させた。
熱処理炉はアドバンス理工株式会社製の赤外線ランプアニール炉RTAを用いた。熱処理雰囲気はアルゴンとし、赤外線のサセプタはカーボンを用いた。直径4インチのカーボン製サセプタの上に試料を2g置き、さらにその上に直径4インチのカーボン製サセプタを置いた。制御用熱電対は下側のカーボン製サセプタに空いた熱電対挿入用の穴に差し込んだ。昇温速度は400℃/minとした。熱処理温度での保持時間は1分とした。冷却は自然冷却とし、およそ30分で100℃以下に達した。
【0066】
第一結晶化開始温度は示差走査熱量計(Netsch社製DSC404F3)で測定した。室温から650℃まで20℃/minの条件で昇温し、各温度における試料の発熱を測定した。試料容器にはプラチナを用いた。雰囲気はアルゴン(99.999%)を選択し、ガスフロー速度は1L/minとした。試料の量は15mg~20mgとした。結晶化による発熱が開始される温度以下のDSC曲線の接線と、結晶化反応による試料の発熱ピークの立ち上がりにおける最大傾き接線との交点を第一結晶化開始温度とした。
この被覆軟磁性合金粒子を試料番号1の被覆軟磁性合金粒子とした。
【0067】
続いて、試料番号1の被覆軟磁性合金粒子の表面に第二の皮膜を形成した。試料番号1の被覆軟磁性合金粒子30gに対し、イソプロピルアルコール8.5g、9%アンモニア水8.5g、30%プライサーフAL(第一工業製薬株式会社製、リン酸エステル型アニオン界面活性剤)を1.14g混合した。
【0068】
次いで、イソプロピルアルコール7.9gとTEOS(テトラエトキシシラン)2.1gの混合溶液を1.0gずつ3回に分けて混合し、ろ紙でろ過した。ろ紙で回収した試料をアセトンで洗浄したのち、80℃の温度条件で60分加熱乾燥し、140℃の温度条件で30分熱処理して第二の皮膜を形成し、被覆軟磁性合金粒子を得た。
この被覆軟磁性合金粒子を試料番号2の被覆軟磁性合金粒子とした。
【0069】
表1に示すように、第一の皮膜及び第二の皮膜の構成を変更して被覆軟磁性合金粒子を作製し、試料番号3、4、5の被覆軟磁性合金粒子を得た。
また、第一の皮膜及び第二の皮膜を形成していない軟磁性合金粒子を試料番号6とした。なお、以下に示す測定方法の記載においては試料番号6の粒子も被覆軟磁性合金粒子として扱う。
【0070】
作製した試料の平均平滑度ζ_ave、飽和磁束密度Bs、保磁力Hc、粉体体積抵抗率を測定し、結果を表1に示した。測定方法は以下の通りである。
【0071】
被覆軟磁性合金粒子の平均平滑度の測定方法は、本明細書において
図2を参照して説明した通りである。画像解析ソフトとしてWinROOF2018(三谷商事株式会社製)を使用した。
【0072】
飽和磁束密度Bsの測定方法は以下の通りである。
飽和磁化Msを振動試料型磁化測定器(VSM)で測定した。粉末測定用のカプセルに被覆軟磁性合金粒子を充填し、磁場印加時に粒子が移動しないように圧密した。
【0073】
見かけ密度ρをピクノメータ法で測定した。置換ガスはHeとした。
【0074】
VSMで測定した飽和磁化Msとピクノメータ法で測定した見かけ密度ρの数値から、下記(1)式を用いて、飽和磁束密度Bsを計算した。
Bs=4π・Ms・ρ ・・・(1)
【0075】
保磁力Hcは、東北特殊鋼株式会社製の保磁力計K-HC1000で測定した。粉末測定用のカプセルに被覆軟磁性合金粒子を充填し、磁場印加時に粒子が移動しないように圧密した。
【0076】
粉体体積抵抗率は、三菱ケミカルアナリテック株式会社製の粉体抵抗率測定ユニットMCP-PD51を用いて、60MPa加圧時の体積抵抗率として測定した。
【0077】
第一の皮膜及び第二の皮膜を形成する前の軟磁性合金粒子(試料番号6の粒子)と、第一の皮膜及び第二の皮膜を形成した後の被覆軟磁性合金粒子(試料番号2の粒子)の電子顕微鏡写真を示す。また、第一の皮膜だけを形成した後の軟磁性合金粒子(試料番号1の粒子の作製過程の粒子)の電子顕微鏡写真を示す。
図5は、試料番号2の被覆軟磁性合金粒子の電子顕微鏡写真であり、
図6は、試料番号6の軟磁性合金粒子の電子顕微鏡写真である。
図7は、試料番号1の被覆軟磁性合金粒子の電子顕微鏡写真である。
図5及び
図6を比較すると、第一の皮膜及び第二の皮膜を形成することにより、軟磁性合金粒子の表面が平滑になっていることが分かる。
また、
図7から、第一の皮膜を形成することによって軟磁性合金粒子の表面が平滑になることがわかる。
【0078】
【0079】
表1において、試料番号に*を付したものは、本発明の範囲外の比較例である。試料番号4、5では二酸化ケイ素の皮膜のみを付与しており、第一の皮膜に相当する二硫化モリブデンの皮膜を付与していないが、この二酸化ケイ素皮膜について第二の皮膜とみなして表1に記載した。
【0080】
表1から、本発明の範囲内に属する試料番号1、2、3では、平均平滑度ζ_aveが0.92以上であり、飽和磁束密度が高く、保磁力が低くなっている。さらに、試料番号2、3では粉体体積抵抗率が高くなっている。
試料番号4は保磁力が高く、粉体体積抵抗率が低くなっている。
試料番号5は粉体体積抵抗率が高いものの、飽和磁束密度が低く、保磁力が高くなっている。
試料番号6は粉体体積抵抗率が低くなっている。
【0081】
[実施例2]
実施例1で作製した試料をトロイダル形状の圧粉磁心に加工した。被覆軟磁性合金粒子を70重量%とし、平均粒径5μmの鉄粉を30重量%とする混合粉末の重量を100重量%とし、フェノール樹脂PC-1を1.5重量%とアセトン3.0重量%とを乳鉢で混合した。
防爆オーブンで温度80℃、保持時間30分の条件でアセトンを揮発させたのち、試料を金型に充填して60MPaの圧力、180℃の温度の熱間成型で、外径8mm、内径4mmのトロイダル形状に成形して圧粉磁心を作製した。
【0082】
次いで、圧粉磁
心の充填率Prを求めた。圧粉磁
心の外径φoと内径φiをノギスで三点ずつ測定して平均値を計算した。マイクロメータを用いて磁
心の厚さtを三点測定し、(2)式を用いて圧粉磁
心の体積Vcを求めた。
電子天秤で試料の重量mを測定し、(3)式で圧粉磁
心の充填密度ρcを求めた。
混合粉末の見かけ密度をρmとし、(4)式で圧粉磁
心の充填率Prを求めた。
【数1】
【数2】
【数3】
【0083】
圧粉磁心の比初透磁率をキーサイト・テクノロジー株式会社製インピーダンスアナライザE4991Aおよび磁性材料テストフィクスチャ16454Aで測定した。
鉄損を測定するために、圧粉磁心に銅線を巻いた。銅線の直径は0.26mmとした。励磁のための一次巻線と検出のための二次巻線の巻き数は20ターンで同一とし、バイファイラ巻きを施した。周波数条件は100kHzとし、最大磁束密度を20mTとした。
実施例1で作製した各試料を用いたトロイダル形状の圧粉磁心の充填率Pr、比初透磁率並びに鉄損を表2に示した。尚、実施例1と実施例2の対応関係は試料1→試料7、試料2→試料8、試料3→試料9、試料4→試料10、試料5→試料11、試料6→試料12となる。
【0084】
【0085】
表2において、試料番号に*を付したものは、本発明の範囲外の比較例である。
表2から、本発明の範囲内に属する試料番号7、8、9では、圧粉磁心の充填率Pr(空間充填率)が高く、比初透磁率が高く、かつ、鉄損が低くなっている。
試料番号10、11、12はいずれも圧粉磁心の充填率Prが低く、比初透磁率が低くなっている。さらに、試料番号10、12では鉄損が高くなっている。
【符号の説明】
【0086】
1 被覆軟磁性合金粒子
10 軟磁性合金粒子
20 第一の皮膜
30 第二の皮膜
40 粒子
51 被覆装置
52 チャンバ
53 羽根
54 羽根の回転方向を示す矢印
55 被処理物(軟磁性合金粒子及び第一の皮膜用化合物)
100 コイル(磁気応用部品)
110 圧粉磁心
120 一次巻線
130 二次巻線