(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】再生装置、再生方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04S 7/00 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
H04S7/00 320
(21)【出願番号】P 2023045329
(22)【出願日】2023-03-22
(62)【分割の表示】P 2021167855の分割
【原出願日】2017-11-10
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2016228598
(32)【優先日】2016-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017062303
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】辻 実
(72)【発明者】
【氏名】知念 徹
(72)【発明者】
【氏名】平林 光浩
(72)【発明者】
【氏名】青山 圭一
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-245984(JP,A)
【文献】特開2000-244487(JP,A)
【文献】特開2003-284196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれのオーディオオブジェクトの音声データと、複数の想定聴取位置のそれぞれに対する、前記音声データのレンダリングパラメータとを含むコンテンツを取得する取得部と、
前記レンダリングパラメータが用意されていない前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータを、前記レンダリングパラメータが用意されている複数の前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータに基づいて生成する生成部と、
前記生成部により生成された前記レンダリングパラメータに基づいて前記音声データのレンダリングを行うレンダリング部と
を備え、
前記レンダリングパラメータは、前記オーディオオブジェクトの定位情報、ゲイン情報、イコライザ情報、コンプレッサー情報、リバーブ情報、の少なくともいずれかを含む
再生装置。
【請求項2】
前記コンテンツには、あらかじめ設定された前記想定聴取位置に関する情報がさらに含まれ、
前記想定聴取位置に関する情報に基づいて、前記想定聴取位置の選択に用いられる画面を表示させる表示制御部をさらに備える
請求項1に記載の再生装置。
【請求項3】
前記定位情報は、前記オーディオオブジェクトを定位させる位置を表す情報であり、
前記ゲイン情報は、前記音声データのゲイン調整用のパラメータである
請求項1または2に記載の再生装置。
【請求項4】
前記レンダリング部は、音源位置を固定させる前記オーディオオブジェクトとして選択された前記オーディオオブジェクトの前記音声データのレンダリングを、選択された前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータとは異なる前記レンダリングパラメータに基づいて行う
請求項1乃至3のいずれかに記載の再生装置。
【請求項5】
前記レンダリング部は、前記コンテンツの音声を構成する複数の前記オーディオオブジェクトのうち、所定の前記オーディオオブジェクトの前記音声データのレンダリングを行わない
請求項1乃至4のいずれかに記載の再生装置。
【請求項6】
前記コンテンツには、前記想定聴取位置を視点位置とした映像の表示に用いられるビデオデータがさらに含まれ、
前記ビデオデータを再生し、選択された所定の前記想定聴取位置を視点位置とする映像を表示させるビデオ再生部をさらに備える
請求項1乃至5のいずれかに記載の再生装置。
【請求項7】
再生装置が、
それぞれのオーディオオブジェクトの音声データと、複数の想定聴取位置のそれぞれに対する、前記音声データのレンダリングパラメータとを含むコンテンツを取得し、
前記レンダリングパラメータが用意されていない前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータを、前記レンダリングパラメータが用意されている複数の前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータに基づいて生成し、
生成した前記レンダリングパラメータに基づいて前記音声データのレンダリングを行う
再生方法であって、
前記レンダリングパラメータは、前記オーディオオブジェクトの定位情報、ゲイン情報、イコライザ情報、コンプレッサー情報、リバーブ情報、の少なくともいずれかを含む
再生方法。
【請求項8】
コンピュータに、
それぞれのオーディオオブジェクトの音声データと、複数の想定聴取位置のそれぞれに対する、前記音声データのレンダリングパラメータとを含むコンテンツを取得し、
前記レンダリングパラメータが用意されていない前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータを、前記レンダリングパラメータが用意されている複数の前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータに基づいて生成し、
生成した前記レンダリングパラメータに基づいて前記音声データのレンダリングを行う
処理を実行させるプログラムであって、
前記レンダリングパラメータは、前記オーディオオブジェクトの定位情報、ゲイン情報、イコライザ情報、コンプレッサー情報、リバーブ情報、の少なくともいずれかを含む
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、再生装置、再生方法、およびプログラムに関し、特に、コンテンツ制作者の意図を反映しつつ、再生時の自由度の高いオーディオデータの再生を実現できるようにした再生装置、再生方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
楽器演奏の教則ビデオなどに含まれる映像は、一般的に、コンテンツ制作者によりあらかじめカット編集などが行われた映像になっている。また、その音は、解説音声や楽器の演奏音などの複数の音源が、2chや5.1chなどにコンテンツ制作者により適度にミックスされた音になっている。従って、ユーザは、コンテンツ制作者の意図した視点での映像と音でしか、そのコンテンツを視聴することができない。
【0003】
ところで、近年、オブジェクトベースのオーディオ技術が注目されている。オブジェクトベースのオーディオデータは、オブジェクトの音声の波形信号と、基準となる視点からの相対位置により表される定位情報を示すメタデータとから構成される。
【0004】
オブジェクトベースのオーディオデータの再生は、波形信号を、再生側のシステムに合わせた所望のチャンネル数の信号にメタデータに基づいてレンダリングするようにして行われる。レンダリングの手法には、例えばVBAP(Vector Based Amplitude Panning)がある(例えば、非特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】ISO/IEC 23008-3 Information technology - High efficiency coding and media delivery in heterogeneous environments - Part 3: 3D audio
【文献】Ville Pulkki, “Virtual Sound Source Positioning Using Vector Base Amplitude Panning”, Journal of AES, vol.45, no.6, pp.456-466, 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オブジェクトベースのオーディオデータにおいても、音の定位は、各オブジェクトのメタデータにより決定される。従って、ユーザは、あらかじめ用意されたメタデータに従ったレンダリング結果の音でしか、言い換えると、決められた視点(想定聴取位置)とそれに対する定位での音でしか、コンテンツを視聴することができない。
【0007】
そこで、想定聴取位置を任意に選択することができるようにし、ユーザにより選択された想定聴取位置に合わせてメタデータの補正を行い、補正後のメタデータを用いて定位を修正したレンダリング再生を行うことが考えられる。
【0008】
しかしながら、この場合、再生される音は、各オブジェクトの相対的な位置関係の変化を機械的に反映した音となり、コンテンツ制作者からすると、満足する音、すなわち表現したい音になるとは限らない。
【0009】
本技術はこのような状況に鑑みてなされたものであり、コンテンツ制作者の意図を反映しつつ、再生時の自由度の高いオーディオデータの再生を実現できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本技術の一側面の再生装置は、それぞれのオーディオオブジェクトの音声データと、複数の想定聴取位置のそれぞれに対する、前記音声データのレンダリングパラメータとを含むコンテンツを取得する取得部と、前記レンダリングパラメータが用意されていない前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータを、前記レンダリングパラメータが用意されている複数の前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータに基づいて生成する生成部と、前記生成部により生成された前記レンダリングパラメータに基づいて前記音声データのレンダリングを行うレンダリング部とを備える。前記レンダリングパラメータは、前記オーディオオブジェクトの定位情報、ゲイン情報、イコライザ情報、コンプレッサー情報、リバーブ情報、の少なくともいずれかを含む。
【0011】
本技術の一側面においては、それぞれのオーディオオブジェクトの音声データと、複数の想定聴取位置のそれぞれに対する、前記音声データのレンダリングパラメータとを含むコンテンツが取得され、前記レンダリングパラメータが用意されていない前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータが、前記レンダリングパラメータが用意されている複数の前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータに基づいて生成される。また、生成された前記レンダリングパラメータに基づいて前記音声データのレンダリングが行われる。前記レンダリングパラメータには、前記オーディオオブジェクトの定位情報、ゲイン情報、イコライザ情報、コンプレッサー情報、リバーブ情報、の少なくともいずれかが含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本技術によれば、コンテンツ制作者の意図を反映しつつ、再生時の自由度の高いオーディオデータの再生を実現することができる。
【0013】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】オーディオオブジェクトと視点の例を示す図である。
【
図3】視点#1に対するレンダリングパラメータの例を示す図である。
【
図4】各オーディオオブジェクトの定位のイメージを示す図である。
【
図5】各オーディオオブジェクトのゲイン配分の例を示す図である。
【
図6】視点#2乃至#5に対するレンダリングパラメータの例を示す図である。
【
図8】再生装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図9】
図8のオーディオ再生部の構成例を示すブロック図である。
【
図10】再生装置のオーディオ再生処理について説明するフローチャートである。
【
図11】オーディオ再生部の他の構成例を示すブロック図である。
【
図12】オーディオ再生部のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【
図13】レンダリングパラメータの他の例を示す図である。
【
図14】オーディオ再生部の構成例を示すブロック図である。
【
図15】視点#6と視点#7に対するレンダリングパラメータの例を示す図である。
【
図16】視点#6の各オーディオオブジェクトの定位のイメージを示す図である。
【
図17】視点#7の各オーディオオブジェクトの定位のイメージを示す図である。
【
図18】任意視点#Xに対する疑似レンダリングパラメータの例を示す図である。
【
図19】疑似レンダリングパラメータを用いた各オーディオオブジェクトの定位のイメージを示す図である。
【
図20】オーディオ再生部の構成例を示すブロック図である。
【
図21】再生装置の他のオーディオ再生処理について説明するフローチャートである。
【
図22】コンテンツ生成装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図23】コンテンツ生成装置のコンテンツ生成処理について説明するフローチャートである。
【
図25】再生装置とコンテンツ生成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図26】メタデータデコーダの構成例を示すブロック図である。
【
図27】パラメータ推定器の入出力の例を示す図である。
【
図30】視点1~5のレンダリングパラメータを示す図である。
【
図31】視点1~5のレンダリングパラメータを示す、
図30に続く図である。
【
図33】視点2Aと視点3Aの位置を示す図である。
【
図34】視点2Aと視点3Aのレンダリングパラメータを示す図である。
【
図35】視点6のレンダリングパラメータを示す図である。
【
図36】配信システムの他の構成例を示す図である。
【
図37】再生装置とコンテンツ生成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図38】
図37のパラメータ推定器学習部の構成例を示すブロック図である。
【
図39】配信システムのさらに他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための形態について説明する。説明は以下の順序で行う。
・第1の実施の形態
1.コンテンツについて
2.再生装置の構成と動作
3.再生装置の他の構成例
4.レンダリングパラメータの例
5.自由視点の例
6.コンテンツ生成装置の構成と動作
7.変形例
・第2の実施の形態
1.配信システムの構成例
2.レンダリングパラメータの生成例
3.配信システムの他の構成例
【0016】
<<第1の実施の形態>>
<1.コンテンツについて>
図1は、本技術の一実施形態に係る再生装置が再生するコンテンツの1シーンを示す図である。
【0017】
再生装置が再生するコンテンツの映像は、視点を切り替えることが可能な映像である。
コンテンツには、複数の視点の映像を表示するのに用いられるビデオデータが含まれる。
【0018】
また、再生装置が再生するコンテンツの音声も、例えば映像の視点の位置を聴取位置とするように、視点(想定聴取位置)を切り替えることが可能な音声である。視点が切り替えられた場合、音の定位が切り替わる。
【0019】
コンテンツの音声は、オブジェクトベースのオーディオとして用意される。コンテンツに含まれるオーディオデータには、それぞれのオーディオオブジェクトの波形データと、各オーディオオブジェクトの音源を定位させるためのメタデータとが含まれる。
【0020】
このようなビデオデータとオーディオデータからなるコンテンツは、MPEG-Hなどの所定の方式で多重化された形で再生装置に提供される。
【0021】
以下においては、再生の対象となるコンテンツが楽器演奏の教則ビデオであるものとして説明するが、本技術は、オブジェクトベースのオーディオデータを含む各種のコンテンツに適用可能である。そのようなコンテンツとして、例えば、多視点映像と、セリフ、背景音、効果音、BGMなどをオーディオオブジェクトで構成した音声とを含む多視点ドラマなどが考えられる。
【0022】
図1に示す横長長方形の領域(スクリーン)が、再生装置のディスプレイに表示される。
図1の例においては、左から順に、ベースを演奏する人物H1、ドラムを演奏する人物H2、メインギターを演奏する人物H3、およびサイドギターを演奏する人物H4からなるバンドによる演奏が映っている。
図1に示す映像は、バンド全体を正面から見る位置を視点とした映像である。
【0023】
コンテンツには、
図2のAに示すように、ベース、ドラム、メインギター、サイドギターによる演奏、および、教示者による解説音声をそれぞれオーディオオブジェクトとして、それぞれの独立した波形データが収録されている。
【0024】
以下においては、教則の対象がメインギターの演奏であるものとして説明する。サイドギター、ベース、およびドラムによる演奏は伴奏となる。メインギターの演奏を教則の対象とする教則ビデオの視点の例を
図2のBに示す。
【0025】
図2のBに示すように、視点#1は、バンド全体を正面から見る位置を視点とするものである(
図1)。視点#2は、メインギターを演奏する人物H3のみを正面から見る位置を視点とするものである。
【0026】
視点#3は、メインギターを演奏する人物H3の左手付近をアップに見る位置を視点とするものである。視点#4は、メインギターを演奏する人物H3の右手付近をアップに見る位置を視点とするものである。視点#5は、メインギターを演奏する人物H3の位置を視点とするものである。コンテンツには、各視点における映像の表示に用いられるビデオデータが収録される。
【0027】
図3は、視点#1に対する各オーディオオブジェクトのレンダリングパラメータの例を示す図である。
【0028】
図3の例においては、オーディオオブジェクト毎のレンダリングパラメータとして、定位情報とゲイン情報が示されている。定位情報には、方位角を示す情報と仰角を示す情報が含まれる。方位角と仰角は正中面及び水平面をそれぞれ0°として表される。
【0029】
図3のレンダリングパラメータは、メインギターの音を右に10°、サイドギターの音を右に30°、ベースの音を左に30°、ドラムの音を左に15°、解説音声を0°に定位させ、ゲインを全て1.0とすることを示している。
【0030】
図4は、
図3に示すパラメータを用いて実現される、視点#1に対する各オーディオオブジェクトの定位のイメージを示す図である。
【0031】
図4に円で囲んで示す位置P1乃至P5が、それぞれ、ベースによる演奏、ドラムによる演奏、解説音声、メインギターによる演奏、サイドギターによる演奏が定位した位置を示す。
【0032】
図3に示すパラメータを用いて各オーディオオブジェクトの波形データがレンダリングされることにより、
図4に示すように定位した各演奏と解説音声をユーザは聴くことになる。
図5は、視点#1に対する各オーディオオブジェクトのL/Rのゲイン配分の例を示す図である。この例においては、音声の出力に用いられるスピーカは2chのスピーカシステムである。
【0033】
このような各オーディオオブジェクトのレンダリングパラメータが、
図6に示すように、視点#2乃至#5のそれぞれに対しても用意される。
【0034】
視点#2に対するレンダリングパラメータは、メインギターに注目する視点映像に合わせて、メインギターの音を中心に再生するためのパラメータである。各オーディオオブジェクトのゲイン情報については、サイドギター、ベース、ドラムのゲインが、メインギターと解説音声のゲインより抑えられている。
【0035】
視点#3及び#4に対するレンダリングパラメータは、ギターの指捌きに集中する映像に合わせて、視点#2の場合よりもメインギターに集中した音を再生するためのパラメータである。
【0036】
視点#5は、ユーザが、メインギターの演奏者である人物H3になりきる視点映像にあわせて、演奏者視点の定位で音を再生するためのパラメータである。
【0037】
このように、再生装置が再生するコンテンツのオーディオデータには、各オーディオオブジェクトのレンダリングパラメータが、視点毎に用意される。各視点に対するレンダリングパラメータがコンテンツ制作者によってあらかじめ決定され、メタデータとして、オーディオオブジェクトの波形データと共に伝送または保持されることになる。
【0038】
<2.再生装置の構成と動作>
図7は、再生装置の構成例を示すブロック図である。
【0039】
図7の再生装置1は、視点毎のレンダリングパラメータが用意されたオブジェクトベースのオーディオデータを含む多視点コンテンツの再生に用いられる装置である。再生装置1は、例えばパーソナルコンピュータであり、コンテンツの視聴者により操作される。
【0040】
図7に示すように、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13は、バス14により相互に接続される。バス14には、さらに、入出力インタフェース15が接続される。入出力インタフェース15には、入力部16、ディスプレイ17、スピーカ18、記憶部19、通信部20、およびドライブ21が接続される。
【0041】
入力部16は、キーボード、マウスなどにより構成される。入力部16は、ユーザの操作の内容を表す信号を出力する。
【0042】
ディスプレイ17は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイなどのディスプレイである。ディスプレイ17は、視点の選択に用いられる選択画面、再生されたコンテンツの映像などの各種の情報を表示する。ディスプレイ17が、再生装置1と一体のディスプレイであってもよいし、再生装置1に接続された外部のディスプレイであってもよい。
【0043】
スピーカ18は、再生されたコンテンツの音声を出力する。スピーカ18は、例えば、再生装置1に接続されるスピーカである。
【0044】
記憶部19は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどにより構成される。記憶部19は、CPU11により実行されるプログラム、再生の対象となるコンテンツなどの各種のデータを記憶する。
【0045】
通信部20は、ネットワークインタフェースなどより構成され、インターネットなどのネットワークを介して外部の装置と通信を行う。ネットワークを介して配信されたコンテンツが通信部20により受信され、再生されるようにしてもよい。
【0046】
ドライブ21は、装着されたリムーバブルメディア22に対するデータの書き込み、リムーバブルメディア22に記録されたデータの読み出しを行う。再生装置1においては、適宜、ドライブ21によりリムーバブルメディア22から読み出されたコンテンツが再生される。
【0047】
図8は、再生装置1の機能構成例を示すブロック図である。
【0048】
図8に示す構成のうちの少なくとも一部は、
図7のCPU11により所定のプログラムが実行されることによって実現される。再生装置1においては、コンテンツ取得部31、分離部32、オーディオ再生部33、およびビデオ再生部34が実現される。
【0049】
コンテンツ取得部31は、ビデオデータとオーディオデータを含む、上述した教則ビデオのようなコンテンツを取得する。
【0050】
再生装置1に対するコンテンツの提供がリムーバブルメディア22を介して行われる場合、コンテンツ取得部31は、ドライブ21を制御し、リムーバブルメディア22に記録されているコンテンツを読み出して取得する。また、再生装置1に対するコンテンツの提供がネットワークを介して行われる場合、コンテンツ取得部31は、外部の装置から送信され、通信部20において受信されたコンテンツを取得する。コンテンツ取得部31は、取得したコンテンツを分離部32に出力する。
【0051】
分離部32は、コンテンツ取得部31から供給されたコンテンツに含まれるビデオデータとオーディオデータを分離する。分離部32は、コンテンツのビデオデータをビデオ再生部34に出力し、オーディオデータをオーディオ再生部33に出力する。
【0052】
オーディオ再生部33は、分離部32から供給されたオーディオデータを構成する波形データをメタデータに基づいてレンダリングし、コンテンツの音声をスピーカ18から出力させる。
【0053】
ビデオ再生部34は、分離部32から供給されたビデオデータをデコードし、コンテンツの所定の視点の映像をディスプレイ17に表示させる。
【0054】
図9は、
図8のオーディオ再生部33の構成例を示すブロック図である。
【0055】
オーディオ再生部33は、レンダリングパラメータ選択部51、オブジェクトデータ記憶部52、視点情報表示部53、およびレンダリング部54から構成される。
【0056】
レンダリングパラメータ選択部51は、入力された選択視点情報に従って、ユーザにより選択された視点に対するレンダリングパラメータをオブジェクトデータ記憶部52から選択し、レンダリング部54に出力する。視点#1乃至#5の中から所定の視点がユーザにより選択された場合、レンダリングパラメータ選択部51に対しては、選択された視点を表す選択視点情報が入力される。
【0057】
オブジェクトデータ記憶部52は、各オーディオオブジェクトの波形データ、視点情報、および、視点#1乃至#5の各視点に対する各オーディオオブジェクトのレンダリングパラメータを記憶する。
【0058】
オブジェクトデータ記憶部52に記憶されているレンダリングパラメータはレンダリングパラメータ選択部51により読み出され、各オーディオオブジェクトの波形データはレンダリング部54により読み出される。視点情報は視点情報表示部53により読み出される。なお、視点情報は、コンテンツの視点として、視点#1乃至#5が用意されていることを表す情報である。
【0059】
視点情報表示部53は、オブジェクトデータ記憶部52から読み出した視点情報に従って、再生する視点の選択に用いられる画面である視点選択画面をディスプレイ17に表示させる。視点選択画面には、視点#1乃至#5の複数の視点があらかじめ用意されていることが示される。
【0060】
視点選択画面おいては、複数の視点があることがアイコンや文字によって示されるようにしてもよいし、各視点を表すサムネイル画像によって示されるようにしてもよい。ユーザは、入力部16を操作し、複数の視点の中から所定の視点を選択する。視点選択画面を用いてユーザにより選択された視点を表す選択視点情報が、レンダリングパラメータ選択部51に入力される。
【0061】
レンダリング部54は、各オーディオオブジェクトの波形データをオブジェクトデータ記憶部52から読み出して取得する。また、レンダリング部54は、レンダリングパラメータ選択部51から供給された、ユーザにより選択された視点に対するレンダリングパラメータを取得する。
【0062】
レンダリング部54は、レンダリングパラメータ選択部51から取得したレンダリングパラメータに従って各オーディオオブジェクトの波形データをレンダリングし、各チャンネルのオーディオ信号をスピーカ18に出力する。
【0063】
例えば、スピーカ18が、左右に30°ずつ開かれた2chスピーカシステムであり、視点#1が選択されているものとする。この場合、レンダリング部54は、
図3のレンダリングパラメータに基づいて
図5に示すゲイン配分を求め、求めたゲイン配分に従って、各オーディオオブジェクトのオーディオ信号をLRの各チャンネルに割り当てるようにして再生を行う。スピーカ18においては、レンダリング部54から供給されたオーディオ信号に基づいてコンテンツの音声が出力され、これにより、
図4に示すような定位での再生が実現される。
【0064】
スピーカ18が、5.1chや22.2chのような三次元のスピーカシステムにより構成される場合、レンダリング部54は、VBAP等のレンダリング手法を用いて、それぞれのスピーカシステムに応じた各チャンネルのオーディオ信号を生成することになる。
【0065】
ここで、
図10のフローチャートを参照して、以上のような構成を有する再生装置1のオーディオ再生処理について説明する。
【0066】
図10の処理は、再生対象とするコンテンツが選択され、視聴する視点が視点選択画面を用いてユーザにより選択されたときに開始される。ユーザにより選択された視点を表す選択視点情報はレンダリングパラメータ選択部51に入力される。なお、ビデオの再生については、ユーザにより選択された視点の映像を表示するための処理がビデオ再生部34により行われる。
【0067】
ステップS1において、レンダリングパラメータ選択部51は、入力された選択視点情報に従って、選択された視点に対するレンダリングパラメータをオブジェクトデータ記憶部52から選択する。レンダリングパラメータ選択部51は、選択したレンダリングパラメータをレンダリング部54に出力する。
【0068】
ステップS2において、レンダリング部54は、各オーディオオブジェクトの波形データをオブジェクトデータ記憶部52から読み出して取得する。
【0069】
ステップS3において、レンダリング部54は、レンダリングパラメータ選択部51から供給されたレンダリングパラメータに従って各オーディオオブジェクトの波形データのレンダリングを行う。
【0070】
ステップS4において、レンダリング部54は、レンダリングを行うことによって得られた各チャンネルのオーディオ信号をスピーカ18に出力し、各オーディオオブジェクトの音声を出力させる。
【0071】
コンテンツの再生が行われている間、以上の処理が繰り返し行われる。例えば、コンテンツの再生中にユーザにより視点が切り替えられた場合、レンダリングに用いられるレンダリングパラメータも、新たに選択された視点に対するレンダリングパラメータに切り替えられる。
【0072】
以上のように、各オーディオオブジェクトのレンダリングパラメータが視点毎に用意され、それを用いて再生が行われるため、ユーザは、複数の視点の中から好みの視点を選択し、選択した視点に合った音でコンテンツを視聴することができる。ユーザが選択した視点用として用意されたレンダリングパラメータを用いて再生された音は、コンテンツ制作者によって作り込まれた音楽性の高い音ということができる。
【0073】
仮に、全ての視点に共通のものとして1つのレンダリングパラメータが用意されており、視点が選択された場合に、選択された視点の位置関係の変化を機械的に反映するようにレンダリングパラメータを補正して再生に用いるとしたとき、その音は、コンテンツ制作者が意図していない音になる可能性があるが、そのようなことを防ぐことができる。
【0074】
すなわち、以上の処理により、コンテンツ制作者の意図を反映しつつ、視点を選択することができるという点で自由度の高いオーディオデータの再生を実現することができる。
【0075】
<3.再生装置の他の構成例>
図11は、オーディオ再生部33の他の構成例を示すブロック図である。
【0076】
図11に示すオーディオ再生部33は、
図9の構成と同様の構成を有する。重複する説明については適宜省略する。
【0077】
図11の構成を有するオーディオ再生部33においては、視点によって定位を変更したくないオーディオオブジェクトを指定することができるようになっている。上述したオーディオオブジェクトのうち、例えば、解説音声については、視点の位置に関わらず定位を固定させた方が好ましいことがある。
【0078】
定位を固定させるオーディオオブジェクトである固定オブジェクトを表す情報が、固定オブジェクト情報としてレンダリングパラメータ選択部51に入力される。固定オブジェクトは、ユーザにより指定されるようにしてもよいし、コンテンツ制作者により指定されるようにしてもよい。
【0079】
図11のレンダリングパラメータ選択部51は、固定オブジェクト情報により指定された固定オブジェクトのレンダリングパラメータとして、デフォルトのレンダリングパラメータをオブジェクトデータ記憶部52から読み出し、レンダリング部54に出力する。
【0080】
デフォルトのレンダリングパラメータとして、例えば、視点#1に対するレンダリングパラメータが用いられるようにしてもよいし、専用のレンダリングパラメータが用意されるようにしてもよい。
【0081】
また、レンダリングパラメータ選択部51は、固定オブジェクト以外のオーディオオブジェクトについては、ユーザにより選択された視点に対するレンダリングパラメータをオブジェクトデータ記憶部52から読み出し、レンダリング部54に出力する。
【0082】
レンダリング部54は、レンダリングパラメータ選択部51から供給されたデフォルトのレンダリングパラメータと、ユーザにより選択された視点に対するレンダリングパラメータに基づいて、各オーディオオブジェクトのレンダリングを行う。レンダリング部54は、レンダリングを行うことによって得られた各チャンネルのオーディオ信号をスピーカ18に出力する。
【0083】
全てのオーディオオブジェクトについて、選択された視点に応じたレンダリングパラメータではなく、デフォルトのレンダリングパラメータを用いてレンダリングが行われるようにしてもよい。
【0084】
図12は、オーディオ再生部33のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【0085】
図12に示すオーディオ再生部33の構成は、オブジェクトデータ記憶部52とレンダリング部54の間にスイッチ61が設けられている点で、
図9の構成と異なる。
【0086】
図12の構成を有するオーディオ再生部33においては、再生するオーディオオブジェクト、または再生しないオーディオオブジェクトを指定することができるようになっている。再生に必要なオーディオオブジェクトを表す情報が、再生オブジェクト情報としてスイッチ61に入力される。再生に必要なオブジェクトは、ユーザにより指定されるようにしてもよいし、コンテンツ制作者により指定されるようにしてもよい。
【0087】
図12のスイッチ61は、再生オブジェクト情報により指定されたオーディオオブジェクトの波形データをレンダリング部54に出力する。
【0088】
レンダリング部54は、レンダリングパラメータ選択部51から供給された、ユーザにより選択された視点に対するレンダリングパラメータに基づいて、再生に必要なオーディオオブジェクトの波形データのレンダリングを行う。すなわち、レンダリング部54は、再生に必要のないオーディオオブジェクトについては、レンダリングを行わないことになる。
【0089】
レンダリング部54は、レンダリングを行うことによって得られた各チャンネルのオーディオ信号をスピーカ18に出力する。
【0090】
これにより、ユーザは、例えば、再生に必要のないオーディオオブジェクトとしてメインギターを指定することにより、手本となるメインギターの音をミュートさせ、教則ビデオを視聴しながら自分の演奏を重畳させるといったことが可能となる。この場合、メインギター以外のオーディオオブジェクトの波形データだけが、オブジェクトデータ記憶部52からレンダリング部54に供給されることになる。
【0091】
レンダリング部54に対する波形データの出力を制御するのではなく、ゲインを制御することによってミュートが実現されるようにしてもよい。この場合、再生オブジェクト情報はレンダリング部54に入力される。レンダリング部54は、再生オブジェクト情報に従って例えばメインギターのゲインを0とし、他のオーディオオブジェクトのゲインを、レンダリングパラメータ選択部51から供給されたレンダリングパラメータに従って調整してレンダリングを行う。
【0092】
このように、選択した視点に依らずに定位を固定させたり、必要な音だけを再生させたりして、ユーザが、嗜好に合わせてコンテンツを再生することができるようにしてもよい。
【0093】
<4.レンダリングパラメータの例>
特に音楽コンテンツの制作において、各楽器の音作りは、定位やゲインによる調整以外にも、例えばイコライザによって音質を調整したり、リバーブによって残響成分を付加したりして行われる。音作りに用いられるこのようなパラメータについても、定位情報やゲイン情報と共にメタデータとしてオーディオデータに付加され、レンダリングに用いられるようにしてもよい。
【0094】
定位情報やゲイン情報に付加される他のパラメータについても、視点毎に用意される。
【0095】
図13は、レンダリングパラメータの他の例を示す図である。
【0096】
図13の例においては、レンダリングパラメータとして、定位情報とゲイン情報のほか、イコライザ情報、コンプレッサー情報、およびリバーブ情報が含まれる。
【0097】
イコライザ情報は、イコライザによる音響調整に用いるフィルタタイプ、フィルタの中心周波数、尖鋭度、ゲイン、およびプリゲインの各情報から構成される。コンプレッサー情報は、コンプレッサーによる音響調整に用いる周波数帯域幅、スレッショルド、レシオ、ゲイン、アタック時間、およびリリース時間の各情報から構成される。リバーブ情報は、リバーブによる音響調整に用いる初期反射時間、初期反射ゲイン、残響時間、残響ゲイン、Dumping、およびDry/Wet係数の各情報から構成される。
【0098】
レンダリングパラメータに含めるパラメータを、
図13に示す情報以外の情報とすることも可能である。
【0099】
図14は、
図13に示す情報を含むレンダリングパラメータの処理に対応したオーディオ再生部33の構成例を示すブロック図である。
【0100】
図14に示すオーディオ再生部33の構成は、レンダリング部54が、イコライザ部71、残響成分付加部72、コンプレッション部73、およびゲイン調整部74から構成されている点で、
図9の構成と異なる。
【0101】
レンダリングパラメータ選択部51は、入力された選択視点情報に従って、ユーザにより選択された視点に対するレンダリングパラメータをオブジェクトデータ記憶部52から読み出し、レンダリング部54に出力する。
【0102】
レンダリングパラメータ選択部51から出力されたレンダリングパラメータに含まれるイコライザ情報、コンプレッサー情報、リバーブ情報は、それぞれ、イコライザ部71、残響成分付加部72、コンプレッション部73に供給される。また、レンダリングパラメータに含まれる定位情報とゲイン情報はゲイン調整部74に供給される。
【0103】
オブジェクトデータ記憶部52は、各オーディオオブジェクトの波形データ、視点情報とともに、各視点に対する各オーディオオブジェクトのレンダリングパラメータを記憶する。オブジェクトデータ記憶部52が記憶するレンダリングパラメータには、
図13に示す各情報が含まれる。オブジェクトデータ記憶部52が記憶する各オーディオオブジェクトの波形データはレンダリング部54に供給される。
【0104】
レンダリング部54は、各オーディオオブジェクトの波形データに対して、レンダリングパラメータ選択部51から供給された各レンダリングパラメータに従ってそれぞれの音質調整処理を行う。レンダリング部54は、音質調整処理を行うことによって得られた波形データに対してゲイン調整を行い、オーディオ信号をスピーカ18に出力する。
【0105】
すなわち、レンダリング部54のイコライザ部71は、各オーディオオブジェクトの波形データに対して、イコライザ情報に基づいたイコライジング処理を行い、イコライジング処理によって得られた波形データを残響成分付加部72に出力する。
【0106】
残響成分付加部72は、残響成分を付加する処理をリバーブ情報に基づいて行い、残響成分を付加した波形データをコンプレッション部73に出力する。
【0107】
コンプレッション部73は、残響成分付加部72から供給された波形データに対して、コンプレッサー情報に基づいたコンプレッション処理を行い、コンプレッション処理によって得られた波形データをゲイン調整部74に出力する。
【0108】
ゲイン調整部74は、コンプレッション部73から供給された波形データのゲイン調整を定位情報とゲイン情報に基づいて行い、ゲイン調整を行うことによって得られた、各チャンネルのオーディオ信号をスピーカ18に出力する。
【0109】
以上のようなレンダリングパラメータを用いることにより、コンテンツ制作者は、各視点に対するオーディオオブジェクトのレンダリング再生に自身の音作りをより反映させることが可能になる。例えば、音の指向性によって、視点毎に音の音色が変わる様子をこれらのパラメータによって再現することができる。また、ある視点ではギターの音が意図的に抑えられるような、コンテンツ制作者の意図的な音のミキシング構成の制御も可能となる。
【0110】
<5.自由視点の例>
以上においては、視点の選択が、レンダリングパラメータが用意された複数の視点を対象として行うことができるものとしたが、任意の視点を自由に選択することができるようにしてもよい。ここでいう任意の視点は、レンダリングパラメータが用意されていない視点である。
【0111】
この場合、選択された任意の視点のレンダリングパラメータは、その任意の視点に隣接する2つ視点に対するレンダリングパラメータを利用して疑似的に生成される。生成されたレンダリングパラメータを任意の視点のレンダリングパラメータとして適用することで、その任意の視点に対する音をレンダリング再生することが可能になる。
【0112】
疑似的なレンダリングパラメータの生成に用いるレンダリングパラメータの数は2つに限られるものではなく、3以上の視点のレンダリングパラメータを用いて、任意の視点のレンダリングパラメータが生成されるようにしてもよい。また、隣接する視点のレンダリングパラメータに限らず、任意の視点の近傍にある複数の視点のレンダリングパラメータであれば、どの視点のレンダリングパラメータを用いて疑似的なレンダリングパラメータが生成されるようにしてもよい。
【0113】
図15は、2つの視点である視点#6と視点#7に対するレンダリングパラメータの例を示す図である。
【0114】
図15の例においては、メインギター、サイドギター、ベース、ドラム、および解説音声の各オーディオオブジェクトのレンダリングパラメータとして、定位情報とゲイン情報が含まれる。
図15に示すレンダリングパラメータとして、
図13に示す情報を含むレンダリングパラメータを用いることも可能である。
【0115】
また、
図15の例において、視点#6に対するレンダリングパラメータは、メインギターの音を右に10°、サイドギターの音を右に30°、ベースの音を左に30°、ドラムの音を左に15°、解説音声を0°に定位させることを表す。
【0116】
一方、視点#7に対するレンダリングパラメータは、メインギターの音を右に5°、サイドギターの音を右に10°、ベースの音を左に10°、ドラムの音を左に8°、解説音声を0°に定位させることを表す。
【0117】
視点#6と視点#7のそれぞれの視点に対する各オーディオオブジェクトの定位イメージを
図16と
図17に示す。
図16に示すように、視点#6は正面からの視点を想定し、視点#7は、右手からの視点を想定するものである。
【0118】
ここで、視点#6と視点#7の中間、すなわち、正面やや右の視点が任意視点#Xとして選択されたものとする。任意視点#Xに対して、視点#6と視点#7は隣接する視点となる。任意視点#Xは、レンダリングパラメータが用意されていない視点である。
【0119】
この場合、オーディオ再生部33においては、視点#6と視点#7に対する上述したレンダリングパラメータを用いて、任意視点#Xに対する疑似レンダリングパラメータが生成される。疑似レンダリングパラメータは、例えば、視点#6と視点#7に対するレンダリングパラメータに基づく線形補間などの補間処理によって生成される。
【0120】
図18は、任意視点#Xに対する疑似レンダリングパラメータの例を示す図である。
【0121】
図18の例においては、任意視点#Xに対するレンダリングパラメータは、メインギターの音を右に7.5°、サイドギターの音を右に20°、ベースの音を左に20°、ドラムの音を左に11.5°、解説音声を0°に定位させることを表す。
図18に示す各値は、
図15に示す視点#6と視点#7のレンダリングパラメータの各値の中間値であり、線形補間処理により求められたものである。
【0122】
図18に示す疑似レンダリングパラメータを用いた各オーディオオブジェクトの定位イメージを
図19に示す。
図19に示すように、任意視点#Xは、
図16に示す視点#6に対してやや右から見た視点である。
【0123】
図20は、以上のようにして疑似レンダリングパラメータを生成する機能を有するオーディオ再生部33の構成例を示すブロック図である。
【0124】
図20に示すオーディオ再生部33の構成は、レンダリングパラメータ選択部51とレンダリング部54の間にレンダリングパラメータ生成部81が設けられている点で、
図9の構成と異なる。任意視点#Xを表す選択視点情報はレンダリングパラメータ選択部51とレンダリングパラメータ生成部81に入力される。
【0125】
レンダリングパラメータ選択部51は、入力された選択視点情報に従って、ユーザにより選択された任意視点#Xに隣接する複数の視点に対するレンダリングパラメータをオブジェクトデータ記憶部52から読み出す。レンダリングパラメータ選択部51は、隣接する複数の視点に対するレンダリングパラメータをレンダリングパラメータ生成部81に出力する。
【0126】
レンダリングパラメータ生成部81は、選択視点情報に基づいて、例えば、任意視点#Xと、レンダリングパラメータが用意されている隣接する複数の視点との相対的な位置関係を特定する。レンダリングパラメータ生成部81は、特定した位置関係に応じた補間処理を行うことによって、レンダリングパラメータ選択部51から供給されたレンダリングパラメータに基づいて疑似レンダリングパラメータを生成する。レンダリングパラメータ生成部81は、生成した疑似レンダリングパラメータを、任意視点#Xに対するレンダリングパラメータとしてレンダリング部54に出力する。
【0127】
レンダリング部54は、レンダリングパラメータ生成部81から供給された疑似レンダリングパラメータに従って、各オーディオオブジェクトの波形データをレンダリングする。レンダリング部54は、レンダリングによって得られた各チャンネルのオーディオ信号をスピーカ18に出力し、任意視点#Xの音声として出力させる。
【0128】
ここで、
図21のフローチャートを参照して、
図20の構成を有するオーディオ再生部33によるオーディオ再生処理について説明する。
【0129】
図21の処理は、例えば視点情報表示部53により表示された視点選択画面を用いて、ユーザにより任意視点#Xが選択されたときに開始される。任意視点#Xを表す選択視点情報はレンダリングパラメータ選択部51とレンダリングパラメータ生成部81に入力される。
【0130】
ステップS11において、レンダリングパラメータ選択部51は、選択視点情報に従って、任意視点#Xに隣接する複数の視点に対するレンダリングパラメータをオブジェクトデータ記憶部52から選択する。レンダリングパラメータ選択部51は、選択したレンダリングパラメータをレンダリングパラメータ生成部81に出力する。
【0131】
ステップS12において、レンダリングパラメータ生成部81は、任意視点#Xと、レンダリングパラメータが用意されている隣接する複数の視点との位置関係に応じた補間処理を行うことによって、疑似レンダリングパラメータを生成する。
【0132】
ステップS13において、レンダリング部54は、各オーディオオブジェクトの波形データをオブジェクトデータ記憶部52から読み出して取得する。
【0133】
ステップS14において、レンダリング部54は、レンダリングパラメータ生成部81により生成された疑似レンダリングパラメータに従って各オーディオオブジェクトの波形データのレンダリングを行う。
【0134】
ステップS15において、レンダリング部54は、レンダリングを行うことによって得られた各チャンネルのオーディオ信号をスピーカ18に出力し、各オーディオオブジェクトの音声を出力させる。
【0135】
以上の処理により、再生装置1は、レンダリングパラメータが用意されていない任意視点#Xに対して定位したオーディオの再生が可能になる。ユーザとしては、任意に自由な視点を選択してコンテンツを視聴することができる。
【0136】
<6.コンテンツ生成装置の構成と動作>
図22は、以上のような教則ビデオなどのコンテンツを生成するコンテンツ生成装置101の機能構成例を示すブロック図である。
【0137】
コンテンツ生成装置101は、例えばコンテンツ制作者により操作される情報処理装置である。コンテンツ生成装置101は、基本的に、
図7に示す再生装置1と同様のハードウェア構成を有する。
【0138】
以下、適宜、
図7に示す構成をコンテンツ生成装置101の構成として引用して説明する。
図22に示す各構成は、コンテンツ生成装置101のCPU11(
図7)により所定のプログラムが実行されることによって実現される。
【0139】
図22に示すように、コンテンツ生成装置101は、ビデオ生成部111、メタデータ生成部112、オーディオ生成部113、多重化部114、記録制御部115、および送信制御部116から構成される。
【0140】
ビデオ生成部111は、外部から入力された映像信号を取得し、多視点の映像信号を所定の符号化方式で符号化することによってビデオデータを生成する。ビデオ生成部111は、生成したビデオデータを多重化部114に出力する。
【0141】
メタデータ生成部112は、コンテンツ制作者による操作に従って、各オーディオオブジェクトのレンダリングパラメータを、視点毎に生成する。メタデータ生成部112は、生成したレンダリングパラメータをオーディオ生成部113に出力する。
【0142】
また、メタデータ生成部112は、コンテンツの視点に関する情報である視点情報をコンテンツ制作者による操作に従って生成し、オーディオ生成部113に出力する。
【0143】
オーディオ生成部113は、外部から入力された音声信号を取得し、各オーディオオブジェクトの波形データを生成する。オーディオ生成部113は、各オーディオオブジェクトの波形データと、メタデータ生成部112により生成されたレンダリングパラメータとを対応付けることによってオブジェクトベースのオーディオデータを生成する。
【0144】
オーディオ生成部113は、生成したオブジェクトベースのオーディオデータを、視点情報とともに多重化部114に出力する。
【0145】
多重化部114は、ビデオ生成部111から供給されたビデオデータとオーディオ生成部113から供給されたオーディオデータをMPEG-Hなどの所定の方式で多重化し、コンテンツを生成する。コンテンツを構成するオーディオデータには視点情報も含まれる。多重化部114は、オブジェクトベースのオーディオデータを含むコンテンツを生成する生成部として機能する。
【0146】
多重化部114は、コンテンツの提供が記録媒体を介して行われる場合、生成したコンテンツを記録制御部115に出力し、ネットワークを介して行われる場合、生成したコンテンツを送信制御部116に出力する。
【0147】
記録制御部115は、ドライブ21を制御し、多重化部114から供給されたコンテンツをリムーバブルメディア22に記録する。記録制御部115によりコンテンツが記録されたリムーバブルメディア22は再生装置1に提供される。
【0148】
送信制御部116は、通信部20を制御し、多重化部114から供給されたコンテンツを再生装置1に送信する。
【0149】
ここで、
図23のフローチャートを参照して、以上のような構成を有するコンテンツ生成装置101のコンテンツ生成処理について説明する。
【0150】
ステップS101において、ビデオ生成部111は、外部から入力された映像信号を取得し、多視点の映像信号を含むビデオデータを生成する。
【0151】
ステップS102において、メタデータ生成部112は、コンテンツ制作者による操作に従って、各オーディオオブジェクトのレンダリングパラメータを視点毎に生成する。
【0152】
ステップS103において、オーディオ生成部113は、外部から入力された音声信号を取得し、各オーディオオブジェクトの波形データを生成する。また、オーディオ生成部113は、各オーディオオブジェクトの波形データとメタデータ生成部112により生成されたレンダリングパラメータとを対応付けることによってオブジェクトベースのオーディオデータを生成する。
【0153】
ステップS104において、多重化部114は、ビデオ生成部111により生成されたビデオデータとオーディオ生成部113により生成されたオーディオデータを多重化し、コンテンツを生成する。
【0154】
以上の処理により生成されたコンテンツは、所定の経路を介して再生装置1に提供され、再生装置1において再生される。
【0155】
<7.変形例>
再生装置1により再生されるコンテンツが、ビデオデータと、オブジェクトベースのオーディオデータとを含むものであるとしたが、ビデオデータを含まずに、オブジェクトベースのオーディオデータからなるコンテンツであってもよい。レンダリングパラメータが用意されている聴取位置の中から所定の聴取位置が選択された場合、選択された聴取位置に対するレンダリングパラメータを用いて、各オーディオオブジェクトの再生が行われる。
【0156】
以上においては、レンダリングパラメータがコンテンツ制作者により決定されるものとしたが、コンテンツを視聴するユーザ自身が決定することができるようにしてもよい。また、ユーザ自身が決定した視点毎のレンダリングパラメータを、インターネット等を経由して他のユーザに提供することができるようにしてもよい。
【0157】
そのようにして提供されたレンダリングパラメータを用いたレンダリング再生により、他のユーザが意図した音が再生されることになる。なお、ユーザが設定可能なパラメータの種類や値をコンテンツ制作者が制限することができるようにしてもよい。
【0158】
上述した各実施の形態は、その2つ以上を適宜組み合わせて用いることが可能である。
例えば、
図11を参照して説明したように、定位を変更したくないオーディオオブジェクトを指定することができる場合において、
図12を参照して説明したように、再生に必要なオーディオオブジェクトを指定することができるようにしてもよい。
【0159】
<<第2の実施の形態>>
<1.配信システムの構成例>
図24は、レンダリングパラメータが視点毎に用意される上述したようなオブジェクトオーディオを含むコンテンツを配信する配信システムの構成例を示す図である。
【0160】
図24の配信システムにおいては、コンテンツの制作者により管理されるコンテンツ生成装置101は、音楽ライブが行われている会場#1に設置される。一方、再生装置1はユーザの自宅に設置される。再生装置1とコンテンツ生成装置101は、インターネット201を介して接続される。
【0161】
コンテンツ生成装置101は、多視点の映像を含むビデオデータと、複数の視点のそれぞれのレンダリングパラメータを含むオブジェクトオーディオからなるコンテンツを生成する。コンテンツ生成装置101により生成されたコンテンツは、例えば図示せぬサーバに送信され、サーバを介して、再生装置1に提供される。
【0162】
再生装置1は、コンテンツ生成装置101から送信されたコンテンツを受信し、ユーザにより選択された視点のビデオデータを再生する。また、再生装置1は、ユーザにより選択された視点のレンダリングパラメータを用いて、オブジェクトオーディオのレンダリングを行い、音楽ライブの音声を出力する。
【0163】
例えば、コンテンツ生成装置101によるコンテンツの生成と送信は、音楽ライブの進行に追従してリアルタイムで行われる。再生装置1のユーザは、音楽ライブを遠隔においてほぼリアルタイムで視聴することができる。
【0164】
図24の例においては、コンテンツの配信を受ける再生装置として再生装置1のみが示されているが、実際には多くの再生装置がインターネット201に接続される。
【0165】
再生装置1のユーザは、任意の視点を自由に選択し、オブジェクトオーディオを聞くことができるようになされている。ユーザにより選択された視点のレンダリングパラメータがコンテンツ生成装置101から送信されてきていない場合、再生装置1は、選択された視点のレンダリングパラメータを生成し、オブジェクトオーディオのレンダリングを行う。
【0166】
上述した例においては、レンダリングパラメータが線形補間により生成されるものとしたが、
図24の再生装置1においては、ニューラルネットワークにより構成されるパラメータ推定器を用いて生成される。再生装置1は、会場#1において行われた音楽ライブのオーディオデータを用いて学習を行うことによって生成されたパラメータ推定器を有している。パラメータ推定器を用いたレンダリングパラメータの生成については後述する。
【0167】
図25は、再生装置1とコンテンツ生成装置101の構成例を示すブロック図である。
【0168】
図25には、再生装置1とコンテンツ生成装置101の一部の構成のみが示されているが、再生装置1は
図8に示す構成を有している。また、コンテンツ生成装置101は
図22に示す構成を有している。
【0169】
コンテンツ生成装置101は、オーディオエンコーダ211とメタデータエンコーダ212を有する。オーディオエンコーダ211はオーディオ生成部113(
図22)に対応し、メタデータエンコーダ212はメタデータ生成部112に対応する。
【0170】
オーディオエンコーダ211は、音楽ライブ中の音声信号を取得し、各オーディオオブジェクトの波形データを生成する。
【0171】
メタデータエンコーダ212は、コンテンツ制作者による操作に従って、各オーディオオブジェクトのレンダリングパラメータを視点毎に生成する。
【0172】
オーディオエンコーダ211により生成された波形データとメタデータエンコーダ212により生成されたレンダリングパラメータは、オーディオ生成部113において対応付けられることによって、オブジェクトベースのオーディオデータが生成される。オブジェクトベースのオーディオデータは、多重化部114においてビデオデータと多重化された後、送信制御部116により、再生装置1に対して送信される。
【0173】
再生装置1は、オーディオデコーダ221、メタデータデコーダ222、および再生部223を有する。オーディオデコーダ221、メタデータデコーダ222、および再生部223は、オーディオ再生部33(
図8)を構成する。再生装置1のコンテンツ取得部31においては、コンテンツ生成装置101から送信されてきたコンテンツが取得され、オブジェクトベースのオーディオデータとビデオデータが分離部32により分離される。
【0174】
オーディオデコーダ221に対しては、オブジェクトベースのオーディオデータが入力される。また、メタデータデコーダ222に対しては、各視点のレンダリングパラメータが入力される。
【0175】
オーディオデコーダ221は、オーディオデータをデコードし、各オーディオオブジェクトの波形データを再生部223に出力する。
【0176】
メタデータデコーダ222は、ユーザにより選択された視点に応じたレンダリングパラメータを再生部223に出力する。
【0177】
再生部223は、メタデータデコーダ222から供給されたレンダリングパラメータに従って各オーディオオブジェクトの波形データのレンダリングを行い、各チャンネルのオーディオ信号に応じた音声をスピーカから出力させる。
【0178】
介在する構成を省略して示した場合、
図25に示すように、オーディオエンコーダ211により生成された各オーディオオブジェクトの波形データがオーディオデコーダ221に供給されることになる。また、メタデータエンコーダ212により生成されたレンダリングパラメータがメタデータデコーダ222に供給されることになる。
【0179】
図26は、メタデータデコーダ222の構成例を示すブロック図である。
【0180】
図26に示すように、メタデータデコーダ222は、メタデータ取得部231、レンダリングパラメータ選択部232、レンダリングパラメータ生成部233、および蓄積部234から構成される。
【0181】
メタデータ取得部231は、オーディオデータに含める形で送信されてきた視点毎のレンダリングパラメータを受信し、取得する。メタデータ取得部231により取得されたレンダリングパラメータは、レンダリングパラメータ選択部232、レンダリングパラメータ生成部233、および蓄積部234に供給される。
【0182】
レンダリングパラメータ選択部232は、入力された選択視点情報に基づいて、ユーザにより選択された視点を特定する。レンダリングパラメータ選択部232は、メタデータ取得部231から供給されたレンダリングパラメータの中に、ユーザにより選択された視点のレンダリングパラメータがある場合、ユーザにより選択された視点のレンダリングパラメータを出力する。
【0183】
また、レンダリングパラメータ選択部232は、ユーザにより選択された視点のレンダリングパラメータがない場合、選択視点情報をレンダリングパラメータ生成部233に出力し、レンダリングパラメータの生成を行わせる。
【0184】
レンダリングパラメータ生成部233は、パラメータ推定器を有する。レンダリングパラメータ生成部233は、パラメータ推定器を用いて、ユーザにより選択された視点のレンダリングパラメータを生成する。レンダリングパラメータの生成には、メタデータ取得部231から供給された現在のレンダリングパラメータと、蓄積部234から読み出した過去のレンダリングパラメータがパラメータ推定器の入力として用いられる。レンダリングパラメータ生成部233は、生成したレンダリングパラメータを出力する。レンダリングパラメータ生成部233が生成するレンダリングパラメータは、上述した疑似レンダリングパラメータに相当する。
【0185】
このように、レンダリングパラメータ生成部233によるレンダリングパラメータの生成は、コンテンツ生成装置101から過去に送信されてきたレンダリングパラメータをも用いて行われる。例えば、会場#1において音楽ライブが毎日行われており、そのコンテンツの配信が毎日行われている場合、コンテンツ生成装置101(メタデータエンコーダ212)からは、レンダリングパラメータが毎日送信されてくる。
【0186】
図27は、レンダリングパラメータ生成部233が有するパラメータ推定器の入出力の例を示す図である。
【0187】
矢印A1乃至A3に示すように、パラメータ推定器233Aに対しては、ユーザにより選択された視点の情報の他に、メタデータエンコーダ212から送信されてきた現在(直近)のレンダリングパラメータ、および過去のレンダリングパラメータが入力される。
【0188】
ここで、レンダリングパラメータには、パラメータ情報とレンダリング情報が含まれる。パラメータ情報は、オーディオオブジェクトの種類を示す情報、オーディオオブジェクトの位置情報、視点位置情報、および日付と時刻の情報を含む情報である。一方、レンダリング情報は、利得などの、波形データの特性に関する情報である。レンダリングパラメータを構成する情報の詳細については後述する。
【0189】
このような各情報が入力された場合、矢印A4に示すように、パラメータ推定器233Aからは、ユーザにより選択された視点のレンダリング情報が出力される。
【0190】
レンダリングパラメータ生成部233は、メタデータエンコーダ212から送信されてきたレンダリングパラメータを用いて、適宜、パラメータ推定器233Aの学習を行う。
パラメータ推定器233Aの学習は、新たなレンダリングパラメータが送信されてきたときなどの所定のタイミングで行われる。
【0191】
蓄積部234は、メタデータ取得部231から供給されたレンダリングパラメータを記憶する。蓄積部234には、メタデータエンコーダ212から送信されてくるレンダリングパラメータが蓄積される。
【0192】
<2.レンダリングパラメータの生成例>
ここで、レンダリングパラメータ生成部233によるレンダリングパラメータの生成について説明する。
【0193】
(1)複数のオーディオオブジェクトがあると仮定する。
オブジェクトのオーディオデータは下のように定義される。
x(n,i) i=0,1,2,…,L-1
【0194】
nは時間インデックスである。また、iはオブジェクトの種類を表す。ここでは、オブジェクトの数はLである。
【0195】
(2)複数の視点があると仮定する。
各視点に対応するオブジェクトのレンダリング情報は下のように定義される。
r(i,j) j=0,1,2,…,M-1
【0196】
jは視点の種類を表す。視点の数はMである。
【0197】
(3)各視点に対応するオーディオデータy(n,j)は下式(1)により表される。
【数1】
【0198】
ここでは、レンダリング情報rは利得(ゲイン情報)であると仮定する。この場合、レンダリング情報rの値域は0~1である。各視点のオーディオデータは、各オブジェクトのオーディオデータに利得をかけ、全オブジェクトのオーディオデータを加算したものとして表される。式(1)に示すような演算が、再生部223により行われる。
【0199】
(4)ユーザが指定する視点がj=0,1,2,…,M-1のいずれの視点でもない場合、過去のレンダリングパラメータ、現在のレンダリングパラメータを用いて、ユーザが指定する視点のレンダリングパラメータが生成される。
【0200】
(5)各視点に対応するオブジェクトのレンダリング情報は、オブジェクトの種類、オブジェクトの位置、視点の位置、および時刻によって下のように定義される。
r(obj_type, obj_loc_x, obj_loc_y, obj_loc_z, lis_loc_x, lis_loc_y, lis_loc_z, date_time)
【0201】
obj_typeは、オブジェクトの種類を示す情報であり、例えば楽器の種類を示す。
【0202】
obj_loc_x, obj_loc_y, obj_loc_zは、三次元空間上のオブジェクトの位置を示す情報である。
【0203】
lis_loc_x, lis_loc_y, lis_loc_zは、三次元空間上の視点の位置を示す情報である。
【0204】
date_timeは、演奏が行われた日付と時刻を表す情報である。
【0205】
メタデータエンコーダ212からは、このような、obj_type, obj_loc_x, obj_loc_y, obj_loc_z, lis_loc_x, lis_loc_y, lis_loc_z, date_timeから構成されるパラメータ情報が、レンダリング情報rとともに送信されてくる。
【0206】
以下、具体的に説明する。
【0207】
(6)例えば、ベース、ドラム、ギター、ボーカルの各オブジェクトが、
図28に示すように配置されるものとする。
図28は、会場#1にあるステージ#11を真上から見た図である。
【0208】
(7)会場#1に対して、
図29に示すようにXYZの各軸が設定される。
図29は、ステージ#11と観覧席を含む会場#1全体を斜め方向から見た図である。原点Oはステージ#11上の中心位置である。観覧席には、視点1~5が設定されている。
【0209】
各オブジェクトの座標が以下のように表されるものとする。単位はメートルである。
ベースの座標 :x=-20, y=0, z=0
ドラムの座標 :x=0, y=-10, z=0
ギターの座標 :x=20, y=0, z=0
ボーカルの座標:x=0, y=10, z=0
【0210】
(8)各視点の座標が以下のように表されるものとする。
視点1:x=0, y=50, z=-1
視点2:x=-20, y=30, z=-1
視点3:x=20, y=30, z=-1
視点4:x=-20, y=70, z=-1
視点5:x=20, y=70, z=-1
【0211】
(9)このとき、例えば視点1の各オブジェクトのレンダリング情報は、以下のように表される。
ベースのレンダリング情報
:r(0, -20, 0, 0, 0, 50, -1, 2014.11.5.18.34.50)
ドラムのレンダリング情報
:r(1, 0, -10, 0, 0, 50, -1, 2014.11.5.18.34.50)
ギターのレンダリング情報
:r(2, 20, 0, 0, 0, 50, -1, 2014.11.5.18.34.50)
ボーカルのレンダリング情報
:r(3, 0, 10, 0, 0, 50, -1, 2014.11.5.18.34.50)
【0212】
音楽ライブが行われた日付と時刻は、2014年11月5日18時34分50秒であるものとする。
また、各オブジェクトのobj_typeは以下の値をとるものとする。
ベース :obj_type=0
ドラム :obj_type=1
ギター :obj_type=2
ボーカル:obj_type=3
【0213】
視点1~5の各視点について、以上のようにして表されるパラメータ情報とレンダリング情報を含むレンダリングパラメータがメタデータエンコーダ212から送信されてくる。視点1~5の各視点のレンダリングパラメータを
図30、
図31に示す。
【0214】
(10)このとき、上式(1)から、視点1を選択した場合のオーディオデータは下式(2)のように表される。
【数2】
【0215】
ただし、x(n,i)について、iは以下のオブジェクトを表すものとする。
i=0:ベースのオブジェクト
i=1:ドラムのオブジェクト
i=2:ギターのオブジェクト
i=3:ボーカルのオブジェクト
【0216】
(11)視聴位置として、
図32に破線で示す視点6がユーザにより指定されたものとする。視点6のレンダリングパラメータはメタデータエンコーダ212から送信されてきていない。視点6の座標は以下のように表されるものとする。
視点6:x=0, y=30, z=-1
【0217】
この場合、現在(2014.11.5.18.34.50)の視点1~5のレンダリングパラメータ、および過去(2014.11.5.18.34.50よりも前)に送られてきた、近接する視点のレンダリングパラメータを用いて、現在の視点6のレンダリングパラメータが生成される。過去のレンダリングパラメータは蓄積部234から読み出される。
【0218】
(12)例えば、
図33に示す視点2Aと視点3Aのレンダリングパラメータが過去に送られてきているものとする。視点2Aは、視点2と視点4の間の位置にあり、視点3Aは、視点3と視点5の間の位置にある。視点2Aと視点3Aの座標は以下のように表されるものとする。
視点2A:x=-20, y=40, z=-1
視点3A:x=20, y=40, z=-1
【0219】
視点2A,3Aの各視点のレンダリングパラメータを
図34に示す。
図34においても、各オブジェクトのobj_typeは以下の値をとる。
ベース :obj_type=0
ドラム :obj_type=1
ギター :obj_type=2
ボーカル:obj_type=3
【0220】
このように、メタデータエンコーダ212からレンダリングパラメータが送信されてくる視点の位置は、常に固定の位置ではなく、そのときによって異なる位置となる。蓄積部234には、会場#1の様々な位置を視点としたときのレンダリングパラメータが記憶されている。
【0221】
なお、ベース、ドラム、ギター、ボーカルの各オブジェクトの構成や位置は、推定に用いる現在のレンダリングパラメータと過去のレンダリングパラメータにおいて同じであることが望ましいが、異なっていてもよい。
【0222】
(13)視点6のレンダリング情報の推定方法
パラメータ推定器233Aに対しては、以下の情報が入力される。
・視点1~5のパラメータ情報とレンダリング情報(
図30、
図31)
・視点2A,3Aのパラメータ情報とレンダリング情報(
図34)
・視点6のパラメータ情報(
図35)
【0223】
図35において、lis_loc_x, lis_loc_y, lis_loc_zは、ユーザにより選択された視点6の位置を表す。また、data_timeとして、現在の日付と時刻を表す2014.11.5.18.34.50が用いられる。
【0224】
パラメータ推定器233Aの入力として用いられる視点6のパラメータ情報は、例えば、視点1~5のパラメータ情報やユーザにより選択された視点の位置に基づいて、レンダリングパラメータ生成部233により生成される。
【0225】
このような各情報が入力された場合、パラメータ推定器233Aからは、
図35の右端列に示すような、視点6の各オブジェクトのレンダリング情報が出力される。
ベース(obj_type=0)のレンダリング情報
:r(0, -20, 0, 0, 0, 30, -1, 2014.11.5.18.34.50)
ドラム(obj_type=1)のレンダリング情報
:r(1, 0, -10, 0, 0, 30, -1, 2014.11.5.18.34.50)
ギター(obj_type=2)のレンダリング情報
:r(2, 20, 0, 0, 0, 30, -1, 2014.11.5.18.34.50)
ボーカル(obj_type=3)のレンダリング情報
:r(3, 0, 10, 0, 0, 30, -1, 2014.11.5.18.34.50)
【0226】
パラメータ推定器233Aから出力されたレンダリング情報は、視点6のパラメータ情報とともに再生部223に供給され、レンダリングに用いられる。このように、パラメータ生成部233は、レンダリングパラメータが用意されていない視点のパラメータ情報と、パラメータ推定器233Aを用いて推定したレンダリング情報からなるレンダリングパラメータを生成し、出力する。
【0227】
(14)パラメータ推定器233Aの学習
レンダリングパラメータ生成部233は、メタデータエンコーダ212から送信され、蓄積部234に蓄積されたレンダリングパラメータを学習用データとして用いて、パラメータ推定器233Aの学習を行う。
【0228】
パラメータ推定器233Aの学習は、メタデータエンコーダ212から送信されてきたレンダリング情報rを教師データとして行われる。例えば、レンダリングパラメータ生成部233は、レンダリング情報rと、ニューラルネットワークの出力r^との誤差(r^-r)が小さくなるように係数を調整することによって、パラメータ推定器233Aの学習を行う。
【0229】
コンテンツ生成装置101から送信されてきたレンダリングパラメータを用いた学習が行われることにより、パラメータ推定器233Aは、会場#1の所定の位置を視点としたときのレンダリングパラメータの生成に用いられる、会場#1用の推定器となる。
【0230】
以上においては、レンダリング情報rが0から1の値をとる利得であるものとしたが、
図13を参照して説明したような、イコライザ情報、コンプレッサー情報、リバーブ情報が含まれるようにしてもよい。すなわち、レンダリング情報rについては、利得、イコライザ情報、コンプレッサー情報、リバーブ情報のうちの少なくともいずれかを表す情報とすることが可能である。
【0231】
また、パラメータ推定器233Aが、
図27に示す各情報を入力とするものとしたが、単に、視点6のパラメータ情報を入力としたときに、レンダリング情報rを出力するようなニューラルネットワークとして構成されるようにしてもよい。
【0232】
<3.配信システムの他の構成例>
図36は、配信システムの他の構成例を示す図である。上述した構成と同じ構成には同じ符号を付してある。重複する説明については省略する。
図37以降についても同様である。
【0233】
図36の例においては、音楽ライブが行われている会場として会場#1-1乃至#1-3がある。会場#1-1乃至#1-3にはそれぞれコンテンツ生成装置101-1乃至101-3が設置される。コンテンツ生成装置101-1乃至101-3を区別する必要がない場合、まとめてコンテンツ生成装置101という。
【0234】
コンテンツ生成装置101-1乃至101-3は、それぞれ、
図24のコンテンツ生成装置101と同様の機能を有する。すなわち、コンテンツ生成装置101-1乃至101-3は、それぞれの会場で行われている音楽ライブを収録したコンテンツを、インターネット201を介して配信する。
【0235】
再生装置1は、ユーザにより選択された音楽ライブが行われている会場に設置されたコンテンツ生成装置101が配信するコンテンツを受信し、上述したようにして、オブジェクトベースのオーディオデータの再生などを行う。再生装置1のユーザは、所定の会場で行われている音楽ライブを、視点を選択して視聴することができる。
【0236】
上述した例においては、レンダリングパラメータの生成に用いられるパラメータ推定器が再生装置1において生成されるものとしたが、
図36の例においては、コンテンツ生成装置101側で生成されるようになっている。
【0237】
すなわち、コンテンツ生成装置101-1乃至101-3は、それぞれ、上述したように過去のレンダリングパラメータを学習用データとして用いるなどしてパラメータ推定器を生成する。
【0238】
コンテンツ生成装置101-1が生成するパラメータ推定器は、会場#1-1の音響特性や各視聴位置に応じた、会場#1-1用のパラメータ推定器となる。コンテンツ生成装置101-2が生成するパラメータ推定器は会場#1-2用のパラメータ推定器となり、コンテンツ生成装置101-3が生成するパラメータ推定器は会場#1-3用のパラメータ推定器となる。
【0239】
再生装置1は、例えば、コンテンツ生成装置101-1が生成するコンテンツを再生する場合、会場#1-1用のパラメータ推定器を取得する。再生装置1は、レンダリングパラメータが用意されていない視点がユーザにより選択された場合、上述したように、現在と過去のレンダリングパラメータを会場#1-1用のパラメータ推定器に入力し、レンダリングパラメータを生成する。
【0240】
このように、
図36の配信システムにおいては、会場毎のパラメータ推定器がコンテンツ生成装置101側で用意され、再生装置1に提供される。各会場用のパラメータ推定器を用いて任意の視点のレンダリングパラメータが生成されるから、再生装置1のユーザは、各会場の音楽ライブを任意の視点を選択して視聴することができる。
【0241】
図37は、再生装置1とコンテンツ生成装置101の構成例を示すブロック図である。
【0242】
図37に示すコンテンツ生成装置101の構成は、パラメータ推定器学習部213が設けられている点で、
図25に示す構成と異なる。
図37に示すコンテンツ生成装置101の構成と同じ構成を、
図36のコンテンツ生成装置101-1乃至101-3はそれぞれ有している。
【0243】
パラメータ推定器学習部213は、メタデータエンコーダ212により生成されたレンダリングパラメータを学習用データとして用いて、パラメータ推定器の学習を行う。パラメータ推定器学習部213は、コンテンツの配信を開始する前などの所定のタイミングで、再生装置1に対してパラメータ推定器を送信する。
【0244】
再生装置1のメタデータデコーダ222のメタデータ取得部231は、コンテンツ生成装置101から送信されてきたパラメータ推定器を受信し、取得する。メタデータ取得部231は、会場に応じたパラメータ推定器を取得する取得部として機能する。
【0245】
メタデータ取得部231により取得されたパラメータ推定器はメタデータデコーダ222のレンダリングパラメータ生成部233に設定され、適宜、レンダリングパラメータの生成に用いられる。
【0246】
図38は、
図37のパラメータ推定器学習部213の構成例を示すブロック図である。
【0247】
パラメータ推定器学習部213は、学習部251、推定器DB252、および推定器提供部253から構成される。
【0248】
学習部251は、メタデータエンコーダ212により生成されたレンダリングパラメータを学習用データとして用いて、推定器DB252に格納されたパラメータ推定器の学習を行う。
【0249】
推定器提供部253は、送信制御部116(
図22)を制御し、推定器DB252に格納されたパラメータ推定器を再生装置1に送信する。推定器提供部253は、パラメータ推定器を再生装置1に提供する提供部として機能する。
【0250】
このように、会場毎のパラメータ推定器がコンテンツ生成装置101側で用意され、コンテンツの再生開始前などの所定のタイミングで再生装置1に提供されるようにすることが可能である。
【0251】
図36の例においては、各会場に設置されたコンテンツ生成装置101において各会場用のパラメータ推定器が生成されるものとしたが、インターネット201に接続されたサーバにおいて生成されるようにすることも可能である。
【0252】
図39は、配信システムのさらに他の構成例を示すブロック図である。
【0253】
図39の管理サーバ301は、会場#1-1乃至#1-3に設置されたコンテンツ生成装置101-1乃至101-3から送信されてきたレンダリングパラメータを受信し、各会場用のパラメータ推定器を学習する。すなわち、
図38のパラメータ推定器学習部213を、管理サーバ301は有している。
【0254】
管理サーバ301は、所定の会場の音楽ライブのコンテンツを再生装置1が再生する場合、その会場用のパラメータ推定器を再生装置1に送信する。再生装置1は、管理サーバ301から送信されてきたパラメータ推定器を適宜用いて、オーディオの再生を行う。
【0255】
このように、インターネット201に接続された管理サーバ301を介して、パラメータ推定器の提供が行われるようにしてもよい。なお、パラメータ推定器の学習がコンテンツ生成装置101側で行われ、生成されたパラメータ推定器が管理サーバ301に提供されるようにしてもよい。
【0256】
本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0257】
例えば、本技術は、1つの機能をネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成をとることができる。
【0258】
また、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0259】
さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0260】
本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0261】
・プログラムについて
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、汎用のパーソナルコンピュータなどにインストールされる。
【0262】
インストールされるプログラムは、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)や半導体メモリなどよりなる
図7に示されるリムーバブルメディア22に記録して提供される。また、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供されるようにしてもよい。プログラムは、ROM12や記憶部19に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0263】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0264】
・組み合わせについて
本技術は、以下のような構成をとることもできる。
(1)
それぞれのオーディオオブジェクトの音声データと、複数の想定聴取位置のそれぞれに対する、前記音声データのレンダリングパラメータとを含むコンテンツを取得する取得部と、
選択された所定の前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータに基づいて前記音声データのレンダリングを行い、音声信号を出力するレンダリング部と
を備える再生装置。
(2)
前記コンテンツには、あらかじめ設定された前記想定聴取位置に関する情報がさらに含まれ、
前記想定聴取位置に関する情報に基づいて、前記想定聴取位置の選択に用いられる画面を表示させる表示制御部をさらに備える
前記(1)に記載の再生装置。
(3)
それぞれの前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータには、前記オーディオオブジェクトを定位させる位置を表す定位情報と、前記音声データのゲイン調整用のパラメータであるゲイン情報が含まれる
前記(1)または(2)に記載の再生装置。
(4)
前記レンダリング部は、音源位置を固定させる前記オーディオオブジェクトとして選択された前記オーディオオブジェクトの前記音声データのレンダリングを、選択された前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータとは異なる前記レンダリングパラメータに基づいて行う
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の再生装置。
(5)
前記レンダリング部は、前記コンテンツの音声を構成する複数の前記オーディオオブジェクトのうち、所定の前記オーディオオブジェクトの前記音声データのレンダリングを行わない
前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の再生装置。
(6)
前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータに基づいて、それぞれの前記オーディオオブジェクトの、前記レンダリングパラメータが用意されていない前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータを生成する生成部をさらに備え、
前記レンダリング部は、それぞれの前記オーディオオブジェクトの前記音声データのレンダリングを、前記生成部により生成された前記レンダリングパラメータを用いて行う
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の再生装置。
(7)
前記生成部は、前記レンダリングパラメータが用意されている近傍の複数の前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータに基づいて、前記レンダリングパラメータが用意されていない前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータを生成する
前記(6)に記載の再生装置。
(8)
前記生成部は、過去に取得された前記コンテンツに含まれる前記レンダリングパラメータに基づいて、前記レンダリングパラメータが用意されていない前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータを生成する
前記(6)に記載の再生装置。
(9)
前記生成部は、前記レンダリングパラメータが用意されていない前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータを、推定器を用いて生成する
前記(6)に記載の再生装置。
(10)
前記取得部は、前記コンテンツの収録が行われる会場に応じた前記推定器を取得し、
前記生成部は、前記取得部により取得された前記推定器を用いて前記レンダリングパラメータを生成する
前記(9)に記載の再生装置。
(11)
前記推定器は、少なくとも過去に取得された前記コンテンツに含まれる前記レンダリングパラメータを用いた学習によって構成される
前記(9)または(10)に記載の再生装置。
(12)
前記コンテンツには、前記想定聴取位置を視点位置とした映像の表示に用いられるビデオデータがさらに含まれ、
前記ビデオデータを再生し、選択された所定の前記想定聴取位置を視点位置とする映像を表示させるビデオ再生部をさらに備える
前記(1)乃至(11)のいずれかに記載の再生装置。
(13)
それぞれのオーディオオブジェクトの音声データと、複数の想定聴取位置のそれぞれに対する、前記音声データのレンダリングパラメータとを含むコンテンツを取得し、
選択された所定の前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータに基づいて前記音声データのレンダリングを行い、音声信号を出力する
ステップを含む再生方法。
(14)
コンピュータに、
それぞれのオーディオオブジェクトの音声データと、複数の想定聴取位置のそれぞれに対する、前記音声データのレンダリングパラメータとを含むコンテンツを取得し、
選択された所定の前記想定聴取位置に対する前記レンダリングパラメータに基づいて前記音声データのレンダリングを行い、音声信号を出力する
ステップを含む処理を実行させるプログラム。
(15)
複数の想定聴取位置のそれぞれに対する、それぞれのオーディオオブジェクトの音声データのレンダリングパラメータを生成するパラメータ生成部と、
それぞれの前記オーディオオブジェクトの前記音声データと、生成された前記レンダリングパラメータとを含むコンテンツを生成するコンテンツ生成部と
を備える情報処理装置。
(16)
前記パラメータ生成部は、あらかじめ設定された前記想定聴取位置に関する情報をさらに生成し、
前記コンテンツ生成部は、前記想定聴取位置に関する情報をさらに含む前記コンテンツを生成する
前記(15)に記載の情報処理装置。
(17)
前記想定聴取位置を視点位置とした映像の表示に用いられるビデオデータを生成するビデオ生成部をさらに備え、
前記コンテンツ生成部は、前記ビデオデータをさらに含む前記コンテンツを生成する
前記(15)または(16)に記載の情報処理装置。
(18)
前記レンダリングパラメータが生成された複数の前記想定聴取位置以外の位置を聴取位置としたときの前記レンダリングパラメータの生成に用いられる推定器を生成する学習部をさらに備える
前記(15)乃至(17)のいずれかに記載の情報処理装置。
(19)
前記コンテンツの再生を行う再生装置に前記推定器を提供する提供部をさらに備える
前記(18)に記載の情報処理装置。
(20)
複数の想定聴取位置のそれぞれに対する、それぞれのオーディオオブジェクトの音声データのレンダリングパラメータを生成し、
それぞれの前記オーディオオブジェクトの前記音声データと、生成された前記レンダリングパラメータとを含むコンテンツを生成する
ステップを含む情報処理方法。
【符号の説明】
【0265】
1 再生装置, 33 オーディオ再生部, 51 レンダリングパラメータ選択部, 52 オブジェクトデータ記憶部, 53 視点情報表示部, 54 レンダリング部