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特許7517605走行車システム、単位ユニット、及び格子状軌道
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】走行車システム、単位ユニット、及び格子状軌道
(51)【国際特許分類】
   B61B 3/02 20060101AFI20240709BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20240709BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B61B3/02 Z
B61B13/00 U
B65G49/07 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023525697
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2022020238
(87)【国際公開番号】W WO2022255062
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2021093833
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】虎澤 政佳
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-81639(JP,A)
【文献】特開2021-11322(JP,A)
【文献】特開2012-40961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 3/02
B61B 13/00
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り下げ式の格子状軌道と、前記格子状軌道を走行する走行車と、を備える走行車システムであって、
前記格子状軌道は、格子の1つのマス目に対応する単位ユニットを備え、
前記単位ユニットは、
第1方向に平行に延在する2本の第1軌道と、前記第1方向とは異なる第2方向に平行に延在する2本の第2軌道と、前記2本の第1軌道のそれぞれの前記第1方向への延長線と前記2本の第2軌道のそれぞれの前記第2方向への延長線との交差点に対応し、前記2本の第1軌道のそれぞれ及び前記2本の第2軌道のそれぞれと間隔を隔てて設けられた4個の交差軌道と、前記4個の交差軌道のそれぞれを前記2本の第1軌道のそれぞれ及び前記2本の第2軌道のそれぞれと接続する接続部と、を有し、
前記格子状軌道は、複数の前記単位ユニットの連結によって形成され、連結された2個の前記単位ユニット間で前記4個の交差軌道のうち2個の交差軌道が連続している、走行車システム。
【請求項2】
前記格子状軌道は、
前記第1方向に連結された2個の前記単位ユニット間で前記2本の第2軌道のうち1本の第2軌道が当接し、
前記第2方向に連結された2個の前記単位ユニット間で前記2本の第1軌道のうち1本の第1軌道が当接する、請求項1に記載の走行車システム。
【請求項3】
前記単位ユニットは、前記4個の交差軌道のそれぞれの上方又は下方の位置で他の単位ユニットと連結可能である、請求項1又は請求項2に記載の走行車システム。
【請求項4】
前記走行車は、走行輪とガイド輪とを備え、
前記単位ユニットは、前記2本の第1軌道のそれぞれ、前記2本の第2軌道のそれぞれ、及び前記4個の交差軌道のそれぞれの側面に、前記ガイド輪を案内するガイド面を備え、
前記4個の交差軌道のそれぞれの前記ガイド面は、前記走行車による走行方向の転換に伴う前記ガイド輪の旋回時に、前記ガイド輪に当接しない形状である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の走行車システム。
【請求項5】
第1方向に平行に延在する2本の第1軌道と、
前記第1方向とは異なる第2方向に平行に延在する2本の第2軌道と、
前記2本の第1軌道のそれぞれの前記第1方向への延長線と前記2本の第2軌道のそれぞれの前記第2方向への延長線との交差点に対応し、前記2本の第1軌道のそれぞれ及び前記2本の第2軌道のそれぞれと間隔を隔てて設けられた4個の交差軌道と、
前記4個の交差軌道のそれぞれを前記2本の第1軌道のそれぞれ及び前記2本の第2軌道のそれぞれと接続する接続部と、
を有する単位ユニット。
【請求項6】
走行車が走行する吊り下げ式の格子状軌道であって、
第1方向に平行に延在する2本の第1軌道と、前記第1方向とは異なる第2方向に平行に延在する2本の第2軌道と、前記2本の第1軌道のそれぞれの前記第1方向への延長線と前記2本の第2軌道のそれぞれの前記第2方向への延長線との交差点に対応し、前記2本の第1軌道のそれぞれ及び前記2本の第2軌道のそれぞれと間隔を隔てて設けられた4個の交差軌道と、前記4個の交差軌道のそれぞれを前記2本の第1軌道のそれぞれ及び前記2本の第2軌道のそれぞれと接続する接続部と、を有する単位ユニットを、格子の1つのマス目として備え、
複数の前記単位ユニットの連結によって形成され、連結された2個の前記単位ユニット間で前記4個の交差軌道のうち2個の交差軌道が連続している、格子状軌道。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車システム、単位ユニット、及び格子状軌道に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井等から吊り下げられた軌道を走行車が走行する走行車システムが知られている。特許文献1では、第1方向に沿って延在する複数の第1軌道と、第1方向とは異なる第2方向に沿って延在する複数の第2軌道と、第1軌道と第2軌道との交差点に対応する接続軌道とを備える走行車システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/110522号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、走行車が走行する各軌道が別体であるため、天井から吊り下げる際に、各軌道の据付精度が低くなる可能性があり、据付位置を調整する煩雑な作業が発生する場合がある。この結果、従来技術では、吊り下げられる軌道の設置が容易ではないという課題がある。
【0005】
本発明は、吊り下げられる軌道の設置が容易である走行車システム、単位ユニット、及び格子状軌道を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る走行車システムは、吊り下げ式の格子状軌道と、格子状軌道を走行する走行車と、を備える走行車システムであって、格子状軌道は、格子の1つのマス目に対応する単位ユニットを備え、単位ユニットは、第1方向に平行に延在する2本の第1軌道と、第1方向とは異なる第2方向に平行に延在する2本の第2軌道と、2本の第1軌道のそれぞれの第1方向への延長線と2本の第2軌道のそれぞれの第2方向への延長線との交差点に対応し、2本の第1軌道のそれぞれ及び2本の第2軌道のそれぞれと間隔を隔てて設けられた4個の交差軌道と、4個の交差軌道のそれぞれを2本の第1軌道のそれぞれ及び2本の第2軌道のそれぞれと接続する接続部と、を有し、格子状軌道は、複数の単位ユニットの連結によって形成され、連結された2個の単位ユニット間で4個の交差軌道のうち2個の交差軌道が連続している。
【0007】
本発明の態様に係る単位ユニットは、第1方向に平行に延在する2本の第1軌道と、第1方向とは異なる第2方向に平行に延在する2本の第2軌道と、2本の第1軌道のそれぞれの第1方向への延長線と2本の第2軌道のそれぞれの第2方向への延長線との交差点に対応し、2本の第1軌道のそれぞれ及び2本の第2軌道のそれぞれと間隔を隔てて設けられた4個の交差軌道と、4個の交差軌道のそれぞれを2本の第1軌道のそれぞれ及び2本の第2軌道のそれぞれと接続する接続部と、を有する。
【0008】
本発明の態様に係る格子状軌道は、走行車が走行する吊り下げ式の格子状軌道であって、第1方向に平行に延在する2本の第1軌道と、第1方向とは異なる第2方向に平行に延在する2本の第2軌道と、2本の第1軌道のそれぞれの第1方向への延長線と2本の第2軌道のそれぞれの第2方向への延長線との交差点に対応し、2本の第1軌道のそれぞれ及び2本の第2軌道のそれぞれと間隔を隔てて設けられた4個の交差軌道と、4個の交差軌道のそれぞれを2本の第1軌道のそれぞれ及び2本の第2軌道のそれぞれと接続する接続部と、を有する単位ユニットを、格子の1つのマス目として備え、複数の単位ユニットの連結によって形成され、連結された2個の単位ユニット間で4個の交差軌道のうち2個の交差軌道が連続している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様に係る走行車システム、単位ユニット、及び格子状軌道によれば、単位ユニットを格子状軌道の格子の1つのマス目として、複数の単位ユニットの連結により格子状軌道が形成されるので、天井等から軌道ごとに吊り下げる場合と比較して、格子の形状を均一にしやすいため、据付位置の調整を要することなく、吊り下げられる軌道の設置が容易である。
【0010】
また、上記態様の走行車システムにおいて、格子状軌道が、第1方向に連結された2個の単位ユニット間で2本の第2軌道のうち1本の第2軌道が当接し、第2方向に連結された2個の単位ユニット間で2本の第1軌道のうち1本の第1軌道が当接してもよい。この態様によれば、単位ユニットが軌道で(点ではなく線又は面で)接するため、隣接する単位ユニット間の位置関係が定まりやすく、走行車が走行するときの振動への影響を少なくすることができる。また、上記態様の走行車システムにおいて、単位ユニットが、4個の交差軌道のそれぞれの上方又は下方の位置で他の単位ユニットと連結可能であってもよい。この態様によれば、第1軌道や第2軌道の上方又は下方等で連結する場合と比較して、より多くの単位ユニットをより少ない部材数で連結できるので、単位ユニット間の位置精度が高く、連結にかかる手間を削減でき、連結を容易に行うことができる。また、上記態様の走行車システムにおいて、走行車が、走行輪とガイド輪とを備え、単位ユニットが、2本の第1軌道のそれぞれ、2本の第2軌道のそれぞれ、及び4個の交差軌道のそれぞれの側面に、ガイド輪を案内するガイド面を備え、4個の交差軌道のそれぞれのガイド面が、走行車による走行方向の転換に伴うガイド輪の旋回時に、ガイド輪に当接しない形状であってもよい。この態様によれば、ガイド輪の旋回時においてガイド輪が誘い込まれることによる衝撃を和らげることができ、衝撃による走行車の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る走行車システムが備える走行車の例を示す側面図である。
図2】実施形態に係る走行車システムが備える走行車の例を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る格子状軌道の例を示す斜視図である。
図4】実施形態に係る格子状軌道の例を示す斜視図である。
図5】実施形態に係る単位ユニットの例を示す斜視図である。
図6】実施形態に係る連結部材の例を説明する図である。
図7】実施形態に係る連結部材の例を説明する図である。
図8】実施形態に係る連結部材の例を説明する図である。
図9】実施形態に係る連結部材の例を説明する図である。
図10】実施形態に係る走行部及び連結部の例を示す図である。
図11】実施形態に係る第1軌道、第2軌道、及び交差軌道と、ガイドローラとの位置関係の例を示す平面図である。
図12】実施形態に係る走行車輪を旋回させたときのガイド部(ガイドローラ)の例を示す平面図である。
図13】実施形態に係る格子状軌道とガイドローラとの位置関係の例を示す側面図である。
図14】実施形態に係る走行車の走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の例を示す図である。
図15】実施形態に係る走行車の走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の例を示す図である。
図16】実施形態に係る走行車の走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の例を示す図である。
図17】実施形態に係る走行車の走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の例を示す図である。
図18】実施形態に係る非当接面の他の例を示す図である。
図19】実施形態に係る単位ユニットの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。本発明は、以下で説明する形態に限定されない。図面では、実施形態を説明するために、一部分を拡大、縮小、又は強調して記載する等、縮尺を適宜変更して表現される場合がある。また、図面では、XYZ直交座標系を用いて図中の方向が説明される場合がある。XYZ直交座標系においては、水平方向をX方向、Y方向とし、鉛直方向をZ方向とする。X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向とは反対の方向が-方向であるとして説明する。また、垂直軸まわり又はZ軸まわりの旋回方向をθZ方向と表記する場合がある。
【0013】
図1は、実施形態に係る走行車システムが備える走行車の例を示す側面図である。図2は、実施形態に係る走行車システムが備える走行車の例を示す斜視図である。図3及び図4は、実施形態に係る格子状軌道の例を示す斜視図である。図5は、実施形態に係る単位ユニットの例を示す斜視図である。なお、図3では、説明を分かりやすくするために、格子状軌道を吊り下げる吊り下げ部材や、格子状軌道を接続する接続部等を含む上部側と、格子状軌道を含む下部側とに分けて、上部側と下部側とが重なる箇所を破線で示している。走行車100は、走行車システムSYSの軌道Rに沿って走行し、半導体ウエハを収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、又はレチクルを収容するレチクルポッド等の物品Mを搬送する。
【0014】
走行車システムSYSは、例えば、半導体製造工場等のクリーンルームにおいて、物品Mを走行車100により搬送するシステムである。走行車システムSYSにおいて、走行車100は、複数台用いられてもよい。複数台の走行車100によって物品Mを搬送することにより、高密度な搬送を可能とし、物品Mの搬送効率を向上させることが可能である。
【0015】
軌道Rは、軌道の一形態である。軌道Rは、例えば、クリーンルーム等の建屋の天井又は天井付近に敷設される吊り下げ式の格子状軌道である(図3及び図4参照)。以下、軌道Rを格子状軌道Rと呼ぶ場合がある。格子状軌道Rは、格子の1つのマス目に対応する単位ユニットUを備える(図5参照)。単位ユニットUは、第1方向D1に平行に延在する2本の第1軌道R1と、第1方向D1とは異なる第2方向D2に平行に延在する2本の第2軌道R2とを有する。また、単位ユニットUは、2本の第1軌道R1のそれぞれの第1方向D1への延長線と2本の第2軌道R2のそれぞれの第2方向D2への延長線との交差点に対応し、2本の第1軌道R1のそれぞれ及び2本の第2軌道R2のそれぞれと間隔を隔てて設けられた4個の交差軌道R3を有する。また、単位ユニットUは、4個の交差軌道R3のそれぞれを2本の第1軌道R1のそれぞれ及び2本の第2軌道R2のそれぞれと接続する接続部Cを有する。この「接続」は、単位ユニットU内で軌道同士を繋ぐことを意味し、単位ユニットUが完成した段階で「接続」は完了している。格子状軌道Rは、複数の単位ユニットUの連結によって形成され、連結された2個の単位ユニットU間で、4個の交差軌道R3のうち2個の交差軌道R3が連続している。この「連結」は、完成している単位ユニットU同士を繋ぐことを意味する。また、この「連続」は、走行車100が通過できるような位置関係に軌道同士が存在することを意味する。本実施形態では、第1方向D1と第2方向D2とが直交する。つまり、第1軌道R1(第1軌道R1の第1方向D1への延長線)と第2軌道R2(第2軌道R2の第2方向D2への延長線)とは、直交する位置関係に存在する。なお、図3及び図4では、格子状軌道Rの一部が示されている。格子状軌道Rは、図示された構成から第1方向D1(X方向)及び第2方向D2(Y方向)に同様の構成が連続して形成されてもよい。
【0016】
格子状軌道Rは、第1方向D1に連結された2個の単位ユニットU間で、2本の第2軌道R2のうち1本の第2軌道R2が当接する。また、格子状軌道Rは、第2方向D2に連結された2個の単位ユニットU間で、2本の第1軌道R1のうち1本の第1軌道R1が当接する。単位ユニットUは、4個の交差軌道R3のそれぞれの上方又は下方の位置で、他の単位ユニットUと連結可能である。複数の単位ユニットUの連結では、連結部材CPが用いられる。複数の単位ユニットUと、複数の単位ユニットUを連結する連結部材CPとは、吊り下げ部材Hによって不図示の天井等に吊り下げられる。
【0017】
第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差軌道R3は、それぞれ、走行車100の走行車輪21(走行輪)が走行する走行面R1a、R2a、R3aを有する。第1軌道R1と交差軌道R3との間、第2軌道R2と交差軌道R3との間には、それぞれ、間隙Dが形成される。間隙Dは、走行車100が第1軌道R1を走行して第2軌道R2を横切る際、又は、第2軌道R2を走行して第1軌道R1を横切る際に、走行車100の一部(例えば、後述する連結部30)が通過する部分である。このため、間隙Dは、連結部30が通過可能な幅に設定される。第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差軌道R3は、同一又はほぼ同一の水平面に沿って設けられる。これにより、走行面R1a、R2a、R3aは、同一又はほぼ同一の水平面上に配置される。
【0018】
格子状軌道Rは、第1ガイド面G1と、第2ガイド面G2とを有する。第1ガイド面G1は、単位ユニットUにおいて、2本の第1軌道R1のそれぞれに沿って設けられる。具体的には、第1ガイド面G1は、単位ユニットUにおいて、2本の第1軌道R1のそれぞれの側面に設けられ、後述するガイドローラ41(ガイド輪)を案内する。第2ガイド面G2は、単位ユニットUにおいて、2本の第2軌道R2のそれぞれに沿って設けられる。具体的には、第2ガイド面G2は、単位ユニットUにおいて、2本の第2軌道R2のそれぞれの側面に設けられ、後述するガイドローラ41を案内する。
【0019】
交差軌道R3は、第1接続ガイド面G3aと、第2接続ガイド面G3bと、非当接面G3cとを有する。具体的には、第1接続ガイド面G3aは、第1ガイド面G1と同一又はほぼ同一の高さ、且つ、同一又はほぼ同一の方向に設けられ、後述するガイドローラ41を案内する。すなわち、第1接続ガイド面G3aと第1ガイド面G1とは、同一の平面に含まれる。同様に、第2接続ガイド面G3bは、第2ガイド面G2と同一又はほぼ同一の高さ、且つ、同一又はほぼ同一の方向に設けられ、後述するガイドローラ41を案内する。すなわち、第2接続ガイド面G3bと第2ガイド面G2とは、同一の平面に含まれる。非当接面G3cは、第1接続ガイド面G3aと第2接続ガイド面G3bとを連続するように形成される。非当接面G3cは、後述するように、走行車100による走行方向の転換に伴うガイドローラ41の旋回時に、ガイドローラ41に当接しない形状である。例えば、非当接面G3cは、面取りが施されていることで、ガイドローラ41に当接しない。なお、交差軌道R3の第1接続ガイド面G3a、第2接続ガイド面G3b、及び非当接面G3cの詳細については後述する。
【0020】
図1及び図2に示すように、走行車100は、本体部10と、走行部20と、連結部30と、ガイド部40と、制御部50とを有する。制御部50は、走行車100の各部の動作を統括的に制御する。制御部50は、本体部10に設けられる場合を例に挙げるが、本体部10の外部に設けられてもよい。本体部10は、格子状軌道Rの下方(-Z側)に配置される。本体部10は、平面視で、例えば矩形状に形成される。本体部10は、平面視で格子状軌道Rにおける格子の1つのマス目に対応する単位ユニットUに収まる寸法に形成される。このため、走行車システムSYSでは、所定の単位ユニットUを走行している走行車100と、所定の単位ユニットUに隣接する単位ユニットUを走行している他の走行車100とがすれ違うスペースを確保できる。本体部10は、上部ユニット17と、移載装置18とを備える。上部ユニット17は、連結部30を介して走行部20から吊り下げられる。上部ユニット17は、例えば平面視で矩形状であり、上面17aに4つのコーナー部10aを有する。
【0021】
本体部10は、4つのコーナー部10aのそれぞれに走行車輪21、連結部30、方向転換機構34、及びガイド部40を有する。この構成において、本体部10の4つのコーナー部10aに配置された走行車輪21により、本体部10を安定して吊り下げることができ、且つ、本体部10を安定して走行させることができる。また、本体部10の4つのコーナー部10aに配置されたガイド部40により、格子状軌道Rに対する本体部10の第1方向D1又は第2方向D2の位置ずれ、及び格子状軌道Rに対する本体部10の垂直軸まわりの位置ずれを効果的に抑制することが可能である。なお、ガイド部40の詳細については後述する。
【0022】
移載装置18は、上部ユニット17の下方に設けられる。移載装置18は、Z方向(鉛直方向)の回転軸AX1まわりに回動可能である。移載装置18は、物品Mを保持する物品保持部13と、物品保持部13を鉛直方向に昇降させる昇降駆動部14と、昇降駆動部14を水平方向にスライド移動させる横出し機構11と、横出し機構11を保持する回動部12とを有する。物品保持部13は、物品Mのフランジ部Maを把持することにより、物品Mを吊り下げて保持する。物品保持部13は、例えば、水平方向に移動可能な爪部13aを有するチャックであり、爪部13aを物品Mのフランジ部Maの下方に進入させ、物品保持部13を上昇させることで、物品Mを保持する。物品保持部13は、ワイヤ又はベルト等の吊り下げ部材13bに接続される。
【0023】
昇降駆動部14は、例えばホイストであり、吊り下げ部材13bを繰り出すことにより物品保持部13を下降させ、吊り下げ部材13bを巻き取ることにより物品保持部13を上昇させる。昇降駆動部14は、制御部50に制御され、所定の速度で物品保持部13を下降又は上昇させる。また、昇降駆動部14は、制御部50に制御され、物品保持部13を目標の高さに保持する。
【0024】
横出し機構11は、例えばZ方向に重ねて配置された複数の可動板を有する。可動板は、Y方向に相対的に移動可能である。最下層の可動板には、昇降駆動部14が取り付けられる。横出し機構11は、不図示の駆動装置により可動板を移動させ、最下層の可動板に取り付けられた昇降駆動部14及び物品保持部13を、例えば走行方向に対して直交する水平方向に横出しさせる(スライド移動させる)ことができる。
【0025】
回動部12は、横出し機構11と上部ユニット17との間に設けられる。回動部12は、回動部材12aと、回動駆動部12bとを有する。回動部材12aは、鉛直方向の軸まわり方向に回動可能に設けられる。回動部材12aは、横出し機構11を支持する。回動駆動部12bは、例えば電動モータ等が用いられ、回動部材12aを回転軸AX1の軸まわり方向に回動させる。回動部12は、回動駆動部12bからの駆動力によって回動部材12aを回動させ、横出し機構11(昇降駆動部14及び物品保持部13)を回転軸AX1の軸まわり方向に回転させることができる。
【0026】
また、図1及び図2に示すように、移載装置18及び移載装置18に保持される物品Mを囲むようにカバーWが設けられてもよい。カバーWは、下端を開放した筒状であって、且つ、横出し機構11の可動板が突出する部分を切り欠いた形状を有する。カバーWは、上端が回動部12の回動部材12aに取り付けられており、回動部材12aの回動に伴って回転軸AX1の軸まわりに回動する。
【0027】
走行部20は、走行車輪21と、補助車輪22とを有する。走行車輪21は、上部ユニット17(本体部10)の上面17aの4つのコーナー部10aにそれぞれ配置される。走行車輪21のそれぞれは、連結部30に設けられた車軸21aに取り付けられる。車軸21aは、XY平面に沿って平行又はほぼ平行に設けられる。走行車輪21のそれぞれは、後述する走行駆動部33の駆動力により回転駆動する。走行車輪21のそれぞれは、格子状軌道Rにおいて、第1軌道R1、第2軌道R2、及び交差軌道R3の走行面R1a、R2a、R3aを転動し、走行車100を走行させる。なお、4つの走行車輪21の全てが走行駆動部33の駆動力により回転駆動することに限定されず、4つの走行車輪21のうち一部について回転駆動させる構成であってもよい。
【0028】
走行車輪21は、旋回軸AX2を中心としてθZ方向に旋回可能に設けられる。走行車輪21は、後述する方向転換機構34によってθZ方向に旋回し、その結果、走行車100の走行方向を変更させることができる。補助車輪22は、走行車輪21の走行方向の前後にそれぞれ1つずつ配置される。補助車輪22のそれぞれは、走行車輪21と同様に、XY平面に沿って平行又はほぼ平行な車軸22aの軸まわりに回転可能である。補助車輪22の下端は、走行車輪21の下端より高くなるように設定される。従って、走行車輪21が走行面R1a、R2a、R3aを走行しているときは、補助車輪22は、走行面R1a、R2a、R3aに接触しない。また、走行車輪21が間隙Dを通過する際には、補助車輪22が走行面R1a、R2a、R3aに接触して、走行車輪21の落ち込みを抑制する。なお、1つの走行車輪21に2つの補助車輪22を設けることに限定されず、例えば、1つの走行車輪21に1つの補助車輪22が設けられてもよいし、補助車輪22が設けられなくてもよい。
【0029】
連結部30は、本体部10の上部ユニット17と走行部20とを連結する。連結部30は、上部ユニット17(本体部10)の上面17aの4つのコーナー部10aにそれぞれ設けられる。この連結部30によって本体部10は、走行部20から吊り下げられた状態となり、格子状軌道Rより下方に配置される。連結部30は、支持部材31と、接続部材32とを有する。支持部材31は、走行車輪21の回転軸及び補助車輪22の回転軸を回転可能に支持する。支持部材31により、走行車輪21と補助車輪22との相対位置を保持する。支持部材31は、例えば板状に形成され、間隙Dを通過可能な厚さに形成される。
【0030】
接続部材32は、支持部材31から下方に延びて上部ユニット17の上面17aに連結され、上部ユニット17を保持する。接続部材32は、後述する走行駆動部33の駆動力を走行車輪21に伝達する伝達機構を内部に備える。この伝達機構は、チェーン又はベルトが用いられる構成であってもよいし、歯車列が用いられる構成であってもよい。接続部材32は、旋回軸AX2を中心としてθZ方向に旋回可能に設けられる。この接続部材32が旋回軸AX2を中心として旋回することで、支持部材31を介して走行車輪21を旋回軸AX2まわりのθZ方向に旋回させることができる。
【0031】
連結部30には、走行駆動部33と、方向転換機構34とが設けられる。走行駆動部33は、接続部材32に装着される。走行駆動部33は、走行車輪21を駆動する駆動源であり、例えば電気モータ等が用いられる。4つの走行車輪21は、それぞれ走行駆動部33によって駆動されて駆動輪となる。4つの走行車輪21は、同一又はほぼ同一の回転数となるように制御部50によって制御される。なお、4つの走行車輪21のうちいずれかを駆動輪として用いない場合は、駆動輪として用いない走行車輪21に対応する接続部材32に走行駆動部33は装着されない。
【0032】
方向転換機構34は、連結部30の接続部材32を、旋回軸AX2を中心として旋回させることにより、走行車輪21を旋回軸AX2まわりのθZ方向に旋回させる。走行車輪21をθZ方向に旋回させることにより、走行車100の走行方向を第1方向D1とする第1状態から走行方向を第2方向D2とする第2状態に、又は、走行方向を第2方向D2とする第2状態から走行方向を第1方向D1とする第1状態に切り替えることが可能である。
【0033】
方向転換機構34は、駆動源35と、ピニオンギア36と、ラック37とを有する。駆動源35は、走行駆動部33において旋回軸AX2から離れた側面に取り付けられる。駆動源35は、例えば電気モータ等が用いられる。ピニオンギア36は、駆動源35の下面側に取り付けられ、駆動源35で発生した駆動力によりθZ方向に回転駆動する。ピニオンギア36は、平面視で円形状であり、外周の周方向に複数の歯を有する。ラック37は、上部ユニット17の上面17aに固定される。ラック37は、上部ユニット17の上面17aの4つのコーナー部10aにそれぞれ設けられ、走行車輪21の旋回軸AX2を中心とした円弧状(扇形状)に設けられる。ラック37は、外周の周方向に、ピニオンギア36の歯と噛み合う複数の歯を有する。
【0034】
ピニオンギア36及びラック37は、互いの歯が噛み合った状態で配置される。ピニオンギア36がθZ方向に回転することにより、ラック37の外周に沿うようにピニオンギア36が旋回軸AX2を中心とする円周方向に移動する。このピニオンギア36の移動より、接続部材32が旋回し、走行駆動部33及び方向転換機構34がピニオンギア36とともに旋回軸AX2を中心とする円周方向に旋回する。
【0035】
方向転換機構34の旋回により、上面17aの4つのコーナー部10aに配置された走行車輪21及び補助車輪22のそれぞれが旋回軸AX2を中心としてθZ方向に90度の範囲で旋回する。方向転換機構34の駆動は、制御部50によって制御される。制御部50は、4つの走行車輪21の旋回動作を同一のタイミングで行うように指示してもよいし、異なるタイミングで行うように指示してもよい。走行車輪21及び補助車輪22を旋回させることにより、走行車輪21が第1軌道R1及び第2軌道R2の一方に接触した状態から他方に接触した状態に移行する。換言すれば、走行車輪21の回転軸の方向が第1方向D1及び第2方向D2の一方とされた状態から他方とされる状態に移行する。このため、走行車100の走行方向を第1方向D1(X方向)とする第1状態と、走行方向を第2方向D2(Y方向)とする第2状態とで切り替えることができる。
【0036】
図6図9は、実施形態に係る連結部材の例を説明する図である。なお、実施形態では、上側(+Z側)に配置される連結部材CPを連結部材CP1とし、下側(-Z側)に配置される連結部材CPを連結部材CP2として説明するが、特に区別しない場合は連結部材CPと呼ぶ。図6は、複数の単位ユニットU(格子状軌道R)を連結する連結部材CPを側面から見た図である。図6に示すように、連結部材CP1は、接続部Cの上部に、複数の単位ユニットUを連結可能に設けられる。具体的には、1つの連結部材CP1は、4つの接続部Cを連結することで、4つの単位ユニットUを連結可能である。また、連結部材CP2は、交差軌道R3の下部に、複数の単位ユニットUを連結可能に設けられる。具体的には、1つの連結部材CP2は、それぞれ異なる単位ユニットUの交差軌道R3の4つを連結することで、4つの単位ユニットUを連結可能である。なお、連結部材CPの中央部には、吊り下げ部材Hが貫通する。これらにより、格子状軌道Rは、天井等から吊り下げられた状態になる。
【0037】
図7は、連結部材CP1の平面図である。図8は、連結部材CP2の平面図である。なお、図7及び図8では、単位ユニットUの接続部Cを破線で示している。図7に示すように、連結部材CP1には、吊り下げ部材Hを通す吊り下げ部材用の孔Hh1と、接続部Cにピンを通すピン用の孔Pha1と、連結部材CP1と接続部Cとをボルト等の部材で固定するボルト用の孔Bha1、Bhb1とを有する。孔Pha1、孔Bha1、及び孔Bhb1は、1つの連結部材CP1において4つ配置される。また、図7に示す4つの連結部材CP1は、それぞれ同様の構成である。なお、連結部材CP1の形状等は一例であり、図示のとおりに形成されなくてもよい。図8に示すように、連結部材CP2には、吊り下げ部材Hを通す吊り下げ部材用の孔Hh2と、交差軌道R3にピンを通すピン用の孔Pha2と、連結部材CP2と交差軌道R3(さらには接続部C)とをボルト等の部材で固定するボルト用の孔Bha2とを有する。孔Pha2と孔Bha2とは、1つの連結部材CP2において4つ配置される。また、図8に示す4つの連結部材CP2は、それぞれ同様の構成である。なお、連結部材CP2の形状等は一例であり、図示のとおりに形成されなくてもよい。
【0038】
図9は、連結部材CPにピンを通す例を示す側面図である。図9に示すように、連結部材CP1を介して接続部Cに通すピンP1は、接続部Cに形成された止まり孔Ha1(突き抜けていない孔)と嵌合する。また、連結部材CP2を介して軌道R(交差軌道R3)に通すピンP2は、軌道Rに形成された止まり孔Ha2と嵌合する。連結部材CP1と連結部材CP2とで、上下方向(Z方向)において異なる位置にピンP1、P2を配置する場合、単位ユニットUは、ピンP1、P2を中心に回転することはなく、連結部材CP1、CP2の中心が回転中心となる。また、図9とは異なり、例えば連結部材CP1と連結部材CP2とで、上下方向(Z方向)において同位置にピンP1、P2を配置してもよい。上下方向において同位置にピンP1、P2を配置する場合、単位ユニットUは、ピンP1、P2を中心に回転可能である。このように、ピンP1、P2の位置は、いずれの位置であってもよい。
【0039】
図10は、実施形態に係る走行部及び連結部の例を示す図である。図10Aは平面図であり、図10Bは正面図である。図10に示すように、連結部30の支持部材31には、ガイド部収容部31aが設けられる。ガイド部40は、格子状軌道Rに対する連結部30の位置ずれを抑制し、ひいては格子状軌道Rに対する本体部10の位置ずれを抑制する。ガイド部40は、本体部10の上面17aの4つのコーナー部10aに配置されるそれぞれの連結部30に設けられる(図1及び図2参照)。ガイド部40は、走行車輪21が第1軌道R1を走行する第1状態においては、第1ガイド面G1及び第1接続ガイド面G3aに沿って移動する。ガイド部40は、走行車輪21が第2軌道R2を走行する第2状態においては、第2ガイド面G2及び第2接続ガイド面G3bに沿って移動する。本体部10が走行中である状況において、ガイド部40は、第1ガイド面G1又は第2ガイド面G2に当接した状態であってもよいし、第1ガイド面G1又は第2ガイド面G2に対して間隙を空けた状態であってもよい。
【0040】
ガイド部40は、支持部材31のガイド部収容部31aに収容されるガイドローラ41を有する。ガイドローラ41は、ガイド部収容部31aに収容され、-X側の端部がガイド部収容部31aから突出した状態で配置される。ガイドローラ41は、ローラ軸41aによりZ軸まわりに回転可能に支持される。ローラ軸41aは、ガイド部収容部31aの内部に固定され、Z方向に平行に配置される。
【0041】
なお、ローラ軸41aは、例えば弾性部材により支持される構成でもよい。この構成により、ガイドローラ41は、X方向に移動可能且つ回転可能に支持され、ガイドローラ41が第1ガイド面G1等に当たった衝撃を弾性部材により吸収することができる。また、ガイドローラ41は、ガイドローラ41を回転させる駆動源を有しない従動ローラである。但し、ガイドローラ41を本体部10の走行方向に合わせて回転駆動させる駆動部を備えてもよい。
【0042】
ガイドローラ41は、走行車輪21の車軸21aと、本体部10との間の高さの位置に配置される。なお、第1ガイド面G1及び第2ガイド面G2は、走行車輪21の車軸21aと、本体部10との間の高さの位置に配置される。ガイドローラ41は、連結部30において、第1ガイド面G1及び第2ガイド面G2の高さに対応した位置に配置される。ガイドローラ41が、走行車輪21の車軸21aと、本体部10との間の高さの位置に配置されることにより、連結部30又は走行部20における上下方向の寸法が高くなることが抑制され、建屋等の天井近傍におけるスペース効率の低下が防止される。
【0043】
ローラ軸41aが連結部30に設けられることから、ガイド部40(ガイドローラ41)は、方向転換機構34により走行車輪21の向きを変更する際、すなわち、方向転換機構34により連結部30を旋回させる際、走行車輪21の旋回とともに旋回軸AX2まわりに旋回する。従って、走行車輪21が第1軌道R1を走行する第1状態では、ガイドローラ41は、第1ガイド面G1及び第1接続ガイド面G3aに対向した状態となる。また、走行車輪21が第2軌道R2を走行する第2状態では、ガイドローラ41は、第2ガイド面G2及び第2接続ガイド面G3bに対向した状態となる。このように、走行車輪21の走行状態を切り換えるための方向転換機構34を用いて、ガイドローラ41を旋回させるため、ガイドローラ41を旋回させるための別の機構を設ける必要がなく、本体部10の構成が複雑になるのを防止できる。
【0044】
図11は、実施形態に係る第1軌道、第2軌道、及び交差軌道と、ガイドローラとの位置関係の例を示す平面図である。図12は、実施形態に係る走行車輪を旋回させたときのガイド部(ガイドローラ)の例を示す平面図である。図11及び図12では、支持部材31のガイド部収容部31aの記載を省略する。図11及び図12に示すように、ガイドローラ41は、支持部材31のガイド部収容部31aから突出した部分が、第1軌道R1の側面である第1ガイド面G1、第2軌道R2の側面である第2ガイド面G2、及び、交差軌道R3の側面である第1接続ガイド面G3aと第2接続ガイド面G3bとに接触可能である。ここで、ガイドローラ41は、交差軌道R3において例えば面取りが施された非当接面G3cには当接しない。非当接面G3cは、第1接続ガイド面G3aから第2接続ガイド面G3bにガイドローラ41が移動する際に、ガイドローラ41が当接しない形状であればよく、例えば当接しない程度の面取りが施されている。例えば、図11及び図12において、非当接面G3cは、二段の面取りで、各面取りの接続が滑らかな形状である場合を例に挙げる。
【0045】
図11に示すように、本体部10が第1方向D1に走行する場合(走行車輪21が第1軌道R1上を転動する第1状態である場合)、ガイドローラ41は、第1ガイド面G1又は第1接続ガイド面G3aに沿って移動する。この第1状態において、ガイドローラ41は、ガイド部収容部31aから突出した部分が第1ガイド面G1及び第1接続ガイド面G3aに接触可能である。なお、ガイドローラ41は、第1ガイド面G1及び第1接続ガイド面G3aに接触した際に回転可能であるため、本体部10の走行中において接触時の摩擦抵抗が軽減され、パーティクルの発生を抑制しつつ、走行駆動部33の負担が増加することを抑制できる。
【0046】
なお、図11に示す状態で本体部10が第2方向D2に移動した場合、ガイドローラ41が第1ガイド面G1又は第1接続ガイド面G3aに当たることにより、本体部10の第2方向D2への位置ずれが規制される。すなわち、本体部10には、第2方向D2に一対のガイドローラ41があり、相対向する第1ガイド面G1又は第1接続ガイド面G3aにガイドローラ41が当接するため、本体部10の+Y方向及び-Y方向への位置ずれが抑制される。従って、本体部10の第1方向D1の走行中はもちろん、本体部10が格子状軌道Rのいずれかに停止しているときも、第2方向D2への位置ずれを規制できる。
【0047】
図12に示すように、方向転換機構34は、本体部10が第1方向D1に走行している状態から、本体部10を第2方向D2に沿って走行させる場合(走行車輪21が第2軌道R2上を転動する第2状態とする場合)、走行車輪21を旋回させる。このとき、ガイドローラ41は、方向転換機構34により連結部30が旋回することにより、旋回軸AX2まわりに旋回する。具体的には、ガイドローラ41は、第1接続ガイド面G3aから第2接続ガイド面G3bに移動する。このとき、ガイドローラ41は、例えば面取りが施された非当接面G3cに当接することなく、第1接続ガイド面G3aから第2接続ガイド面G3bに移動する。
【0048】
図12に示すように、ガイドローラ41が第2接続ガイド面G3bに沿った状態に移動することにより、本体部10は、本体部10を第2方向D2に沿って走行可能な状態(走行車輪21が第2軌道R2上を転動する第2状態)となる。この第2状態において、ガイドローラ41は、ガイド部収容部31aから突出した部分が第2ガイド面G2及び第2接続ガイド面G3bに接触可能である。なお、ガイドローラ41は、第2ガイド面G2及び第2接続ガイド面G3bに接触した際に回転可能であるため、本体部10の走行中において接触時の摩擦抵抗が軽減され、走行駆動部33の負担が増加することを抑制できる。
【0049】
なお、図12に示す状態で本体部10が第1方向D1に移動した場合、ガイドローラ41が第2ガイド面G2又は第2接続ガイド面G3bに当たることにより、本体部10の第1方向D1への位置ずれが規制される。すなわち、本体部10には、第1方向D1に一対のガイドローラ41があり、相対向する第2ガイド面G2又は第2接続ガイド面G3bにガイドローラ41が当接するため、本体部10の+X方向及び-X方向への位置ずれが抑制される。従って、本体部10の第2方向D2の走行中はもちろん、本体部10が格子状軌道Rのいずれかに停止しているときも、第1方向D1への位置ずれを抑制できる。
【0050】
図13は、実施形態に係る格子状軌道とガイドローラとの位置関係の例を示す側面図である。図13に示すように、4つのガイドローラ41のうち走行方向に並ぶ2つのガイドローラ41の間隔L1は、第1方向D1又は第2方向D2において隣り合う間隙Dの間隔L2とは異なるように設定される。この構成により、走行方向に並ぶ2つのガイドローラ41が同時に間隙Dに位置する状態を防止できる。図13に示す例では、ガイドローラ41の間隔L1が間隙Dの間隔L2よりも大きい場合を示しているが、この形態に限定されず、ガイドローラ41の間隔L1が間隙Dの間隔L2よりも小さくてもよい。
【0051】
次に、実施形態に係る走行車システムSYSにおいて、走行車100が走行方向を変更する場合を説明する。図14図17は、実施形態に係る走行車の走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の例を示す図である。図14に示すように、第1軌道R1を第1方向D1(+X方向又は-X方向)へ走行する走行車100の本体部10が、格子状軌道Rの1つの単位ユニットUに達した位置(4つのコーナー部10aが交差軌道R3に差し掛かった位置)で走行車100は停止する。すなわち、制御部50は、上記の位置で走行駆動部33の駆動を停止させる。このとき、4つの走行車輪21は、いずれも交差軌道R3に接触した状態である。また、4つのガイドローラ41は、それぞれ交差軌道R3の第1接続ガイド面G3aに沿った位置に配置される。
【0052】
図15に示すように、制御部50は、方向転換機構34を駆動して連結部30を旋回させ、4つのコーナー部10aに配置された走行車輪21及び補助車輪22のそれぞれを、旋回軸AX2を中心としてθZ方向に旋回させる。このとき、対角に位置する走行車輪21等は同一方向に旋回する。例えば、4つの走行車輪21のうち、図中左上の走行車輪21等と、図中右下の走行車輪21等は時計まわりに旋回する。一方、図中右上の走行車輪21等と、図中左下の走行車輪21等は反時計まわりに旋回する。なお、このような旋回動作は、同一のタイミングで行われてもよいし異なるタイミングで行われてもよい。例えば、図中左上及び右下の走行車輪21等を先に同時に旋回させ、その後、図中右上及び左下の走行車輪21等を同時に旋回させてもよい。
【0053】
走行車輪21及び補助車輪22の旋回時において、4つのガイドローラ41は、連結部30と一体となってそれぞれ旋回軸AX2まわりに旋回し、非当接面G3cに当接することなく移動する。また、走行車輪21等の旋回とガイドローラ41の旋回とを、共通の方向転換機構34により行うため、ガイドローラ41の方向を転換するための構成を別途設けなくてもよく、本体部10の構成が複雑になるのを回避している。
【0054】
図16は、実施形態に係る旋回時におけるガイドローラの例を示す図である。図16に示すように、4つの走行車輪21の旋回動作を同一のタイミングで行うことにより、連結部30に設けられる4つのガイドローラ41は、同期してその向きを変える。この結果、本体部10は、走行車輪21の旋回動作時(ステアリング時)において、ガイドローラ41のそれぞれが交差軌道R3(非当接面G3c)に当接しないように構成されることで、当接させる誘い込み形状を設ける場合と比較して、旋回時の衝撃を和らげることができる。換言すると、本体部10は、旋回時にガイドローラ41が交差軌道R3(非当接面G3c)に当接しないため、ガイドローラ41を交差軌道R3(非当接面G3c)に当接させる誘い込み形状を設ける場合と比較して、誘い込みに起因する衝撃を和らげ、衝撃に起因する位置ずれの発生を抑制することができる。
【0055】
図17に示すように、制御部50は、各走行車輪21等がそれぞれθZ方向に90度旋回した後、方向転換機構34の駆動を停止させる。この状態で走行駆動部33を駆動することにより、走行車100は、第2方向D2(+Y方向又は-Y方向)に走行可能となる。なお、4つのガイドローラ41は、それぞれ交差軌道R3の第2接続ガイド面G3bに沿った位置に配置される。また、本体部10は、走行車輪21等が旋回した場合でも旋回しない。従って、走行車100が第1方向D1に走行する場合、又は、第2方向D2に走行する場合のいずれであっても、本体部10の向きは変更されない。
【0056】
図18は、実施形態に係る非当接面の他の例を示す図である。図18Aに示すように、交差軌道R3の非当接面G3cは、上述した二段の面取りとは異なる一段の面取りが施されてもよい。図18Aでは、上述した二段の面取りを破線で表している。一段の面取りが施された非当接面G3cは、上述した実施形態と同様に、旋回時にガイドローラ41に当接しない。図18Bに示すように、交差軌道R3の非当接面G3cは、その全体が曲面で形成されてもよい。このとき、非当接面G3cは、上述した実施形態と同様に、旋回時にガイドローラ41に当接しない。図18Bでは、旋回時にガイドローラ41に当接する連続面を破線で表している。非当接面G3cの形状は、ガイドローラ41の旋回時に、ガイドローラ41に当接しない形状であればよいが、補助車輪22が走行面R1a、R2a、R3aに接触して、走行車輪21の落ち込みを抑制しているため、好ましくは、走行車輪21の落ち込みを抑制できる程度の面取りや曲面で形成される。
【0057】
図19は、実施形態に係る単位ユニットの構成例を示す図である。図19A図19Cに示すように、単位ユニットU(単位ユニットUの上部、接続部C)は、いくつかの部材により構成される。各部材同士は、ボルト等により直接連結される。例えば、図19Aに示すように、単位ユニットU(単位ユニットUの上部、接続部C)は、一方の第1軌道R1及び1つの交差軌道R3を含む部材、他方の第1軌道R1及び1つの交差軌道R3を含む部材、一方の第2軌道R2及び1つの交差軌道R3を含む部材、他方の第2軌道R2及び1つの交差軌道R3を含む部材の組み合わせで構成されてもよい。例えば、図19Bに示すように、単位ユニットU(単位ユニットUの上部、接続部C)は、一方の第1軌道R1を含む部材、他方の第1軌道R1を含む部材、一方の第2軌道R2を含む部材、他方の第2軌道R2を含む部材、1つの交差軌道R3を含む4つの部材の組み合わせで構成されてもよい。例えば、図19Cに示すように、単位ユニットU(単位ユニットUの上部、接続部C)は、一方の第1軌道R1を含む部材、他方の第1軌道R1を含む部材、一方の第2軌道R2及び2つの交差軌道R3を含む部材、他方の第2軌道R2及び2つの交差軌道R3を含む部材の組み合わせで構成されてもよい。図19A図19Cは一例であり、いくつの部材で単位ユニットUを構成してもよい。
【0058】
このように、実施形態に係る走行車システムSYSによれば、単位ユニットUを格子状軌道Rの格子の1つのマス目として、複数の単位ユニットUの連結により格子状軌道Rが形成されるので、格子の形状を均一にしやすく、天井等からの据付位置の調整を要することなく、吊り下げられる軌道の設置が容易である。また、隣接する2個の単位ユニットU間で、第1軌道R1同士、第2軌道R2同士が当接するので、単位ユニットUが軌道で(点ではなく線又は面で)接するため、隣接する単位ユニットU間の位置関係が定まりやすく、走行車100が格子状軌道Rを走行するときの振動への影響を少なくすることができる。また、4個の交差軌道R3のそれぞれの上方又は下方の位置で、他の単位ユニットUと連結する連結部材CPを有するので、より多くの単位ユニットU(4つの単位ユニットU)をより少ない数の連結部材CPで連結することで、単位ユニットU間の位置精度が高く、連結にかかる手間を削減でき、連結を容易に行うことができる。また、4個の交差軌道R3のそれぞれのガイド面において、旋回時にガイドローラ41に当接しない非当接面G3cを含むので、ガイドローラ41の旋回時においてガイドローラ41が誘い込まれることによる衝撃を和らげることができ、衝撃による走行車100の位置ずれを抑制することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは当業者において明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。上述した実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述した実施形態等で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述した実施形態等で引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。例えば、格子状軌道Rの形状は、正方形ではなく(正方形だけではなく)、長方形や平行四辺形であってもよい。また、ガイドローラ41は含まれなくてもよい。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、日本特許出願である特願2021-093833、及び上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0061】
C・・・接続部
CP・・・連結部材
D・・・間隙
D1・・・第1方向
D2・・・第2方向
G1・・・第1ガイド面
G2・・・第2ガイド面
G3a・・・第1接続ガイド面
G3b・・・第2接続ガイド面
G3c・・・非当接面
R・・・格子状軌道
R1・・・第1軌道
R2・・・第2軌道
R3・・・交差軌道
SYS・・・走行車システム
U・・・単位ユニット
21・・・走行車輪(走行輪)
41・・・ガイドローラ(ガイド輪)
100・・・走行車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19