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特許7517424現像装置およびこれを備えた画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】現像装置およびこれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G03G15/08 226
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022536347
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2021026152
(87)【国際公開番号】W WO2022014534
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2020123084
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】前澤 宜宏
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-246392(JP,A)
【文献】特開2014-010215(JP,A)
【文献】特開2010-033003(JP,A)
【文献】特開2010-276948(JP,A)
【文献】特開2007-248490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性一成分のトナーを収容する現像ハウジングと、
円筒形状を有する弾性体からなり、前記現像ハウジングに回転可能に支持され、所定の感光体ドラムに現像ニップ部において対向して配置され、周面に前記トナーを担持する現像ローラーと、
円筒形状を有する発泡弾性体からなり、前記現像ハウジングに回転可能に支持され、前記現像ローラーの周面に当接することで前記現像ローラーとの間で供給ニップ部を形成し、前記現像ローラーに前記トナーを供給する一方、前記現像ローラーから前記トナーを回収する、供給ローラーと、
前記供給ニップ部よりも前記現像ローラーの回転方向下流側で前記現像ローラーの周面に当接し、前記現像ローラー上の前記トナーの厚さを規制する層厚規制部材と、
を備え、
前記層厚規制部材が前記現像ローラーに当接していない状態において当該層厚規制部材を前記現像ローラーの軸方向から見た場合、前記層厚規制部材は、
前記現像ハウジングに固定される直線状の固定端部と、
前記固定端部から直線的に延びる基端側直線部と、
前記固定端部とは反対側で前記層厚規制部材の自由端を形成する、直線的に延びる先端側直線部と、
前記基端側直線部と前記先端側直線部とを接続するように互いに連続する2個の円弧部であって、当該2個の円弧部の曲率半径が前記先端側直線部に近いほど小さく設定されている、2個の円弧部と、
からなる形状を有し、
前記層厚規制部材が前記現像ローラーに当接した状態においては、前記基端側直線部が、前記固定端部に対して前記現像ローラーの回転方向上流側に屈曲するように変形し、前記2個の円弧部の境界部分を含む領域が前記現像ローラーの周面に面状に当接し、前記先端側直線部が前記現像ローラーの周面から離れる方向に向かって直線的に延び、
前記固定端部、前記基端側直線部、前記先端側直線部、前記2個の円弧部は同じ厚さを有している、
現像装置。
【請求項2】
前記層厚規制部材の前記現像ローラーへの押圧荷重は、40~50N/mであることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記層厚規制部材が前記現像ローラーに当接していない状態において当該層厚規制部材を前記現像ローラーの軸方向から見た場合、前記複数の円弧部はクロソイド曲線を形成している、請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記層厚規制部材は、JIS G4313に規定されるSUS301-CSPに3/4・H、HおよびEHのうちのいずれかの調質処理が施されたもの、または、JIS G4313に規定されるSUS304-CSPに3/4・HおよびHのうちのいずれかの調質処理が施されたものから構成される、請求項1に記載の現像装置。
【請求項5】
前記トナーの95℃における溶融粘度(Pa・s)が10000以上200000以下の範囲に設定されている、請求項1に記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1に記載の現像装置と、
表面に静電潜像が形成され、前記現像ローラーから前記トナーが供給される感光体ドラムと、を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性一成分現像剤を用いて、感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像する為の現像装置およびこの現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンター等の画像形成装置に用いられ、非磁性一成分現像剤を用いて、感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像する現像装置として、特許文献1に記載されているような現像装置が知られている。かかる現像装置は、現像ハウジングと、現像ローラーと、当該現像ローラーにトナーを供給する供給ローラーと、現像ローラー上のトナーの層厚を規制するトナー規制ブレード(層厚規制部材)と、を有する。トナー規制ブレードは、現像ローラーの回転方向下流側に向かって延びるように配置され、現像ローラーに当接するエッジ部を有する。トナー規制ブレードのエッジ部は、現像ローラーの回転方向上流側に向けて曲率半径が小さくなる複数の曲面で形成され、かつ、複数の曲面のうち下流側の曲面が現像ローラーに当接する。このため、トナー規制ブレードと現像ローラーとの接触幅が広く確保されつつ、搬送されるトナー量を低減させることができる。この結果、エッジ部の先端の弾性変形が小さくなり、摩耗が低減されることで、所望のトナー層を形成し、安定したトナー帯電量を得ることができる。
【0003】
また、特許文献2に開示された現像装置では、現像剤量規制ブレード(層厚規制部材)の先端部が全幅にわたって、現像剤担持体(現像ローラー)とは逆側に折り曲げられることで、ブレード先端形状の品質のバラつきが抑えられ、現像剤担持体上のトナー量がより均一に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-305856号公報
【文献】特開2007-293106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、層厚規制部材が、現像ローラーの回転方向下流側に向かって延びるように配置されているため、層厚規制部材が現像ローラーに当接することで形成される規制ニップ部に一度に多量のトナーが進入しやすく、規制ニップ部内でトナーが凝集しやすくなる。この結果、現像ローラー上ではトナーの凝集物の位置に応じて部分的に現像ローラー上のトナー層が薄層となるため、高い画像密度の画像(ベタ画像)を印字すると画像上にスジが発生しやすくなる。また、特許文献2に記載された技術では、層厚規制部材の折り曲げによってその剛性が高まるため、線圧が上がり規制ニップ部の幅が広くなる。このため、層厚規制部材が強い押圧力で現像ローラーに当接するため、層厚規制後の現像ローラー上のトナー量が少なくなりやすく、ベタ画像を連続印字する際に現像ローラーから感光体ドラムに消費されるべき量のトナーを層厚規制部材から現像ニップ部に供給することができず、追従性不良による濃度低下や濃度ムラといった画像欠陥が生じやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、規制ニップ部を通過する際にトナーが受けるストレスを低減しつつ、現像ローラーへのトナーの供給性を安定化させることで、ベタ画像における用紙先端と用紙後端との間の画像濃度差を低減することが可能な現像装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る現像装置は、非磁性一成分のトナーを収容する現像ハウジングと、円筒形状を有する弾性体からなり、前記現像ハウジングに回転可能に支持され、所定の感光体ドラムに現像ニップ部において対向して配置され、周面に前記トナーを担持する現像ローラーと、円筒形状を有する発泡弾性体からなり、前記現像ハウジングに回転可能に支持され、前記現像ローラーの周面に当接することで前記現像ローラーとの間で供給ニップ部を形成し、前記現像ローラーに前記トナーを供給する一方、前記現像ローラーから前記トナーを回収する、供給ローラーと、前記供給ニップ部よりも前記現像ローラーの回転方向下流側で前記現像ローラーの周面に当接し、前記現像ローラー上の前記トナーの厚さを規制する層厚規制部材と、を備え、前記層厚規制部材が前記現像ローラーに当接していない状態において当該層厚規制部材を前記現像ローラーの軸方向から見た場合、前記層厚規制部材は、前記現像ハウジングに固定される固定端部と、前記固定端部から前記現像ローラーの回転方向上流側の前記現像ローラーの周面に向かって直線的に延びる基端側直線部と、前記固定端部とは反対側で前記層厚規制部材の自由端を形成するとともに、前記現像ローラーの周面から離れる方向に向かって直線的に延びる先端側直線部と、前記基端側直線部と前記先端側直線部とを接続するように互いに連続する複数の円弧部であって、当該複数の円弧部の曲率半径が前記先端側直線部に近いほど小さく設定されている、複数の円弧部と、からなる形状を有する。
【0008】
本発明の一の局面に係る画像形成装置は、上記に記載の現像装置と、表面に静電潜像が形成され、前記現像ローラーから前記トナーが供給される感光体ドラムと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、規制ニップ部を通過する際にトナーが受けるストレスを低減しつつ、現像ローラーへのトナーの供給性を安定化させることで、ベタ画像における用紙先端と用紙後端との間の画像濃度差を低減することが可能な現像装置およびこれを備えた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の感光体ドラムの周辺の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る現像装置の現像ローラーと供給ローラーとの間の供給ニップ部を拡大した断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る現像装置の層厚規制部材の模式的な断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る現像装置の層厚規制部材が現像ローラーに当接した状態を示す模式的な断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る現像装置と比較される他の現像装置の層厚規制部材の模式的な断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る現像装置と比較される他の現像装置の層厚規制部材が現像ローラーに当接した状態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構造を示す側断面図である。ここでは、画像形成装置1としてモノクロプリンターを例示するが、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ装置、或いは、これらの機能を備える複合機であってもよく、またカラー画像を形成する画像形成装置であっても良い。
【0012】
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を有する本体ハウジング10と、この本体ハウジング10内に収容される給紙部20、画像形成部30、定着部40と、を含む。
【0013】
本体ハウジング10の前面側には前カバー11が、後面側には後カバー12が各々備えられている。後カバー12は、シートジャムやメンテナンスの際に開放されるカバーである。また、本体ハウジング10の上面には、画像形成後のシートが排出される排紙部13が備えられている。前カバー11と、後カバー12と、排紙部13とによって画定される内部空間Sに、画像形成を実行するための各種装置が内装される。
【0014】
給紙部20は、画像形成処理が施されるシートを収容する給紙カセット21を含む。この給紙カセット21は、その一部が本体ハウジング10の前面からさらに前方に突出している。給紙カセット21のうち、本体ハウジング10内に収容されている部分の上面は、給紙カセット天板21Uによって覆われている。給紙カセット21には、前記シートの束が収容されるシート収容空間、前記シートの束を給紙のためにリフトアップするリフト板等が備えられている。給紙カセット21の後端側の上部にはシート繰出部21Aが設けられている。このシート繰出部21Aには、給紙カセット21内のシート束の最上層のシートを1枚ずつ繰り出すための給紙ローラー21Bが配置されている。
【0015】
画像形成部30は、給紙部20から送り出されるシートにトナー画像を形成する画像形成処理を行う。画像形成部30は、感光体ドラム31と、この感光体ドラム31の周囲に配置された、帯電装置32、露光装置(図2には表れていない)、現像装置33、転写ローラー34と、を含む。
【0016】
感光体ドラム31は、回転軸と、回転軸回りに回転する円筒面と、を備える。円筒面には、静電潜像が形成されるとともに、該静電潜像に応じたトナー像が円筒面に担持される。感光体ドラム31としては、OPC感光体ドラムを用いることができる。
【0017】
帯電装置32は、感光体ドラム31の表面を均一に帯電するものであって、感光体ドラム31に対して所定の間隔をおいて配置され、かつ、所定の電圧が印加されることで放電するスコロトロンを含む。
【0018】
露光装置は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム31の周面に、パーソナルコンピューター等の外部装置から与えられる画像データに基づいて変調された光を照射して、静電潜像を形成する。
【0019】
現像装置33は、感光体ドラム31上の前記静電潜像を現像してトナー像を形成するために、感光体ドラム31の周面にトナーを供給する。
【0020】
転写ローラー34は、感光体ドラム31の周面に形成されたトナー像をシート上に転写させるためのローラーである。転写ローラー34は、感光体ドラム31の円筒面に当接し、転写ニップ部を形成している。この転写ローラー34には、トナーと逆極性の転写バイアスが与えられる。
【0021】
定着部40は、転写されたトナー像をシート上に定着する定着処理を行う。定着部40は、加熱源を内部に備えた定着ローラー41と、この定着ローラー41に対して圧接され、定着ローラー41との間に定着ニップ部を形成する加圧ローラー42とを含む。トナー像が転写されたシートが前記定着ニップ部に通紙されると、トナー像は、定着ローラー41による加熱および加圧ローラー42による押圧により、シート上に定着される。なお、本実施形態では、現像装置33において使用される非磁性一成分トナーの95℃における溶融粘度(Pa・s)が10000以上200000以下の範囲に設定されている。
【0022】
本体ハウジング10内には、シートを搬送するために、主搬送路22F及び反転搬送路22Bが備えられている。主搬送路22Fは、給紙部20のシート繰出部21Aから画像形成部30及び定着部40を経由して、本体ハウジング10上面の排紙部13に対向して設けられている排紙口14まで延びている。反転搬送路22Bは、シートに対して両面印刷を行う場合に、片面印刷されたシートを主搬送路22Fにおける画像形成部30の上流側に戻すための搬送路である。
【0023】
主搬送路22Fは、感光体ドラム31および転写ローラー34によって形成される転写ニップ部を、下方から上方に向かって、通過するように延設される。また、主搬送路22Fの、転写ニップ部よりも上流側には、レジストローラー対23が配置されている。シートは、レジストローラー対23にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで、前記転写ニップ部に送り出される。主搬送路22F及び反転搬送路22Bの適所には、シートを搬送するための搬送ローラーが複数配置されており、例えば排紙口14の近傍には排紙ローラー対24が配置されている。
【0024】
反転搬送路22Bは、反転ユニット25の外側面と、本体ハウジング10の後カバー12の内面との間に形成されている。なお、反転ユニット25の内側面には転写ローラー34及びレジストローラー対23の一方のローラーが搭載されている。後カバー12及び反転ユニット25は、それらの下端に設けられた支点部121の軸回りに各々回動可能である。反転搬送路22Bにおいてシートジャムが発生した場合、後カバー12が開放される。主搬送路22Fでシートジャムが発生した場合、或いは感光体ドラム31のユニットや現像装置33が外部に取り出される場合には、後カバー12に加えて反転ユニット25も開放される。
【0025】
図2は、感光体ドラム31の周辺の構造を示す断面図である。本実施形態では、感光体ドラム31の後方において転写ローラー34が感光体ドラム31に当接するように配置され、感光体ドラム31の前方かつ上方において帯電装置32が所定の間隔をおいて感光体ドラム31に対向するように配置されている。感光体ドラム31と転写ローラー34との間には、転写ニップ部が形成され、当該転写ニップ部を図2の矢印のようにシートが通過する。この際、感光体ドラム31からシートにトナー像が転写される。
【0026】
現像装置33は、感光体ドラム31の前方かつ下方において、感光体ドラム31に対向するように配置されている。現像装置33は、現像ハウジング330と、現像ローラー331と、供給ローラー332と、攪拌パドル333と、規制ブレード334(層厚規制部材)と、ロワーシール335(シール部材)と、を有する。
【0027】
現像ハウジング330は、内部に非磁性一成分トナーを収容する。現像ハウジング330は、ハウジング本体330Aと、ハウジング蓋部330Bとを有する。図2に示すように、現像ハウジング330の後端部には現像ローラー331の一部を感光体ドラム31側に露出させるための開口部が形成されている。
【0028】
現像ローラー331は、現像ハウジング330に回転可能に支持され、トナーを担持する周面を有している。現像ローラー331は、感光体ドラム31に当接し、トナーを感光体ドラム31に供給するための現像ニップ部を感光体ドラム31とともに形成している。現像ローラー331では、SUS材またはSUM材のシャフトの周囲に、円筒状のゴム層(弾性体)が形成されている。当該ゴム層は一例としてNBR(Nitril-Butadiene Rubber)ゴムからなる。また、前記ゴム層の表面に所定のコート層が形成されてもよい。本実施形態では、現像ローラー331の表面の硬度が、Asker-C硬度で50以上80以下の範囲に設定されている。
【0029】
供給ローラー332は、現像ローラー331の前方かつ下方において現像ローラー331に対向するように配置され、現像ハウジング330に回転可能に支持されている。供給ローラー332は、現像ローラー331に当接し、トナーを現像ローラー331に供給するための供給ニップ部を形成している。供給ローラー332は、金属製の所定のシャフト(軸部材)の周囲に円筒状のウレタンスポンジまたは発砲スポンジ(いずれも弾性発泡体)が固定されることで形成される。本実施形態では、供給ローラー332の表面の硬度が、Asker-FP硬度で40以上60以下の範囲に設定されている。また、前記供給ニップ幅は、径方向に沿って見た場合、回転方向において0.2mm以上1.5mm以下の範囲に設定されている。
【0030】
攪拌パドル333は、供給ローラー332の前方において現像ハウジング330に回転可能に支持されている。攪拌パドル333は、図2に示すように断面視でL字状のシャフトと、当該シャフトから径方向に延びるように配置されたPETフィルムとを含む。
【0031】
なお、図2には、画像形成装置1においてシートに対する画像形成動作が行われる際の現像ローラー331、供給ローラー332および攪拌パドル333の回転方向が図示されている。現像ローラー331は、その表面が現像ニップ部において感光体ドラム31の表面と同じ方向に移動するように回転する。一例として、現像ローラー331の感光体ドラム31に対する周速比は、1.55倍に設定されている。供給ローラー332は、その表面が現像ローラー331の表面とは逆方向に移動するように回転する。現像ローラー331の供給ローラー332に対する周速比は1.55倍に設定されている。攪拌パドル333は、現像ハウジング330内のトナーを掬い上げながら供給ローラー332に供給するように回転する。
【0032】
規制ブレード334は、前記供給ニップ部よりも現像ローラー331の回転方向下流側かつ前記現像ニップ部よりも現像ローラー331の回転方向上流側において、現像ローラー331の表面(周面)に当接している。規制ブレード334は、現像ローラー331の回転方向上流側に向かって傾斜するように現像ハウジング330に固定されている。規制ブレード334は、現像ローラー331上のトナーの厚さ(層厚)を規制する。
【0033】
ロワーシール335は、規制ブレード334とは反対側で現像ローラー331とハウジング本体330Aとの間の隙間を塞ぐようにハウジング本体330Aに支持されている。ロワーシール335の先端部は現像ローラー331の表面に当接している。
【0034】
本実施形態では、図2に示すように、感光体ドラム31と転写ローラー34とによって形成される転写ニップ部から見て、感光体ドラム31の回転方向下流側には帯電装置32が配置されており、公知のクリーニング装置が備えられていない、いわゆるクリーナレス構成が採用されている。すなわち、転写ニップ部において感光体ドラム31からシートにトナー像が転写されると、未転写トナーが感光体ドラム31上に残存する。当該未転写トナーは、帯電装置32を通過して、現像装置33の現像ローラー331によって感光体ドラム31から回収される。この際、シートに対して連続的に画像(トナー像)が形成される場合には、現像ローラー331は感光体ドラム31から未転写トナーを回収する一方、感光体ドラム31上の静電潜像にトナーを供給する。
【0035】
一方、供給ローラー332は、前記供給ニップ部において現像ローラー331に新しいトナーを供給する一方、現像ローラー331から感光体ドラム31に供給されなかったトナーを現像ローラー331から回収する。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態に係る現像装置33の現像ローラー331および供給ローラー332の対向部を拡大した断面図である。本実施形態では、現像ローラー331の表面が供給ローラー332の表面に食い込み量Hだけ食い込むように現像ローラー331および供給ローラー332のシャフトがそれぞれ現像ハウジング330に支持されている。この結果、現像ローラー331と供給ローラー332との間には、互いの回転方向に沿って所定の幅を有する供給ニップ部SNが形成される。なお、現像ローラー331の硬度よりも供給ローラー332の硬度が低いため、図3に示すように、主に供給ローラー332の表面が変形することで、前記供給ニップ部SNが形成される。したがって、現像ローラー331および供給ローラー332がそれぞれ回転すると、供給ローラー332によって搬送されるトナーが供給ニップ部SNの上流側で滞留し、トナー溜まりTNが形成される。当該トナー溜まりTNによって、感光体ドラム31上に高濃度の画像が形成される場合でも、供給ローラー332から現像ローラー331に安定してトナーを供給することができる。
【0037】
一方、現像ローラー331と供給ローラー332とが、断面視において点接触で互いに接触する場合、図3に示すようなトナー溜まりTNが充分に形成されないため、トナーの供給性が著しく低下することがある。
【0038】
このため、適度な食い込み量Hになるように現像ローラー331と供給ローラー332の軸間距離(シャフト間距離)やそれぞれの直径が設定されることが望ましい。現像ローラー331の硬度は、感光体ドラム31という硬い部材と接触するために、Asker-C硬度で50以上80以下の範囲に設定される。したがって、図3のように現像ローラー331が供給ローラー332にめり込んだ構成とするためには、供給ローラー332の硬度が現像ローラー331の硬度よりも低く設定されることが望ましい。
【0039】
図4は、本実施形態に係る現像装置33の規制ブレード334の模式的な断面図である。図5は、本実施形態に係る現像装置33の規制ブレード334が現像ローラー331に当接した状態を示す模式的な断面図である。一方、図6は、本実施形態に係る現像装置33と比較される他の現像装置の規制ブレード334Zの模式的な断面図である。図7は、本実施形態に係る現像装置33と比較される他の現像装置の規制ブレード334Zが現像ローラー331に当接した状態を示す模式的な断面図である。
【0040】
図4を参照して、本実施形態では、規制ブレード334が現像ローラー331に当接していない状態において、当該規制ブレード334を現像ローラー331の軸方向から見た場合、規制ブレード334は、固定端部334T(図5)と、基端側直線部Aと、先端側直線部Bと、第1円弧部Cと、第2円弧部Dと、を有している。
【0041】
固定端部334Tは、規制ブレード334のうち現像ハウジング330に固定される部分であって、現像ハウジング330に固定された支持部材334Sに支持される。なお、図2では、支持部材334Sが複数の部材によって構成されているが、支持部材334Sは単一の部材であってもよい。
【0042】
基端側直線部Aは、規制ブレード334のうち、固定端部334Tから現像ローラー331の回転方向上流側の現像ローラー331の周面に向かって直線的に延びる部分である。
【0043】
先端側直線部Bは、規制ブレード334のうち、固定端部334Tとは反対側で規制ブレード334の自由端を形成するとともに、現像ローラー331の周面から離れる方向に向かって直線的に延びる部分である。
【0044】
第1円弧部Cおよび第2円弧部Dは、基端側直線部Aと先端側直線部Bとを接続するように互いに連続する複数の円弧部である。当該複数の円弧部の曲率半径は、先端側直線部Bに近いほど小さく設定されている。すなわち、図4の第2円弧部Dの曲率半径は、第1円弧部Cの曲率半径よりも小さい。
【0045】
規制ブレード334が支持部材334Sによって支持されると、図5に示すように、規制ブレード334の第1円弧部Cおよび第2円弧部Dが現像ローラー331の周面に当接し、規制ニップ部Pを形成する。供給ローラー332から現像ローラー331に供給されたトナーは、規制ニップ部Pにおいて規制され、感光体ドラム31と現像ローラー331とが互いに対向する現像ニップ部に供給される。
【0046】
上記のような構成によれば、規制ブレード334の複数の円弧部(第1円弧部C、第2円弧部D)の曲率半径が先端側直線部Bに近いほど小さく設定されている。換言すれば、複数の円弧部の曲率半径が現像ローラー331の回転方向下流側に向かって大きく設定されている。このため、規制ニップ部Pの周辺では、複数の円弧部がトナー層を現像ローラー331の周面に向かって面状に押圧しながら、トナー層を各円弧形状によって徐々に規制することができる。この結果、トナーが規制ニップ部Pにスムーズに進入しやすくなる。この際、規制ブレード334の基端側直線部Aが、固定端部334Tから現像ローラー331の回転方向上流側の現像ローラー331の周面に向かって直線的に延びているため、規制ブレード334が現像ローラー331の回転方向下流側に向かって延びるように配置されている場合と比較して、規制ニップ部Pに一度に多量のトナーが進入することが抑制され、規制ニップ部P内でトナーが凝集することが抑止される。また、上記の構成では、複数の円弧部のうち曲率半径の小さな円弧部が上流側に配置されているため、上記のようにトナーが規制ニップ部Pにスムーズに進入しつつ、余剰のトナーは上流側の円弧部の形状および先端側直線部Bに沿って現像ローラー331の周面から離れるように流れやすく、規制ニップ部Pの上流側に多量のトナーが滞留することが抑止される。このような動的なトナーの流れによって、供給ローラー332から現像ローラー331に供給されたトナーが規制ニップ部Pを通過しやすく、ベタ画像の用紙先端から用紙後端にかけて、現像ニップ部にトナーを安定して供給し続けることができる。この結果、規制ニップ部Pを通過する際にトナーが受けるストレスを低減しつつ、現像ローラー331へのトナーの供給性を安定化させることで、ベタ画像における用紙先端と用紙後端との間の画像濃度差を低減することが可能となる。
【0047】
更に、本実施形態では、規制ブレード334が現像ローラー331に当接していない状態において当該規制ブレード334を現像ローラー331の軸方向から見た場合、前記複数の円弧部(第1円弧部C、第2円弧部D)はクロソイド曲線を形成している。すなわち、第1円弧部Cと第2円弧部Dとの境界部分を含むように、第1円弧部Cの接線の傾きおよび第2円弧部Dの接線の傾きが連続的に設定されている。なお、第1円弧部Cと基端側直線部Aとの境界部分、第2円弧部Dと先端側直線部Bとの境界部分についても同様である。
【0048】
このような構成によれば、複数の円弧部が互いの接線の傾きが連続的に変化するように接続されているため、隣接する円弧同士の境界部分でトナーの流れが不安定になることが抑止されるとともに、規制ニップ部P周辺におけるトナーのストレスが更に低減される。
【0049】
そして、現像装置33が組み立てられた状態、すなわち、規制ブレード334が現像ローラー331に当接した状態では、規制ブレード334のうち第1円弧部Cの一部および第2円弧部Dの一部が現像ローラー331の周面にそれぞれ当接するように、支持部材334Sが規制ブレード334の固定端部334Tを支持している。すなわち、本実施形態では、第1円弧部Cおよび第2円弧部Dの境界部分を含む領域が現像ローラー331の周面に幅をもって当接している。
【0050】
このような構成によれば、規制ニップ部Pでは、複数の円弧部がトナー層を現像ローラー331の周面に向かって面状に安定して押圧することができるため、トナー層を各円弧形状によって徐々に規制することが更に安定して実現される。この結果、トナーが規制ニップ部Pに更にスムーズに進入しやすくなる。
【0051】
なお、本実施形態に係る規制ブレード334は、JIS G4313に規定されるSUS301-CSPに3/4・H、HおよびEHのうちのいずれかの調質処理が施されたもの、または、JIS G4313に規定されるSUS304-CSPに3/4・HおよびHのうちのいずれかの調質処理が施されたものから構成される。
【0052】
このような構成によれば、規制ブレード334としてバネ用ステンレス材に所定の調質処理を施されたものを使用することで、バネ性を維持しつつ規制ブレード334の硬さが増すことが可能となる。この結果、トナーの層厚規制機能を長期に亘って安定して維持することができる。
【0053】
更に、現像装置33において使用される非磁性一成分トナーの95℃における溶融粘度(Pa・s)が10000以上200000以下の範囲に設定されることが更に望ましい。この場合、トナーをシートに定着させるために、定着部40に入力する電力を低減することが可能となる。一方、このように溶融粘度が比較的低く装置内の温度によって粘性が増加しやすいトナーであっても、規制ブレード334が前述のような形状を有していることで、規制ニップ部Pを通過する際にトナーが受けるストレスを低減しつつ、現像ローラー331へのトナーの供給性を安定化させることができる。このため、ベタ画像を連続して印字した場合における濃度低下や濃度ムラのような画像欠陥を低減することが可能となる。
【0054】
また、上記のような現像装置33を有する画像形成装置1では、非磁性トナーを用いて、規制ニップ部を通過する際にトナーが受けるストレスを低減しつつ、現像ローラーへのトナーの供給性を安定化させることで、ベタ画像における用紙先端と用紙後端との間の画像濃度差を低減することが可能となる。
【実施例
【0055】
次に、現像装置33の好ましい態様について、実施例をもとに説明する。なお、以後の各実験は、下記の実験条件にて行った。
<実験条件について>
・感光体ドラム31:OPCドラム
・感光体ドラム31の回転数:118rpm
・現像ローラー331の回転数:267rpm
・感光体ドラム31に対する現像ローラー331の周速比:1.55
・現像バイアスDC成分:300V
・供給バイアスDC成分:400V
・感光体ドラム31の表面電位:650V
・現像ローラー331の直径:13mm
・現像ローラーのAsker-C硬度:70
・供給ローラー332の直径:13mm
・感光体ドラム31の直径:24mm
・非磁性トナーの平均粒子径:8.0μm(D50)
・規制ブレード334
・・材料:SUS304 CSP 1H、厚さ0.1mm
・・ブレード自由長:8.4mm
・・先端曲率半径:0.3mm
・・先端長さ:0.3mm、食い込み量:0.9mm
・・押圧荷重:45N/m
表1に、各実施例および比較例の詳細条件および実験結果を示す。比較例は、図6図7に示す規制ブレード334Zを用いてベタ画像を印字したものであり、実施例は、図4図5に示す本実施形態に係る規制ブレード334を用いてベタ画像を印字したものである。いずれも、用紙の先端および後端における濃度と各濃度の濃度差が測定されている。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、比較例と比較して実施例では、用紙後端の画像濃度の低下が抑制され、全面にわたって安定した濃度を維持することができている。この結果は、トナーが潤沢に供給されるベタ画像の用紙先端では実施例と比較例との間でトナー搬送量の差が見られないものの、用紙後端においてトナー供給量が減ると規制ニップ部Pにおけるトナーの通過量に差が生じるためと推定される。比較例では、規制ニップ部Pの上流側でのトナーの滞留が多く、実施例では上記の滞留が少ないものと推定される。
【0058】
なお、上記と同様の評価結果(効果)が、現像ローラー331の直径が11.0mm以上15.0mmの以下の範囲で再現された。同様に、上記と同様の評価結果(効果)が、現像ローラー331と供給ローラー332との周速比(現像ローラー331の方が高い周速度)が1.3以上1.8以下の範囲で再現された。
【0059】
以上、本発明の実施形態に係る現像装置33およびこれを備えた画像形成装置1について説明した。本発明によれば、規制ニップ部を通過する際にトナーが受けるストレスを低減しつつ、現像ローラーへのトナーの供給性を安定化させることで、ベタ画像における用紙先端と用紙後端との間の画像濃度差を低減することが可能な現像装置およびこれを備えた画像形成装置が提供される。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0060】
(1)上記の実施形態では、画像形成装置1に1つの現像装置33が備えられる態様にて説明したが、画像形成装置1は複数の色に応じた現像装置33をそれぞれ有するカラー画像形成装置であってもよい。
【0061】
(2)上記の実施形態では、現像装置33の現像ハウジング330が内部に非磁性トナーを貯留する態様にて説明したが、現像ハウジング330とは別に非磁性トナーを収容するトナーコンテナ、トナーカートリッジを有するものでもよい。
【0062】
(3)また、上記の実施形態では、規制ブレード334が2つの円弧部(第1円弧部C、第2円弧部D)を有する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。規制ブレード334は、3以上の円弧部を有するものでもよく、これらの円弧部がクロソイド曲線を形成していることが望ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7