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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/04 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
H01H50/04 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023007254
(22)【出願日】2023-01-20
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】内山 拓
(72)【発明者】
【氏名】東風 彬生
(72)【発明者】
【氏名】永田 寛明
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/177961(WO,A1)
【文献】特開平10-064398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
奥行方向の奥に配置される第一のフレームと、
奥行方向の手前に配置され、前記第一のフレームに嵌め合わされる第二のフレームと、
奥行方向に延びる巻き軸にコイルが巻かれ、前記第一のフレームに収容されるスプールと、を備え、
前記スプールは、
前記巻き軸よりも奥行方向の手前に設けられ、前記第一のフレームと前記第二のフレームとを嵌め合わせるときに、前記第一のフレームから押圧される第一の受圧部と、
前記第一の受圧部よりも奥行方向の手前に設けられ、前記第一のフレームと前記第二のフレームとを嵌め合わせるときに、前記第二のフレームから押圧される第二の受圧部と、を備え、
前記第一の受圧部、及び前記第二の受圧部の一方は、押圧されたときに弾性変形する可撓板で構成されていることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記第一の受圧部、及び前記第二の受圧部の他方は、押圧されたときに形状を維持する剛体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記第一の受圧部は、前記可撓板で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記第一の受圧部、及び前記第二の受圧部は、奥行方向から見て前記巻き軸の四方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記第一の受圧部、及び前記第二の受圧部は、四方に設けられた夫々が均等に押圧されることを特徴とする請求項4に記載の電磁接触器。
【請求項6】
前記第一のフレームは、
前記第一の受圧部を押圧する第一の押圧部を備え、
前記第二のフレームは、
前記第二の受圧部を押圧する第二の押圧部を備え、
前記第一の押圧部、及び前記第二の押圧部の一方は、前記第一の受圧部、及び前記第二の受圧部の一方の自由端側を押圧することを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項7】
前記第一の押圧部、及び前記第二の押圧部の一方は、前記第一の受圧部、及び前記第二の受圧部の一方に向かって凸となる凸状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電磁接触器。
【請求項8】
前記第一の受圧部、及び前記第二の受圧部の一方には、前記第一の押圧部、及び前記第二の押圧部の一方に向かって凸となる凸部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電磁接触器。
【請求項9】
前記凸部は、半球状に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁接触器は、特許文献1に示されるように、下部フレームに対して、固定鉄心、コイルスプール、バックスプリング、及び可動鉄心を収容し、上部フレームを嵌め合わせることで組み立てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4715412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電磁接触器の経年劣化として、開閉動作を繰り返しているうちに、内部構造のスプールにがたつきが生じることがある。
本発明の目的は、電磁接触器において、スプールのがたつきを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る電磁接触器は、第一のフレームと、第二のフレームと、スプールと、を備える。第一のフレームは、奥行方向の奥に配置される第二のフレームは、奥行方向の手前に配置され、第一のフレームに嵌め合わされる。スプールは、奥行方向に延びる巻き軸にコイルが巻かれ、第一のフレームに収容される。スプールは、第一の受圧部と、第二の受圧部と、を備える。第一の受圧部は、巻き軸よりも奥行方向の手前に設けられ、第一のフレームと第二のフレームとを嵌め合わせるときに、第一のフレームから押圧される。第二の受圧部は、第一の受圧部よりも奥行方向の手前に設けられ、第一のフレームと第二のフレームとを嵌め合わせるときに、第二のフレームから押圧される。第一の受圧部、及び第二の受圧部の一方は、押圧されたときに弾性変形する可撓板で構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第一の受圧部及び第二の受圧部の一方が可撓板で構成され、ばね性を有しているため、スプールのがたつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電磁接触器を示す図である。
図2】電磁接触器の断面図である。
図3】下部フレームを示す図である。
図4】上部フレームを示す図である。
図5】スプールを示す図である。
図6】スプールを示す図である。
図7】下部フレームを示す図である。
図8】上部フレームを示す図である。
図9】撓み代を示す図である。
図10】比較例のスプールを示す図である。
図11】変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。奥行方向を上下方向とし、奥を下、手前を上とすることもある。
図1は、電磁接触器11を示す図である。
ここでは、電磁接触器11を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示す。縦方向の一方は一次側で、他方は二次側である。電磁接触器11には、幅方向の一方から他方に向けて、三つの主端子、及び一つの補助端子が順に設けられ、一次側にコイル端子が設けられている。
【0010】
図2は、電磁接触器11の断面図である。
ここでは、電磁接触器11において、幅方向のうちR相の中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を、幅方向の一方から見た状態を示す。まず電磁接触器11の基本的な構造について説明する。電磁接触器11は、下部フレーム12(第一のフレーム)、上部フレーム13(第二のフレーム)、電磁石部14と、接点支え15と、を備えている。
下部フレーム12は、樹脂製であり、縦方向の両側、幅方向の両側、及び奥行方向の奥が閉塞され、奥行方向の手前が開放された容器状に形成されている。
上部フレーム13は、樹脂製であり、縦方向の両側、幅方向の両側、及び奥行方向の手前が閉塞され、奥行方向の奥が開放された容器状に形成され、下部フレーム12における奥行方向の手前に嵌め合わされている。
【0011】
電磁石部14は、下部フレーム12の内側に配置され、スプール21と、固定コア22と、可動コア23と、を備えている。
スプール21は、樹脂製であり、奥行方向に延びる筒状の巻き軸24に制御コイル25(コイル)が巻き付けられた枠体である。
固定コア22は、多数の鉄板を幅方向に積層してリベットでかしめた鉄心であり、幅方向から見て奥行方向の手前に開いた略E字状に形成されている。固定コア22は、縦方向の中央脚部が、スプール21における奥行方向の奥から巻き軸24の内方に嵌まり込んでいる。固定コア22には、幅方向に貫通した貫通孔に平板状のコア支え26が挿通されている。コア支え26には、幅方向の両端側に押さえゴム27が嵌め合わされている。押さえゴム27は、略直方体となる外形をしており、下部フレーム12における内側の床面とスプール21の底面との間に介在し、コア支え26を介して固定コア22を弾性的に支持している。
【0012】
可動コア23は、多数の鉄板を幅方向に積層し、リベットでかしめた鉄心であり、幅方向から見て奥行方向の奥に開いた略E字状に形成されている。可動コア23は、固定コア22に対向した状態で接点支え15に連結されており、縦方向における中央脚部の先端側が、スプール21における奥行方向の手前から巻き軸24の内方に嵌まり込んでいる。可動コア23は、スプール21との間に設けられたバックスプリング(図示省略)によって奥行方向の手前に向かって付勢されている。
接点支え15は、樹脂製であり、奥行方向に進退可能な状態で、上部フレーム13の内側に配置されている。
【0013】
上部フレーム13には、縦方向の両側に一対の固定接触子31が嵌め合わされている。一対の固定接触子31は、縦方向に延びる平板状であり、主端子用に三組、及び補助端子用に一組が幅方向に並んでいる。固定接触子31には、縦方向の内側に固定接点33が形成されている。
接点支え15には、接触ばね(図示省略)を介して可動接触子32が保持されている。可動接触子32は、縦方向に延びる板状であり、主端子用に三つ、補助端子用に一つが幅方向に並んでいる。可動接触子32には、縦方向の両側に一対の可動接点34が形成されている。
【0014】
上記の構成により、制御コイル25に通電がない非励磁の状態では、バックスプリングの反発力によって、可動コア23が奥行方向の手前に押し上げられて固定コア22から離間する。このとき、接点支え15の位置が奥行方向の手前となることで、固定接点33から可動接点34が離間した釈放状態となる。一方、制御コイル25に通電されて励磁されると、制御コイル25の磁力により、バックスプリングの反発力に逆らいながら可動コア23が奥行方向の奥へと引っ張られて固定コア22に吸着される。このとき、接点支え15の位置が奥行方向の奥となることで、固定接点33に可動接点34が接触した投入状態となる。
【0015】
次に、スプール21を押さえる構造について説明する。
図3は、下部フレーム12を示す図である。
図中の(a)は、下部フレーム12を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示し、図中の(b)は、下部フレーム12を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示す。下部フレーム12のうち奥行方向の手前となる開口縁の近傍には、スプール21を押圧する押圧部41(第一の押圧部)、及び押圧部42(第一の押圧部)が形成されている。押圧部41は、縦方向の一方で幅方向の両側に一つずつ形成されており、一対の押圧部41は、幅方向に反転させた略対称形状である。押圧部41は、基準面43から奥行方向の手前に向かって凸となる凸状に形成されており、奥行方向の手前を向いた端面は平面状に形成されている。押圧部42は、縦方向の他方で幅方向の両側に一つずつ形成されており、一対の押圧部42は、幅方向に反転させた略対称形状である。押圧部42は、基準面44から奥行方向の手前に向かって凸となる凸状に形成されており、奥行方向の手前を向いた端面は平面状に形成されている。一対の押圧部41、及び一対の押圧部42は、奥行方向から見て下部フレーム12における内側の略四隅に設けられている。
【0016】
図4は、上部フレーム13を示す図である。
図中の(a)は、上部フレーム13を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の奥から見た状態を示し、図中の(b)は、上部フレーム13を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の奥から見た状態を示す。上部フレーム13のうち奥行方向の奥となる開口縁の近傍には、スプール21を押圧する押圧部47(第二の押圧部)、及び押圧部48(第二の押圧部)が形成されている。押圧部47は、縦方向の一方で幅方向の両側に一つずつ形成されており、一対の押圧部47は、幅方向に反転させた略対称形状である。押圧部47は、奥行方向の奥を向いた端面は平面状に形成されている。押圧部48は、縦方向の他方で幅方向の両側に一つずつ形成されており、一対の押圧部48は、幅方向に反転させた略対称形状である。押圧部48は、奥行方向の奥を向いた端面は平面状に形成されている。一対の押圧部47、及び一対の押圧部48は、奥行方向から見て上部フレーム13における内側の略四隅に設けられている。
【0017】
図5は、スプール21を示す図である。
図中の(a)は、スプール21を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示し、図中の(b)は、スプール21を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の奥から見た状態を示す。
図6は、スプール21を示す図である。
図中の(a)は、スプール21を奥行方向の手前から見た状態を示し、図中の(b)は、スプール21を幅方向の一方から見た状態を示し、図中の(c)は、スプール21を奥行方向の奥から見た状態を示す。
【0018】
スプール21には、巻き軸24における奥行方向の奥に下部フランジ51が形成され、巻き軸24における奥行方向の手前に上部フランジ52が形成されている。下部フランジ51には、奥行方向の奥を向いた底面のうち縦方向の中央で幅方向の両側に、凸部53が一つずつ形成されている。上部フランジ52には、幅方向の両側に、縦方向の一方に向かって延びる縦桁54が一つずつ形成されている。各縦桁54には、コイル端子55が一つずつ嵌め込まれており、コイル端子55には、縦方向の他端に絡げ部56が形成されている。一方のコイル端子55に形成された絡げ部56には、制御コイル25の一端がろう付けされてあり、他方のコイル端子55に形成された絡げ部56には、制御コイル25の他端がろう付けされている。
【0019】
上部フランジ52には、奥行方向から見て巻き軸24の四方に、押さえ部61、及び押さえ部62が形成されている。
押さえ部61は、縦方向の一方で幅方向の両側に一つずつ形成されており、これらは互いに幅方向に反転させた略対称形状である。押さえ部61は、縦方向の外側、及び幅方向の外側が開放された略中空構造であり、奥行方向に互いに離間した受圧部63(第一の受圧部)、及び受圧部64(第二の受圧部)が形成されている。受圧部63は、奥行方向の奥に配置されており、縦方向の内側及び幅方向の内側が支持され、奥行方向に押圧されたときに弾性変形する平板状の可撓板で構成されている。受圧部63のうち奥行方向の奥を向いた端面が受圧面となり、縦方向及び幅方向に沿った平面となる。受圧部64は、奥行方向の手前に配置されており、縦方向の内側及び幅方向の内側が支持され、且つ壁やリブによって補強され、奥行方向に押圧されても形状を維持する剛性の高い剛体で構成されている。受圧部64のうち奥行方向の手前を向いた端面が受圧面となり、縦方向及び幅方向に沿った平面となる。
【0020】
押さえ部62は、縦方向の他方で幅方向の両側に一つずつ形成されており、これらは互いに幅方向に反転させた略対称形状である。押さえ部62は、縦方向の外側、及び幅方向の外側が開放された略中空構造であり、奥行方向に互いに離間した受圧部65(第一の受圧部)、及び受圧部66(第二の受圧部)が形成されている。受圧部65は、奥行方向の奥に配置されており、縦方向の内側及び幅方向の内側が支持され、奥行方向に押圧されたときに弾性変形する平板状の可撓板で構成されている。受圧部65のうち奥行方向の奥を向いた端面が受圧面となり、縦方向及び幅方向に沿った平面となる。受圧部66は、奥行方向の手前に配置されており、縦方向の内側及び幅方向の内側が支持され、且つ壁やリブによって補強され、奥行方向に押圧されても形状を維持する剛性の高い剛体で構成されている。受圧部66のうち奥行方向の手前を向いた端面が受圧面となり、縦方向及び幅方向に沿った平面となる。
【0021】
図7は、下部フレーム12を示す図である。
ここでは、下部フレーム12を奥行方向の手前から見た状態を示す。電磁接触器11を組み立てると、スプール21における受圧部63の自由端側に、下部フレーム12における押圧部41の端部が接触し、スプール21における受圧部65の自由端側に、下部フレーム12における押圧部42の端部が接触する。受圧部63の自由端側とは、縦方向の一方で且つ幅方向の外側であり、受圧部65の自由端側とは、縦方向の他方で且つ幅方向の外側である。ここでは、スプール21の上部フランジ52に形成された受圧部63及び受圧部65を太い点線で示してある。また、下部フレーム12の押圧部41とスプール21の受圧部63が接触する領域、及び下部フレーム12の押圧部42とスプール21の受圧部65が接触する領域を、網掛けで示してある。
【0022】
図8は、上部フレーム13を示す図である。
ここでは、上部フレーム13を奥行方向の手前から見た状態を示す。電磁接触器11を組み立てると、スプール21の受圧部64に上部フレーム13の押圧部47が接触し、スプール21の受圧部66に上部フレーム13の押圧部42が接触する。ここでは、スプール21の上部フランジ52に形成された受圧部64及び受圧部66を太い点線で示してある。また、上部フレーム13の押圧部47とスプール21の受圧部64が接触する領域、及び上部フレーム13の押圧部48とスプール21の受圧部66が接触する領域を、網掛けで示してある。
【0023】
図9は、撓み代を示す図である。
ここでは、電磁接触器11において、幅方向のうちR相の中心を通り、縦方向及び奥行方向に沿った断面を、幅方向の一方から見た状態を示す。
図中の(a)は、押さえ部61の拡大断面を示す。下部フレーム12と上部フレーム13とを嵌め合わせて固定すると、縦方向の一方において、押さえ部61が下部フレーム12と上部フレーム13との間に挟まれて保持される。受圧部64は剛体であるため、押圧部47から押圧されても形状を維持する。一方、受圧部63は可撓板であるため、押圧部41から押圧されると弾性変形する。受圧部63と押圧部41とが奥行方向にオーバーラップした量が、受圧部63の撓み代L1となる。
【0024】
図中の(b)は、下部フレーム12と上部フレーム13との間に挟まれた押さえ部62の拡大断面を示す。下部フレーム12と上部フレーム13とを嵌め合わせて固定すると、縦方向の他方において、押さえ部62が下部フレーム12と上部フレーム13との間に挟まれて保持される。受圧部66は剛体であるため、押圧部48から押圧されても形状を維持する。一方、受圧部65は可撓板であるため、押圧部42から押圧されると弾性変形する。受圧部65と押圧部42とが奥行方向にオーバーラップした量が、受圧部65の撓み代L2となる。
受圧部63及び受圧部65、並びに受圧部64及び受圧部66は、四方に設けられた夫々が均等に押圧されるように、配置や板厚が設定されている。
【0025】
《作用効果》
次に、実施形態の主要な作用効果について説明する。
電磁接触器11は、下部フレーム12と、上部フレーム13と、スプール21と、を備えている。下部フレーム12は、奥行方向の奥に配置される。上部フレーム13は、奥行方向の手前に配置され、下部フレーム12に嵌め合わされる。スプール21は、奥行方向に延びる巻き軸24に制御コイル25が巻かれ、下部フレーム12に収容される。スプール21は、受圧部63及び受圧部65と、受圧部64及び受圧部66と、を備えている。受圧部63及び受圧部65は、巻き軸24よりも奥行方向の手前に設けられ、下部フレーム12と上部フレーム13とを嵌め合わせるときに、下部フレーム12から押圧される。受圧部64及び受圧部66は、受圧部63及び受圧部65よりも奥行方向の手前に設けられ、下部フレーム12と上部フレーム13とを嵌め合わせるときに、上部フレーム13から押圧される。受圧部63及び受圧部65は、押圧されたときに弾性変形する可撓板で構成されている。このように、受圧部63及び受圧部65が可撓板で構成され、ばね性を有しているため、スプール21のがたつきを抑制し、摩耗紛によって接点の動作不良を招くことを抑制できる。
【0026】
なお、受圧部63及び受圧部65を、巻き軸24よりも奥行方向の奥にある下部フランジ51に設けることも考えられる。しかしながら、制御コイル25が巻かれた下部フランジ51を撓ませることは、制御コイル25に不必要な外力を与えることになる。また、下部フランジ51の底面は、凸部53を介して下部フレーム12における内側の床面に接触しており、下部フランジ51を撓ませることは、接点支え15の位置、延いては接点ワイプ量にも影響を与えることになる。したがって、受圧部63及び受圧部65を、巻き軸24よりも奥行方向の奥に設けることと比較して、巻き軸24よりも奥行方向の手前に設けることには優位性がある。
【0027】
受圧部64及び受圧部66は、押圧されたときに形状を維持する剛体で構成されている。これにより、スプール21における奥行方向の位置を、上部フレーム13の押圧部47及び押圧部48に接触した位置に安定させることができる。すなわち、スプール21の押さえ部61及び押さえ部62を、奥行方向の奥でも手前でも弾性的に支持すると、スプール21における奥行方向の位置が不安定になってしまう。こうした事態を防ぐために、受圧部64及び受圧部66を剛体で構成している。
受圧部63及び受圧部65が可撓板で構成されている。これにより、絡げ部56にろう付けされた制御コイル25に対して、不必要な外力が作用することを防げる。図6の(b)に示すように、絡げ部56は、受圧部63よりも受圧部64に近い位置にあるため、受圧部64に弾性変形が生じると制御コイル25に不必要な外力が作用してしまう。こうした事態を防ぐために、受圧部64及び受圧部66ではなく、受圧部63及び受圧部65を可撓板で構成している。
【0028】
受圧部63及び受圧部65、及び受圧部64及び受圧部66は、奥行方向から見て巻き軸24の四方に設けられている。これにより、スプール21を安定して保持することができる。
受圧部63及び受圧部65、及び受圧部64及び受圧部66は、四方に設けられた夫々が均等に押圧される。これにより、スプール21における幅方向に沿った軸回りの傾きや縦方向に沿った軸周りの傾きを抑制することができる。縦方向及び幅方向に沿った平面に対するスプール21の平行度は、接点の接触タイミングや接触圧力に影響する重要な要素となる。すなわち、接点の接触タイミングや接触圧力は、スプール21が幅方向に沿った軸周りに傾くと電源側と負荷側でアンバランスが生じ、スプール21が縦方向に沿った軸周りに傾くとR相側とT相側でアンバランスが生じる。こうした事態を防ぐために、受圧部63及び受圧部65、並びに受圧部64及び受圧部66は、四方に設けられた夫々が均等に押圧されるように構成している。
【0029】
下部フレーム12は、受圧部63及び受圧部65を押圧する押圧部41及び押圧部42を備えている。上部フレーム13は、受圧部64及び受圧部66を押圧する押圧部47及び押圧部48を備えている。押圧部41及び押圧部42は、受圧部63及び受圧部65の自由端側を押圧する。これにより、下部フレーム12と上部フレーム13とを嵌め合わせるときに、受圧部63及び受圧部65を効果的に弾性変形させることができる。
押圧部41及び押圧部42は、受圧部63及び受圧部65に向かって凸となる凸状に形成されている。これにより、下部フレーム12と上部フレーム13とを嵌め合わせるときに、受圧部63及び受圧部65に対する接触面積を小さくして効果的に押圧することができる。
【0030】
次に、比較例について説明する。
図10は、比較例のスプール71を示す図である。
基本的な構造は、前述した実施形態と同様であるため、共通する部分については同一符号を付し、詳細な説明は省略する。図中の(a)は、スプール71を、縦方向の他方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示し、図中の(b)は、スプール71を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示す。上部フランジ52には、奥行方向から見て巻き軸24の四方に、コーナ部72及びコーナ部73が形成されている。コーナ部72及びコーナ部73は、奥行方向に押圧されても形状を維持する剛体で構成されており、組立時に下部フレーム12及び上部フレーム13から挟まれたときに、何れか一方に対して0.1~0.2mm程度の僅かな隙間ができるように構成されていた。そのため、経年劣化として、開閉動作を繰り返しているうちに、内部構造のスプール71にがたつきが生じ、摩耗紛によって接点の動作不良を招くことが懸念されていた。
【0031】
《変形例》
実施形態では、押圧部41及び押圧部42を凸状に形成する構成について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、受圧部63及び受圧部65に、押圧部41及び押圧部42に向かって凸となる凸部を形成してもよい。さらに、凸部を半球状に形成してもよい。
図11は、変形例を示す図である。
受圧部63には、押圧部41に向かって凸となる半球状の凸部81を形成している。ここでは受圧部63だけを示しているが、受圧部65についても同様とする。このように、受圧部63に凸部81を形成することで、スプール21における縦方向及び幅方向の位置が僅かに変位しても、受圧部63が押圧部41から押圧される位置が安定する。したがって、四方に設けられた受圧部63及び受圧部65を均等に押圧することができる。また、凸部81を半球状に形成することで、接触面積を小さくできる。したがって、受圧部63及び受圧部65に対して、より効果的に荷重を加えることができ、且つ押圧部41及び押圧部42から押圧される位置をより安定させることができる。
【0032】
実施形態では、押さえ部61及び押さえ部62のうち、奥行方向の奥となる受圧部63及び受圧部65を可撓板にし、奥行方向の手前となる受圧部64及び受圧部66を剛体にしているが、これに限定されるものではない。すなわち、受圧部63及び受圧部65か、受圧部64及び受圧部66の一方を可撓板で構成し、他方を剛体で構成することができる。したがって、押さえ部61及び押さえ部62のうち、奥行方向の手前となる受圧部64及び受圧部66を可撓板にし、奥行方向の奥となる受圧部63及び受圧部65を剛体にしてもよい。
【0033】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0034】
11…電磁接触器、12…下部フレーム、13…上部フレーム、14…電磁石部、21…スプール、22…固定コア、23…可動コア、24…巻き軸、25…制御コイル、27…押さえゴム、31…固定接触子、32…可動接触子、33…固定接点、34…可動接点、41…押圧部、42…押圧部、43…基準面、44…基準面、47…押圧部、48…押圧部、51…下部フランジ、52…上部フランジ、53…凸部、54…縦桁、55…コイル端子、56…絡げ部、61…押さえ部、62…押さえ部、63…受圧部、64…受圧部、65…受圧部、66…受圧部、71…スプール、72…コーナ部、73…コーナ部、81…凸部
【要約】
【課題】電磁接触器において、スプールのがたつきを抑制する。
【解決手段】スプール21は、受圧部63及び受圧部65と、受圧部64及び受圧部66と、を備える。受圧部63及び受圧部65は、巻き軸24よりも奥行方向の手前に設けられ、下部フレーム12と上部フレーム13とを嵌め合わせるときに、下部フレーム12から押圧される。受圧部64及び受圧部66は、受圧部63及び受圧部65よりも奥行方向の手前に設けられ、下部フレーム12と上部フレーム13とを嵌め合わせるときに、上部フレーム13から押圧される。受圧部63及び受圧部65は、押圧されたときに弾性変形する可撓板で構成されている。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11