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特許7517602圧延ラインの操業支援方法、操業支援装置及び操業支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】圧延ラインの操業支援方法、操業支援装置及び操業支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/00 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B21B37/00 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023520516
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2022030275
(87)【国際公開番号】W WO2024033970
(87)【国際公開日】2024-02-15
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智美
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-170456(JP,A)
【文献】特開2011-215873(JP,A)
【文献】特開2015-074020(JP,A)
【文献】特開2021-023941(JP,A)
【文献】特開2004-167604(JP,A)
【文献】国際公開第11/004454(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延ラインにおける操業を支援する方法であって、
前記圧延ラインにおいて製造された圧延製品に関連する各種データを取得するステップであって、前記各種データが、前記圧延製品の製品仕様に関するデータと、前記圧延製品の品質に関するデータと、前記圧延製品の製造中における前記圧延ラインの操業状況に関するデータと、前記圧延製品の製造中における前記圧延ラインのアクチュエータに対するオペレータ操作に関するデータと、を含むステップと、
前記各種データに基づいて、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つを製品仕様ごとに計算するステップであって、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率が、前記品質に関するデータに含まれる品質エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率が、前記操業状況に関するデータに含まれる操業エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率が、前記オペレータ操作に関するデータに含まれるデータであってエラーが発生したことを示すエラーデータが付与された数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表されるステップと、
前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つの高さに応じて、前記圧延製品の製造難易度を製品仕様ごとに設定するステップと
前記品質において発生したエラーの発生率、前記操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも2つの高さに応じて、前記圧延製品の総合的な製造難易度を示す総合難易度を製品仕様ごとに設定するステップと、
前記圧延ラインにおいて製造される製造対象の製造プロセスに関与するオペレータを支援するための支援データをオペレータ端末から出力するステップであって、前記支援データが、前記製造対象の製造難易度のデータとして、前記製造対象の製品仕様と同一の製品仕様を有する前記圧延製品の製造難易度及び総合難易度のデータを含むステップと、
を含むことを特徴とする圧延ラインの操業支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記各種データに基づいて、前記圧延製品の品質、前記圧延ラインの操業状況及び前記オペレータ操作からの推測においてエラーの発生が認められなかったときの前記オペレータ操作に関するデータを製品仕様ごとに抽出するステップと、
前記オペレータ操作に関するデータの抽出データに基づいて、前記圧延ラインの操業時におけるオペレータの模範操作のデータを、製品仕様及びアクチュエータの組み合わせごとに生成するステップと、
を更に含み、
前記支援データを前記オペレータ端末から出力するステップにおいて、前記支援データが、前記製造対象の製品仕様と同一の製品仕様についての前記各種データに基づいて生成された前記模範操作のデータを更に含む
ことを特徴とする圧延ラインの操業支援方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記製造対象の製造中における前記オペレータ操作の実績操作のデータを取得するステップを更に含み、
前記支援データを前記オペレータ端末から出力するステップにおいて、前記支援データがオペレータに対する指南データを更に含み、
前記指南データが、前記実績操作のデータと、前記製造対象の製品仕様と同一の製品仕様についての前記各種データに基づいて生成された前記模範操作のデータと、に基づいて生成される
ことを特徴とする圧延ラインの操業支援方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記各種データは、前記圧延製品の製造中に前記圧延ラインにおいて取得された前記圧延製品の中間製品の状態に関するデータを更に含み、
前記各種データに基づいて、前記圧延製品の品質、前記圧延ラインの操業状況及び前記オペレータ操作からの推測においてエラーの発生が認められなかったときの前記中間製品の状態に関するデータを、製品仕様ごとに抽出するステップと、
前記中間製品の状態に関するデータの抽出データに基づいて、前記圧延ラインの操業時における中間製品の模範状態のデータを製品仕様ごとに生成するステップと、
を更に含み、
前記支援データを前記オペレータ端末から出力するステップにおいて、前記支援データが、前記製造対象の製品仕様と同一の製品仕様についての前記各種データに基づいて生成された前記模範状態のデータを更に含む
ことを特徴とする圧延ラインの操業支援方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記製造対象の製造中に前記圧延ラインにおいて取得される前記製造対象の実績状態のデータを取得するステップを更に含み、
前記支援データを前記オペレータ端末から出力するステップにおいて、前記支援データがオペレータに対する指南データを更に含み、
前記指南データが、前記実績状態のデータと、前記製造対象の製品仕様と同一の製品仕様についての前記各種データに基づいて生成された前記模範状態のデータと、に基づいて生成される
ことを特徴とする圧延ラインの操業支援方法。
【請求項6】
圧延ラインにおける操業を支援する装置であって、
前記圧延ラインにおいて製造された圧延製品に関連する各種データが格納された記憶装置と、
1又は複数のプロセッサと、
を備え、
前記各種データは、前記圧延製品の製品仕様に関するデータと、前記圧延製品の品質に関するデータと、前記圧延製品の製造中における前記圧延ラインの操業状況に関するデータと、前記圧延製品の製造中における前記圧延ラインのアクチュエータに対するオペレータ操作に関するデータと、を含み、
前記1又は複数のプロセッサが、
前記各種データに基づいて、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つを製品仕様ごとに計算する処理であって、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率が、前記品質に関するデータに含まれる品質エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率が、前記操業状況に関するデータに含まれる操業エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率が、前記オペレータ操作に関するデータに含まれるデータであってエラーが発生したことを示すエラーデータが付与された数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表される処理と、
前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つエラーの発生率の高さに応じて、前記圧延製品の製造難易度を製品仕様ごとに設定する処理と
前記品質において発生したエラーの発生率、前記操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも2つの高さに応じて、前記圧延製品の総合的な製造難易度を示す総合難易度を製品仕様ごとに設定する処理と、
前記圧延ラインにおいて製造される製造対象の製造プロセスに関与するオペレータを支援するための支援データをオペレータ端末から出力する処理であって、前記支援データが、前記製造対象の製品仕様と同一の製品仕様を有する前記圧延製品の製造難易度及び総合難易度のデータを含む処理と、
を行うように構成されていることを特徴とする圧延ラインの操業支援装置。
【請求項7】
圧延ラインにおける操業を支援するプログラムであって、
前記圧延ラインにおいて製造された圧延製品に関連する各種データを取得する処理であって、前記各種データが、前記圧延製品の製品仕様に関するデータと、前記圧延製品の品質に関するデータと、前記圧延製品の製造中における前記圧延ラインの操業状況に関するデータと、前記圧延製品の製造中における前記圧延ラインのアクチュエータに対するオペレータ操作に関するデータと、を含む処理と、
前記各種データに基づいて、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つを製品仕様ごとに計算する処理であって、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率が、前記品質に関するデータに含まれる品質エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率が、前記操業状況に関するデータに含まれる操業エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率が、前記オペレータ操作に関するデータに含まれるデータであってエラーが発生したことを示すエラーデータが付与された数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表される処理と、
前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つエラーの発生率の高さに応じて、前記圧延製品の製造難易度を製品仕様ごとに設定する処理と
前記品質において発生したエラーの発生率、前記操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも2つの高さに応じて、前記圧延製品の総合的な製造難易度を示す総合難易度を製品仕様ごとに設定する処理と、
前記圧延ラインにおいて製造される製造対象の製造プロセスに関与するオペレータを支援するための支援データをオペレータ端末から出力する処理であって、前記支援データが、前記製造対象の製品仕様と同一の製品仕様を有する前記圧延製品の製造難易度及び総合難易度のデータを含む処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする圧延ラインの操業支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧延ラインにおける操業を支援する方法、装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、熱間圧延工場で行われる鋼片の加熱炉への装入や、材料の圧延を含む物流スケジュールを生成する装置を開示する。この従来の装置は、1日~1週間程度の期間における物流スケジュールを最適化すべく、物流スケジュールの対象となる鋼材の属性、納期などに関する情報を用いたシミュレーションをリアルタイムで行い、将来の物流状態を予測する。そして、この将来の物流状態に応じて、冷片鋼材のロットの物流スケジュールと熱片鋼材のロットのそれとが組み合わされたロット編成スケジュールを作成する。
【0003】
ロット編成スケジュールの作成に際し、従来の装置は、冷片鋼材の取り込み量が最大となるようにロット編成を行う。この理由として、特許文献1は、冷片鋼材の生産に対する要求が熱片鋼材のそれよりも高い傾向にあること、及び、冷片鋼材の圧延は熱片鋼材のそれよりも難しくミスロールが発生しやすいことなどを述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特開2005-59020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鋼材の圧延の難易度が鋼材の属性に応じて、換言すれば、圧延ラインにおいて製造される製品の仕様に応じて変わることは経験的又は統計的に把握される事実である。そのため、圧延ラインにおいてこれから製造される製造対象について考えた場合、この製造対象の難易度が高いときには、製造プロセスを担当するオペレータによる当該製造プロセスへの関与の頻度が高くなることが予想される。製造プロセスへの関与の頻度は低いものの、製造プロセスに関与するタイミングや、製造プロセスに関与する度合いが重要となることも予想される。
【0006】
しかしながら、製造プロセスへの関与に関するどのような内容の情報をオペレータに提供すべきなのか、この関与に関する情報をどのような手段でオペレータに提供するのかといった課題については、特許文献1をはじめとする従来技術では検討がなされていない。従って、このような観点からの技術開発が望まれる。
【0007】
本開示の1つの目的は、圧延ラインにおいて製造される製造対象の製造プロセスに関与するオペレータにとって有用な情報を提供することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の観点は、圧延ラインにおける操業を支援する方法であり、次の特徴を有する。
前記方法は、
前記圧延ラインにおいて製造された圧延製品に関連する各種データを取得するステップであって、前記各種データが、前記圧延製品の製品仕様に関するデータと、前記圧延製品の品質に関するデータと、前記圧延製品の製造中における前記圧延ラインの操業状況に関するデータと、前記圧延製品の製造中における前記圧延ラインのアクチュエータに対するオペレータ操作に関するデータと、を含むステップと、
前記各種データに基づいて、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つを製品仕様ごとに計算するステップであって、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率が、前記品質に関するデータに含まれる品質エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率が、前記操業状況に関するデータに含まれる操業エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率が、前記オペレータ操作に関するデータに含まれるデータであってエラーが発生したことを示すエラーデータが付与された数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表されるステップと、
前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つの高さに応じて、前記圧延製品の製造難易度を製品仕様ごとに設定するステップと
前記品質において発生したエラーの発生率、前記操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも2つの高さに応じて、前記圧延製品の総合的な製造難易度を示す総合難易度を製品仕様ごとに設定するステップと、
前記圧延ラインにおいて製造される製造対象の製造プロセスに関与するオペレータを支援するための支援データをオペレータ端末から出力するステップであって、前記支援データが、前記製造対象の製造難易度のデータとして、前記製造対象の製品仕様と同一の製品仕様を有する前記圧延製品の製造難易度及び総合難易度のデータを含むステップと、
を含む。
【0009】
本開示の第2の観点は、圧延ラインにおける操業を支援する装置であり、次の特徴を有する。
前記装置は、前記圧延ラインにおいて製造された圧延製品に関連する各種データが格納された記憶装置と、1又は複数のプロセッサと、を備える。
前記各種データは、前記圧延製品の製品仕様に関するデータと、前記圧延製品の品質に関するデータと、前記圧延製品の製造中における前記圧延ラインの操業状況に関するデータと、前記圧延製品の製造中における前記圧延ラインのアクチュエータに対するオペレータ操作に関するデータと、を含む。
前記1又は複数のプロセッサは、
前記各種データに基づいて、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つを製品仕様ごとに計算する処理であって、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率が、前記品質に関するデータに含まれる品質エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率が、前記操業状況に関するデータに含まれる操業エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率が、前記オペレータ操作に関するデータに含まれるデータであってエラーが発生したことを示すエラーデータが付与された数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表される処理と、
前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つエラーの発生率の高さに応じて、前記圧延製品の製造難易度を製品仕様ごとに設定する処理と
前記品質において発生したエラーの発生率、前記操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも2つの高さに応じて、前記圧延製品の総合的な製造難易度を示す総合難易度を製品仕様ごとに設定する処理と、
前記圧延ラインにおいて製造される製造対象の製造プロセスに関与するオペレータを支援するための支援データをオペレータ端末から出力する処理であって、前記支援データが、前記製造対象の製品仕様と同一の製品仕様を有する前記圧延製品の製造難易度及び総合難易度のデータを含む処理と、
を行うように構成されている。
【0010】
本開示の第3の観点は、圧延ラインにおける操業を支援するプログラムであり、次の特徴を有する。
前記プログラムは、
前記圧延ラインにおいて製造された圧延製品に関連する各種データを取得する処理であって、前記各種データが、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つを製品仕様ごとに計算する処理であって、前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率が、前記品質に関するデータに含まれる品質エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率が、前記操業状況に関するデータに含まれる操業エラー項目の発生があった数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表され、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率が、前記オペレータ操作に関するデータに含まれるデータであってエラーが発生したことを示すエラーデータが付与された数の、前記圧延製品の製造数に対する割合により表される処理と、
前記圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、前記圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つエラーの発生率の高さに応じて、前記圧延製品の製造難易度を製品仕様ごとに設定する処理と
前記品質において発生したエラーの発生率、前記操業状況において発生したエラーの発生率、及び、前記オペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも2つの高さに応じて、前記圧延製品の総合的な製造難易度を示す総合難易度を製品仕様ごとに設定する処理と、
前記圧延ラインにおいて製造される製造対象の製造プロセスに関与するオペレータを支援するための支援データをオペレータ端末から出力する処理であって、前記支援データが、前記製造対象の製品仕様と同一の製品仕様を有する前記圧延製品の製造難易度及び総合難易度のデータを含む処理と、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、圧延ラインにおいて製造された圧延製品の製造難易度が、圧延製品の品質において発生したエラーの発生率、圧延製品の製造中における圧延ラインの操業状況において発生したエラーの発生率、及び、圧延製品の製造中におけるアクチュエータに対するオペレータ操作から推測されるエラーの発生率の少なくとも1つの高さに応じて製品仕様ごとに設定される。本開示によれば、また、これらのエラーの発生率の少なくとも2つの高さに応じて、圧延ラインにおいて製造された圧延製品の総合的な製造難易度を示す総合難易度が、製品仕様ごとに設定される。本開示によれば、また、圧延ラインにおいて製造される製造対象の製造プロセスに関与するオペレータを支援するための支援データとして、この製造対象の製品仕様と同一の製品仕様を有する圧延製品の製造難易度のデータがオペレータ端末から出力される。
【0012】
ここで、「圧延ラインにおいて製造された圧延製品」とは、圧延ラインでの製造が済んだ製品であること意味する。そのため、「圧延ラインにおいて製造された圧延製品」の製造難易度及び総合難易度は既に判明している。一方、「圧延ラインにおいて製造される製造対象」とは、圧延ラインでの製造が完了する前の製品、つまり、圧延ラインでの製造がこれから行われる製品、及び、圧延ラインでの製造が行われている最中の製品を意味する。そのため、「圧延ラインにおいて製造される製造対象」の製造難易度及び総合難易度は未だ判明していない。
【0013】
ただし、「圧延ラインにおいて製造される製造対象」の製品仕様と「圧延ラインにおいて製造された圧延製品」のそれが同一であれば、前者の製造難易度及び総合難易度が後者のそれと同じであることが予測される。本開示はこの点に着目したものである。故に、「圧延ラインにおいて製造される製造対象」の製品仕様と同一の製品仕様を有する「圧延ラインにおいて製造された圧延製品」の製造難易度及び総合難易度が上記支援データとしてオペレータ端末から出力される本開示によれば、「圧延ラインにおいて製造される製造対象」の製造難易度及び総合難易度という有用な情報をオペレータに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る圧延ラインの操業支援装置が適用される圧延システムの構成例を説明する図である。
図2】製品仕様に関するデータの構成例を示す図である。
図3】操業状況に関するデータの構成例を示す図である。
図4】オペレータ操作に関するデータを説明する図である。
図5】品質に関するデータの構成例を示す図である。
図6】第1実施形態において、管理サーバ(プロセッサ)により行われるデータ処理例を説明する図である。
図7】第1実施形態において、管理サーバ(プロセッサ)により行われるデータ処理例を説明する図である。
図8】第2実施形態に係る圧延ラインの操業支援装置が適用される圧延システムの構成例を説明する図である。
図9】第2実施形態において、管理サーバ(プロセッサ)により行われるデータ処理例を説明する図である。
図10】第2実施形態において、管理サーバ(プロセッサ)により行われるデータ処理例を説明する図である。
図11】第2実施形態において、管理サーバ(プロセッサ)により行われるデータ処理例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示の実施形態に係る圧延ラインの操業支援方法、操業支援装置及び操業支援プログラムについて詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
1.第1実施形態
1-1.圧延システムの構成例
図1は、第1実施形態に係る圧延ラインの操業支援装置が適用される圧延システムの構成例を説明する図である。図1に示される例では、圧延システムが、管理サーバ1と、PLC(Programmable Logic Controller)2と、オペレータ端末3とを備えている。
【0017】
管理サーバ1は、第1実施形態に係る操業支援装置としての機能を有している。管理サーバ1は、通信回線網を介してPLC2及びオペレータ端末3と通信を行う。通信回線網は特に限定されず、有線及び無線のネットワークを使用できる。通信回線網は、例えば、インターネット回線、WWW(World Wide Web)、電話回線、LAN(Local Area Network)、SAN(Storage Area Network)、DTN(Delay Tolerant Network)が例示される。無線通信としては、例えば、Wi-Fi(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)が例示される。
【0018】
管理サーバ1は、データ処理装置11と、データベース12とを備えている。データ処理装置11は、少なくとも1つのプロセッサ13と、少なくとも1つのメモリ14とを備えている。プロセッサ13は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。メモリ14は、DDRメモリなどの揮発性のメモリであり、プロセッサ13が使用する各種プログラムの展開及び各種データの一時保存を行う。プロセッサ13が使用する各種プログラムには、第1実施形態に係る操業支援プログラムが含まれている。プロセッサ13が使用する各種データには、データベース12に格納された各種データが含まれている。
【0019】
データベース12に格納される各種データには、圧延ライン(Rolling Line)RLにおいて製造された複数の圧延製品(Rolled Product)RPの製品仕様SPCに関するデータが含まれている。各種データには、また、これらの圧延製品RPの製造中における圧延ラインRLの操業状況(Operation Status)OPSに関するデータと、これらの圧延製品RPの製造中における圧延ラインRLのアクチュエータに対するオペレータ操作(Operator Manipulation)OPMに関するデータと、これらの圧延製品RPの品質QLTに関するデータと、が含まれている。
【0020】
製品仕様SPCに関するデータは、PLC2が有する製造指令情報(圧延命令情報)に含まれるデータである。操業状況OPSに関するデータは、PLC2が圧延ラインRLから取得するデータである。これらのデータは、PLC2との通信を介して定期的に更新される。オペレータ操作OPMに関するデータは、オペレータ端末3との通信を介して定期的に更新される。尚、オペレータ操作OPMに関するデータは圧延ラインRLのアクチュエータに入力されることから、このデータは圧延ラインRL(PLC2)を経由して管理サーバ1に提供されてもよい。
【0021】
品質QLTに関するデータは、複数の圧延製品RPの各品質(例えば、表面品質、及び、板厚及び板幅により評価されるサイズ品質)のデータである。品質QLTに関するデータは、これらの圧延製品RPの製造後に行われる検査データを管理サーバ1が定期的に取得することで更新される。
【0022】
図2は、製品仕様SPCに関するデータの構成例を示す図である。図2に示される例では、複数の圧延製品RPの製品仕様(SP1~SPx)のデータが、ロット番号(LT1~LT4)のデータと組み合わされている。ロット番号は、100~200本の圧延製品RPごとに設定されるものである。図2に示される例では、ある1日の圧延履歴に着目したときのデータ構成例であり、この1日では4ロットの圧延が行われている。尚、圧延履歴の着目期間は特に限定されず、例えば、1週間の圧延履歴に着目してもよいし、1月の圧延履歴に着目してもよい。
【0023】
製品仕様はx個の(x>i>2)グループに分けられている。SP1~SPxの製品仕様は、例えば、材種区分(AA~YY)とサイズ区分(SZ1~SZz)の組み合わせにより特定される。AA~YYの材種区分は、例えば、JIS規格又はDIN規格を参照して決定される。SZ1~SZz(z>j>2)のサイズ区分は、例えば、圧延製品RPの板厚と板幅の組み合わせに基づいて決定される。
【0024】
尚、図2に示される例では、材種区分とサイズ区分の組み合わせにより製品仕様が特定されているが、この組み合わせに温度区分、圧延方式区分などの他の要素の区分が更に組み合わされていてもよい。
【0025】
図3は、操業状況OPSに関するデータの構成例を示す図である。図3に示される例では、複数の圧延製品RPの操業エラー項目(OPS_ER1~OPS_ERp)及びその発生回数のデータが、ロット番号及び製品仕様のデータと組み合わされている。操業状況OPSに関するデータの履歴期間は、図2で説明した製品仕様SPCに関するデータのそれと同じ期間である(例えば、1日)。OPS_ER1~OPS_ERp(p>2)の操業エラー項目は、圧延ラインRLの正常な操業を停止するに至る事象に対応して設定されている。このような事象としては、圧延中の材料破断、噛み込み失敗及び尾端絞りが例示される。
【0026】
図4は、オペレータ操作OPMに関するデータを説明する図である。圧延ラインRLにおける製造プロセスを担当するオペレータOPは、オペレータ端末3のHMI(例えば、図1に示すディスプレイ群DPG1及びDPG2)に出力された各種情報を監視する。そして、この製造プロセスに関与する必要があると判断した場合、オペレータOPは、オペレータ端末3の入力装置を操作して各種の操作指令をアクチュエータに送信する。ここでいうアクチュエータとしては、ロールギャップを制御する油圧シリンダ、ロール速度を制御する駆動モータ、冷却水を制御するウォータポンプなどが例示される。
【0027】
図4には、オペレータ端末3からアクチュエータに送信された操作指令の時系列データACTの推移例が示されている。オペレータ操作OPMに関するデータは、この時系列データに対する解析処理の結果に基づいて生成される。尚、この解析処理とオペレータ操作OPMに関するデータの生成処理は、管理サーバ1(例えば、プロセッサ13)により行われる。
【0028】
オペレータOPによる製造プロセスへの関与があった場合、データACTが変化する。ある圧延製品RPの製造中に取得されるデータACTが変化する回数が多かった場合は、この圧延製品RPの製造プロセスに影響を及ぼす何らかのリスクをオペレータOPが認識した、又は、既に何らかのトラブルが製造プロセスにおいて発生したことが推測される。また、このようなリスクの認識やトラブルの発生は、データACTの変化速度dACT/dtが大きかった場合にも推測される。
【0029】
データACTの解析処理では、例えば、データACTが変化する回数が上限回数よりも多い場合、エラーが発生したことを示すデータ(以下、「エラーデータ」とも称す。)が付与される。別の例では、エラーデータが、変化速度dACT/dtが上限速度を上回る場合に付与される。エラーデータの付与は、圧延製品RPのロット番号及び製品仕様のデータの組み合わせに対して行われる。エラーデータは、アクチュエータの種類を特定するデータであってもよい。同一種類のアクチュエータが複数ある場合、エラーデータは、アクチュエータを識別するデータであってもよい。
【0030】
図5は、品質QLTに関するデータの構成例を示す図である。図5に示される例では、複数の圧延製品RPの品質エラー項目(QLT_ER1~QLT_ERq)及びその発生の有無(有り:0、無し:1)のデータが、ロット番号及び製品仕様のデータと組み合わされている。品質QLTに関するデータの履歴期間は、図2で説明した製品仕様SPCに関するデータのそれと同じ期間である(例えば、1日)。QLT_ER1~QLT_ERq(q>2)の品質エラー項目は、事前に設定された品質基準に対応して設定されている。品質基準としては、表面品質に関する基準、並びに、板厚及び板幅により評価されるサイズ品質に関する基準が例示される。
【0031】
データベース12に格納された各種データは、プロセッサ13により処理される。この処理には、(i)圧延製品RPにおけるエラーの発生率αの計算処理と、(ii)圧延製品RPの製造難易度DLvの設定処理と、(iii)製造難易度DLvの送信処理と、が含まれる。
【0032】
(i)発生率αの計算処理は、圧延製品RPの操業状況において発生したエラー、アクチュエータに対するオペレータ操作において発生したエラー、及び、圧延製品RPの品質において発生したエラーの少なくとも1つに対して行われる。
【0033】
操業状況におけるエラーの発生率α_OPSは、圧延製品RPの製造数N_RPに対する、操業状況OPSに関するデータに含まれる操業エラー項目の発生回数N_Eopsの割合により表すことができる。オペレータ操作におけるエラーの発生率α_OPMは、圧延製品RPの製造数N_RPに対する、オペレータ操作OPMに関するデータに対するエラーデータの付与数N_Eopmの割合により表すことができる。品質におけるエラーの発生率α_QLTは、圧延製品RPの製造数N_RPに対する、品質QLTに関するデータに含まれる品質エラー項目の発生があった数N_Eqltの割合により表すことができる。尚、製造数N_RPは、製造指令情報から把握することができる。
【0034】
発生率α_OPS、α_OPM及びα_QLTは、それぞれ、圧延製品RPの製品仕様SPCごとに計算される。以下、圧延製品RPの製品仕様SPCごとに計算された発生率α_OPSを「発生率α_OPS(SP)」と称す。また、圧延製品RPの製品仕様SPCごとに計算された発生率α_OPMを「発生率α_OPM(SP)」と称し、圧延製品RPの製品仕様SPCごとに計算された発生率α_QLTを「発生率α_QLT(SP)」と称す。発生率α_OPS(SP)、α_OPM(SP)及びα_QLT(SP)を特定しない場合、これらを「発生率α(SP)」と総称する。
【0035】
(ii)製造難易度DLvの設定処理は、(i)発生率αの計算処理において計算された発生率α_OPS(SP)、α_OPM(SP)及びα_QLT(SP)の少なくとも1つに基づいて行われる。発生率α(SP)同様、製造難易度DLVは、圧延製品RPの製品仕様SPCごとに計算される。以下、圧延製品RPの製品仕様SPCごとに計算された製造難易度DLVを「製造難易度DLV(SP)」と称す。
【0036】
製造難易度DLV(SP)は、例えば、事前に設定した1つ以上の境界値で発生率α(SP)を2段階以上に分け、「DLV:LV1」、「DLv:LV2」、「DLv:LV3」などのように発生率α(SP)が属する数値範囲に応じて製造難易度DLv(SP)を設定することができる。発生率α(SP)の数値をそのまま製造難易度DLv(SP)に設定してもよい。
【0037】
発生率αの計算処理において発生率α(SP)が2つ以上計算されている場合、各発生率α(SP)についての重み係数βを含む下記式(1)を用いて「総合的な」製造難易度(以下、「総合難易度」とも称す。)CDLv(SP)が計算されてもよい。
CDLv(SP)=Σα_OPS(SP)×βops+α_OPM(SP)×βopm+α_QLT(SP)×βqlt ・・・(1)
尚、重み係数βは、総合難易度CDLvの計算に用いられる2つ以上の発生率α(SP)の相対的な重みを示すものであり、これらの発生率α(SP)の計算要素(つまり、エラー要素)に基づいて事前に設定されている。但し、操業状況におけるエラーの重み係数opsについては、このエラーの発生により製造プロセスに遅延が生じたときにはこの遅延時間を計測してもよい。そして、この遅延時間の長さに応じて、オペレータOP操作におけるエラーの重み係数βopm及び品質におけるエラーの重み係数βqltに対する重み係数βopmの相対的な値を調整してもよい。又は、操業状況におけるエラーの発生により生産量が低下した場合は、この低下量を計測して重み係数βopmの相対的な値を調整してもよい。
【0038】
(iii)製造難易度DLv(又は総合難易度CDLv)の送信処理は、(ii)製造難易度DLvの設定処理において設定された製造難易度DLvのデータをオペレータ端末3に送信する処理である。
【0039】
図1に戻り、圧延システムの構成例の説明を続ける。PLC2は、圧延ラインRLにおける各種設定計算を行う計算機である。PLC2は、圧延ラインRLに設けられた各種アクチュエータの制御装置や、圧延ラインRLに設けられた各種センサと通信する。PLC2から制御装置には、例えば、設定計算に基づいて計算された制御指令、オペレータ端末3から受信した操作指令が送信される。制御装置からPLC2には、アクチュエータの状態に関するデータが送信される。各種センサとしては、中間製品(以下、「被圧延材MR」とも称す。)の温度を計測する温度計、被圧延材MRの板厚を計測する板厚計、圧延機の荷重を計測する荷重計、ロール速度を計測する速度計などが例示される。これらのセンサによる計測は、PLC2に送信される。
【0040】
オペレータ端末3は、オペレータOPが圧延ラインRLにおける製造プロセスを監視し、又は、製造プロセスに関与するための端末である。オペレータ端末3は、ディスプレイ群DPG1及びDPG2に接続されている。ディスプレイ群DPG1には、例えば、圧延ラインRLに設けられた監視カメラの画像が出力される。ディスプレイ群DPG2には、圧延ラインRLの各種センサが計測したデータ、オペレータOPが担当するアクチュエータの操作に関するデータなどが出力される。図示は省略するが、オペレータ端末3には入力装置が設けられている。製造プロセスに関与する必要があると判断した場合、オペレータOPはこの入力装置を操作する。
【0041】
第1実施形態では、オペレータOPを支援するためのデータ(以下、「支援データ(Assist Data)ASS」とも称す。)がディスプレイ群DPG2の何れか1つから出力される。支援データASSには、管理サーバ1から受信した製造難易度DLv(又は総合難易度CDLv)のデータが含まれる。製造難易度DLvのデータは、圧延ラインRLにおいて製造される製造対象TPのものである。支援データASSの出力制御は、オペレータ端末3のプロセッサ(不図示)により行われる。
【0042】
ここで、製造対象TPとは、圧延ラインRLでの製造が完了する前の製品、つまり、圧延ラインRLでの製造がこれから行われる製品、及び、圧延ラインRLでの製造が行われている最中の製品を意味する。一方、製造難易度DLvは、圧延製品RP、つまり、圧延ラインRLでの製造が済んだ製品に対して設定されている。そのため、製造対象TPの製造難易度DLvは実際には設定されていない。
【0043】
しかしながら、製造対象TPの製品仕様SPCと、圧延製品RPのそれが同一であれば、前者の製造難易度DLvが後者のそれと同じであることが予測される。そこで、実施形態では、製造対象TPの製品仕様SPCと同一の製品仕様SPCを有する圧延製品RPの製造難易度DLvのデータを、製造対象TPのそれとして用いてディスプレイ群DPG2から出力する。
【0044】
1-2.データ処理例
次に、第1実施形態に特に関連するデータ処理例について説明する。図6及び7は、管理サーバ1(プロセッサ13)により行われるデータ処理例を説明する図である。図6及び7に示される処理フローは、それぞれ、一定の周期で繰り返し実行される。
【0045】
図6に示されるルーチンでは、まず、各種データが取得される(ステップS11)。各種データは、データベース12に格納されたデータである。各種データとしては、複数の圧延製品RPの製品仕様SPCに関するデータ、これらの圧延製品RPの製造中における圧延ラインRLの操業状況OPSに関するデータ、これらの圧延製品RPの製造中における圧延ラインRLのアクチュエータに対するオペレータ操作OPMに関するデータ、及び、これらの圧延製品RPの品質QLTに関するデータが例示される。
【0046】
ステップS11の処理に続いて、エラーの発生率α(SP)が計算される(ステップS12)。発生率α(SP)の計算は、ステップS11において取得されたデータに対して行われる。具体的に、操業状況OPSに関するデータが取得された場合、発生率α_OPS(SP)が計算される。オペレータ操作OPMに関するデータが取得された場合、発生率α_OPM(SP)が計算される。品質QLTに関するデータが取得された場合、発生率α_QLT(SP)が計算される。
【0047】
ステップS12の処理に続いて、製造難易度DLv(SP)が計算される(ステップS13)。製造難易度DLv(SP)の計算は、例えば、ステップS12において計算された発生率α(SP)に基づいて、この発生率α(SP)の計算要素(つまり、エラー要素)ごとに行われる。総合難易度CDLv(SP)の計算を行う場合は、ステップS12において計算された発生率α(SP)が上記式(1)に適用される。尚、ステップS13の処理により得られた製造難易度DLv(SP)又は総合難易度CDLv(SP)のデータは、データベース12に格納される。
【0048】
図7に示されるルーチンでは、まず、製造対象TPの製造が予定されているか否かが判定される(ステップS21)。ステップS21の処理は、例えば、PLC2が有する製造指令情報に含まれるスケジュールデータを参照して行われる。スケジュールデータの参照範囲は、例えば、圧延ラインRLの稼働当日のものである。別の例では、現在製造されているロットの次に製造されるロットのスケジュールデータが参照される。
【0049】
ステップS21の処理に続いて、製造対象TPの製品仕様SPCのデータが特定される(ステップS22)。ステップS22の処理は、例えば、PLC2が有する製造指令情報を参照して行われる。
【0050】
ステップS22の処理に続いて、製造対象TPの製造難易度DLv(SP)が特定される(ステップS23)。ステップS23の処理では、例えば、ステップS22の処理において特定された製造対象TPの製品仕様SPCを用いてデータベース12が参照される。これにより、製造対象TPの製品仕様SPCと同じ製品仕様SPCを有する圧延製品RPの製造難易度DLv(SP)及び/又は総合難易度CDLv(SP)が特定される。
【0051】
ステップS23の処理に続いて、製造難易度DLv(SP)のデータがオペレータ端末3に送信される(ステップS24)。ステップS24の処理では、具体的に、ステップS23の処理において特定された製造難易度DLv(SP)及び/又は総合難易度CDLv(SP)のデータがオペレータ端末3に送信される。データの送信に際しては、製造難易度DLv(SP)及び/又は総合難易度CDLv(SP)の計算において用いられた発生率α(SP)の計算要素(つまり、エラー要素)のデータがこれと併せて送信されてもよい。
【0052】
以上の処理を経てオペレータ端末3に送信された製造難易度DLv(SP)及び/又は総合難易度CDLv(SP)のデータは、支援データASSとしてディスプレイ群DPG2から出力される。
【0053】
1-3.効果
以上説明した第1実施形態によれば、製造難易度DLv(SP)及び/又は総合難易度CDLv(SP)のデータという有用な情報をオペレータOPに提供できる。製造難易度DLv(SP)及び/又は総合難易度CDLv(SP)の計算において用いられた発生率α(SP)の計算要素(つまり、エラー要素)のデータが更に提供された場合は、製造対象TPの製造プロセスにおいて注意すべきエラー要素の情報という有用な情報をオペレータOPに提供できる。
【0054】
2.第2実施形態
2-1.圧延システムの構成例
図8は、第2実施形態に係る圧延ラインの操業支援装置が適用される圧延システムの構成例を説明する図である。図8に示される構成例は、図1に示した構成例と基本的に同じである。前者と後者の違いは、管理サーバ1がデータベース12とは別にデータベース15を備えている点である。
【0055】
データベース15には、圧延製品RPの製造中に圧延ラインRLにおいて取得された圧延製品RP(正確には、被圧延材MR)の状態SMR(State of Material to be Rolled)に関するデータが格納されている。状態SMRに関するデータとしては、被圧延材MRの温度及び板厚、被圧延材MRに印加される荷重、圧延速度といった、圧延ラインRLに設けられた各種センサから直接的に取得されたデータ、又は、この取得データに基づいて計算されたデータが例示される。
【0056】
データベース15には、また、状態SMRに関するデータから抽出されたデータEX_SMRが格納されている。データEX_SMRは、圧延製品RPの品質、圧延ラインRLの操業状況OPS及びオペレータ操作OPMにおいてエラーの発生が認められなかったときの状態SMRに関するデータである。ここでいうエラーとは、図3で説明した操業エラー項目(OPS_ER1~OPS_ERp)、図4で説明したエラーデータが付与されるようなオペレータ操作OPM、及び、図5で説明した品質エラー項目(QLT_ER1~QLT_ERq)が例示される。
【0057】
データベース15には、更に、オペレータ操作OPMに関するデータから抽出されたデータEX_OPMが格納されている。データEX_OPMは、圧延製品RPの品質、及び、圧延ラインRLの操業状況OPSにおいてエラーの発生が認められなかったときのオペレータ操作OPMに関するデータである。尚、データEX_OPM及びデータEX_SMRの抽出処理は、管理サーバ1(例えば、プロセッサ13)により行われる。
【0058】
データベース15に格納された各種データは、プロセッサ13により処理される。この処理には、(i)被圧延材MRの模範状態のデータの生成処理と、(ii)オペレータの模範操作のデータの生成処理と、(iii)オペレータに対する指南データの生成処理と、(iv)指南データ(Advice Data)ADVの送信処理と、が含まれる。
【0059】
(i)模範状態のデータの生成処理は、データEX_SMRに基づいて、圧延製品RPの製品仕様SPCごとに行われる。(ii)模範操作のデータの生成処理は、データEX_OPMに基づいて、圧延製品RPの製品仕様SPC及びアクチュエータの組み合わせごとに行われる。(i)及び(ii)の生成処理は、例えば、データEX_SMR及びEX_OPMが生成されるたびに行われる。
【0060】
(iii)指南データADVの生成処理は、製造対象TPの製造中に行われる。(iii)の生成処理は、例えば、製造対象TPと同一の製品仕様SPCを有する圧延製品RPに関する模範状態のデータと、製造対象TPの実績状態のデータとに基づいて行われる。製造対象TPの実績状態のデータとは、製造対象TPの製造中に圧延ラインRLにおいて取得された製造対象TPの状態に関するデータを指す。この例において、指南データADVは、模範状態のデータ、及び、模範状態のデータと実績状態のデータの差分である。
【0061】
別の例では、製造対象TPと同一の製品仕様SPCについての圧延製品RPの非模範状態のデータを用いて指南データADVが生成される。非模範状態のデータとは、圧延製品RPの製造中における圧延ラインRLの操業状況OPS、この圧延製品RPの製造中におけるオペレータ操作OPM、及び、この圧延製品RPの品質QLTにおいてエラーの発生が認められたときの状態SMRに関するデータを指す。非模範状態のデータの生成は、圧延製品RPの製品仕様SPCごとに行われる。この例における指南データADVは、模範状態及び非模範状態のデータである。
【0062】
(iii)の生成処理の別の例では、製造対象TPと同一の製品仕様SPCを有する圧延製品RPの製造中におけるオペレータの模範操作のデータと、製造対象TPの製造中におけるオペレータの実績操作のデータとに基づいて指南データADVが生成される。オペレータの実績操作のデータとは、製造対象TPの製造中において、模範操作のデータを生成したアクチュエータと同一のアクチュエータに対して行われたオペレータ操作OPMに関するデータを指す。この例において、指南データADVは、模範操作のデータ、及び、模範操作のデータと実績操作のデータの差分である。
【0063】
別の例では、製造対象TPと同一の製品仕様SPCを有する圧延製品RPの製造中におけるオペレータの非模範操作のデータを用いて指南データADVが生成される。非模範操作のデータは、圧延製品RPの製造中における圧延ラインRLの操業状況OPS、及び、この圧延製品RPの品質QLTにおいてエラーの発生が認められたときのオペレータ操作OPMのデータを指す。非模範操作のデータの生成は、圧延製品RPの製品仕様SPCごとに行われる。この例における指南データADVは、模範操作及び非模範操作のデータである。
【0064】
また別の例では、AI、機械学習といった公知のデータ分析手法に模範操作及び非模範操作のデータを適用し、エラーの発生を回避するためのアクチュエータの最適操作のデータが生成される。この例における指南データADVは、最適操作のデータである。
【0065】
(iv)指南データADVの送信処理は、(iii)指南データADVの生成処理において設定された指南データADVをオペレータ端末3に送信する処理である。
【0066】
第1実施形態では、支援データASSとしての製造難易度DLvのデータがディスプレイ群DPG2の何れか1つから出力された。第2実施形態では、製造難易度DLvのデータに追加される形で指南データADVがディスプレイ群DPG2の何れか1つから出力される。つまり、第2実施形態では、製造難易度DLv及び指南データADVが支援データASSとして出力される。
【0067】
2-2.データ処理例
次に、第2実施形態に特に関連するデータ処理例について説明する。図9~11は、管理サーバ1(プロセッサ13)において行われるデータ処理例を説明する図である。図9~11に示される処理フローは、それぞれ、一定の周期で繰り返し実行される。
【0068】
図9に示されるルーチンでは、まず、各種データが取得される(ステップS31)。各種データは、データベース12及び15に格納されたデータである。各種データとしては、図6のステップS11の処理の説明において述べたデータが例示される。各種データには、また、圧延製品RPの製造中に圧延ラインRLにおいて取得された圧延製品RPの状態SMRに関するデータも含まれる。
【0069】
ステップS31の処理に続いて、抽出データの生成が行われる(ステップS32)。ここでいう抽出データは、データEX_SMR及びEX_OPMの少なくとも一方である。データEX_SMRの生成は、ステップS31の処理において取得された状態SMRに関するデータから、圧延製品RPの品質、圧延ラインRLの操業状況OPS及びオペレータ操作OPMにおいてエラーの発生が認められなかったデータを抽出することにより行われる。データEX_OPMの生成は、ステップS31の処理において取得されたオペレータ操作OPMに関するデータから、圧延製品RPの品質、及び、圧延ラインRLの操業状況OPSにおいてエラーの発生が認められなかったデータを抽出することにより行われる。
【0070】
ステップS32の処理に続いて、模範データの生成が行われる(ステップS33)。ステップS33の処理は、ステップS32において生成された抽出データに基づいて行われる。ステップS32の処理においてデータEX_SMRが生成されている場合、このデータEX_SMRに基づいて模範状態のデータが生成される。一方、ステップS32の処理においてデータEX_OPMが生成されている場合、このデータEX_OPMに基づいて模範操作のデータが生成される。尚、ステップS33の処理により得られた模範データは、データベース15に格納される。
【0071】
図10に示されるルーチンでは、まず、製造対象TPの製造が予定されているか否かが判定される(ステップS41)。ステップS41の処理の内容は、図7のステップS21のそれと同じである。また、ステップS41の処理に続いて、製造対象TPの製品仕様SPCのデータが特定される(ステップS42)。ステップS42の処理の内容は、図7のステップS22のそれと同じである。
【0072】
ステップS42の処理に続いて、製造対象TPの模範データが特定される(ステップS43)。ステップS43の処理では、例えば、ステップS42の処理において特定された製造対象TPの製品仕様SPCを用いてデータベース15が参照される。これにより、製造対象TPの製品仕様SPCと同じ製品仕様SPCを有する圧延製品RPについての模範データ(即ち、模範状態及び模範操作のデータ)が特定される。
【0073】
ステップS43の処理に続いて、模範データがオペレータ端末3に送信される(ステップS44)。ステップS44の処理では、ステップS43の処理において特定された模範データがオペレータ端末3に送信される。模範データの送信に際しては、非模範データ(即ち、非模範状態及び非模範操作のデータ)がこれと併せて送信されてもよい。
【0074】
以上の処理を経てオペレータ端末3に送信された模範データは、支援データASSとしてディスプレイ群DPG2から出力される。オペレータ端末3に非模範データが送信された場合は、非模範データが模範データと共にディスプレイ群DPG2から出力される。
【0075】
図11に示されるルーチンでは、まず、模範データ(即ち、模範状態及び模範操作のデータ)が取得される(ステップS51)。ステップS51において取得される模範データは、圧延ラインRLにおいて製造中の製造対象TPの製品仕様SPCと同じ製品仕様SPCを有する圧延製品RPのものであり、データベース15から読み出される。
【0076】
ステップS51の処理に続いて、実績データ(即ち、実績状態及び実績操作のデータ)が取得される(ステップS52)。ステップS52において取得される実績データは、ステップS51の処理において取得された模範データに対応するデータである。
【0077】
ステップS52の処理に続いて、指南データADVが生成される(ステップS53)。指南データADVは、例えば、ステップS52において取得された模範データと、これに対応してステップS53において取得された実績データとの差分である。指南データADVの別の例としては、ステップS52において取得された模範データと、この模範データに対応する非模範データが挙げられる。指南データADVのまた別の例としては、エラーの発生を回避するためのアクチュエータの最適操作のデータである。
【0078】
ステップS53の処理に続いて、指南データADVが送信される(ステップS54)。ステップS54の処理では、ステップS53の処理において生成された指南データADVがオペレータ端末3に送信される。
【0079】
以上の処理を経てオペレータ端末3に送信された指南データADVは、支援データASSとしてディスプレイ群DPG2から出力される。
【0080】
2-3.効果
以上説明した第2実施形態によれば、模範データという有用な情報をオペレータOPに提供できる。また、模範データを含む指南データADVという有用な情報もオペレータOPに提供できる。従って、圧延ラインRLでの製造対象TPの製造におけるエラーの発生を未然に回避することが期待される。
【符号の説明】
【0081】
1 管理サーバ
2 PLC
3 オペレータ端末
12、15 データベース
13 プロセッサ
14 メモリ
OP オペレータ
RL 圧延ライン
RP 圧延製品
DLv 製造難易度
OPM オペレータ操作
OPS 操業状況
QLT 品質
SMR 被圧延材の状態
SPC 製品仕様
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11