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特許7517559算出装置、算出方法および算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】算出装置、算出方法および算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20240709BHJP
【FI】
G06Q50/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023122521
(22)【出願日】2023-07-27
【審査請求日】2023-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隼一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 喬成
【審査官】貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-191832(JP,A)
【文献】特開2011-204217(JP,A)
【文献】特許第7178064(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに提供されるユーザインターフェイスを介して、製造に際して排出されるGHG(Greenhouse gas)の算出対象となる製品の指定を受け付ける受付部と、
前記指定された製品を製造する事業所全体の算出対象期間における燃料使用量、インフラ使用量、および、売上から利益および材料費を差し引いた費用である加工費用と、当該算出対象期間における当該製品の製造の際の材料ごとの使用量および加工費用と、を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された情報のうち、前記算出対象期間における、前記事業所全体の前記燃料使用量および前記インフラ使用量に関するGHG排出量を前記事業所全体の加工費用と前記製品の加工費用との比率によって按分した値と、当該製品の製造の際の材料ごとの使用量に関するGHG排出量とを合算することによって、前記算出対象期間における当該製品のGHG排出量を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された当該製品のGHG排出量を、前記ユーザインターフェイスを介して前記ユーザに提供する提供部と、
を備えることを特徴とする算出装置。
【請求項2】
ユーザに提供されるユーザインターフェイスを介して、製造に際して排出されるGHG(Greenhouse gas)の算出対象となる製品の指定を受け付ける受付部と、
前記指定された製品を製造する事業所全体の算出対象期間における燃料使用量、インフラ使用量、および、工数と、当該算出対象期間における当該製品の製造の際の材料ごとの使用量および工数と、を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された情報のうち、前記算出対象期間における、前記事業所全体の前記燃料使用量および前記インフラ使用量に関するGHG排出量を前記事業所全体の工数と前記製品の工数との比率によって按分した値と、当該製品の製造の際の材料ごとの使用量に関するGHG排出量とを合算することによって、前記算出対象期間における当該製品のGHG排出量を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された当該製品のGHG排出量を、前記ユーザインターフェイスを介して前記ユーザに提供する提供部と、
を備えることを特徴とする算出装置。
【請求項3】
コンピュータが、
ユーザに提供されるユーザインターフェイスを介して、製造に際して排出されるGHG(Greenhouse gas)の算出対象となる製品の指定を受け付け、
前記指定された製品を製造する事業所全体の算出対象期間における燃料使用量、インフラ使用量、および、売上から利益および材料費を差し引いた費用である加工費用と、当該算出対象期間における当該製品の製造の際の材料ごとの使用量および加工費用と、を取得し、
前記取得された情報のうち、前記算出対象期間における、前記事業所全体の前記燃料使用量および前記インフラ使用量に関するGHG排出量を前記事業所全体の加工費用と前記製品の加工費用との比率によって按分した値と、当該製品の製造の際の材料ごとの使用量に関するGHG排出量とを合算することによって、前記算出対象期間における当該製品のGHG排出量を算出し、
前記算出された当該製品のGHG排出量を、前記ユーザインターフェイスを介して前記ユーザに提供する、
ことを含むことを特徴とする算出方法。
【請求項4】
コンピュータを、
ユーザに提供されるユーザインターフェイスを介して、製造に際して排出されるGHG(Greenhouse gas)の算出対象となる製品の指定を受け付ける受付部と、
前記指定された製品を製造する事業所全体の算出対象期間における燃料使用量、インフラ使用量、および、売上から利益および材料費を差し引いた費用である加工費用と、当該算出対象期間における当該製品の製造の際の材料ごとの使用量および加工費用と、を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された情報のうち、前記算出対象期間における、前記事業所全体の前記燃料使用量および前記インフラ使用量に関するGHG排出量を前記事業所全体の加工費用と前記製品の加工費用との比率によって按分した値と、当該製品の製造の際の材料ごとの使用量に関するGHG排出量とを合算することによって、前記算出対象期間における当該製品のGHG排出量を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された当該製品のGHG排出量を、前記ユーザインターフェイスを介して前記ユーザに提供する提供部と、
を備える算出装置として機能させることを特徴とする算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温室効果ガスの排出量を算出する算出装置、算出方法および算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境への関心の高まりから、事業者が製造した製品に関わる二酸化炭素等のGHG(温室効果ガス、greenhouse gas)排出量を算出する技術が多く提案されている。GHG排出量の算出手法として従来主流となっている手法には、各製品の製造に関連する手順ごとの排出量を一つ一つ積み上げて算出する積み上げ方式と、全体の排出量を何らかの変数で按分して算出する按分方式とがある。
【0003】
例えば、ユーティリティ設備ごとの運転状態に照らしたGHG排出量を把握しておき、その稼働状態の記録から、設備ごとのGHG排出量を算出し、その上で各製品製造時に記録されたユーティリティの使用量および使用時刻に基づきGHG排出量を按分する技術が知られている(例えば、特許文献1)。あるいは、工場のCO排出総量を工場出荷額/製品出荷総額の比率で按分することで、詳細な製造データがなくとも製品のCO排出量をシミュレーションすることができる技術が知られている(例えば、特許文献2)。また、工場全体で使用する電力等の共通項目について、製品の売上高や販売台数等に基づく係数を用いて排出量を按分することで、排出量の算出を簡易的に行う手法も提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-191832号公報
【文献】特開2011-204217号公報
【文献】特許第7178064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術を用いることで、事業所におけるGHG排出量を算出することが可能である。しかしながら、従来手法では、現実的に算出が困難となる点が懸念される。
【0006】
例えば、設備を運転させた場合のGHG排出量を設備ごとに算出する手法は、設備の稼働状況ごとにデータを収集することを要するため、設備の規模が大きくなるにつれ、その手間は膨大なものとなる。また、CO排出総量を工場出荷額と製品出荷総額の比率で按分する手法では、算出は簡易化することができるものの、製品の経済価値とCO排出量とが比例しない場合(価値が極めて高いが製造時のCO排出量が少量の製品など)、実態と算出値の乖離が生じる。また、製品の販売台数等に基づいて按分割合を算出する場合、どの製品も1個当たりの按分比率が平準化されるため、例えば、製造工程数が多く電力使用量が多い製品は、共通項目の按分(電力等のインフラに係る値)が実態よりも小さく算出されるため、やはり実態と算出値に乖離が生じる。
【0007】
すなわち、従来手法では、精緻なデータが算出可能であるが非常に手間がかかるか、あるいは、簡易であるが実態と算出値に乖離が生じやすいか、いずれかの問題があった。
【0008】
そこで、本開示では、データ収集の労力を低減しつつ、より実態に適合したGHG排出量を算出することのできる算出装置、算出方法および算出プログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本開示に係る一形態の算出装置は、製造に際して排出されるGHG(Greenhouse gas)の算出対象となる製品を製造する事業所全体の算出対象期間における燃料使用量、インフラ使用量、および、売上から利益および材料費を差し引いた費用である加工費用と、当該算出対象期間における当該製品の製造の際の材料ごとの使用量および加工費用と、を取得する取得部と、前記取得部によって取得された情報のうち、前記事業所全体の前記燃料使用量および前記インフラ使用量に関するGHG排出量を前記事業所全体の加工費用と前記製品の加工費用との比率によって按分した値と、当該製品の製造の際の材料ごとの使用量に関するGHG排出量とに基づいて、前記算出対象期間における当該製品のGHG排出量を算出する算出部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、データ収集の労力を低減しつつ、より実態に適合したGHG排出量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る算出システムの概要を示す図である。
図2】実施形態に係る算出処理の概要を示す図である。
図3】実施形態に係る算出装置の構成例を示す図である。
図4】実施形態に係る共通情報記憶部の一例を示す図(1)である。
図5】実施形態に係る共通情報記憶部の一例を示す図(2)である。
図6】実施形態に係る製品情報記憶部の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る原単位記憶部の一例を示す図である。
図8】算出装置が提供するユーザインターフェイスを説明するための図(1)である。
図9】算出装置が提供するユーザインターフェイスを説明するための図(2)である。
図10】算出装置が提供するユーザインターフェイスを説明するための図(3)である。
図11】実施形態に係る算出処理の手順を示すフローチャートである。
図12】変形例に係る製品情報記憶部の一例を示す図である。
図13】算出装置の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0013】
(1.実施形態)
(1-1.実施形態に係る算出システムの概要)
本開示に係る算出処理は、図1に示す算出システム1によって実施される。図1を用いて、実施形態に係る算出システム1の構成、および、算出システム1による算出処理の概要について説明する。図1は、実施形態に係る算出システム1の概要を示す図である。
【0014】
図1に示すように、算出システム1は、算出装置100と、事業所システム10と、原単位データベース200とを含む。
【0015】
算出装置100は、事業所等が製品を製造する際のGHG排出量を算出する情報処理装置である。例えば、算出装置100は、事業所等を運営する企業等からの要求を受け、当該企業の製造に関するGHG排出量を算出し、算出した結果を企業等に提供する。
【0016】
事業所システム10は、GHG排出量の算出対象となる製品を製造する事業所を管理する機構である。事業所システム10は、例えば、事業所における所定期間ごとの電力消費量等や、各製品の製造数や、各製品の製造工程における費用や工数等のデータを管理する。また、事業所システム10は、算出装置100が必要とするデータを算出装置100に提供する。
【0017】
原単位データベース200は、電力等のインフラ等を提供する事業者(以下、「提供事業者」と称する)の活動において、提供事業者が提供する電力等の所定単位ごとのGHG排出量が記録されたデータベースである。原単位データベース200は、例えば、当該国の管理当局等により公開および提供されるデータベースである。具体的には、当該国の環境管理に係る当局が提供する「電気事業者別の排出係数」等が記録されたデータベースである。算出装置100を含む一般利用者は、ネットワーク等を介して、原単位データベース200に記録されたデータを自由に活用可能であるものとする。なお、本開示では電力を一例として示しているが、排出原単位はこの例に限られず、原単位データベース200は、提供するインフラや材料等の種別に応じて、複数存在してもよい。
【0018】
図1に示す例では、算出装置100は、事業所システム10を運営する企業等から依頼を受け、事業所システム10が管理する事業所において製造される製品に関する所定期間(例えば1か月間等)のGHG排出量を算出する。
【0019】
上述したように、従来、GHG排出量は、積み上げ方式、按分方式、もしくはそれらを組み合わせた方式で算出されていた。しかし、いずれの方式でも、算出のためのデータ収集に手間がかかりすぎたり、あるいは、実態に即した正確な値を簡易に算出することが難しかったりした。すなわち、GHG排出量の算出においては、データ収集の労力を低減しつつ、より実態に適合したGHG排出量を算出する、という課題が存在した。
【0020】
そこで、実施形態に係る算出装置100は、以下の構成により、上記の課題を解決する。具体的には、算出装置100は、所定の製品のGHG排出量を算出するにあたり、事業所全体で消費するインフラ等に関するGHG排出量を当該製品分で按分した値と、当該製品の固有値に基づいて、当該製品のGHG排出量を算出する。そして、算出装置100は、按分の比率の算出に利用する変数として、売上から利益および材料費を差し引いた、いわゆる加工費用を用いることを特徴とする。具体的には、算出装置100は、事業所全体の加工費用を分母とし、算出対象となる製品の加工費用を分子とした比率を按分比率として用いる。
【0021】
上記のように算出される加工費用は、利益を含まないため、実際に使用した電力や、製品の製造に用いられた装置の稼働に係る燃料使用量や、作業工数等と相関性が高い。このため、算出装置100は、加工費用を按分比として用いることで、実態のGHG排出量に近しい値を高精度に算出することが可能となる。
【0022】
なお、製品固有値は、例えば実際の製造での材料使用量から求められる各製品固有の数値を指す。かかる値は、製造工程において不可避的に事業所システム10により取得されるデータであるため、収集における負担は比較的小さいと想定される。
【0023】
このように、算出装置100は、加工費用をGHG排出量の算出に用いることで、算出のための基データを簡便に構築することができ、かつ、実態に近しいGHG排出量を算出可能とすることができる。
【0024】
図1に示した例において、算出装置100が、製品AのGHG排出量を算出する処理において用いる情報について、図2を用いて説明する。図2は、実施形態に係る算出処理の概要を示す図である。
【0025】
まず、算出装置100は、事業所システム10および原単位データベース200から、算出に必要となる各種データを取得する。例えば、算出装置100は、事業所システム10を管理する企業等の担当者から、所定のユーザインターフェイスを介して、事業所における電力使用量や、燃料の使用量や、加工費用を取得する。また、算出装置100は、原単位データベース200から、単位ごとの電力使用とGHG排出量との関係を示すデータ(原単位)等の各種データを取得する。これらの情報は、事業所全体に関するデータであり、以下「共通情報」と称する。共通情報は、主として、排出量算出に係る分類におけるスコープ1およびスコープ2に該当する排出量が該当する。
【0026】
また、算出装置100は、事業所システム10から、製品Aの製造に係る各種データを取得する。例えば、算出装置100は、所定期間における製品Aの製造量や、製品Aの製造における材料使用料や、製品Aの加工費用等のデータを取得する。これらの情報は、製品Aに固有のデータであり、以下「製品情報」と称する。
【0027】
算出装置100は、取得した共通情報および製品情報に基づいて、製品AのGHG排出量を算出する。図1に示したように、製品AのGHG排出量は、共通情報を製品Aに固有の按分比率で按分した値(「共通情報按分値」)と、製品固有値とを合わせた値で示される。按分比率は、事業所全体の加工費用を分母とし、製品Aの加工費用を分子とした値をとる。
【0028】
このように、算出装置100は、利益を含まない変数である加工費用を用いてGHG排出量を算出することで、製造工程と比して高い価値を有する製品等のGHG排出量が実態よりも高く算出されるような、現実との乖離を低減することができる。また、算出装置100は、製品固有値として、実際の製造での材料使用料等を用いるので、収集に手間のかかるデータ(製品の製造設備ごとのGHG排出量等)を用いることがないため、簡易にGHG排出量を算出することができる。すなわち、算出装置100は、データ収集の労力を低減しつつ、より実態に適合したGHG排出量を算出することができる。
【0029】
(1-2.実施形態に係る算出装置の構成)
次に、実施形態に係る算出処理を実行する算出装置100の構成について説明する。図3は、実施形態に係る算出装置100の構成例を示す図である。
【0030】
図3に示すように、算出装置100は、通信部110と、記憶部120と、制御部130とを有する。なお、算出装置100は、算出装置100を管理する管理者等から各種操作を受け付ける入力部(例えば、キーボードやマウス等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0031】
通信部110は、例えば、NIC(Network Interface Card)やネットワークインタフェースコントローラ等によって実現される。通信部110は、ネットワークN(例えばインターネット)と有線または無線で接続され、ネットワークNを介して、事業所システム10や原単位データベース200等との間で情報の送受信を行う。例えば、通信部110は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth、SIM(Subscriber Identity Module)、LPWA(Low Power Wide Area)等の任意の通信規格もしくは通信技術を用いて、情報の送受信を行ってもよい。
【0032】
記憶部120は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0033】
記憶部120は、共通情報記憶部121と、製品情報記憶部122と、原単位記憶部123とを有する。
【0034】
以下、図4から図7を用いて、記憶部120が記憶する情報について説明する。なお、図4から図7に示す例では、記憶部120に格納される情報を「D01」のように概念的に示す場合があるが、実際には、後述で説明する各情報が記憶部120に記憶されるものとする。
【0035】
共通情報記憶部121は、実施形態に係る算出処理に用いる情報のうち、算出対象の製品を製造する事業所全体に共通する情報を記憶する。
【0036】
図4は、実施形態に係る共通情報記憶部121の一例を示す図(1)である。図4では、共通情報記憶部121のうち、データテーブル121Aに記憶される情報を示す。データテーブル121Aは、事業所が製造において消費する消費財のうち、インフラや燃料等に係る情報を記憶する。図4に示した例では、データテーブル121Aは、「共通情報ID」、「大分類」、「事業所ID」、「年月」、「種別」、「使用量」、「排出原単位」といった項目を有する。
【0037】
「共通情報ID」は、共通情報を識別する識別情報を示す。「大分類」は、共通情報に該当するデータの分類を示す。なお、大分類は、サプライチェーン排出量を工程ごとに把握するための分類であるスコープ1または2の分類であってもよい。「事業所ID」は、事業所を識別する識別情報を示す。実施形態では、一つの事業所を算出対象としているため、事業所IDは共通する。「年月」は、当該事業所において排出量を算出する際の所定期間の単位を示す。実施形態では、排出量を算出する単位は「1か月」であるものとする。「種別」は、共通情報の種別を示す。「使用量」は、事業所全体で所定期間に使用された物資の量を示す。「排出原単位」は、当該共通情報の所定単位におけるGHG排出量を示す。排出原単位は、例えば、原単位記憶部123に記憶されたデータ、すなわち原単位データベース200から取得されたデータから取得される。例えば、排出原単位は、データテーブル121Aに入力された共通情報の種別に紐づいて、原単位データベース200から自動的に選択された情報がデータテーブル121Aに入力される。
【0038】
図5は、実施形態に係る共通情報記憶部121の一例を示す図(2)である。図5では、共通情報記憶部121のうち、データテーブル121Bに記憶される情報を示す。データテーブル121Bは、事業所が製造する製品全体に関する費用等のデータを記憶する。図5に示した例では、データテーブル121Bは、「共通情報ID」、「大分類」、「事業所ID」、「年月」、「加工費用」といった項目を有する。
【0039】
「共通情報ID」、「大分類」、「事業所ID」、「年月」の各項目は、図4に示した項目と同一である。「加工費用」は、事業所における全製品の製造にかかった具体的な加工費用を示す。
【0040】
図4および図5で示した共通情報に係るデータは、一般に事業所(製造現場)の製造過程で記録されるデータであるため、収集の労力も低いと想定される。なお、上述のように、本開示では「加工費用」を、売上から利益と材料費を除いた額と定義している。すなわち、加工費用には、製造に係る労務費のみならず、設備の減価償却費やその他の諸経費も含まれることになるが、これら諸費用は、一般的に、労務費に対して金額が低くなり、加工費用全体に占める割合は低いと想定される。このため、本開示に係る算出処理において、これら諸経費は、算出結果に大きな影響を及ぼさないと考えられる。ただし、仮に加工費用に占める設備償却費の割合が想定よりも大きい場合などは、償却費をさらに加工費用から除くなどの処理を行ってもよい。
【0041】
続いて、製品情報記憶部122に関して説明する。製品情報記憶部122は、事業所で製造される各製品に関する情報を記憶する。
【0042】
図6は、実施形態に係る製品情報記憶部122の一例を示す図である。図6に示した例では、製品情報記憶部122は、「製品名」、「事業所ID」、「製造年月」、「製造数量」、「加工費用」、「材料名」、「材料使用量」、「排出原単位」といった項目を有する。
【0043】
「製品名」は、事業所で製造される製品の名称を示す。「事業所ID」は、製品が製造された事業所を識別する識別情報である。「製造年月」は、製品が製造された年月を示す。「製造数量」は、各製品の所定単位における製造数を示す。「加工費用」は、製品ごとの加工費用を示す。「材料名」は、製品の材料を示す。「材料使用量」は、製品を製造するにあたり使用された各材料の量を示す。「排出原単位」は、各材料に対応したGHG排出量を示すデータである。排出原単位は、例えば、原単位データベース200や、各材料を提供する事業者等から提供される。
【0044】
続いて、原単位記憶部123に関して説明する。原単位記憶部123は、利用されるインフラや材料ごとのGHG排出量を記憶するものであり、例えば原単位データベース200から算出装置100に取得された情報を記憶する。なお、原単位データベース200の例としては、例えば当該国の公的団体から提供されるデータベース等がありうる(一例として、インベントリデータベースIDEA等)。
【0045】
図7は、実施形態に係る原単位記憶部123の一例を示す図である。図7に示した例では、原単位記憶部123は、「提供事業者ID」、「種別」、「基礎排出係数」、「調整後排出係数」といった項目を有する。
【0046】
「提供事業者ID」は、燃料や電力等を提供する事業所を識別する識別情報を示す。「種別」は、提供事業者が提供する資材の種別を示す。「基礎排出係数」は、例えば電力であれば、提供される電力に関して、発電の際に排出したGHG(この例ではCO)排出量を、提供(販売)した際の電力量で除算した値を示す。「調整後排出係数」は、基礎排出量に対して当該国の規定等に基づき所定の調整を行った後の排出係数を示す。事業者は、当該国の規定等に基づき、基礎排出係数もしくは調整後排出係数を用いて、自社の活動に係るGHG排出量を算出するが、調整後排出係数を用いるほうがより実態に則した算定値を導出可能である。
【0047】
図3に戻り、説明を続ける。制御部130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって、算出装置100内部に記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部130は、コントローラ(controller)であり、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。
【0048】
図3に示すように、制御部130は、取得部131と、提供部132と、受付部133と、算出部134とを含む。
【0049】
取得部131は、実施形態に係る算出処理に用いられる各種データを取得する。例えば、取得部131は、原単位データベース200から、GHG排出量を算出するための原単位を取得し、原単位記憶部123に記憶する。また、取得部131は、後述する受付部133が受け付けた情報(例えば、ユーザインターフェイスを介して企業の担当者等から入力された情報)を取得する。具体的には、取得部131は、GHG排出量の算出対象となる製品を製造する事業所全体の算出対象期間における燃料使用量、インフラ使用量、および、加工費用を取得する。また、取得部131は、当該算出対象期間における当該製品の製造の際の材料ごとの使用量および加工費用を取得する。
【0050】
提供部132は、算出装置100を利用する企業等に各種情報を提供する。例えば、提供部132は、企業等がGHG排出量に係るデータを入力するためのユーザインターフェイスを提供する。また、提供部132は、後段の算出部134が算出したGHG排出量を、ユーザインターフェイスを介して企業等に提供する。
【0051】
受付部133は、ユーザインターフェイス等を介して、製品の製造に係る各種データを受け付ける。例えば、受付部133は、事業所システム10が有する製品の製造に係る共通情報や製品情報等に関する各種データについて、ユーザインターフェイスを介して、企業の担当者等からの入力を受け付ける。
【0052】
算出部134は、取得部131によって取得された情報に基づいて、事業所におけるGHG排出量、および、算出対象となる製品のGHG排出量を算出する。
【0053】
具体的には、算出部134は、事業所全体の燃料使用量およびインフラ使用量に関するGHG排出量を算出したのち、事業所全体の加工費用と製品の加工費用との比率によって按分することで、当該製品の共通情報におけるGHG排出量を算出する。なお、算出部134は、算出に際して、適宜、原単位データベース200等にアクセスして排出原単位を取得し、取得した情報と燃料使用量とを乗算することで、GHG排出量する。そして、算出部134は、按分して算出された共通情報におけるGHG排出量と、製品の製造の際の材料ごとの使用量に関するGHG排出量とを合算して、算出対象期間における、当該製品のGHG排出量を算出する。
【0054】
上記算出処理は、例えば、事業所システム10に提供されるユーザインターフェイスを介して実行される。図8から図10を用いて、受付部133および算出部134による、データの受付および算出処理について説明する。図8は、算出装置100が提供するユーザインターフェイスを説明するための図(1)である。
【0055】
図8に示すユーザインターフェイス50は、例えば、GHG排出量の算出を要求する企業に提供されるユーザインターフェイスであり、例えば、企業の担当者が利用する情報処理端末の画面に表示される。
【0056】
図8に示すように、ユーザインターフェイス50は、共通情報を入力するための画面であり、事業所情報入力欄51と、燃料消費関連入力欄52と、電力関連入力欄53と、加工費用入力欄54とを有する。企業の担当者は、ユーザインターフェイス50において、事業所に係る共通情報を入力する。なお、ユーザインターフェイス50において、燃料の種類や、電気事業者や、電気事業者が提供するメニュー等は、予めGHG排出量の原単位データベース200の項目等と紐づけられており、担当者はそれらを選択することで入力を行うことができる。ユーザインターフェイス50で入力された情報は、共通情報記憶部121に記憶される。
【0057】
具体的には、担当者は、事業所情報入力欄51において、事業所の名称や、算出を希望する対象期間等を入力する。また、担当者は、燃料消費関連入力欄52において、対象期間における燃料の使用量を入力する。また、担当者は、電力関連入力欄53において、対象期間における電力等のインフラ使用量を入力する。また、担当者は、加工費用入力欄54において、対象期間における事業所全体の加工費用を入力する。算出装置100は、入力された各種データを受け付けると、図9に示す表示に画面を移行する。
【0058】
次に、図9について説明する。図9は、算出装置100が提供するユーザインターフェイスを説明するための図(2)である。
【0059】
図9に示すユーザインターフェイス60は、GHG排出量の算出対象となる個別の製品情報を入力するための画面である。図9に示すように、ユーザインターフェイス60は、製品情報入力欄61と、製造実績入力欄62と、材料情報入力欄63とを有する。企業の担当者は、ユーザインターフェイス60において、個々の製品情報を入力する。また、担当者は、ユーザインターフェイス60において、材料名を入力後、排出原単位項目名の中から適合するものを選択する。ユーザインターフェイス60で入力された情報は、製品情報記憶部122に記憶される。
【0060】
具体的には、担当者は、製品情報入力欄61において、GHG排出量を算出する対象となる製品を特定するための情報を入力する。また、担当者は、製造実績入力欄62において、対象期間における製品の製造数量や加工費用を入力する。また、担当者は、材料情報入力欄63において、製品の製造において使用された材料の名称や使用量を入力する。また、担当者は、選択した材料に適合する排出原単位項目を選択する。
【0061】
次に、図10について説明する。図10は、算出装置100が提供するユーザインターフェイスを説明するための図(3)である。
【0062】
図10に示すユーザインターフェイス70は、GHG排出量の算出結果を表示するための画面である。図10に示すように、ユーザインターフェイス70は、製品名入力欄71と、算出結果表示欄72とを有する。
【0063】
企業の担当者は、製品名入力欄71において、GHG排出量を算出する対象となる製品を特定する情報を入力して、算出処理を実行するためのボタンを押下する。
【0064】
算出装置100は、要求に応じて、製品に関するGHG排出量を算出し、算出結果を算出結果表示欄72に表示する。具体的には、算出装置100は、算出対象の製品に関して、共通情報記憶部121および製品情報記憶部122から各種データを取得する。具体的には、算出装置100は、「製品A」が算出対象として指定された場合、製品情報記憶部122に格納されている製品Aに係る製造事業所や、製造年月や、加工費用等を取得する。また、算出装置100は、共通情報記憶部121から、製品Aを製造した事業所における燃料やインフラの使用量や、排出原単位や、事業所全体の加工費用等を取得する。
【0065】
そして、算出装置100は、下記式(1)に基づき、共通情報に起因した、製品Aに按分するGHG排出量を算出する。
【0066】
【数1】
【0067】
また、算出装置100は、下記式(2)に基づき、製品Aの製造に使用した材料に起因するGHG排出量を算出する。
【0068】
【数2】
【0069】
そして、算出装置100は、式(1)および式(2)で求めた値を合算し、「製品A全体のGHG排出量」を算出する。また、算出装置100は、製品A全体のGHG排出量を製造数量で除算した、「製品Aの1単位のGHG排出量」を算出する。そして、算出装置100は、算出結果を算出結果表示欄72に表示する。
【0070】
(1-3.実施形態に係る算出処理の手順)
上記の実施形態に係る算出処理の手順について、図11を用いて具体的に説明する。図11は、実施形態に係る算出処理の手順を示すフローチャートである。
【0071】
図11に示すように、算出装置100は、原単位データベース200等にアクセスし、予め原単位情報等を取得する(ステップS101)。
【0072】
その後、算出装置100は、ユーザインターフェイスを介して企業等から算出開始の要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS102)。算出開始の要求を受け付けていない場合(ステップS102;No)、算出装置100は、要求を受け付けるまで待機する。
【0073】
一方、算出開始の要求を受け付けた場合(ステップS102;Yes)、算出装置100は、ユーザインターフェイスを介して、企業の担当者等から共通情報の入力を受け付ける(ステップS103)。なお、共通情報は算出対象期間ごとに一式が入力されていればよいため、算出処理の際に既に共通情報が入力されていた場合は、ステップS103は、スキップされてもよい。その後、算出装置100は、算出対象となる製品の製品情報の入力を受け付ける(ステップS104)。
【0074】
そして、算出装置100は、受け付けた情報に基づいて、製品に係るGHG排出量を算出する(ステップS105)。算出装置100は、ユーザインターフェイスを介して、算出要求を送信した企業等に対して、算出結果であるGHG排出量を提供する(ステップS106)。
【0075】
(2.実施形態の変形例)
(2-1.工数に基づく算出)
上記実施形態では、算出装置100が加工費用に基づいて按分割合を算出する例を示した。ここで、算出装置100は、加工費用とは異なる変数を用いて按分割合を算出してもよい。例えば、算出装置100は、製品の製造に係る工数(例えば、製造に要した人数と製造に要した時間を乗算した値)を用いてもよい。
【0076】
この場合、算出装置100は、加工費用に代えて、製品に関する工数を取得する。図12は、変形例に係る製品情報記憶部122Aの一例を示す図である。図12に示すように、算出装置100は、製品Aの個別の製品情報として、製造の工数の入力を受け付ける。
【0077】
そして、算出装置100は、算出対象となる事業所全体における工数を分母とし、製品Aの工数を分子とした値を按分割合として用いて、製品AのGHG排出量を算出する。
【0078】
かかる処理であっても、実態と乖離する要因となりやすい、製品の売上高や利益といった変数を排除してGHG排出量の按分を算出することができるので、算出装置100は、実施形態と同様、より実態に適合したGHG排出量を算出することができる。
【0079】
なお、算出装置100を利用する企業等は、例えば、ユーザインターフェイスにおいて、工数を用いて算出を行うか、加工費用を用いて算出を行うか、選択可能であってもよい。これにより、企業等は、加工費用か工数か、収集しやすいデータを選択して算出を行わせることができるので、よりデータ収集の負担を軽減することができる。
【0080】
(2-2.装置構成の変形例)
上記実施形態では、算出システム1が、算出装置100と、事業所システム10と、原単位データベース200とを含む例を示した。しかし、算出システム1は、かかる構成に限られない。例えば、算出システム1は、算出装置100が事業所システム10の機能を兼ねるものであってもよい。また、算出装置100や事業所システム10は、必ずしも個々の情報処理装置ではなく、仮想サーバやプログラムとして構成されてもよい。すなわち、算出システム1は、必ずしも複数台の装置により構成されず、1台の装置によって実現されてもよい。
【0081】
また、上述した記憶部120が記憶する情報等は、必ずしも算出装置100内部の記憶部120に保存されなくてもよい。例えば、各情報は、所定の外部記憶装置(クラウドストレージ等)の記憶領域に記憶されてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、算出装置100を利用するユーザが企業であることを前提として説明したが、ユーザは企業に限られず、個人や団体、組合等、どのような態様であってもよい。
【0083】
(2-3.按分比率の変形例)
上記実施形態では、按分比率の算出に利用する変数としての加工費用を、売上から利益および材料費を差し引いたものとした。これは、加工費用に占める割合として、材料費や労務費等と比較して、設備償却費の割合が比較的小さいという経験則による。しかし、加工費用として算出する値は、事業所の実情に応じて、適宜設定されてもよい。すなわち、算出装置100は、上記の定義とおりでなくとも、利益によらない変数を用いれば、実際に使用した電力、装置、作業工数等と相関性が高く、按分比として用いた場合に実態のGHG排出量に近しい高精度な算出を行うことが可能である。
【0084】
(3.その他の実施形態)
上述した実施形態に係る処理は、上記実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよい。
【0085】
例えば、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0086】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0087】
また、上述してきた実施形態および変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0088】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0089】
(4.本開示に係る算出装置の効果)
上述してきたように、本開示に係る算出装置(実施形態では算出装置100)は、取得部(実施形態では取得部131)と算出部(実施形態では算出部134)とを備える。取得部は、製造に際して排出されるGHGの算出対象となる製品を製造する事業所全体の算出対象期間における燃料使用量、インフラ使用量、および、売上から利益および材料費を差し引いた費用である加工費用と、当該算出対象期間における当該製品の製造の際の材料ごとの使用量および加工費用と、を取得する。算出部は、取得部によって取得された情報のうち、事業所全体の燃料使用量およびインフラ使用量に関するGHG排出量を事業所全体の加工費用と製品の加工費用との比率によって按分した値と、当該製品の製造の際の材料ごとの使用量に関するGHG排出量とに基づいて、算出対象期間における当該製品のGHG排出量を算出する。
【0090】
このように、算出装置は、利益を含まない変数である加工費用を用いてGHG排出量を算出することで、製造工程と比して高い価値を有する製品等のGHG排出量が実態よりも高く算出されるような、現実との乖離を低減することができる。また、算出装置は、製品固有値として、実際の製造での材料使用料等を用いるので、収集に手間のかかるデータを用いることがないため、簡易にGHG排出量を算出することができる。すなわち、算出装置は、データ収集の労力を低減しつつ、より実態に適合したGHG排出量を算出することができる。
【0091】
また、算出装置は、加工費用に代えて、製造に費やした人数および時間である工数を用いて、共通情報に係るGHG排出量の按分比率を求めてもよい。かかる変数を用いた場合でも、算出装置は、加工費用を用いた場合と同様、データ収集の労力を低減しつつ、より実態に適合したGHG排出量を算出することができる。
【0092】
(5.ハードウェア構成)
上述してきた実施形態に係る算出装置100等の情報機器は、例えば図13に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。以下、実施形態に係る算出装置100を例に挙げて説明する。図13は、算出装置100の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM(Read Only Memory)1300、HDD(Hard Disk Drive)1400、通信インターフェイス1500、および入出力インターフェイス1600を有する。コンピュータ1000の各部は、バス1050によって接続される。
【0093】
CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。例えば、CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムをRAM1200に展開し、各種プログラムに対応した処理を実行する。
【0094】
ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるBIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0095】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、および、かかるプログラムによって使用されるデータ等を非一時的に記録する、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。具体的には、HDD1400は、プログラムデータ1450の一例である本開示に係る算出処理を実行するプログラムを記録する記録媒体である。
【0096】
通信インターフェイス1500は、コンピュータ1000が外部ネットワーク1550(例えばインターネット)と接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、通信インターフェイス1500を介して、他の機器からデータを受信したり、CPU1100が生成したデータを他の機器へ送信したりする。
【0097】
入出力インターフェイス1600は、入出力デバイス1650とコンピュータ1000とを接続するためのインターフェイスである。例えば、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、キーボードやマウス等の入力デバイスからデータを受信する。また、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやスピーカーやプリンタ等の出力デバイスにデータを送信する。また、入出力インターフェイス1600は、所定の記録媒体(メディア)に記録されたプログラム等を読み取るメディアインターフェイスとして機能してもよい。メディアとは、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0098】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る算出装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされた算出プログラムを実行することにより、制御部130等の機能を実現する。また、HDD1400には、本開示に係る算出処理を実行するプログラムや、記憶部120内のデータが格納される。なお、CPU1100は、プログラムデータ1450をHDD1400から読み取って実行するが、他の例として、外部ネットワーク1550を介して、他の装置からこれらのプログラムを取得してもよい。
【0099】
以上、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 算出システム
10 事業所システム
100 算出装置
110 通信部
120 記憶部
121 共通情報記憶部
122 製品情報記憶部
123 原単位記憶部
130 制御部
131 取得部
132 提供部
133 受付部
134 算出部
200 原単位データベース
【要約】
【課題】データ収集の労力を低減しつつ、より実態に適合したGHG排出量を算出すること。
【解決手段】算出装置は、製造に際して排出されるGHG(Greenhouse gas)の算出対象となる製品を製造する事業所全体の算出対象期間における燃料使用量、インフラ使用量、および、売上から利益および材料費を差し引いた費用である加工費用と、当該算出対象期間における当該製品の製造の際の材料ごとの使用量および加工費用と、を取得する取得部と、前記取得部によって取得された情報のうち、前記事業所全体の前記燃料使用量および前記インフラ使用量に関するGHG排出量を前記事業所全体の加工費用と前記製品の加工費用との比率によって按分した値と、当該製品の製造の際の材料ごとの使用量に関するGHG排出量とに基づいて、前記算出対象期間における当該製品のGHG排出量を算出する算出部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13