(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】運転支援装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2023531756
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2022023490
(87)【国際公開番号】W WO2023276616
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2021111035
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】清水 直継
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-175295(JP,A)
【文献】特開2012-221452(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194371(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車(40)の後方と後側方との少なくともいずれか一方の物体を検知する物体検知部(33)と、
前記自車の後方と後側方との少なくともいずれか一方に警報領域を設定する領域設定部(35)と、
前記物体検知部により前記警報領域内に物体が検知された場合に、報知を実行する報知部(37)と、
前記自車の走行軌跡の曲率変化量に基づいて、前記走行軌跡と前記自車の走行路の形状に沿った進路との一致度合いを示す信頼度が高い領域を規定する領域信頼距離を算出し、前記領域信頼距離に基づいて、前記警報領域の後端を変更する領域変更部(36)と、を備える運転支援装置(30)。
【請求項2】
前記領域変更部は、前記走行軌跡の曲率変化量に基づいて、前記警報領域を変更する基準となる前記自車の走行軌跡上の位置である基準位置を設定し、前記基準位置における前記自車の回転半径方向に延びる横方向ラインに基づいて、前記警報領域の後端を変更する
請求項1に記載の運転支援装
置。
【請求項3】
前記領域変更部は、前記領域信頼距離が所定距離よりも近い場合に、前記警報領域を前記自車の現在位置における前記横方向ライン上に設定した警報判定線に変更し、
前記報知部は、前記警報判定線と交差する移動ベクトルを有する前記物体が検知された場合に、報知を実行する請求項
2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記領域変更部は、前記走行軌跡の曲率変化量の分散値から前記領域信頼距離を算出する請求項
2に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記領域変更部は、前記走行軌跡の変曲点から前記領域信頼距離を算出する請求項
2に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記領域変更部は、前記領域信頼距離が所定距離よりも近い場合に、前記警報領域を前記自車の現在位置における前記横方向ライン上に設定した警報判定線に変更し、
前記警報判定線は、前記自車の走行路に沿った進路に対する前記自車の走行軌跡のずれ角が大きいほど前記横方向ラインに沿って長く設定され、
前記報知部は、前記警報判定線と交差する移動ベクトルを有する前記物体が検知された場合に、報知を実行する請求項
2~
5のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記領域変更部は、前記領域信頼距離が所定距離よりも近い場合に、前記警報領域を前記自車の現在位置における前記横方向ライン上に設定した警報判定線に変更し、
前記警報判定線は、前記自車の走行路に沿った進路に対する前記自車の走行軌跡の突出幅が大きいほど前記横方向ラインに沿って短く設定され、
前記報知部は、前記警報判定線と交差する移動ベクトルを有する前記物体が検知された場合に、報知を実行する請求項
2~
5のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項8】
運転支援装置(30)に適用されるプログラムにおいて、
コンピュータに、
自車(40)の後方と後側方との少なくともいずれか一方の物体を検知する検知処理と、
前記自車の後方と後側方との少なくともいずれか一方に警報領域を設定する処理と、
前記検知処理により前記警報領域内に物体が検知された場合に、報知を実行する処理と、
前記自車の走行軌跡の曲率変化量に基づいて、前記走行軌跡と前記自車の走行路の形状に沿った進路との一致度合いを示す信頼度が高い領域を規定する領域信頼距離を算出し、前記領域信頼距離に基づいて、前記警報領域の後端を変更する処理と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年7月2日に出願された日本出願番号2021-111035号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、車の周囲の物体検知情報に基づいて、運転支援を実行する運転支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
自車の周囲の物体検知情報に基づいて、自車の周囲に警報領域を設定し、警報領域に侵入した物体を検知した場合に報知を行う運転支援に関する技術が知られている。特許文献1には、自車の左後側方または右後側方に警報領域を設定し、自車が交差点を旋回する際に、旋回開始を判定して警報領域を縮小し、旋回終了を判定して警報領域を拡大する運転支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
特許文献1では、自車が交差点を旋回する際の自車のカーブ半径Rが閾値を下回る状態が所定時間以上継続した場合に、自車が旋回開始したと判定して警報領域を縮小する。このため、自車の旋回時における車速が遅いほど旋回開始の判定が肯定され易く、車速が速いほど旋回開始の判定が否定され易くなり、車速が旋回開始の判定結果に影響する懸念があった。また、旋回時における自車の内側(旋回中心側)と、自車の外側とについて、縮小の態様を変更することは考慮されておらず、自車の旋回時における警報領域の縮小をより適切なものとする余地があった。また、車線変更時や駐停車時など、自車が走行路の形状に沿わない走行をする場合に、警報領域が不適切に設置される場合が懸念された。
【0006】
上記に鑑み、本開示は、自車が走行路に沿った走行をしなかった場合の影響を緩和し、自車の旋回時に、自車の走行速度による影響を回避して警報領域を適切に変更するための技術を提供することを目的とする。
【0007】
第1の開示に係る運転支援装置は、自車の後方と後側方との少なくともいずれか一方の物体を検知する物体検知部と、前記自車の後方と後側方との少なくともいずれか一方に警報領域を設定する領域設定部と、前記物体検知部により前記警報領域内に物体が検知された場合に、報知を実行する報知部と、前記自車の走行軌跡の曲率変化量に基づいて、前記走行軌跡と前記自車の走行路の形状に沿った進路との一致度合いを示す信頼度が高い領域を規定する領域信頼距離を算出し、前記領域信頼距離に基づいて、前記警報領域の後端を変更する領域変更部と、を備える。
第1の開示によれば、自車が走行路に沿った走行をしなかった場合の影響を緩和し、自車の旋回時に、自車の走行速度による影響を回避して警報領域を適切に変更することができる。
【0008】
第2の開示は、第1の開示において、前記領域変更部は、前記走行軌跡の曲率変化量に基づいて、前記警報領域を変更する基準となる前記自車の走行軌跡上の位置である基準位置を設定し、前記基準位置における前記自車の回転半径方向に延びる横方向ラインに基づいて、前記警報領域の後端を変更する。
第2の開示によれば、領域変更部は、領域信頼距離を算出する。領域信頼距離は、走行軌跡と自車の走行路の形状に沿った進路との一致度合いを示す、走行軌跡の信頼度が領域を規定する距離である。領域信頼距離は、自車の走行軌跡の曲率変化量から算出され、算出した領域信頼距離に基づいて、警報領域を変更する基準となる自車の走行軌跡上の位置である基準位置を設定されるため、自車が走行路に沿った走行をしなかった場合の影響を緩和するとともに、自車の旋回時に、自車の走行速度による影響を回避して基準位置を設定することができる。そして、領域変更部は、基準位置における自車の回転半径方向に延びる横方向ラインに基づいて、警報領域の後端を変更する。横方向ラインは、自車の回転中心から放射状に延びるものであるため、警報領域の後端を同じ横方向ラインに基づいて設定すると、警報領域は、自車の回転中心を中心とする略環状扇形形状に変更される。その結果、例えば、自車の旋回時における自車の内側ほど警報領域は小さくなり、自車の外側ほど警報領域は大きくなり、自車が旋回する道路の形状に応じてより適切に警報領域を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
【
図1】
図1は、実施形態に係る運転支援装置を示すブロック図であり、
【
図2】
図2は、自車の周囲の物体検知領域と警報領域とを示す図であり、
【
図3】
図3は、ECUが実行する運転支援制御のフローチャートであり、
【
図4】
図4は、
図3に示す領域信頼距離を算出する処理のフローチャートであり、
【
図5】
図5は、自車の右後方の隣接車線領域および警報領域を示す図であり、
【
図6】
図6は、自車の左後方および右後方の警報領域を示す図であり、
【
図7】
図7は、自車の周囲の物体検知領域を示す図であり、
【
図8】
図8は、自車の後方および後側方の警報領域を示す図であり、
【
図9】
図9は、警報領域と警報判定線との対比図であり、
【
図10】
図10は、自車の周囲の物体検知領域を示す図であり、
【
図11】
図11は、自車の後方および後側方の警報領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1に示すように、実施形態に係る運転支援システム10は、レーダ装置21と、撮像装置22と、車速センサ23と、操舵角センサ24と、ヨーレートセンサ25と、受信装置26と、警報装置27と、ECU30とを備えている。
【0011】
レーダ装置21は、例えば、ミリ波帯の高周波信号を送信波とする公知のミリ波レーダである。レーダ装置21は、自車に1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。レーダ装置21は、例えば、自車の後端部等に設けられ、所定の検知角に入る領域を物体検知可能な検知範囲とし、検知範囲内の物体の位置を検知する。具体的には、所定周期で探査波を送信し、複数のアンテナにより反射波を受信する。この探査波の送信時刻と反射波の受信時刻とにより、物体との距離を算出することができる。また、物体に反射された反射波の、ドップラー効果により変化した周波数により、相対速度を算出する。加えて、複数のアンテナが受信した反射波の位相差により、物体の方位を算出することができる。なお、物体の位置および方位が算出できれば、その物体の、自車に対する相対位置を特定することができる。
【0012】
撮像装置22は、例えばCCDカメラ、CMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等の単眼カメラであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。撮像装置22は、自車に1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。撮像装置22は、例えば、車両の車幅方向中央の所定高さに取り付けられており、車両前方または後方へ向けて所定角度範囲で広がる領域を俯瞰視点から撮像する。撮像装置22は、撮像した画像における、物体の存在を示す特徴点を抽出する。具体的には、撮像した画像の輝度情報に基づきエッジ点を抽出し、抽出したエッジ点に対してハフ変換を行う。ハフ変換では、例えば、エッジ点が複数個連続して並ぶ直線上の点や、直線どうしが直交する点が特徴点として抽出される。撮像装置22は、逐次撮像する撮像画像をセンシング情報としてECU30へ逐次出力する。
【0013】
レーダ装置21および撮像装置22は、自車の周辺情報を取得する周辺監視装置の一例である。周辺監視装置としては、上記の他に、超音波センサ、LIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)等の探査波を送信するセンサを備えていてもよい。レーダ装置21等のミリ波レーダ、ソナー、LIDAR等の探査波を送信するセンサは、障害物によって反射された反射波を受信した場合に得られる受信信号に基づく走査結果をセンシング情報としてECU30へ逐次出力する。
【0014】
図2に示すように、レーダ装置21は、自車40の後端部に左右1箇所ずつ設置することによって、自車40の後方および後側方の物体を検知することができる。自車40の後端部左側に設置されたレーダ装置21Lは、検知領域70Lにおいて物体を検知することができる。自車40の後端部右側に設置されたレーダ装置21Rは、検知領域70Rにおいて物体を検知することができる。
【0015】
上述の各種周辺監視装置は、自車40の後方や後側方の物体に限らず、前方や前側方の物体を検知し、位置情報として利用してもよい。また、使用する周辺監視装置の種類に応じて、監視対象とする対象物体を変更してもよい。例えば、撮像装置22を用いる場合には、道路標識や建物等の静止物体や、歩行者等の移動体が対象物体である場合に好適である。また、レーダ装置21を用いる場合には、反射電力が大きい物体が対象物体である場合に好適である。また、対象物体の種類や位置、移動速度に応じて、使用する周辺監視装置を選択してもよい。
【0016】
車速センサ23は、自車40の走行速度を検知するセンサであり、限定されないが、例えば、車輪の回転速度を検知可能な車輪速センサを用いることができる。車速センサ23として利用される車輪速センサは、例えば、車輪のホイール部分に取り付けられており、車両の車輪速度に応じた車輪速度信号をECU30に出力する。
【0017】
操舵角センサ24は、例えば、車両のステアリングロッドに取り付けられており、運転者の操作に伴うステアリングホイールの操舵角の変化に応じた操舵角信号をECU30に出力する。
【0018】
ヨーレートセンサ25は、1つのみ設置されていてもよいし、複数設置されていてもよい。1つのみ設置する場合には、例えば、自車40の中央位置に設けられる。ヨーレートセンサ25は、自車40の操舵量の変化速度に応じたヨーレート信号をECU30に出力する。ヨーレートセンサ25が複数設置されている場合には、それぞれの検知値の平均値や中間値等を用いてもよい。また、複数のヨーレートの検知値の平均値等を算出するに際して、重み付けを行ってもよい。
【0019】
受信装置26は、GPS受信装置であり、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信装置の一例である。受信装置26によって、人工衛星により地上の現在位置を決定する衛星測位システムからの測位信号を受信することができる。
【0020】
警報装置27は、運転者等に報知するための装置であり、例えば自車40の車室内に設置されたスピーカやブザー等の聴覚的に報知する装置、ディスプレイ等の視覚的に報知する装置等を例示できるが、これに限定されない。警報装置27は、ECU30からの制御指令に基づき警報音等を発することにより、例えば、運転者に対し、物体との衝突の危険が及んでいること等を報知する。警報装置27は、シートベルトを引き込むプリテンショナ機構を備えたシートベルト装置等の触覚的に報知する装置であってもよい。警報装置27は、ステアリング制御などの車両挙動の変化によって運転者等に報知を行う装置であってもよい。警報装置27は、ドアロックなどの車両状態の変化によって運転者等に報知を行う装置であってもよい。
【0021】
ECU30は、データ取得部31と、記憶部32と、物体検知部33と、領域設定部35と、領域変更部36と、報知部37とを備えている。ECU30は、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えた、CPUが、ROMにインストールされているプログラムを実行することでこれら各機能を実現する。これによって、ECU30は、レーダ装置21、撮像装置22、車速センサ23、操舵角センサ24、ヨーレートセンサ25、受信装置26から取得した情報に基づいて、警報装置27への制御指令を作成し、出力することにより、自車40の運転支援を実行する運転支援装置として機能する。
【0022】
データ取得部31は、レーダ装置21、撮像装置22、各種センサ23~25が取得した検知データと、受信装置26が受信した測位信号とを取得する。
【0023】
記憶部32は、データ取得部31が取得した各種データ、および各種データに基づいて算出した算出値を記憶する。記憶部32は、自車40の走行軌跡における自車40の位置、回転角等の履歴を記憶することもできる。自車40の位置と回転角とは紐付けされて記憶されている。自車40の位置および回転角は、車速センサ23、操舵角センサ24、ヨーレートセンサ25等の検知値から求めることができる。
【0024】
物体検知部33は、レーダ装置21や撮像装置22等の周辺監視装置から取得した検知データに基づいて、自車40の後方と後側方との少なくともいずれか一方の物体を検知することができる。例えば、
図2に示すように、レーダ装置21L,21Rの検知領域70L,70Rにおいて検知された物体情報に関するデータに基づいて、自車40の左後側方、右後側方の物体を検知することができる。
【0025】
領域設定部35は、自車40の後方と後側方との少なくともいずれか一方に警報領域を設定する。警報領域は、その領域に侵入した物体を検知した場合に、報知を行う領域として設定される。警報領域は、レーダ装置21の検知領域内において、任意の形状および大きさに設定できる。例えば、警報領域を自車40の左後側方と右後側方との双方に設定する場合には、
図2に示す警報領域71L,71Rのように、自車40の左右の後側方において、車線幅程度の横幅で帯状に設定することが好ましい。
【0026】
領域設定部35は、自車40が走行する自車線や、その隣接車線の情報に基づいて、警報領域を設定してもよい。例えば、撮像装置22から取得した自車40の周囲の物体情報(例えば、周囲の車両や歩行者、区画線等の路面標示、道路標識等)、受信装置26から取得する位置情報、地理情報、交通情報等に基づいて、警報領域を設定してもよい。
【0027】
領域設定部35は、撮像装置22から取得した自車40の周囲の路面標示、道路標識等の情報や、受信装置26から取得する自車40の位置情報、地理情報、交通情報等を用いて、警報領域の設定を行ってもよい。
【0028】
領域変更部36は、自車40の走行軌跡の曲率変化量に基づいて、領域信頼距離を算出する。領域信頼距離は、自車40の走行軌跡の信頼度が高い領域であり、自車40の走行軌跡の信頼度は、自車40の走行軌跡と、自車40の走行路の形状に沿った進路との一致度合いを示す指標である。自車40の走行軌跡の信頼度が高い領域は、自車40から領域信頼距離内の範囲の領域である。
【0029】
自車40の走行路の形状に沿った進路としては、例えば、自車40の走行する車線の車線幅方向の中央を結ぶ進路である自車線中央進路を用いることができる。自車40の幅方向の中央の軌跡により自車40の走行軌跡を規定する場合、この走行軌跡と自車線中央進路との一致度合いが高いほど、走行軌跡の信頼度が高い。
【0030】
走行軌跡の信頼度は、走行軌跡の曲率変化量の分散値に基づいて判定してもよい。例えば、走行軌跡に沿って曲率変化量の分散値を算出し、分散値が所定値以下である走行軌跡上の位置を信頼度が高い位置と判定してもよい。領域信頼距離は、走行軌跡上の曲率変化量の分散値が所定値以下である位置(すなわち、信頼度が高いと判定された位置)と、自車の現在位置との距離として算出してもよい。また、例えば、走行軌跡の信頼度は、走行軌跡の変曲点の位置に基づいて判定してもよい。具体的には、走行軌跡上の変曲点の位置よりも自車40に近い側を信頼度が高いと判定してもよい。
【0031】
領域変更部36は、領域信頼距離に基づいて、警報領域を変更する基準となる自車40の走行軌跡上の位置である基準位置を設定する。さらに、領域変更部36は、基準位置における自車40の回転半径方向に延びる横方向ラインに基づいて、警報領域の後端を変更する。
【0032】
領域変更部36は、領域信頼距離が所定距離よりも近い場合に、警報領域を自車40の現在位置における横方向ライン上に設定した警報判定線に変更してもよい。警報判定線は、自車40の走行路に沿った進路に対する自車40の走行軌跡のずれ角が大きいほど横方向ラインに沿って長く設定されることが好ましい。また、警報判定線は、自車40の走行路に沿った進路に対する自車40の走行軌跡の突出幅が大きいほど横方向ラインに沿って短く設定されることが好ましい。
【0033】
報知部37は、物体検知部33により警報領域内に物体が検知された場合に、警報装置27に指令して報知を実行する。例外として、領域変更部36により、警報領域が警報判定線に変更された場合には、報知部37は、物体検知部33により警報判定線と交差する移動ベクトルを有する物体が検知された場合に、報知を実行する。図示していないが、報知と併せて、自車40の運転制御(例えば、衝突回避制御)を実行するようにしてもよい。
【0034】
ECU30が実行する運転支援制御について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
図3に示す処理は、自車40の運転中に所定の時間間隔で繰り返し実行される。なお、
図3およびこれに関連する明細書の記載においては、添え字に相当する部分について誤解を生じること回避するためにθi等の記載をθ(i)等の括弧を含む記載に置き換えている。
【0035】
まず、ステップS101では、自車情報を取得する。例えば、レーダ装置21、撮像装置22、車速センサ23、操舵角センサ24、ヨーレートセンサ25、受信装置26から、各種センサ類の検知値、測位情報等を適宜取得し、自車40の走行状態や、自車線の状態等に関する情報を取得する。取得した自車情報は、適宜、ECU30に記憶される。ECU30は、自車40の位置、回転角に関する情報等を紐付けして記憶する。その後、ステップS102に進む。
【0036】
ステップS102では、自車が走行中であるか否かについて判定する。例えば、車速センサ23の検知する自車40の車速(自車速)に基づいて、自車速が零と見なせる場合には自車40が走行中でないと判断し、それ以外の場合には、自車40が走行中であると判断する。自車が走行中である場合には、ステップS103に進む。自車が走行中でない場合には、ステップS108に進む。
【0037】
ステップS103では、ECU30に記憶された自車40の位置、回転角に関する情報に基づいて、自車40の走行軌跡を算出する。その後、ステップS104に進む。
【0038】
ステップS104では、隣接車線領域を算出する。例えば、
図5に示すように、自車40の右後方に警報領域71Rを設定する。まず、走行軌跡上の自車40の位置を示す点Ai毎に、自車40の回転角θ(i)に基づいて、横方向ラインLiを設定する。そして、ステップS101で取得した自車線の車線幅SHに基づいて、横方向ラインLi上に、自車40の右後方の警報領域の両端となるBi,Ciを設定する。そして、i=0~nまで、点Ai,Bi,Ciを算出し、点B0~Bnおよび点C0~点Cnにより囲われた領域を自車40の右後方の隣接車線領域として推定し、右後方の警報領域に設定する。なお、
図5は、n=12の場合を例示的に示している。
【0039】
図5において、点A0~A12は、自車40の走行軌跡上の点であり、より具体的には、現在または過去における自車40の左右の後輪を結ぶ線分の中点の位置を示している。自車40の現在の位置は点A0により示され、所定の時間間隔で、A1、A2、…、A12の順に過去に遡った自車40の位置を示している。
【0040】
点B0~B12および点C0~C12は、それぞれ、点A0~A12における自車40の回転半径方向に延びる横方向ラインであるL0~L12上の点である。i=0~12としたとき、横方向ラインLiにおいて、点Aiと点Biとの間隔は全て等しくY1であり、点Biと点Ciとの間隔は全て等しくY2である。
【0041】
隣接車線領域の算出においては、まず、自車40の走行軌跡上の点Aiにおける回転角θiから、点Aiを通る法線方向に延びる横方向ラインLiを設定する。そして、自車40の走行する自車線の車線幅がSHである場合に、例えば、間隔Y1=SH/2、Y2=SHと設定して、自車40の右側の隣接車線の左側端としての点Biの位置と、右側端としての点Ciの位置を推定する。そして、点B0~B12および点C0~点C12により囲われた領域を隣接車線領域として推定する。これにより、自車40の走行軌跡の右側に、走行軌跡と同様の軌跡を描いて変化する車線幅SHの隣接車線領域を設定できる。自車40の右側に推定された隣接車線領域を、現在の自車40の位置に対して右後方に設定された右後方警報領域として設定できる。
【0042】
ステップS104の後に、ステップS105に進む。ステップS105では、ステップS103において算出した自車40の走行軌跡に基づいて、走行軌跡上の自車40の位置を示す点Aiにおける自車40の曲率変化量を算出する。例えば、自車の走行軌跡上の点Aiにおける回転角θiに基づいて、点Aiにおける自車40の曲率変化量の履歴を算出ことができる。その後、ステップS106に進む。
【0043】
ステップS106では、
図4に示す処理により、領域信頼距離NRを算出する。ステップS201~S206に示すように、i=1~nまで、点Aiにおける自車40の曲率変化量の分散値dCv(i)を算出し、所定の分散閾値Xとを比較し、分散値dCv(i)がXを超える自車の走行軌跡上の点Aiに対応する横方向ラインLiを抽出する。
【0044】
図4に示す処理は、道路における曲線形状がクロソイド曲線に従って設計されているという知見に基づいて、自車40の走行軌跡と、自車40の走行路の形状に沿った進路との一致度合いを示す信頼度を判定する手法に基づく処理である。クロソイド曲線においては、曲率変化率を示すクロソイドパラメータは一定である。曲率変化量の分散値dCv(i)が大きいほど、クロソイドパラメータから乖離しているため、ステップS104において推定された隣接車線領域について、その曲率変化量の分散値dCv(i)と分散閾値Xを比較し、dCv(i)>Xであるか否かを判定することにより、自車40の走行軌跡と自車40の走行路の形状に沿った進路との一致度合いである信頼度を評価することができる。
【0045】
具体的には、ステップS203に示すように、i=1~nについて、dCv(i)>Xであるか否かを判定し、dCv(i)≦Xであると判定された場合には、ステップS204に進む。ステップS204では、i≧nであるか否かを判定する。i<nであると判定された場合には、ステップS202に戻り、iを1つ大きくして、ステップS203の処理を再実行する。ステップS204において、i≧nであると判定された場合には、ステップS205に進み、領域信頼距離NRを与える横方向ラインをLnに設定する。一方、ステップS203において、dCv(i)>Xであると判定された場合には、ステップS206に進み、領域信頼距離NRを示す横方向ラインをL(i-1)に設定する。
【0046】
図4に示す処理によって、dCv(i)>Xを満たす最小のiの値が抽出された場合には、これに対応する横方向ラインLiに対して1つだけ自車40の現在の位置に近い、横方向ラインL(i-1)を、領域信頼距離NRを与える横方向ラインとして選定する。これは、自車40の現在位置における横方向ラインL0から、領域信頼距離NRに選定された横方向ラインL(i-1)までの領域は、自車40の走行軌跡と自車40の走行路の形状に沿った進路との一致度合いが高く、信頼度が高い領域であることを示している。また、横方向ラインLiから横方向ラインLnまでの領域は、自車40の走行軌跡と自車40の走行路の形状に沿った進路との一致度合いが低く、信頼度が高くない領域であることを示している。
【0047】
一方、i=1~nにおいて、いずれもdCv(i)>Xを満たさなかった場合には、横方向ラインLnを、領域信頼距離NRを与える横方向ラインとして選定する。これは、自車40の現在位置における横方向ラインL0から横方向ラインLnまでの全領域は、自車40の走行軌跡と自車40の走行路の形状に沿った進路との一致度合いが高く、信頼度が高い領域であることを示している。
【0048】
図3に戻り、ステップS106において領域信頼距離NRを算出した後、ステップS107に進む。ステップS107では、領域信頼距離NRが最大警報距離Nmaxを超えているか否かを判定する。なお、最大警報距離Nmaxは、警報領域の後端までの距離として初期設定された距離である。
【0049】
ステップS107において、NR≦Nmaxである場合には、ステップS108に進む。ステップS108では、領域信頼距離NRが最小警報距離Nminを超えているか否かを判定する。なお、最小警報距離Nminは、警報領域が不適切に設置されることが想定される状況を鑑みて設定された距離である。車線変更時や駐停車時など、自車が走行路の形状に沿わない走行をする場合には、警報領域が不適切に設置されることが懸念されるが、このような場合には、領域信頼距離NRの値が小さくなる。
【0050】
NR≦Nmaxである場合には、ステップS109、S110に進み、最小警報距離Nminに基づいて、警報領域が設定される。NR≦Nmaxである場合には、車線変更時や駐停車時など、自車が走行路の形状に沿わない走行をする場合には、警報領域が不適切に設置される場合が想定されるため、警報領域として、自車40の現在位置における横方向ラインL0上に設定した警報判定線が設定される。その後、ステップS111に進む。
【0051】
ステップS111では、警報判定の手法として、物体の推定移動軌跡による警報判定が採用される。この警報判定では、警報領域として設定された警報判定線を物体が実際に通過した場合に限らず、警報判定線と交差する移動ベクトルを有する物体が検知された場合についても、報知を実行する。その後、処理を終了する。
【0052】
一方、ステップS107において、NR>Nmaxである場合には、ステップS112、S113に進み、領域信頼距離NRとなる自車40の走行軌跡上の点を基準位置に設定する。自車40の現在位置における横方向ラインL0から、領域信頼距離NRに対応する自車40の走行軌跡上の点における横方向ラインまでの領域が、警報領域として設定される。その後、ステップS116に進む。
【0053】
図5を用いて例示的に説明すると、ステップS104において右後方警報領域として設定された、点B0~B12および点C0~点C12により囲われた領域が初期設定時の警報領域であり、ステップS106の処理を実行した結果、領域信頼距離NRに対応する自車40の走行軌跡上の点における横方向ラインがL7であった場合には、ステップS113において、右後方警報領域の後端は横方向ラインL7に設定され、斜線で示す警報領域72Rに縮小される。警報領域71Rは、点B0~B7および点C0~C7により囲まれた略環状扇形形状の領域である。
【0054】
また、ステップS107において、NR>Nmaxである場合には、ステップS114、S115に進み、最大警報距離Nmaxとなる自車40の走行軌跡上の点を基準位置に設定する。自車40の現在位置における横方向ラインL0から、最大警報距離Nmaxに対応する自車40の走行軌跡上の点における横方向ラインまでの領域が、警報領域として設定される。その後、ステップS116に進む。
【0055】
図5を用いて例示的に説明すると、ステップS104において右後方警報領域として設定された、点B0~B12および点C0~点C12により囲われた領域が初期設定時の警報領域として設定された後、ステップS115に進むと、右後方警報領域の後端は、初期設定時の横方向ラインL12に設定され、初期設定時の警報領域が維持される。この場合の警報領域は、点B0~B12および点C0~C12により囲まれた略環状扇形形状の領域である。
【0056】
ステップS116では、警報領域内での物体検出による警報判定が採用される。この警報判定では、警報領域内に物体が検知された場合に、報知を実行する。その後、処理を終了する。
【0057】
上記の実施形態によれば、ステップS107~S116に示すように、自車40の走行軌跡の信頼度に基づいて、警報領域が変更される。信頼度が高い場合には、警報領域は、初期設定時の大きさから縮小されることなく、その警報領域内に物体が検知された場合に報知を実行する。信頼度が中程度の場合には、警報領域は、領域信頼距離NRによって規定される信頼度が高い領域に限定され、その限定された警報領域内に物体が検知された場合に報知を実行する。信頼度が低い場合には、その警報領域は、警報判定線に変更され、警報判定線と交差する移動ベクトルを有する物体が検知された場合に報知を実行する。基準位置とは、警報領域を変更する基準となる自車の走行軌跡上の位置である。基準位置は、自車40の走行軌跡の曲率変化量に基づいて算出される領域信頼距離に基づいて設定されるため、自車40が走行路に沿った走行をしなかった場合の影響を緩和するとともに、自車40の旋回時に、自車40の走行速度による影響を回避して基準位置を設定することができる。
【0058】
なお、ステップS105,S106では、道路がクロソイド曲線として設計されているとの知見に基づいて、自車40の走行軌跡の曲率変化量の分散値から領域信頼距離を算出したが、これに限定されない。自車40の走行路に沿った進路と、自車40の走行軌跡との一致度合いを評価できる他の手法を用いて、領域信頼距離を算出してもよい。例えば、自車40の走行路に沿った進路における変曲点のうち、最も現在の自車40に近い変曲点の位置が、横方向ラインL8の位置であった場合に、i=7となる位置について、領域信頼距離NRを設定してもよい。
【0059】
また、ステップS113では、例えば
図5に示すように、領域信頼距離NRに対応する横方向ラインL7を警報領域の後端に設定してもよいが、これに限定されない。マージンを考慮し、横方向ラインL7よりも所定距離だけ現在の自車40に近い位置に警報領域の後端を設定してもよい。マージンとして確保する距離は、例えば、データとして取得される自車40の位置である点Aiの時間的または距離的な間隔に基づいて設定できる。具体的には、点Aiの時間的または距離的な間隔が短い場合には、マージンとして確保する距離を長くしてもよい。
【0060】
図6に示すように、自車40の左後方に設定された左後方警報領域である警報領域71Lについても、右後方警報領域である警報領域71Rと同様に設定または変更することができる。領域設定部35は、
図5に示す横方向ラインL0~L12を自車40の走行軌跡の左側まで直線的に延長し、横方向ラインL0~L12上に点D0~D12および点E0~E12を設定する。横方向ラインLiにおいて、点Aiと点Diとの間隔は全て等しくY3であり、点Diと点Eiとの間隔は全て等しくY4である。なお、
図6では、i=0~7までについて図示しており、i=8~12については、図示を省略している。
【0061】
自車40の走行する車線の車線幅がSHである場合に、例えば、間隔Y3=SH/2、Y4=SHと設定して、自車40の左側の隣接車線の右側端としての点Diの位置と、左側端としての点Eiの位置を推定する。そして、点D0~D12および点E0~点E12により囲われた領域を隣接車線領域として推定する。これにより、自車40の走行軌跡の左側に、走行軌跡と同様の軌跡を描いて変化する車線幅SHの隣接車線領域を設定できる。領域設定部35は、自車40の左側に推定された隣接車線領域を、現在の自車40位置に対して左後方に設定された左後方警報領域として設定する。
【0062】
なお、Y1~Y4の値は、上記のように自車線の車線幅SHに基づいて設定してもよいし、隣接車線の実際の車線幅に基づいて各々設定してもよい。車線幅は、撮像装置22により白線を検知して実測したものであってもよいし、GPS受信装置である受信装置26により取得したものであってもよい。
【0063】
領域変更部36は、ステップS113において領域信頼距離NRに対応する横方向ラインL7を警報領域の後端に設定した場合には、左後方警報領域を、横方向ラインL7を後端とした警報領域71Lに変更する。警報領域71Lは、点D0~D7および点E0~E7により囲まれた略環状扇形形状の領域である。
【0064】
図6に示すように、警報領域71R,71Lは、自車40の回転中心を中心とする略環状扇形形状に変更される。その結果、自車40の旋回時における内側ほど警報領域は小さくなり、外側ほど警報領域は大きくなる。具体的には、
図6に示すように自車40が右回り(時計回り)に旋回する場合には、自車40の旋回時に内側となる警報領域71Rは、自車40の旋回時に外側となる警報領域71Lよりも小さくなる。また、警報領域71R,71Lのそれぞれの形状についても、自車40の旋回時の外側ほど大きく、内側ほど小さい略環状扇形の形状となる。領域設定部35および領域変更部36によれば、自車40が旋回する道路の形状に応じてより適切に警報領域を変更することができる。
【0065】
また、
図6の状態となった後、曲率変化量が変化量閾値以下に維持された状態で自車40が走行を継続すると、自車40の走行に応じて警報領域71R,71Lは横方向ラインL0の前方に拡張される。例えば、自車40が直進し続けると、将来の自車40の位置における横方向ラインは、L0に平行となるため、自車40の走行に応じて警報領域71R,71Lは横方向ラインL0の前方に延長される。自車40が旋回を開始することにより、
図6に示す警報領域71R,71Lのように警報領域が縮小された後、自車40の旋回終了を判定しなくても、直進時の状態まで警報領域の大きさを回復させることができる。
【0066】
上記の実施形態によれば、自車40の停車中や、走行速度が遅い場合にも、適切に警報領域を変更できる。例えば、
図7に示すように、3車線の道路90において、中央車線91Cを走行する自車40が右折レーンである右車線91Rに変更して停止している場合、自車40が走行中であることを前提として警報領域を変更する技術では、警報領域の変更を適切に行えないことがある。例えば、
図8に示すように、自車40が停止していることにより、点G0~G12およびH0~H12により囲まれた警報領域を変更できないことがある。
図7に示すように、左車線91Lを走行する他車41は、右車線91Rで停車中の自車40における警報対象として不適切であるが、
図8に示すように、点G0~G12およびH0~H12により囲まれた警報領域が維持されていると、他車41が警報領域内に検知され、報知が実行されてしまう。上記の実施形態によれば、自車40の走行軌跡の曲率変化量に基づいて警報領域を変更できるため、自車40が停車していても、
図8に示す警報領域72Lのように、適切に警報領域を縮小して、他車41が検知されて報知が実行されることを回避できる。
【0067】
また、上記の実施形態によれば、ステップS109~S111に示すように、自車40の走行軌跡の信頼度が低い場合には、警報判定線と交差する移動ベクトルを有する物体が検知された場合に報知を実行する。このため、例えば
図9に示すように、自車40の向きが、自車40の走行路に沿った進路に対して明らかに傾いている場合に、警報の報知を適切に実行できる。自車40の向きが、自車40の走行路に対して左に45°ほど傾斜している場合、
図9(a)に示すように、自車40の右後方に警報領域73Rを設定すると、警報領域73Rは走行路に対して斜めに設定されるため、自車40の遠方を走行し、警報対象として適切ではない他車41が、他車41bに示す位置に至ったときに報知を実行してしまう。これに対し、
図9(b)に示すように、警報判定線74Rに変更すると、他車41が、他車41aに示す位置から他車41cに示す位置まで走行しても、これを報知対象として検知することを回避することができる。警報判定線74Rによる報知に際しては、報知部37は、他車41の移動ベクトルと警報判定線74Rとが交差する場合に、報知を実行するように構成されているため、他車41が他車41aの位置にある時点から、その移動ベクトルを推定して、警報判定線74Rと交差するか否かについての判定を実行できる。このため、仮に他車41cが警報判定線74R上に検知されるような状況でも、その時点に先立って他車41aの時点において報知をするか否かの判定を実行できるため、報知が遅くなり過ぎることを回避できる。
【0068】
警報判定線は、自車40の走行路に沿った進路に対する自車40の走行軌跡のずれ角αが大きいほど横方向ラインL0に沿って長く設定されることが好ましい。例えば、
図9(b)において、警報判定線74Rの横方向ラインL0方向の長さをLAとすると、走行路の幅方向についての警報判定線74Rの長さLxは、LA×cosαによって算出されるため、ずれ角αが大きいほど長さLxが短くなる。長さLxを十分に確保するために、ずれ角αが大きいほど長さLAを長く設定することが好ましい。
【0069】
また、警報判定線は、自車40の走行路に沿った進路に対する自車40の走行軌跡の突出幅が大きいほど横方向ラインL0に沿って短く設定されることが好ましい。例えば、
図9(b)に示すように、自車40の後続車42~44の右端位置(右側面の位置)に対して、自車40の右端位置(右後方の角の位置)が右に突出している場合、その突出幅が大きいほど、警報判定線74Rの長さLAを短くすることが好ましい。
【0070】
上記の実施形態では、レーダ装置21L,21Rの検知領域70L,70Rに基づいて、自車40の左後側方と右後側方との双方に警報領域71L,71Rを設定する場合を例示して説明したが、これに限定されない。
図10に示すように、自車40の左後側方と右後側方に横方向に広がる検知領域80L,80Rに加えて、自車40の後方に向けて延びる検知領域82Cと、検知領域82Cの左右において同様に後方に延びる検知領域82L,82Rを物体検知部33における検知範囲としてもよい。検知領域80L,80Rは、後側方の死角に存在する車両等を検知して運転者に知らせる後側方車両接近警報に好適に利用でき、より具体的には、自動でトレーラの連結を検知して警報領域を拡大する場合や、自車40に接近する車両等を検知して降車のためにドアを開ける運転者に知らせる場合に好適に利用できる。検知領域82Cは、ハザードランプを点滅させて後続車に追突の危険を報知する場合に好適に利用できる。検知領域82L,82Rは、後方から接近する車両を検知し運転者に報知する場合に好適に利用できる。
【0071】
また、
図11に示すように、自車40の後方に警報領域81Cを設定してもよい。後方中央の警報領域81Cは、
図11に示すように、自車40の右後方の警報領域81Rと、左後方の警報領域81Lとの間となる領域に設定することが好ましい。
【0072】
また、自車40の後方の警報領域81Cは、自車40の右後方の警報領域81Rや、左後方の警報領域81Lと同様に後端の位置を決めてもよいし、異なる位置に決めてもよい。例えば、
図11に示すように、右後方の警報領域81Rと、左後方の警報領域81Lとは、横方向ラインL7を後端として変更するのに対し、後方中央の警報領域81Cは、より自車40の現在位置に近い横方向ラインL6を後端としてもよい。
【0073】
上記の各実施形態によれば、下記の効果を得ることができる。
【0074】
ECU30は、自車40の周囲の物体検知情報に基づいて、運転支援を実行する運転支援装置としての機能を有し、物体検知部33と、領域設定部35と、領域変更部36と、報知部37と、を備える。物体検知部33は、自車40の後方と後側方との少なくともいずれか一方の物体を検知する。領域設定部35は、自車40の後方と後側方との少なくともいずれか一方に警報領域を設定する。
【0075】
領域変更部36は、自車40の走行軌跡の曲率変化量に基づいて、自車40の走行軌跡と、自車40の走行路の形状に沿った進路との一致度合いを示す信頼度が高い領域を規定する領域信頼距離NRを算出する。領域変更部36は、さらに、領域信頼距離NRに基づいて、警報領域を変更する基準となる自車40の走行軌跡上の位置である基準位置を設定する。そして、基準位置における自車40の回転半径方向に延びる横方向ラインに基づいて、警報領域の後端を変更する。報知部37は、物体検知部33により警報領域内に物体が検知された場合に、報知を実行する。領域変更部36によれば、領域信頼距離NRは、自車40の走行軌跡の曲率変化量から算出され、算出した領域信頼距離NRに基づいて、警報領域を変更する基準となる自車40の走行軌跡上の位置である基準位置が設定される。このため、自車40が走行路に沿った走行をしなかった場合の影響を緩和するとともに、自車40の旋回時に、自車40の走行速度による影響を回避して基準位置を設定することができる。そして、領域変更部36は、基準位置における自車40の回転半径方向に延びる横方向ラインに基づいて、警報領域の後端を変更する。横方向ラインは、自車40の回転中心から放射状に延びるものであるため、警報領域の後端を同じ横方向ラインに基づいて設定すると、警報領域は、自車40の回転中心を中心とする略環状扇形形状に変更される。その結果、例えば、自車40の旋回時における自車40の内側ほど警報領域は小さくなり、自車40の外側ほど警報領域は大きくなり、自車40が旋回する道路の形状に応じてより適切に警報領域を変更することができる。
【0076】
領域変更部36は、領域信頼距離NRが所定距離(例えば最小警報距離Nmin)よりも近い場合に、警報領域を自車40の現在位置における横方向ラインL0上に設定した警報判定線に変更するように構成されていてもよい。この場合、報知部37は、警報判定線と交差する移動ベクトルを有する物体が検知された場合に、報知を実行するように構成されていることが好ましい。
【0077】
警報判定線は、自車40の走行路に沿った進路に対する自車40の走行軌跡のずれ角が大きいほど横方向ラインに沿って長く設定されることが好ましい。または、警報判定線は、自車40の走行路に沿った進路に対する自車40の走行軌跡の突出幅が大きいほど横方向ラインに沿って短く設定されることが好ましい。
【0078】
領域変更部36は、走行軌跡の曲率変化量の分散値dCv(i)から領域信頼距離NRを算出するように構成されていてもよい。分散値dCv(i)が小さく、曲率変化量がクロソイドパラメータに近いほど、自車40の走行軌跡の信頼度が高いと判定することができる。このため、例えば、分散値dCv(i)が所定の分散閾値Xを超えるである位置のうち、自車40に最も近い位置を抽出し、その抽出した位置よりも自車40に近い側を信頼度が高いと判定することができる。
【0079】
領域変更部36は、走行軌跡の変曲点から領域信頼距離NRを算出するように構成されていてもよい。例えば、自車40の走行軌跡上の変曲点のうち、自車40に最も近い変曲点を抽出し、その抽出した変曲点よりも近い側を信頼度が高いと判定することができる。
【0080】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0081】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。