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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】分取液体クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/16 20060101AFI20240709BHJP
   G01N 30/80 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G01N30/16 L
G01N30/80 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022575130
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2021044835
(87)【国際公開番号】W WO2022153721
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2021004336
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 康介
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-539398(JP,A)
【文献】特開2005-265805(JP,A)
【文献】特開2005-172829(JP,A)
【文献】特開平10-332660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液ポンプと、
前記送液ポンプに接続される流路切替バルブと、
前記流路切替バルブに接続される分離カラムと、
一端が前記分離カラムに接続されるとともに、他端が前記流路切替バルブに接続される検出器と、
両端が前記流路切替バルブに接続される吸引・吐出装置と、
を備え、
前記流路切替バルブは、前記送液ポンプの下流に前記吸引・吐出装置が接続されるとともに、前記吸引・吐出装置の下流に前記分離カラムが接続されるように流路が切り替えられる第1切替状態と、前記送液ポンプの下流に前記分離カラムが接続されるとともに、前記検出器の下流に前記吸引・吐出装置が接続されるように流路が切り替えられる第2切替状態とを切り替え可能であり、前記第1切替状態において、前記吸引・吐出装置は試料注入装置として動作し、前記第2切替状態において、前記吸引・吐出装置は分画装置として動作し、前記試料注入装置として動作する前記吸引・吐出装置によるサンプルの注入が完了した時点で、前記流路切替バルブが前記第1切替状態から前記第2切替状態に切り替えられる、分取液体クロマトグラフ。
【請求項2】
前記第1切替状態において前記試料注入装置として動作する前記吸引・吐出装置によって試料注入工程が実行され、前記試料注入工程の後、前記流路切替バルブが前記第2切替状態に切り替えられることにより分画工程が実行される、請求項1に記載の分取液体クロマトグラフ。
【請求項3】
前記吸引・吐出装置は、
前記サンプルを吸引または吐出するニードル、
を含み、
前記吸引・吐出装置が前記試料注入装置として動作するとき、前記ニードルはサンプル容器から前記サンプルを吸引し、前記吸引・吐出装置が前記分画装置として動作するとき、前記ニードルは前記分離カラムから流れ出る溶出液を回収容器に吐出する、請求項1または請求項2に記載の分取液体クロマトグラフ。
【請求項4】
前記第1切替状態において、前記検出器の下流には前記流路切替バルブを介してドレインポートが接続される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の分取液体クロマトグラフ。
【請求項5】
前記吸引・吐出装置が全量注入方式の試料注入装置として動作する、請求項4に記載の分取液体クロマトグラフ。
【請求項6】
前記第2切替状態において、前記吸引・吐出装置の下流には前記流路切替バルブを介してドレインポートが接続される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の分取液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離カラムから溶出した溶出液を回収する分取液体クロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルに含まれる成分を分析する装置として液体クロマトグラフが知られている。液体クロマトグラフは、送液ポンプ、試料注入装置、分離カラム、検出器などを備える。また、分離カラムにおいて分離された成分を含む溶出液を分画し、溶出液を複数の回収容器に分けて採取する分取液体クロマトグラフが知られている。分取液体クロマトグラフにおいては、溶出液を分画するための自動分画装置が用いられる。下記特許文献1には、目的成分を採取する分取液体クロマトグラフが開示されている。
【0003】
【文献】特開2016-38389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分取液体クロマトグラフにおいて、移動相にサンプルを注入する工程で、試料注入装置が用いられる。分取液体クロマトグラフにおいて、目的成分を含む溶出液を分画する工程で、自動分画装置が用いられる。したがって、分取液体クロマトグラフは、試料注入装置および自動分画装置の両方を組み込む必要があり、装置の構成部品が多くなり、装置コストも高くなっている。
【0005】
本発明の目的は、分取液体クロマトグラフにおいて、装置の構成部品を少なくするとともに、装置コストの低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に従う分取液体クロマトグラフは、送液ポンプと、送液ポンプに接続される流路切替バルブと、流路切替バルブに接続される分離カラムと、一端が分離カラムに接続されるとともに、他端が流路切替バルブに接続される検出器と、両端が流路切替バルブに接続される吸引・吐出装置とを備える。流路切替バルブは、送液ポンプの下流に吸引・吐出装置が接続されるとともに、吸引・吐出装置の下流に分離カラムが接続されるように流路が切り替えられる第1切替状態と、送液ポンプの下流に分離カラムが接続されるとともに、検出器の下流に吸引・吐出装置が接続されるように流路が切り替えられる第2切替状態とを切り替え可能であり、第1切替状態において、吸引・吐出装置は試料注入装置として動作し、第2切替状態において、吸引・吐出装置は分画装置として動作する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分取液体クロマトグラフにおいて、装置の構成部品を少なくするとともに、装置コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本実施の形態に係る分取液体クロマトグラフの全体図である。
図2図2は本実施の形態に係る吸引・吐出装置を示す図である。
図3図3は試料注入工程を実行中の分取液体クロマトグラフを示す図である。
図4図4は試料注入装置として動作する吸引・吐出装置を示す図である。
図5図5は試料注入装置として動作する吸引・吐出装置を示す図である。
図6図6は試料注入装置として動作する吸引・吐出装置を示す図である。
図7図7は分画工程を実行中の分取液体クロマトグラフを示す図である。
図8図8は自動分画装置として動作する吸引・吐出装置を示す図である。
図9図9は自動分画装置として動作する吸引・吐出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態に係る分取液体クロマトグラフについて説明する。
【0010】
(1)分取液体クロマトグラフの構成
図1は、本発明の実施の形態に係る分取液体クロマトグラフ10の構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態においては、分取液体クロマトグラフ10は、第1溶媒供給部1A、第2溶媒供給部1B、混合部2、吸引・吐出装置3、分離カラム4、検出器5および高圧流路切換バルブ6を備える。第1溶媒供給部1Aは、第1溶媒容器11Aおよび第1送液ポンプ12Aを備える。第2溶媒供給部1Bは、第2溶媒容器11Bおよび第2送液ポンプ12Bを備える。高圧流路切換バルブ6が本発明に係る流路切換バルブの例である。
【0011】
第1溶媒容器11Aは、移動相として用いられる水系溶媒あるいは有機溶媒を貯留する。第1送液ポンプ12Aは、第1溶媒容器11Aに貯留された溶媒を流路に圧送する。第2溶媒容器11Bは、移動相として用いられる水系溶媒あるいは有機溶媒を貯留する。第2送液ポンプ12Bは、第2溶媒容器11Bに貯留された溶媒を流路に圧送する。
【0012】
第1送液ポンプ12Aおよび第2送液ポンプ12Bの下流には、混合部2が接続される。混合部2は、第1送液ポンプ12Aにより圧送された溶媒と第2送液ポンプ12Bにより圧送された溶媒とを任意の割合で混合することにより種々の溶媒(移動相)を生成する。
【0013】
混合部2の下流には流路L1が接続される。流路L1の下流には高圧流路切換バルブ6が接続される。流路L1は、高圧流路切換バルブ6の第1ポートP1に接続される。高圧流路切換バルブ6は、6ポート2ポジションのバルブである。高圧流路切換バルブ6は、第1ポートP1および第2ポートP2が接続され、第3ポートP3および第4ポートP4が接続され、第5ポートP5および第6ポートP6が接続される第1切換状態と、第1ポートP1および第6ポートP6が接続され、第2ポートP2および第3ポートP3が接続され、第4ポートP4および第5ポートP5が接続される第2切換状態とを切換可能である。図1は、第2切換状態を示す。
【0014】
高圧流路切換バルブ6の第2ポートP2には、流路L2が接続される。流路L2の下流端には、吸引・吐出装置3が接続される。吸引・吐出装置3の構成については、後で詳しく説明する。吸引・吐出装置3の下流側には、流路L5が接続される。流路L5の下流端には、高圧流路切換バルブ6の第5ポートP5が接続される。
【0015】
高圧流路切換バルブ6の第6ポートP6には、流路L6が接続される。流路L6の下流端には、分離カラム4が接続される。分離カラム4には、移動相とともにサンプルが供給される。分離カラム4において、サンプルに含まれる目的成分が分離される。分離カラム4は、図示しないカラムオーブンに収容される。分離カラム4は、カラムオーブンによって分析メソッドにおいて設定された温度に維持される。
【0016】
分離カラム4の下流側には、流路を介して検出器5が接続される。検出器5は、分離カラム4において成分分離されたサンプルを検出する。検出器5としては、例えば、紫外可視分光光度計、ダイオードアレイ検出器、示差屈折率検出器などが用いられる。
【0017】
検出器5の下流側には、流路L3が接続される。流路L3の下流端には、高圧流路切換バルブ6の第3ポートP3が接続される。また、高圧流路切換バルブ6の第4ポートP4には、ドレインポートDが接続される。
【0018】
(2)吸引・吐出装置の構成
次に、図2を参照しながら、吸引・吐出装置3の構成について説明する。図2は、吸引・吐出装置3の構成を示す図である。吸引・吐出装置3は、高圧流路切換バルブ31、ニードル32、注入ポート33および計量ポンプ34を備える。本実施の形態における吸引・吐出装置3は、試料注入工程においては試料注入装置として動作し、分画工程においては、自動分画装置として動作する。
【0019】
高圧流路切換バルブ31は、6ポート2ポジションのバルブである。高圧流路切換バルブ31は、第1ポートS1および第2ポートS2が接続され、第5ポートS5および第6ポートS6が接続される第1切換状態と、第1ポートS1および第6ポートS6が接続され、第4ポートS4および第5ポートS5が接続される第2切換状態とを切換可能である。図2は、第2切換状態を示す。
【0020】
図2に示すように、第1ポートS1には、流路M1が接続される。流路M1の下流端には、ニードル32が接続される。第2ポートS2には、流路M2が接続される。流路M2の他端には計量ポンプ34が接続される。第4ポートS4には、流路M4が接続される。流路M4の上流端には、注入ポート33が接続される。高圧流路切換バルブ31の第5ポートS5には、流路L5が接続される。流路L5の他端は、図1に示すように、高圧流路切換バルブ6の第5ポートP5に接続される。高圧流路切換バルブ31の第6ポートS6には、流路L2が接続される。流路L2の他端は、図1に示すように、高圧流路切換バルブ6の第2ポートP2に接続される。
【0021】
(3)分取液体クロマトグラフの動作
次に、図3図9を参照しながら、分取液体クロマトグラフ10の動作について説明する。図3図6は、分取液体クロマトグラフ10が試料注入工程を実行している状態の図である。図7図9は、分取液体クロマトグラフ10が分画工程を実行している状態の図である。
【0022】
{3-1 試料注入工程}
試料注入工程について、J1工程~J3工程の3つの工程に分けて説明する。分取液体クロマトグラフ10が試料注入工程を実行するとき、吸引・吐出装置3は、試料注入装置(オートサンプラ)として動作する。図3に示すように、まず、J1工程に先立って、第1送液ポンプ12Aが駆動し、第1溶媒容器11Aに貯留されている移動相が流路に圧送される。また、第2送液ポンプ12Bが駆動し、第2溶媒容器11Bに貯留されている移動相が流路に圧送される。
【0023】
第1送液ポンプ12Aおよび第2送液ポンプ12Bにより圧送された移動相は、混合部2において、設定された混合比で混合される。混合部2において混合された移動相は、流路L1を通って高圧流路切換バルブ6に流入する。高圧流路切換バルブ6は、図3に示すように、試料注入工程においては、第1ポートP1および第2ポートP2が接続され、第3ポートP3および第4ポートP4が接続され、第5ポートP5および第6ポートP6が接続される第1切換状態となっている。これにより、第1ポートP1に流入した移動相は、第2ポートP2を介して流路L2に流入する。
【0024】
図4は、試料注入工程のJ1工程における吸引・吐出装置3を示す図である。図4で示すJ1工程においては、高圧流路切換バルブ31は、第1ポートS1および第2ポートS2が接続され、第5ポートS5および第6ポートS6が接続される第1切換状態となっている。また、J1工程において、ニードル32はサンプル容器35内に移動している。この状態で計量ポンプ34が駆動し、サンプル容器35内のサンプルがニードル32の先端から吸引される。吸引されたサンプルは、流路M1に保持される。図示省略されているが、流路M1にはサンプルループが設けられており、吸引されたサンプルは、流路M1の管路およびサンプルループで保持される。図4において、流路M1において黒色で塗られた部分は、サンプルが保持されている状態を示す。図4に示すように、J1工程においては、流路L2を流れる移動相は、第6ポートS6および第5ポートS5を介して流路L5に流入する。流路L5を流れる移動相は、図3に示すように、分離カラム4および検出器5を経由し、流路L3に流入する。流路L3を流れる移動相は、さらに、第3ポートP3および第4ポートP4を介して、ドレインポートDから排出される。
【0025】
図5で示す試料注入工程のJ2工程においても、高圧流路切換バルブ31は、第1切換状態となっている。また、J2工程において、ニードル32は注入ポート33内に移動する。このとき、流路M1内にサンプルは保持されている。図5において、流路M1において黒色で塗られた部分は、サンプルが保持されている状態を示す。J2工程においても、流路L2、流路L5を流れる移動相は、分離カラム4および検出器5を経由し、ドレインポートDから排出される。
【0026】
図6で示す試料注入工程のJ3工程においては、高圧流路切換バルブ31は、第1ポートS1および第6ポートS6が接続され、第4ポートS4および第5ポートS5が接続される第2切換状態となっている。J3工程において、高圧流路切換バルブ31が第2切換状態に切り替えられることにより、サンプルを保持している流路M1が、分離カラム4へと至る分析流路に組み込まれる。このように、本実施の形態の吸引・吐出装置3は、全量注入方式の試料注入装置として動作する。流路M1が分析流路に組み込まれることにより、流路M1に保持されているサンプルがニードル32の先端から吐出し、注入ポート33を介して流路M4に流れ込む。図6において、流路M4において黒色で塗られた部分は、サンプルが分析流路内に導入されている状態を示す。J3工程においては、サンプルが注入された移動相が第4ポートS4および第5ポートS5を介して流路L5に流入する。流路L5を流れるサンプルおよび移動相は、図3に示すように、高圧流路切換バルブ6の第5ポートP5および第6ポートP6を介して、流路L6に流入する。図3において、流路L5,L6において黒色で塗られた部分は、J3工程においてサンプルが分析流路内に導入されている状態を示す。
【0027】
J3工程において、流路L6を流れるサンプルおよび移動相は、図3に示すように、分離カラム4に供給される。分離カラム4を通過する間に、サンプルに含まれる成分が分離される。成分分離されたサンプルは、移動相とともに溶出液として検出器5に供給される。検出器5において、サンプルに含まれる成分の検出が行われる。検出器5から流れ出た溶出液(移動相および成分分離されたサンプル)は、流路L3、第3ポートP3および第4ポートP4を経由し、ドレインポートDから排出される。以上のとおり試料注入工程(J1工程~J3工程)が実行される。
【0028】
{3-2 分画工程}
分画工程について、F1工程~F2工程の2つの工程に分けて説明する。分取液体クロマトグラフ10が分画工程を実行するとき、吸引・吐出装置3は、自動分画装置として動作する。高圧流路切換バルブ6は、図7に示すように、分画工程においては、第1ポートP1および第6ポートP6が接続され、第2ポートP2および第3ポートP3が接続され、第4ポートP4および第5ポートP5が接続される第2切換状態となっている。例えば、試料注入工程における吸引・吐出装置3によるサンプルの注入が完了した時点で、高圧流路切換バルブ6が第1切換状態から第2切換状態に切り替えられる。これにより、分離カラム4から溶出した溶出液(移動相および成分分離されたサンプル)は、検出器5、流路L3、第3ポートP3、第2ポートP2を介して流路L2に流入する。図7において、流路L3,L2において黒色で塗られた部分は、F1工程において分離カラム4から溶出した溶出液を示す。
【0029】
図8は、分画工程のF1工程における吸引・吐出装置3を示す図である。図8で示すF1工程においては、高圧流路切換バルブ31は、第1ポートS1および第2ポートS2が接続され、第5ポートS5および第6ポートS6が接続される第1切換状態となっている。また、F1工程において、ニードル32は回収容器36内に移動している。F1工程においては、流路L2を通って流入する溶出液(移動相および成分分離されたサンプル)が第6ポートS6および第5ポートS5を介して流路L5に流入する。流路L5を流れる溶出液は、図7に示すように、第5ポートP5および第4ポートP4を介してドレインポートDから排出される。
【0030】
図9で示す分画工程のF2工程においては、高圧流路切換バルブ31は、第1ポートS1および第6ポートS6が接続され、第4ポートS4および第5ポートS5が接続される第2切換状態となっている。分画工程において、図7に示すように、流路L3を流れる溶出液は、第3ポートP3、第2ポートP2および流路L2を介して、自動分画装置として動作する吸引・吐出装置3に供給される。図9に示すように、流路L2を介して供給される溶出液は、第6ポートS6、第1ポートS1および流路M1を介して、回収容器36に回収される。これにより、分離カラム4から溶出した溶出液(移動相および成分分離されたサンプル)が回収容器36において回収される。図9において、流路M1において黒色で塗られた部分は、回収容器36に向かって流れる溶出液を示す。図示しない制御装置の制御により、複数の回収容器36が切り替えられることにより、時間方向に成分分離されたサンプルの溶出液が複数の回収容器36において回収される。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態の分取液体クロマトグラフ10は、吸引・吐出装置3を、試料注入装置または自動分画装置として動作させることができる。これにより、本実施の形態の分取液体クロマトグラフ10は、装置の構成部品を少なくすることができるとともに、装置コストの低減を図ることができる。高圧流路切換バルブ6が第1の切換状態に切り替えられて試料注入工程を実行するとき、および、高圧流路切換バルブ6が第2の切換状態に切り替えられて分画工程を実行するとき、いずれの場合であっても、吸引・吐出装置3に対して流路L2が上流側であり、流路L5が下流側となる。このような装置構成にすることによって、1つの吸引・吐出装置3を、試料注入装置または自動分画装置として動作させることが可能となる。
【0032】
上述したように、本実施の形態の吸引・吐出装置3は、全量注入方式の試料注入装置として動作する。つまり、ニードル32が分析流路中に組み込まれる構成である。これにより、分画工程においては、ニードル32を用いて、セプタム付きのバイアルにサンプルを直接排出することが可能である。
【0033】
また、多くの試料注入装置は、サンプルを安定保存するための冷却機能を備えている。これにより、吸引・吐出装置3が自動分画装置として動作するときには、試料注入装置が備える冷却機能を利用することができる。自動分画装置で回収した溶出液を、冷却機能を用いて安定保存することができる。
【0034】
従来は、試料注入装置と自動分画装置は別の装置であるため、自動分画装置で回収した溶出液を再分画することはできない。本実施の形態によれば、吸引・吐出装置3は、試料注入装置および自動分画装置として動作するため、回収した溶出液を分析流路に注入することが可能であり、新たな分析手法を提供することが可能となる。
【0035】
(4)他の実施の形態
上記の実施の形態において、分画工程においては、吸引・吐出装置3が、自動分画装置として動作する場合を例に説明した。他の実施の形態として、吸引・吐出装置3は、手動の分画装置として動作してもよい。この場合、オペレータの操作によって、ニードル32が、回収容器36内へ移動する。オペレータは、分離された成分ごとの溶出タイミングに合わせて回収容器36の交換を行えばよい。
【0036】
上記の実施の形態においては、分取液体クロマトグラフ10が混合部2を備える。これにより、分取液体クロマトグラフ10は、グラジエント分析などを実行することができる。他の実施の形態として、分取液体クロマトグラフ10は、1つの溶媒供給部だけを備え、混合部2を備えない構成としてもよい。
【0037】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する種々の要素を用いることもできる。
【0038】
(5)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0039】
(第1項)
本発明の一態様に係る分取液体クロマトグラフは、
送液ポンプと、
前記送液ポンプに接続される流路切替バルブと、
前記流路切替バルブに接続される分離カラムと、
一端が前記分離カラムに接続されるとともに、他端が前記流路切替バルブに接続される検出器と、
両端が前記流路切替バルブに接続される吸引・吐出装置と、を備え、
前記流路切替バルブは、前記送液ポンプの下流に前記吸引・吐出装置が接続されるとともに、前記吸引・吐出装置の下流に前記分離カラムが接続されるように流路が切り替えられる第1切替状態と、前記送液ポンプの下流に前記分離カラムが接続されるとともに、前記検出器の下流に前記吸引・吐出装置が接続されるように流路が切り替えられる第2切替状態とを切り替え可能であり、前記第1切替状態において、前記吸引・吐出装置は試料注入装置として動作し、前記第2切替状態において、前記吸引・吐出装置は分画装置として動作する。
【0040】
分取液体クロマトグラフの構成部品を少なくするとともに、装置コストの低減を図ることができる。
【0041】
(第2項)
第1項に記載の分取液体クロマトグラフにおいて、
前記第1切替状態において前記試料注入装置として動作する前記吸引・吐出装置によって試料注入工程が実行され、前記試料注入工程の後、前記流路切替バルブが前記第2切替状態に切り替えられることにより分画工程が実行されてもよい。
【0042】
流路切換バルブの切換動作により、吸引・吐出装置を試料注入装置および分画装置として動作させることが可能である。
【0043】
(第3項)
第1項または第2項に記載の分取液体クロマトグラフにおいて、
前記吸引・吐出装置は、
サンプルを吸引または吐出するニードル、を含み、
前記吸引・吐出装置が前記試料注入装置として動作するとき、前記ニードルはサンプル容器から前記サンプルを吸引し、前記吸引・吐出装置が前記分画装置として動作するとき、前記ニードルは前記分離カラムから流れ出る溶出液を回収容器に吐出してもよい。
【0044】
吸引・吐出装置が備えるニードルを試料注入工程および分画工程において利用することが可能である。
【0045】
(第4項)
第1項~第3項のいずれか一項に記載の分取液体クロマトグラフにおいて、
前記第1切替状態において、前記検出器の下流には前記流路切替バルブを介してドレインポートが接続されてもよい。
【0046】
第1切換状態において、分離カラムから流れ出る溶出液をドレインポートから排出させることができる。
【0047】
(第5項)
第4項に記載の分取液体クロマトグラフにおいて、
前記吸引・吐出装置が全量注入方式の試料注入装置として動作してもよい。
【0048】
サンプルを有効に利用することができる。
【0049】
(第6項)
第1項~第3項のいずれか一項に記載の分取液体クロマトグラフにおいて、
前記第2切替状態において、前記吸引・吐出装置の下流には前記流路切替バルブを介してドレインポートが接続されてもよい。
【0050】
第2切換状態において、分離カラムから流れ出る溶出液をドレインポートから排出させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9