(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】遠心圧縮機および過給機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/46 20060101AFI20240709BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F04D29/46 C
F04D29/66 J
F04D29/66 N
(21)【出願番号】P 2023527493
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2022006328
(87)【国際公開番号】W WO2022259625
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2021096936
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米村 淳
(72)【発明者】
【氏名】崎坂 亮太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】猪又 諒祐
(72)【発明者】
【氏名】神澤 大基
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-536939(JP,A)
【文献】特開2018-059482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16;17/00-19/02;21/00-25/16;29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気流路を含むハウジングと、
前記吸気流路に配され、複数の羽根を有するコンプレッサインペラと、
前記ハウジングのうち前記羽根よりも吸気の流れにおいて上流側に形成される収容室と、
前記収容室に配され、前記吸気流路内に突出する突出位置と、前記吸気流路から退避した退避位置とに移動可能な可動部材と、
前記可動部材のうち、内径面および前記羽根
の近くの側面に跨って形成された1または複数の溝と、
前記溝と前記コンプレッサインペラの周方向に隣り合う位置に形成される1または複数の突起と、
を備える遠心圧縮機。
【請求項2】
前記溝は、前記コンプレッサインペラの周方向に配列された複数の球形状の溝を含む、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記溝は、前記コンプレッサインペラの周方向に配列された複数の円弧状の周溝を含む、請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記複数の溝は、前記周方向に互いに離隔して形成される、請求項2または3に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記複数の溝は、前記周方向に不等間隔で形成される、請求項2から4のいずれか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の遠心圧縮機を備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機および過給機に関する。本出願は2021年6月9日に提出された日本特許出願第2021-96936号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、吸気流路が形成されたコンプレッサハウジングを備える。吸気流路には、コンプレッサインペラが配される。コンプレッサインペラに流入する空気の流量が減少すると、コンプレッサインペラで圧縮された空気が吸気流路を逆流し、サージングと呼ばれる現象が発生する。
【0003】
特許文献1には、コンプレッサハウジングに絞り機構を設ける遠心圧縮機について開示がある。絞り機構は、可動部材を備える。可動部材は、吸気流路内に突出する突出位置と、吸気流路から退避する退避位置とに移動可能に構成される。絞り機構は、可動部材を吸気流路内に突出させることで、吸気流路の流路断面積を小さくする。可動部材が吸気流路内に突出すると、吸気流路内を逆流する空気は、可動部材により堰き止められる。吸気流路内を逆流する空気が堰き止められることで、サージングが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2019/264710号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸気流路内を逆流する空気には、コンプレッサインペラの回転に伴う旋回流成分が含まれる。特許文献1に記載のように、吸気流路内を逆流する空気を可動部材により堰き止めた場合、逆流する空気の旋回流成分によりコンプレッサインペラのリーディングエッジ近傍の流れが乱され、空力音と思われる騒音が発生するおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、騒音を低減することが可能な遠心圧縮機および過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る遠心圧縮機は、吸気流路を含むハウジングと、吸気流路に配され、複数の羽根を有するコンプレッサインペラと、ハウジングのうち羽根よりも吸気の流れにおいて上流側に形成される収容室と、収容室に配され、吸気流路内に突出する突出位置と、吸気流路から退避した退避位置とに移動可能な可動部材と、可動部材のうち、内径面および羽根の近くの側面に跨って形成された1または複数の溝と、溝とコンプレッサインペラの周方向に隣り合う位置に形成される1または複数の突起と、を備える。
【0008】
溝は、コンプレッサインペラの周方向に配列された複数の球形状の溝を含んでもよい。
【0009】
溝は、コンプレッサインペラの周方向に配列された複数の円弧状の周溝を含んでもよい。
【0010】
複数の溝は、周方向に離隔して形成されてもよい。
【0011】
複数の溝は、周方向に不等間隔で形成されてもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本開示の過給機は、上記の遠心圧縮機を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る過給機の概略断面図である。
【
図3】
図3は、リンク機構を構成する部材の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る可動部材の概略斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4中、可動部材を径方向内側から見た内径面を示す図である。
【
図7】
図7は、リンク機構の動作を説明するための第1の図である。
【
図8】
図8は、リンク機構の動作を説明するための第2の図である。
【
図9】
図9は、リンク機構の動作を説明するための第3の図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る可動部材の概略斜視図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る可動部材の概略斜視図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態に係る可動部材の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る過給機TCの概略断面図である。
図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。
図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。過給機TCのうち、後述するコンプレッサハウジング100側は、遠心圧縮機CCとして機能する。以下では、遠心圧縮機CCは、後述するタービンインペラ8により駆動されるものとして説明する。ただし、これに限定されず、遠心圧縮機CCは、不図示のエンジンにより駆動されてもよいし、不図示の電動機(モータ)により駆動されてもよい。このように、遠心圧縮機CCは、過給機TC以外の装置に組み込まれてもよいし、単体であってもよい。
【0017】
図1に示すように、過給機TCは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング2と、タービンハウジング4と、コンプレッサハウジング(ハウジング)100と、リンク機構200とを含む。リンク機構200の詳細については、後述する。ベアリングハウジング2の左側には、締結ボルト3によってタービンハウジング4が連結される。ベアリングハウジング2の右側には、締結ボルト5によってコンプレッサハウジング100が連結される。
【0018】
ベアリングハウジング2には、収容孔2aが形成される。収容孔2aは、ベアリングハウジング2を過給機TCの左右方向に貫通する。収容孔2aには、軸受6が配される。
図1では、軸受6の一例としてフルフローティング軸受を示す。ただし、軸受6は、セミフローティング軸受や転がり軸受など、他のラジアル軸受であってもよい。収容孔2aには、シャフト7の一部が配される。シャフト7は、軸受6によって回転可能に支持される。シャフト7の左端部には、タービンインペラ8が設けられる。タービンインペラ8は、タービンハウジング4内に回転可能に収容される。シャフト7の右端部には、コンプレッサインペラ9が設けられる。本開示において、シャフト7、タービンインペラ8およびコンプレッサインペラ9の回転軸方向、径方向および周方向は、それぞれ単に回転軸方向、径方向および周方向と称され得る。コンプレッサインペラ9は、コンプレッサハウジング100内に回転可能に収容される。コンプレッサインペラ9は、ハブの外周面に形成された複数の長羽根9aおよび複数の短羽根9bを有する。複数の長羽根9aおよび短羽根9bは、周方向において交互に離隔して形成される。複数の長羽根9aおよび短羽根9bは、周方向に等間隔で形成される。長羽根9aのリーディングエッジLEは、短羽根9bのリーディングエッジLEに対し、ベアリングハウジング2から離隔する側に位置する。換言すれば、短羽根9bのリーディングエッジLEは、長羽根9aのリーディングエッジLEに対し、ベアリングハウジング2に近接する側に位置する。本実施形態では、コンプレッサインペラ9は、長羽根9aおよび短羽根9bを有するが、これに限定されず、コンプレッサインペラ9は、長羽根9aおよび短羽根9bのうちいずれか一方のみを有してもよい。
【0019】
コンプレッサハウジング100には、吸気口10が形成される。吸気口10は、過給機TCの右側に開口する。吸気口10は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング100の間には、ディフューザ流路11が形成される。ディフューザ流路11は、空気を加圧する。ディフューザ流路11は、径方向の内側から外側に向けて環状に形成される。ディフューザ流路11は、径方向の内側において、コンプレッサインペラ9を介して吸気口10に連通している。
【0020】
また、コンプレッサハウジング100には、コンプレッサスクロール流路12が形成される。コンプレッサスクロール流路12は、例えば、コンプレッサインペラ9よりも径方向の外側に位置する。コンプレッサスクロール流路12は、不図示のエンジンの吸気口、および、ディフューザ流路11と連通している。コンプレッサインペラ9が回転すると、吸気口10からコンプレッサハウジング100内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ9の翼間を流通する過程において、加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路11およびコンプレッサスクロール流路12でさらに加圧される。加圧された空気は、不図示の吐出口から流出し、エンジンの吸気口に導かれる。
【0021】
このように、過給機TCは、遠心力を利用して流体を圧縮する遠心圧縮機(コンプレッサ)CCを備える。遠心圧縮機CCは、コンプレッサハウジング100と、コンプレッサインペラ9と、後述するリンク機構200とを含む。
【0022】
タービンハウジング4には、排気口13が形成される。排気口13は、過給機TCの左側に開口する。排気口13は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。タービンハウジング4には、連通流路14と、タービンスクロール流路15とが形成される。タービンスクロール流路15は、タービンインペラ8よりも径方向の外側に位置する。連通流路14は、タービンインペラ8とタービンスクロール流路15との間に位置する。
【0023】
タービンスクロール流路15は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。連通流路14は、タービンスクロール流路15と排気口13とを連通させる。ガス流入口からタービンスクロール流路15に導かれた排気ガスは、連通流路14およびタービンインペラ8の翼間を介して排気口13に導かれる。排気ガスは、その流通過程においてタービンインペラ8を回転させる。
【0024】
タービンインペラ8の回転力は、シャフト7を介してコンプレッサインペラ9に伝達される。上記のとおりに、空気は、コンプレッサインペラ9の回転力によって加圧されて、エンジンの吸気口に導かれる。
【0025】
図2は、
図1の破線部分の抽出図である。
図2に示すように、コンプレッサハウジング100は、第1ハウジング部材110と、第2ハウジング部材120とを含む。第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120よりも、
図2中、右側(ベアリングハウジング2から離隔する側)に位置する。第2ハウジング部材120は、ベアリングハウジング2に接続される。第1ハウジング部材110は、回転軸方向において第2ハウジング部材120に接続される。
【0026】
第1ハウジング部材110は、大凡円筒形状である。第1ハウジング部材110には、貫通孔111が形成される。第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120と近接(接続)する側に端面112を有する。また、第1ハウジング部材110は、第2ハウジング部材120から離隔する側に端面113を有する。端面113には、吸気口10が形成される。貫通孔111は、回転軸方向に沿って、端面112から端面113(吸気口10)まで延在する。つまり、貫通孔111は、第1ハウジング部材110を回転軸方向に貫通している。貫通孔111は、端面113において吸気口10を有する。
【0027】
貫通孔111は、平行部111aと、縮径部111bとを有する。平行部111aは、縮径部111bよりも端面113近くに位置する。平行部111aの内径は、回転軸方向に亘って大凡一定である。縮径部111bは、平行部111aよりも端面112近くに位置する。縮径部111bは、平行部111aと連続する。縮径部111bの平行部111aと連続する部位の内径が、平行部111aの内径と大凡等しい。縮径部111bの内径は、平行部111aから離隔するほど(端面112に近づくほど)、小さくなる。
【0028】
端面112には、切り欠き部112aが形成される。切り欠き部112aは、端面112から端面113に向かって窪む。切り欠き部112aは、端面112の外周部に形成される。切り欠き部112aは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。
【0029】
また、端面112には、収容室ACが形成される。収容室ACは、第1ハウジング部材110のうちコンプレッサインペラ9の長羽根9aのリーディングエッジLEよりも吸気口10近くに形成される。収容室ACは、後述する収容溝112b、軸受穴112d、収容穴115(
図3参照)を含む。
【0030】
収容溝112bは、端面112に形成される。収容溝112bは、切り欠き部112aと貫通孔111との間に位置する。収容溝112bは、端面112から端面113に向かって窪む。収容溝112bは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。収容溝112bは、径方向内側において貫通孔111と連通する。
【0031】
収容溝112bのうち端面113に平行な壁面112cには、軸受穴112dが形成される。軸受穴112dは、壁面112cから端面113に向かって回転軸方向に延在する。軸受穴112dは、回転方向に離隔して2つ設けられる。2つの軸受穴112dは、回転方向に180度ずれた位置に配されている。
【0032】
第2ハウジング部材120には、貫通孔121が形成される。第2ハウジング部材120は、第1ハウジング部材110と近接(接続)する側に端面122を有する。また、第2ハウジング部材120は、第1ハウジング部材110から離隔する側(ベアリングハウジング2と接続する側)に端面123を有する。貫通孔121は、回転軸方向に沿って、端面122から端面123まで延在する。つまり、貫通孔121は、第2ハウジング部材120を回転軸方向に貫通する。
【0033】
貫通孔121のうち端面122近くの端部の内径は、貫通孔111のうち端面112近くの端部の内径と大凡等しい。貫通孔121の内壁には、シュラウド部121aが形成される。シュラウド部121aは、コンプレッサインペラ9に対して径方向の外側から対向する。コンプレッサインペラ9の外径は、コンプレッサインペラ9の長羽根9aのリーディングエッジLEから回転軸方向に離隔するほど大きくなる。シュラウド部121aの内径は、端面122から離隔するほど(端面123に近接するほど)大きくなる。
【0034】
端面122には、収容溝122aが形成される。収容溝122aは、端面122から端面123に向かって窪む。収容溝122aは、回転軸方向から見たとき、例えば大凡環状である。収容溝122aには、第1ハウジング部材110が挿入される。収容溝122aのうち端面123に平行な壁面122bに、第1ハウジング部材110の端面112が当接する。このとき、第1ハウジング部材110(壁面112c)と第2ハウジング部材120(壁面122b)との間に、収容室ACが形成される。
【0035】
第1ハウジング部材110の貫通孔111と、第2ハウジング部材120の貫通孔121によって、吸気流路130が形成される。このように、コンプレッサハウジング100には、吸気流路130が形成される。吸気流路130は、不図示のエアクリーナから吸気口10を介してディフューザ流路11まで連通する。吸気流路130のエアクリーナ側(吸気口10側)を吸気の流れにおいて上流側とし、吸気流路130のディフューザ流路11側を吸気の流れにおいて下流側とする。
【0036】
コンプレッサインペラ9は、吸気流路130に配される。吸気流路130(貫通孔111、121)の回転軸方向に垂直な断面形状が、例えば、コンプレッサインペラ9の回転軸を中心とする円形である。ただし、吸気流路130の断面形状は、これに限定されず、例えば、楕円形状であってもよい。
【0037】
第1ハウジング部材110の切り欠き部112aには、不図示のシール材が配される。シール材により、第1ハウジング部材110と第2ハウジング部材120との隙間を流通する空気の流量が抑制される。ただし、切り欠き部112aおよびシール材の構成は、必須ではない。
【0038】
図3は、リンク機構200を構成する部材の分解斜視図である。
図3では、コンプレッサハウジング100のうち、第1ハウジング部材110のみが示される。
図3に示すように、リンク機構200は、第1ハウジング部材110、第1可動部材210、第2可動部材220、連結部材230、ロッド240を含む。以下、第1可動部材210および第2可動部材220を、まとめて可動部材210、220ともいう。リンク機構200は、回転軸方向において、コンプレッサインペラ9より吸気流路130の吸気口10側(上流側)に配される。
【0039】
第1可動部材210は、収容溝112b(収容室AC)に配される。具体的には、第1可動部材210は、回転軸方向において、収容溝112bの壁面112cと、収容溝122aの壁面122b(
図2参照)との間に配される。第1可動部材210は、収容溝112bの壁面112cと対向する対向面S1と、収容溝122aの壁面122bと対向する対向面S2と、内径面S3とを有する。対向面S2は、第1可動部材210のうちコンプレッサインペラ9の羽根9a、9b近くの側面である。第1可動部材210は、本体部B1を有する。本体部B1は、湾曲部211と、アーム部212とを含む。
【0040】
湾曲部211は、周方向に延在する。湾曲部211は、大凡半円弧形状である。湾曲部211のうち、周方向の一端面211aおよび他端面211bは、径方向および回転軸方向に平行に延在する。ただし、一端面211aおよび他端面211bは、径方向および回転軸方向に対し、傾斜していてもよい。
【0041】
湾曲部211の一端面211aには、アーム部212が設けられる。アーム部212は、湾曲部211の外周面211cから径方向の外側に延在する。また、アーム部212は、径方向に対して傾斜する方向(第2可動部材220に向かう方向)に延在する。
【0042】
第2可動部材220は、収容溝112b(収容室AC)に配される。具体的には、第2可動部材220は、回転軸方向において、収容溝112bの壁面112cと、収容溝122aの壁面122b(
図2参照)との間に配される。第2可動部材220は、収容溝112bの壁面112cと対向する対向面S1と、収容溝122aの壁面122bと対向する対向面S2と、内径面S3とを有する。対向面S2は、第2可動部材220のうちコンプレッサインペラ9の羽根9a、9b近くの側面である。第2可動部材220は、本体部B2を有する。本体部B2は、湾曲部221と、アーム部222とを含んで構成される。
【0043】
湾曲部221は、周方向に延在する。湾曲部221は、大凡半円弧形状である。湾曲部221のうち、周方向の一端面221aおよび他端面221bは、径方向および回転軸方向に平行に延在する。ただし、一端面221aおよび他端面221bは、径方向および回転軸方向に対し、傾斜していてもよい。
【0044】
湾曲部221の一端面221aには、アーム部222が設けられる。アーム部222は、湾曲部221の外周面221cから径方向の外側に延在する。また、アーム部222は、径方向に対して傾斜する方向(第1可動部材210に向かう方向)に延在する。
【0045】
湾曲部211は、湾曲部221とコンプレッサインペラ9の回転中心(吸気流路130)を挟んで対向する。湾曲部211の一端面211aは、湾曲部221の他端面221bと周方向に対向する。湾曲部211の他端面211bは、湾曲部221の一端面221aと周方向に対向する。第1可動部材210および第2可動部材220は、詳しくは後述するように、湾曲部211、221が径方向に移動可能に構成される。
【0046】
図4は、第1実施形態に係る可動部材210、220の概略斜視図である。
図4に示すように、可動部材210、220には、1または複数の溝300が形成される。溝300は、可動部材210、220のうち、コンプレッサインペラ9の羽根9a、9b近くの対向面S2の内径端に形成される。溝300は、可動部材210、220のうち、内径面S3および対向面S2に跨って形成される。
【0047】
第1実施形態の溝300は、周方向に配列された複数の球形状の溝300aを含む。複数の球形状の溝300aは、周方向に互いに隣り合って形成される。複数の球形状の溝300aは、互いに同じ大きさを有する。ただし、これに限定されず、複数の球形状の溝300aは、互いに異なる大きさや異なる形状を有していてもよい。
【0048】
第1実施形態の複数の球形状の溝300aは、周方向に等間隔に形成される。複数の球形状の溝300の間には、突起302が形成される。突起302は、溝300aと周方向に隣り合う位置に形成される。突起302は、複数の球形状の溝300aを周方向に区画する。
【0049】
突起302の径方向内側の端面は、内径面S3と面一である。また、突起302のコンプレッサインペラ9の羽根9a、9b近くの端面は、対向面S2と面一である。ただし、これに限定されず、突起302の径方向内側の端面は、内径面S3に対し径方向内側に突出していてもよいし、内径面S3に対し径方向外側に窪んでいてもよい。また、突起302のコンプレッサインペラ9の羽根9a、9b近くの端面は、対向面S2に対し羽根9a、9bに向かう方向に突出していてもよいし、対向面S2に対し羽根9a、9bから離隔する方向に窪んでいてもよい。
【0050】
第1実施形態では、可動部材210、220に球形状の溝300a、および、突起302が複数設けられる例について説明した。しかし、可動部材210、220には、単数の球形状の溝300a、および、突起302が設けられてもよい。可動部材210、220には、少なくとも1つの溝300aおよび突起302が設けられればよい。したがって、例えば、球形状の溝300aは、可動部材210、220に1つのみ形成されてもよい。このとき、単一の溝300aは、第1可動部材210および第2可動部材220のうち一方にのみ形成されてもよいし、第1可動部材210および第2可動部材220の双方に跨って形成されてもよい。
【0051】
図5は、
図4中、可動部材210、220を径方向内側から見た内径面S3を示す図である。
図5に示すように、内径面S3には、複数の球形状の溝300aが形成されることから、コンプレッサインペラ9の羽根9a、9bに向かう方向を向くように円弧状の円弧端310が形成される。円弧端310は、回転軸方向R1に対し周方向RDに傾斜する形状を有する。
【0052】
図3に戻り、連結部材230は、第1可動部材210および第2可動部材220と連結する。連結部材230は、第1可動部材210、第2可動部材220よりも吸気口10近くに位置する。連結部材230は、大凡円弧形状である。連結部材230の周方向における一端側に第1軸受穴231が形成され、他端側に第2軸受穴232が形成される。第1軸受穴231および第2軸受穴232は、連結部材230のうち、第1可動部材210、第2可動部材220近くの端面233に開口する。第1軸受穴231および第2軸受穴232は、回転軸方向に延在する。ここでは、第1軸受穴231および第2軸受穴232は、非貫通の穴である。ただし、第1軸受穴231および第2軸受穴232は、連結部材230を回転軸方向に貫通してもよい。
【0053】
連結部材230には、第1軸受穴231と第2軸受穴232の間に、ロッド接続部234が形成される。ロッド接続部234は、連結部材230のうち、第1可動部材210、第2可動部材220と反対側の端面235に形成される。ロッド接続部234は、端面235から回転軸方向に突出する。ロッド接続部234は、例えば、大凡円柱形状である。
【0054】
ロッド240は、大凡円柱形状である。ロッド240の一端部に平面部241が形成され、他端部に連結部243が形成される。平面部241は、回転軸方向に大凡垂直な面方向に延在する。平面部241には、軸受穴242が開口する。軸受穴242は、回転軸方向に延在する。連結部243は、連結孔243aを有する。連結部243(連結孔243a)には、後述するアクチュエータが連結される。軸受穴242は、例えば、回転軸方向およびロッド240の軸方向に垂直な方向(後述する
図7中、左右方向)の長さが、ロッド240の軸方向の長さよりも長い長穴であってもよい。
【0055】
ロッド240には、平面部241と連結部243の間に、ロッド大径部244と、2つのロッド小径部245とが形成される。ロッド大径部244は、2つのロッド小径部245の間に配される。2つのロッド小径部245のうち平面部241近くのロッド小径部245は、ロッド大径部244と平面部241とを接続する。2つのロッド小径部245のうち連結部243近くのロッド小径部245は、ロッド大径部244と連結部243とを接続する。ロッド大径部244の外径は、2つのロッド小径部245の外径よりも大きい。
【0056】
第1ハウジング部材110には、挿通穴114が形成される。挿通穴114の一端114aは、第1ハウジング部材110の外部に開口する。挿通穴114は、例えば、回転軸方向に垂直な面方向に延在する。挿通穴114は、貫通孔111(吸気流路130)よりも径方向の外側に位置する。挿通穴114には、ロッド240の平面部241側が挿通される。ロッド大径部244は、挿通穴114の内壁面によってガイドされる。ロッド240は、挿通穴114の中心軸方向(ロッド240の中心軸方向)以外の移動が規制される。
【0057】
第1ハウジング部材110には、収容穴115が形成される。収容穴115は、収容溝112bの壁面112cに開口する。収容穴115は、壁面112cから吸気口10に向かって窪む。収容穴115は、挿通穴114よりも吸気口10から離隔して(第2ハウジング部材120近く)に位置する。収容穴115は、回転軸方向から見たとき、大凡円弧形状である。収容穴115は、連結部材230よりも周方向に長く延在する。収容穴115は、軸受穴112dから周方向に離隔する。
【0058】
第1ハウジング部材110には、連通孔116が形成される。連通孔116は、挿通穴114と収容穴115とを連通させる。連通孔116は、収容穴115のうち、周方向の大凡中間部分に形成される。連通孔116は、例えば、挿通穴114の延在方向に大凡平行に延在する長孔である。連通孔116の長手方向(延在方向)の幅が、短手方向(延在方向と垂直な方向)の幅よりも大きい。挿通穴114の短手方向の幅は、連結部材230のロッド接続部234の外径よりも大きい。
【0059】
連結部材230は、収容穴115(収容室AC)に収容される。このように、第1可動部材210、第2可動部材220、連結部材230は、第1ハウジング部材110に形成された収容室AC内に配される。収容穴115は、連結部材230よりも周方向に長く、径方向にも大きい。そのため、連結部材230は、収容穴115の内部で、回転軸方向に垂直な面方向への移動が許容される。
【0060】
ロッド接続部234は、連通孔116から挿通穴114に挿通される。挿通穴114には、ロッド240の平面部241が挿通されている。平面部241の軸受穴242は、連通孔116に対向している。ロッド接続部234は、軸受穴242に挿通される(接続される)。ロッド接続部234は、軸受穴242に支持される。
【0061】
図6は、
図2のVI-VI線断面図である。
図6に示すように、可動部材210、220の対向面S2には、複数の球形状の溝300aが形成されることから、径方向内側に円弧状の円弧端320が形成される。円弧端320は、径方向R2に対し周方向RDに傾斜する形状を有する。
【0062】
また、
図6に破線で示すように、第1可動部材210は、連結軸部213および回転軸部214を有する。連結軸部213および回転軸部214は、第1可動部材210のうち、壁面112cと対向する対向面S1(
図2参照)から、回転軸方向に突出する。連結軸部213および回転軸部214は、
図5中、紙面奥側に延在する。回転軸部214は、連結軸部213と平行に延在する。連結軸部213および回転軸部214は、大凡円柱形状である。
【0063】
連結軸部213の外径は、連結部材230の第1軸受穴231の内径よりも小さい。連結軸部213は、第1軸受穴231に挿通される。連結軸部213は、第1軸受穴231に回転可能に支持される。回転軸部214の外径は、第1ハウジング部材110の軸受穴112dの内径よりも小さい。回転軸部214は、2つの軸受穴112dのうち鉛直上側(ロッド240に近接する側)の軸受穴112dに挿通される。回転軸部214は、軸受穴112dに回転可能に支持される。回転軸部214は、第1可動部材210と、第1可動部材210に対して回転軸方向に対向する壁面112cとを接続する。
【0064】
第2可動部材220は、連結軸部223および回転軸部224を有する。連結軸部223および回転軸部224は、第2可動部材220のうち、壁面112cと対向する対向面S1(
図2参照)から、回転軸方向に突出する。連結軸部223および回転軸部224は、
図4中、紙面奥側に延在する。回転軸部224は、連結軸部223と平行に延在する。連結軸部223および回転軸部224は、大凡円柱形状である。
【0065】
連結軸部223の外径は、連結部材230の第2軸受穴232の内径よりも小さい。連結軸部223は、第2軸受穴232に挿通される。連結軸部223は、第2軸受穴232に回転可能に支持される。回転軸部224の外径は、第1ハウジング部材110の軸受穴112dの内径よりも小さい。回転軸部224は、2つの軸受穴112dのうち鉛直下側(ロッド240から離隔する側)の軸受穴112dに挿通される。回転軸部224は、軸受穴112dに回転可能に支持される。回転軸部224は、第2可動部材220と、第2可動部材220に対して回転軸方向に対向する壁面112cとを接続する。
【0066】
このように、リンク機構200は、4節リンク機構により構成される。4つのリンク(節)は、第1可動部材210、第2可動部材220、第1ハウジング部材110、連結部材230である。リンク機構200が、4節リンク機構により構成されることから、限定連鎖となり1自由度であって制御が容易である。
【0067】
図7は、リンク機構200の動作を説明するための第1の図である。以下の
図7、
図8、
図9では、リンク機構200を吸気口10側から見た図が示される。
図7に示すように、ロッド240の連結部243には、アクチュエータ250の駆動シャフト251の一端部が連結される。
【0068】
図7に示す配置では、第1可動部材210と第2可動部材220は、互いに当接する。このとき、
図2、
図6に示すように、第1可動部材210のうち、径方向の内側の部位である突出部215は、吸気流路130内に突出(露出)する。第2可動部材220のうち、径方向の内側の部位である突出部225は、吸気流路130内に突出(露出)する。このときの第1可動部材210、第2可動部材220の位置を、突出位置(あるいは絞り位置)という。
図2に示すように、突出部215、225の内周面は、内径面S3である。このように、突出部215、225は、内径面S3を含む。
【0069】
図7に示すように、突出位置では、突出部215のうち、周方向の端部215a、215bと、突出部225のうち、周方向の端部225a、225bとが当接する。突出部215と突出部225によって環状孔260が形成される。環状孔260の内径は、吸気流路130のうち、突出部215、225が突出する部位の内径よりも小さい。環状孔260の内径は、例えば、吸気流路130のいずれの部位の内径よりも小さい。
【0070】
図8は、リンク機構200の動作を説明するための第2の図である。
図9は、リンク機構200の動作を説明するための第3の図である。アクチュエータ250は、回転軸方向と交差する方向(
図8、
図9中、上下方向)にロッド240を直動させる。ロッド240は、
図7に示す状態から上側に移動する。
図8の配置よりも
図9の配置の方が、
図7の配置に対するロッド240の移動量が大きい。
【0071】
ロッド240が移動すると、連結部材230は、ロッド接続部234を介して、
図8、
図9中、上側に移動する。このとき、連結部材230は、ロッド接続部234を回転中心とする回転が許容される。また、ロッド接続部234の外径に対し、ロッド240の軸受穴242の内径に僅かに遊びがある。そのため、連結部材230は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が僅かに許容される。
【0072】
上記のように、リンク機構200は、4節リンク機構である。連結部材230、第1可動部材210および第2可動部材220は、第1ハウジング部材110に対して、1自由度の挙動を示す。具体的には、連結部材230は、上記の許容範囲内で、
図8、
図9中、反時計回りに僅かに回転しつつ、左右方向に僅かに揺れ動く。
【0073】
第1可動部材210のうち、回転軸部214は、第1ハウジング部材110に支持される。回転軸部214は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が規制される。連結軸部213は、連結部材230に支持される。連結部材230の移動が許容されることから、連結軸部213は、回転軸方向に垂直な面方向に移動可能である。その結果、連結部材230の移動に伴って、第1可動部材210は、回転軸部214を回転中心として、
図8、
図9中、時計回り方向に回転する。
【0074】
同様に、第2可動部材220のうち、回転軸部224は、第1ハウジング部材110に支持される。回転軸部224は、回転軸方向に垂直な面方向の移動が規制される。連結軸部223は、連結部材230に支持される。連結部材230の移動が許容されることから、連結軸部223は、回転軸方向に垂直な面方向へ移動可能である。その結果、連結部材230の移動に伴って、第2可動部材220は、回転軸部224を回転中心として、
図8、
図9中、時計回り方向に回転する。
【0075】
こうして、第1可動部材210と第2可動部材220は、
図8、
図9の順に、互いに離隔する方向に移動する。突出部215、225は、突出位置よりも径方向の外側に移動する(退避位置)。退避位置では、例えば、突出部215、225は、吸気流路130の内壁面と面一となるか、吸気流路130の内壁面よりも径方向の外側に位置する。退避位置から突出位置に移動するときは、
図9、
図8、
図7の順に、第1可動部材210と第2可動部材220が互いに近づいて当接する。このように、第1可動部材210、第2可動部材220は、回転軸部214、224を回転中心とする回転角度に応じて、突出位置と退避位置とに切り替わる。
【0076】
このように、第1可動部材210および第2可動部材220は、吸気流路130内に突出する突出位置と、吸気流路130から退避した退避位置とに移動可能に構成される。本実施形態では、第1可動部材210および第2可動部材220は、径方向に移動する。ただし、これに限定されず、第1可動部材210および第2可動部材220は、コンプレッサインペラ9の回転軸周り(周方向)に回転してもよい。例えば、第1可動部材210および第2可動部材220は、2以上の羽根を有するシャッター羽根であってもよい。
【0077】
第1可動部材210および第2可動部材220は、退避位置に位置するとき、吸気流路130内に突出しないため、吸気流路130を流れる吸気(空気)の圧損を小さくすることができる。
【0078】
また、
図2に示すように、第1可動部材210および第2可動部材220では、突出位置において、突出部215、225が吸気流路130内に配される。第1可動部材210および第2可動部材220が突出位置に位置すると、吸気流路130の流路断面積が小さくなる。
【0079】
コンプレッサインペラ9に流入する空気の流量が減少するに従い、コンプレッサインペラ9で圧縮された空気が吸気流路130を逆流する(すなわち、下流側から上流側に向かって空気が流れる)場合がある。
【0080】
図2に示すように、第1可動部材210および第2可動部材220が突出位置に位置するとき、突出部215、225は、コンプレッサインペラ9の長羽根9aのリーディングエッジLEの最外径端よりも径方向内側に位置する。これにより、吸気流路130内を逆流する空気は、突出部215、225に堰き止められる。したがって、第1可動部材210および第2可動部材220は、吸気流路130内の空気の逆流を抑制することができる。
【0081】
また、吸気流路130の流路断面積が小さくなることから、コンプレッサインペラ9に流入する空気の流速が増大する。その結果、遠心圧縮機CCのサージングの発生を抑制することができる。つまり、本実施形態の遠心圧縮機CCは、第1可動部材210および第2可動部材220が突出位置に保持されることにより、作動領域を小流量側に拡大することができる。
【0082】
このように、第1可動部材210および第2可動部材220は、吸気流路130を絞る絞り部材として構成される。つまり、本実施形態において、リンク機構200は、吸気流路130を絞る絞り機構として構成される。第1可動部材210および第2可動部材220は、リンク機構200が駆動されることで、吸気流路130の流路断面積を変化させることができる。
【0083】
吸気流路130内を逆流する空気には、コンプレッサインペラ9の回転に伴う旋回流成分が含まれる。吸気流路130内を逆流する空気を可動部材210、220により堰き止めた場合、逆流する空気の旋回流成分によりコンプレッサインペラ9の長羽根9aのリーディングエッジLE近傍の流れが乱され、空力音と思われる騒音が発生する場合がある。
【0084】
そこで、本実施形態では、可動部材210、220に溝300を形成している。溝300は、可動部材210、220のうち内径面S3および対向面S2に跨って形成される。対向面S2は、可動部材210、220のうちコンプレッサインペラ9の羽根9a、9b近くの側面である。そのため、対向面S2に溝300を形成することで、吸気流路130内を逆流する空気が溝300内に進入し、周方向において突起302と衝突することで、旋回流成分が低減される。
【0085】
溝300が対向面S2のみに形成される場合、つまり、溝300の径方向内側に部材が設けられ閉塞している場合、吸気流路130内を逆流する空気は、溝300内に流入し難くなる。本実施形態では、溝300が対向面S2と内径面S3に跨って形成されることで、溝300の径方向内側は部材が設けられずに開放される。溝300の径方向内側が開放されることで、溝300が対向面S2のみに形成される場合に比べ、逆流する空気を溝300内に流入し易くすることができる。その結果、逆流する空気の旋回流成分を効果的に低減させることができる。
【0086】
また、溝300により、内径面S3にはコンプレッサインペラ9の羽根9a、9b近くに円弧端310が形成される。円弧端310は、回転軸方向R1に対し周方向RDに傾斜する形状を有する。円弧端310により、逆流する空気を溝300内に滑らかに流入および流出させることができ、圧損を小さくすることができる。
【0087】
また、溝300により、対向面S2には径方向内側に円弧端320が形成される。円弧端320は、径方向R2に対し周方向RDに傾斜する形状を有する。円弧端320により、逆流する空気を溝300内に滑らかに流入および流出させることができ、圧損を小さくすることができる。
【0088】
また、溝300は、球形状を有することで、直方体形状のような角部の数を少なくすることができる。そのため、溝300が球形状を有することで、例えば溝300が直方体形状を有する場合に比べ、滑らかに旋回流成分を低減させることができる。
【0089】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係る可動部材1210、1220の概略斜視図である。上記実施形態の遠心圧縮機CCと実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。第2実施形態の可動部材1210、1220は、溝400の形状が第1実施形態の可動部材210、220と異なっている。
【0090】
図10に示すように、可動部材1210、1220には、1または複数の溝400が形成される。溝400は、可動部材1210、1220のうち、内径面S3および対向面S2に跨って形成される。
【0091】
第2実施形態の溝400は、周方向に配列された複数の円弧状の周溝400aを含む。複数の円弧状の周溝400aは、周方向に延在している。周溝400aは、第1実施形態の球形状の溝300aよりも周方向に長い。また、複数の円弧状の周溝400aは、周方向に互いに隣り合って形成される。複数の円弧状の周溝400aは、互いに同じ大きさを有する。ただし、これに限定されず、複数の円弧状の周溝400aは、互いに異なる大きさや異なる形状を有していてもよい。
【0092】
第2実施形態の複数の円弧状の周溝400aは、周方向に等間隔に形成される。複数の円弧状の周溝400aの間には、突起402が形成される。突起402は、周溝400aと周方向に隣り合う位置に形成される。突起402は、複数の円弧状の周溝400aを周方向に区画する。
【0093】
第2実施形態では、可動部材1210、1220に円弧状の周溝400a、および、突起402が複数設けられる例について説明した。しかし、可動部材1210、1220には、単数の円弧状の周溝400a、および、突起402が設けられてもよい。可動部材1210、1220には、少なくとも1つの周溝400aおよび突起402が設けられればよい。したがって、例えば、円弧状の周溝400aは、可動部材1210、1220に1つのみ形成されてもよい。このとき、単一の周溝400aは、第1可動部材1210および第2可動部材1220のうち一方にのみ形成されてもよいし、第1可動部材1210および第2可動部材1220の双方に跨って形成されてもよい。
【0094】
第2実施形態によれば、溝400を周方向に円弧状に延在させることで、第1実施形態に比べて溝400および突起402の数を少なくすることができる。突起402と逆流する空気との衝突回数が多いほど、圧損が大きくなり、圧縮機効率が低下する。したがって、突起402の数を少なくすることで、第1実施形態に比べ、圧縮機効率の低下を抑制することができる。
【0095】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態に係る可動部材2210、2220の概略斜視図である。上記実施形態の遠心圧縮機CCと実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。第3実施形態の可動部材2210、2220は、溝500の形状が第1実施形態の可動部材210、220および第2実施形態の可動部材1210、1220と異なっている。
【0096】
図11に示すように、可動部材2210、2220には、1または複数の溝500が形成される。溝500は、可動部材2210、2220のうち、内径面S3および対向面S2に跨って形成される。
【0097】
第3実施形態の溝500は、周方向に配列された複数の円弧状の周溝500aを含む。複数の円弧状の周溝500aは、周方向に延在している。周溝500aは、第1実施形態の球形状の溝300aよりも周方向に長い。また、複数の円弧状の周溝500aは、周方向に互いに離隔して形成される。複数の円弧状の周溝500aは、互いに同じ大きさを有する。ただし、これに限定されず、複数の円弧状の周溝500aは、互いに異なる大きさや異なる形状を有していてもよい。
【0098】
第3実施形態の複数の円弧状の周溝500aは、周方向に等間隔に形成される。複数の円弧状の周溝500aの間には、突起502が形成される。突起502は、周溝500aと周方向に隣り合う位置に形成される。突起502は、複数の円弧状の周溝500aを周方向に区画する。
【0099】
第3実施形態では、可動部材2210、2220に円弧状の周溝500a、および、突起502が複数設けられる例について説明した。しかし、可動部材2210、2220には、単数の円弧状の周溝500a、および、突起502が設けられてもよい。可動部材2210、2220には、少なくとも1つの周溝500aおよび突起502が設けられればよい。したがって、例えば、円弧状の周溝500aは、可動部材2210、2220に1つのみ形成されてもよい。このとき、単一の周溝500aは、第1可動部材2210および第2可動部材2220のうち一方にのみ形成されてもよいし、第1可動部材2210および第2可動部材2220の双方に跨って形成されてもよい。
【0100】
第3実施形態によれば、複数の周溝500aを周方向に互いに離隔して形成することで、可動部材2210、2220に形成される溝500および突起502の数を調整することができる。突起502と逆流する空気との衝突回数が多いほど、圧損が大きくなり、圧縮機効率が低下する。したがって、突起502の数を調整することで、圧縮機効率を調整することができる。
【0101】
(第4実施形態)
図12は、第4実施形態に係る可動部材3210、3220の概略斜視図である。上記実施形態の遠心圧縮機CCと実質的に等しい構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。第4実施形態の可動部材3210、3220は、溝600の形状が第1実施形態の可動部材210、220、第2実施形態の可動部材1210、1220、第3実施形態の可動部材2210、2220と異なっている。
【0102】
図12に示すように、可動部材3210、3220には、1または複数の溝600が形成される。溝600は、可動部材3210、3220のうち、内径面S3および対向面S2に跨って形成される。
【0103】
第4実施形態の溝600は、周方向に配列された複数の球形状の溝600aを含む。第4実施形態では、複数の球形状の溝600aは、第2可動部材3220にのみ形成されている。しかし、これに限定されず、複数の球形状の溝600aは、第1可動部材3210にのみ形成されてもよいし、第1可動部材3210および第2可動部材3220の双方に形成されてもよい。
【0104】
複数の球形状の溝600aは、周方向に互いに離隔して形成される。複数の球形状の溝600aは、互いに同じ大きさを有する。複数の球形状の溝600aは、例えば、第1実施形態の球形状の溝300aと同じ大きさを有する。ただし、これに限定されず、複数の球形状の溝600aは、第1実施形態の球形状の溝300aと異なる大きさを有してもよい。また、複数の球形状の溝600aは、互いに異なる大きさや異なる形状を有していてもよい。
【0105】
第4実施形態の複数の球形状の溝600aは、周方向に不等間隔に形成される。複数の球形状の溝600aの間には、突起602が形成される。突起602は、溝600aと周方向に隣り合う位置に形成される。突起602は、複数の球形状の溝600aを周方向に区画する。
【0106】
第4実施形態では、可動部材3210、3220に球形状の溝600a、および、突起602が複数設けられる例について説明した。しかし、可動部材3210、3220には、単数の球形状の溝600a、および、突起602が設けられてもよい。可動部材3210、3220には、少なくとも1つの溝600aおよび突起602が設けられればよい。したがって、例えば、球形状の溝600aは、可動部材3210、3220に1つのみ形成されてもよい。このとき、単一の溝600aは、第1可動部材3210および第2可動部材3220のうち一方にのみ形成されてもよいし、第1可動部材3210および第2可動部材3220の双方に跨って形成されてもよい。
【0107】
第4実施形態によれば、複数の溝600を周方向に不等間隔に配置することで、突起602と逆流する空気との衝突に起因するコンプレッサインペラ9の振動の誘起を低減することができる。
【0108】
以上、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0109】
CC 遠心圧縮機
S2 対向面(側面)
S3 内径面
TC 過給機
9 コンプレッサインペラ
9a 羽根
100 コンプレッサハウジング(ハウジング)
130 吸気流路
210 第1可動部材(可動部材)
220 第2可動部材(可動部材)
300 溝
300a 溝
400 溝
400a 周溝
500 溝
500a 周溝
600 溝
600a 溝
1210 第1可動部材(可動部材)
1220 第2可動部材(可動部材)
2210 第1可動部材(可動部材)
2220 第2可動部材(可動部材)
3210 第1可動部材(可動部材)
3220 第2可動部材(可動部材)