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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】発振器、電子機器および移動体
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023079089
(22)【出願日】2023-05-12
(62)【分割の表示】P 2019031049の分割
【原出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2023091026
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】西澤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】青木 信也
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142899(JP,A)
【文献】特開2004-015444(JP,A)
【文献】特開2013-243606(JP,A)
【文献】特開2010-258944(JP,A)
【文献】特開2018-157377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30- 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ベース基板および前記第1ベース基板に接合されている第1リッドを含み、第1内部空間を有する第1容器と、
前記第1内部空間に収容され、前記第1ベース基板に固定されている第2容器と、
前記第2容器に収容されている振動片と、
前記第2容器に収容されている温度センサーと、
前記第2容器に収容されており、前記振動片を発振させ、前記温度センサーの検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する発振回路を含む第1回路素子と、
前記第1ベース基板に固定されており、前記発振信号の周波数を制御する周波数制御回路を含む第2回路素子と、を備え、
前記第2容器と前記第2回路素子とは、平面視で並んで配置されており、
前記第2容器は、前記温度センサーの出力信号が出力される温度出力端子を有し、
前記温度出力端子は、前記周波数制御回路に電気的に接続されており、
前記周波数制御回路は、前記温度センサーの前記出力信号に基づいて前記発振信号の周波数を制御し、
前記第1ベース基板は、前記第1リッド側の面に開口する第1の凹部と、
前記第1の凹部の底面に開口し、前記第1の凹部よりも開口が小さい第2の凹部と、
前記第1の凹部の底面に開口し、前記第1の凹部よりも開口が小さい第3の凹部と、を有し、
前記第2の凹部の深さは、前記第3の凹部の深さよりも大きく、
前記第1ベース基板は、前記第2の凹部が形成された第1部分と、前記第1部分よりも厚く、前記第3の凹部が形成された第2部分と、を有し、
前記第2の凹部内の前記第1部分に前記第2容器が固定され、前記第3の凹部内の前記第2部分に前記第2回路素子が固定されており、
前記第2容器の前記第1リッド側の面は、前記第2回路素子の前記第1リッド側の面と同じ高さに配置されているか、または、前記第2回路素子の前記第1リッド側の面よりも前記第1リッド側に配置されていることを特徴とする発振器。
【請求項2】
前記第2容器は、前記発振回路に供給される電源電圧が印加される電源端子を有し、
前記第1容器に収容され、前記電源端子に接続されているバイパスコンデンサーを備えている請求項1に記載の発振器。
【請求項3】
前記第1容器に収容され、前記第1ベース基板に固定されている第1バイパスコンデンサーおよび第2バイパスコンデンサーを備え、
前記第1バイパスコンデンサーの一端と前記第2バイパスコンデンサーの一端とが向かい合って配置され、
前記第1バイパスコンデンサーおよび前記第2バイパスコンデンサーの向かい合っている側の端部同士が同電位である請求項1に記載の発振器。
【請求項4】
前記第2容器は、絶縁性接合部材を介して前記第1ベース基板に固定されている請求項1ないしのいずれか一項に記載の発振器。
【請求項5】
前記第2容器は、平面視で、第1辺および前記第1辺より前記第2回路素子に近い第2辺を有すると共に、前記発振信号が出力される発振出力端子を備え、
前記発振出力端子は、前記第2辺の両端に位置する2つの角部のいずれかに設けられている請求項1ないしのいずれか一項に記載の発振器。
【請求項6】
前記第2容器は、第2ベース基板および前記第2ベース基板に接合されている第2リッドを含み、前記振動片および前記第1回路素子が収容されている第2内部空間を有し、
前記第2リッドが前記第1ベース基板に固定されている請求項1ないしのいずれか一項に記載の発振器。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の発振器と、
前記発振器の出力信号に基づいて信号処理を行う信号処理回路と、を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の発振器と、
前記発振器の出力信号に基づいて信号処理を行う信号処理回路と、を備えていることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器、電子機器および移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外側パッケージと、外側パッケージに収容されている内側パッケージと、内側パッケージに収容されている振動片と、外側パッケージに収容されており、内側パッケージと平面視で並んで配置されている回路素子と、を有する発振器が記載されている。また、特許文献1の発振器では、回路素子に温度センサーが含まれており、温度センサーが検出する温度に基づいて出力信号の周波数を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-107862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発振器では、温度センサーを含む回路素子が振動片を収容する内側パッケージの外側に位置しているため、温度センサーと振動片との温度差が生じ易く、出力信号の補正を高い精度で行うことが困難となる。そのため、出力信号の周波数精度が低下するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の適用例に係る発振器は、第1ベース基板および前記第1ベース基板に接合されている第1リッドを含み、第1内部空間を有する第1容器と、
前記第1内部空間に収容され、前記第1ベース基板に固定されている第2容器と、
前記第2容器に収容されている振動片と、
前記第2容器に収容されている温度センサーと、
前記第2容器に収容されており、前記振動片を発振させ、前記温度センサーの検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する発振回路を含む第1回路素子と、
前記第1ベース基板に固定されており、前記発振信号の周波数を制御する周波数制御回路を含む第2回路素子と、を備え、
前記第2容器と前記第2回路素子とは、平面視で並んで配置されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第1ベース基板は、第1部分と、前記第1部分よりも厚い第2部分と、を有し、
前記第1部分および前記第2部分の一方に前記第2容器が固定され、他方に前記第2回路素子が固定されていることが好ましい。
【0007】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第2容器および前記第2回路素子のうちの厚さが薄い方が前記第2部分に固定され、厚さが厚い方が前記第1部分に固定されていることが好ましい。
【0008】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第2容器は、前記温度センサーの出力信号が出力される温度出力端子を有し、
前記温度出力端子は、前記周波数制御回路に電気的に接続されていることが好ましい。
【0009】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第2容器は、前記発振回路に供給される電源電圧が印加される電源端子を有し、
前記第1容器に収容され、前記電源端子に接続されているバイパスコンデンサーを備えていることが好ましい。
【0010】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第1容器に収容され、前記第1ベース基板に固定されている第1バイパスコンデンサーおよび第2バイパスコンデンサーを備え、
前記第1バイパスコンデンサーの一端と前記第2バイパスコンデンサーの一端とが向かい合って配置され、
前記第1バイパスコンデンサーおよび前記第2バイパスコンデンサーの向かい合っている側の端部同士が同電位であることが好ましい。
【0011】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第2容器は、絶縁性接合部材を介して前記第1ベース基板に固定されていることが好ましい。
【0012】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第2容器は、平面視で、第1辺および前記第1辺より前記第2回路素子に近い第2辺を有すると共に、前記発振信号が出力される発振出力端子を備え、
前記発振出力端子は、前記第2辺の両端に位置する2つの角部のいずれかに設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第2容器は、第2ベース基板および前記第2ベース基板に接合されている第2リッドを含み、前記振動片および前記第1回路素子が収容されている第2内部空間を有し、
前記第2リッドが前記第1ベース基板に固定されていることが好ましい。
【0014】
本発明の適用例に係る電子機器は、上述の発振器と、
前記発振器の出力信号に基づいて信号処理を行う信号処理回路と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明の適用例に係る移動体は、上述の発振器と、
前記発振器の出力信号に基づいて信号処理を行う信号処理回路と、を備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の発振器を示す断面図である。
図2図1の発振器を示す平面図である。
図3図2中のA-A線断面図である。
図4図1の発振器が有する温度補償型水晶発振器を下側から見た平面図である。
図5図1の発振器が有する第2回路素子の回路図である。
図6】第2実施形態の発振器を示す断面図である。
図7】第3実施形態のパーソナルコンピューターを示す斜視図である。
図8】第4実施形態の自動車を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の発振器、電子機器および移動体の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の発振器を示す断面図である。図2は、図1の発振器を示す平面図である。図3は、図2中のA-A線断面図である。図4は、図1の発振器が有する温度補償型水晶発振器を下側から見た平面図である。図5は、図1の発振器が有する第2回路素子の回路図である。なお、説明の便宜上、各図には、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を図示している。また、以下では、各軸の矢印先端側を「プラス」と言い、反対側を「マイナス」と言う。また、Z軸方向プラス側を「上」とも言い、Z軸方向マイナス側を「下」とも言う。また、Z軸方向からの平面視を単に「平面視」とも言う。
【0019】
図1および図2に示す発振器1は、外側パッケージ2と、外側パッケージ2に収容されている温度補償型水晶発振器3(TCXO)、第2回路素子4およびディスクリート部品81、82と、を有する。また、温度補償型水晶発振器3は、内側パッケージ5と、内側パッケージ5に収容されている振動片6および第1回路素子7と、を有する。
【0020】
外側パッケージ2は、上面に開口する凹部211を備える第1ベース基板21と、凹部211の開口を塞ぐように第1ベース基板21の上面に接合部材23を介して接合されている第1リッド22と、を有する。外側パッケージ2の内側には凹部211によって気密な第1内部空間S2が形成され、第1内部空間S2に温度補償型水晶発振器3および第1回路素子7が収容されている。なお、特に限定されないが、第1ベース基板21は、アルミナ等のセラミックスで構成することができ、第1リッド22は、コバール等の金属材料で構成することができる。
【0021】
また、凹部211は、複数の凹部で構成され、図示の構成では、第1ベース基板21の上面に開口する凹部211aと、凹部211aの底面に開口し、凹部211aよりも開口が小さい凹部211bおよび凹部211cと、を有する。凹部211b、211cは、X軸方向に並んで形成され、凹部211bの深さDbは、凹部211cの深さDcよりも大きい。したがって、凹部211bの底面は、凹部211cの底面よりも下側に位置している。また、第1ベース基板21の凹部211bと重なっている部分の厚さtbは、凹部211cと重なっている部分の厚さtcよりも小さい。以下では、第1ベース基板21の凹部211bと重なっている部分を「薄肉部21A」とも言い、第1ベース基板21の凹部211cと重なっている部分を「厚肉部21B」とも言う。ただし、凹部211の構成は、特に限定されない。
【0022】
そして、凹部211cの底面に第2回路素子4が固定され、凹部211bの底面に温度補償型水晶発振器3が固定されている。また、図2に示すように、凹部211bの底面には、温度補償型水晶発振器3と重ならないように、単体の回路部品である2つのディスクリート部品81、82が固定されている。このような配置によれば、平面視で、第2回路素子4、温度補償型水晶発振器3および各ディスクリート部品81、82をZ軸方向に重ねることなく、X軸方向およびY軸方向に並べて配置することができる。そのため、外側パッケージ2の低背化を図ることができる。
【0023】
また、図1に示すように、凹部211aの底面には複数の内部端子241が配置されており、第1ベース基板21の下面には複数の外部端子243が配置されている。これら内部端子241同士または内部端子241と外部端子243とは、第1ベース基板21内に形成されている図示しない配線を介して電気的に接続されている。また、いくつかの内部端子241は、ボンディングワイヤーBW1を介して第2回路素子4と電気的に接続され、いくつかの内部端子241は、ボンディングワイヤーBW2を介して温度補償型水晶発振器3と電気的に接続されている。
【0024】
第1内部空間S2の雰囲気としては、特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換され、大気圧に対して減圧された減圧状態、特に真空状態であることが好ましい。これにより、外側パッケージ2の断熱性が高まり、外部の温度の影響を受け難い発振器1となる。また、外側パッケージ2に収容されている内側パッケージ5と第2回路素子4との間の熱交換、特に対流による熱交換が抑制される。そのため、第2回路素子4の熱によって第1回路素子7に含まれる温度センサー71と振動片6とが不均一に加熱されるのを抑制することができる。つまり、第2回路素子4の熱によって振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じるのを抑制することができる。したがって、温度センサー71によって振動片6の温度を精度よく検出することができ、高い精度の発振器1が得られる。
【0025】
なお、第1内部空間S2の雰囲気としては、これに限定されず、例えば、大気圧状態であってもよいし、加圧状態であってもよい。また、第1内部空間S2は、窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換されておらず、大気すなわち空気で満たされていてもよい。また、第1内部空間S2は、気密でなく、外側パッケージ2の外部と連通していてもよい。
【0026】
図3に示すように、温度補償型水晶発振器3は、内側パッケージ5と、内側パッケージ5に収容されている振動片6および第1回路素子7と、を有する。また、内側パッケージ5は、下面に開口する凹部511を備える第2ベース基板51と、凹部511の開口を塞ぐように第2ベース基板51の下面に接合部材53を介して接合されている第2リッド52と、を有する。内側パッケージ5には凹部511により気密な第2内部空間S5が形成され、第2内部空間S5に振動片6および第1回路素子7が収容されている。なお、特に限定されないが、第2ベース基板51は、アルミナ等のセラミックスで構成することができ、第2リッド52は、コバール等の金属材料で構成することができる。
【0027】
また、凹部511は、複数の凹部によって構成され、図4に示すように、第2ベース基板51の下面に開口する凹部511aと、凹部511aの底面に開口し、凹部511aよりも開口が小さい凹部511bと、凹部511bの底面に開口し、凹部511bよりも開口が小さい凹部511cと、凹部511cの底面に開口し、凹部511cよりも開口が小さい凹部511dと、を有する。ただし、凹部511の構成は、特に限定されない。
【0028】
そして、凹部511bの底面に振動片6が固定され、凹部511dの底面に第1回路素子7が固定されている。このような配置によれば、振動片6および第1回路素子7を内側パッケージ5内においてZ軸方向すなわち発振器1の高さ方向に重ねて配置することができる。そのため、これらを内側パッケージ5内においてコンパクトに収容することができ、温度補償型水晶発振器3の小型化を図ることができる。なお、振動片6の配置は、これに限定されず、例えば、第1回路素子7の上面に固定されていてもよい。
【0029】
また、凹部511aの底面には複数の内部端子541が配置され、凹部511cの底面には複数の内部端子542が配置され、第2ベース基板51の上面には複数の外部端子543が配置されている。これら内部端子541、542および外部端子543は、第2ベース基板51内に形成されている図示しない配線を介して電気的に接続されている。また、複数の内部端子541は、それぞれ、ボンディングワイヤーBW3を介して振動片6と電気的に接続され、複数の内部端子542は、それぞれ、ボンディングワイヤーBW4を介して第1回路素子7と電気的に接続されている。ただし、振動片6と内部端子541との接続方法および第1回路素子7と内部端子542との接続方法は、それぞれ、特に限定されない。
【0030】
第2内部空間S5の雰囲気としては、特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換され、大気圧に対して減圧された減圧状態、特に真空状態であることが好ましい。これにより、粘性抵抗が減り、振動片6を効率よく振動させることができる。ただし、第2内部空間S5の雰囲気としては、これに限定されず、大気圧状態、加圧状態であってもよい。これにより、第2内部空間S5内に対流による熱移動が生じ易くなり、振動片6と温度センサー71との温度差をより小さくすることができ、温度センサー71による振動片6の温度検知の精度が高まる。また、第2内部空間S5は、窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換されておらず、大気すなわち空気で満たされていてもよい。また、第2内部空間S5は、気密でなく、第1内部空間S2と連通していてもよい。
【0031】
振動片6は、ATカット水晶振動片である。ATカット水晶振動片は、三次の周波数温度特性を有するため、周波数安定性に優れている。図4に示すように、振動片6は、ATカットで切り出された矩形の水晶基板60と、水晶基板60の表面に配置されている電極61と、を有する。また、電極61は、水晶基板60の下面に配置されている第1励振電極621と、水晶基板60の上面に配置され、水晶基板60を介して第1励振電極621と対向している第2励振電極631と、を有する。また、電極61は、水晶基板60の下面であって、その縁部に並んで配置されている第1パッド電極622および第2パッド電極632と、第1励振電極621と第1パッド電極622とを電気的に接続する第1引出電極623と、第2励振電極631と第2パッド電極632とを電気的に接続する第2引出電極633と、を有する。
【0032】
このような振動片6は、その一端部において接合部材B3を介して凹部511bの底面に接合されている。そして、第1パッド電極622および第2パッド電極632がそれぞれボンディングワイヤーBW3を介して内部端子541と電気的に接続されている。なお、第1パッド電極622および第2パッド電極632は、ボンディングワイヤーを介してではなく、それぞれが導電性接着剤を介して内側パッケージ5と電気的に接続されていてもよい。また、接合部材B3としては、特に限定されず、例えば、金属バンプ、半田、ろう材、金属ペースト、導電性樹脂接着剤に代表される導電性接合部材であってもよいし、エポキシ系、シリコーン系、ポリイミド系等の各種樹脂接着剤に代表される絶縁性接合部材であってもよいが、導電性接合部材であることが好ましい。
【0033】
導電性接合部材は、金属材料を含んでいるため、樹脂接着剤に代表される金属材料を含まない絶縁性接合部材と比べて熱伝導率が高い。そのため、接合部材B3および第2ベース基板51を介して振動片6と第1回路素子7とが熱的に結合し易く、これらの間の温度差をより小さく抑えることができる。そのため、温度センサー71によって振動片6の温度を精度よく検出することができる。
【0034】
ただし、振動片6の構成は、特に限定されない。例えば、水晶基板60の平面視形状は、矩形に限定されない。また、振動片6として、ATカット水晶振動片の他にも、SCカット水晶振動片、BTカット水晶振動片、音叉型水晶振動片、弾性表面波共振子、その他の圧電振動片、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)共振素子等を用いることもできる。
【0035】
また、水晶基板60に替えて、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ホウ酸リチウム(Li)、ランガサイト(LaGaSiO14)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、リン酸ガリウム(GaPO)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO、Zn)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbPO)、ニオブ酸ナトリウムカリウム((K,Na)NbO)、ビスマスフェライト(BiFeO)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO)、チタン酸ビスマス(BiTi12)、チタン酸ビスマスナトリウム(Na0.5Bi0.5TiO)等の各種圧電基板を用いてもよいし、例えば、シリコン基板等の圧電基板以外の基板を用いてもよい。
【0036】
図3に示すように、第1回路素子7は、温度センサー71と、発振回路72と、を有する。発振回路72は、振動片6を発振させ、温度センサー71の検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する機能を有する。つまり、発振回路72は、振動片6と電気的に接続され、振動片6の出力信号を増幅し、増幅した信号を振動片6にフィードバックすることにより振動片6を発振させる発振回路部721と、温度センサー71から出力される温度情報に基づいて、出力信号の周波数変動が振動片6自身の周波数温度特性よりも小さくなるように温度補償する温度補償回路部722と、を有する。なお、発振回路72としては、例えば、ピアース発振回路、インバーター型発振回路、コルピッツ発振回路、ハートレー発振回路等の発振回路を用いることができる。なお、発振回路72が有する温度補償回路部722としては、例えば、発振回路部721に接続された可変容量回路の容量を調整することにより発振回路部721の発振周波数を調整するものであってもよいし、発振回路部721の出力信号の周波数をPLL回路やダイレクトデジタルシンセサイザー回路により調整するものであってもよい。
【0037】
このように、温度センサー71および振動片6を共に内側パッケージ5に収容することにより、温度センサー71を振動片6と同じ空間でかつ振動片6の近傍に配置することが可能となる。そのため、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができ、発振回路72による温度補償がより正確なものとなる。
【0038】
なお、本実施形態では、温度センサー71がIC温度センサーで構成され、第1回路素子7に内蔵されているが、これに限定されない。つまり、温度センサー71は、第1回路素子7と別体で設けられるディスクリート部品であってもよい。この場合、温度センサー71は、例えば、サーミスタ、熱電対等によって構成することができる。また、温度センサー71の配置は、第2内部空間S5内であって、振動片6の温度を検出することができれば、特に限定されず、例えば、第2ベース基板51や第1回路素子7の上面に配置することができる。
【0039】
以上、温度補償型水晶発振器3について説明した。温度補償型水晶発振器3は、前述した外部端子543を4つ有し、図2に示すように、1つは第1回路素子7に供給する電源電圧用の端子543a、1つは電源電圧に対するグランド用の端子543b、1つは発振回路72が出力する発振信号用の端子543c、1つは温度センサー71が出力する温度信号用の端子543dである。
【0040】
内側パッケージ5は、平面視で、X軸方向マイナス側に位置し、Y軸と平行な第1辺5aと、X軸方向プラス側に位置し、Y軸と平行な第2辺5bと、を有する。すなわち、第2辺5bは、第1辺5aよりも第2回路素子4の近くに配置されている。そして、第1辺5aのY軸方向プラス側の端に位置する角部に端子543bが位置し、第1辺5aのY軸方向マイナス側の端に位置する角部に端子543dが位置し、第2辺5bのY軸方向プラス側の端に位置する角部に端子543cが位置し、第2辺5bのY軸方向マイナス側の端に位置する角部に端子543aが位置している。このような配置によれば、端子543cを第2回路素子4のより近くに配置することができ、端子543cと第2回路素子4との間の配線長さを短くすることができる。そのため、発振回路72が出力する発振信号にノイズが乗り難く、精度のよい発振信号を第2回路素子4に出力することができる。ただし、外部端子543の数、配置、用途は、それぞれ、特に限定されない。
【0041】
温度補償型水晶発振器3は、図1に示すように、第2リッド52を凹部211bの底面に向けた姿勢で配置され、第2リッド52が絶縁性接合部材B1を介して凹部211bの底面に固定されている。すなわち、温度補償型水晶発振器3は、第1ベース基板21の薄肉部21Aに配置されている。このように第2リッド52を凹部211bの底面に固定することにより、例えば、後述する第2実施形態のように第2ベース基板51を凹部211bの底面に固定する場合と比べて、内側パッケージ5と第1ベース基板21との接合部から振動片6および第1回路素子7までの熱伝達経路が長くなる。そのため、第2回路素子4の熱が振動片6および第1回路素子7に伝わり難くなる。その結果、振動片6と温度センサー71との温度差をより小さく抑えることができる。
【0042】
なお、絶縁性接合部材B1としては、特に限定されず、例えば、エポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系等の各種樹脂接着剤を用いることができる。このような絶縁性接合部材B1は、半田、金属ペースト等に代表される金属系の導電性接合部材と比べて熱伝導率が低く、導電性接合部材を介して第1ベース基板21と温度補償型水晶発振器3とを接合する場合と比べて、第1ベース基板21の熱が絶縁性接合部材B1を介して内側パッケージ5に伝わり難くい。そのため、温度補償型水晶発振器3の断熱性が高まり、外界温度の影響を受け難い温度補償型水晶発振器3となる。また、第1ベース基板21を介して第2回路素子4の熱が温度補償型水晶発振器3に伝わり難くもなり、内側パッケージ5内の振動片6および第1回路素子7の過度な昇温や、振動片6と温度センサー71との間の温度差が増大するのを効果的に抑制することができる。その結果、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができ、それに伴って、発振回路72による温度補償がより正確なものとなる。したがって、高精度な周波数信号を出力可能な発振器1となる。
【0043】
また、図2に示すように、温度補償型水晶発振器3が有する4つの外部端子543のうち、端子543a、543b、543dは、それぞれ、ボンディングワイヤーBW2を介して内部端子241と電気的に接続されている。これに対して、端子543cは、ボンディングワイヤーBW5を介して第2回路素子4と直接、接続されている。これにより、端子543cと第2回路素子4との間の配線長を短くすることができる。そのため、発振回路72が出力する発振信号にノイズが乗り難く、精度のよい発振信号を第2回路素子4に出力することができる。また、端子543aは、さらに、ボンディングワイヤーBW6を介して第2回路素子4にも電気的に接続されている。これにより、電源電圧を第2回路素子4にも供給することができる。
【0044】
前述したように、第2リッド52を凹部211bの底面に向けた姿勢で温度補償型水晶発振器3を第1ベース基板21に固定することにより、各外部端子543が第1リッド22側を向くため、ボンディングワイヤーBW1、BW2、BW5、BW6による接続を容易に行うことができる。
【0045】
図1に示すように、第2回路素子4は、外側パッケージ2に収容されており、接合部材B2を介して凹部211cの底面に接合されている。すなわち、第2回路素子4は、第1ベース基板21の厚肉部21Bに配置されている。接合部材B2としては、特に限定されず、例えば、金属バンプ、半田、ろう材、金属ペースト、導電性樹脂接着剤等の導電性接合部材であってもよいし、樹脂接着剤等の絶縁性接合部材であってもよいが、導電性接合部材であることが好ましい。
【0046】
導電性接合部材は、金属材料を含んでいるため、樹脂接着剤に代表される金属材料を含まない絶縁性接合部材と比べて熱伝導率が高く、第2回路素子4の熱が接合部材B2を介して外側パッケージ2に伝わり易くなる。そのため、第2回路素子4の熱が外側パッケージ2から外部へ放出され易くなり、第2回路素子4の過度な昇温や第1内部空間S2内の熱のこもりを抑制することができる。また、第2回路素子4の放熱性が高まる分、第2回路素子4の熱が内側パッケージ5に伝わり難くなり、前述したような振動片6および第1回路素子7の過度な昇温や、振動片6と温度センサー71との間の温度差の増大をより効果的に抑制することができる。その結果、温度センサー71によって振動片6の温度を精度よく検出することができ、発振回路72による温度補償がより正確なものとなる。したがって、高精度な周波数信号を出力可能な発振器1となる。
【0047】
このような第2回路素子4は、図5に示すように、発振回路72から出力される発振信号の周波数を制御し、温度補償型水晶発振器3が出力する発振信号に残っている周波数温度特性をさらに補正する周波数制御回路としての小数分周型のPLL回路40(位相同期回路)と、温度補正テーブル481が記憶されている記憶部48と、出力回路49と、を有する。本実施形態では、PLL回路40、記憶部48および出力回路49が1チップの回路素子として構成されているが、複数チップの回路素子によって構成されていてもよいし、一部がディスクリート部品によって構成されていてもよい。
【0048】
PLL回路40は、位相比較器41と、チャージポンプ42と、ローパスフィルター43と、電圧制御型発振回路44と、分周回路45と、を有する。位相比較器41は、発振回路72が出力する発振信号と分周回路45が出力するクロック信号の位相差を比較し、その比較結果をパルス電圧として出力する。チャージポンプ42は、位相比較器41が出力するパルス電圧を電流に変換し、ローパスフィルター43は、チャージポンプ42が出力する電流を平滑化および電圧変換する。
【0049】
電圧制御型発振回路44は、ローパスフィルター43の出力電圧を制御電圧として、制御電圧に応じて周波数が変化する信号を出力する。なお、本実施形態の電圧制御型発振回路44は、コイル等のインダクタンス素子とコンデンサー等の容量素子とを用いて構成されるLC発振回路であるが、これに限定されず、例えば、水晶振動子等の圧電振動子を用いた発振回路を用いることもできる。分周回路45は、温度センサー71の出力信号と温度補正テーブル481とから決定する分周比で、電圧制御型発振回路44が出力するクロック信号を小数分周したクロック信号を出力する。なお、分周回路45の分周比は、温度補正テーブル481によって定められる構成に限定されない。例えば、多項式演算によって定められてもよいし、機械学習された学習済みモデルに基づくニューラルネットワーク演算によって定められてもよい。
【0050】
出力回路49は、PLL回路40が出力するクロック信号が入力され、その振幅が所望のレベルに調整された発振信号を生成する。出力回路49が生成する発振信号は、発振器1の外部端子243を介して発振器1の外部に出力される。
【0051】
このように、温度補償型水晶発振器3が出力する発振信号に残っている周波数温度特性をPLL回路40によってさらに補正することにより、温度による周波数偏差がさらに小さい発振器1が得られる。なお、PLL回路40としては、特に限定されず、例えば、発振回路72と位相比較器41との間に発振回路72が出力する発振信号を整数の分周比で分周する整数分周型のPLL回路を備えていてもよい。また、PLL回路40は、温度補償型水晶発振器3の出力信号をさらに温度補償するものに限られない。例えば、所望の周波数信号を得るために、PLL回路40が温度補償型水晶発振器3の出力周波数を固定値で逓倍する構成であってもよい。
【0052】
以上のような構成の第2回路素子4は、平面視で、温度補償型水晶発振器3とX軸方向に並んで配置されている。また、第2回路素子4は、温度補償型水晶発振器3と接触していない。そのため、第2回路素子4の熱が温度補償型水晶発振器3に伝わり難くなり、第2回路素子4の熱によって振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じるのを効果的に抑制することができる。これにより、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができる。特に、本実施形態では、第2回路素子4がPLL回路40を有し、このPLL回路40は、消費電力が比較的大きく発熱し易い。したがって、平面視で、温度補償型水晶発振器3と第2回路素子4とを並べて配置することにより、上述した効果をより顕著に発揮することができる。また、第2回路素子4も温度センサー71が出力する温度情報信号に基づいて動作するため、第2回路素子4内に温度センサー71を設けた場合に比べて自身の発熱の影響を受け難い。なお、温度補償型水晶発振器3と第2回路素子4とが平面視において並ぶ方向は、X軸方向に限定されず、例えば、Y軸方向であってもよいし、X軸方向に対して所定角度傾斜した方向であってもよい。
【0053】
また、本実施形態では、前述したように第1ベース基板21に、互いの上面がZ軸方向にずれている薄肉部21Aおよび厚肉部21Bを形成し、薄肉部21Aの上面に温度補償型水晶発振器3を配置し、厚肉部21Bの上面に第2回路素子4を配置している。これにより、例えば、同一平面上に温度補償型水晶発振器3と第2回路素子4とを配置する場合と比べて、第1ベース基板21を介した第2回路素子4と温度補償型水晶発振器3との間の熱伝達経路を長くすることができ、第2回路素子4の熱が温度補償型水晶発振器3により伝わり難くなる。したがって、第2回路素子4の熱によって振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じるのをより効果的に抑制することができ、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができる。
【0054】
また、本実施形態では、温度補償型水晶発振器3の厚さt3が第2回路素子4の厚さt4よりも大きいため、薄肉部21Aに温度補償型水晶発振器3を配置し、厚肉部21Bに第2回路素子4を配置している。これにより、配置がこの逆の場合と比べて、外側パッケージ2の低背化を図ることができる。そのため、より小型な発振器1となる。
【0055】
ただし、これに限定されず、例えば、第1ベース基板21から凹部211cを省略して、凹部211bの底面に温度補償型水晶発振器3と第2回路素子4とを共に配置してもよい。また、例えば、本実施形態とは逆に、薄肉部21Aに第2回路素子4を配置し、厚肉部21Bに温度補償型水晶発振器3を配置してもよい。
【0056】
また、図2に示すように、外側パッケージ2をX軸方向に二等分する仮想中心線αを設定したとき、第2回路素子4は、平面視で、仮想中心線αと重なっている。
【0057】
図2に示すように、ディスクリート部品81、82は、外側パッケージ2に収容されており、凹部211bの底面に配置されている。また、これらディスクリート部品81、82は、平面視で、温度補償型水晶発振器3とY軸方向に並んで配置されている。また、一方のディスクリート部品81は、第1バイパスコンデンサー810であり、他方のディスクリート部品82は、第2バイパスコンデンサー820である。
【0058】
図5に示すように、第1バイパスコンデンサー810は、外側パッケージ2に設けられている外部端子243と、内側パッケージ5に設けられている電源電圧用の端子543aとの間において、端子543aと接続されている。これにより、外部端子243を介して供給された電源電圧からノイズを除去することができ、安定した電源電圧を第1回路素子7に供給することができる。
【0059】
一方、第2バイパスコンデンサー820は、温度センサー71の出力信号用の端子543dとPLL回路40との間において端子543dと接続されている。これにより、温度センサー71が出力する温度信号からノイズを除去することができ、より正確な温度信号をPLL回路40に供給することができる。そのため、分周回路45による分周比をより精度よく決定することができる。
【0060】
また、図2に示すように、第1バイパスコンデンサー810と第2バイパスコンデンサー820とは、X軸方向に並んで配置されており、第1バイパスコンデンサー810のX軸方向プラス側の端部811と、第2バイパスコンデンサー820のX軸方向マイナス側の端部821と、が互いに向き合っている。そして、第1バイパスコンデンサー810の端部811と第2バイパスコンデンサー820の端部821とは、共に、グランドに接続されている。すなわち、第1、第2バイパスコンデンサー810、820の向かい合っている側の端部811、821同士は、同電位、特に本実施形態では共にグランド電位である。これにより、端部811、821同士のショートが抑制され、信頼性の高い回路を構成することができる。また、第1、第2バイパスコンデンサー810、820をより近接して配置することができ、発振器1の小型化を図ることができる。ただし、第1、第2バイパスコンデンサー810、820の配置は、特に限定されず、例えば、向かい合う端部811、821同士が異なる電位であってもよい。
【0061】
なお、ディスクリート部品81、82としては、第1、第2バイパスコンデンサー810、820に限定されず、例えば、サーミスタ、抵抗、ダイオード等であってもよい。また、ディスクリート部品81、82の少なくとも一方を省略してもよいし、他のディスクリート部品を追加してもよい。
【0062】
以上、発振器1について説明した。発振器1は、前述したように、第1ベース基板21および第1ベース基板21に接合されている第1リッド22を含み、第1内部空間S2を有する第1容器としての外側パッケージ2と、第1内部空間S2に収容され、第1ベース基板21に固定されている第2容器としての内側パッケージ5と、内側パッケージ5に収容されている振動片6と、内側パッケージ5に収容されている温度センサー71と、内側パッケージ5に収容されており、振動片6を発振させ、温度センサー71の検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する発振回路72を含む第1回路素子7と、第1ベース基板21に固定されており、発振信号の周波数を制御する周波数制御回路としてのPLL回路40を含む第2回路素子4と、を備えている。そして、内側パッケージ5と第2回路素子4とは、平面視で並んで配置されている。
【0063】
このような構成によれば、温度センサー71および振動片6が共に内側パッケージ5に収容されているため、温度センサー71を振動片6と同じ空間でかつ振動片6の近傍に配置することが可能となる。また、内側パッケージ5と第2回路素子4とを平面視で並べて配置することにより、これらを離間して配置することがき、内側パッケージ5と第2回路素子4との間の熱交換が抑制され、第2回路素子4の熱によって温度センサー71と振動片6とが不均一に加熱されるのを抑制することができる。そのため、振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じたり、その温度差が変動したりするのを効果的に抑制することができる。その結果、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができ、発振回路72による温度補償がより正確なものとなる。また、PLL回路40から周波数偏差が小さい発振信号を出力することができる。したがって、高精度な周波数信号を出力可能な発振器1となる。また、内側パッケージ5と第2回路素子4とがZ軸方向に重なっていないため、外側パッケージ2の低背化を図ることもできる。
【0064】
また、前述したように、第1ベース基板21は、第1部分である薄肉部21Aと、薄肉部21Aよりも厚い第2部分である厚肉部21Bと、を有する。そして、薄肉部21Aおよび厚肉部21Bの一方に内側パッケージ5が固定され、他方に第2回路素子4が固定されている。これにより、第1ベース基板21を介した第2回路素子4と温度補償型水晶発振器3との間の熱伝達経路を長くすることができ、第2回路素子4の熱が温度補償型水晶発振器3により伝わり難くなる。したがって、第2回路素子4の熱によって振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じるのをより効果的に抑制することができ、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができる。
【0065】
特に、本実施形態では、内側パッケージ5および第2回路素子4のうちの厚さが薄い第2回路素子4が厚肉部21Bに固定され、厚さが厚い内側パッケージ5が薄肉部21Aに固定されている。これにより、配置がこの逆の場合と比べて、外側パッケージ2の低背化を図ることができる。そのため、より小型な発振器1となる。
【0066】
また、前述したように、内側パッケージ5は、温度センサー71の出力信号が出力される温度出力端子としての端子543dを有する。そして、端子543dは、PLL回路40に電気的に接続されている。これにより、温度センサー71が検出した温度情報をPLL回路40にフィードバックすることができ、PLL回路40からより高精度な周波数信号を出力することができる。
【0067】
また、前述したように、内側パッケージ5は、発振回路72用の電源電圧が印加される電源端子としての端子543aを有する。また、発振器1は、外側パッケージ2に収容され、端子543aに接続されている第1バイパスコンデンサー810を備えている。これにより、第1バイパスコンデンサー810によってノイズを除去することができ、発振回路72に安定した電源電圧を供給することができる。
【0068】
また、前述したように、発振器1は、外側パッケージ2に収容され、第1ベース基板21に固定されている第1バイパスコンデンサー810および第2バイパスコンデンサー820を備えている。そして、第1バイパスコンデンサー810の一端と第2バイパスコンデンサー820の一端とが向かい合って配置され、第1バイパスコンデンサー810および第2バイパスコンデンサー820の向かい合っている側の端部811、821同士が同電位である。これにより、端部811、821同士のショートを抑制することができ、第1、第2バイパスコンデンサー810、820をより近接して配置することができる。そのため、発振器1の小型化を図ることができる。
【0069】
また、前述したように、内側パッケージ5は、絶縁性接合部材B1を介して第1ベース基板21に固定されている。絶縁性接合部材B1は、半田、金属ペースト等に代表される金属系の導電性接合部材と比べて熱伝導率が低く、導電性接合部材を介して第1ベース基板21と温度補償型水晶発振器3とを接合する場合と比べて、第1ベース基板21の熱が絶縁性接合部材B1を介して内側パッケージ5に伝わり難くい。そのため、温度補償型水晶発振器3の断熱性が高まり、外界温度の影響を受け難い温度補償型水晶発振器3となる。また、第1ベース基板21を介して第2回路素子4の熱が温度補償型水晶発振器3に伝わり難くもなり、内側パッケージ5内の振動片6および第1回路素子7の過度な昇温や、振動片6と温度センサー71との間の温度差が増大するのを効果的に抑制することができる。その結果、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができ、それに伴って、発振回路72による温度補償がより正確なものとなる。したがって、高精度な周波数信号を出力可能な発振器1となる。
【0070】
また、前述したように、内側パッケージ5は、平面視で、第1辺5aおよび第1辺5aより第2回路素子4に近い第2辺5bを有すると共に、発振回路72からの発振信号が出力される発振出力端子としての端子543cを備えている。そして、端子543cは、第2辺5bの両端に位置する2つの角部のいずれか、本実施形態ではY軸方向プラス側に位置する角部に設けられている。このような配置によれば、端子543cを第2回路素子4のより近くに配置することができ、端子543cと第2回路素子4との間の配線長さを短くすることができる。そのため、発振信号にノイズが乗り難く、精度のよい発振信号を第2回路素子4に出力することができる。
【0071】
また、前述したように、内側パッケージ5は、第2ベース基板51および第2ベース基板51に接合されている第2リッド52を含み、振動片6および第1回路素子7が収容されている第2内部空間S5を有する。そして、第2リッド52が第1ベース基板21に固定されている。このように、第2リッド52を凹部211bの底面に固定することにより、例えば、後述する第2実施形態のように第2ベース基板51を凹部211bの底面に固定する場合と比べて、内側パッケージ5と第1ベース基板21との接合部から振動片6および第1回路素子7までの熱伝達経路を長くすることができる。そのため、第2回路素子4の熱が振動片6および第1回路素子7に伝わり難くなる。その結果、振動片6と温度センサー71との温度差をより小さく抑えることができる。
【0072】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の発振器を示す断面図である。
【0073】
本実施形態は、温度補償型水晶発振器3の姿勢が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図6において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0074】
図6に示すように、本実施形態の発振器1では、凹部211aの底面に複数の内部端子241が配置され、凹部211bの底面に複数の内部端子242が配置されている。内部端子241、242および外部端子243は、第1ベース基板21内に形成されている図示しない配線を介して電気的に接続されている。
【0075】
また、温度補償型水晶発振器3は、前述の第1実施形態とは上下反対の姿勢、すなわち、第2ベース基板51が凹部211bの底面側を向いた姿勢で第1内部空間S2に収容されている。そして、第2ベース基板51は、半田バンプ等の金属バンプから構成される導電性接合部材B4を介して凹部211bの底面に接合されていると共に、各外部端子543が内部端子242と電気的に接続されている。なお、第1ベース基板21への温度補償型水晶発振器3の実装は、例えば、フリップチップ実装により行うことができる。このような構成によれば、温度補償型水晶発振器3と第1ベース基板21との電気的な接続にボンディングワイヤーを用いないため、ボンディングワイヤーのループ高さを確保する必要がなく、その分、前述した第1実施形態と比べて外側パッケージ2の低背化を図ることができる。
【0076】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0077】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態のパーソナルコンピューターを示す斜視図である。
【0078】
図7に示す電子機器としてのパーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部1108を備えた表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。このようなパーソナルコンピューター1100には、発振器1が内蔵されている。また、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102や表示部1108などの制御に関する演算処理を行う信号処理回路1110を備えている。信号処理回路1110は、発振器1から出力される発振信号に基づいて動作する。
【0079】
このように、電子機器としてのパーソナルコンピューター1100は、発振器1と、発振器1の出力信号(発振信号)に基づいて信号処理を行う信号処理回路1110と、を備える。そのため、前述した発振器1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0080】
なお、発振器1を備える電子機器は、前述したパーソナルコンピューター1100の他、例えば、デジタルスチールカメラ、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチを含む時計、インクジェット式吐出装置、例えばインクジェットプリンター、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡のような医療機器、魚群探知機、各種測定機器、車両、航空機、船舶のような計器類、携帯端末用の基地局、フライトシミュレーター等であってもよい。
【0081】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態の自動車を示す斜視図である。
【0082】
図8に示すように、移動体としての自動車1500には、発振器1と、発振器1から出力される発振信号に基づいて動作する信号処理回路1510と、が内蔵されている。発振器1と信号処理回路1510は、例えば、キーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター、車体姿勢制御システム等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。
【0083】
このように、移動体としての自動車1500は、発振器1と、発振器1の出力信号(発振信号)に基づいて信号処理を行う信号処理回路1510と、を備える。そのため、前述した発振器1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0084】
なお、発振器1を備える移動体は、自動車1500の他、例えば、ロボット、ドローン、二輪車、航空機、船舶、電車、ロケット、宇宙船等であってもよい。
【0085】
以上、本発明の発振器、電子機器および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…発振器、2…外側パッケージ、3…温度補償型水晶発振器、4…第2回路素子、5…内側パッケージ、5a…第1辺、5b…第2辺、6…振動片、7…第1回路素子、21…第1ベース基板、21A…薄肉部、21B…厚肉部、22…第1リッド、23…接合部材、40…PLL回路、41…位相比較器、42…チャージポンプ、43…ローパスフィルター、44…電圧制御型発振回路、45…分周回路、48…記憶部、49…出力回路、51…第2ベース基板、52…第2リッド、53…接合部材、60…水晶基板、61…電極、71…温度センサー、72…発振回路、81、82…ディスクリート部品、211、211a~211c…凹部、241、242…内部端子、243…外部端子、481…温度補正テーブル、511、511a~511d…凹部、541、542…内部端子、543…外部端子、543a~543d…端子、621…第1励振電極、622…第1パッド電極、623…第1引出電極、631…第2励振電極、632…第2パッド電極、633…第2引出電極、721…発振回路部、722…温度補償回路部、810…第1バイパスコンデンサー、811…端部、820…第2バイパスコンデンサー、821…端部、1100…パーソナルコンピューター、1102…キーボード、1104…本体部、1106…表示ユニット、1108…表示部、1110…信号処理回路、1500…自動車、1510…信号処理回路、B1…絶縁性接合部材、B2、B3…接合部材、B4…導電性接合部材、BW1~BW6…ボンディングワイヤー、S2…第1内部空間、S5…第2内部空間、t3、t4、tb、tc…厚さ、Db、Dc…深さ、α…仮想中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8