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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】トレッド用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 1/00 20060101AFI20240709BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20240709BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240709BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B60C1/00 A
C08L7/00
C08L9/00
C08L9/06
C08K3/04
B60C11/00 D
B60C11/00 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023083917
(22)【出願日】2023-05-22
(62)【分割の表示】P 2019093743の分割
【原出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2023101607
(43)【公開日】2023-07-21
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】姫田 眞吾
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-219778(JP,A)
【文献】特開2005-232407(JP,A)
【文献】特開2008-087626(JP,A)
【文献】特開2012-236934(JP,A)
【文献】特開2012-106707(JP,A)
【文献】特開2017-193202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、平均粒子径20nm以下及び/又は臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積130m/g以上のカーボンブラックとを含み、
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が56質量%以上であり、
硬度(Hs)≧72、破断時伸び(EB)≧420%であるトレッド用ゴム組成物からなるタイヤであって、
トレッド部は、複数のブロック又はブロック片が設けられ、
前記複数のブロック及び前記ブロック片の少なくとも1つは、ブロック高さ又はブロック片高さが15mm以上25mm未満であり、
各ブロック、各ブロック片のタイヤ周方向の長さは、40mm以上100mm以下であるタイヤ。
【請求項2】
イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、平均粒子径20nm以下及び/又は臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積130m /g以上のカーボンブラックとを含み、
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が56質量%以上であり、
硬度(Hs)≧72、破断時伸び(EB)≧420%であるトレッド用ゴム組成物からなるタイヤであって、
トレッド部は、複数のブロック又はブロック片が設けられ、
前記複数のブロック及び前記ブロック片の少なくとも1つは、ブロック高さ又はブロック片高さが15mm以上25mm未満であり、
各ブロック、各ブロック片のタイヤ軸方向の長さは、30mm以上100mm以下であるタイヤ。
【請求項3】
イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、平均粒子径20nm以下及び/又は臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積130m/g以上のカーボンブラックとを含み、
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が56質量%以上であり、
硬度(Hs)≧72、破断時伸び(EB)≧420%であるトレッド用ゴム組成物からなるタイヤであって、
トレッド部は、複数のブロック又はブロック片が設けられ、
各ブロック、各ブロック片のタイヤ周方向の長さは、40mm以上100mm以下であり、
重荷重用空気入りタイヤであるタイヤ。
【請求項4】
イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、平均粒子径20nm以下及び/又は臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積130m /g以上のカーボンブラックとを含み、
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が56質量%以上であり、
硬度(Hs)≧72、破断時伸び(EB)≧420%であるトレッド用ゴム組成物からなるタイヤであって、
トレッド部は、複数のブロック又はブロック片が設けられ、
各ブロック、各ブロック片のタイヤ軸方向の長さは、30mm以上100mm以下であり、
重荷重用空気入りタイヤであるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラックやバスなどの大型車両等に用いられる重荷重用タイヤのトレッド部には、タイヤ周方向に連続して延びる複数本の主溝と、これらの主溝で区分された陸部とが設けられている。このような重荷重用タイヤにおいて、環境面等の観点から、タイヤのトータルライフ、耐摩耗性能(高シビアリティ)が必要とされ、例えば、トレッドパターン、配合面からの改良が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トレッド部にタイヤ周方向にジグザグ状に連続して延びる周方向溝と、該周方向溝間に複数のセンターブロックを区分するように配されたセンター傾斜溝とを有する重荷重用タイヤにおいて、センターブロックに所定形状を付与し、優れた耐摩耗性能等が得られる重荷重用タイヤが開示されている。このように、環境面等の観点から、耐摩耗性能、耐ブロック欠け性能に優れた重荷重用タイヤの提供が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-088343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能に優れたトレッド用ゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、平均粒子径20nm以下及び/又は臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積130m/g以上のカーボンブラックとを含み、前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が56質量%以上であり、硬度(Hs)≧72、破断時伸び(EB)≧420%であるトレッド用ゴム組成物に関する。
【0007】
本発明はまた、前記トレッド用ゴム組成物からなるタイヤであって、前記トレッド部は、複数のブロック又はブロック片が設けられ、前記複数のブロック及び前記ブロック片の少なくとも1つは、タイヤ周方向の長さとタイヤ軸方向の長さとの和が80mm以上であるタイヤに関する。
【0008】
前記タイヤは、前記ブロック高さ又は前記ブロック片高さが15mm以上25mm未満であることが好ましい。
【0009】
前記タイヤは、重荷重用空気入りタイヤであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、特定のカーボンブラックとを所定配合で含み、かつ所定の硬度(Hs)及び破断時伸び(EB)を有するトレッド用ゴム組成物であるので、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が顕著に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のクラウン陸部の拡大図である。
図3図2のクラウンブロックの拡大図である。
図4図4(a)は、図2のA-A線断面図であり、図4(b)は、クラウンサイプの拡大図である。
図5図1のミドル陸部の拡大図である。
図6図5のB-B線断面図である。
図7図1のショルダー陸部の拡大図である。
図8図8(a)は、図7のC-C線断面図であり、図8(b)は、図7のD-D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、特定のカーボンブラックとを所定配合で含み、かつHs≧72、EB≧420%を満たす。所定配合でかつ、特定硬さ、破断時伸びを満たすことにより、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が顕著に改善される。
【0013】
このように耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が改善される理由は明らかではないが、以下の作用効果により発揮されると推察される。
先ず、従来のイソプレン系ゴム/ブタジエンゴム配合にスチレンブタジエンゴムをブレンドすることで、カーボンブラックとの補強性が向上し、耐摩耗性能、耐ブロック欠け性能が改善され、特に所定のカーボンブラックを配合した場合、ポリマーとの補強性が確保され、耐摩耗性能、耐ブロック欠け性能が顕著に向上する。つまり、イソプレン系ゴム/ブタジエンゴムのポリマーにスチレンブタジエンゴムを少量分散させることで、イソプレン系ゴム/ブタジエンゴム/スチレンブタジエンゴムの3相の状態となり、その各相の境界近傍に所定のカーボンブラックが分散されることで、各相間の結びつきが強固になり、結果、衝撃の吸収が可能なゴム組成物となり、耐摩耗性能、耐ブロック欠け性能が顕著に向上すると推察される。更に、ゴムの硬度(Hs)を高めることで、ブロックの変形を抑制すると同時に、高分子量のNR等のイソプレン系ゴムを所定量以上用いることで、良好な破断時伸び(EB)が確保され、耐ブロック欠け性能が顕著に向上する。以上の作用効果により、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が顕著に(相乗的に)改善されると推察される。
【0014】
以下、本発明のトレッド用ゴム組成物及びこれをトレッドに用いたタイヤの実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用や重荷重用の空気入りタイヤ、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに使用できる。本実施形態のタイヤ1は、例えば、重荷重用空気入りタイヤとして好適に使用される。
【0015】
図1に示されるように、タイヤ1は、回転方向Rが指定されたトレッド部2を有する。回転方向Rは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
【0016】
トレッド部2には、タイヤ周方向に連続して延びる主溝(クラウン主溝3及びショルダー主溝4)が設けられている。本例では、クラウン主溝3は、タイヤ赤道Cの各側に1本ずつ設けられている。ショルダー主溝4は、一方のクラウン主溝3とトレッド端Teとの間、他方のクラウン主溝3とトレッド端Teとの間に1本ずつ設けられている。
【0017】
トレッド端Teは、空気入りタイヤの場合、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0018】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば“標準リム”、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”である。
【0019】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。
【0020】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”である。
【0021】
クラウン主溝3は、例えば、ジグザグ状に延びていることが望ましい。クラウン主溝3のジグザグの傾斜要素について、タイヤ周方向に対する最大の傾斜の角度θ1は、例えば、3~7°であることが望ましい。
【0022】
クラウン主溝3は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1がトレッド幅TWの0.15~0.25倍であることが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態における一方のトレッド端Teから他方のトレッド端までのタイヤ軸方向の距離である。
【0023】
クラウン主溝3は、例えば、トレッド幅TWの3~5%の溝幅W1を有していることが望ましい。
【0024】
ショルダー主溝4は、例えば、ジグザグ状に延びている。ショルダー主溝4のジグザグの傾斜要素について、タイヤ周方向に対する最大の傾斜の角度θ2は、例えば、クラウン主溝3の前記角度θ1よりも大きいことが望ましい。具体的には、前記角度θ2は、例えば、8~12°であることが望ましい。このようなショルダー主溝4は、優れた排水性を発揮できる。
【0025】
本実施形態のショルダー主溝4は、例えば、トレッド端Te側の溝縁4bの振幅が、タイヤ赤道C側の溝縁4aの振幅よりも大きい。このようなショルダー主溝4は、溝縁4a、4bを均等に摩耗させるのに役立つ。
【0026】
ショルダー主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2がトレッド幅TWの0.30~0.40倍であることが望ましい。
【0027】
ショルダー主溝4は、例えば、トレッド幅TWの3~6%の溝幅W2を有している。望ましい態様では、ショルダー主溝4は、クラウン主溝3の最大の溝幅よりも大きい溝幅の第1部分4Aと、クラウン主溝3の最大の溝幅よりも小さい第2部分4Bとを含んでいる。このようなショルダー主溝4は、クラウン主溝3とは異なる周波数のポンピングノイズを発生させることができる。このため、クラウン主溝3及びショルダー主溝4が発生するノイズがホワイトノイズ化し得る。
【0028】
クラウン主溝3及びショルダー主溝4は、重荷重用空気入りタイヤの場合、例えば、20~25mmの溝深さを有していることが望ましい。このようなクラウン主溝3及びショルダー主溝4は、優れたウェット性能を発揮できる。
【0029】
トレッド部2には、上述のクラウン主溝3及びショルダー主溝4が設けられることにより、クラウン陸部10と、一対のミドル陸部11と、一対のショルダー陸部12とが区分される。
【0030】
トレッド部2(クラウン陸部10、一対のミドル陸部11、一対のショルダー陸部12、クラウン主溝3、ショルダー主溝4等)を構成するゴム組成物(トレッド用ゴム組成物)は、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムを含有するゴム成分と、所定平均粒子径及び/又は臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積のカーボンブラックとを含み、かつ所定量のイソプレン系ゴムを含有し、所定の硬度(Hs)、破断時伸び(EB)を有する。
【0031】
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム、天然ゴム(NR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、56質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。また、上限は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。上記範囲内であると、良好な、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。
【0033】
スチレンブタジエンゴム(SBR)としては、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等が挙げられる。
【0034】
SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよい。変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
【0035】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、アミド基が好ましい。
【0036】
変性SBRに使用される変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
【0037】
ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
【0038】
(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
【0039】
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドンN-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;の他、
【0040】
N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン等を挙げることができる。
なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
【0041】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0042】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。また、該スチレン含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な耐ブロック性能、耐摩耗性能と耐発熱性能とが得られる傾向がある。なお、SBRのスチレン含有量は、H-NMR測定により算出される。
【0043】
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。下限以上にすることで、良好な耐ブロック性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。また、上限は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。SBRを多量に使用することで、発熱性能が悪化することが懸念されるが、上限以下にすることで、発熱性能の悪化を抑制できる傾向がある。
【0044】
ブタジエンゴム(BR)としては、例えば、高シス含量のBR、低シス含量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
BRのシス含量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、上限は特に限定されない。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、BRのシス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0046】
BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよく、変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
【0047】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0048】
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。また、上限は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、良好な耐ブロック性能、耐摩耗性能が得られ、また加工性も確保しやすい傾向がある。
【0049】
前記ゴム組成物は、イソプレン系ゴム、BR、SBR以外の他のゴム成分を配合してもよい。配合可能な他のゴム成分としては、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記ゴム組成物は、平均粒子径20nm以下及び/又は臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)130m/g以上のカーボンブラック(カーボンブラック(A)とも称する)を含む。
【0051】
カーボンブラック(A)の平均粒子径は、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは17nm以下、更に好ましくは15nm以下である。下限は特に限定されないが、分散性等の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。
なお、カーボンブラックの平均粒子径は数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
【0052】
カーボンブラック(A)のCTABは、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、好ましくは130m/g以上、より好ましくは140m/g以上、更に好ましくは145m/g以上、特に好ましくは150m/g以上である。上限は特に限定されないが、分散性等の観点から、好ましくは250m/g以下、より好ましくは200m/g以下、更に好ましくは180m/g以下である。
なお、本明細書において、カーボンブラックのCTABは、JIS K6217-3:2001に準拠して測定される値である。
【0053】
カーボンブラック(A)の窒素吸着比表面積(NSA)は、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、好ましくは125m/g以上、より好ましくは145m/g以上、更に好ましくは150m/g以上、特に好ましくは155m/g以上である。上限は特に限定されないが、分散性等の観点から、好ましくは250m/g以下、より好ましくは200m/g以下、更に好ましくは180m/g以下である。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217-2:2001によって求められる。
【0054】
カーボンブラック(A)のヨウ素吸着量(IA)(mg/g)は、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、好ましくは120mg/g以上、より好ましくは125mg/g以上、更に好ましくは130mg/g以上、特に好ましくは140mg/g以上である。上限は特に限定されないが、分散性等の観点から、好ましくは200mg/g以下、より好ましくは180mg/g以下、更に好ましくは160mg/g以下である。
【0055】
カーボンブラック(A)のヨウ素吸着量(IA)(mg/g)に対する臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)の比(CTAB/IA)は、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、好ましくは0.85~1.35m/mg、より好ましくは0.92~1.30m/mg、更に好ましくは1.00~1.25m/mgである。
なお、本明細書において、カーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)は、JIS K6217-1:2001に準拠して測定される値である。
【0056】
CTAB/IAで表される表面活性指標は、カーボンブラックの結晶化度(グラファイト化率)の指標と考えることができる。すなわち、CTAB/IAが高いほど結晶化が進んでいないことを示し、カーボンブラックとゴム成分との相互作用が大きくなる傾向にある。また、CTAB/IAは、カーボンブラック表面に存在する酸性官能基の量を評価するパラメーターとしても位置づけられる。カーボンブラック表面の酸性官能基は、ゴム成分との相互作用に寄与するが、CTAB/IAが高いほどカーボンブラックの表面に酸性官能基が多く存在していることを示す。従って、CTAB/IAが上記範囲内であると、ゴム成分に対してより顕著な補強効果を奏することができ、優れた耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が得られる。
【0057】
カーボンブラック(A)のジブチルフタレート吸油量(DBP)は、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、好ましくは120cm/100g以上、より好ましくは125cm/100g以上、更に好ましくは135cm/100g以上である。上限は特に限定されないが、分散性等の観点から、好ましくは180cm/100g以下、より好ましくは170cm/100g以下、更に好ましくは160cm/100g以下である。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K 6217-4:2001に準拠して測定される。
【0058】
カーボンブラック(A)としては、SAFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、カーボンブラック(A)は、特開200-319539号公報、特表平8-507555号公報等に記載の製法で製造することも可能である。
【0059】
前記ゴム組成物において、カーボンブラック(A)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。下限以上であると、良好な耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。また、該含有量は、分散性等の観点から、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。
【0060】
前記ゴム組成物は、前記カーボンブラック(A)以外のカーボンブラック(他のカーボンブラックとも称する)を更に配合することが好ましい。この場合、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能を相乗的に改善できる。
【0061】
他のカーボンブラックとしては、例えば、平均粒子径20nm超25nm以下及び/又は臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)100m/g以上130m/g未満のカーボンブラック(カーボンブラック(B)とも称する)を好適に使用できる。
【0062】
カーボンブラック(B)の平均粒子径は、20nm超25nm以下(20nmより大きく25nm以下)であるが、下限は、分散性等の観点から、好ましくは21nm以上である。上限は、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、好ましくは24nm以下、より好ましくは23nm以下である。
【0063】
カーボンブラック(B)のCTABは、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、好ましくは105m/g以上、より好ましくは110m/g以上である。上限は特に限定されないが、分散性等の観点から、好ましくは125m/g以下、より好ましくは120m/g以下である。
【0064】
なお、カーボンブラック(B)等の他のカーボンブラックの平均粒子径、CTABは、前記と同様の方法で測定できる。
【0065】
カーボンブラック(B)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。下限以上であると、良好な耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。また、該含有量は、分散性等の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。
【0066】
他のカーボンブラックとしては、特に限定されないが、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。耐摩耗性、コストの観点から、N220が特に好ましい。
【0067】
カーボンブラックの含有量(カーボンブラック(A)及び他のカーボンブラックの合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは45質量部以上、特に好ましくは50質量部以上である。下限以上であると、良好な耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。また、該含有量は、分散性等の観点から、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。
【0068】
カーボンブラック100質量%中のカーボンブラック(A)の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。該含有量の上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、良好な耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。
【0069】
前記ゴム組成物には、シリカを配合しても良い。
前記ゴム組成物にシリカを配合する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、グリップ性能の観点から、好ましくは3.0質量部以上、より好ましくは5.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
【0070】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは115m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。下限以上にすることで、良好なグリップ性能が得られる傾向がある。また、好ましくは400m/g以下、より好ましくは270m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。上限以下にすることで、良好なシリカ分散性が得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0071】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などを用いることができるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカ(含水シリカ)が好ましい。市販品としては、デグッサ社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
前記ゴム組成物には、カーボンブラック、シリカ以外に他の充填剤を配合してもよい。他の充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等が挙げられる。
【0073】
前記ゴム組成物がシリカを含有する場合、シリカとともにシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフィド系、メルカプト系が好ましい。
【0074】
前記ゴム組成物がシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。下限以上にすることで、シランカップリング剤を配合したことによる効果が得られる傾向がある。また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上限以下にすることで、配合量に見合った効果が得られ、良好な混練時の加工性が得られる傾向がある。
【0075】
前記ゴム組成物には、オイル、液状ジエン系重合体の等の軟化剤(常温(25℃)で液体状態の軟化剤)を配合してもよい。
【0076】
オイルとしては、例えば、パラフィン系、アロマ系、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイルが挙げられる。
【0077】
液状ジエン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×10~2.0×10であることが好ましく、3.0×10~1.5×10であることがより好ましい。下限以上にすることで、良好な耐摩耗性、破壊特性が得られ、十分な耐久性を確保できる傾向がある。一方、上限以下にすることで、良好な重合溶液の粘度となり、優れた生産性が得られる傾向がある。
なお、本発明において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0078】
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。なかでも、液状IR、液状SBRが好ましい。
【0079】
前記ゴム組成物において、軟化剤の含有量(軟化剤総量)は、ゴム成分100質量部に対して、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。下限は特に限定されず、軟化剤を含まなくてもよい。
い。なお、本明細書において、軟化剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
【0080】
前記ゴム組成物には、常温(25℃)で固体状態のレジン(樹脂)を配合してもよい。レジンの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3~50質量部が好ましく、7~40質量部がより好ましい。
【0081】
レジンとしては、例えば、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、東亞合成(株)等の製品を使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂が好ましい。
【0082】
上記芳香族ビニル重合体としては、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、例えば、スチレンの単独重合体、α-メチルスチレンの単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体などが例示される。なかでも、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましい。
【0083】
上記クマロンインデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0084】
上記インデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0085】
上記ロジン系樹脂(ロジン類)変性の有無によって分類可能であり、無変性ロジン(未変性ロジン)、ロジン変性体(ロジン誘導体)に分類できる。無変性ロジンとしては、トールロジン(別名トール油ロジン)、ガムロジン、ウッドロジン、不均斉化ロジン、重合ロジン、水素化ロジン、その他の化学的に修飾されたロジンなどが挙げられる。ロジン変性体は無変性ロジンの変性体であって、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、ロジンのアミド化合物、ロジンのアミン塩などが挙げられる。
【0086】
ロジン系樹脂は、カルボキシル基の含有量が過度に高くなく、適度な酸価を有していることが好ましい。具体的には、ロジン系樹脂の酸価は、通常、0mgKOH/gを超え、例えば、200mgKOH/g以下、好ましくは100mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、さらに好ましくは10mgKOH/g以下である。
なお、酸価は、後述する実施例に準拠して測定できる。なお、酸価が過度に高い場合などには、公知のエステル化処理によって、ロジン類のカルボキシル基を低減し、酸価を上記範囲に調整することも可能である。
【0087】
上記テルペン系樹脂としては、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂や、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などを使用できる。また、これらの水素添加物を使用することもできる。
【0088】
上記ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0089】
上記ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、重合反応が容易である点、天然松脂が原料のため、安価であるという点から、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα-ピネン及びβ-ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β-ピネンを主成分とするβ-ピネン樹脂と、α-ピネンを主成分とするα-ピネン樹脂とに分類される。
【0090】
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂を使用することもできる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0091】
前記ゴム組成物は、硫黄(硫黄加硫剤)を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
ゴム成分100質量部に対する前記硫黄(硫黄加硫剤)の含有量は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上である。下限以上にすることで、良好な耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が得られる傾向がある。上限は特に限定されないが、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下、特に好ましくは2.0質量部以下である。
【0093】
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM(2,2’-ジベンゾチアゾリルジスルフィド))、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0094】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、加硫特性等の観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは8.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。
【0095】
前記ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品として、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0096】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。
【0097】
前記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤(より好ましくは、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)が好ましい。
【0098】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、好ましくは7質量部以下、より好ましくは6質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
【0099】
前記ゴム組成物は、脂肪酸、特にステアリン酸を含んでもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0100】
脂肪酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0101】
前記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含んでもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0102】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0103】
前記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合でき、界面活性剤等を例示できる。
【0104】
前記ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0105】
混練条件としては、架橋剤(加硫剤)及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。
【0106】
前記ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)は、硬度(Hs)≧72以上である。上限は特に限定されないが、Hs≦80が好ましく、Hs≦78がより好ましく、Hs≦75が更に好ましい。
なお、本明細書において、Hsは、JIS K6253-3(2012)の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に従って、タイプAデュロメータにより、25℃で測定される。
【0107】
前記ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)は、破断時伸び(EB)≧420%である。耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、EB≧450%が好ましく、EB≧480%がより好ましい。上限は特に限定されないが、EB≦700%が好ましく、EB≦650%がより好ましく、EB≦600%が更に好ましい。
なお、EBは、JIS K6251(2010)に基づいて、試験片として7号ダンベル型試験片を使用し、23℃において引張試験を実施して測定される。
【0108】
なお、ゴム組成物の硬度(Hs)、破断時伸び(EB)は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、Hs、EBは、ゴム成分としてイソプレン系ゴム、BR、SBRの3種を用いたり、充填剤を増量したり、軟化剤を減量したり、充填剤種としてカーボンブラックを用いたりすると、大きくなる傾向がある。
【0109】
具体的には、(1)イソプレン系ゴム、BR、SBRの3種を用いる方法、(2)NR等の高分子量ゴムを用いる方法、(3)SBRの種類や量を調整する方法、(4)所定平均粒子径やCTABを持つ特定カーボンブラックを用いる方法、(5)特定カーボンブラック量を調整する方法、(6)特定カーボンブラックと、他のカーボンブラック等の他の充填剤との配合比率を調整する方法、(7)充填剤総量を調整する方法、等を単独又は適宜組み合わせる手法が挙げられる。
【0110】
図2には、クラウン陸部10の拡大図が示されている。図2に示されるように、クラウン陸部10は、一対のクラウン主溝3の間に区分されている。クラウン陸部10は、一対のクラウン主溝3の間をつなぐ複数のクラウン横溝14により、複数のクラウンブロック15の列に区分されている。
【0111】
図3には、クラウンブロック15の拡大図が示されている。図3に示されるように、クラウンブロック15の少なくとも1つには、波状に延びかつクラウン横溝14間をつなぐ縦細溝(クラウンサイプ30)が設けられている。これにより、クラウンブロック15は、クラウンサイプ30で区分された2つのクラウンブロック片20を含む。本明細書において、「サイプ(細溝)」とは、幅が2.0mm以下の切れ込みを意味する。
【0112】
クラウンサイプ30は、そのエッジによってウェット路面での摩擦力を高め、優れたウェット性能を発揮し得る。クラウンサイプ30は、波状に延びかつクラウン横溝14間をつないでいるため、タイヤ周方向のエッジ成分のみならず、タイヤ軸方向のエッジ成分も確保できる。従って、ウェット走行時の旋回性能及びトラクション性能が高められる。
【0113】
クラウンブロック15が接地したとき、クラウンサイプ30は本質的に閉じる。従って、クラウンサイプ30で区分された一方のクラウンブロック片20と他方のクラウンブロック片20とは、互いに支え合うことができる。従って、クラウンブロック15の見かけの剛性が高められ、耐偏摩耗性能を維持できる。特に、クラウンサイプ30は、波状に延びているため、サイプ壁同士が強く噛み合い、タイヤ周方向の力に対して優れた支え合い効果を発揮できる。このため、駆動時及び制動時のクラウンブロック15の変形が抑制され、耐偏摩耗性能が効果的に維持される。
【0114】
クラウンサイプ30は、例えば、2つのクラウンブロック片20の踏面の面積比が0.8~1.2となる位置に設けられていることが望ましい。本実施形態のクラウンサイプ30は、例えば、クラウンブロック15のタイヤ軸方向の中央部に設けられている。望ましい態様では、クラウンサイプ30は、クラウンブロック15を実質的に同じ面積の踏面を有する2つのクラウンブロック片20に区分している。これにより、2つのクラウンブロック片20が均等に摩耗し易くなり、耐偏摩耗性能が高められる。
【0115】
クラウンサイプ30の幅W5は、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.8mm以下、更に好ましくは1.6mm以下であり、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上、更に好ましくは1.2mm以上である。このようなクラウンサイプ30は、ウェット性能と耐偏摩耗性能とをバランス良く高めることができる。
【0116】
図4(a)には、図2のクラウンサイプ30のA-A線断面図が示されている。図4(a)に示されるように、クラウンサイプ30は、例えば、クラウン主溝3の深さd1の0.85~1.00倍の深さd2を有していることが望ましい。このようなクラウンサイプ30は、優れたウェット性能を発揮するのに役立つ。
【0117】
図4(b)には、図3のクラウンサイプ30の拡大図が示されている。図4(b)に示されるように、クラウンサイプ30は、タイヤ軸方向に振幅しながらタイヤ周方向に延びている。望ましい態様では、クラウンサイプ30は、例えば、正弦波状に延びている。但し、このような態様に限定されるものではなく、クラウンサイプ30は、例えば、三角波状、矩形波状、台形波状等、種々の波形状で延びる態様を含む。
【0118】
クラウンサイプ30は、例えば、ジグザグ状に延びるクラウン主溝3よりも小さい振幅で延びていることが望ましい。クラウンサイプ30の中心線30cのピークトゥピークの振幅量A1は、望ましくは1.0mm以上、より望ましくは1.3mm以上であり、望ましくは2.0mm以下、より望ましくは1.7mm以下である。このようなクラウンサイプ30は、そのエッジの偏摩耗を抑制しつつ、タイヤ軸方向のエッジ成分を確保できる。
【0119】
クラウンサイプ30は、例えば、ジグザグ状に延びるクラウン主溝3(図1に示す)よりも小さい波長でのびていることが望ましい。クラウンサイプ30の波長λ1は、例えば、16.0mm以上、より好ましくは20.0mm以上であり、好ましくは30.0mm以下、より好ましくは26.0mm以下であることが望ましい。このようなクラウンサイプ30は、そのエッジの偏摩耗を抑制しつつ、互いに向き合うサイプ壁同士を強く噛み合わせすることができ、クラウンブロック15の見かけの剛性が高められる。
【0120】
図2に示されるように、クラウン横溝14は、一対のクラウン主溝3の間をつないでいる。本実施形態のクラウン横溝14は、例えば、回転方向Rの先着側に凸となる向きのV字状である。「クラウン横溝がV字状である」とは、例えば、溝中心線がV字状に折れ曲がる態様のみならず、溝中心線が前記先着側に凸となる向きに滑らかに湾曲する態様(例えば円弧状)も含む。
【0121】
本実施形態のクラウン横溝14は、例えば、タイヤ軸方向に対して互いに逆向きに延びる第1溝部16及び第2溝部17を含む。第1溝部16と第2溝部17とは、接続部18で連通している。第1溝部16及び第2溝部17は、例えば、タイヤ軸方向に対して10~20°の角度θ3で傾斜していることが望ましい。
【0122】
接続部18は、例えば、クラウン横溝14のタイヤ軸方向の中央部(例えば、タイヤ赤道C上)に設けられている。本発明の他の態様では、接続部18は、タイヤ赤道Cに対して、タイヤ軸方向の一方側に偏った位置に設けられても良い。
【0123】
クラウン横溝14は、例えば、クラウン主溝3の0.8~1.2倍の溝幅W6を有することが望ましい。本実施形態のクラウン横溝14は、少なくとも第1溝部16及び第2溝部17において、その長さ方向に一定の溝幅を有している。
【0124】
本実施形態のクラウンブロック15は、例えば、タイヤ軸方向の最大横幅W3が、タイヤ周方向の最大縦幅W4よりも大きい横長状である。前記最大横幅W3は、例えば、前記最大縦幅W4の1.3~1.7倍であることが望ましい。このようなクラウンブロック15は、高い横剛性を有し、優れた操縦安定性を発揮するのに役立つ。
【0125】
クラウンブロック15は、例えば、回転方向Rの先着側に凸となる向きのV字状であることが望ましい。「クラウンブロック15がV字状である」とは、例えば、クラウンブロック15のクラウン横溝14に面する2つの第1ブロック壁21及び第2ブロック壁22の輪郭が、前記先着側に向かって凸となっている態様を含む。第1ブロック壁21は、前記先着側のクラウン横溝14に面するブロック壁であり、第2ブロック壁22は、回転方向Rの後着側のクラウン横溝14に面するブロック壁である。第1ブロック壁21及び第2ブロック壁22は、平面が折れ曲がるものに限られず、例えば、滑らかに湾曲するもの(例えば、円弧状に湾曲)でも良い。
【0126】
図3に示されるように、本実施形態の第1ブロック壁21は、例えば、タイヤ軸方向に対して互いに逆向きに傾斜する第1傾斜部23及び第2傾斜部24と、これらの間の窪み部25とを有している。第1傾斜部23と第2傾斜部24との間の角度θ4は、例えば、150~160°であることが望ましい。本実施形態の第1傾斜部23及び第2傾斜部24は、例えば、平面状に延びているが、このような態様に限定されるものではない。
【0127】
窪み部25は、例えば、回転方向Rの後着側に凹んでいる。窪み部25は、クラウンブロック15の回転方向Rの先着側の端部の欠けや摩耗を抑制するのに役立つ。望ましい態様では、窪み部25には、クラウンサイプ30が連なっている。これにより、クラウンサイプ30の前記先着側の端部での偏摩耗を抑制できる。
【0128】
望ましい態様では、窪み部25は、クラウンブロック15とは逆向きのV字状である。窪み部25は、例えば、互いに逆向きに傾斜する2つの平面で構成されている。2つの平面の間の角度θ9は、例えば、125~135°である。このような窪み部25は、クラウンブロック15の前記先着側の頂部の欠けや偏摩耗を更に抑制できる。
【0129】
第2ブロック壁22は、例えば、タイヤ軸方向に対して互いに逆向きに傾斜する第3傾斜部26及び第4傾斜部27を有している。本実施形態の第3傾斜部26及び第4傾斜部27は、例えば、平面状に延びているが、このような態様に限定されるものではない。第3傾斜部26は、例えば、第1ブロック壁21の第1傾斜部23と同じ向きに傾斜し、望ましい態様では第1傾斜部23に沿って延びている。第4傾斜部27は、例えば、第1ブロック壁21の第2傾斜部24と同じ向きに傾斜し、望ましい態様では第2傾斜部24に沿って延びている。
【0130】
望ましい態様では、第2ブロック壁22の第3傾斜部26と第4傾斜部27とで構成される頂部28には、クラウンサイプ30が連なっていることが望ましい。これにより、クラウンサイプ30の回転方向Rの後着側の端部での偏摩耗を抑制できる。
【0131】
クラウンブロック15は、例えば、タイヤ軸方向外側に凸となる一対のブロック横壁29を有していることが望ましい。このようなクラウンブロック15は、高い横剛性を有し、操縦安定性を更に高めるのに役立つ。
【0132】
図5には、ミドル陸部11の拡大図が示されている。図5に示されるように、ミドル陸部11は、クラウン主溝3とショルダー主溝4との間に区分されている。ミドル陸部11は、複数のミドル横溝34に区分された複数のミドルブロック35を含んでいる。
【0133】
ミドル横溝34は、例えば、タイヤ軸方向に対して10~20°の角度θ5で傾斜していることが望ましい。本実施形態のミドル横溝34は、クラウン主溝3からショルダー主溝4に向かって、回転方向Rの後着側に傾斜している。このようなミドル横溝34は、ウェット走行時、溝内の水をタイヤ軸方向外側に案内できる。
【0134】
ミドル横溝34は、例えば、直線状に延びている。ミドル横溝34は、例えば、クラウン横溝14(図2に示す)よりも大きい溝幅W7を有している。ウェット性能を高めるために、ミドル横溝34の溝幅W7は、例えば、クラウン横溝14の溝幅W6の1.15~1.25倍であることが望ましい。
【0135】
図6には、ミドル横溝34のB-B線断面図が示されている。図6に示されるように、ミドル横溝34は、回転方向Rの先着側の第1溝壁34aと、後着側の第2溝壁34bとを含んでいる。第1溝壁34aは、例えば、タイヤ半径方向に対して3~7°の角度θ6で配されている。第2溝壁34bは、例えば、タイヤ半径方向に対して前記角度θ6よりも大きい角度θ7で配されている。角度θ7は、例えば、9~13°であることが望ましい。このようなミドル横溝34は、ミドルブロック35のヒールアンドトゥ摩耗を抑制するのに役立つ。
【0136】
ミドル横溝34は、例えば、クラウン主溝3の0.90~1.00倍の溝深さd3を有していることが望ましい。本実施形態のミドル横溝34の溝深さd3は、クラウン主溝3と同一である。このようなミドル横溝34は、ウェット性能を更に高めることができる。
【0137】
図5に示されるように、ミドルブロック35は、例えば、実質的に六角形状の踏面を有していることが望ましい。「実質的に六角形状の踏面」とは、例えば、ブロックの角を僅かに切り欠いた面取り部36を許容することを意味する。
【0138】
ミドルブロック35の踏面の面積Smは、1つのクラウンブロック片20の踏面の面積Scよりも小さいことが望ましい。具体的には、前記面積Smは、前記面積Scの0.80~0.90倍であることが望ましい。このようなミドルブロック35は、クラウンブロック片20とともに均等に摩耗し、優れた耐偏摩耗性能を発揮し得る。
【0139】
図7には、ショルダー陸部12の拡大図が示されている。図7に示されるように、ショルダー陸部12は、ショルダー主溝4のタイヤ軸方向外側に区分されている。ショルダー陸部12は、例えば、複数のショルダー横溝39に区分された複数のショルダーブロック40を含んでいる。
【0140】
ショルダー横溝39は、例えば、タイヤ軸方向外側に向かって溝幅W8が漸増していることが望ましい。このようなショルダー横溝39は、ウェット走行時、溝内の水をタイヤ軸方向外側に滑らかに案内することができる。
【0141】
上述の効果を更に高めるために、ショルダー横溝39は、例えば、ミドル横溝34よりも大きい溝幅を有していることが望ましい。より具体的には、ショルダー横溝39は、その全域に亘って、ミドル横溝34よりも大きい溝幅を有している。
【0142】
図8(a)には、ショルダー横溝39のC-C線断面図が示されている。図8(b)には、ショルダー横溝39のD-D線断面図が示されている。前記D-D線断面は、前記C-C線断面よりもトレッド端Te側の断面である。図8(a)及び(b)に示されるように、ショルダー横溝39は、例えば、タイヤ半径方向に対して10~25°の角度θ8で傾斜した一対の溝壁39aを有していることが望ましい。
【0143】
より望ましい態様では、ショルダー横溝39の溝壁39aは、タイヤ半径方向に対する角度θ8がタイヤ軸方向外側に向かって漸増している。このようなショルダー横溝39は、優れた排水性を発揮し、ウェット性能を更に高めることができる。
【0144】
ショルダー横溝39は、例えば、ショルダー主溝4の0.20~0.30倍の溝深さd4を有していることが望ましい。このようなショルダー横溝39は、ウェット性能を維持しつつ、ショルダー陸部12の剛性を高め、操縦安定性を高めることができる。
【0145】
図7に示されるように、ショルダーブロック40は、例えば、タイヤ軸方向内側に凸となるように湾曲した内側側壁41と、タイヤ周方向に沿った平面状の外側側壁42とを含んでいる。これにより、ショルダーブロック40は、例えば、実質的に五角形状の踏面を有していることが望ましい。「実質的に五角形状の踏面」とは、例えば、ブロックの角を僅かに切り欠いた面取り部43や、側壁に設けられた凹部44を許容することを意味する。
【0146】
外側側壁42には、タイヤ軸方向内側に凹む凹部44が設けられていることが望ましい。このような外側側壁42は、優れたワンダリング性能を発揮するのに役立つ。
【0147】
ショルダーブロック40の踏面の面積Ssは、例えば、ミドルブロック35(図5に示す)の踏面の面積Smよりも大きいことが望ましい。具体的には、前記面積Ssは、前記面積Smの1.05~1.15倍であることが望ましい。これにより、タイヤ走行時のショルダーブロック40の滑りが抑制される。
【0148】
図1に示されるように、ミドルブロック35の踏面の面積Smとクラウンブロック片20の踏面の面積Scとの和Sm+Scは、ショルダーブロック40の踏面の面積Ssの好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.8倍以上であり、好ましくは2.5倍以下、より好ましくは2.2倍以下である。このような各ブロックは、タイヤ走行時において、クラウンブロック15に作用する接地圧を適正にしつつ、ショルダーブロックの滑りを抑制し、優れた耐偏摩耗性能を発揮できる。
【0149】
トレッド部2は、踏面を有する複数のブロック(ミドルブロック4、ショルダーブロック3)及び/又はブロック片(クラウンブロック片20)が設けられている。複数のブロック、ブロック片の少なくとも1つ(ミドルブロック4、ショルダーブロック3、クラウンブロック片20の少なくとも1つ)は、タイヤ周方向の長さとタイヤ軸方向の長さとの和が80mm以上であることが好ましい。耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、より好ましくは90mm以上、更に好ましくは95mm以上であり、また、好ましくは130mm以下、より好ましくは120mm以下、更に好ましくは110mm以下である。
【0150】
各ブロック、各ブロック片のタイヤ周方向の長さ、タイヤ軸方向の長さは、タイヤ周方向の最大縦幅、タイヤ軸方向の最大横幅である。なお、ブロックが細溝(サイプ)でブロック片に区分されている場合は、区分されたブロック片のタイヤ周方向の長さの最大縦幅及びタイヤ軸方向の最大横幅の和が、ブロック又はブロック片がトレッド端に接している場合は、該トレッド端に隣接するブロック又はブロック片のタイヤ周方向の最大縦幅及びタイヤ軸方向の最大横幅の和が、上記のタイヤ周方向の長さとタイヤ軸方向の長さとの和である。
【0151】
つまり、図3のクラウンブロック片20では、タイヤ周方向の長さW4とタイヤ軸方向の長さW10との和、図4のミドルブロック35では、タイヤ周方向の長さW11とタイヤ軸方向の長さW12との和、図5のショルダーブロック40では、タイヤ周方向の長さW13とタイヤ軸方向の長さW14との和の少なくとも1つが80mm以下の条件を満たす態様が好ましい。2種のブロック又はブロック片が満たすことがより好ましく、3種のブロック又はブロック片が満たすことが更に好ましい。
【0152】
各ブロック、各ブロック片のタイヤ周方向の長さ(クラウンブロック片20、ミドルブロック35、ショルダーブロック40等のタイヤ周方向の最大縦幅)は、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、40mm以上が好ましく、45mm以上がより好ましく、50mm以上が更に好ましく、また、100mm以下が好ましく、90mm以下がより好ましく、80mm以下が更に好ましい。
【0153】
各ブロック、各ブロック片のタイヤ軸方向の長さ(クラウンブロック片20、ミドルブロック35、ショルダーブロック40等のタイヤ軸方向の最大横幅)は、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、30mm以上が好ましく、35mm以上がより好ましく、40mm以上が更に好ましく、また、100mm以下が好ましく、90mm以下がより好ましく、80mm以下が更に好ましい。
【0154】
各ブロック、各ブロック片の踏面から底面までのブロック高さ、ブロック片高さh(クラウンブロック片20、ミドルブロック35、ショルダーブロック40等のブロック高さ、ブロック片高さ)は、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能の観点から、15mm以上25mm未満が好ましい。下限は、18mm以上がより好ましい。上限は、22mm以下がより好ましい。図1のタイヤでは、図4(a)、図6図8に示すように、クラウンブロック片20の高さh1はクラウン主溝3の深さd1、ミドルブロック35の高さh3はミドル横溝34の深さd3、ショルダーブロック40の高さh4はショルダー横溝39の深さd4である。
【0155】
以上、本発明の一実施形態のタイヤを詳細に説明したが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0156】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0157】
(製造例1)
特表平8-507555号公報の実施例3の製法により、微粒子カーボンブラック2を製造した。
【0158】
(製造例2)
空気導入ダクトと燃焼バーナーを備える内径800mm、長さ1600mmの燃焼帯域、該燃焼帯域から連接され、周辺から原料ノズルを貫通接続した内径145mm、長さ1000mmの狭径部からなる原料導入帯域、クエンチ装置を備えた内径400mm、長さ3000mmの後部反応帯域を順次接合したカーボンブラック反応炉を用い、燃料にC重油、及び原料炭化水素にクレオソート油を使用し、各条件を設定して微粒子カーボンブラック3を製造した。
【0159】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
SBR:住友化学工業(株)製のSBR1502(スチレン含有量23.5質量%)
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量95質量%)
微粒子カーボンブラック1:N134(平均粒子径18nm、CTAB130m/g、NSA148m/g、IA144mg/g、CTAB/IA0.90、DBP123cm/100g)
微粒子カーボンブラック2:製造例1(平均粒子径16nm、CTAB170m/g、NSA174m/g、IA163mg/g、CTAB/IA1.04、DBP154cm/100g)
微粒子カーボンブラック3:製造例2(平均粒子径16nm、CTAB158m/g、NSA170m/g、IA145mg/g、CTAB/IA1.09、DBP138cm/100g)
カーボンブラック4:N220(平均粒子径22nm、CTAB115m/g、NSA115m/g、IA118mg/g、CTAB/IA0.97、DBP113cm/100g)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)
【0160】
(実施例及び比較例)
各表に示す配合処方に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を150℃で35分間プレス加硫し、加硫ゴムシートを得た。
【0161】
各表に記載の「クラウンブロック片のタイヤ周方向の長さとタイヤ軸方向の長さとの和」、「クラウンブロック片のタイヤ周方向の長さ」、「クラウンブロック片のタイヤ軸方向の長さ」、「クラウンブロック片の高さ」に従い、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、150℃で20分間プレス加硫し、図1の基本パターンを有する試験用タイヤ(サイズ:225/70R19.5(重荷重用))を得た。
【0162】
得られた試験用タイヤ、加硫ゴムシートを下記により評価した。結果を各表に示す。なお、各表の基準比較例は、表1が比較例1-1、表2が比較例2-1である。
【0163】
<ゴム硬度(Hs)>
JIS K6253-3(2012)の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に従って、タイプAデュロメータにより、加硫ゴムシートの硬度を測定した(JIS-A硬度)。測定は25℃で行った。
【0164】
<引張試験>
JIS K6251(2010)に基づいて、得られた加硫ゴムシートから7号ダンベル型試験片を作製し、該試験片を用いて23℃において引張試験を実施して破断時伸び(EB)を測定した。
【0165】
<耐ブロック欠け性能>
試験用タイヤをドライブ軸に装着して、悪路登坂させ、意図的にタイヤを空転し、コントロール軸装着のタイヤをベースにブロックの「欠け数×深さ」を指数化した。基準比較例を100として指数表示した。指数が大きいほど、耐ブロック欠け性能が良好である。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
各表から、イソプレン系ゴム、BR、SBR、特定カーボンブラックを所定配合で含み、所定以上のHs及びEBを持つ実施例のタイヤは、耐ブロック欠け性能が良好であった。特に、ブロック(ブロック片)のタイヤ周方向の長さとタイヤ軸方向の長さとの和が80mm以上の場合や、ブロック高さ(ブロック片高さ)が15mm以上25mm未満の場合は、耐ブロック欠け性能が顕著に優れていた。また、所定のゴム成分及び特定カーボンブラックの併用により、耐ブロック欠け性能が相乗的に改善された。
【0170】
一方、N220グレードのカーボンブラックを用いた比較例1-1は、Hsが低下し、ブロックの剛性が低下することで、ブロック欠けが発生し、NR量が少ない比較例1-2、1-3は、EBが低下し、ブロック欠けが発生した。カーボンブラック総量が少ない比較例1-4は、Hsが低下し、ブロックの剛性が低下することで、ブロック欠けが発生し、微粒子カーボンブラックの配合比率が高い比較例1-5は、EBが低下し、ブロック欠けが発生した。
【0171】
実施例のタイヤは、耐摩耗性能にも優れていた。更に、クラウンブロック片に代えて、ミドルブロック、ショルダーブロックを評価した場合においても、実施例のタイヤは、耐ブロック欠け性能、耐摩耗性能が同様に優れていた。
【符号の説明】
【0172】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 クラウン主溝
4 ショルダ主溝
10 クラウン陸部
14 クラウン横溝
15 クラウンブロック
30 クラウンサイプ(クラウン縦細溝)
W4 クラウンブロック片のタイヤ周方向の長さ()
W10 クラウンブロック片のタイヤ軸方向の長さ
W11 ミドルブロックのタイヤ周方向の長さ
W12 ミドルブロックのタイヤ軸方向の長さ
W13 ショルダーブロックのタイヤ周方向の長さ
W14 ショルダーブロックのタイヤ軸方向の長さ
h1 クラウンブロック片の高さ(クラウン主溝の深さd1)
h3 ミドルブロックの高さ(ミドル横溝の深さd3)
h4 ショルダーブロックの高さ(ショルダー横溝の深さd4)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8