(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】加速度制御装置及び加速度制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 50/12 20120101AFI20240709BHJP
B60W 40/076 20120101ALI20240709BHJP
B60W 40/13 20120101ALI20240709BHJP
【FI】
B60W50/12
B60W40/076
B60W40/13
(21)【出願番号】P 2023167655
(22)【出願日】2023-09-28
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】結城 俊男
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-156092(JP,A)
【文献】特開2008-149853(JP,A)
【文献】特開2012-056432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
F02D 29/00 - 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架装が連結可能な車両が備えるアクセルペダルの開度と、前記アクセルペダルを運転者が踏み込んだ際の踏込速度と、前記車両の重量と、前記車両が接する路面の勾配と、を取得する取得部と、
前記車両が後退する操作を受け付けた場合に、前記アクセルペダルの開度と、前記踏込速度と、前記重量と、前記路面の、前記車両が後退する方向での勾配と、に基づいて、前記車両が備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御するトルク制御部と、
を有
し、
前記トルク制御部は、前記アクセルペダルの開度が第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が第2閾値以上であることを条件として、前記アクセルペダルの開度に対応する操作トルクと、前記出力トルクの最大値である最大トルクとのうち、トルクの大きさが小さい方を前記駆動力源に発生させるように前記出力トルクの大きさを制御し、
前記トルク制御部は、前記重量が第3閾値以上であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が第4閾値以上である場合、前記最大トルクを、前記駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に第1割合を乗算した乗算値である第1トルクに決定する、
加速度制御装置。
【請求項2】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値以上であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値未満である場合、前記最大トルクを、前記第1割合よりも小さい第2割合を、前記駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に乗算した乗算値である第2トルクに決定する、
請求項
1に記載の加速度制御装置。
【請求項3】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値以上である場合、前記最大トルクを、前記第1割合よりも小さい第2割合を、前記駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に乗算した乗算値である第2トルクに決定する、
請求項
1に記載の加速度制御装置。
【請求項4】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値未満である場合、前記最大トルクを、前記第2割合よりも小さい第3割合を、前記駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に乗算した乗算値である第3トルクに決定する、
請求項
2又は
3に記載の加速度制御装置。
【請求項5】
架装が連結可能な車両が備えるアクセルペダルの開度と、前記アクセルペダルを運転者が踏み込んだ際の踏込速度と、前記車両の重量と、前記車両が接する路面の勾配と、を取得する取得部と、
前記車両が後退する操作を受け付けた場合に、前記アクセルペダルの開度と、前記踏込速度と、前記重量と、前記路面の、前記車両が後退する方向での勾配と、に基づいて、前記車両が備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御するトルク制御部と、
を有し、
前記トルク制御部は、前記アクセルペダルの開度が第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が第2閾値以上であることを条件として、前記重量が第3閾値以上であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が第4閾値以上である場合、前記アクセルペダルの開度に対応する操作トルクを第1割合だけ小さくした第1トルクを前記出力トルクに決定する、
加速度制御装置。
【請求項6】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値以上であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値未満である場合、前記操作トルクを前記第1割合より大きい第2割合だけ小さくした第2トルクを前記出力トルクに決定する、
請求項
5に記載の加速度制御装置。
【請求項7】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値以上である場合、前記操作トルクを前記第1割合より大きい第2割合だけ小さくした第2トルクを前記出力トルクに決定する、
請求項
5に記載の加速度制御装置。
【請求項8】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値未満である場合、前記操作トルクを前記第2割合より大きい第3割合だけ小さくした第3トルクを前記出力トルクに決定する、
請求項
6又は
7に記載の加速度制御装置。
【請求項9】
架装が連結可能な車両が備えるアクセルペダルの開度と、前記アクセルペダルを運転者が踏み込んだ際の踏込速度と、前記車両の重量と、前記車両が接する路面の勾配と、を取得する取得部と、
前記車両が後退する操作を受け付けた場合に、前記アクセルペダルの開度と、前記踏込速度と、前記重量と、前記路面の、前記車両が後退する方向での勾配と、に基づいて、前記車両が備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御するトルク制御部と、
を有し、
前記トルク制御部は、前記アクセルペダルの開度が第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が第2閾値以上であることを条件として、前記出力トルクの大きさを制御し、
前記トルク制御部は、前記重量が第3閾値以上である場合、前記アクセルペダルの開度が前記第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が前記第2閾値以上である場合であっても、前記出力トルクの大きさを制御しない、
加速度制御装置。
【請求項10】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が第4閾値以上である場合、前記アクセルペダルの開度が前記第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が前記第2閾値以上である場合であっても、前記出力トルクの大きさを制御しない、
請求項
9に記載の加速度制御装置。
【請求項11】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が第4閾値未満である場合、前記アクセルペダルの開度に対応する操作トルクを第4割合だけ小さくした第4トルクを前記出力トルクに決定する、
請求項
9又は1
0に記載の加速度制御装置。
【請求項12】
プロセッサが実行する、
架装が連結可能な車両が備えるアクセルペダルの開度と、前記アクセルペダルを運転者が踏み込んだ際の踏込速度と、前記車両の重量と、前記車両が接する路面の勾配と、を取得する取得工程と、
前記車両が後退する操作を受け付けた場合に、前記アクセルペダルの開度と、前記踏込速度と、前記重量と、前記路面の、前記車両が後退する方向での勾配と、に基づいて、前記車両が備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御する制御工程と、
を有
し、
前記制御工程において、前記アクセルペダルの開度が第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が第2閾値以上であることを条件として、前記アクセルペダルの開度に対応する操作トルクと、前記出力トルクの最大値である最大トルクとのうち、トルクの大きさが小さい方を前記駆動力源に発生させるように前記出力トルクの大きさを制御し、
前記制御工程において、前記重量が第3閾値以上であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が第4閾値以上である場合、前記最大トルクを、前記駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に第1割合を乗算した乗算値である第1トルクに決定する、
加速度制御方法。
【請求項13】
プロセッサが実行する、
架装が連結可能な車両が備えるアクセルペダルの開度と、前記アクセルペダルを運転者が踏み込んだ際の踏込速度と、前記車両の重量と、前記車両が接する路面の勾配と、を取得する取得工程と、
前記車両が後退する操作を受け付けた場合に、前記アクセルペダルの開度と、前記踏込速度と、前記重量と、前記路面の、前記車両が後退する方向での勾配と、に基づいて、前記車両が備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御する制御工程と、
を有し、
前記制御工程において、前記アクセルペダルの開度が第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が第2閾値以上であることを条件として、前記重量が第3閾値以上であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が第4閾値以上である場合、前記アクセルペダルの開度に対応する操作トルクを第1割合だけ小さくした第1トルクを前記出力トルクに決定する、
加速度制御方法。
【請求項14】
プロセッサが実行する、
架装が連結可能な車両が備えるアクセルペダルの開度と、前記アクセルペダルを運転者が踏み込んだ際の踏込速度と、前記車両の重量と、前記車両が接する路面の勾配と、を取得する取得工程と、
前記車両が後退する操作を受け付けた場合に、前記アクセルペダルの開度と、前記踏込速度と、前記重量と、前記路面の、前記車両が後退する方向での勾配と、に基づいて、前記車両が備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御する制御工程と、
を有し、
前記制御工程において、前記アクセルペダルの開度が第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が第2閾値以上であることを条件として、前記出力トルクの大きさを制御し、
前記制御工程において、前記重量が第3閾値以上である場合、前記アクセルペダルの開度が前記第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が前記第2閾値以上である場合であっても、前記出力トルクの大きさを制御しない、
加速度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度制御装置及び加速度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の発進制御装置は、バス及びトラック等の商用車の重量、路面の勾配、運転者のアクセル操作量に基づいて、エンジン及びモータの少なくともいずれかを駆動させることにより加速度を制御し、発進時における燃料消費量の低減と牽引力不足の回避とを図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、架装が後部に連結された商用車は、当該商用車の後方の障害物を検出するためのセンサ又はカメラを搭載することが困難であるため、後退する際に後方の障害物を検出して誤発進を抑制する機能が備えられていない。その結果、商用車は、後方への発進において、誤発進をする可能性があるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、商用車が後方に誤発進することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る加速度制御装置は、架装が連結可能な車両が備えるアクセルペダルの開度と、前記アクセルペダルを運転者が踏み込んだ際の踏込速度と、前記車両の重量と、前記車両が接する路面の勾配と、を取得する取得部と、前記車両が後退する操作を受け付けた場合に、前記アクセルペダルの開度と、前記踏込速度と、前記重量と、前記路面の、前記車両が後退する方向での勾配と、に基づいて、前記車両が備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御するトルク制御部と、を有する。
【0007】
前記トルク制御部は、前記アクセルペダルの開度が第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が第2閾値以上であることを条件として、前記出力トルクの大きさを制御してもよい。
【0008】
前記トルク制御部は、前記アクセルペダルの開度に対応する操作トルクと、前記出力トルクの最大値である最大トルクとのうち、トルクの大きさが小さい方を前記駆動力源に発生させるように前記出力トルクの大きさを制御してもよい。
【0009】
前記トルク制御部は、前記重量が第3閾値以上であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が第4閾値以上である場合、前記最大トルクを、前記駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に第1割合を乗算した乗算値である第1トルクに決定してもよい。
【0010】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値以上であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値未満である場合、前記最大トルクを、前記第1割合よりも小さい第2割合を、前記駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に乗算した乗算値である第2トルクに決定してもよい。
【0011】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値以上である場合、前記最大トルクを、前記第1割合よりも小さい第2割合を、前記駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に乗算した乗算値である第2トルクに決定してもよい。
【0012】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値未満である場合、前記最大トルクを、前記第2割合よりも小さい第3割合を、前記駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に乗算した乗算値である第3トルクに決定してもよい。
【0013】
前記トルク制御部は、前記重量が第3閾値以上であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が第4閾値以上である場合、前記アクセルペダルの開度に対応する操作トルクを第1割合だけ小さくした第1トルクを前記出力トルクに決定してもよい。
【0014】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値以上であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値未満である場合、前記操作トルクを前記第1割合より大きい第2割合だけ小さくした第2トルクを前記出力トルクに決定してもよい。
【0015】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値以上である場合、前記操作トルクを前記第1割合より大きい第2割合だけ小さくした第2トルクを前記出力トルクに決定してもよい。
【0016】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が前記第4閾値未満である場合、前記操作トルクを前記第2割合より大きい第3割合だけ小さくした第3トルクを前記出力トルクに決定してもよい。
【0017】
前記トルク制御部は、前記重量が第3閾値以上である場合、前記アクセルペダルの開度が前記第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が前記第2閾値以上である場合であっても、前記出力トルクの大きさを制御しないでもよい。
【0018】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が第4閾値以上である場合、前記アクセルペダルの開度が前記第1閾値以上であり、かつ前記踏込速度が前記第2閾値以上である場合であっても、前記出力トルクの大きさを制御しないでもよい。
【0019】
前記トルク制御部は、前記重量が前記第3閾値未満であり、かつ前記車両が後退する方向での勾配が第4閾値未満である場合、前記アクセルペダルの開度に対応する操作トルクを第4割合だけ小さくした第4トルクを前記出力トルクに決定してもよい。
【0020】
本発明の第2の態様に係る加速度制御方法は、プロセッサが実行する、架装が連結可能な車両が備えるアクセルペダルの開度と、前記アクセルペダルを運転者が踏み込んだ際の踏込速度と、前記車両の重量と、前記車両が接する路面の勾配と、を取得する取得工程と、前記車両が後退する操作を受け付けた場合に、前記アクセルペダルの開度と、前記踏込速度と、前記重量と、前記路面の、前記車両が後退する方向での勾配と、に基づいて、前記車両が備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御する制御工程と、を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、商用車が後方に誤発進することを抑制するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
【
図2】車両Sが後退する方向に対する勾配を説明するための図である。
【
図3】出力トルクの大きさを制御する動作を説明するための図である。
【
図4】記憶部31に記憶された最大トルク情報の一例を示す図である。
【
図5】出力トルクの大きさを制御する動作を示すシーケンスである。
【
図6】最大トルクを決定する動作を示すシーケンスである。
【
図7】出力トルクを決定する動作を示すシーケンスである。
【
図8】操作トルクを所定の割合だけ小さくする動作を説明するための図である。
【
図9】第1変形例に係る出力トルク情報の一例を示す図である。
【
図10】第1変形例に係る処理シーケンスの例を示す図である。
【
図11】第2変形例に係る出力トルク抑制情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<車両Sの概要>
図1は、本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。本実施形態に係る車両Sは、例えば、荷室などの架装を後方に搭載することが可能なトラック等の商用車である。車両Sは、トレーラを連結することが可能なトレーラヘッドであってもよい。
図1に示す車両Sは、アクセルセンサ10、重量センサ11、Gセンサ12、駆動力源制御装置20、報知装置21及び加速度制御装置30を備える。車両Sは、車両Sが備えるアクセルペダル(不図示)の開度に対応するトルク(以下、「操作トルク」という)に基づいて、車両Sが備える駆動力源(不図示)に発生させるトルク(以下、「出力トルク」という)の大きさを制御する機能を有する。車両Sの駆動力源は、例えば、エンジン及びモータの少なくともいずれかである。
【0024】
アクセルセンサ10は、運転者がアクセルペダルを踏み込んだ際の踏込量を検出するセンサである。アクセルセンサ10は、運転者がアクセルペダルを踏み込む前の位置と運転者がアクセルペダルを踏み込んだ位置との差(距離)を踏込量として検出する。重量センサ11は、車両Sの重量を検出するセンサである。重量センサ11は、架装の重量を含めた車両Sの重量を検出する。重量センサ11は、架装に積載物がある場合は、架装の重量と積載物の重量とを含めた車両Sの重量を検出する。Gセンサ12は、車両Sの加速度を検出するセンサである。
【0025】
駆動力源制御装置20は、加速度制御装置30が出力した出力トルクに基づいて、車両Sが備える駆動力源(エンジン又はモータ)の出力を調整するための装置である。駆動力源制御装置20は、例えば、出力トルクに基づいて、エンジンの吸気量及び点火タイミングを変化させたり、モータに流れる電流を変化させたりすることにより、駆動力源の出力を調整する。報知装置21は、加速度制御装置30が出力した出力トルクを運転者に報知するための装置である。報知装置21は、例えば、出力トルクを示す記号、文字に対応する画像を車両Sが備えるディスプレイ(不図示)に表示させたり、出力トルクに対応する音声を車両Sが備えるスピーカ(不図示)に出音させたりする。報知装置21は、出力トルクに対応する画像及び音声を、無線通信を介して、運転者が有する情報端末に送信してもよい。
【0026】
加速度制御装置30は、アクセルペダルの開度、車両Sの重量及び車両Sが備えるタイヤが接する路面の勾配に基づいて、車両Sの後退時の出力トルクの大きさを制御する。加速度制御装置30は、例えば、アクセルセンサ10が検出したアクセルペダルの開度、重量センサ11が検出した車両Sの重量、及びGセンサ12が検出した車両Sの加速度を取得する。そして、加速度制御装置30は、アクセルペダルの開度、当該開度から算出した踏込速度、車両Sの重量、及び車両Sの加速度から算出した路面の勾配に基づいて、車両Sが備える駆動力源の出力トルクを決定する処理を実行する。加速度制御装置30は、電子部品を含む筐体又は電子部品が実装されたプリント基板である。
【0027】
荷台等の架装が搭載又は連結された車両Sの後部は、架装の形状、架装を搭載又は連結した位置が車両Sの種類毎に異なるため、架装が障害となり、車両Sと周囲の物体との距離を測定するためのカメラ又はセンサを設けることが困難である。車両Sの周囲の物体は、例えば、人、動植物、壁、車両Sの走行が困難な段差、車両Sと異なる他の車両である。したがって、車両Sは、車両Sが後方に誤発進することを抑制する機能を設けることが困難である。しかしながら、車両Sは、架装及び積載物により重量が増加したり、路面の勾配があったりする場合は、牽引力の不足を回避するために運転者がアクセルペダルを大きく踏み込む傾向にある。その結果、車両Sは、後方への誤発進をする可能性がある。
【0028】
そこで、加速度制御装置30は、車両Sが後退する場合、アクセルペダルの開度及び踏込速度と、車両Sの重量と、車両Sが走行する路面の勾配と、に基づいて、駆動力源に発生させる出力トルクの最大値(以下、「最大トルク」という)を決定する。一例として、加速度制御装置30は、アクセルペダルの開度が開度閾値以上、かつ踏込速度が速度閾値以上であることを条件として、車両Sの重量が重量閾値以上であり、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値以上である場合、最大トルクを、駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値よりも小さいトルクに決定する。開度閾値、速度閾値、重量閾値及び勾配閾値の詳細は、後述する。そして、加速度制御装置30は、駆動力源制御装置20を介して、決定した最大トルク未満の出力トルクを駆動力源に発生させるように、出力トルクの大きさを制御する。加速度制御装置30がこのように動作することで、加速度制御装置30は、車両Sの加速度を所定値以下に抑えることができるため、車両Sが後方に誤って急発進する(すなわち、後方に誤発進する)ことを抑制できる。
以下、加速度制御装置30の構成及び動作を詳細に説明する。
【0029】
<加速度制御装置30の構成>
加速度制御装置30は、記憶部31と、制御部32と、を有する。制御部32は、取得部321と、トルク制御部322と、報知部323と、を有する。
【0030】
記憶部31は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部31は、制御部32が実行するプログラムと、車両Sが備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御するための各種の情報と、を記憶している。
【0031】
制御部32は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部32は、記憶部31に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部321、トルク制御部322及び報知部323として機能する。なお、制御部32は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部32により実現される各部の構成を説明する。
【0032】
取得部321は、車両Sが備えるアクセルペダルの開度と、アクセルペダルを運転者が踏み込んだ際の踏込速度と、車両Sの重量と、車両Sが接する路面の勾配と、を取得する。取得部321は、例えば、アクセルセンサ10が検出した踏込量、重量センサ11が検出した車両Sの重量、Gセンサ12が検出した車両Sの加速度を取得する。そして、取得部321は、取得した踏込量に基づいてアクセルペダルの開度と踏込速度とを特定し、取得した車両Sの加速度に基づいて車両Sが接する路面の勾配を特定することにより、アクセルペダルの開度及び踏込速度と、路面の勾配とを取得する。
【0033】
例えば、取得部321は、アクセルペダルの最大踏込量に対する、アクセルセンサ10が検出した踏込量の割合(単位は%)を、アクセルペダルの開度として特定する。取得部321は、アクセルペダルの最大踏込量に対する、現在の時刻より単位時間(例えば0.1秒)前の時刻と現在の時刻とに取得した踏込量の差を単位時間で除算した除算値の割合(単位は%/秒)を、アクセルペダルの踏込速度として特定する。取得部321は、Gセンサ12が検出した車両Sの加速度と、重力加速度と、に基づいて車両Sが接する路面の勾配を特定する。勾配は、車両Sが後退する方向が上り勾配である場合は、正の値の角度を示し、車両Sが後退する方向が下り勾配である場合は、負の値の角度を示す。
【0034】
図2は、車両Sが後退する方向に対する勾配を説明するための図である。
図2(a)は、車両Sが後退する方向が上り勾配である場合を示す。
図2(b)は、車両Sが後退する方向が下り勾配である場合を示す。
図2(c)は、車両Sが平坦な路面を後退する場合を示す。
図2(a)において、車両Sは、後退する方向が上り勾配であるため、取得部321が特定する勾配(
図2(a)に示す角度θ)は、正の値の角度である。
図2(b)において、車両Sは、後退する方向が下り勾配であるため、取得部321が特定する勾配(
図2(b)に示す角度θ)は、負の値の角度である。
図2(c)において、車両Sは、平坦な路面を後退するため、取得部321が特定する勾配は0度である。
【0035】
また、取得部321は、運転者が車両Sを前進又は後退させる操作をしたことに応じて、前進させる操作又は後退させる操作を示す操作情報を、外部の装置(不図示)から取得してもよい。「車両Sを後退させる操作」は、例えば、車両Sに設けられたシフトレバー(不図示)が後退を示す位置に設定された状態で、運転者がアクセルペダルを一定以上踏み込む操作である。
【0036】
トルク制御部322は、車両Sが後退する操作を受け付けた場合に、アクセルペダルの開度と、踏込速度と、車両Sの重量と、車両Sが接する路面の、車両Sが後退する方向での勾配と、に基づいて、車両Sが備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御する。一方、トルク制御部322は、車両Sが前進する操作を受け付けた場合は、アクセルペダルの開度に対応する操作トルクを駆動力源に発生させるように出力トルクの大きさを制御する。トルク制御部322は、例えば、決定した出力トルクを駆動力源制御装置20に出力し、駆動力源制御装置20が駆動力源に出力トルクを発生させるように制御する。トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、車両Sが後退する場合には、前進する場合とは異なり、運転者の操作に応じた操作トルクと異なる出力トルクを決定することができる。その結果、トルク制御部322は、車両Sが後退する際に、出力トルクを小さくすることができるため、車両Sの加速度を所定値以下に抑えることができる。
【0037】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する操作を受け付けた場合に、アクセルペダルの開度が開度閾値(第1閾値)以上であり、かつ踏込速度が速度閾値(第2閾値)以上であることを条件として、出力トルクを決定する。開度閾値は、例えば80%であり、速度閾値は、例えば400%である。開度閾値及び速度閾値は、実験又はシミュレーションにより決定される。一方、トルク制御部322は、アクセルペダルの開度が開度閾値未満、又は踏込速度が速度閾値未満である場合、操作トルクを駆動力源に発生させるように出力トルクの大きさを制御する。トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、運転者が、急発進が発生し得る操作をしたと推定される場合に、出力トルクを小さくすることができる。なお、以下の説明においては「アクセルペダルの開度が開度閾値以上、かつ踏込速度が速度閾値以上であること」を「所定の条件」という。
【0038】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する際に所定の条件を満たした場合、アクセルペダルの開度に対応する操作トルクと、出力トルクの最大値である最大トルクとのうち、トルクの大きさが小さい方を駆動力源に発生させるように出力トルクの大きさを制御する。
図3は、出力トルクの大きさを制御する動作を説明するための図である。
図3の横軸はアクセル開度を示し、
図3の縦軸は出力トルクを示す。
図3に示す出力トルクQMは、車両Sが備える駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値(すなわち、最大トルクの初期値)であり、トルクE0は操作トルクであり、トルクE1、トルクE2及びトルクE3は、出力トルクの最大値の一例である。
【0039】
例えば、トルク制御部322が最大トルクをトルクE2に決定した場合、トルク制御部322は、アクセル開度が開度A2未満であれば、トルクE0(操作トルク)を駆動力源が発生させるように、出力トルクを駆動力源制御装置20に出力する。一方、トルク制御部322は、アクセル開度が開度A2以上であれば、出力トルクQ2(すなわち、出力トルクの最大値であるトルクE2)を駆動力源が発生させるように、出力トルクを出力する。トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、決定した最大トルクよりも大きいトルクを駆動力源が発生させないように、出力トルクの大きさを制御することができる。
【0040】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する際に所定の条件を満たし、重量が重量閾値(第3閾値以上)であり、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値(第4閾値)以上である場合、最大トルクを第1トルクに決定する。第1トルクは、車両Sが備える駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に第1割合を乗算した乗算値であり、例えば、
図3に示す出力トルクQ1である。第1割合は、実験又はシミュレーションにより設定された割合であり、例えば90%以上かつ100%未満の固定値である。第1割合は、90%以上かつ100%未満の範囲で、運転者がインストルメントパネルを操作することにより決定してもよい。重量閾値は、例えば、架装が連結された車両Sの重量と最大積載量が示す重量の半分の重量との合計である。勾配閾値は、例えば、0度(すなわち平坦)であるが、Gセンサ12の検出誤差に基づく角度を加減算(いわゆる、オフセット)してもよい。
【0041】
トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、もっとも牽引力が必要な場合において、駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値よりも小さい最大トルクに抑制しつつ、車両Sが後退するために必要な出力トルクを出力させることができる。その結果、車両Sが後退するために必要な牽引力が大きい場合であっても、最大トルクを抑制しつつ、牽引力不足を回避することができる。
【0042】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する際に所定の条件を満たし、重量が重量閾値以上であり、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値未満である場合、最大トルクを第2トルクに決定する。第2トルクは、第1割合よりも小さい第2割合を、駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に乗算した乗算値であり、例えば、
図3に示す出力トルクQ2である。第2割合は、実験又はシミュレーションにより設定された割合であり、例えば60%以上かつ90%未満の固定値である。第2割合は、60%以上かつ90%未満の範囲で、運転者がインストルメントパネルを操作することにより決定してもよい。
【0043】
トルク制御部322がこのように動作することで、車両Sの重量が大きい場合であっても、路面の勾配が小さい場合は、車両Sの重量が大きく、かつ路面の勾配が大きい場合に決定した第1トルクよりも小さい第2トルクを最大トルクに決定することができる。その結果、最大トルクを第1トルクよりも抑制しつつ、車両Sの重量に対応する牽引力を発生させることができるため、車両Sが後退する際に誤って急発進することを抑制できる。
【0044】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する際に所定の条件を満たし、重量が重量閾値未満であり、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値以上である場合、最大トルクを第2トルクに決定する。トルク制御部322がこのように動作することで、路面の勾配が大きい場合であっても、車両Sの重量が小さい場合は、車両Sの重量が大きく、かつ路面の勾配が大きい場合に決定した第1トルクよりも小さい第2トルクを最大トルクに決定することができる。その結果、最大トルクを第1トルクよりも抑制しつつ、路面の勾配に対応する牽引力を発生させることができるため、車両Sが後退する際に誤って急発進することを抑制できる。
【0045】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する際に所定の条件を満たし、重量が重量閾値未満であり、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値未満である場合、最大トルクを第3トルクに決定する。第3トルクは、第2割合よりも小さい第3割合を、駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値に乗算した乗算値であり、例えば、
図3に示す出力トルクQ3である。第3割合は、実験又はシミュレーションにより設定された割合であり、例えば10%以上かつ40%未満の固定値である。第3割合は、10%以上かつ40%未満の範囲で、運転者がインストルメントパネルを操作することにより決定してもよい。
【0046】
トルク制御部322がこのように動作することで、車両Sの重量が小さく、かつ路面の勾配が小さい場合(すなわち、もっとも牽引力が小さくてよい場合)に、最大トルクを小さくすることができる。さらに、トルク制御部322は、もっとも牽引力が小さくてよい場合に、第1トルク及び第2トルクよりも小さい第3トルクを最大トルクに決定することができる。その結果、最大トルクを第1トルク及び第2トルクよりも抑制しつつ、路面の勾配に対応する牽引力を発生させることができるため、車両Sが後退する際に誤って急発進することを抑制できる。
【0047】
また、トルク制御部322は、車両Sが後退する際に、記憶部31に記憶された最大トルク情報を参照することにより、アクセルペダルの開度、踏込速度、車両Sの重量、及び車両Sが後退する方向での勾配に応じた最大トルクを決定してもよい。
図4は、記憶部31に記憶された最大トルク情報の一例を示す図である。
図4に示すように、記憶部31は、アクセルペダル開度の条件、踏込速度の条件、車両Sの重量の条件及び路面の勾配の条件に対応する最大トルクを示す最大トルク情報を記憶している。
図4に示す割合は、車両Sが備える駆動力源が発生可能なトルクの最大値に対する割合であり、「90%」は第1割合、「60%」は第2割合、「35%」は第3割合である。
【0048】
一例として、トルク制御部322は、アクセルペダルの開度が開度閾値以上、踏込速度が速度閾値以上、車両Sの重量が重量閾値未満、路面の勾配が勾配閾値未満であることを特定する。そして、トルク制御部322は、記憶部31に記憶された最大トルク情報を参照することにより、特定した条件に対応する最大トルクが「第3トルク」であることを特定し、最大トルクを第3トルクに決定する。トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、記憶部31を参照せずに最大トルクを決定するよりも、処理負荷を小さくすることができる。
【0049】
さらに、トルク制御部322は、最大トルクを第2トルク又は第3トルクに決定した時刻から所定の時間が経過した場合、単位時間(例えば、0.1秒)が経過する度に、駆動力源が発生可能なトルクの最大値を上限として、最大トルクを大きくしてもよい。所定の時間は、誤発進したか否かを運転者が判断できる時間であり、例えば、3秒である。トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、誤発進していないことを運転者が把握した後に、運転者の操作に応じたトルクを決定することができる。
【0050】
報知部323は、トルク制御部322が、駆動力源が発生可能なトルクの最大値よりも小さいトルクを最大トルクに決定した場合、報知装置21を介して運転者に報知する。すなわち、報知部323は、車両Sが後退する際に所定の条件を満たした場合、最大トルクが変更されたことを、報知装置21を介して運転者に報知する。報知部323は、例えば、報知装置21を介して、車両Sが備えるディスプレイ又は運転手が有する情報端末に、出力トルクを示す記号、文字に対応する画像を表示させる。報知部323は、報知装置21を介して、車両Sが備えるスピーカ又は運転手が有する情報端末に、出力トルクに対応する音声を出音させてもよい。
【0051】
<加速度制御装置30における処理シーケンス>
図5、
図6及び
図7は、加速度制御装置30における処理シーケンスの例を示す図である。
図5に示す処理シーケンスは、出力トルクの大きさを制御する動作を示すシーケンスであり、
図6に示す処理シーケンスは、最大トルクを決定する動作を示すシーケンスであり、
図7に示す処理シーケンスは、出力トルクを決定する動作を示すシーケンスである。
図6に示す処理シーケンスは、
図5のS13に相当し、
図7に示す処理シーケンスは、
図5のS14に相当する。加速度制御装置30は、
図5、
図6及び
図7に示す処理シーケンスを一定時間毎に(例えば、単位時間が経過した時刻毎に)繰り返す。
【0052】
まず、出力トルクの大きさを制御する動作を、
図5を用いて説明する。取得部321は、アクセルペダルの開度A、重量C及び加速度を取得する(S10)。取得部321は、アクセルペダルの開度Aに基づくアクセルペダルの踏込速度Bと、取得した加速度に基づく車両Sが接する路面の勾配Dと、を特定することにより、踏込速度Bと勾配Dとを取得する(S11)。
【0053】
アクセルペダルの開度Aが開度閾値以上であり、かつ踏込速度Bが速度閾値以上である場合(S12のYES)、トルク制御部322は、最大トルクを決定するための処理(
図5に示す最大トルク決定処理)を実行する(S13)。そして、トルク制御部322は、出力トルクを決定し、駆動力源制御装置20に出力するための処理(
図5に示す出力トルク制御処理)を実行する(S14)。アクセルペダルの開度Aが閾値未満、又は踏込速度Bが速度閾値未満である場合(S12のNO)、トルク制御部322は、最大トルク決定処理を実行せずに出力トルク制御処理を実行する(S14)。
【0054】
次に、
図5のS13に示す最大トルク決定処理の動作を、
図6を用いて説明する。トルク制御部322は、重量Cが重量閾値以上、かつ勾配Dが勾配閾値以上である場合(S20のYES)、駆動力源が発生可能なトルクの最大値に第1割合を乗算した第1トルクを最大トルクに決定する(S21)。重量Cが重量閾値未満、又は勾配Dが勾配閾値未満である場合(S20のNO)、トルク制御部322は、重量Cが重量閾値以上、又は勾配Dが勾配閾値以上であるか否かを判定する(S22)。
【0055】
重量Cが重量閾値以上、又は勾配Dが勾配閾値以上である場合(S22のYES)、すなわち「重量Cが重量閾値以上かつ勾配Dが勾配閾値未満」又は「重量Cが重量閾値未満かつ勾配Dが勾配閾値以上」である場合、トルク制御部322は、第2トルクを最大トルクに決定する(S23)。第2トルクは、駆動力源が発生可能なトルクの最大値に、第1割合よりも小さい第2割合を乗算した乗算値である。重量Cが重量閾値以上、又は勾配Dが勾配閾値以上ではない場合(S22のNO)、すなわち「重量Cが重量閾値未満かつ勾配Dが勾配閾値未満」である場合、トルク制御部322は、第3トルクを最大トルクに決定する(S24)。第3トルクは、駆動力源が発生可能なトルクの最大値に、第2割合よりも小さい第3割合を乗算した乗算値である。
【0056】
さらに、
図5のS14に示す出力トルク制御処理の動作を、
図7を用いて説明する。トルク制御部322は、アクセルペダルの開度Aに対応する操作トルクを特定する(S30)。トルク制御部322は、アクセルペダルの開度Aが開度閾値以上、かつ踏込速度Bが速度閾値以上ではない場合(S31のNO)、すなわち「所定の条件を満たさない」場合、特定した操舵トルクを出力トルクとして、駆動力源が発生する出力トルクの大きさを制御する(S32)。
【0057】
アクセルペダルの開度Aが開度閾値以上、かつ踏込速度Bが速度閾値以上である場合(S31のYES)、すなわち「所定の条件を満たす」場合、トルク制御部322は、操作トルクが最大トルク以上であるか否かを判定する(S33)。トルク制御部322は、操作トルクが最大トルク以上である場合(S33のYES)、最大トルクを出力トルクとして、駆動力源が発生する出力トルクの大きさを制御する(S34)。一方、トルク制御部322は、操作トルクが最大トルク未満である場合(S33のNO)、操作トルクを出力トルクとして、駆動力源が発生する出力トルクの大きさを制御する(S32)。
【0058】
<第1変形例>
以上の説明においては、トルク制御部322が、駆動力源が発生する出力トルクの最大値を決定することで、駆動力源が発生する出力トルクの大きさを制御する動作を例示したが、これに限らない。トルク制御部322は、アクセルペダルの開度に対応する操作トルクを所定の割合だけ小さくした出力トルクを決定することにより、駆動力源が発生する出力トルクの大きさを制御してもよい。
【0059】
図8は、操作トルクを所定の割合だけ小さくする動作を説明するための図である。
図8の横軸はアクセルペダルの開度を示し、
図8の縦軸は出力トルクを示す。
図8に示す出力トルクQMは、車両Sが備える駆動力源が発生可能な出力トルクの最大値(すなわち、最大トルクの初期値)である。
図8に示すトルクE0は、操作トルクである。
図8に示すトルクF1、トルクF2及びトルクF3は、操作トルクを所定の割合だけ小さくした出力トルクである。
【0060】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する際に所定の条件を満たし、重量が重量閾値(第3閾値)以上、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値(第4閾値)以上である場合、第1トルクを出力トルクに決定する。第1トルクは、操作トルクを第1割合だけ小さくしたトルクであり、
図8に示すトルクF1である。第1割合は、実験又はシミュレーションにより決定された割合であり、例えば、0%よりも大きく、かつ10%以下の固定値である。第1割合は、0%よりも大きく、かつ10%以下の範囲で、運転者がインストルメンタルパネルを操作することにより決定してもよい。トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、車両Sの重量が大きい場合、かつ上り勾配の角度が大きい場合は、操作トルクを出力トルクに決定できる。その結果、車両Sは、牽引力不足を回避することができる。
【0061】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する際に所定の条件を満たし、重量が重量閾値以上であり、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値未満である場合、第2トルクを出力トルクに決定する。第2トルクは、アクセルペダルの開度に対応する操作トルクを、第1割合より大きい第2割合だけ小さくしたトルクであり、
図8に示すトルクF2である。一例として、第2割合は、10%よりも大きく、かつ40%以下の固定値であり、実験又はシミュレーションにより決定される。第1割合は、10%よりも大きく、かつ40%以下の範囲で、運転者がインストルメンタルパネルを操作することにより決定してもよい。トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、車両Sの重量が大きい場合であっても、後退する方向の路面が下り勾配であることにより、車両Sが後退する際に誤って急発進することを抑制できる。
【0062】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する際に所定の条件を満たし、重量が重量閾値未満であり、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値以上である場合、第2トルクを出力トルクに決定する。この場合、第2トルクは、重量が重量閾値以上であり、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値未満である場合に決定した第2トルクと同じであってもよいし、異なってもよい。トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、後退する方向の路面が上り勾配であっても、車両Sの重量が小さいことにより、車両Sが後退する際に誤って急発進することを抑制できる。
【0063】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する際に所定の条件を満たし、重量が重量閾値未満であり、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値未満である場合、第3トルクを出力トルクに決定する。第3トルクは、アクセルペダルの開度に対応する操作トルクを第2割合より大きい第3割合だけ小さくしたトルクであり、
図8に示すトルクF3である。第3割合は、60%よりも大きく、かつ90%以下の固定値であり、実験又はシミュレーションにより決定される。第3割合は、60%よりも大きく、かつ90%以下の範囲で、運転者がインストルメンタルパネルを操作することにより決定してもよい。トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、車両Sの重量が小さく、かつ後退する方向の路面が下り勾配である場合(すなわち、もっとも誤って急発進しやすい場合)、出力トルクをもっとも小さくすることができる。
【0064】
また、トルク制御部322は、車両Sが後退する際に、記憶部31に記憶された出力トルク情報を参照することにより、アクセルペダルの開度、踏込速度、車両Sの重量、及び車両Sが後退する方向での勾配に基づいて、出力トルクを決定してもよい。
図9は、第1変形例に係る出力トルク情報の一例を示す図である。
図9に示すように、記憶部31は、アクセルペダル開度の条件、踏込速度の条件、車両Sの重量の条件、及び路面の勾配の条件に対応する出力トルクを示す出力トルク情報を記憶している。また、一例として、出力トルク情報は、
図9の「出力トルク」に示すように、出力トルクの大きさの種類(第1トルク、第2トルク、第3トルク)と、操作トルクに対する出力トルクの割合(例えば、
図9においては、第2トルクが操作トルクの70%)と、を含む。
【0065】
一例として、トルク制御部322は、アクセルペダルの開度が開度閾値以上、踏込速度が速度閾値以上、車両Sの重量が重量閾値未満、路面の勾配が勾配閾値未満であることを特定する。そして、トルク制御部322は、記憶部31に記憶された出力トルク情報を参照することにより、特定した条件に対応する出力トルクが「第3トルク」であることを特定し、出力トルクを第3トルクに決定する。トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、記憶部31を参照せずに出力トルクを決定するよりも、処理負荷を小さくすることができる。
【0066】
図10は、第1変形例に係る処理シーケンスの例を示す図である。
図10に示す処理シーケンスは、加速度制御装置30が出力トルクを決定する動作を示す。加速度制御装置30は、
図10に示す処理シーケンスを、車両Sが後退する操作を受け付けた場合に実行する。
【0067】
取得部321は、アクセルセンサ10からアクセルペダルの開度Aを取得し、重量センサ11から車両Sの重量Cを取得し、Gセンサ12から車両Sの加速度を取得する(S40)。取得部321は、現在の時刻よりも単位時間前の開度Aと現在の時刻の開度Aとの差とに基づいて踏込速度Bを特定し、車両Sの加速度と重力加速度とに基づいて勾配Dを特定する(S41)。開度Aが開度閾値未満又は踏込速度Bが速度閾値未満である場合(S42のNO)、トルク制御部322は、出力トルクを操作トルク(すなわち、第1トルク)に決定する(S44)。
【0068】
開度Aが開度閾値以上かつ踏込速度Bが速度閾値以上である場合(S42のYES)、トルク制御部322は、重量Cが重量閾値以上かつ勾配Dが勾配閾値以上であるか否かを判定する(S43)。重量Cが重量閾値以上かつ勾配Dが勾配閾値以上である場合(S43のYES)、トルク制御部322は、出力トルクを操作トルクに決定する(S44)。重量Cが重量閾値未満又は勾配Dが勾配閾値未満である場合(S43のNO)、トルク制御部322は、重量Cが重量閾値以上又は勾配Dが勾配閾値以上であるか否かを判定する(S45)。重量Cが重量閾値以上又は勾配Dが勾配閾値以上である場合(S45のYES)、トルク制御部322は、出力トルクを第2トルクに決定する(S46)。重量Cが重量閾値未満かつ勾配Dが勾配閾値未満である場合(S45のNO)、トルク制御部322は、出力トルクを第3トルクに決定する(S47)。
【0069】
<第2変形例>
以上の説明においては、トルク制御部322が、出力トルクの最大値である最大トルクを決定したり、操作トルクを所定の割合だけ小さくした出力トルクを決定したりする動作を例示したが、これに限らない。トルク制御部322は、車両Sが後退する際に所定の条件を満たす場合に、出力トルクを制御するか否かを判定してもよい。トルク制御部322が出力トルクを制御しない場合、駆動力源制御装置20は、操作トルクを用いて駆動力源の出力を調整する。なお、トルク制御部322は、出力トルクを制御しないと判定した場合、制御しないと判定したことを示す情報を駆動力源制御装置20に出力してもよい。
【0070】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する際に車両Sの重量が重量閾値以上である場合、アクセルペダルの開度が開度閾値以上であり、かつ踏込速度が速度閾値以上である場合であっても、出力トルクの大きさを制御しない。すなわち、トルク制御部322は、車両Sが後退する際に車両Sの重量が重量閾値以上である場合、出力トルクの抑制を実行しない。トルク制御部322は、例えば、重量が重量閾値未満であり、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値以上である場合、アクセルペダルの開度が開度閾値以上であり、かつ踏込速度が速度閾値以上である場合であっても、出力トルクの大きさを制御しない。
【0071】
トルク制御部322は、例えば、車両Sが後退する際に所定の条件を満たし、重量が重量閾値未満であり、かつ車両Sが後退する方向での勾配が勾配閾値未満である場合、第4トルクを出力トルクに決定し、駆動力源の出力トルクの大きさを制御する。第4トルクは、アクセルペダルの開度に対応する操作トルクを第4割合だけ小さくしたトルクである。一例として、第4割合は、10%よりも大きく、かつ40%未満の固定値であり、実験又はシミュレーションにより決定される。第4割合は、第1割合、第2割合又は第3割合と同じ割合でもよいし、異なる割合でもよい。トルク制御部322が上記のように動作することで、もっとも誤って急発進しやすい場合に出力トルクを抑制することができる。その結果、誤って出力トルクを抑制して牽引力不足になることを回避できる。
【0072】
また、トルク制御部322は、車両Sが後退する際に、記憶部31に記憶された出力トルク抑制情報を参照することにより、出力トルクを決定するか否かを判定してもよい。
図11は、第2変形例に係る出力トルク抑制情報の一例を示す図である。
図11に示すように、記憶部31は、アクセルペダル開度の条件、踏込速度の条件、車両Sの重量の条件、及び路面の勾配の条件に対応する、出力トルクを抑制するか否かを示す情報を記憶している。
【0073】
一例として、トルク制御部322は、アクセルペダルの開度が開度閾値以上、踏込速度が速度閾値以上、車両Sの重量が重量閾値未満、路面の勾配が勾配閾値未満であることを特定する。そして、トルク制御部322は、記憶部31に記憶された出力トルク抑制情報を参照することにより、出力トルクを決定すると判定し、出力トルクを第4トルクに決定する。そして、トルク制御部322は、駆動力源が第4トルクを出力するように、駆動力源制御装置20を介して駆動力源を制御する。トルク制御部322がこのように動作することで、トルク制御部322は、記憶部31を参照せずに出力トルクを決定するか否かを判定するよりも、処理負荷を小さくすることができる。
【0074】
<第3変形例>
以上の説明においては、100%未満の割合を示す第1割合を用いて第1トルクを決定する動作を例示したが、これに限らない。第1割合は、100%を示す割合であってもよい。トルク制御部322が、100%を示す第1割合を用いて第1トルクを決定することで、車両Sの重量と路面の勾配とにより牽引力不足が起きる蓋然性が高い場合において、牽引力不足を回避することができる。
【0075】
<第4変形例>
以上の説明においては、トルク制御部322が、
図5に示す最大トルク決定処理と出力トルク制御処理とを実行する動作を例示したが、これに限らない。車両Sにおいては、例えば、トルク制御部322が最大トルク決定処理を実行し、駆動力源制御装置20が出力トルク制御処理を実行してもよい。この場合、トルク制御部322は、アクセルペダルの開度が開度閾値以上かつ踏込速度が速度閾値以上であるか否かに基づいて、最大トルク決定処理を実行したか否かを示す情報を生成し、最大トルク又は操作トルクに関連付けて駆動力源制御装置20に出力してもよい。
【0076】
<加速度制御装置30による効果>
以上説明したように、加速度制御装置30は、架装が連結可能な車両Sが備えるアクセルペダルの開度と、アクセルペダルを運転者が踏み込んだ際の踏込速度と、車両Sの重量と、車両Sが接する路面の勾配と、を取得する取得部321と、車両Sが後退する操作を受け付けた場合に、アクセルペダルの開度と、踏込速度と、重量と、路面の、車両Sが後退する方向での勾配と、に基づいて、車両Sが備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御するトルク制御部322と、を有する。
【0077】
加速度制御装置30がこのように構成されることで、車両Sが後退する操作を受け付けた場合に、車両Sが急発進をしやすい状態であると判定した場合は、アクセルペダルの開度に対応する操作トルクよりも小さい最大トルクを決定できる。その結果、加速度制御装置30は、車両Sの加速度を所定値以下に抑えることにより、車両Sが後退する方向に誤って発進することを抑制できるため、架装を搭載可能な車両Sの安全性を向上させることができる。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0079】
10 アクセルセンサ
11 重量センサ
12 Gセンサ
20 駆動力源制御装置
21 報知装置
30 加速度制御装置
31 記憶部
32 制御部
321 取得部
322 トルク制御部
323 報知部
【要約】
【課題】商用車が後方に誤発進することを抑制する。
【解決手段】加速度制御装置30は、架装が連結可能な車両が備えるアクセルペダルの開度と、アクセルペダルを運転者が踏み込んだ際の踏込速度と、車両の重量と、車両が接する路面の勾配と、を取得する取得部321と、車両が後退する操作を受け付けた場合に、アクセルペダルの開度と、踏込速度と、重量と、路面の、車両が後退する方向での勾配と、に基づいて、車両が備える駆動力源の出力トルクの大きさを制御するトルク制御部322と、を有する。
【選択図】
図1