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特許7517433ストレス推定装置、推定方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ストレス推定装置、推定方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
A61B5/16 110
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022543248
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2020031662
(87)【国際公開番号】W WO2022038776
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】中島 嘉樹
(72)【発明者】
【氏名】梅松 旭美
(72)【発明者】
【氏名】辻川 剛範
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-061222(JP,A)
【文献】特開2018-149262(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221750(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/159252(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0265211(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の生体信号を取得する生体信号取得手段と、
ストレスに関する前記生体信号の特徴量である生体信号特徴量を算出する生体信号特徴量計算手段と、
前記被測定者の属性又はパターンの少なくとも一方を示す属性・パターンデータを取得する属性・パターンデータ取得手段と、
前記属性・パターンデータに基づき、前記属性・パターンを区別する敵対的特徴量を前記生体信号特徴量から排除し、前記敵対的特徴量が排除された前記生体信号特徴量を、前記属性・パターンデータが示す属性・パターンに依存しない特徴量である属性・パターン共通特徴量として選択する属性・パターン共通特徴量選択手段と、
前記属性・パターン共通特徴量に基づき、前記被測定者のストレスを推定するストレス推定手段と、
を備えるストレス推定装置。
【請求項2】
前記属性・パターン共通特徴量選択手段は、前記属性・パターンの分類上での前記生体信号特徴量に対する重要度を算出し、前記重要度に基づき、前記敵対的特徴量を選択する、請求項に記載のストレス推定装置。
【請求項3】
前記属性・パターン共通特徴量選択手段は、ランダムフォレストに基づき、前記敵対的特徴量を選択する、請求項1または2に記載のストレス推定装置。
【請求項4】
前記ストレス推定手段は、回帰分析に基づくモデルを用いて、前記属性・パターン共通特徴量から前記ストレスの推定結果を示すスコアを算出する、請求項1~のいずれか一項に記載のストレス推定装置。
【請求項5】
前記生体信号取得手段が取得した前記生体信号を記憶する生体信号記憶手段をさらに有し、
前記特徴量計算手段は、前記生体信号記憶手段に記憶された前記生体信号から前記生体信号特徴量を算出する、請求項1~のいずれか一項に記載のストレス推定装置。
【請求項6】
前記生体信号取得手段は、前記被測定者により装着されたウェアラブル端末が生成した前記生体信号を受信する、請求項1~のいずれか一項に記載のストレス推定装置。
【請求項7】
コンピュータにより、
被測定者の生体信号を取得し、
ストレスに関する前記生体信号の特徴量である生体信号特徴量を算出し、
前記被測定者の属性又はパターンの少なくとも一方を示す属性・パターンデータを取得し、
前記属性・パターンデータに基づき、前記属性・パターンを区別する敵対的特徴量を前記生体信号特徴量から排除し、前記敵対的特徴量が排除された前記生体信号特徴量を、前記属性・パターンデータが示す属性・パターンに依存しない特徴量である属性・パターン共通特徴量として選択し、
前記属性・パターン共通特徴量に基づき、前記被測定者のストレスを推定する、
推定方法。
【請求項8】
被測定者の生体信号を取得し、
ストレスに関する前記生体信号の特徴量である生体信号特徴量を算出し、
前記被測定者の属性又はパターンの少なくとも一方を示す属性・パターンデータを取得し、
前記属性・パターンデータに基づき、前記属性・パターンを区別する敵対的特徴量を前記生体信号特徴量から排除し、前記敵対的特徴量が排除された前記生体信号特徴量を、前記属性・パターンデータが示す属性・パターンに依存しない特徴量である属性・パターン共通特徴量として選択し、
前記属性・パターン共通特徴量に基づき、前記被測定者のストレスを推定する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項9】
請求項に記載のプログラムが格納された記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体信号を用いたストレス推定に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長期のストレッサーへの暴露などにより交感神経が活発になった状態が長く続き、自律神経が失調することにより精神の健康を害することが問題となっている。このため、被測定者に日常的に装着させたウェアラブル端末から被測定者の生体情報(発汗量・皮膚表面温・体動など)を反映する信号である生体信号を長期にわたって測定し、被測定者の長期ストレス(慢性ストレス)をモニタリングすることが行われている。そして、このようなモニタリング結果に基づいてストレスの低減を促すことを目的とした技術が提案されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、20名の人々の30日のデータから、座位・歩行・走行の3つの身体の活動状態を、全員に共通のActivity Magnitude(3軸加速度のRMS(Rooted Mean Square)の変化の移動平均)から識別する技術が開示されている。また、非特許文献2には、座位・歩行・走行の3つの活動状態を区別する閾値を個人のActivity Magnitudeのヒストグラムから個人ごとに自動的に導出し、適用する技術が開示されている。非特許文献3には、被測定者の認知ストレススケールを一定の精度で推定する技術が開示されている。非特許文献4には、学習の際に、ラベルのための勾配を学習させると同時に、ドメインをクラス分類する勾配にマイナスの係数をかけ、ドメイン分類に「敵対的」な学習をさせることで、ドメイン不変のモデルを得る手法が開示されている。非特許文献5では、ランダムフォレスト(Random Forest)やDecision Treeによる特徴量選択の手法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】A. Sano, “Measuring College Students’ Sleep, Stress, Mental Health and Wellbeing with Wearable Sensors and Mobile Phones”, Massachusetts Institute of Technology, 2015.
【文献】Y. Nakashima et al.,” An Effectiveness Comparison between the Use of Activity State Data and That of Activity Magnitude Data in Chronic Stress Recognition,” ACII workshop, 2019.
【文献】S. Cohen, R. C. Kessler, and L. U. Gordon, “Measuring Stress: A Guide for Health and Social Scientists,” Oxford University Press, 1997.
【文献】Iwasawa et al, “Learning Domain-Invariant Representations by Adversarial Training,” The 31st Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence, 2017.
【文献】”The Mathematics of Decision Trees, Random Forest and Feature Importance in Scikit-learn and Spark”, URL:https://towardsdatascience.com/the-mathematics-of-decision-trees-random-forest-and-feature-importance-in-scikit-learn-and-spark-f2861df67e3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1や非特許文献2は、被測定者の発汗、心拍、体動、体温等の生体信号の統計量等の特徴量を用いて、被測定者のストレスレベルを推定しようとしている。しかし、特に慢性ストレスの推定の場合、被測定者の生活パターンや就業パターン、または性別や年齢の偏りによって、発汗、心拍、体動、体温等のストレス推定に用いる特徴量とストレスレベルの関係は異なる。よって、これらの条件をまんべんなく取り入れたデータベースを構築しなければ、全ての人に適用できるモデルは作成できない。しかしながら、こうした偏りのないデータベースを作成することにはコストがかかる。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、ストレスを好適に推定可能なストレス推定装置、推定方法、プログラム及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ストレス推定装置の一の態様は、
被測定者の生体信号を取得する生体信号取得手段と、
ストレスに関する前記生体信号の特徴量である生体信号特徴量を算出する生体信号特徴量計算手段と、
前記被測定者の属性又はパターンの少なくとも一方を示す属性・パターンデータを取得する属性・パターンデータ取得手段と、
前記属性・パターンデータに基づき、前記属性・パターンを区別する敵対的特徴量を前記生体信号特徴量から排除し、前記敵対的特徴量が排除された前記生体信号特徴量を、前記属性・パターンデータが示す属性・パターンに依存しない特徴量である属性・パターン共通特徴量として選択する属性・パターン共通特徴量選択手段と、
前記属性・パターン共通特徴量に基づき、前記被測定者のストレスを推定するストレス推定手段と、
を備えるストレス推定装置である。
【0008】
推定方法の一の態様は、
コンピュータにより、
被測定者の生体信号を取得し、
ストレスに関する前記生体信号の特徴量である生体信号特徴量を算出し、
前記被測定者の属性又はパターンの少なくとも一方を示す属性・パターンデータを取得し、
前記属性・パターンデータに基づき、前記属性・パターンを区別する敵対的特徴量を前記生体信号特徴量から排除し、前記敵対的特徴量が排除された前記生体信号特徴量を、前記属性・パターンデータが示す属性・パターンに依存しない特徴量である属性・パターン共通特徴量として選択し、
前記属性・パターン共通特徴量に基づき、前記被測定者のストレスを推定する、
推定方法である。
【0009】
プログラムの一の態様は、
被測定者の生体信号を取得し、
ストレスに関する前記生体信号の特徴量である生体信号特徴量を算出し、
前記被測定者の属性又はパターンの少なくとも一方を示す属性・パターンデータを取得し、
前記属性・パターンデータに基づき、前記属性・パターンを区別する敵対的特徴量を前記生体信号特徴量から排除し、前記敵対的特徴量が排除された前記生体信号特徴量を、前記属性・パターンデータが示す属性・パターンに依存しない特徴量である属性・パターン共通特徴量として選択し、
前記属性・パターン共通特徴量に基づき、前記被測定者のストレスを推定する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、被測定者の属性・パターンによらずに好適にストレスを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態におけるストレス推定システムのブロック構成を示す。
図2】第1実施形態におけるストレス推定装置のハードウェア構成を示す。
図3】第1実施形態のストレス推定装置が実行する処理手順を示すフローチャートの一例である。
図4】第2実施形態におけるストレス推定システムの具体的構成を示すブロック図である。
図5】第2実施形態におけるストレス推定装置のブロック構成を示す。
図6】第2実施形態においてストレス推定モデルの作成プロセスの模式図を示す。
図7】第2実施形態において営業職のストレス推定結果に関するグラフを示す。
図8】第3実施形態におけるストレス推定装置のブロック図である。
図9】第3実施形態におけるストレス推定装置の処理手順を示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、ストレス推定装置、推定方法、プログラム及び記憶媒体の実施形態について説明する。
【0013】
<第1実施形態>
[構成の説明]
以下、第1実施形態におけるストレス推定システムの構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態におけるストレス推定システム150の構成を示す。図1を参照すると、本実施形態に係るストレス推定システム150は、ストレス推定装置100と、ウェアラブル端末200とを有する。
【0015】
ストレス推定装置100は、1又は複数のコンピュータによって構成される。ストレス推定装置100は、本実施形態では、被測定者の身体の一部、例えば腕に装着されたウェアラブル端末200と、有線または無線によるデータ通信が可能である。
【0016】
ウェアラブル端末200は、被測定者の生体信号「Sb」を計測し、計測した生体信号Sbをストレス推定装置100に供給する。生体信号Sbは、例えば、被測定者の発汗量、皮膚表面温、体動、脈拍数、心拍数、呼吸数等を示す信号である。なお、生体信号Sbは、上述した例に限られず、被測定者の自律神経活動を反映する情報等、被測定者のストレス等の精神状態を推定し得る情報であればよい。
【0017】
なお、図1に示すストレス推定システム150の構成は、一例であり、種々の変更が行われてもよい。例えば、ストレス推定システム150は、被測定者が所有するスマートフォンなどの携帯機器端末をさらに有してもよい。この場合、ストレス推定装置100とウェアラブル端末200とは、携帯機器端末を介してデータ通信を行ってもよい。
【0018】
ストレス推定装置100は、機能的には、生体信号取得部101と、生体信号記憶部102と、生体信号特徴量計算部103と、属性・パターンデータ取得部104と、属性・パターン共通特徴量選定部105と、ストレス推定部106と、を含む。
【0019】
生体信号取得部101は、生体信号Sbを、ウェアラブル端末200からデータ通信により取得する。なお、ウェアラブル端末200は、生成した生体信号Sbを即時に生体信号取得部101に供給してもよく、生成した生体信号Sbを蓄積し、蓄積した生体信号Sbを所定のタイミングによりまとめて生体信号取得部101に供給してもよい。
【0020】
生体信号記憶部102は、生体信号取得部101が取得した生体信号Sbを記憶する。
【0021】
生体信号特徴量計算部103は、生体信号記憶部102に記憶された生体信号Sbからストレス推定に用いる特徴量(「生体信号特徴量Fb」とも呼ぶ。)を算出する。生体信号特徴量Fbは、ストレスの推定に用いられる生体信号Sbの任意の特徴量(統計量を含む)であり、例えば、非特許文献1、非特許文献2に開示されているように、生体信号Sbの平均値、分散値、時系列ヒストグラム、パワースペクトル密度ヒストグラム等である。
【0022】
属性・パターンデータ取得部104は、被測定者の属性または行動パターンの少なくとも一方を示すデータ(「属性・パターンデータDa」とも呼ぶ。)を取得する。属性・パターンデータDaは、例えば、被測定者の生活パターンや就業パターンなどの任意の行動パターンを示す情報、又は/及び、性別や年齢の偏りを反映する、被測定者の職種、性別、年齢などの属性を示す情報である。
【0023】
ここで、属性・パターンデータ取得部104は、属性・パターンデータDaを種々の方法により取得してもよい。第1の例では、属性・パターンデータ取得部104は、被測定者がウェアラブル端末200またはストレス推定装置100に対する任意のユーザインターフェース(音声入力装置を含む)により入力された入力情報に基づき、属性・パターンデータDaを生成する。第2の例では、属性・パターンデータ取得部104は、被験者の生体信号Sbから被測定者の属性・パターンを推定することで、属性・パターンデータDaを生成する。第3の例では、被測定者の属性・パターンデータDaを予め記憶する記憶装置から、被測定者の属性・パターンデータDaを取得する。上述の記憶装置は、ストレス推定装置100内のメモリであってもよく、ストレス推定装置100とは別の外部装置(例えば属性・パターンに関するデータベースを管理するサーバ等)であってもよい。
【0024】
属性・パターン共通特徴量選択部105は、生体信号特徴量計算部103が算出した生体信号特徴量Fbから、属性・パターンデータDaが示す属性・パターンによって違いのない、即ち属性・パターンに依存しない特徴量(「属性・パターン共通特徴量Fc」とも呼ぶ。)を選択する。この場合、属性・パターン共通特徴量選択部105は、属性またはパターンを区別し得る特徴量(「敵対的特徴量Fa」とも呼ぶ。)を生体信号特徴量Fbから排除し、残りの生体信号特徴量Fbを属性・パターン共通特徴量Fcとして特定する。この場合、属性・パターン共通特徴量選択部105は、具体的な手法としては、属性・パターンの共通の特徴量の選択、すなわち属性・パターンを区別し得る敵対的特徴量Faを選択し、敵対的特徴量Faを排除するプロセス(以降、「敵対的特徴量選択」と呼ぶ。)を実行する。この場合、例えば、訓練データにおいて、敵対的特徴量選択と、目的であるストレス推定とを交互に行い、敵対的特徴量選択のモデルへの入力及び出力として最適な特徴量セットを得ることで、敵対的特徴量選択のモデルの学習を予め行っておく。学習により得られた敵対的特徴量選択のモデルのパラメータは、属性・パターン共通特徴量選択部105により参照可能なメモリ等に記憶される。そして、属性・パターン共通特徴量選択部105は、当該パラメータを参照することで敵対的特徴量選択のモデルを構成し、当該モデルにより生体信号特徴量Fbから敵対的特徴量Faを選択する。
【0025】
ストレス推定部106は、属性・パターン共通特徴量選択部105によって選択された属性・パターン共通特徴量Fcに基づき、被測定者のストレスを推定する。この場合、ストレス推定部106は、例えば、機械学習により得られるモデル(「ストレス推定モデル」とも呼ぶ。)に基づき、属性・パターン共通特徴量Fcから推定されるストレスのスコアを算出する。学習により得られたストレス推定モデルのパラメータは、ストレス推定部106が参照可能なメモリ等に記憶される。ストレスの推定後、推定されたストレスを示すスコアは、被測定者に提示され、ストレスの低減を促す目的等に使用される。
【0026】
図2は、ストレス推定装置100のハードウェア構成を示す。ストレス推定装置100は、例えば、ハードウェアとして、プロセッサ11と、メモリ12と、インターフェース13とを含む。プロセッサ11、メモリ12及びインターフェース13は、データバス19を介して接続されている。
【0027】
プロセッサ11は、メモリ12に記憶されているプログラムを実行することにより、所定の処理を実行する。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、量子プロセッサなどのプロセッサである。そして、プロセッサ11は、例えば、メモリ12に格納されたプログラムを実行することで、図1に示される生体信号取得部101、生体信号特徴量計算部103、属性・パターンデータ取得部104、属性・パターン共通特徴量選択部105及びストレス推定部106として機能する。
【0028】
なお、生体信号取得部101、生体信号特徴量計算部103、属性・パターンデータ取得部104、属性・パターン共通特徴量選択部105及びストレス推定部106の各構成要素は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組合せ等により実現されるコントローラであってもよい。また、これらの各構成要素は、例えばFPGA(field-programmable gate array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、上記の各構成要素から構成されるプログラムを実現してもよい。
【0029】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。また、メモリ12には、ストレス推定装置100が実行する処理を実行するためのプログラムが記憶される。例えば、メモリ12は、生体信号記憶部102として機能する。なお、ストレス推定装置100が実行するプログラムは、メモリ12以外の記憶媒体に記憶されてもよい。同様に、生体信号記憶部102は、ストレス推定装置100以外の外部装置に記憶されてもよい。
【0030】
インターフェース13は、ストレス推定装置100と他の装置とを電気的に接続するためのインターフェースである。例えば、インターフェース13は、ストレス推定装置100がウェアラブル端末200などの外部装置と有線又は無線によりデータ通信を行うための通信インターフェースであってもよい。他の例では、インターフェース13は、USB(Universal Serial Bus)、SATA(Serial AT Attachment)などに準拠したハードウェアインターフェースであってもよい。また、インターフェース13を介してウェアラブル端末200以外の種々の装置がストレス推定装置100と電気的に接続してもよい。例えば、属性・パターンデータDaに関するユーザ入力を受け付ける入力装置、ストレス推定部106による推定結果を出力する表示装置又は音出力装置等が、インターフェース13を介してストレス推定装置100とデータの授受を行ってもよい。
【0031】
なお、ストレス推定装置100のハードウェア構成は、図2に示す構成に限定されない。例えば、ストレス推定装置100は、入力装置、表示装置、音出力装置の少なくともいずれかを内蔵するタブレット端末等であってもよい。
【0032】
[動作の説明]
次に、第1実施形態におけるストレス推定装置100の動作について、図3を参照して説明する。図3は、ストレス推定装置100の動作を示すフローチャートの一例である。
【0033】
まず、ストレス推定装置100の生体信号取得部101は、ウェアラブル端末200から送信された生体信号Sbを取得する(ステップS11)。そして、生体信号取得部101は、取得した生体信号Sbを、生体信号記憶部102に記憶する(ステップS12)。
【0034】
生体信号特徴量計算部103は、生体信号記憶部102に記憶された生体信号Sbに基づき、生体信号特徴量Fbを算出する(ステップS13)。また、属性・パターンデータ取得部104は、ステップS11~ステップS13が実行される処理と並行して又はこれらの前後のタイミングにおいて、属性・パターンデータDaを取得する(ステップS14)。
【0035】
そして、属性・パターン共通特徴量選定部105は、属性・パターンデータDaに基づき、ステップS13で算出された生体信号特徴量Fbが、属性・パターンデータDaが示す属性・パターンを区別できる特徴量である敵対的特徴量Faに該当するか否か判定する(ステップS15)。そして、属性・パターン共通特徴量選定部105は、生体信号特徴量Fbが属性・パターンを区別できる敵対的特徴量Faに該当する場合(ステップS15;Yes)、対象の生体信号特徴量Fbは属性・パターン共通特徴量Fcに該当しないと判定し、ステップS16でのストレス推定を行うことなくステップS17へ処理を進める。
【0036】
一方、属性・パターン共通特徴量選定部105は、生体信号特徴量Fbが敵対的特徴量Faに該当しない場合(ステップS15;No)、対象の生体信号特徴量Fbを属性・パターン共通特徴量Fcとみなす。そして、ストレス推定部106は、この場合、属性・パターン共通特徴量Fcに基づき、被測定者のストレスを推定する(ステップS16)。
【0037】
その後、ストレス推定装置100は、ストレス推定処理を終了すべきか否か判定する(ステップS17)。例えば、ストレス推定装置100は、生体信号Sbを取得できなくなった場合、ストレス推定を終了する旨のユーザ入力を検知した場合、又は、予め定めたその他のストレス推定処理の終了条件が満たされた場合、ストレス推定処理を終了すべきと判定する。そして、ストレス推定装置100は、ストレス推定処理を終了すべきと判定した場合(ステップS17;Yes)、フローチャートの処理を終了する。一方、ストレス推定装置100は、ストレス推定処理を終了すべきでないと判定した場合(ステップS17;No)、ステップS11へ処理を戻す。
【0038】
[効果の説明]
次に、第1実施形態の効果について補足説明する。
【0039】
第1実施形態では、属性・パターンを区別する特徴量である敵対的特徴量Faを敵対的特徴量選択の手法で排除することで、属性・パターンによって違いのない特徴量である属性・パターン共通特徴量Fcだけを用いてストレス推定を行うことができる。そのため、被測定者の属性・パターンに依存することなく、高精度に被測定者のストレスを推定することができる。
【0040】
例えば、非特許文献1では学生、非特許文献2ではIT企業のオフィス勤務者等、被験者の生活パターンや年齢層に偏りのあるデータベースしか取得できない場合が多い。また、非特許文献4では、ドメイン不変のモデルを得る手法であり、偏りのあるデータベースに対応可能だが、大量データが前提の深層学習を基盤にしている為、大量のデータが得にくい長期ストレスのようなデータベースの分析には適用できない。これに対し、第1実施形態では、大量の訓練データがなく、偏りのあるデータベースにより作成されたストレス推定システムであっても、属性・パターンに依存することなく被測定者のストレスを好適に推定することができる。
【0041】
<第2実施形態>
次に、図4図7を参照し、第1実施形態をより具体化した実施形態である第2実施形態について説明する。
【0042】
図4は、第2実施形態に係るストレス推定システム150Aの構成を示す。ストレス推定システム150Aは、複数のウェアラブル端末400と、コンピュータ600とを有している。コンピュータ600と、各ウェアラブル端末400とは、通信手段500(501、502、503、504)を介し、通信を行う。
【0043】
ウェアラブル端末400は、被測定者300の生体信号「Sb」を取得する。被測定者300の生体信号Sbは、被測定者の発汗を反映する皮膚表面電気活動(Electrodermal Activity)であってもよい。生体信号Sbの他の例は、体温、脈波、心拍、音声、脳波、呼吸、筋電、心電、体動等の種々の生体情報を反映する信号であってもよい。このように、生体信号Sbは、被測定者の精神活動の影響を受ける任意の生体情報を反映した信号であってもよい。
【0044】
ウェアラブル端末400は、被測定者300が着用可能な端末であって、前記に挙げた生体情報を反映する生体信号のうち少なくともいずれかを測定する。例えば、ウェアラブル端末400は、皮膚導電性を一定のサンプリングレートで取得し、内蔵メモリに保存する。ウェアラブル端末400は、リストバンドタイプ、バッジタイプ、社員証タイプ、イヤホンタイプ、シャツタイプ等の種々の形態であってもよい。
【0045】
通信手段500(501、502、503、504)は、ウェアラブル端末400で取得した生体信号Sb(加速度信号を含んでもよい)を、コンピュータ600に送信する。具体的には、例えば、ウェアラブル端末400は、Bluetooth(登録商標)などの近距離通信501によりスマートフォン502に接続し、生体信号Sbをスマートフォン502に送信する。その後、スマートフォン502は、インストールされたアプリケーションにより、生体信号Sbをパケット通信503によってインターネット504に送信する。これにより、インターネット504に接続したコンピュータ600に生体信号Sbがアップロードされる。
【0046】
コンピュータ600は、第1実施形態のストレス推定装置100に相当し、例えば、図2に示されるようなハードウェア構成を有している。
【0047】
図5は、第2実施形態におけるコンピュータ600の機能的な構成を示す。コンピュータ600は、機能的には、通信インターフェース(I/F)601と、生体信号取得部602と、生体信号記憶部603と、属性・パターンデータ取得部604と、属性・パターンデータ記憶部605と、生体信号特徴量計算部606と、生体信号特徴量記憶部607と、属性・パターン共通特徴量選択部608と、属性・パターン共通特徴量記憶部609と、ストレス推定部610と、ストレス推定結果記憶部611と、ストレス推定結果出力部612とを含む。
【0048】
まず、生体信号取得部602は、通信インターフェース601から得られた生体信号Sbを、生体信号記憶部603に記憶する。次に、属性・パターンデータ取得部604は、属性・パターンデータ「Da」を取得する。第2実施形態では、属性・パターンデータDaは、被測定者の職種(営業職・技術職)を示す。取得された属性・パターンデータDaは、属性・パターンデータ記憶部605に記憶される。なお、属性・パターンデータ取得部604は、ウェアラブル端末400又はその他の外部装置から被測定者の属性・パターンを示す属性・パターンデータDaを取得してもよく、生体信号Sbから被測定者の属性・パターンを推定して属性・パターンデータDaを生成してもよい。
【0049】
次に、生体信号特徴量計算部606は、生体信号記憶部603から抽出した生体信号Sbに基づき、ストレスに関する特徴量である生体信号特徴量「Fb」を算出する。本実施形態において、生体信号特徴量Fbは、発汗及び体動の時系列ヒストグラム、パワースペクトル密度、統計量(平均値、中央値、分散値)である。算出された生体信号特徴量Fbは、生体信号特徴量記憶部607に記憶される。
【0050】
次に、属性・パターン共通特徴量選択部608は、属性・パターンを区別する特徴量である敵対的特徴量「Fa」を排除することで、属性・パターンによって違いのない特徴量である属性・パターン共通特徴量「Fc」を生体信号特徴量Fbから選択する。
【0051】
本実施形態では、属性・パターン共通特徴量選択部608は、ランダムフォレストを用いた敵対的特徴量選択を行い、選択した敵対的特徴量Faを生体信号特徴量Fbから排除する。そして、属性・パターン共通特徴量選択部608は、属性・パターンに依存しない残りの生体信号特徴量Fbを属性・パターン共通特徴量Fcとして選択する。
【0052】
具体的には、まず、属性・パターン共通特徴量選択部608は、ランダムフォレストの手法により、属性・パターンの異なるデータをクラス分類する。第2実施形態では、属性・パターン共通特徴量選択部608は、技術職と営業職を識別する2クラス分類を行う。このクラス分類において、属性・パターン共通特徴量選択部608は、各生体信号特徴量Fbの重要度を評価する。そして、属性・パターン共通特徴量選択部608は、所定の閾値以上の重要度となる生体信号特徴量Fbを、敵対的特徴量Faとみなし、ストレス推定に用いる特徴量セットから排除する。なお、ランダムフォレストを用いた敵対的特徴量選択に必要なパラメータは、コンピュータ600のメモリ又は外部記憶装置に記憶されている。
【0053】
属性・パターン共通特徴量選択部608は、敵対的特徴量選択を経て選定した属性・パターンに共通の属性・パターン共通特徴量Fcを、属性・パターン共通特徴量記憶部609に記憶する。
【0054】
次に、ストレス推定部610は、属性・パターン共通特徴量記憶部609に記憶された属性・パターン共通特徴量Fcに基づき、ストレスを推定する。
【0055】
具体的には、第2実施形態では、ストレス推定部610は、ストレスの正解値として、PSS(Perceived Stress Scale)の10項目版(以降、「PSS10」と呼ぶ。)のスコアを用い、このPSS10のスコアを回帰分析によって推定するストレス推定モデルを作成する。この際、被測定者に対して実験期間(例えば4週間)の最後に実施したPSSアンケートから算出したPSS10のスコアを教師データ(正解値)とし、当該被測定者から得られた生体信号に基づく属性・パターン共通特徴量Fcを対応する入力データとする訓練データを用意する。そして、ストレス推定部610は、この訓練データに基づきSVMモデル等の機械学習モデルを学習することで得られたストレス推定モデルを用い、属性・パターン共通特徴量FcからPSS10のスコアを推定する。そして、ストレス推定部610は、推定したPSS10のスコアを、ストレス推定結果として生成する。上述の学習のより詳細な説明については、図6及び図7を参照して後述する。なお、上述の機械学習モデルの学習により得られたストレス推定モデルのパラメータは、ストレス推定部610が参照できるように、コンピュータ600のメモリ又は外部記憶装置に記憶される。推定したストレス推定結果は、ストレス推定結果記憶部611に記憶される。
【0056】
次に、被測定者300の要求に応じて、ストレス推定結果出力部612は、ストレス推定結果記憶部611に記憶されたストレス推定の結果を出力する。
【0057】
出力方法は、具体的には、例えば、画面出力、印刷出力などが挙げられるが、これに限らない。出力するタイミングは、常時、または被測定者の要求によって、出力することが挙げられる。具体的には、画面出力の場合、ストレス推定結果出力部612は、ストレス推定結果記憶部611に記憶されたストレス推定結果を、通信インターフェース601を通じて、通信手段500を用いて、ウェアラブル端末400またはスマートフォン502に送信する。その後、ウェアラブル端末400またはスマートフォン502は、付随する画面においてストレス推定結果を出力する。これにより、コンピュータ600は、ストレス推定結果を好適に被測定者300に提示することができる。
【0058】
ここで、上述したストレス推定モデルの作成プロセス(学習)について、図6及び図7を用いて補足説明する。
【0059】
図6は、ストレス推定モデルの作成プロセスの模式図を示す。以後では、一例として、コンピュータ600がストレス推定モデルの作成プロセスを実行するものとして説明を行う。なお、ストレス推定モデルの作成プロセスは、コンピュータ600以外の装置が実行してもよい。
【0060】
まず、コンピュータ600は、営業職の生体信号Sb及び技術職の生体信号Sbから、営業職の生体信号特徴量Fbと、技術職の生体信号特徴量Fbとを生成し、両属性・パターンを識別し得る敵対的特徴量Faをランダムフォレストの手法で探索する。なお、図6の「営業職データ」は、営業職の生体信号Sb又は当該生体信号Sbに基づく営業職の生体信号特徴量Fbに相当し、図6の「技術職データ」は、技術職の生体信号Sb又は当該生体信号Sbに基づく技術職の生体信号特徴量Fbに相当する。
【0061】
そして、コンピュータ600は、探索した敵対的特徴量Faを営業職及び技術職の各生体信号特徴量Fbから排除した属性・パターン共通特徴量Fcに基づき、ストレス推定モデルを作成する。この場合、まず、コンピュータ600は、技術職の生体信号Sbから生成した生体信号特徴量Fbから敵対的特徴量Faを排除した属性・パターン共通特徴量Fcと、技術職のストレスアンケートの結果であるPSS10のスコア(即ちストレス推定の際の目的変数の教師データ)とに基づき、ストレス推定モデルの学習を行う。そして、技術職に関するデータに基づき学習したストレス推定モデルによって、コンピュータ600は、営業職の属性・パターン共通特徴量Fcから、営業職のPSS10のスコア(即ち、営業職のストレスアンケートの結果)を推定する。この推定では、一例として、Support Vector Regression(SVR)を用いるものとする。
【0062】
図7は、SVRによる営業職のストレス推定結果に関するグラフを示す。グラフにおいて、横軸はランダムフォレストによる敵対的特徴量選択によって選ばれた敵対的特徴量Faの数(即ち排除する特徴量の数)を示し、縦軸はSVRによるPSS10の推定スコアと、正解となるPSS10の実スコアとの誤差である。
【0063】
ここで、横軸に関連する、ランダムフォレストによる敵対的特徴量選択においては、営業職と技術職をよく識別できる特徴量、すなわち、職種という属性・パターンへの依存度が高い特徴量から順に敵対的特徴量Faとして選んでいる。横軸が示す「排除する特徴量の数」が増加していくと、ストレス推定モデルに使用される特徴量が減少するので、属性・パターン(この場合は職種)に依存しない特徴量のみでストレス推定モデルが形成される傾向が強まる。よって、技術職のデータのみから学習したストレス推定モデルでも、営業職のストレスを精度よく推定できる傾向が強まる。このことは、特徴量数が増加するにつれて、縦軸が示す誤差が徐々に減っていく状況から理解できる。
【0064】
その後、ランダムフォレストによって選択される敵対的特徴量Faの数を更に増加させていくと、ストレス推定モデルに使用される特徴量がその分排除され、学習サンプル数が過少になることに起因してストレス推定モデルの性能が悪化し、縦軸が示す誤差が増加する。図7では、横軸が示す「排除する特徴量の数」が縦軸の誤差が最小となるときの数「Nopt」を境として、縦軸の誤差が「排除する特徴量の数」の増加と共に増加する。
【0065】
以上を勘案し、第2実施形態では、訓練データにおいて、図7の縦軸に相当する推定誤差と敵対的特徴量選択のパラメータとの関係を求める。そして、コンピュータ600は、推定誤差が最小値を取る時のパラメータによって選択された特徴量を排除することで、ストレス推定モデルを構成する。このようなストレス推定モデルを用いることで、コンピュータ600は、被測定者のストレスを高精度に推定することができる。
【0066】
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態におけるストレス推定装置100Xのブロック図である。ストレス推定装置100Xは、主に、生体信号取得手段101Xと、生体信号特徴量計算手段103Xと、属性・パターンデータ取得手段104Xと、属性・パターン共通特徴量選択手段105Xと、ストレス推定手段106Xとを有する。なお、ストレス推定装置100Xは、複数の装置から構成されてもよい。
【0067】
生体信号取得手段101Xは、被測定者の生体信号を取得する。生体信号取得手段101Xは、第1実施形態の生体信号取得部101又は第2実施形態の生体信号取得部602とすることができる。他の例では、生体信号取得手段101Xは、第1実施形態において生体信号記憶部102から生体信号Sbを取得する生体信号特徴量計算部103であってもよい。
【0068】
生体信号特徴量計算手段103Xは、ストレスに関する生体信号の特徴量である生体信号特徴量を算出する。生体信号特徴量計算手段103Xは、第1実施形態の生体信号特徴量計算部103又は第2実施形態の生体信号特徴量計算部606とすることができる。
【0069】
属性・パターンデータ取得手段104Xは、被測定者の属性又はパターンの少なくとも一方を示す属性・パターンデータを取得する。属性・パターンデータ取得手段104Xは、第1実施形態の属性・パターンデータ取得部104又は第2実施形態の属性・パターンデータ取得部604とすることができる。
【0070】
属性・パターン共通特徴量選択手段105Xは、生体信号特徴量から属性・パターンデータが示す属性・パターンに依存しない特徴量である属性・パターン共通特徴量を選択する。属性・パターン共通特徴量選択手段105Xは、第1実施形態の属性・パターン共通特徴量選定部105又は第2実施形態の属性・パターン共通特徴量選択部608とすることができる。
【0071】
ストレス推定手段106Xは、属性・パターン共通特徴量に基づき、被測定者のストレスを推定する。ストレス推定手段106Xは、第1実施形態のストレス推定部106又は第2実施形態のストレス推定部610とすることができる。
【0072】
図9は、第3実施形態においてストレス推定装置100Xが実行するフローチャートの一例である。まず、生体信号取得手段101Xは、被測定者の生体信号を取得する(ステップS21)。次に、生体信号特徴量計算手段103Xは、ストレスに関する生体信号の特徴量である生体信号特徴量を算出する(ステップS22)。属性・パターンデータ取得手段104Xは、被測定者の属性又はパターンの少なくとも一方を示す属性・パターンデータを取得する(ステップS23)。属性・パターン共通特徴量選択手段105Xは、生体信号特徴量から属性・パターンデータが示す属性・パターンに依存しない特徴量である属性・パターン共通特徴量を選択する(ステップS24)。ストレス推定手段106Xは、属性・パターン共通特徴量に基づき、被測定者のストレスを推定する(ステップS25)。
【0073】
第3実施形態に係るストレス推定装置100Xは、被測定者の属性・パターンによらずに被測定者のストレスを好適に推定することができる。
【0074】
なお、上述した各実施形態において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータであるプロセッサ等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0075】
その他、上記の各実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが以下には限られない。
【0076】
[付記1]
被測定者の生体信号を取得する生体信号取得手段と、
ストレスに関する前記生体信号の特徴量である生体信号特徴量を算出する生体信号特徴量計算手段と、
前記被測定者の属性又はパターンの少なくとも一方を示す属性・パターンデータを取得する属性・パターンデータ取得手段と、
前記生体信号特徴量から前記属性・パターンデータが示す属性・パターンに依存しない特徴量である属性・パターン共通特徴量を選択する属性・パターン共通特徴量選択手段と、
前記属性・パターン共通特徴量に基づき、前記被測定者のストレスを推定するストレス推定手段と、
を備えるストレス推定装置。
【0077】
[付記2]
前記属性・パターン共通特徴量選択手段は、前記属性・パターンを区別する敵対的特徴量を前記生体信号特徴量から排除することで、前記属性・パターン共通特徴量を選択する、付記1に記載のストレス推定装置。
【0078】
[付記3]
前記属性・パターン共通特徴量選択手段は、前記属性・パターンの分類上での前記生体信号特徴量に対する重要度を算出し、前記重要度に基づき、前記敵対的特徴量を選択する、付記2に記載のストレス推定装置。
【0079】
[付記4]
前記属性・パターン共通特徴量選択手段は、ランダムフォレストに基づき、前記敵対的特徴量を選択する、付記2または3に記載のストレス推定装置。
【0080】
[付記5]
前記ストレス推定手段は、回帰分析に基づくモデルを用いて、前記属性・パターン共通特徴量から前記ストレスの推定結果を示すスコアを算出する、付記1~4のいずれか一項に記載のストレス推定装置。
【0081】
[付記6]
前記生体信号取得手段が取得した前記生体信号を記憶する生体信号記憶手段をさらに有し、
前記特徴量計算手段は、前記生体信号記憶手段に記憶された前記生体信号から前記生体信号特徴量を算出する、付記1~5のいずれか一項に記載のストレス推定装置。
【0082】
[付記7]
前記生体信号取得手段は、前記被測定者により装着されたウェアラブル端末から前記生体信号を受信する、付記1~6のいずれか一項に記載のストレス推定装置。
【0083】
[付記8]
コンピュータにより、
被測定者の生体信号を取得し、
ストレスに関する前記生体信号の特徴量である生体信号特徴量を算出し、
前記被測定者の属性又はパターンの少なくとも一方を示す属性・パターンデータを取得し、
前記生体信号特徴量から前記属性・パターンデータが示す属性・パターンに依存しない特徴量である属性・パターン共通特徴量を選択し、
前記属性・パターン共通特徴量に基づき、前記被測定者のストレスを推定する、
推定方法。
【0084】
[付記9]
被測定者の生体信号を取得し、
ストレスに関する前記生体信号の特徴量である生体信号特徴量を算出し、
前記被測定者の属性又はパターンの少なくとも一方を示す属性・パターンデータを取得し、
前記生体信号特徴量から前記属性・パターンデータが示す属性・パターンに依存しない特徴量である属性・パターン共通特徴量を選択し、
前記属性・パターン共通特徴量に基づき、前記被測定者のストレスを推定する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【0085】
[付記10]
付記9に記載のプログラムが格納された記憶媒体。
【0086】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0087】
100 ストレス推定装置
101 生体信号取得部
102 生体信号記憶部
103 生体信号特徴量計算部
104 属性・パターンデータ取得部
105 属性・パターン共通特徴量選択部
106 ストレス推定部
150 ストレス推定システム
200 ウェアラブル端末
300 被測定者
400 ウェアラブル端末
500 通信手段
501 Bluetooth通信
502 スマートフォン
503 モバイルデータ通信またはWifi通信
504 インターネット
600 コンピュータ
601 通信インタフェース
602 生体信号取得部
603 生体信号記憶部
604 属性・パターンデータ取得部
605 属性・パターンデータ記憶部
606 生体信号特徴量計算部
607 生体信号特徴量記憶部
608 属性・パターン共通特徴量選択部
609 属性・パターン共通特徴量記憶部
610 ストレス推定部
611 ストレス推定結果記憶部
612 ストレス推定結果出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9