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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】生体認証機能付き電子カード
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20240709BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240709BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240709BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240709BHJP
   B42D 25/485 20140101ALI20240709BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20240709BHJP
【FI】
G06K19/07 090
G06K19/07 180
G06K19/07 040
G06K19/077 260
H02J50/12
H02J7/00 301D
B42D25/485
H04B5/48
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022528423
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2021004029
(87)【国際公開番号】W WO2021245981
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2020098102
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 達也
【審査官】土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145879(WO,A1)
【文献】特開2012-238126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G06K 19/073
G06K 19/077
H02J 50/12
H02J 7/00
B42D 25/485
H04B 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離無線通信用の通信アンテナと、当該通信アンテナに電気的に接続された無線通信ICと、前記通信アンテナと前記無線通信ICとの間に設けられた通信フィルタ回路と、前記通信アンテナに磁気結合する受電コイルと、当該受電コイルと共に受電共振回路を構成する共振キャパシタと、前記受電共振回路に接続された整流平滑回路と、前記受電コイルによる電力で動作する、生体センサ及び生体認証回路と、を備え、
前記通信フィルタ回路は、前記通信アンテナからみた入力インピーダンスをハイインピーダンスに設定し、かつ、前記受電共振回路は、前記受電コイルからみた入力インピーダンスをローインピーダンスに設定し、
前記ハイインピーダンスは、前記通信アンテナが得る電磁界エネルギーが大きく減衰し、前記通信アンテナが得る電磁界エネルギーを電力として利用することは困難であるように設定されたインピーダンスであり、
前記ローインピーダンスは、前記受電コイルが得る電磁界エネルギーの減衰が少なく、前記受電コイルが得る電磁界エネルギーを電力として利用することが可能となるように設定されたインピーダンスであり、
前記通信アンテナ及び前記受電コイルは前記近距離無線通信用の同一周波数帯の磁界に応答し、
前記無線通信ICは近距離無線通信を実行し、
前記受電コイルは前記近距離無線通信用の同一周波数帯の磁界より電力を受電し、
前記生体認証回路は、前記受電共振回路からの受電電力で前記生体センサを動作させ、
前記通信アンテナ及び前記受電コイルは、当該通信アンテナと前記受電コイルとの磁気結合により、前記近距離無線通信用の同一周波数帯で共鳴する電磁界エネルギーを共有し、
前記通信フィルタ回路は、通信における電磁雑音を低減し、かつ、前記入力インピーダンスの設定によって前記受電コイルが得る電磁界エネルギーの減衰を少なくする、
生体認証機能付き電子カード。
【請求項2】
生体センサは指紋センサである、
請求項1に記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項3】
前記近距離無線通信用の同一周波数帯はISMバンドの周波数である、
請求項1又は2に記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項4】
前記近距離無線通信用の同一周波数帯は6.78MHz帯又は13.56MHz帯の周波数である、
請求項1又は2に記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項5】
前記通信アンテナと前記受電コイルとは同一平面上に配置される、
請求項1から4のいずれかに記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項6】
前記通信アンテナと前記受電コイルとの磁気結合の結合係数が、前記通信アンテナと前記受電コイルとの配置及び構造により定められた、
請求項1から5のいずれかに記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項7】
前記通信アンテナと前記受電コイルとは、辺の一部が平行に配置された、
請求項6に記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項8】
前記磁気結合の前記結合係数は0.001から0.3の範囲内に設定された、
請求項6又は7に記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項9】
前記通信アンテナ及び前記受電コイルの磁路の一部を構成する共用の磁性シートを備える、
請求項1から8のいずれかに記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項10】
前記受電コイルによる前記受電電力を蓄電する蓄電デバイス、当該蓄電デバイスに対する充放電を制御する充放電制御回路、及び当該充放電制御回路を制御する電力管理回路を備える、
請求項1から9のいずれかに記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項11】
前記電力管理回路は、前記生体認証回路の動作の終了を検知して、前記充放電制御回路への充電制御を行う、
請求項10に記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項12】
前記電力管理回路は、前記生体認証回路の動作が終了した後に、充放電制御回路を制御して前記受電コイルによる前記受電電力を前記蓄電デバイスに蓄電する、
請求項11に記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項13】
前記生体認証回路は、前記無線通信ICが起動した後に、前記蓄電デバイスからの電力で前記生体センサを動作させる、
請求項11又は12に記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項14】
前記生体認証回路は、前記無線通信ICが起動した後に、前記受電コイルによる受電電力で前記生体センサを動作させる、
請求項1から10のいずれかに記載の生体認証機能付き電子カード。
【請求項15】
前記電力管理回路は、前記整流平滑回路からの受電通知信号を受けて前記整流平滑回路の整流制御を行う、
請求項11に記載の生体認証機能付き電子カード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体センサ及び生体認証回路を備える生体認証機能付き電子カードに関する。
【背景技術】
【0002】
生体センサ及び生体認証回路を備える生体認証機能付き電子カードは、リーダライタ装置にかざしてワイヤレスで電力を受け、ワイヤレスで認証データを通信することが要求される。
【0003】
ワイヤレスで通信及び電力の受電を行う装置の例として、非接触充電コイルとNFCアンテナと磁性シートとを備え、通信及び受電が可能な非接触充電モジュールが特許文献1に開示されている。この特許文献1には、充電コイルと、この充電コイルを囲むように配置されたNFCコイルと、充電コイルを支持する第1の磁性シートと、第1の磁性シートに載置され、NFCコイルを支持する第2の磁性シートと、を備える非接触充電モジュールが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5013019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の非接触充電モジュールでは、充電コイルとNFCコイルとは独立したコイルとして作用するように構成されていて、通信と受電とを同時に行うことはできない。また、通信効率と電力の受電効率の双方を高めることはできない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、通信と受電とを同時に行うことができ、また、通信効率及び受電効率の双方が高い生体認証機能付き電子カードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例としての生体認証機能付き電子カードは、
近距離無線通信用の通信アンテナと、当該通信アンテナに電気的に接続された無線通信ICと、前記通信アンテナに磁気結合する受電コイルと、当該受電コイルと共に受電共振回路を構成する共振キャパシタと、前記受電共振回路に接続された整流平滑回路と、前記受電コイルによる電力で動作する、生体センサ及び生体認証回路と、を備え、
前記通信アンテナ及び前記受電コイルは前記近距離無線通信用の同一周波数帯の磁界に応答し、
前記無線通信ICは近距離無線通信を実行し、
前記受電コイルは前記近距離無線通信用の同一周波数帯の磁界より電力を受電し、
前記生体認証回路は、前記受電共振回路からの受電電力で前記生体センサを動作させ、
前記通信アンテナ及び前記受電コイルは、当該通信アンテナと前記受電コイルとの磁気結合により、前記近距離無線通信用の同一周波数帯で共鳴する電磁界エネルギーを共有することを特徴とする。
【0008】
上記構成により、通信アンテナ及び受電コイルは近距離無線通信用の同一の周波数帯の磁界に応答し、受電コイルはその同一周波数帯の磁界の電力を受電し、通信アンテナ及び受電コイルは、当該通信アンテナと受電コイルとの磁気結合により、近距離無線通信用の周波数帯で共鳴する電磁界エネルギーを共有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信と受電とを同時に行うことができ、また、通信効率及び受電効率の双方が高い生体認証機能付き電子カードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(A)、図1(B)は、第1の実施形態に係る生体認証機能付き電子カードにおける通信アンテナ、受電コイル及び生体認証回路の配置例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る生体認証機能付き電子カードにおける通信アンテナ、受電コイル及び生体認証回路の別の配置例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る生体認証機能付き電子カードにおける通信アンテナ、受電コイル及び生体認証回路の更に別の配置例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る生体認証機能付き電子カード111Aの回路構成を示すブロック図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る別の生体認証機能付き電子カード111Bの回路構成を示すブロック図である。
図6図6は生体認証機能付き電子カード111A,111Bの動作シーケンスを示す図である。
図7図7は第2の実施形態に係る生体認証機能付き電子カード102及び送電装置の構成を示す図である。
図8図8は第2の実施形態に係る生体認証機能付き電子カード102の回路構成を示すブロック図である。
図9図9(A)、図9(B)は、受電コイル21La,21Lbと通信アンテナ11との位置関係と、その両者の結合係数k12との関係をシミュレーションするための、受電コイル21La,21Lb及び通信アンテナ11の構成を示す図である。
図10図10(A)、図10(B)は、受電コイル21La,21Lbと通信アンテナ11との位置関係の変化を示す図である。
図11図11は、図10(A)、図10(B)に示した通信アンテナ11を移動させたときの、受電コイル21La,21Lbの位置と結合係数k12の変化との関係を示す図である。
図12図12は受電コイル21Lのコイル開口内に通信アンテナ11が配置された生体認証機能付き電子カードにおける、通信アンテナ11の位置について示す図である。
図13図13は、図12に示したように、通信アンテナ11を受電コイル21Lの中央から受電コイル21Lの角部まで対角線に沿って移動させたときの、結合係数k12の変化を示す図である。
図14図14(A)、図14(B)、図14(C)は磁性シートを用いた電磁干渉の抑制について示す図である。
図15図15は、図14(A)、図14(B)、図14(C)に示した構成における、通信アンテナ11のインダクタンス、受電コイル21Lのインダクタンス、及び通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数k12との関係を示す図である。
図16図16は第4の実施形態に係る、直流共鳴送電装置と生体認証機能付き電子カード内の受電部との回路構成を示す図である。
図17図17は、図16中の電力変換回路72、共鳴調整回路71R,21R、及び整流平滑回路22の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0012】
《第1の実施形態》
図1(A)、図1(B)、図2及び図3は、第1の実施形態に係る生体認証機能付き電子カードにおける通信アンテナ、受電コイル及び生体認証回路の配置例を示す図である。
【0013】
図1(A)に示す生体認証機能付き電子カード101A、図1(B)に示す生体認証機能付き電子カード101B、図2に示す生体認証機能付き電子カード101C、及び図3に示す生体認証機能付き電子カード101Dは、通信アンテナ11、受電コイル21L及び生体センサ31を備える。通信アンテナ11と受電コイル21Lとは同一平面上に配置されている。また、通信アンテナ11と受電コイル21Lとは、辺の一部が平行となる関係に配置されている。
【0014】
通信アンテナ11は例えばNFC(Near field communication)リーダライタの通信アンテナと磁界結合する。受電コイル21Lは送電装置の送電コイルやNFC装置のコイルと磁界結合する。生体センサ31は例えば指紋センサであり、この生体認証機能付き電子カード101A,101B,101C,101Dを持つユーザーの指紋を検出する。
【0015】
生体認証機能付き電子カード101A,101Bでは、通信アンテナ11と受電コイル21Lとが、それぞれ独立したコイル開口を有するように配置されている。生体認証機能付き電子カード101Aは磁性シートを備えないが、生体認証機能付き電子カード101Bは、受電コイル21Lに重なる位置に磁性シート62を備える。受電コイル21Lに結合する相手側のコイルは、図1(A)、図1(B)に示す向きで、生体認証機能付き電子カード101A,101Bの手前にあり、磁性シート62は受電コイル21Lのコイル開口を鎖交する磁束の磁路として作用する。
【0016】
生体認証機能付き電子カード101Cでは、通信アンテナ11及び生体センサ31が受電コイル21Lのコイル開口の内側に配置されている。また、受電コイル21Lの全体に重なる磁性シート60が配置されている。つまり、通信アンテナ11及び受電コイル21Lの磁路の一部を構成する共用の磁性シート60を備える。この構成により、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数を適正に定めやすい。
【0017】
生体認証機能付き電子カード101Dでは、通信アンテナ11及び生体センサ31が受電コイル21Lのコイル開口の内側に配置されている。また、通信アンテナ11に重なる磁性シート61と、受電コイル21Lに沿った位置に配置された磁性シート62とが配置されている。
【0018】
以上に示した生体認証機能付き電子カード101A,101B,101C,101Dのいずれにおいて、通信アンテナ11と受電コイル21Lとは磁気的に結合し、いずれもNFCの周波数帯で動作する。
【0019】
図4は、第1の実施形態に係る生体認証機能付き電子カード111Aの回路構成を示すブロック図である。
【0020】
生体認証機能付き電子カード111Aは、NFC用の通信アンテナ11と、この通信アンテナ11に電気的に接続されたNFC-IC13と、通信アンテナ11に磁気結合する受電コイル21Lと、この受電コイル21Lと共に受電共振回路21を構成する共振キャパシタ21Cと、受電共振回路21に接続された整流平滑回路22と、受電コイル21Lによる電力で動作する、生体センサ31及び生体認証回路30と、を備える。生体認証機能付き電子カード111Aは、さらに、電力管理回路20を備える。上記NFCは本発明に係る「近距離無線通信」に対応する。また、上記NFC-ICは本発明に係る「無線通信IC」に対応する。
【0021】
生体認証機能付き電子カード111Aは、NFCリーダライタや直流共鳴送電装置にかざすことにより使用される。NFC用の周波数帯は、6.78MHz帯、13.56MHz帯などのISMバンド(産業科学医療用バンド)の周波数帯、または2.4GHz帯、5.7GHz帯、920MHz帯の周波数帯である。
【0022】
通信アンテナ11及び受電コイル21Lは上記NFC用の同一の周波数帯に応答する。NFC-IC13はNFC通信を実行する。受電コイル21LはNFC通信の信号の電力を受電する。生体認証回路30は、NFC-IC13が起動した後に、受電コイル21Lによる受電電力で生体センサ31を動作させる。通信アンテナ11及び受電コイル21Lは、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの磁気結合により、NFC通信の周波数帯で共鳴する電磁界エネルギーを共有する。
【0023】
電力管理回路20は整流平滑回路22から受電の有無を示す受電通知信号を受け、整流平滑回路22の整流制御を行う。生体認証回路30とNFC-ICとは認証に関する通知を行う。
【0024】
図4に示した例では、通信アンテナ11とNFC-IC13との間にフィルタ回路12が設けられている。このフィルタ回路12は、通信における電磁雑音を低減するために、通信アンテナ11からみた入力インピーダンスを高くするための回路である。通信アンテナ11からみた入力インピーダンスがハイインピーダンスであると、通信アンテナ11が得る電磁界エネルギーは大きく減衰し、通信アンテナ11が得る電磁界エネルギーを電力として利用することは困難である。一方、受電コイル21Lは、共振キャパシタ21Cと電気的に接続され、受電共振回路21を構成し、受電コイル21Lからみた入力インピーダンスは小さく設計され、入力インピーダンスはローインピーダンスとなる。このため、受電コイル21Lが得る電磁界エネルギーは減衰が少なく、受電コイル21Lが得る電磁界エネルギーを電力として利用することが可能となる。また、通信アンテナ11と受電コイル21Lとは、磁気結合を形成しているために電磁界エネルギーを共有でき、通信アンテナ11を用いた通信効率と受電コイル21Lを用いた受電効率の双方を同時に高めることが可能になる。
【0025】
図5は、第1の実施形態に係る別の生体認証機能付き電子カード111Bの回路構成を示すブロック図である。
【0026】
生体認証機能付き電子カード111Bにおいては、整流平滑回路22及び電圧変換回路23は、受電があれば常に動作可能状態に構成されている。その他の構成は生体認証機能付き電子カード111Aと同じである。
【0027】
図6は上記生体認証機能付き電子カード111A,111Bの動作シーケンスを示す図である。先ず、リーダライタから読み取りコマンドが発せられる。生体認証機能付き電子カードのNFC-IC13は、その読み取りコマンドを受けて、生体認証回路30へ生体認証のためのコマンドを発する。これにより、生体認証回路30は生体センサ31へREADコマンドを発し、生体センサ31から生体情報としての画像情報を受ける。生体認証回路30は、その生体情報が本人のものであるか照合し、OKであるかNGであるかの結果をNFC-IC13へ返す。そして、NFC-IC13はリーダライタへ認証結果を返す。
【0028】
もし、生体センサ31の動作に要する電力を受電できていなければ、生体認証回路30はNFC-IC13へNG(Time Out)を返す。これにより、NFC-IC13はリーダライタへNG(Time Out)を返す。
【0029】
以上に示したように、通信アンテナ11及び受電コイル21LはNFC用の同一の周波数帯に応答し、受電コイル21LはNFCの信号の電力を受電し、通信アンテナ11及び受電コイル21Lは、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの磁気結合により、NFCの周波数帯で共鳴する電磁界エネルギーを共有する。このように、本発明によれば、通信と受電とを同時に行うことができ、また、通信効率及び受電効率の双方が高い生体認証機能付き電子カードが得られる。
【0030】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、蓄電デバイスを備える生体認証機能付き電子カードについて例示する。
【0031】
図7は第2の実施形態に係る生体認証機能付き電子カード102及び送電装置の構成を示す図である。生体認証機能付き電子カード102は通信アンテナ11、受電コイル21L、生体認証回路30、生体センサ31、WPT(Wireless Power Transfer)/充電回路を備える。図中の「コンタクト」は金属端子コネクタである。生体認証機能付き電子カード102は非接触カード(リーダライタや送電装置等にかざすカード)であるが、このコンタクトを通した接触通信も可能としている。
【0032】
送電装置としては、NFCリーダライタ、NFC機能を有するスマートフォン、直流共鳴送電装置等がある。受電コイル21Lは、これら通信装置のアンテナや送電装置のコイルと磁気的に結合して受電する。
【0033】
図8は第2の実施形態に係る生体認証機能付き電子カード102の回路構成を示すブロック図である。この生体認証機能付き電子カード102は蓄電デバイス40と充放電制御回路41を備える。充放電制御回路41は電圧変換回路23の出力電圧を入力して蓄電デバイス40の充放電の制御を行う。電力管理回路20は充放電制御回路41に対して充放電のための制御信号を与える。その他の構成は図4に示した生体認証機能付き電子カード111Aと同じである。
【0034】
生体認証回路30及び生体センサ31は、電圧変換回路23の出力電圧又は充放電制御回路41の放電出力電圧で動作する。
【0035】
生体認証回路30は、NFC-IC13が起動した後に、受電コイル21Lによる受電電力で生体センサ31を動作させる。または、NFC-IC13が起動した後に、蓄電デバイス40からの電力で生体センサ31を動作させる。
【0036】
電力管理回路20は整流平滑回路22から受電通知を受けると、充放電制御回路41を有効化する。充放電制御回路41は、電圧変換回路23の出力電圧が、蓄電デバイス40の充電に要する電圧に達しなければ、蓄電デバイス40の電力を生体認証回路30へ供給する。
【0037】
電力管理回路20は、生体認証回路30の動作が終了したことを検知すれば、充放電制御回路41へ充電のための制御信号を出力する。これにより、充放電制御回路41は、電圧変換回路23の出力電圧が、蓄電デバイス40の充電に要する電圧を超えていれば、蓄電デバイス40を充電する。上記生体認証回路30の動作終了は、例えばNFC-IC13からの通信通知信号に基づいて検知する。また、その他に、各部の信号の検知、各部の状態の検知、各部の処理時間の検知などによって、生体認証回路30の動作終了を検知してもよい。
【0038】
このように、電力管理回路20は、生体認証回路30の動作が終了した後に、充放電制御回路41を制御して受電コイル21Lによる受電電力を蓄電デバイス40に蓄電する。
【0039】
本実施形態によれば、図7に示したNFCリーダライタやスマートフォンからの受電電力で蓄電デバイス40の充電が可能でありNFCリーダライタやスマートフォンからの受電電力が小さくても、生体認証が可能となる。
【0040】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、受電コイルと通信アンテナとの磁気的結合について示す。
【0041】
図9(A)、図9(B)は、受電コイル21La,21Lbと通信アンテナ11との位置関係と、その両者の結合係数k12との関係をシミュレーションするための、受電コイル21La,21Lb及び通信アンテナ11の構成を示す図である。ここで、通信アンテナ11と受電コイル21La,21Lbの仕様は次のとおりである。
【0042】
[通信アンテナ11]
外形:8.4mm×8.4mm
配線幅:0.15mm
配線ピッチ:0.2mm
ターン数:13
[受電コイル21La]
外形:20mm×20mm
配線幅:0.8mm
配線ピッチ:1.2mm
ターン数:4
[受電コイル21Lb]
外形:18mm×33mm
配線幅:0.8mm
配線ピッチ:1.2mm
ターン数:4
図10(A)、図10(B)は、受電コイル21La,21Lbと通信アンテナ11との位置関係の変化を示す図である。これらの図に示すように、通信アンテナ11を基材の角部に配置し、受電コイル21La,21Lbを基材の角部からもう一方の角部へ移動させたときの、通信アンテナ11と受電コイル21La,21Lbとの結合係数k12について次に示す。
【0043】
図11は、図10(A)、図10(B)に示した通信アンテナ11を移動させたときの、受電コイル21La,21Lbの位置と結合係数k12の変化との関係を示す図である。図11において曲線Aは受電コイル21Laを備える場合の特性であり、曲線Bは受電コイル21Lbを備える場合の特性である。
【0044】
通信アンテナ11と受電コイル21La,21Lbとの結合係数k12は、受電コイル21La,21Lbが通信アンテナ11から離間するほど小さくなる。また、結合係数k12は、通信アンテナ11及び受電コイル21La,21Lbが配置されている基材の、異なる角部に通信アンテナ11及び受電コイル21La,21Lbがそれぞれ配置されていると小さい。通信アンテナ11と受電コイル21La,21Lbとの電磁干渉を抑制するためには、結合係数k12が小さくなる位置関係であることが好ましい。例えば、k12は0.001から0.3の範囲内であることが好ましい。
【0045】
図12は受電コイル21Lのコイル開口内に通信アンテナ11が配置された生体認証機能付き電子カードにおける、通信アンテナ11の位置について示す図である。ここで、通信アンテナ11と受電コイル21Lの仕様は次のとおりである。
【0046】
[通信アンテナ11]
外形:8.4mm×8.4mm
配線幅:0.15mm
配線ピッチ:0.2mm
ターン数:13
[受電コイル21L]
外形:46mm×77mm
配線幅:0.8mm
配線ピッチ:1.2mm
ターン数:2
図13は、図12に示したように、通信アンテナ11を受電コイル21Lの中央から受電コイル21Lの角部まで対角線に沿って移動させたときの、結合係数k12の変化を示す図である。
【0047】
通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数k12は、通信アンテナ11が受電コイル21Lの中央にあるよりも、辺に沿った位置にある方が、増大する。特に、通信アンテナ11が受電コイル21Lの角部に沿った位置にあると、通信アンテナ11は受電コイル21Lの2辺に沿って近接することになるので、図13に現れているように、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数k12は、角部(辺)に近接するほど急激に向上する。通信アンテナ11と受電コイル21Lとの電磁干渉を抑制するためには、結合係数k12が小さくなる位置関係であることが好ましい。例えば、k12は上述のとおり、0.001から0.3の範囲内であることが好ましい。
【0048】
図14(A)、図14(B)、図14(C)は磁性シートを用いた電磁干渉の抑制について示す図である。図14(A)では、通信アンテナ11は受電コイル21Lのコイル開口内にあり、平面視で、受電コイル21L及び通信アンテナ11に重なるように磁性シート60が配置されている。図14(B)、図14(C)では、受電コイル21Lと通信アンテナ11とは並置されていて、受電コイル21Lに重なる磁性シート62が設けられている。
【0049】
図15は、図14(A)、図14(B)、図14(C)に示した構成における、通信アンテナ11のインダクタンス、受電コイル21Lのインダクタンス、及び通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数k12との関係を示す図である。ここで各磁性シートの特性は次のとおりである。
【0050】
X-ER-88:μ’=40,μ”=0.9(tanδ=0.0225)
ED-70:μ’=26,μ”=0.6(tanδ=0.023)
EH-66:μ’=52,μ”=9.2(tanδ=0.176)
このように、磁性シート60,62の仕様及びその配置によって、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数k12を調整できる。また、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの電磁干渉を抑制できる。
【0051】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、直流共鳴送電装置と生体認証機能付き電子カード内の受電部の回路構成の例について示す。
【0052】
図16は第4の実施形態に係る、直流共鳴送電装置と生体認証機能付き電子カード内の受電部との回路構成を示す図である。図17は、特に図16中の電力変換回路72、共鳴調整回路71R,21R、及び整流平滑回路22の回路構成を示す図である。
【0053】
図16において、送電装置は直流電源Viと、この直流電源Viの電圧を変換する電圧変換回路73と、送電コイル71L及び共鳴調整回路71Rに対して交番電力を供給する電力変換回路72及びその電力管理回路70とを備える。
【0054】
図16において、生体認証機能付き電子カードは、図4等で既に示したとおり、受電コイル21L、共鳴調整回路21R、整流平滑回路22、電圧変換回路23及び電力管理回路20を備える。抵抗Roは生体認証回路等の負荷回路である。
【0055】
送電コイル71L及び共鳴調整回路71Rによる送電側の共振回路と、受電コイル21L及び共鳴調整回路21Rによる受電側の共振回路と、によって共鳴フィールドが構成される。
【0056】
図17に示す例では、等価的に第1スイッチング素子Q1、ダイオードDds1及びキャパシタCds1の並列接続回路で構成される第1スイッチ回路S1と、等価的に第2スイッチング素子Q2、ダイオードDds2及びキャパシタCds2の並列接続回路で構成される第2スイッチ回路S2と、スイッチング素子Q1,Q2の制御を行う図外のスイッチング制御回路と、共振キャパシタCrと、を備える。共振キャパシタCrは図16に示した共鳴調整回路71Rの例であり、送電コイル71Lと共振キャパシタCrとで送電共振回路が構成されている。
【0057】
第1スイッチ回路S1の第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチ回路S2の第2スイッチング素子Q2は交互にオン/オフされる。
【0058】
スイッチング制御回路は第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を所定の動作周波数で、相補的に交互にスイッチングすることで、直流電圧を送電共振回路に断続的に与えて、送電コイル71Lに共振電流を発生させる。これにより、第1スイッチ回路S1及び第2スイッチ回路S2の両端電圧を方形波または台形波状の電圧波形とする。具体的には、NFC通信で用いられる13.56MHzでスイッチング動作させる。
【0059】
生体認証機能付き電子カード内の受電回路は、受電コイル21Lと共振キャパシタCrsによる受電共振回路と整流平滑回路22とを備える。整流平滑回路22は、ダイオードDds3及びキャパシタCds3の並列接続回路と、ダイオードDds4及びキャパシタCds4の並列接続回路とを備える。
【0060】
ダイオードDds3,Dds4は、受電コイル21Lと共振キャパシタCrsによる受電共振回路に発生する電圧を整流し、キャパシタCoはその電圧を平滑する。この例では、受電コイル21Lと共振キャパシタCrsとは受電共振回路を構成している。そして、上記送電共振回路と受電共振回路とが共鳴する。
【0061】
以上に示したように直流共鳴によるワイヤレス給電によって、送電装置は高出力でワイヤレス送電でき、生体認証機能付き電子カードは大きな電力を受電することができる。また、蓄電デバイスを短時間で充電することが可能となる。
【0062】
最後に、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。当業者によって適宜変形及び変更が可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変形及び変更が含まれる。
【符号の説明】
【0063】
Cds1,Cds2,Cds3,Cds4…キャパシタ
Co…キャパシタ
Cr,Crs…共振キャパシタ
Dds1,Dds2,Dds3,Dds4…ダイオード
Q1…第1スイッチング素子
Q2…第2スイッチング素子
Ro…抵抗
S1…第1スイッチ回路
S2…第2スイッチ回路
Vi…直流電源
11…通信アンテナ
12…フィルタ回路
13…NFC-IC
20…電力管理回路
21…受電共振回路
21C…共振キャパシタ
21L,21La,21La,21Lb…受電コイル
21R…共鳴調整回路
22…整流平滑回路
23…電圧変換回路
30…生体認証回路
31…生体センサ
40…蓄電デバイス
41…充放電制御回路
60,62,61,62…磁性シート
70…電力管理回路
71L…送電コイル
71R…共鳴調整回路
72…電力変換回路
73…電圧変換回路
101A,101B,101C,101D…生体認証機能付き電子カード
102…生体認証機能付き電子カード
111A,111B…生体認証機能付き電子カード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17