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特許7517417敵対的サンプル検知装置、敵対的サンプル検知方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】敵対的サンプル検知装置、敵対的サンプル検知方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20240709BHJP
【FI】
G06N20/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022528400
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2020022424
(87)【国際公開番号】W WO2021245945
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】天田 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 和也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 俊則
【審査官】渡辺 順哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-059408(JP,A)
【文献】東亮憲 ほか,JPEG圧縮による画像分類器の識別結果の変動解析に基づく敵対的事例の検知法,コンピュータセキュリティシンポジウム2019論文集,日本,一般社団法人 情報処理学会,2019年10月14日,vol.2019,pp.975-981,ISSN 1882-0840
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1算出方法によって、入力データおよび比較データのそれぞれについて第1特徴量を抽出する第1特徴量抽出手段と、
前記第1算出方法と異なる第2算出方法によって、前記入力データおよび前記比較データのそれぞれについて第2特徴量を抽出する第2特徴量抽出手段と、
前記第1特徴量と前記第2特徴量を用いた計算により、前記入力データおよび前記比較データの少なくとも一方が敵対的サンプルであるか否かを判定する判定手段と
を備え
前記第2特徴量抽出手段は、前記第1特徴量に基づく認証に成功した場合に、前記入力データおよび前記比較データを加工した加工データの特徴量を前記第2特徴量として抽出する
敵対的サンプル検知装置。
【請求項2】
前記第1算出方法および前記第2算出方法は、機械学習により作成された計算モデルを基にした算出方法である
請求項1に記載の敵対的サンプル検知装置。
【請求項3】
前記第2算出方法は、前記入力データおよび前記比較データを加工した前記加工データを生成し、前記第1算出方法によって、前記加工データの特徴量を算出する算出方法である
請求項1または請求項2に記載の敵対的サンプル検知装置。
【請求項4】
前記第2算出方法は、前記第2特徴量の算出対象のデータの一部を強調しながら、前記第1算出方法により特徴量を算出する算出方法である
請求項1または請求項2に記載の敵対的サンプル検知装置。
【請求項5】
前記第1特徴量抽出手段により算出される前記比較データの第1特徴量と、前記第2特徴量抽出手段により算出される前記比較データの第2特徴量を記憶手段に記憶させる記録手段を備え、
前記判定手段は、前記記憶手段から前記第1特徴量と前記第2特徴量を取得する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の敵対的サンプル検知装置。
【請求項6】
前記入力データの第1特徴量と前記比較データの第1特徴量とに基づいて、前記入力データと前記比較データが、同一人物もしくは同一物由来のデータであるか否かを認証する認証手段を備える
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の敵対的サンプル検知装置。
【請求項7】
前記第2算出方法は、前記入力データおよび前記比較データそれぞれの色深度を減少させ、または平滑化した加工データを生成し、前記第1算出方法によって、前記加工データの特徴量を算出する算出方法である
請求項1または請求項2に記載の敵対的サンプル検知装置。
【請求項8】
前記第1算出方法は、学習済みニューラルネットワークモデルである第1モデルに前記入力データおよび前記比較データを入力することで、前記第1特徴量を算出する算出方法であり、
前記第2算出方法は、前記第1モデルを構成する複数のニューロンのうち特定のニューロンの値を変更したニューラルネットワークモデルである第2モデルに前記入力データおよび前記比較データを入力することで、前記第2特徴量を算出する算出方法である
請求項2に記載の敵対的サンプル検知装置。
【請求項9】
第1算出方法によって、入力データおよび比較データのそれぞれについて第1特徴量を抽出することと、
前記第1算出方法と異なる第2算出方法によって、前記入力データおよび前記比較データのそれぞれについて第2特徴量を抽出することと、
前記第1特徴量と前記第2特徴量を用いた計算により、前記入力データおよび前記比較データの少なくとも一方が敵対的サンプルであるか否かを判定することと
を有し、
前記第2特徴量を抽出することは、前記第1特徴量に基づく認証に成功した場合に、前記入力データおよび前記比較データを加工した加工データの特徴量を前記第2特徴量として抽出することによってなされる
敵対的サンプル検知方法。
【請求項10】
コンピュータを、
第1算出方法によって、入力データおよび比較データのそれぞれについて第1特徴量を抽出する第1特徴量抽出手段、
前記第1算出方法と異なる第2算出方法によって、前記入力データおよび前記比較データのそれぞれについて第2特徴量を抽出する第2特徴量抽出手段、
前記第1特徴量と前記第2特徴量を用いた計算により、前記入力データおよび前記比較データの少なくとも一方が敵対的サンプルであるか否かを判定する判定手段
として機能させ
前記第2特徴量抽出手段が、前記第1特徴量に基づく認証に成功した場合に、前記入力データおよび前記比較データを加工した加工データの特徴量を前記第2特徴量として抽出する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敵対的サンプル検知装置、敵対的サンプル検知方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習を用いて画像認識を行う技術がある。画像認識をより正確に行うために、機械学習された学習済みモデルが誤認識するように作成された敵対的サンプル(Adversarial Examples)と呼ばれる入力を検知する必要がある。非特許文献1、2には、1つの入力データを予め設定された複数のクラスの1つに分類する分類器において、1つの入力データに異なる処理を行い、処理をした結果生じたデータの比較を行うことで、敵対的サンプルを検知する技術が開示されている。
なお、特許文献1には、敵対的生成ネットワークを用いて、機械学習に必要な学習データを自動的に生成し、学習精度を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-046390号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Weilin Xu, et al. “Feature Squeezing: Detecting Adversarial Examples in Deep Neural Networks”, Proceedings of the In Network and Distributed Systems Security. Symposium (NDSS) 2018.
【文献】Guanhong Tao, et al. “Attacks Meet Interpretability: Attribute-steered Detection of Adversarial Samples”, Proceedings of Advances in Neural Information Processing Systems (NIPS), 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人物等の認証を行う方法として、入力データを予め設定された複数の人物を表すクラスの1つに分類することで人物の認証を行う手法のほかに、入力データと比較データとの特徴量の類似度を計算することで人物の認証を行う手法とが知られている。
しかしながら、非特許文献1、2に記載の技術は、1つのデータを複数のクラスの1つに分類する分類器において敵対的サンプルを検知するものであって、2つ以上のデータの特徴量の比較を行う認証器において敵対的サンプルを検知する技術は開示されていない。また、特許文献1に記載された技術において、敵対的サンプルを検知することは考慮されていない。
本発明の目的は、上述した課題を解決する敵対的サンプル検知装置、敵対的サンプル検知方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、敵対的サンプル検知装置は、第1算出方法によって、入力データおよび比較データのそれぞれについて第1特徴量を抽出する第1特徴量抽出手段と、前記第1算出方法と異なる第2算出方法によって、前記入力データおよび前記比較データのそれぞれについて第2特徴量を抽出する第2特徴量抽出手段と、前記第1特徴量と前記第2特徴量を用いた計算により、前記入力データおよび前記比較データの少なくとも一方が敵対的サンプルであるか否かを判定する判定手段とを備える。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、敵対的サンプル検知方法は、第1算出方法によって、入力データおよび比較データのそれぞれについて第1特徴量を抽出することと、前記第1算出方法と異なる第2算出方法によって、前記入力データおよび前記比較データのそれぞれについて第2特徴量を抽出することと、前記第1特徴量と前記第2特徴量を用いた計算により、前記入力データおよび前記比較データの少なくとも一方が敵対的サンプルであるか否かを判定することとを有する。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、敵対的サンプル検知プログラムは、コンピュータを、1つ以上の入力データおよび1つ以上の比較データから、第1算出方法により第1特徴量を算出する第1特徴量抽出部、前記入力データおよび前記比較データから、第2算出方法により第2特徴量を算出し、前記第2算出方法は前記第1算出方法と異なる第2特徴量抽出部、前記第1特徴量と前記第2特徴量を用いた計算により、前記入力データおよび前記比較データの少なくとも一方が敵対的サンプルであるか否かを判定する判定部として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2つ以上のデータの特徴量の比較を行う認証器において敵対的サンプルを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る認証装置の構成図である。
図2】第1の実施形態に係る認証装置のソフトウェア構成を示す概略ブロック図である。
図3】第1の実施形態に係るモデル記憶部が記憶する機械学習モデルの構成図である。
図4】第1の実施形態に係るモデル記憶部が記憶する機械学習モデルの生成方法を示すフローチャートである。
図5】第1の実施形態に係る認証装置の動作を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態に係るモデルの学習方法を示すフローチャートである。
図7】第3の実施形態に係る認証装置の構成を示す概略ブロック図である。
図8】第3の実施形態に係る認証装置の一部構成を示す概略ブロック図である。
図9】第3の実施形態に係る認証装置の比較データの入力から記憶までの流れを示すフローチャートである。
図10】第3の実施形態に係る認証装置の入力データの入力から認証までの流れを示すフローチャートである。
図11】敵対的サンプル検知装置の基本構成を示す概略ブロック図である。
図12】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
〈第1の実施形態〉
図1は、第1の実施形態に係る認証装置の構成図である。
認証装置1は、読み取り装置102から、利用者Uの所持する写真や証明書から画像データを取得する。その後、カメラ101で利用者Uを撮影することでもう1つの画像データを取得する。その後、2つの画像データを比較し、認証装置1が同一人物であるかどうかを認証する。その後、認証装置1はディスプレイ103に結果を出力し、表示させる。なお、画像データは、認証装置の誤判定を誘発する敵対的サンプルである可能性がある。第1の実施形態に係る認証装置は、入力された画像データが敵対的サンプルであるか否かを判定する機能を有する。
【0012】
図2は、第1の実施形態に係る認証装置のソフトウェア構成を示す概略ブロック図である。
認証装置1は、入力部10、比較データ取得部11、第1特徴量抽出部20、第2特徴量抽出部21、モデル記憶部22、類似度計算部30、スコア計算部31、認証部40、スコア判定部41、出力部50を備える。
【0013】
入力部10は、利用者から認証のための画像データの入力を受け付ける。画像データは、例えば、利用者の顔が写ったものである。例えば、入力部10は、カメラ101によって撮影された利用者の顔が写る画像データを取得する。以下、入力部に入力されるデータを入力データともいう。
比較データ取得部11は、入力データと比較するための比較データを取得する。例えば、比較データ取得部11は、読み取り装置102によって利用者を写した写真や利用者の顔写真のデータが入ったICチップから読み取られた画像データを取得する。
モデル記憶部22は、データを入力することで、当該データの特徴量を出力する学習済みの機械学習モデルを記憶する。
【0014】
第1特徴量抽出部20は、モデル記憶部22が記憶する学習済みモデルを用いて、入力データおよび比較データのそれぞれについて特徴量(第1特徴量)を抽出する。具体的には、第1特徴量抽出部20は、モデル記憶部22が記憶する学習済みモデルにデータを入力することで、当該データの特徴量を得る。
第2特徴量抽出部21は、入力データおよび比較データのそれぞれについて特徴量(第2特徴量)を抽出する。具体的には、第2特徴量抽出部21は、データに所定の加工を施し、当該加工されたデータをモデル記憶部22が記憶する学習済みモデルに入力することで、当該データの特徴量を得る。所定の加工の例としては、画像データの各ピクセルの色深度を減少させる処理や空間の平滑化処理など、敵対的サンプルの摂動の影響を低減するような処理が挙げられる。
【0015】
スコア計算部31は、第1特徴量抽出部20が算出した入力データの特徴量および比較データ特徴量、ならびに第2特徴量抽出部21が算出した入力データの特徴量および比較データ特徴量を用いて、前述の4つの特徴量により求められるスコアの計算を行う。例えば、以下の式(1)に示す計算式を用いて計算することができる。
【0016】
【数1】
【0017】
ここでaはスコア、xは入力データ、xは比較データ、g(x)は第1特徴量抽出部20にxを入力したときに出力される特徴量、gd(x)は第2特徴量抽出部21にxを入力したときに出力される特徴量である。これらの特徴量はベクトルで得られ、次元が同じ場合に加減の計算をすることができる。|x|pはxのp-ノルムの値である。
【0018】
スコア判定部41は、スコア計算部31より取得したスコアを元に入力データおよび比較データの少なくとも一方が敵対的サンプルであるかないかの判定を行う。判定方法の一例としては、あるしきい値を予め設定しておき、計算結果がそのしきい値を超えた場合には敵対的サンプルであると判定し、計算結果がそのしきい値以下である場合には敵対的サンプルでないと判定するというものが挙げられる。
【0019】
類似度計算部30は、第1特徴量抽出部20が算出した入力データの特徴量および比較データ特徴量の類似度を算出する。類似度の例としては、コサイン類似度やユークリッド距離が挙げられる。
認証部40は、類似度計算部30が計算した類似度に基づいて、入力データの顔写真に写る人物と出力データの顔写真に写る人物が同一人物であるかを認証する。
出力部50は、類似度判定部303の判定結果および認証部の認証結果を外部に出力する。出力の例としては、認証失敗、認証成功、および敵対的サンプル検知を、ディスプレイ103に表示すること、プリンタによって印刷すること、通信によって外部に送信すること、記憶装置に記録することなどが挙げられる。
【0020】
<<学習済みモデルの生成方法>>
モデル記憶部22が記憶する機械学習モデルの生成方法を説明する。
図3は、第1の実施形態に係るモデル記憶部22が記憶する機械学習モデルを生成するために用いる分類モデルM0の構成図である。
機械学習モデルM0は、図3に示すように、データ入力部M1、特徴量算出部M2、および分類部M3を備える。
データ入力部M1は、入力された画像データをベクトルとして特徴量算出部M2に出力する。
特徴量算出部M2は、データ入力部M1から入力されたベクトルを、低次元の特徴ベクトルに変換し、分類部M3に出力する。特徴ベクトルは特徴量の一例である。また特徴量算出部M2は、特徴量関数、特徴量計算モデルの一例である。
分類部M3は、2層以上のニューラルネットワークによって構成される。分類部M3は、特徴量算出部M2から入力された特徴ベクトルから、当該特徴ベクトルが表す画像に写る人物の事後確率を示すP次元のベクトルに変換する。
【0021】
図4は、第1の実施形態に係るモデル記憶部22が記憶する機械学習モデルM0の生成方法を示すフローチャートである。
入力部10は、図示しないデータベースから予め用意されていたデータセットを取得し、第2特徴量抽出部に出力する(ステップL1)。当該データセットは、入力サンプルである画像データと、入力サンプルである人物を表すラベルの組み合わせである。第2特徴量抽出部は機械学習モデルM0を基にして特徴量の計算を行う(ステップL2)。次に、計算された結果を基にして特徴量算出部M2および分類部M4のパラメータを更新する(ステップL3)。次に、ステップL3でパラメータを更新した機械学習モデルM0のうち、データ入力部M1および特徴量算出部M2からなる部分モデルを抽出して、モデル記憶部22に記憶させる(ステップL4)。なお、ステップL3の次に再びステップL1を行い、複数回特徴量算出部M2および分類部M4のパラメータを更新してもよい。
【0022】
図5は、第1の実施形態に係る認証装置の動作を示すフローチャートである。
第1特徴量抽出部20は、入力部10から入力データを取得する(ステップS1)。さらに第1特徴量抽出部20は、比較データ取得部11から比較データを取得する(ステップS2)。第1特徴量抽出部20は、取得した入力データおよび比較データを、モデル記憶部22が記憶する学習済みモデルに対して入力することで、それぞれ入力データおよび比較データの特徴量を抽出する(ステップS3)。
【0023】
その後、類似度計算部30が、入力データおよび比較データそれぞれの特徴量を基にして類似度を算出する(ステップS4)。認証部40は、算出した類似度が設定した認証しきい値より小さいか否かを判定する(ステップS5)。算出した類似度が設定した認証しきい値より小さい場合(ステップS5:NO)、認証部40が認証失敗と判断する。そして、出力部50が認証失敗したことを出力し(ステップS102)、処理を終了する。
【0024】
他方、算出した類似度が設定した認証しきい値以上である場合(ステップS5:YES)、第2特徴量抽出部21は、入力データおよび比較データに所定の加工を加える(ステップS6)。次に、第2特徴量抽出部21は、加工された入力データおよび比較データをモデル記憶部が記憶する学習済みモデルに入力することで、入力データおよび比較データそれぞれの特徴量を算出する(ステップS7)。次に、スコア計算部31が、第1特徴量抽出部20および第2特徴量抽出部21より特徴量データを取得し、取得した特徴を基にしたスコアを算出する(ステップS8)。
【0025】
スコア判定部41は、算出したスコアが設定した検知しきい値より大きいか否かを判定する(ステップS9)。スコア判定部41は、算出したスコアが設定した検知しきい値より大きい場合(ステップS9:NO)、スコア判定部41が入力データおよび比較データの少なくとも一方が敵対的サンプルであると判断し、出力部50が敵対的サンプル検知したことを出力し(ステップS101)、処理を終了する。
算出したスコアが設定した検知しきい値以下である場合(ステップS9:YES)、スコア判定部41は入力データおよび比較データに敵対的サンプルが含まれないと判定する。これにより、認証部40は、認証成功と判断する。そして、出力部50が認証成功を出力し(ステップS100)、処理を終了する。
【0026】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、認証装置は、入力データおよび比較データのそれぞれについて第1特徴量抽出部により第1特徴量を、第2特徴量抽出部により第2特徴量を算出し、入力データの第1特徴量、入力データの第2特徴量、比較データの第1特徴量および比較データの第2特徴量を用いて、入力データおよび比較データの少なくとも一方が敵対的サンプルであるか否かを判定する。つまり、認証装置は、入力データおよび比較データの2つのデータについて得られた特徴量に基づいて1つの計算結果を出力する。これにより、第1の実施形態に係る認証装置は、2つのデータを用いて敵対的サンプルを検知することができる。
なお、本願発明によれば、認証装置は、入力データおよび比較データの2つのデータについて得られた特徴量に基づいて1つの計算結果を出力するため、非特許文献1、2のように1つの入力データに基づいて敵対的サンプルを検知する手法と比較して、より正確に敵対的サンプルの検知をすることができる。
【0027】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態に係る認証装置は、第2特徴量抽出部21がデータに所定の加工を施していた。これに対し、第2の実施形態に係る認証装置は、第2特徴量抽出部21がモデル記憶部22から取得するモデルM10はモデルM0とは異なるモデルである。モデルM10は、モデルM0を構成するニューラルネットワークから、顔写真データの顔のパーツ(目や鼻など)と相関性の強いニューロンを調べ、そのニューロンの値を強調したモデルである。第2の実施形態による認証方法は、第2特徴量抽出部21の動作が異なる以外は、第1の実施形態と同様である。
【0028】
モデルM10について説明する。
図6は、第2の実施形態に係るモデルM10の学習方法を示すフローチャートである。
入力部10は、図示しないデータベースから予め用意されていたデータセットを取得し、第2特徴量抽出部に出力する(ステップL1)。当該データセットは、入力サンプルである画像データと、入力サンプルである人物を表すラベルの組み合わせである。第2特徴量抽出部は機械学習モデルM0を基にして特徴量の計算を行う(ステップL2)。次に、モデルM0を構成するニューラルネットワークから、顔写真データの顔のパーツ(目や鼻など)と相関性の強いニューロンを調べ、そのニューロンの値を強調する(ステップL31)。次に、ステップL31において変更を加えた機械学習モデルM0のうち、データ入力部M1および特徴量算出部M2からなる部分モデルを抽出して、モデル記憶部22に記憶させる(ステップL4)。
【0029】
《作用・効果》
このように、第2の実施形態によれば、認証装置は、第1の実施形態同様、入力データおよび比較データの2つのデータについて得られた特徴量に基づいて1つの計算結果を出力するため、非特許文献1、2のように1つの入力データから1つの計算結果を出力する装置と比較して、より正確に敵対的サンプルの検知をすることができる。
【0030】
〈第3の実施形態〉
図7は、第3の実施形態に係る認証装置の構成を示す概略ブロック図である。
図8は、第3の実施形態に係る認証装置の一部構成を示す概略ブロック図である。
第1の実施形態に係る認証装置は、1つの入力データと1つの比較データにより認証を行う装置である。これに対し、第3の実施形態に係る認証装置は、1つの入力データと予め用意されたN個の比較データにより、もしくは、N個の入力データと予め用意されたN個の比較データにより、認証を行う装置である。
【0031】
第3の実施形態に係る敵対的サンプル検知装置は、第1の実施形態に加え特徴量記憶部23をさらに備えるものである。
第1特徴量抽出部20および第2特徴量抽出部21は、比較データ取得部11から比較データを取得し、取得した比較データの特徴量を算出する。また、第1特徴量抽出部20および第2特徴量抽出部21は、算出した特徴量を特徴量記憶部23に出力する。ここで、第1特徴量抽出部20および第2特徴量抽出部21は記録手段の一例である。
特徴量記憶部23は、比較データに係る特徴量データを記憶する。また、特徴量記憶部23は、類似度計算部30またはスコア計算部31に記憶した特徴量データを出力する。
類似度計算部30およびスコア計算部31は、入力データの第1特徴量および入力データの第2特徴量、特徴量記憶部23より取得した比較データの特徴量を用いて計算を行う。
【0032】
図9は、第3の実施形態に係る認証装置の比較データの入力から記憶までの流れを示すフローチャートである。
比較データ取得部11が、N個の比較データを取得する(ステップK1)。第3の実施形態に係る比較データは、例えば予めデータベースなどに記憶される。以下、認証装置は、取得されたN個の比較データを1つずつ選択し(ステップK2)、各比較データについて以下のステップK3からK5の処理を実行する。
第1特徴量抽出部20は、ステップK2で選択された比較データの第1特徴量を算出する(ステップK3)。また第2特徴量抽出部21は、ステップK2で選択された比較データの第2特徴量を算出する(ステップK4)。特徴量記憶部23はステップS3で算出した第1特徴量およびステップS4で算出した第2特徴量を関連付けて記憶する(ステップK5)。
これにより、特徴量記憶部23には、N個の比較データそれぞれの第1特徴量および第2特徴量が記憶される。
【0033】
図10は、第3の実施形態に係る認証装置の入力データの入力から認証までの流れを示すフローチャートである。
入力部は、入力データを取得する(ステップS201)。第1特徴量抽出部20が入力データの第1特徴量を算出する(ステップ202)。また、第2特徴量抽出部21は、入力データの第2特徴量を算出する(ステップS203)。
【0034】
以下、認証装置は、N個の比較データを1つずつ選択し(ステップS204)、各比較データについて以下のステップS206からステップS209の処理を実行する(ステップ205)。
類似度計算部30は、特徴量記憶部23からステップS204で選択された比較データの第1特徴量を取得する(ステップS206)。
類似度計算部30は、ステップS202で算出した入力データの第1特徴量と、ステップS205で取得した比較データの第1特徴量に基づいて、比較データに対する入力データの類似度を算出する(ステップS207)。認証部40は、算出した類似度が設定した認証しきい値より小さいか否かを判定する(ステップS208) 。
【0035】
算出したすべての類似度が、設定した認証しきい値より小さい場合(ステップS209:NO)、認証部40が認証失敗と判断する。そして、出力部50が認証失敗したことを出力し(ステップS214)、処理を終了する。
【0036】
算出した少なくとも1つの類似度が、設定した認証しきい値以上である場合(ステップS209:YES)、限定した比較データについて以下のステップS211からステップS213の処理を実行する(ステップS210)。ここでいう限定した比較データとは、ステップ208で認証しきい値以上であると判定した類似度に対応する比較データのことである。
スコア計算部31は、特徴量記憶部23から比較データの第2特徴量を取得する(ステップS211)。スコア計算部31は、ステップS202で算出した入力データの第1特徴量、ステップS203で算出した入力データの第2特徴量、ステップS206で取得した比較データの第1特徴量、およびステップS211で取得した比較データの第2特徴量を基にしたスコアを算出する(ステップS212)。
【0037】
スコア判定部41は、算出したスコアが設定した検知しきい値より大きいか否かを判定する(ステップS213)。算出したスコアが検知しきい値より大きい場合(ステップS213:NO)、スコア判定部41が敵対的サンプルを検知したと判断し、出力部50が敵対的サンプルを検知したことを出力し(ステップS216)、処理を終了する。
算出したすべてのスコアが設定した検知しきい値以下である場合、出力部50が認証成功を出力し(ステップS215)、処理を終了する。
【0038】
《作用・効果》
このように、第3の実施形態によれば、予め複数の比較データの特徴量データを記憶し、1つの入力データと比較を行い敵対的サンプルの検知を行っている。これにより、比較データの計算を省略することができ、計算量を低減することができる。
【0039】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
上述した実施形態においては、認証装置1は入力データとして顔写真データで説明したが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る入力データは、利用者の音声を収録した音声データなどを用いてもよい。
【0040】
また、認証部40が認証する対象も顔写真に写る人物に限られない。例えば、動物や道路標識などを対象に認証してもよい。
【0041】
また、上述した実施形態においては、第1特徴量抽出部20および第2特徴量抽出部21は、機械学習モデルの最終出力である特徴量を用いて敵対的サンプルを検知するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る第1特徴量抽出部20および第2特徴量抽出部21は、機械学習モデルの計算過程において現れる値(例えば、ニューラルネットワークの中間層の計算で得られる特徴量)を敵対的サンプルの検知に使用してもよい。具体的にはスコア計算部31はある中間層により抽出される特徴量を元にスコアを計算し、スコア判定部41はそのスコアを元に敵対的サンプルであるか否かの判定を行うものであってもよい。
【0042】
第1の実施形態に係る第2特徴量抽出部21は、第1特徴量抽出部20が用いる機械学習モデルを用いて、入力データおよび比較データに加工を加えたものから特徴量を抽出する。また第2の実施形態に係る第2特徴量抽出部21は、第1特徴量抽出部20が用いる機械学習モデルのうち特定のニューロンの値を強調したニューラルネットワークから構成されるモデルを使用して特徴量を抽出する。このように、第1の実施形態および第2の実施形態において、第2特徴量抽出部21が第1特徴量抽出部と異なる特徴量を算出する例を説明したが、第2特徴量抽出部21による特徴量の算出方法はこれに限られない。すなわち、第2特徴量抽出部21は第1特徴量抽出部20と異なる算出方法により、入力データおよび比較データの第2特徴量を抽出すればよい。
【0043】
また、上述の第3の実施形態に係る認証装置は、比較データの特徴量を算出し、特徴量記憶部23に記憶させた後に入力データを入力し類似度計算およびスコア計算を行っているが、これに限られない。例えば、入力データおよび比較データを同時に取得し、入力データまたは比較データから算出した特徴量を特徴量記憶部23に記憶させる。および特徴量を用いて類似度計算とスコア計算を行うというように、記憶部への記憶と個人認証または敵対的サンプルの検知が並列で行われてもよい。
【0044】
〈基本構成〉
図11は、敵対的サンプル検知装置の基本構成を示す概略ブロック図である。
上述した実施形態では、敵対的サンプル検知装置の一実施形態として図1等に示す構成について説明したが、敵対的サンプル検知装置の基本構成は、図11に示すとおりである。
すなわち、敵対的サンプル検知装置は、第1特徴量抽出部20、第2特徴量抽出部21、及び判定部4を基本構成とする。
【0045】
第1特徴量抽出部20は、第1算出方法によって、入力データおよび比較データのそれぞれについて第1特徴量を抽出する。
第2特徴量抽出部21は、第1算出方法と異なる第2算出方法によって、入力データおよび比較データのそれぞれについて第2特徴量を抽出する。
判定部4は、第1特徴量と第2特徴量を用いた計算により、入力データおよび比較データの少なくとも一方が敵対的サンプルであるか否かを判定する。
これにより、敵対的サンプル検知装置は、2つ以上のデータの特徴量の比較を行う認証器において敵対的サンプルを検知することができる。
【0046】
図12は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、インタフェース94を備える。
上述の敵対的サンプル検知装置は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0047】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ90は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ91によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0048】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0049】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 認証装置
101 カメラ
102 読み取り装置
103 ディスプレイ
10 入力部
11 比較データ取得部
20 第1特徴量抽出部
21 第2特徴量抽出部
22 モデル記憶部
23 特徴量記憶部
30 類似度計算部
31 スコア計算部
4 判定部
40 認証部
41 スコア判定部
50 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12