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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240709BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240709BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 305
B41J2/17 207
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022553993
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035572
(87)【国際公開番号】W WO2022071292
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2020167474
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003443
【氏名又は名称】弁理士法人TNKアジア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西原 正輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 武徳
(72)【発明者】
【氏名】三宅 雅之
(72)【発明者】
【氏名】中頭 達也
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-160425(JP,A)
【文献】特開2013-188927(JP,A)
【文献】特開2011-121217(JP,A)
【文献】特開2020-151871(JP,A)
【文献】米国特許第04207578(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部を有し、記録媒体を順次搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによって搬送される前記記録媒体にインクを吐出して画像形成を行なう複数のノズルを有する記録ヘッドと、
前記画像形成を行なうタイミングとは異なるタイミングで前記記録ヘッドの前記ノズルから前記インクを吐出させて前記複数の開口部のいずれかにインクを通過させるフラッシングを、前記記録ヘッドに実行させるフラッシング制御部と、を備え、
前記搬送ベルトには、前記開口部が前記搬送ベルトの幅方向に所定の間隔を隔てて配置される開口部列が複数形成され、複数の前記開口部列は、前記搬送ベルトの幅方向において前記開口部が重なる重複部分を有するように、前記搬送ベルトの搬送方向に所定の間隔を隔てて配列されており、
前記フラッシング制御部は、前記搬送ベルトの走行によって前記開口部が前記記録ヘッドと対向する位置を通過する非画像形成期間において、前記重複部分に対向する前記ノズルを含む全ての前記ノズルから前記インクを所定回数ずつ吐出させて前記フラッシングを前記記録ヘッドに実行させ
前記記録媒体を検知して検知信号を出力する記録媒体検知センサーと、
前記搬送ベルトの前記開口部を読取って、開口部読取データを取得する開口部検知センサーと、
前記検知信号に基づいて、前記開口部読取データに含まれる複数の前記開口部の領域のうち、前記記録媒体検知センサーによって検知された前記記録媒体と搬送方向にずれて位置する開口部の領域を認識し、認識した前記開口部の領域に応じたフラッシングデータを生成するデータ生成部と、をさらに備え、
前記フラッシング制御部は、前記検知信号に基づいて前記非画像形成期間を少なくとも1つ認識し、前記非画像形成期間において、前記フラッシングデータに基づいて前記記録ヘッドに前記フラッシングを実行させ、
前記データ生成部は、予め定められたフラッシング用の元データを前記開口部読取データでマスクしたときに、前記元データにおいて前記開口部読取データ上の前記各開口部の領域と対応して残るデータを、前記フラッシングデータとして生成する、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記フラッシングの実行時に、全ての前記ノズルからの前記インクの吐出回数を個別にカウントするフラッシングカウント部をさらに備え、
前記フラッシング制御部は、前記記録ヘッドに、前記インクの吐出回数が前記所定回数に到達した前記ノズルからの前記インクの吐出を禁止させる、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記フラッシング制御部は、前記記録ヘッドに、前記ノズルから前記所定回数ずつ前記インクを吐出させる際、前記開口部列の前記搬送方向下流端から所定範囲内に吐出させる、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記フラッシング制御部は、前記記録ヘッドに、前記ノズルから前記所定回数ずつ前記インクを吐出させる際、前記開口部列の前記搬送方向上流端から所定範囲内に吐出させる、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記フラッシング制御部は、前記記録ヘッドに、前記ノズルから前記所定回数ずつ前記インクを吐出させる際、前記開口部列の前記搬送方向下流端および上流端から所定範囲内に分割して吐出させる、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記データ生成部は、前記開口部読取データ上での前記各開口部の領域を縮小し、前記領域の縮小後のデータと、前記元データとに基づいて、前記フラッシングデータを生成する、請求項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記元データは、前記搬送ベルトの1周分のデータ長を有する、請求項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記データ生成部は、前記記録媒体検知センサーで検知された前記記録媒体が前記記録ヘッドと対向する位置を通過する画像形成期間における前記インクの吐出回数が所定回数よりも多い場合に、複数の前記非画像形成期間に対して間欠的に前記フラッシングを前記記録ヘッドに実行させるための前記フラッシングデータを生成する、請求項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記フラッシングの実行および停止を指定するフラッシング実行指定信号を出力する制御部をさらに備え、
前記データ生成部は、前記元データを前記開口部読取データでマスクしたときに残る前記データから、前記フラッシング実行指定信号がイネーブルの期間のデータを抽出することで、前記フラッシングデータを生成する、請求項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
複数の開口部を有し、記録媒体を順次搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトによって搬送される前記記録媒体にインクを吐出して画像形成を行なう複数のノズルを有する記録ヘッドと、
前記画像形成を行なうタイミングとは異なるタイミングで前記記録ヘッドの前記ノズルから前記インクを吐出させて前記複数の開口部のいずれかにインクを通過させるフラッシングを、前記記録ヘッドに実行させるフラッシング制御部と、を備え、
前記搬送ベルトには、前記開口部が前記搬送ベルトの幅方向に所定の間隔を隔てて配置される開口部列が複数形成され、複数の前記開口部列は、前記搬送ベルトの幅方向において前記開口部が重なる重複部分を有するように、前記搬送ベルトの搬送方向に所定の間隔を隔てて配列されており、
前記フラッシング制御部は、前記搬送ベルトの走行によって前記開口部が前記記録ヘッドと対向する位置を通過する非画像形成期間において、前記重複部分に対向する前記ノズルを含む全ての前記ノズルから前記インクを所定回数ずつ吐出させて前記フラッシングを前記記録ヘッドに実行させ、
前記フラッシングの実行に関する通知を行なう通知装置をさらに備え、
前記フラッシング制御部は、前記非画像形成期間における前記インクの吐出回数が前記所定回数に到達しなかった前記ノズルが存在する場合、前記通知装置により前記フラッシングが不十分である旨の通知を行なうインクジェット記録装置。
【請求項11】
異常品としての前記記録媒体を排出するための排出トレイと、
前記異常品としての前記記録媒体を前記排出トレイに向けて搬送する搬送機構と、をさらに備え、
前記フラッシング制御部は、前記非画像形成期間における前記インクの吐出回数が前記所定回数に到達しなかった前記ノズルが存在する場合、前記記録ヘッドに前記画像形成を停止させるとともに、前記搬送機構に、前記非画像形成期間の直後に画像形成される前記記録媒体を前記異常品として搬送させて前記排出トレイに排出させる、請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置において、インクの乾燥によるノズルの目詰まりを低減又は予防するために、ノズルからインクを定期的に吐出させるフラッシング(空吐出)が行なわれている。例えば、特許文献1のインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送ベルトに開口部を設け、記録ヘッドの各ノズルからインクを吐出させて、搬送ベルトの開口部にインクを通過させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-213095号公報
【発明の概要】
【0004】
複数の開口部が搬送ベルトの幅方向に所定の間隔で配置された開口部列を、ベルト進行方向に複数列形成する場合がある。このような場合、全てのノズルで確実にフラッシングを行なうために、隣接する開口部列において開口部の一部(端部)が幅方向に重なるように、開口部列が交互に配置される。そのため、開口部の重なり部分に位置するノズルでは、各開口部がノズルを通過する際に一律にフラッシングを行なうと、過剰なフラッシングとなりインクを無駄に消費するという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、フラッシングを精度よく行なうことができ、さらに不要なフラッシングによるインクの無駄な消費を抑制可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の一局面に係るインクジェット記録装置は、搬送ベルトと、記録ヘッドと、フラッシング制御部と、を備える。搬送ベルトは、複数の開口部を有し、記録媒体を順次搬送する。記録ヘッドは、搬送ベルトによって搬送される記録媒体にインクを吐出して画像形成を行なう複数のノズルを有する。フラッシング制御部は、画像形成を行なうタイミングとは異なるタイミングで記録ヘッドのノズルからインクを吐出させて複数の開口部のいずれかにインクを通過させるフラッシングを、記録ヘッドに実行させる。搬送ベルトには、開口部が搬送ベルトの幅方向に所定の間隔を隔てて配置される開口部列が複数形成される。複数の開口部列は、搬送ベルトの幅方向において開口部が重なる重複部分を有するように、搬送ベルトの搬送方向に所定の間隔を隔てて配列されている。フラッシング制御部は、搬送ベルトの走行によって開口部が記録ヘッドと対向する位置を通過する非画像形成期間において、重複部分に対向するノズルを含む全てのノズルからインクを所定回数ずつ吐出させてフラッシングを記録ヘッドに実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、開口部の重複部分に対向するノズルを含む全てのノズルのフラッシング回数を所定回数とすることで、各ノズルのフラッシング回数を必要十分な回数とすることができる。その結果、インクの吐出不良を抑制するとともに無駄なインクの消費を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】プリンターの概略構成を示す説明図である。
図2】プリンターが備える記録部の平面図である。
図3】用紙の搬送経路の周辺の構成を模式的に示す説明図である。
図4】プリンターの主要部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】第1搬送ベルトの一構成例を示す平面図である。
図6】フラッシングデータの生成方法を模式的に示す説明図である。
図7】フラッシング回数の制御パターンを模式的に示す説明図である。
図8】フラッシング制御例を示すフローチャートである。
図9】フラッシング回数の他の制御パターンを模式的に示す説明図である。
図10】フラッシング回数のさらに他の制御パターンを模式的に示す説明図である。
図11】フラッシングデータの他の生成方法を模式的に示す説明図である。
図12】フラッシングデータのさらに他の生成方法を模式的に示す説明図である。
図13】第1搬送ベルトにおける開口部の配置パターンを模式的に示す説明図である。
図14】フラッシングデータのさらに他の生成方法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔1.インクジェット記録装置の構成〕
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンター100の概略構成を示す説明図である。プリンター100は、用紙収容部としての給紙カセット2を備えている。給紙カセット2は、プリンター本体1の内部の下部に配置されている。給紙カセット2の内部には、記録媒体の一例としての用紙Pが収容されている。
【0010】
給紙カセット2の用紙搬送方向下流側、すなわち図1における給紙カセット2の右側の上方には給紙装置3が配置されている。給紙装置3は、用紙Pを図1において給紙カセット2の右上方に向けて、1枚ずつ分離して送り出す。
【0011】
プリンター100は、内部に第1用紙搬送路4Aを備えている。第1用紙搬送路4Aは、給紙カセット2に対して給紙方向である右上方に位置する。第1用紙搬送路4Aは、給紙カセット2から送り出された用紙Pを、プリンター本体1の側面に沿って垂直上方に搬送する。
【0012】
第1用紙搬送路4Aの用紙搬送方向下流端には、レジストローラー対13が設けられている。レジストローラー対13の用紙搬送方向下流側直近には、第1搬送ユニット5および記録部9が配置されている。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4Aを通ってレジストローラー対13に到達する。レジストローラー対13は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、記録部9が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1搬送ユニット5(特に後述する第1搬送ベルト8)に向かって用紙Pを送り出す。
【0013】
第1搬送ベルト8は、レジストローラー対13によって第1搬送ユニット5に送り出された用紙Pを、記録部9(特に後述する記録ヘッド17a~17c)との対向位置に搬送する。記録部9は、用紙Pにインクを吐出することにより、用紙P上に画像を記録する。このとき、プリンター100の内部の制御装置110は、記録部9におけるインクの吐出を制御する。
【0014】
第1搬送ユニット5の用紙搬送方向下流側(図1の左側)には、第2搬送ユニット12が配置されている。記録部9によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ユニット12へ送られる。第2搬送ユニット12は、用紙Pの表面に吐出されたインクを、用紙Pが第2搬送ユニット12を通過する間に乾燥する。
【0015】
第2搬送ユニット12の用紙搬送方向下流側であってプリンター本体1の左側面近傍には、デカーラー部14が設けられている。デカーラー部14は、第2搬送ユニット12によってインクが乾燥され、デカーラー部14へ送られた用紙Pに生じたカールを矯正する。
【0016】
デカーラー部14の用紙搬送方向下流側(図1の上方)には、第2用紙搬送路4Bが設けられている。第2用紙搬送路4Bは、両面記録が行なわれない場合、デカーラー部14を通過して第2用紙搬送路4Bを通る用紙Pを、プリンター100の左側面外部に設けられた用紙排出トレイ15Aに排出する。用紙排出トレイ15Aの下方には、印字不良等の発生した不要な用紙P(損紙)を排出するためのサブ排出トレイ15Bが設けられている。第2搬送ユニット12、デカーラー部14、及び第2用紙搬送路4Bは、搬送機構の一例である。
【0017】
プリンター本体1の内部の上部であって記録部9および第2搬送ユニット12の上方には、両面記録を行なうための反転搬送路16が設けられている。第2用紙搬送路4Bは、両面記録が行なわれる場合、用紙Pの一方の面(第1面)への記録が終了して第2搬送ユニット12およびデカーラー部14を通過し、第2用紙搬送路4Bを通る用紙Pを、反転搬送路16へ送る。
【0018】
反転搬送路16は、反転搬送路16へ送られた用紙Pの搬送方向を、続く用紙Pの他方の面(第2面)への記録のために切り替える。反転搬送路16は、用紙Pを、プリンター本体1の上部を通過させて右側に向かって送り、レジストローラー対13を経て第2面を上向きにした状態で再び第1搬送ユニット5へ送る。第1搬送ユニット5は、記録部9との対向位置に用紙Pを搬送する。記録部9は、インク吐出によって用紙Pの第2面に画像を記録する。両面記録後の用紙Pは、第2搬送ユニット12、デカーラー部14、第2用紙搬送路4bを順に通過して用紙排出トレイ15Aに排出される。
【0019】
第2搬送ユニット12の下方には、メンテナンスユニット19およびキャップユニット20が配置されている。メンテナンスユニット19は、パージを実行する際に記録部9の下方に水平移動し、記録ヘッドのインク吐出口から押出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。なお、パージとは、インク吐出口内の増粘インク、異物、又は気泡等を排出するために、記録ヘッドのインク吐出口からインクを強制的に押し出す動作を言う。キャップユニット20は、記録ヘッドのインク吐出面をキャッピングする際に記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッドの下面に装着される。
【0020】
図2は、記録部9の平面図である。記録部9は、ヘッドハウジング10と、ラインヘッド11Y、11M、11C、11Kとを備えている。ラインヘッド11Y乃至11Kは、第1搬送ベルト8の搬送面に対して、所定の間隔(例えば1mm)が形成される高さでヘッドハウジング10に保持される。第1搬送ベルト8は、駆動ローラー6A、従動ローラー6B、テンションローラー7Aおよび7B(図3参照)を含む複数のローラーに張架された無端状のベルトである。駆動ローラー6Aは、第1搬送ベルト8を用紙Pの搬送方向(矢印A方向)に走行させる。制御装置110の主制御部110D(図4参照)は、駆動ローラー6Aの駆動を制御する。なお、上記複数のローラーは、第1搬送ベルト8の走行方向に沿って、テンションローラー7A、テンションローラー7B、従動ローラー6B、および駆動ローラー6Aの順に配置されている(図3参照)。
【0021】
ラインヘッド11Y乃至11Kは、複数(ここでは3個)の記録ヘッド17A乃至17Cをそれぞれ有している。記録ヘッド17A乃至17Cは、用紙搬送方向(矢印A方向)と直交する用紙幅方向(矢印BB’方向)に沿って千鳥状に配列されている。記録ヘッド17A乃至17Cは、複数のインク吐出口18(ノズル)を有している。各インク吐出口18は、記録ヘッドの幅方向、つまり、用紙幅方向(矢印BB’方向)に等間隔で並んで配置されている。ラインヘッド11Y乃至11Kは、記録ヘッド17A乃至17Cのインク吐出口18を介して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインクを、第1搬送ベルト8で搬送される用紙Pに向かってそれぞれ吐出する。
【0022】
図3は、給紙カセット2から第1搬送ユニット5を介して第2搬送ユニット12に至る用紙Pの搬送経路の周辺の構成を模式的に示している。図4は、プリンター100の主要部のハードウェア構成を示すブロック図である。プリンター100は、上記の構成に加えて、レジストセンサー21と、用紙検知センサー22と、開口部検知用CIS23と、用紙サイズ検知用CIS24と、蛇行量検知センサー25と、蛇行補正機構26と、をさらに備えている。なお、CISは、Contact Image Sensor(密着型イメージセンサー)の略称である。本実施形態ではCISは透過型であるが、反射型であってもよい。開口部検知用CIS23および用紙サイズ検知用CIS24は、用紙幅方向に沿って長尺状に形成されている(図6参照)。
【0023】
レジストセンサー21は、用紙カセット2から給紙装置3によって搬送され、レジストローラー対13に送られる用紙Pを検知する。レジストセンサー21は、レジストローラー対13よりも用紙P搬送方向の上流側に位置している。制御装置110の主制御部110Dは、レジストセンサー21の検知結果に基づき、レジストローラー対13の回転開始タイミングを制御する。例えば、主制御部110Dは、レジストセンサー21の検知結果に基づき、レジストローラー対13によるスキュー(斜行)補正後の用紙Pの第1搬送ベルト8への供給タイミングを制御する。
【0024】
用紙検知センサー22は、用紙Pを検知して検知信号を出力する記録媒体検知センサーである。本実施形態では、用紙検知センサー22は、第1搬送ベルト8の用紙搬送方向における最も上流側のラインッド11Kとレジストローラー対13との間に配置される。用紙検知センサー22は、レジストローラー対13から第1搬送ベルト8に供給される用紙Pの先端および後端の通過(タイミング)を検知する。
【0025】
用紙検知センサー22は、用紙搬送方向において開口部検知用CIS23よりも用紙搬送方向上流側に位置しているが、開口部検知用CIS23よりも用紙搬送方向下流側に位置していてもよい。用紙検知センサー22は、透過型または反射型の光学センサーで構成されるが、CISで構成されてもよい。制御装置110(例えば主制御部110D)は、用紙検知センサー22による用紙Pの検知結果に基づき、第1搬送ベルト8によってラインヘッド11Y乃至11K(記録ヘッド17A乃至17C)と対向する位置に到達する用紙Pに対するインクの吐出タイミングを制御する。
【0026】
なお、本実施形態では、用紙Pの通過を検知する別の用紙検知センサー22が、用紙搬送方向の最も下流側のラインッド11Yのさらに下流側に配置されているが、その設置は省略してもよい。
【0027】
開口部検知用CIS23は、第1搬送ベルト8の後述する各開口部80(図5参照)を読取って、開口部読取データを取得する。開口部検知用CIS23は、用紙搬送方向(第1搬送ベルト8の走行方向)において記録部9の上流側で用紙検知センサー22よりも下流側に位置している。なお、開口部検知用CIS23は、用紙検知センサー22を兼ねていてもよい。
【0028】
用紙サイズ検知用CIS24は、給紙装置3から第1搬送ベルト8に供給される用紙Pのサイズ(特に用紙幅方向の長さ)および用紙幅方向の搬送位置を検知する。これにより、制御装置110(例えば主制御部110D)は、用いる用紙Pのサイズおよび用紙幅方向の位置に応じて、記録ヘッド17A乃至17Cの各インク吐出口18からのインクの吐出を制御して、用紙P上に画像を形成する。
【0029】
蛇行量検知センサー25は、第1搬送ベルト8の蛇行量を検知する。ここで、蛇行量とは、第1搬送ベルト8のベルト幅方向における基準位置からの変位量を指す。蛇行量検知センサー25は、例えば第1搬送ベルト8の側面(片側)の変位を検知することによって蛇行量を検知する接触式または非接触式の変位センサーで構成される。なお、蛇行量検知センサー25は、ベルト幅方向に長尺状のCISで構成されてもよい。蛇行量検知センサー25は、第1搬送ベルト8の走行方向の複数箇所に位置している。より具体的には、蛇行量検知センサー25は、第1搬送ベルト8の走行方向において、テンションローラー7Aよりも下流側に位置する第1蛇行量検知センサー25Aと、第1蛇行量検知センサー25Aよりもさらに下流側でテンションローラー7Bよりも上流側に位置する第2蛇行量検知センサー25Bとを含む。
【0030】
蛇行補正機構26は、第1搬送ベルト8を張架するローラー(例えばテンションローラー7B)の回転軸を傾けることにより、第1搬送ベルト8の蛇行を補正する機構である。主制御部110Dは、蛇行量検知センサー25によって検知された第1搬送ベルト8の蛇行量に基づいて、蛇行補正機構26を制御する。これにより、第1搬送ベルト8の蛇行が補正される。
【0031】
プリンター100は、操作パネル27と、記憶部28と、通信部29と、フラッシングカウント部30と、をさらに備えている。
【0032】
操作パネル27は、各種の設定入力を受付けるための操作部である。例えば、ユーザーは、操作パネル27を操作して、給紙カセット2にセットする用紙Pのサイズ、つまり、第1搬送ベルト8によって搬送する用紙Pのサイズの情報を入力できる。ユーザーはまた、操作パネル27を操作して、印刷する用紙Pの枚数を入力したり、印刷ジョブの開始を指示したりすることもできる。操作パネル27は、ディスプレイを備え、プリンター100の動作状況(画像記録又は後述するフラッシング等)に関する通知を例えばディスプレイに表示させることで、上記通知を行なう通知装置としての機能も有する。
【0033】
記憶部28は、制御装置110の動作プログラムを記憶するとともに、各種の情報を記憶するメモリである。記憶部28は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び不揮発性メモリなどを含んで構成されている。操作パネル27によって設定された情報は、記憶部28に記憶される。
【0034】
通信部29は、外部機器(例えばパーソナルコンピュータ(PC))との間で情報を送受信するための通信インターフェースである。例えば、ユーザーがPCを操作し、プリンター100に対して画像データとともに印刷コマンドを送信すると、上記の画像データおよび印刷コマンドが通信部29を介してプリンター100に入力される。プリンター100では、主制御部110Dが上記画像データに基づいて記録ヘッド17A乃至17Cを制御してインクを吐出させることにより、用紙Pに画像を記録する。
【0035】
フラッシングカウント部30は、後述するフラッシング動作の実行時に、記録ヘッド17A乃至17Cの各インク吐出口18からのフラッシング回数(インク吐出回数)を個別にカウントする。フラッシングカウント部30は、カウントされたフラッシング回数を主制御部110Dに送信する。
【0036】
プリンター100は、制御装置110を備えている。制御装置110は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリとを含んで構成されている。具体的には、制御装置110は、上記したプロセッサーが制御プログラムを実行することにより、データ生成部110Aと、フラッシング制御部110Bと、データ格納部110Cと、主制御部110Dと、して機能する。
【0037】
データ生成部110Aは、フラッシングの実行時に、記録ヘッド17A乃至17Cからインクを吐出させるための駆動データであるフラッシングデータを生成する。ここで、フラッシングとは、インクの乾燥によるインク吐出口18の目詰まりを低減または予防する目的で、用紙Pへの画像形成(画像記録)に寄与するタイミングとは異なるタイミングでインク吐出口18からインクを吐出することを言う。
【0038】
フラッシング制御部110Bは、データ生成部110Aで生成されたフラッシングデータに基づいて、記録ヘッド17A乃至17Cの各インク吐出口18を駆動して、記録ヘッド17A乃至17Cにフラッシングを実行させる。データ格納部110Cは、上記の開口部読取データ、後述するフラッシング用の元データ、およびデータ生成部110Aで生成されたフラッシングデータなどを一時的に格納する。データ格納部110Cは、例えばRAM又は不揮発性メモリで構成される。主制御部110Dは、プリンター100の各部の動作を制御する。なお、制御装置110は、必要な演算を行なう演算部、又は時間を計時する計時部等としてさらに機能してもよい。または、データ生成部110A、フラッシング制御部110Bおよび主制御部110Dが、上記の演算部又は計時部等を兼ねていてもよい。
【0039】
図3に示すように、プリンター100は、第1搬送ベルト8の内周面側に、インク受け部31Y、31M、31C、31Kを有している。インク受け部31Y乃至31Kは、フラッシングを記録ヘッド17A乃至17Cに実行させたときに、記録ヘッド17A乃至17Cから吐出されて第1搬送ベルト8の開口部80を通過したインクを受けて回収する。したがって、インク受け部31Y~31Kは、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17A乃至17Cと、第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。インク受け部31Y乃至31Kで回収されたインクは、例えば廃インクタンクに送られて廃棄されるが、廃棄せずに再利用されてもよい。
【0040】
第2搬送ユニット12は、第2搬送ベルト12Aと、乾燥器12Bとを有している。第2搬送ベルト12Aは、2つの駆動ローラー12Cおよび従動ローラー12Dによって張架されている。第2搬送ユニット12は、第1搬送ユニット5によって搬送され、記録部9によるインク吐出によって画像が記録された用紙Pを搬送し、搬送中に乾燥器12Bによって乾燥して上述したデカーラー部14に搬送する。
【0041】
〔2.第1搬送ベルト8の詳細〕
次に、第1搬送ユニット5の第1搬送ベルト8について詳細に説明する。図5は、第1搬送ベルト8の一構成例を示す平面図である。用紙Pを順次搬送する第1搬送ベルト8は、開口部80を複数有している。各開口部80は、ベルト幅方向(矢印BB’方向)にのびる長尺の孔で形成されている。本実施形態では、各開口部80の平面視での形状は、図5に示すように長方形状であるが、長方形の角部に相当する領域が丸みを帯びた形状であってもよいし、その他の形状(例えば楕円形状)であってもよい。
【0042】
なお、本実施形態では、用紙Pを負圧吸引によって第1搬送ベルト8に吸着させて搬送する負圧吸引方式を採用している。上記の開口部80は、負圧吸引によって発生する吸引風を通過させる吸引孔を兼ねている。
【0043】
本実施形態では、第1搬送ベルト8において、複数の開口部80で構成される開口部群82が、用紙搬送方向(矢印A方向)に一定間隔で並んで配置されている。各開口部群82は、複数の開口部列81で構成されている。本実施形態では、各開口部群82は、2つの開口部列81Aおよび81Bで構成されている。
【0044】
開口部列81Aおよび開口部列81Bのそれぞれは、複数の開口部80をベルト幅方向(矢印BB’方向)に等間隔で有している。一方の開口部列81Aの各開口部80は、用紙Pの搬送方向(矢印A方向)から見て、他方の開口部列81Bの各開口部80とベルト幅方向の一部(長手方向の端部)が重なる(重複部分Eを有する)ように配置されている。つまり、第1搬送ベルト8において、複数の開口部80は千鳥状に配置されている。なお、各開口部群82の用紙搬送方向の間隔は、各開口部列81Aおよび81Bの用紙搬送方向の間隔に等しい。
【0045】
一方の開口部列81Aに属する各開口部80、および他方の開口部列81Bに属する各開口部80は、第1搬送ベルト8のベルト幅方向の中心を搬送方向に結ぶ中心線に対して線対称となる形状および位置にそれぞれ形成されている。この結果、一方の開口部列81Aに属する開口部80の数は、他方の開口部列80Bに属する開口部80の数よりも1つだけ多くなっている。なお、一方の開口部列81Aの開口部80の数と、他方の開口部列80Bの開口部80の数とは同じであってもよい。
【0046】
ここで、ラインヘッド11Y乃至11K(記録ヘッド17A乃至17C)のヘッド幅をW1(mm)としたとき、第1搬送ベルト8において、一方の開口部列81Aのベルト幅方向の最大幅W2(mm)は、W1よりも大きい。この結果、記録ヘッド17A乃至17Cがフラッシングを実行したとき、記録ヘッド17A乃至17Cの各インク吐出口18から吐出されるインクは、開口部列81Aの各開口部80または開口部列81Bの各開口部80のいずれかを通過する。したがって、記録ヘッド17A乃至17Cにヘッド幅全体にわたってフラッシングを実行させて、全てのインク吐出口18についてインクの乾燥による目詰まりを低減することが可能となる。
【0047】
また、図5に示すように、第1搬送ベルト8において、開口部80の配列パターンが互いに異なる2種類の開口部列81Aおよび開口部列81Bを、用紙Pの搬送方向に繰返して配置することにより、2種類のパターンで記録ヘッド17A乃至17Cの全てのインク吐出口18をカバーすることができる。さらに、最小紙間にこれらの2種類のパターンが任意の頻度で交互に現れるように開口部80を配置することにより、開口部80の用紙搬送方向の長さを開口部80の用紙搬送方向の数だけ合算した分のラインフラッシングを紙間で実施することが可能となる。
【0048】
〔3.フラッシング制御について〕
次に、本実施形態の記録ヘッド17A乃至17Cのフラッシング制御について説明する。図6は、紙間フラッシングに用いるフラッシングデータの生成方法を模式的に示す説明図である。ここで、「紙間フラッシング」とは、第1搬送ベルト8上に順次搬送されて載置される用紙Pと用紙Pとの間に位置する開口部80に対して、記録ヘッド17A乃至17Cからインクを吐出させるフラッシング動作のことを言う。
【0049】
なお、本実施形態のフラッシング制御は、用紙Pと用紙搬送方向にずれて位置する開口部80に対してフラッシングを行なう場合に適用でき、フラッシングを行なうタイミングは「紙間」には限定されない。例えば、先頭の用紙Pに画像を形成する前、又は最後尾の用紙Pに画像を形成した後でも、本実施形態のフラッシング制御によってフラッシングを行なうことは可能である。
【0050】
(3-1.用紙Pの検知)
用紙Pがレジストローラー対13から第1搬送ベルト8に向かって搬送されると、用紙サイズ検知用CIS24が用紙Pの幅(サイズ)を検知する。その後、用紙検知センサー22が用紙Pの通過を検知すると、用紙Pの検知信号(垂直同期信号VSYNC)を出力する。上記検知信号は、用紙Pが検知される期間ではハイレベルとなり、用紙Pが検知されない期間ではローレベルとなる信号である。
【0051】
(3-2.開口部読取データの取得)
続いて、用紙Pが第1搬送ベルト8上に供給されると、開口部検知用CIS23が、第1搬送ベルト8の開口部80を読取って、開口部読取データを取得する。
【0052】
開口部検知用CIS23は、例えば透過型であり、発光部および受光部が第1搬送ベルト8を介して互いに反対側に配置されて構成されている。発光部と受光部との間に第1搬送ベルト8の開口部80が位置するとき、発光部から出射された光は開口部80を通過して受光部に到達する。一方、発光部と受光部との間に第1搬送ベルト8の開口部80以外の部分(例えば第1搬送ベルト8のベルト部分又は用紙P)が位置するとき、発光部から出射された光はベルト面または用紙Pで反射または吸収され、受光部には到達しない。したがって、開口部検知用CIS23は、図6に示すように、第1搬送ベルト8の開口部80の領域では白(ハッチングなしで示す)となり、開口部80以外の領域では黒(ハッチングありで示す)となる2値のデータを開口部読取データとして得る。得られた開口部読取データは、例えばデータ格納部110Cに格納される。
【0053】
(3-3.フラッシングデータの生成)
次に、データ生成部110Aは、第1搬送ベルト8上で用紙Pと用紙搬送方向にずれた位置にある各開口部80に対して記録ヘッド17A乃至17Cからインクを吐出させるためのフラッシングデータを生成する。より詳しくは、以下の通りである。
【0054】
(開口部読取データにおける紙間の開口部の認識)
データ生成部110Aは、データ格納部110Cから開口部読取データを読出す。開口部読取データの読出し開始のタイミングは、用紙検知センサー22の検知信号(VSYNC)のネゲートタイミングから、用紙検知センサー22と開口部検知用CIS23との間の距離を用紙Pが搬送される時間だけ遅れたタイミングとする。これにより、データ生成部110Aは、開口部読取データに含まれる複数の開口部80の領域のうち、用紙検知センサー22によって検知された用紙Pと用紙搬送方向にずれて位置する開口部80の領域80Rを認識することが可能となる。例えば、用紙検知センサー22が先頭から3枚目の用紙Pと4枚目の用紙Pとを順に検知した場合、データ生成部110Aは、上記タイミングで開口部読取データをデータ格納部110Cから読出すことにより、第1搬送ベルト8上で3枚目の用紙Pと4枚目の用紙Pとの間に位置する開口部80の、開口部読取データ上での領域80Rを認識することが可能となる。
【0055】
なお、上記の読出し開始タイミングは、用紙検知センサー22と開口部検知用CIS23とが図3で示す位置関係にあるとき、つまり、用紙検知センサー22が開口部検知用CIS23に対して用紙Pの搬送方向の上流側に位置するときのタイミングである。仮に、開口部検知用CIS23が用紙検知センサー22に対して用紙Pの搬送方向の上流側に位置するとき、開口部読取データの読出し開始のタイミングは、用紙検知センサー22の検知信号(VSYNC)のネゲートタイミングから、用紙検知センサー22と開口部検知用CIS23との間の距離を用紙Pが搬送される時間だけ遡ったタイミングとすればよい。
【0056】
(元データの読出し)
制御装置110のデータ格納部110Cは、フラッシング用の元データを予め格納し、用意している。元データは、記録ヘッド17A乃至17Cの全てのインク吐出口18からインクを吐出させるための吐出ONの駆動データである。元データは、例えば第1搬送ベルト8の1周分のデータ長を有する。データ生成部110Aは、フラッシング用の元データを、データ格納部110Cから読出す。
【0057】
(フラッシングデータ生成)
データ生成部110Aは、認識した開口部80の領域80Rに応じた(領域80Rの位置および形状に合った)フラッシングデータを生成する。より具体的には、データ生成部110Aは、データ格納部110Cから読出したフラッシング用の元データを、同じくデータ格納部110Cから読出した開口部読取データでマスクする。これにより、元データのうち、開口部80の領域80Rと重なるデータのみが残る。つまり、元データのうち、第1搬送ベルト8上で用紙Pと用紙搬送方向にずれた位置にある各開口部80の領域80Rに対応するデータのみが残る。データ生成部110Aは、開口部80の領域80Rに対応して残る上記のデータを、フラッシングデータとする。データ生成部110Aによって生成されたフラッシングデータは、例えばデータ格納部110Cに格納される。
【0058】
(3-4.フラッシングの実行)
フラッシング制御部110Bは、用紙検知センサー22から出力される検知信号に基づいて、非画像形成期間Tfを少なくとも1つ認識する。非画像形成期間Tfは、領域80Rに含まれる開口部80が第1搬送ベルト8の走行によって記録ヘッド17A乃至17Cと対向する位置を通過する期間を指す。用紙検知センサー22と記録ヘッド17A乃至17Cとの間の距離、および用紙Pの搬送速度は既知であるため、フラッシング制御部110Bは、用紙検知センサー22から記録ヘッド17A乃至17Cとの対向位置までの用紙Pの搬送時間を求めることができる。したがって、フラッシング制御部110Bは、用紙検知センサー22から出力される検知信号がハイレベルからローレベルに切り替わるタイミング(時刻)に上記の搬送時間を加えたタイミング(時刻)から、上記検知信号がローレベルからハイレベルに切り替わるタイミング(時刻)に上記の搬送時間を加えたタイミング(時刻)までを、非画像形成期間Tfとして認識できる。
【0059】
フラッシング制御部110Bは、上記の非画像形成期間Tfにおいて、データ生成部110Aが生成したフラッシングデータに基づいて、記録ヘッド17A乃至17Cにフラッシングを実行させる。このとき、開口部検知用CIS23と記録ヘッド17A乃至17Cとの間の距離、および第1搬送ベルト8の走行速度は既知であるため、フラッシング制御部110Bは、開口部検知用CIS23から記録ヘッド17A乃至17Cとの対向位置までの第1搬送ベルト8の開口部80の移動時間を求めることができる。したがって、フラッシング制御部110Bは、開口部検知用CIS23で開口部80を検知してから、上記移動時間に対応する所定時間経過後に、上記フラッシングデータに基づいて記録ヘッド17A乃至17Cにフラッシングを実行させる。このフラッシングにより、記録ヘッド17A乃至17Cの各インク吐出口18から吐出されたインクは、第1搬送ベルト8において、用紙Pと用紙搬送方向にずれた位置にある各開口部80のいずれかを通過する。各開口部80を通過したインクは、インク受け部31Y乃至31K(図3参照)で回収され、その後、廃インクタンクに送液される。
【0060】
なお、フラッシングデータは、開口部列81Aの開口部80にインクを吐出させるための駆動データと、開口部列81Bの開口部80にインクを吐出させるための駆動データとを含む。各インク吐出口18をどちらの駆動データで駆動するかについては、各インク吐出口18のベルト幅方向の位置(開口部列81Aおよび81Bのどちらの開口部80と対向するか)によって決定されればよい。開口部列81Aの開口部80と開口部列81Bの開口部との両方と対向することが可能なインク吐出口18については、上記2種類の駆動データのいずれで駆動されてもよい。
【0061】
なお、用紙検知センサー22から出力される検知信号がローレベルからハイレベルに切り替わるタイミング(時刻)に上記の搬送時間を加えたタイミング(時刻)から、検知信号がハイレベルからローレベルに切り替わるタイミング(時刻)に上記の搬送時間を加えたタイミング(時刻)までの期間は、用紙検知センサー22で検知された用紙Pが記録ヘッド17A乃至17Cと対向する位置を通過する画像形成期間Tmとして認識することができる。したがって、画像形成期間Tmでは、主制御部110Dは、記録ヘッド17A乃至17Cを画像データに基づいて駆動することにより、用紙Pに画像を形成できる。
【0062】
(3-5.フラッシングの回数制御)
上述したように、2種類の開口パターン(開口部列81Aおよび開口部列8B)の各開口部80は、長手方向(ベルト幅方向)の端部が重なるように配置されている。そのため、各開口部80の重複部分E(図5参照)に配置される吐出ノズル18では、フラッシング制御部110Bがフラッシングデータに基づいて一律にフラッシングを実行すると、必要以上のフラッシングが実行されることとなる。
【0063】
そこで、本実施形態では、フラッシング制御部110Bは、重複部分Eに対向するインク吐出口18を含む全てのインク吐出口18からインクを所定回数(同一回数)ずつ吐出させてフラッシングを実行する。具体的には、フラッシングカウント部30によりカウントされた各インク吐出口18のフラッシング回数が所定回数に到達したときは、所定回数に到達したインク吐出口18からのフラッシングを停止するフラッシングの回数制御を実行する。以下、フラッシングの回数制御について詳細に説明する。
【0064】
図7は、紙間フラッシングにおけるフラッシング回数の制御パターンを模式的に示す説明図である。図7に示す例では、フラッシングデータは、1回の紙間内に開口部列81A(図5参照)に対応する第1開口パターン80P1、80P1′と、開口部列81B(図5参照)に対応する第2開口パターン80P2、80P2′とを含む。第1開口パターン80P1、80P1′および第2開口パターン80P2、80P2′は、それぞれ開口部列81A、81Bの開口部80に対応する複数の領域80Rを含む。第1開口パターン80P1、80P1′または第2開口パターン80P2、80P2′に含まれる1つの領域80Rは、一つのインク吐出口18に対し最大で4回の吐出データ(図のハッチング丸印で表示)を生成可能な大きさになっている。
【0065】
ここで、第1搬送ベルト8の用紙搬送方向(矢印A方向)への移動によって第1開口パターン80P1、80P1′の領域80Rと第2開口パターン80P2、80P2′の領域80Rの両方に重なるインク吐出口を18A乃至18Dとする。各インク吐出口18A乃至18Dに吐出禁止区間を設けない場合、フラッシング制御部110Bは、第1開口パターン80P1、第2開口パターン80P2、第1開口パターン80P1′、第2開口パターン80P2′で各4回ずつ、計16回のフラッシングが行なう。そのため、例えば紙間において各インク吐出口18に必要なフラッシング回数を6回とすると、必要回数の2倍以上のフラッシングが行われることとなり、不要なインク消費が発生してしまう。
【0066】
そこで、例えばインク吐出口18Aでは、フラッシング制御部110Bは、第1開口パターン80P1で4回、第2開口パターン80P2で2回フラッシングした後は、吐出禁止区間(図の×印で表示)を設けて紙間でのフラッシングを終了する。
【0067】
但し、フラッシングデータは開口部80を開口部検知用CIS23で読取って生成されるため、フラッシングデータは、開口部80の形状のばらつき又は第1搬送ベルト8の蛇行等により開口部80の端部まで均一にはならない。その結果、図7に示すように第1開口パターン80P1におけるインク吐出口18B、18C、18Dの吐出データが4回未満となっている。
【0068】
その場合、フラッシング制御部110Bは、インク吐出口18Bであれば第1開口パターン80P1で1回、第2開口パターン80P2で4回、第1開口パターン80P1′で1回のフラッシングを行ない、紙間での6回のフラッシングを完了し、それ以降を吐出禁止区間とする。同様に、フラッシング制御部110Bは、インク吐出口18Cであれば第1開口パターン80P1で2回、第2開口パターン80P2で4回の計6回のフラッシングを行ない、インク吐出口18Dであれば第1開口パターン80P1で3回、第2開口パターン80P2で3回の計6回のフラッシングを行ない、それ以降を吐出禁止区間とする。
【0069】
また、フラッシング制御部110Bは、インク吐出口18Bとインク吐出口18Cの間に配置されたインク吐出口18では、第2開口パターン80P2で4回、第2開口パターン80P2′で2回の計6回のフラッシングを行ない、それ以降を吐出禁止区間とする。
【0070】
このように、インク吐出口18毎にフラッシング回数のカウントを行ない、所定回数に到達した後はフラッシングを終了することで、必要最小限のインク消費量で紙間フラッシングを実行できる。また、インク吐出口18毎にカウント結果を判断できるため、紙間フラッシング終了後に全てのインク吐出口18のうち少なくとも1つでフラッシング回数が必要回数に満たなかった場合は、紙間でのフラッシングが不十分であると判断することが可能となる。
【0071】
紙間でのフラッシングが不十分な場合には、次の用紙Pへの記録時に吐出不良が発生する可能性があるため、主制御部110Dは、例えば印字停止、又は、次の用紙Pを損紙(異常品)とするなどの処理を実施し、印字不良の混入を防止する。主制御部110Dはまた、操作パネル27にエラー表示を行ないユーザーにエラーの発生を通知する。或いは、主制御部110Dは、次の用紙Pの不要部分(余白部等)にインクを吐出することで、フラッシングが不十分であったインク吐出口18について必要なフラッシング回数を確保することもできる。
【0072】
図7に示すフラッシング回数の制御パターンでは、各インク吐出口18の6回の吐出データは、ベルト搬送方向(矢印A方向)に対してフラッシングデータを構成する第1開口パターン80P1、第2開口パターン80P2の下流端(図7の左端)から順に詰めてインクを吐出するパターンとなっている。即ち、フラッシング制御部110Bは、開口部列81A、81B(図5参照)の下流端から所定範囲内に各インク吐出口18から6回ずつインクを吐出させている。そのため、1つのフラッシングデータ内で極力早くフラッシングを完了することができ、インク吐出口18内で粘度の高くなったインクを迅速に吐出できる。
【0073】
図8は、本実施形態のプリンター100において実行されるフラッシング制御例を示すフローチャートである。以下、必要に応じて図1乃至図7を参照しながら、図8のステップに沿ってフラッシングの回数制御手順について詳細に説明する。
【0074】
PC等の外部機器がプリンター100に対して画像データとともに印刷コマンドを送信すると、画像データおよび印刷コマンドが通信部29を介してプリンター100に入力され、主制御部110Dは、印字を開始する(ステップS1)。次に、用紙Pが第1搬送ベルト8上に供給されると、開口部検知用CIS23が第1搬送ベルト8の開口部80を読取って、開口部読取データを取得する。データ生成部110Aは、取得された開口部読取データに基づいて、第1搬送ベルト8上で用紙Pと用紙搬送方向にずれた位置にある各開口部80に対して記録ヘッド17A乃至17Cからインクを吐出させるためのフラッシングデータを生成する(ステップS2)。
【0075】
次に、フラッシング制御部110Bは、用紙検知センサー22から出力される検知信号に基づいて、非画像形成期間Tfが認識されるか否かを判定する(ステップS3)。非画像形成期間Tfが認識されない場合は(ステップS3でNO)、紙間フラッシングの実行タイミングに到達していないため、主制御部110Dは、第1搬送ベルト8により搬送される用紙Pへの印字を継続する。
【0076】
非画像形成期間Tfが認識される場合は(ステップS3でYES)、フラッシング制御部110Bは、ステップS2で生成したフラッシングデータに基づいて、記録ヘッド17A乃至17Cにフラッシングを実行させる(ステップS4)。同時に、フラッシング制御部110Bは、フラッシングカウント部30に記録ヘッド17A乃至17Cの各インク吐出口18のフラッシング回数Nをカウントさせる(ステップS5)。
【0077】
次に、フラッシング制御部110Bは、フラッシング回数Nが所定回数N1(例えば6回)となるインク吐出口18が有るか否かを判定する(ステップS6)。フラッシング制御部110Bは、N=N1となるインク吐出口18が有る場合は(ステップS6でYES)、当該インク吐出口18からのフラッシングを停止する(ステップS7)。N=N1となるインク吐出口18がない場合は(ステップS6でNO)、フラッシング制御部110Bは、フラッシングデータに基づいて各インク吐出口18からのフラッシング動作を継続する。
【0078】
その後、フラッシング制御部110Bは非画像形成期間Tfが終了したか否か、即ちフラッシングを終了したか否かを判定する(ステップS8)。フラッシングを継続している場合(ステップS6でNO)、フラッシング制御部110Bは、ステップS5の処理に戻り、フラッシングの実行、フラッシング回数Nのカウント、およびN=N1となるインク吐出口18の有無の判定を継続する(ステップS5乃至S7)。
【0079】
フラッシングを終了した場合(ステップS8でYES)、フラッシング制御部110Bは、全てのインク吐出口18においてフラッシング回数N=N1となっているか否かを判定する(ステップS9)。全てのインク吐出口18でN=N1である場合(ステップS9でYES)、フラッシング制御部110Bは、フラッシングカウント部30に各インク吐出口18のフラッシング回数Nをリセット(N=0)させる(ステップS10)。そして、フラッシング制御部110Bは、印字が終了したか否かを判定し(ステップS11)、印字が継続している場合は(ステップS11でNO)ステップS2の処理に戻り、以下同様の手順を繰返す。印字が終了している場合は(ステップS11でYES)、フラッシング制御部110Bは、フラッシングの回数制御処理を終了する。
【0080】
ステップS9でN<N1であるインク吐出口18が存在する場合は(ステップS9でNO)、フラッシング制御部110Bは、主制御部110Dにエラー信号を送信し、主制御部110Dは、印字を停止するとともに、操作パネル27にエラー表示を行なう(ステップS12)。そして、主制御部110Dは、次の用紙Pを損紙としてサブ排出トレイ15Bへ排出し(ステップS13)、フラッシングカウント部30に各インク吐出口18のフラッシング回数Nをリセット(N=0)させて(ステップS14)、フラッシングの回数制御処理を終了する。
【0081】
(3-6.フラッシングの回数制御パターンの他の例)
図9は、紙間フラッシングにおけるフラッシング回数の他の制御パターンを模式的に示す説明図である。図9に示す例では、各インク吐出口18の6回の吐出データは、ベルト搬送方向(矢印A方向)に対してフラッシングデータを構成する第1開口パターン80P1、80P1′、第2開口パターン80P2、80P2′の上流側(図9の右側)から順に詰めてインクを吐出するパターンとなっている。即ち、フラッシング制御部110Bは、開口部列81A、81B(図5参照)の上流端から所定範囲内に各インク吐出口18から6回ずつインクを吐出させている。そのため、フラッシングデータ内で極力遅くフラッシングを完了することとなり、次の用紙Pに対するインク吐出動作の直前でフラッシング動作を完了することができる。従って、次の印字動作に対するフラッシングの効果をより高めることができる。
【0082】
図10は、紙間フラッシングにおけるフラッシング回数のさらに他の制御パターンを模式的に示す説明図である。図10に示す例では、各インク吐出口18の6回の吐出データは、ベルト搬送方向(矢印A方向)に対してフラッシングデータを構成する第1開口パターン80P1、80P1′、第2開口パターン80P2、80P2′の下流側(図10の左側)および上流側(図10の右側)の両方に分割してインクを吐出するパターンとなっている。即ち、フラッシング制御部110Bは、開口部列81A、81B(図5参照)の下流端および上流側の所定範囲内に各インク吐出口18から3回ずつ分割してインクを吐出させている。そのため、所定回数のフラッシング内で、早くフラッシングする部分(下流側3回)と遅くフラッシングする部分(上流側3回)とが存在することとなる。従って、インク吐出口18内で粘度の高くなったインクを迅速に吐出するとともに、次の印字動作に対するフラッシングの効果をより高めることができる。
【0083】
図9および図10に示す制御パターンでフラッシングを実行する場合、フラッシング制御部110Bは、生成されたフラッシングデータに基づいて、各インク吐出口18がどのタイミングでフラッシング(吐出)を行なうのかを予め設定しておく必要がある。例えば図9に示すパターンでは、フラッシング制御部110Bは、インク吐出口18Bは第2開口パターン80P2で1回、第1開口パターン80P1′で1回、第2開口パターン80P2′で4回の計6回のフラッシングを予定しておく。そして、フラッシング制御部110Bは、フラッシングカウント部30に実際のフラッシング回数Nをカウントさせ、N=N1(6回)となった時点でフラッシングを終了する。
【0084】
〔4.効果〕
以上のように、本実施形態では、開口部検知用CIS23が第1搬送ベルト8の各開口部80を直接読取って得られる開口部読取データを用い、開口部読取データにおいて、用紙Pと用紙搬送方向にずれて位置する開口部80の領域80Rに応じて(すなわち、領域80Rの位置、大きさ、及び形状に応じて)フラッシングデータがその場で(フラッシングの直前で)生成される。これにより、第1搬送ベルト8が蛇行した場合、又は、用いる第1搬送ベルト8ごとに開口部80の位置、大きさ、又は形状が異なる場合でも、フラッシング制御部110Bが、非画像形成期間Tfにおいて、上記フラッシングデータに基づいて記録ヘッド17A乃至17Cを駆動することにより、記録ヘッド17A乃至17Cの各インク吐出口18から吐出されたインクが、第1搬送ベルト8の各開口部80(例えば紙間に位置する各開口部80)を精度よく通過することが可能となる。つまり、フラッシングを行なうときの第1搬送ベルト8の走行状態および第1搬送ベルト8における各開口部80の位置等の影響を受けることなく、フラッシングを精度よく行なうことが可能となる。
【0085】
また、データ生成部110Aは、フラッシング用の元データを開口部読取データでマスクしたときに、元データにおいて開口部読取データ上の各開口部80の領域80Rと対応して(重なって)残るデータを、フラッシングデータとして生成する。これにより、各開口部80に対してインクを吐出させるためのフラッシングデータを確実に得ることができる。
【0086】
また、フラッシング用の元データは、第1搬送ベルト8の1周分のデータ長を有する。この場合、データ生成部110Aは、開口部読取データと元データとに基づき、第1搬送ベルト8の1周の間に存在する全ての非画像形成期間Tfにおいて、記録ヘッド17A乃至17Cにフラッシングを実行させることが可能なフラッシングデータを生成できる。
【0087】
また、インク吐出口18毎のフラッシング回数をカウントし、必要回数のみフラッシングを行なうことで、インクの吐出不良を抑制するとともに無駄なインクの消費を防止できる。さらに、必要回数のフラッシングが実行されたか否かをインク吐出口18毎に確認することができ、フラッシング不足時のエラー検知が可能となる。
【0088】
〔5.フラッシングデータの他の生成方法について〕
図11は、フラッシングデータの他の生成方法を模式的に示す説明図である。データ生成部110Aは、開口部読取データ上での各開口部80の領域80Rを縮小し、領域80Rの縮小後のデータと、上述した元データとに基づいて、フラッシングデータを生成してもよい。例えば、データ生成部110Aは、開口部読取データを反転させて、領域80Rだけを開口部読取データから抽出し、抽出した領域80Rを縮小し、縮小後のデータに元データを掛け合わせることにより、フラッシングデータを生成してもよい。
【0089】
フラッシング制御部110Bが、上記のようにして生成されたフラッシングデータに基づいて記録ヘッド17A乃至17Cを駆動すると、記録ヘッド17A乃至17Cから吐出されたインクは、第1搬送ベルト8の開口部80よりも狭い領域を通過する。これにより、フラッシングのときに、インクの吐出タイミングが所定のタイミングから少しずれたり、第1搬送ベルト8の搬送速度が所定の速度から少しずれたりしても、吐出されたインクが開口部80の周囲のベルト面に当たらずに開口部80を通過する確率が高くなる。したがって、吐出されたインクが第1搬送ベルト8の開口部80の周囲に付着して第1搬送ベルト8が汚れる事態を低減できる。
【0090】
このとき、第1搬送ベルト8において、複数の開口部80は、データ生成部110Aによって生成されたフラッシングデータに基づいてフラッシング制御部110Bが記録ヘッド17A乃至17Cを駆動したときに、記録ヘッド17A乃至17Cの全てのインク吐出口18から吐出されるインクが開口部80のいずれかを通過するパターンで配置されていることが望ましい。なお、このような複数の開口部80の配置は、上述したように開口部80の領域80Rを縮小してフラッシングデータを生成する場合に適用され得るが、図6で示すように領域80Rを縮小せずにフラッシングデータを生成する場合にも勿論適用可能である。
【0091】
第1搬送ベルト8において、複数の開口部80が上記パターンで配置されていると、データ生成部110Aが開口部読取データ上での開口部80の領域80Rを縮小してフラッシングデータを生成する場合でも、縮小せずにフラッシングデータを生成する場合でも、フラッシングの実行時には、記録ヘッド17A乃至17Cの全てのインク吐出口18から吐出されるインクが、複数の開口部80のいずれか、より詳しくは、開口部列81Aおよび開口部列81Bのいずれか一方の開口部80を必ず通過する。これにより、記録ヘッド17A乃至17Cの全てのインク吐出口18についてフラッシングを実行して、全てのインク吐出口18について、目詰まりの発生を低減できる。
【0092】
特に、開口部80の領域80Rを縮小してフラッシングデータを生成する場合、開口部列81Aの開口部80について縮小した領域と、開口部列81Bの開口部80について縮小した領域とが、搬送方向から見て重ならなくなりやすい。各縮小領域が搬送方向から見て重ならない場合、生成されたフラッシングデータに基づいて記録ヘッド17A乃至17Cを駆動したときに、吐出されるインクが開口部80を通過できないインク吐出口18が存在し、全てのインク吐出口18についてフラッシングを実行させることができなくなる。したがって、複数の開口部80を上記パターンで配置する構成は、特に、開口部80の領域80Rを縮小してフラッシングデータを生成する場合に非常に有効となる。
【0093】
〔6.フラッシングデータのさらに他の生成方法について〕
図12は、フラッシングデータのさらに他の生成方法を模式的に示す説明図である。データ生成部110Aは、用紙検知センサー22で検知された用紙Pが記録ヘッド17A乃至17Cと対向する位置を通過する画像形成期間Tmにおけるインクの吐出頻度に応じて、複数の非画像形成期間Tfに対して間欠的にフラッシングを記録ヘッド17A乃至17Cに実行させるためのフラッシングデータを生成してもよい。
【0094】
図12では例として、先頭から数えて1枚目の用紙Pと2枚目の用紙Pとの間の非画像形成期間をTf1とし、2枚目の用紙Pと3枚目の用紙Pとの間の非画像形成期間をTf2とし、3枚目の用紙Pと4枚目の用紙Pとの間の非画像形成期間をTf3としたとき、データ生成部110Aが、非画像形成期間Tf1およびTf3でのみフラッシングを実行させるフラッシングデータを生成する場合を示している。非画像形成期間Tf2ではフラッシングデータが生成されず、フラッシングが実行されない。このように、フラッシングが実行されない非画像形成期間Tf2を挟んで非画像形成期間Tf1およびTf3でフラッシングを行なうことを、ここでは、「間欠的」と呼んでいる。つまり、間欠的なフラッシングとは、フラッシングが実行されない非画像形成期間Tfを少なくとも1つ挟む2つの非画像形成期間Tfでフラッシングを実行する形態を指す。なお、時系列に並ぶ複数の期間に対して、少なくとも1つの期間を飛ばして行なう動作のことを、ここでは全て「間欠的」と呼ぶ。
【0095】
データ生成部110Aは、このようなフラッシングデータを、上述した元データを、非画像形成期間Tf1およびTf3に間欠的に割り当て、上記元データを開口部読取データでマスクすることによって生成できる。
【0096】
なお、画像形成期間Tmにおけるインクの吐出頻度は、例えば画像形成期間Tmにおいて画像データに応じて記録ヘッド17A乃至17Cにおける各インク吐出口18からのインクの吐出を制御する主制御部110Dが認識できる。つまり、主制御部110Dは、例えば、所定のインク吐出口18における所定時間内でのインク吐出回数を画像データに基づいて求めることにより、インク吐出口18から吐出されるインクの吐出頻度(吐出回数が所定回数よりも多いか否か)を判断できる。
【0097】
例えば、各画像形成期間Tmにおけるインクの吐出頻度が高いとき(吐出回数が所定回数よりも多いとき)、全ての非画像形成期間Tf1乃至Tf3でフラッシングを行なわなくても、インクの乾燥によるインク吐出口18の目詰まりを低減できる場合がある。上記のように、データ生成部110Aが、インクの吐出頻度に応じて、複数の非画像形成期間Tf1乃至Tf3に対して間欠的に、つまり、非画像形成期間Tf1およびTf3でフラッシングを実行させるためのフラッシングデータを生成することにより、上記フラッシングデータに基づいて記録ヘッド17A乃至17Cがフラッシングを実行したときに、非画像形成期間Tf1およびTf3においてフラッシングを間欠的に行なって、必要以上のフラッシングを抑えることができる。その結果、必要以上のフラッシングによる無駄なインク消費量の増大を抑えることができる。
【0098】
また、データ生成部110Aは、開口部読取データと、元データとに基づいて、フラッシングデータを生成するとともに、元データを複数の非画像形成期間Tf1乃至Tf3に対して間欠的に、つまり、非画像形成期間Tf1およびTf3に割り当てることにより、フラッシングデータを生成する。これにより、非画像形成期間Tf1およびTf3においてフラッシングを間欠的に行なうフラッシングデータを容易に生成できる。
【0099】
ところで、図13は、第1搬送ベルト8における開口部80の配置パターンを模式的に示している。データ生成部110Aは、第1搬送ベルト8における開口部80の用紙搬送方向の長さLと、開口部80の用紙搬送方向の配置周期Cと、非画像形成期間Tfでのフラッシングに必要なインク吐出口18のライン数Fとに基づいて、上述したフラッシングデータの、用紙Pの搬送方向の長さDを設定してもよい。なお、上記の長さLおよびDと、配置周期Cとは、インク吐出口18のライン数(=用紙搬送方向の吐出回数)で換算されるものとする。
【0100】
上記のように、L、C、D、Fをそれぞれ定義した場合、
D≧(F/L)×C(ただし、F/Lは小数点以下を切り上げた値とする)を満足すれば、記録ヘッド17A乃至17Cの全てのインク吐出口18を対象として、必要ライン数以上のフラッシングを行なうことができる。したがって、例えばD=(F/L)×Cを満足するように、フラッシングデータの用紙Pの搬送方向の長さDを設定することにより、1つの非画像形成期間Tfにおいて、必要最小限のインク吐出量で、全てのインク吐出口18を対象として、必要なフラッシングを行なうことができる。したがって、この場合は、必要以上のフラッシングによる無駄なインク消費量の増大を確実に抑えることができる。また、紙間が必要以上に長い場合でも、紙間の全てでフラッシングを行わなくて済み、上記と同様に、必要以上のフラッシングによる無駄なインク消費量の増大を確実に抑えることができる。なお、上記したフラッシングデータの長さDは、元データの搬送方向の長さをDに設定することによって実現できる。
【0101】
〔7.フラッシングデータのさらに他の生成方法について〕
図14は、フラッシングデータのさらに他の生成方法を模式的に示す説明図である。制御装置110の主制御部110Dは、フラッシング実行指定信号を出力してもよい。フラッシング実行指定信号は、画像形成期間Tmにおけるインクの吐出頻度に応じて、フラッシングの実行および停止を指定する信号である。この場合、データ生成部110Aは、開口部読取データと、元データと、フラッシング実行指定信号とに基づいて、フラッシングデータを生成してもよい。
【0102】
例えば、1枚目の用紙Pの画像形成期間Tmよりも前の期間を非画像形成期間Tf0としたとき、データ生成部110Aは、上述した元データを、全ての非画像形成期間Tf0乃至Tf3に割り当て、上記元データを開口部読取データでマスクして残るデータから、フラッシング実行指定信号がイネーブル(ハイレベル)の期間のデータを抽出することで、フラッシングデータを生成できる。なお、主制御部110Dは、インクの吐出頻度に応じて、フラッシング実行指定信号のイネーブルのタイミングおよびイネーブルの期間の長さを調整することが可能である。この場合、データ生成部110Aは、フラッシング実行指定信号に基づいて、フラッシングデータの生成タイミング(フラッシングの実施の有無)およびフラッシングデータの搬送方向の長さを調整することが可能となる。
【0103】
同図のように、フラッシング実行指定信号が非画像形成期間Tf1およびTf3でイネーブルとなる場合、結果的に、フラッシング制御部110Bは、非画像形成期間Tf1およびTf3においてフラッシングを間欠的に実行させる、図12と同様のフラッシングデータを得ることができる。したがって、フラッシング実行指定信号を用いてフラッシングデータを生成した場合でも、非画像形成期間Tf1およびTf3においてフラッシングを間欠的に行なって、必要以上のフラッシングを抑えることができる。その結果、必要以上のフラッシングによる無駄なインク消費量の増大を抑えることができる。
【0104】
〔8.その他〕
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記図5乃至図7で示した方法によりフラッシングデータを作成した場合でも、フラッシング制御部110Bは、開口部80の重複部分Eに位置するインク吐出口18A乃至18Dを含む全てのインク吐出口18についてフラッシングの回数制御を行なうことにより、各インク吐出口18について必要十分なフラッシングを実行することができ、インクの吐出不良を抑制するとともに無駄なインクの消費も抑制できる。
【0105】
また上記実施形態では、データ生成部110Aは、データ格納部110Cから読出したフラッシング用の元データを開口部読取データでマスクしたフラッシングデータを生成したが、データ生成部110Aがフラッシングデータを生成せずに、フラッシング制御部110Bは、予め記憶部28に記憶されたフラッシングデータに基づいて記録ヘッド17A乃至17Cを駆動することによってフラッシングを実行してもよい。なお、フラッシングカウント部30がフラッシング回数をカウントすることで、開口部80の端部まで均一なフラッシングデータにならない場合でも必要十分なフラッシング回数を確保できる。そのため、フラッシング回数を制御する本発明はフラッシングデータを生成してフラッシングを行なう場合に特に有効である。
【0106】
また上記実施形態では、用紙Pを、負圧吸引によって第1搬送ベルト8に吸着させて搬送したが、第1搬送ベルト8を帯電させ、用紙Pを第1搬送ベルト8に静電吸着させて搬送してもよい(静電吸着方式)。
【0107】
また上記実施形態では、インクジェット記録装置として、4色のインクを用いてカラーの画像を記録するカラープリンターを用いたが、ブラックのインクを用いてモノクロの画像を記録するモノクロプリンターに、本実施形態のフラッシングデータの生成およびフラッシング制御を適用することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、インクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14