(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】金網積層多孔体、および、多孔体含有パイプ
(51)【国際特許分類】
F28F 1/40 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
F28F1/40 Q
(21)【出願番号】P 2023016693
(22)【出願日】2023-02-07
【審査請求日】2023-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】川合 俊輔
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022433(JP,A)
【文献】特開平01-244285(JP,A)
【文献】特開平09-229575(JP,A)
【文献】特開2006-130883(JP,A)
【文献】特開平07-024227(JP,A)
【文献】特開2011-031482(JP,A)
【文献】特開昭54-048382(JP,A)
【文献】特開2005-030704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/40
F28F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器に用いられる金網積層多孔体であって、
目開きおよび線径が同一とされた金網が間隔を開けて、かつ、積層方向に隣り合う金網が相対的に回転して積層された構造とされ、前記金網の目開きの開口長さが0.5mm以上0.7mm以下の範囲内とされていることを特徴とする金網積層多孔体。
【請求項2】
積層方向に隣り合う前記金網同士の間隔が0.5mm以上0.6mm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の金網積層多孔体。
【請求項3】
パイプ体の内部に請求項1または請求項2に記載の金網積層多孔体が配設されており、
前記金網積層多孔体は、前記パイプ体の延在方向に前記金網が積層されるように配置されていることを特徴とする多孔体含有パイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金網が積層された構造の金網積層多孔体、および、この金網積層多孔体を内部に配設した多孔体含有パイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属多孔体は、高比表面積・高開気孔率を有することから、フィルターや電極集合体、消音部材、熱交換器用部材などに利用されている。
ここで、スターリングサイクル機器などの蓄冷器や排熱回収機器のマトリクス材として用いられる金属多孔体においては、圧力損失が小さく、伝熱性能の優れたものが求められている。
パルス管冷凍機に搭載される熱交換器では、金網もしくは円形や角形の貫通孔を配列穿設したパンチングプレートを積層した多孔体を用い、熱交換器内の作動ガスの整流効果を高めつつ、冷却などの熱交換効率を向上させる種々の取り組みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、目の粗さおよび線径の異なる金網を積層させた構造を整流器として用いたパルス管冷凍機が提案されている。
また、特許文献2においては、金属製金網などの多孔体と金属製リングとを交互に積層し、加圧した拡散接合で作製した接合型多孔体を用い、作動ガスの整流能力および熱交換能力をともに向上させるような熱交換器が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3においては、異なる網目サイズおよび材種の金網同士を積層させ、金網接触部を拡散接合させた積層体の熱交換器に関する技術が開示されている。
また、特許文献4においては、金網間に隙間を維持するためのスペーサを挿入し、隙間を設けて金網を配置することで作動ガスの整流効果のバラつきを低減し、冷却効率の向上を図る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-349981号公報
【文献】特開2005-030704号公報
【文献】特開2011-149601号公報
【文献】特開2014-228171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1~4に記載されているように、金網などを積層した構造の金網積層多孔体を用いた熱交換器においては、加圧した拡散接合による十分な密着で、接合部の熱抵抗を小さくできるが、金網の積層のさせ方、配列状況に関しては特に言及はなく、積層のさせ方によっては、金網の隙間を摩擦抵抗なく内部を流通する流体が通過してしまうことで、低い圧力損失は実現できるが、熱伝達能力に乏しい熱交換器となる懸念があった。
【0007】
また、積層時の金網配置のわずかな位置ずれが、圧力損失および熱伝達率などの性能にどの程度の変化を及ぼすかについて、検討されておらず、積層時の金網配置の位置ずれが性能変化につながる懸念があった。
さらに、特許文献3,4のように、複数の異なる網目サイズや金属材種の金網を積層させるためには、煩雑な作成手順が必要となり、製造にあたって工数や費用の増加の懸念があった。
【0008】
本発明は、以上のような事情を背景としてなされたものであって、金網積層時の金網の積層のさせ方を変えた場合においても高い熱伝達率と低い圧力損失を示し、かつ、積層のさせ方の違いによって、圧力損失と熱伝達率で決まる熱伝達性能に変動が生じない金網積層多孔体、および、多孔体含有パイプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の態様1の金網積層多孔体は、熱交換器に用いられる金網積層多孔体であって、目開きおよび線径が同一とされた金網が間隔を開けて、かつ、積層方向に隣り合う金網が相対的に回転して積層された構造とされ、前記金網の目開きの開口長さが0.5mm以上0.7mm以下の範囲内とされていることを特徴としている。
【0010】
本発明の態様1の金網積層多孔体によれば、目開きの開口長さを0.5mm以上0.7mm以下の範囲内とすることで、流通する流体と金網線との間の良好な熱伝導を維持しつつ、流通経路を確保し、積層のさせ方によって金網線との衝突回数が過度に変化しにくくなることで、高い熱伝達率と低い圧力損失の性能を示すとともに、積層のさせ方の違いによって、圧力損失と熱伝達率によって決まる熱伝達性能を変動させないことができる。
さらに、目開きおよび線径が同一とされた金網が間隔を開けて、かつ、積層方向に隣り合う金網が相対的に回転して積層された構造とされているので、比較的容易に金網積層多孔体を製造することが可能となる。
【0011】
本発明の態様2の金網積層多孔体は、本発明の態様1の金網積層多孔体において、積層方向に隣り合う前記金網同士の間隔が0.5mm以上0.6mm以下の範囲内であることを特徴としている。
本発明の態様2の金網積層多孔体によれば、積層方向に隣り合う前記金網同士の間隔が0.5mm以上0.6mm以下の範囲内とされているので、軽量化および小型化を図ることができるとともに、流体の整流効果を確実に奏功せしめることが可能となる。
【0012】
本発明の態様3の多孔体含有パイプは、パイプ体の内部に本発明の態様1または態様2の金網積層多孔体が配設されており、前記金網積層多孔体は、前記パイプ体の延在方向に前記金網が積層されるように配置されていることを特徴としている。
【0013】
本発明の態様3の多孔体含有パイプによれば、パイプ体の内部に本発明の態様1または態様2の金網積層多孔体が配設されているので、パイプ体に流体を流すことで、金網積層時の金網の積層のさせ方を変えた場合においても、高い熱伝達性能を得ることができるとともに、圧力損失が小さく、かつ、積層のさせ方の違いによって、圧力損失と熱伝達率で決まる熱伝達性能を変動させないことが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金網積層時の金網の積層のさせ方を変えた場合においても高い熱伝達率と低い圧力損失を示し、かつ、積層のさせ方の違いによって、圧力損失と熱伝達率で決まる熱伝達性能に変動が生じない金網積層多孔体、および、多孔体含有パイプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態である多孔体含有パイプの概略説明図である。
【
図2】本発明の実施形態である多孔体含有パイプに備えられた金網積層多孔体の概略説明図である。
【
図3】本発明の実施形態である金網積層多孔体を構成する金網の概略説明図である。
【
図4】本発明の実施形態である金網積層多孔体において積層方向に隣り合う金網同士の回転角度を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態である金網積層多孔体、および、多孔体含有パイプについて、添付した図面を参照して説明する。
なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態である金網積層多孔体、および、多孔体含有パイプは、例えば、熱交換器として用いられるものである。
【0017】
図1に示すように、本実施形態である多孔体含有パイプ10は、パイプ体11と、このパイプ体11の内部に配設された本実施形態である金網積層多孔体20と、を備えた構造とされている。
ここで、本実施形態では、
図1に示すように、金網積層多孔体20がパイプ体11の内部に充填されており、金網積層多孔体20の外周面とパイプ体11の内周面とが接合された構造とされている。
【0018】
本実施形態である金網積層多孔体20においては、
図2(a)に示すように、目開きおよび線径が同一とされた金網21,・・・,21が間隔をあけて、かつ、積層方向に隣り合う金網21,21が相対的に回転して積層された構造とされている。1つの金網21は、
図3に示すように、複数の金網線22が間隔を開けて編み込まれた構造とされている。また、隣り合う金網21、21間の回転角度θと金網構造の関係を
図4に示す。
回転角度θの大きさによって、積層のさせ方の異なる金網積層多孔体を作製することができる。このとき、積層のさせ方の違いによる金網積層多孔体の違いは、
図2(b)に示すように、金網積層多孔体20における複数の金網21の金網線22を積層方向に直交する射影面に射影した際に、射影面における複数の金網21の金網線22の射影面積が占める割合で表現することができる。
【0019】
ここで、本実施形態である多孔体含有パイプ10においては、金網積層多孔体20は、パイプ体11の延在方向に前記金網が積層されるように配置されている。
よって、本実施形態である多孔体含有パイプ10においては、金網の積層のさせ方の違いは、パイプ体11の延在方向からみて、パイプ体11の開口面における複数の金網21の金網線22の占める割合で数値評価される。
【0020】
パイプ体11の開口面における複数の金網21の金網線22の占める割合が大きくなるように回転角度θを設定した場合には、パイプ体11の内部を流通する流体(液体やガス)は、金網21の金網線22と効率的に衝突することになり、高い熱伝達率が得られる。その一方で、金網線22との衝突回数が多くなり、金網線22との衝突に伴う流体流れの分岐や摩擦損失によって、圧力損失も高くなる。
その一方で、パイプ体11の開口面における複数の金網21の金網線22の占める割合が小さくなるように回転角度θを設定した場合には、パイプ体11の内部を流通する流体(液体やガス)は、金網21の金網線22と衝突する機会が少なく、低い圧力損失と低い熱伝達率が得られる。
【0021】
本実施形態である金網積層多孔体20を構成する金網21は、
図3に示すように、複数の金網線22が間隔を開けて編み込まれた構造とされており、金網21の目開きの開口長さLが0.5mm以上0.7mm以下の範囲内とされている。
なお、本実施形態においては、
図3に示すように、複数の金網線22によって正方形の開口部が形成されており、金網21の目開きの開口長さLは、開口部がなす正方形の一辺の長さとされている。
ここで、正方形の開口部形状はあくまで一例であり、開口部が長方形や多角形であっても良い。その際は、その形状で計算される水力等価直径を開口長さLと定義して用いることが好ましい。例えば、長辺aと短辺bを持つ長方形の水力等価直径C=(2ab)/(a+b)が開口長さLとなる。
【0022】
金網21の目開きの開口長さLが0.5mm以上とされている場合には、流通経路を確保することで、パイプ体11の内部を流通する流体の圧力損失が大きくなり過ぎることを確実に抑制することが可能となる。一方、金網21の目開きの開口長さLが0.7mm以下とされている場合には、流通する流体と金網線との間の良好な熱伝導を維持しつつ、流通経路を確保し、積層のさせ方によって金網線との衝突回数が過度に変化しにくくなることで、積層のさせ方によって圧力損失と熱伝達率で決まる熱伝達性能を変動させないことができる。
【0023】
また、本実施形態である金網積層多孔体20においては、
図2(a)に示すように、積層方向に隣り合う金網21,21の間隔Pが0.2mm以上1.1mm以下の範囲内であることが好ましい。
積層方向に隣り合う金網21,21の間隔Pが0.2mm以上である場合には、流通する流体が金網と金網との間で整流化され、流れが均一化することになる。これにより、さらなる熱交換性能の向上を図ることができる。一方、積層方向に隣り合う金網21,21の間隔Pが1.1mm以下である場合には、積層長さが長くなることが抑制され、金網積層多孔体20の小型化を図ることができる。
ここで、軽量化および小型化を図ることができるとともに、流体の整流効果を確実に奏功せしめるためには、積層方向に隣り合う金網21,21の間隔Pは0.5mm以上0.6mm以下の範囲内とすることがより好ましい。
【0024】
本実施形態である金網積層多孔体20においては、積層方向に隣り合う金網21,21の回転角度θの大きさによって、パイプ体11の開口面における複数の金網21の金網線22の占める割合の異なる金網積層多孔体を作製することができる。回転角度θについては、上限および下限に制限はない。回転角度θが小さすぎると、複数の金網21の積層時の回転角度の制御が難しくなる。その一方で、回転角度θの上限については、角度には0°から360°の周期性があることと、金網21を構成する金網線22の対称性を示す回転角度Θとを勘案して、所望の積層する金網枚数とパイプ体11の長さから、パイプ体11の開口面における複数の金網21の金網線22の占める割合を変化できるように回転角度θを設定すればよい。例えば、
図3に示す金網21の金網線22はΘ=90°の回転対称性がある例となる。
上記を勘案して、パイプ体11の開口面における複数の金網21の金網線22の占める割合を変化させるための回転角度θに特に制限はないが、10°以上60°以下の範囲内とすることが好ましい。
また、金網線22の線径に特に制限はないが、0.1mm以上0.5mm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0025】
さらに、本実施形態において、パイプ体11および金網20を構成する材質に特に制限はなく、用途に応じて適宜選択すればよい。
例えば、熱交換器として利用する場合には、伝熱性の高い金属(例えば、銅または銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金)等で構成することが好ましい。また、耐食性が求められる用途においては、ステンレス合金、チタンおよびチタン合金等で構成することが好ましい。
【0026】
本実施形態である金網積層多孔体20は、複数の金網21を積層することで製造される。積層した金網21の固定方法に特に制限はなく、用途や材質に応じて既存の手法を用いることが好ましい。また、隣接する金網21,21の間隔Pを調整するために、金網と金網の間にスペーサを配設して積層してもよい。
さらに、近年では、3Dプリンタ造形技術が進展していることから、3Dプリンタによって金網が積層した構造の金網積層多孔体20を成形してもよい。
【0027】
以上のような構成とされた本実施形態である金網積層多孔体20および多孔体含有パイプによれば、金網積層時に金網の積層のさせ方を変えた場合においても、金網21の目開きの開口長さLが0.5mm以上0.7mm以下の範囲内としているので、流通する流体と金網線との間の良好な熱伝導を維持しつつ、流通経路を確保し、積層のさせ方によって金網線との衝突回数が過度に変化しにくくなることで、パイプ体に流体を流すことで、高い熱伝達率と低い圧力損失を得ることができるとともに、積層のさせ方の違いによって、圧力損失と熱伝達率から決まる熱伝達性能を変動させないことが可能となる。
また、目開きおよび線径が同一とされた金網22が間隔を開けて、かつ、積層方向に隣り合う金網が相対的に回転して積層された構造とされているので、比較的容易に本実施形態である金網積層多孔体20を製造することが可能となる。
【0028】
本実施形態において、積層方向に隣り合う金網21,21の間隔が0.5mm以上0.6mm以下の範囲内とされている場合には、金網積層多孔体20の小型化を図ることができるとともに、流体の整流効果を確実に奏功せしめることでき、流体の流れをさらに均一化することが可能となる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
【0031】
まず、パイプ体としてアルミニウム(A1050)製の円筒(内径18mm、外径21mm、長さ25mm)を準備した。
このパイプ体の内部に、表1に示す金網(アルミニウム(A1050)製)で構成された金網積層多孔体を充填し、パイプ体と金網積層多孔体を焼結によって接合した。
ここで、多孔体含有パイプの内部の気孔率が80%以上となるように、金網積層多孔体を配設した。
【0032】
そして、多孔体含有パイプの外壁面温度を0℃として、200℃の空気を多孔体含有パイプの内部に流入させ、多孔体含有パイプ内部での圧力損失量と熱伝達率を測定した。
圧力損失量から摩擦損失係数fを、熱伝達率からヌッセルト数Nuをそれぞれ計算し、以下の式で定義される熱伝達性能指数(Thermal Performance Factor、TPF)を評価した。TPFが高いと、圧力損失量が小さく、良好な熱交換性能を有することになる。
TPF=Nu/f1/3
【0033】
同一の目開きの開口長さ条件で、金網回転角度θを変量し、異なる射影面積割合となる金網積層多孔体を作製し、同一の目開き開口長さ条件におけるTPFの平均値Aveと標準偏差Stdを算出し、そこから下式で示される積層のさせ方の違いによる熱伝達性能指数のバラつき指標σを作成した。
σ=Std/Ave
【0034】
σが小さいと、積層のさせ方に対する熱伝達性能のバラつきが小さいことを示す指標である。 TPFの平均値Aveが大きく、熱伝達性能指数のバラつき指標σが小さい目開き開口長さ条件が、高い熱伝達性能と低い圧力損失を得ることができるとともに、積層のさせ方の違いによって、圧力損失と熱伝達率から決まる熱伝達性能を変動させないことが可能な条件と判断した。
【0035】
【0036】
【0037】
比較例1~5においては、金網の目開きの開口長さが0.9mmと大きい場合の金網積層多孔体で、積層のさせ方を変量した場合の性能結果である。金網の積層のさせ方によってTPFがバラつき、積層のさせ方の違いによる熱伝達性能指数のバラつき指標σは高くなった。
【0038】
比較例6~10においては、金網の目開きの開口長さが1.2mmと大きい場合の金網積層多孔体で、積層のさせ方を変量した場合の性能結果である。高いTPFを示す積層のさせ方もあるが、積層のさせ方によってTPFが大きくバラつくことが示されており、熱伝達性能指数のバラつき指標σは高くなった。
【0039】
比較例11~15においては、金網の目開きの開口長さが0.1mmと小さい場合の金網積層多孔体で、積層のさせ方を変量した場合の性能結果である。積層のさせ方の違いによる熱伝達性能指数のバラつき指標σは十分に低いが、TPFの平均値が非常に小さい。そのため、積層のさせ方に依らず、非常に低い熱伝達性能で安定していた。
【0040】
比較例16~20においては、金網の目開きの開口長さが0.3mmと小さい場合の金網積層多孔体で、積層のさせ方を変量した場合の性能結果である。積層のさせ方に対するTPFのバラつきは小さく、積層のさせ方の違いによる熱伝達性能指数のバラつき指標σは十分に低いが、TPFの平均値が小さい。そのため、積層のさせ方に依らず、低い熱伝達性能で安定していた。
【0041】
これに対して、本発明例1~15においては、金網の目開きの開口長さが0.5mm以上0.7mm以下の範囲内であり、積層のさせ方の違いによる熱伝達性能指数のバラつき指標σは低く、かつ、TPFの平均値も大きいことが示されている。
【0042】
以上のことから、本発明例によれば、金網積層時に金網の積層のさせ方を変えた場合においても高い熱伝達率と低い圧力損失を示し、かつ、積層のさせ方の違いによって、圧力損失と熱伝達率で決まる熱伝達性能に変動が生じない金網積層多孔体、および、多孔体含有パイプを提供可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0043】
10 多孔体含有パイプ
11 パイプ体
20 金網積層多孔体
21 金網
22 金網線
【要約】
【課題】金網積層時の金網の積層のさせ方を変えた場合においても高い熱伝達率と低い圧力損失を示し、かつ、積層のさせ方の違いによって、圧力損失と熱伝達率から決まる熱伝達性能に変動が生じない金網積層多孔体、および、多孔体含有パイプを提供する。
【解決手段】目開きおよび線径が同一とされた金網が間隔を開けて、かつ、積層方向に隣り合う金網が相対的に回転して積層された構造とされ、前記金網の目開きの開口長さが0.5mm以上0.7mm以下の範囲内であることを特徴とする。
【選択図】なし