(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20240709BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B60K1/00
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2023532014
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2022025946
(87)【国際公開番号】W WO2023277059
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2021109499
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 丈元
(72)【発明者】
【氏名】高橋 望
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/209324(WO,A1)
【文献】特開2009-201218(JP,A)
【文献】特開2000-217205(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017373(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
H02K 7/116
B60K 17/356
F16H 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
一対の車輪にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材と、
前記回転電機と一対の前記出力部材との間で駆動力を伝達する伝達機構と、
前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、
前記インバータ装置、前記回転電機、及び、前記伝達機構を収容すると共に、内部に油貯留部が設けられたケースと、
前記ケースの内部と外部とを連通させるブリーザ室を有するブリーザ装置と、を備え、
前記回転電機と一対の前記出力部材とは、互いに平行な2つの軸に分かれて配置され、
前記回転電機の回転軸心を第1軸心とし、一対の前記出力部材の回転軸心を第2軸心とし、前記第1軸心及び前記第2軸心に平行な方向を軸方向とし、上下方向視で前記軸方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側として、
前記第2軸心は、前記第1軸心に対して前記幅方向第1側に配置され、
前記インバータ装置は、前記第2軸心に対して前記幅方向第1側に配置されていると共に、上下方向の配置領域が前記回転電機と一対の前記出力部材とに重複するように配置され、
前記ブリーザ室の少なくとも一部が、前記幅方向における前記回転電機と前記インバータ装置との間であって、上下方向の配置領域が前記回転電機と前記インバータ装置とに重複し、且つ、前記第1軸心よりも上側に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記伝達機構は、前記回転電機の側から伝達される駆動力を一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構を備えると共に、一対の前記出力部材に駆動連結される出力ギヤを一対の前記出力部材と同軸に備え、
前記出力ギヤは、前記差動歯車機構が備える差動ケース部と一体的に回転するように当該差動ケース部に連結され、
前記第1軸心は、前記出力ギヤの上下方向の配置領域内に配置されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第2軸心は、前記第1軸心よりも下側に配置されている、請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記ブリーザ室の前記軸方向の配置領域の全体が、前記回転電機の前記軸方向の配置領域に収まっている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記ケースは、前記回転電機を収容する回転電機収容室と、前記伝達機構を収容する伝達機構収容室と、を備え、
前記回転電機収容室と前記伝達機構収容室とが前記軸方向に並んで配置され、
前記ブリーザ室は、前記ケースの内部において前記回転電機収容室と連通している、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記油貯留部は、前記回転電機収容室と前記伝達機構収容室との双方に亘って設けられている、請求項5に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記回転電機と前記インバータ装置とを接続する配線を備え、
前記ブリーザ室は、前記軸方向に沿う軸方向視で前記配線と重複するように配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記ブリーザ室は、上下方向視で一対の前記出力部材の少なくとも一方と重複するように配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項9】
前記ブリーザ室の前記幅方向の配置領域の全体が、前記回転電機の前記幅方向の配置領域に収まっている、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と、回転電機と一対の出力部材との間で駆動力を伝達する伝達機構と、回転電機を駆動制御するインバータ装置と、ケースと、ケースの内部と外部とを連通させるブリーザ装置と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置の一例が、特開2014-79110号公報(特許文献1)に開示されている。以下、背景技術の説明において括弧内に示す符号は特許文献1のものである。特許文献1の車両用駆動装置は、モータ(3)と、モータ(3)と一対の駆動軸(8)との間で駆動力を伝達する自動変速機(5)及び差動装置(7)と、モータ(3)を駆動制御するインバータ(10)と、ハウジング(15)と、ハウジング(15)の内部と外部とを連通させるブリーザ(30)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1にはインバータ装置の具体的な配置構成について記載されていないが、上記のような車両用駆動装置では、インバータ装置及びブリーザ装置の配置も含めて車両用駆動装置を構成する各部を適切に配置しなければ、車両用駆動装置の寸法が大きくなり、車両用駆動装置の車両への搭載性が悪化する可能性がある。
【0005】
そこで、車両用駆動装置がインバータ装置及びブリーザ装置を備える場合に、車両用駆動装置の小型化を図りやすい技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る車両用駆動装置は、回転電機と、一対の車輪にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材と、前記回転電機と一対の前記出力部材との間で駆動力を伝達する伝達機構と、前記回転電機を駆動制御するインバータ装置と、前記インバータ装置、前記回転電機、及び、前記伝達機構を収容すると共に、内部に油貯留部が設けられたケースと、前記ケースの内部と外部とを連通させるブリーザ室を有するブリーザ装置と、を備え、前記回転電機と一対の前記出力部材とは、互いに平行な2つの軸に分かれて配置され、前記回転電機の回転軸心を第1軸心とし、一対の前記出力部材の回転軸心を第2軸心とし、前記第1軸心及び前記第2軸心に平行な方向を軸方向とし、上下方向視で前記軸方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側として、前記第2軸心は、前記第1軸心に対して前記幅方向第1側に配置され、前記インバータ装置は、前記第2軸心に対して前記幅方向第1側に配置されていると共に、上下方向の配置領域が前記回転電機と一対の前記出力部材とに重複するように配置され、前記ブリーザ室の少なくとも一部が、前記幅方向における前記回転電機と前記インバータ装置との間であって、上下方向の配置領域が前記回転電機と前記インバータ装置とに重複し、且つ、前記第1軸心よりも上側に配置されている。
【0007】
本構成によれば、インバータ装置が、上下方向の配置領域が回転電機と一対の出力部材とに重複するように配置されるため、インバータ装置を配置することによる車両用駆動装置の上下方向の大型化を抑制することができる。そして、本構成では、第2軸心が、第1軸心に対して幅方向第1側に配置され、インバータ装置が、第2軸心に対して幅方向第1側に配置される。そのため、軸方向に沿う軸方向視で、回転電機の外周面とインバータ装置とにより幅方向の両側及び下側の三方から囲まれたような形状の空間(以下、「対象空間」という)が形成され、本構成によれば、この対象空間を利用してブリーザ室を配置することができる。よって、ブリーザ室を有するブリーザ装置の上下方向における突出量(具体的には、軸方向視でのケースの最上部からの突出量)を少なく抑えやすく、上下方向における車両用駆動装置の小型化を図りやすい。
【0008】
なお、上記のように対象空間を利用してブリーザ室を配置することで、回転電機とインバータ装置との少なくとも一方が配置された軸方向の領域にブリーザ室の少なくとも一部を配置することも容易となる。よって、本構成によれば、軸方向における車両用駆動装置の小型化も図りやすい。
【0009】
以上のように、本構成によれば、車両用駆動装置がインバータ装置及びブリーザ装置を備える場合に、車両用駆動装置の小型化を図りやすくなっている。
【0010】
車両用駆動装置の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る車両用駆動装置が搭載された車両の模式図
【
図4】実施形態に係る車両用駆動装置の各部品の軸方向視での配置関係を示す図
【
図5】実施形態に係る車両用駆動装置の各部品の軸方向視での配置関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、上下方向V(
図4等参照)は、車両用駆動装置100の使用状態での鉛直方向に沿う方向、すなわち、車両用駆動装置100をその使用状態での向きに配置した場合の鉛直方向に沿う方向を意味する。車両用駆動装置100は車両200(
図1参照)に搭載されて使用されるため、上下方向Vは、車両用駆動装置100が車両200に搭載された状態(以下、「車両搭載状態」という)において鉛直方向に沿う方向、より具体的には、車両搭載状態であって車両200が平坦路(水平面に沿う道路)に停止している状態での鉛直方向に沿う方向となる。そして、上側V1及び下側V2は、この上下方向Vにおける上側及び下側を意味する。また、以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置100に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
【0013】
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等)が含まれていてもよい。
【0014】
本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向の配置領域が重複する」とは、一方の部材の特定方向の配置領域内に、他方の部材の特定方向の配置領域の少なくとも一部が含まれることを意味する。
【0015】
図3に示すように、車両用駆動装置100は、回転電機1と、一対の車輪W(
図1参照)にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材6と、回転電機1と一対の出力部材6との間で駆動力を伝達する伝達機構3と、回転電機1を駆動制御するインバータ装置90と、ケース2と、を備えている。ケース2は、インバータ装置90、回転電機1、及び、伝達機構3を収容する。ケース2は、一対の出力部材6も収容している。ケース2の内部には、油貯留部ORが設けられている。
【0016】
一対の出力部材6の一方である第1出力部材61は、一対の車輪Wの一方である第1車輪W1に駆動連結され、一対の出力部材6の他方である第2出力部材62は、一対の車輪Wの他方である第2車輪W2に駆動連結される。
図1に示すように、車両用駆動装置100が搭載される車両200は、第1車輪W1と一体的に回転する第1ドライブシャフト63と、第2車輪W2と一体的に回転する第2ドライブシャフト64と、を備えている。第1ドライブシャフト63は、例えば等速ジョイントを介して第1車輪W1に連結され、第2ドライブシャフト64は、例えば等速ジョイントを介して第2車輪W2に連結される。そして、第1出力部材61は、第1ドライブシャフト63と一体的に回転するように第1ドライブシャフト63に連結され、第2出力部材62は、第2ドライブシャフト64と一体的に回転するように第2ドライブシャフト64に連結される。
【0017】
車両用駆動装置100は、回転電機1の出力トルクを、一対の出力部材6を介して一対の車輪Wに伝達させて、車両用駆動装置100が搭載された車両200を走行させる。すなわち、回転電機1は、一対の車輪Wの駆動力源である。一対の車輪Wは、車両200における左右一対の車輪(例えば、左右一対の前輪、又は左右一対の後輪)である。本実施形態では、回転電機1は、3相交流(多相交流の一例)で駆動される交流回転電機である。回転電機1は、直流電力と交流電力との間の電力変換を行うインバータ装置90を介して、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置と電気的に接続されており、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、車両200の慣性力等により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。
【0018】
図3に示すように、回転電機1と一対の出力部材6とは、互いに平行な2つの軸(具体的には、第1軸心C1及び第2軸心C2)に分かれて配置されている。具体的には、回転電機1が、第1軸心C1上に配置され、一対の出力部材6が、第1軸心C1とは異なる第2軸心C2上に配置されている。伝達機構3は、一対の出力部材6の少なくとも一方に駆動連結される出力ギヤ30を、一対の出力部材6と同軸に(すなわち、第2軸心C2上に)備えている。
【0019】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、軸方向Aが車両左右方向に沿う向きで車両200に搭載される。軸方向Aは、第1軸心C1及び第2軸心C2に平行な方向、言い換えれば、第1軸心C1及び第2軸心C2の間で共通する軸方向である。すなわち、軸方向Aは、回転電機1の回転軸心が延びる方向であり、一対の出力部材6の回転軸心が延びる方向でもある。ここで、軸方向Aの一方側を軸方向第1側A1とし、軸方向Aの他方側(軸方向Aにおける軸方向第1側A1とは反対側)を軸方向第2側A2とする。軸方向第1側A1は、軸方向Aにおける伝達機構3に対して回転電機1が配置される側である。
図3に示すように、第1出力部材61は、一対の出力部材6のうちの軸方向第1側A1に配置される方の出力部材6であり、第2出力部材62は、一対の出力部材6のうちの軸方向第2側A2に配置される方の出力部材6である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、軸方向第1側A1が車両右側となり、軸方向第2側A2が車両左側となる向きで、車両200に搭載される。よって、第1出力部材61が駆動連結される第1車輪W1は、右輪であり、第2出力部材62が駆動連結される第2車輪W2は、左輪である。
図1では、車両用駆動装置100が、左右一対の前輪を駆動する前輪駆動方式の駆動装置である場合を想定している。よって、
図1に示す例では、第1車輪W1は右前輪であり、第2車輪W2は左前輪である。
【0021】
図3に示すように、回転電機1は、ロータ10及びステータ11を備えている。ステータ11は、ケース2に固定され、ロータ10は、ステータ11に対して回転可能にケース2に支持されている。本実施形態では、ステータ11は、締結ボルト等の締結部材14を用いてケース2に固定されている。また、本実施形態では、回転電機1は、インナロータ型の回転電機であり、ロータ10は、ステータ11に対して径方向の内側に、径方向に沿う径方向視でステータ11と重複するように配置されている。ここでの径方向は、第1軸心C1を基準とする径方向、言い換えれば、回転電機1の回転軸心を基準とする径方向である。
【0022】
ステータ11は、ステータコア12と、ステータコア12から軸方向Aに突出するコイルエンド部13と、を備えている。ステータコア12にはコイルが巻装されており、コイルにおけるステータコア12から軸方向Aに突出する部分がコイルエンド部13を形成している。コイルエンド部13は、ステータコア12に対して軸方向Aの両側に形成されている。
図5に示すように、本実施形態では、ステータコア12は、軸方向Aに延びる円筒状に形成された本体部12aに加えて、本体部12aに対して径方向(第1軸心C1を基準とする径方向)の外側に突出するように形成された突出部12bを備えている。突出部12bには、ステータコア12をケース2に固定するための締結部材14が挿通される挿通孔が形成されている。
【0023】
図3に示すように、伝達機構3は、回転電機1に駆動連結される入力部材16を、回転電機1と同軸に(すなわち、第1軸心C1上に)備えている。本実施形態では、入力部材16は、ロータ10と一体的に回転するようにロータ10に連結されている。
図3に示す例では、車両用駆動装置100は、ロータ10が固定されるロータ軸15を備えており、入力部材16は、ロータ軸15と一体的に回転するようにロータ軸15に連結されている。具体的には、入力部材16における軸方向第1側A1の部分が、ロータ軸15における軸方向第2側A2の部分に連結(ここでは、スプライン連結)されている。このような構成とは異なり、車両用駆動装置100がロータ軸15を備えず、ロータ10が入力部材16(具体的には、入力部材16における軸方向第1側A1の部分)に固定される構成とすることもできる。
【0024】
図3に示すように、本実施形態では、伝達機構3は、差動歯車機構5を備えている。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、一対の出力部材6に分配する。本実施形態では、差動歯車機構5は、一対の出力部材6と同軸に(すなわち、第2軸心C2上に)配置されており、回転電機1の側から出力ギヤ30に伝達される駆動力を一対の出力部材6に分配する。すなわち、本実施形態では、出力ギヤ30は、差動歯車機構5を介して、一対の出力部材6の双方に駆動連結されている。本実施形態では、差動歯車機構5は、傘歯車式の差動歯車機構であり、出力ギヤ30は、差動歯車機構5が備える差動ケース部50と一体的に回転するように当該差動ケース部50に連結されている。差動ケース部50には、第1サイドギヤ51と第2サイドギヤ52とが収容されている。そして、差動歯車機構5は、出力ギヤ30の回転を、第1サイドギヤ51と第2サイドギヤ52とに分配する。差動歯車機構5は、回転電機1に対して軸方向第2側A2に配置されている。
【0025】
第1サイドギヤ51は、第1出力部材61と一体的に回転し、第2サイドギヤ52は、第2出力部材62と一体的に回転する。本実施形態では、第1サイドギヤ51は、第1出力部材61を構成する部材(ここでは、軸部材)とは別の部材に形成されており、第1出力部材61と一体的に回転するように第1出力部材61に連結(ここでは、スプライン連結)されている。第1出力部材61における少なくとも軸方向第1側A1の部分は、軸方向Aに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されており、第1ドライブシャフト63(
図1参照)は、第1出力部材61の内部(内周面に囲まれる空間)に、軸方向第1側A1から挿入される。また、本実施形態では、第2サイドギヤ52は、第2出力部材62を構成する部材(ここでは、軸部材)に形成されている。具体的には、第2サイドギヤ52は、第2出力部材62における軸方向第1側A1の端部に形成されている。第2出力部材62における少なくとも軸方向第2側A2の部分は、軸方向Aに延びる筒状(具体的には、円筒状)に形成されており、第2ドライブシャフト64(
図1参照)は、第2出力部材62の内部(内周面に囲まれる空間)に、軸方向第2側A2から挿入される。
【0026】
図3に示すように、本実施形態では、伝達機構3は、回転電機1と出力ギヤ30との間の動力伝達経路に、回転電機1及び出力ギヤ30とは別軸に配置されたカウンタギヤ機構4を備えている。カウンタギヤ機構4は、第1軸心C1及び第2軸心C2とは異なる第3軸心C3上に配置されている。第3軸心C3は、第1軸心C1及び第2軸心C2に平行な軸心である。本実施形態では、カウンタギヤ機構4は、入力部材16と一体的に回転する入力ギヤ17に噛み合うカウンタ入力ギヤ40aと、出力ギヤ30に噛み合うカウンタ出力ギヤ40bと、カウンタ入力ギヤ40aとカウンタ出力ギヤ40bとを連結するカウンタ軸40と、を備えている。入力ギヤ17は、回転電機1に対して軸方向第2側A2に配置され、カウンタギヤ機構4は、回転電機1に対して軸方向第2側A2に配置されている。本実施形態では、カウンタ入力ギヤ40aは、カウンタ出力ギヤ40bに対して軸方向第2側A2に配置されている。
【0027】
本実施形態では、カウンタ入力ギヤ40aは入力ギヤ17よりも大径に形成され、カウンタ出力ギヤ40bは出力ギヤ30よりも小径に形成されている。よって、入力部材16の回転は、入力ギヤ17とカウンタ入力ギヤ40aとの歯数比に応じて減速されると共に、カウンタ出力ギヤ40bと出力ギヤ30との歯数比に応じて更に減速されて(すなわち、二段減速されて)、出力ギヤ30に伝達される。
【0028】
図2及び
図3に示すように、本実施形態では、ケース2は、第1ケース部21と、第2ケース部22と、第3ケース部23と、を備えている。第2ケース部22は、第1ケース部21の軸方向第2側A2に接合され、第3ケース部23は、第1ケース部21の軸方向第1側A1に接合されている。第1ケース部21と第3ケース部23とに囲まれる空間に回転電機1が収容され、第1ケース部21と第2ケース部22とに囲まれる空間に伝達機構3が収容されている。このように、ケース2は、回転電機1を収容する回転電機収容室S1と、伝達機構3を収容する伝達機構収容室S3と、を備えている。収容室は、収容対象物が収容される収容空間を形成している。
図3及び
図6に示すように、回転電機収容室S1と伝達機構収容室S3とは、軸方向Aに並んで配置されている。本実施形態では、第1出力部材61は、回転電機収容室S1に収容されている。具体的には、第1出力部材61における少なくとも回転電機1と軸方向Aに重複する部分(軸方向Aの配置領域が重複する部分)が、回転電機収容室S1に収容されている。このように、本実施形態では、回転電機1と第1出力部材61とが、ケース2が備える共通の収容室(具体的には、回転電機収容室S1)に収容されている。
【0029】
本実施形態では、ケース2は、更に、インバータ装置90が収容されるインバータ収容室S2を備えている。具体的には、ケース2は、第1ケース部21に接合される第4ケース部24を備えており、第1ケース部21と第4ケース部24とに囲まれる空間(インバータ収容室S2)にインバータ装置90が収容されている。インバータ装置90は、ボルト等によってケース2に固定された状態で、インバータ収容室S2に収容されている。本実施形態では、インバータ収容室S2は、後述する第1方向第1側X1(
図2参照)に開口するように第1ケース部21に形成されており、第4ケース部24は、当該開口部を塞ぐように第1ケース部21に接合されている。詳細は省略するが、インバータ装置90は、インバータ回路を構成する複数のスイッチング素子を備えたスイッチング素子ユニット(パワーモジュール)と、インバータ回路を制御する制御装置が実装された制御基板と、インバータ回路の直流側の正負両極間電圧を平滑化する平滑コンデンサと、を備えており、これらのスイッチング素子ユニット、制御基板、及び平滑コンデンサが、インバータ収容室S2に収容されている。このように、本実施形態では、回転電機収容室S1とインバータ収容室S2とが1つのケース2に一体的に形成されている。
【0030】
図3に示すように、ケース2は、回転電機収容室S1とインバータ収容室S2とを区画する隔壁25(区画壁)を備えている。本実施形態では、回転電機収容室S1とインバータ収容室S2とが、ケース2(ここでは、第1ケース部21)に一体的に形成されている。具体的には、回転電機収容室S1とインバータ収容室S2とは、一部材(例えば、ダイカスト法によって形成された、材質を共通とする1つの部材)に形成されている。そして、本実施形態では、回転電機収容室S1とインバータ収容室S2とは、1枚の隔壁25によって区画されている。
【0031】
図2に示すように、本実施形態では、ケース2には、ケース2の外部に配置されたケーブル7(
図6参照)とインバータ装置90とを電気的に接続するためのコネクタ80が設けられている。なお、
図6では、ケーブル7を簡略化して示している。
図4~
図6に示すように、コネクタ80は、低電圧コネクタ80Lと、低電圧コネクタ80Lよりも高い電圧の電力を中継する高電圧コネクタ80Hと、を含んでいる。インバータ装置90が備える制御基板に電力を供給するための電源線(低電圧ケーブル7Lの一例)や、当該制御基板に制御信号を伝達するための信号線(低電圧ケーブル7Lの一例)が、低電圧コネクタ80Lに接続される。また、インバータ装置90が備えるインバータ回路に電力を供給するための電源線(高電圧ケーブル7Hの一例)が、高電圧コネクタ80Hに接続される。
【0032】
ここで、
図4に示すように、軸方向Aに沿う軸方向視で回転電機1とインバータ装置90とが並ぶ方向を第1方向Xとし、軸方向A及び第1方向Xの双方に直交する方向を第2方向Yとする。本実施形態では、第1方向Xは後述する幅方向Hと同じ方向であり、第2方向Yは上下方向Vと同じ方向である。また、第1方向Xの一方側を第1方向第1側X1とし、第1方向Xの他方側(第1方向Xにおける第1方向第1側X1とは反対側)を第1方向第2側X2とし、第2方向Yの一方側を第2方向第1側Y1とし、第2方向Yの他方側(第2方向Yにおける第2方向第1側Y1とは反対側)を第2方向第2側Y2とする。第1方向第1側X1は、第1方向Xにおける回転電機1に対してインバータ装置90が配置される側である。なお、
図4では、ステータコア12(具体的には、上述した本体部12a)の外周面を破線で示し、各ギヤの歯底円及び歯先円を一点鎖線で示し、第1出力部材61の外周面(具体的には、第1出力部材61における回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれて配置される部分の外周面)を実線で示している。
【0033】
本実施形態では、車両用駆動装置100は、第2方向第1側Y1が上側V1となり、第2方向第2側Y2が下側V2となる向きで、車両200に搭載される。また、本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1方向第2側X2が前側L1(車両前後方向Lの前側)となり、第1方向第1側X1が後側L2(車両前後方向Lの後側)となる向きで、車両200に搭載される。
図1に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、車両200における車両前後方向Lの中央部よりも前側L1に搭載される。そのため、第1方向Xにおける回転電機1に対してインバータ装置90が配置される側であって、本実施形態では後側L2となる第1方向第1側X1は、車両前後方向Lの中央側となる。よって、本実施形態では、車両搭載状態において、インバータ装置90は、回転電機1よりも車両前後方向Lの中央側に配置される。なお、車両用駆動装置100が、車両200における車両前後方向Lの中央部よりも後側L2に搭載される場合には、車両用駆動装置100を、第1方向第2側X2が後側L2となり、第1方向第1側X1が前側L1となる向きで車両200に搭載することで、インバータ装置90が回転電機1よりも車両前後方向Lの中央側に配置される構成とすることができる。このように車両用駆動装置100が車両200における車両前後方向Lの中央部よりも後側L2に搭載される場合、車両用駆動装置100により駆動される一対の車輪Wは、例えば左右一対の後輪とされる。
【0034】
車両200が、左右一対の前輪及び左右一対の後輪を備える場合に、左右一対の前輪及び左右一対の後輪のうちの車両用駆動装置100により駆動されない方(
図1に示す例では、左右一対の後輪)が、車両用駆動装置100以外の駆動装置により駆動される構成とすることもできる。車両用駆動装置100以外の駆動装置は、例えば、内燃機関(回転電機以外の駆動力源の一例)の出力トルクを駆動対象の一対の車輪に伝達させる構成の駆動装置、回転電機(車両用駆動装置100が備える回転電機1とは別の回転電機)の出力トルクを駆動対象の一対の車輪に伝達させる構成の駆動装置、或いは、内燃機関及び回転電機(車両用駆動装置100が備える回転電機1とは別の回転電機)の双方の出力トルクを駆動対象の一対の車輪に伝達させる構成の駆動装置とされる。車両用駆動装置100以外の駆動装置を、車両用駆動装置100と同じ構成の駆動装置とすることもできる。
【0035】
ここで、上下方向Vに沿う上下方向視で軸方向Aに直交する方向を幅方向Hとする。本実施形態では、軸方向Aに直交する水平方向(すなわち、軸方向A及び上下方向Vに直交する方向)を幅方向Hとする。
図4に示すように、本実施形態では、回転電機1とインバータ装置90とは、それぞれの上下方向Vの配置領域が重複するように配置されている。そのため、一例として、幅方向Hを、第1方向Xとして定義することができる。この場合、
図4に示すように、第2方向Yは上下方向Vに平行な方向となる。また、別例として、軸方向視で、第1軸心C1とインバータ装置90の中心90aとを通る仮想直線Eに沿う方向を、第1方向Xとして定義することもできる。ここで、軸方向視でのインバータ装置90の中心90aは、インバータ装置90の軸方向視での外形(外縁)を成す図形の重心とすることができる。
図4に示す例では、インバータ装置90の軸方向視での外形を成す図形は、長方形状(ここでは、第2方向Yに長い長方形状、言い換えれば、上下方向Vに長い長方形状)の図形であり、この長方形の重心(具体的には、対角線の交点)を軸方向視でのインバータ装置90の中心90aとすることができる。
図4に示す例では、幅方向Hと、軸方向視で仮想直線Eに沿う方向とは、互いに平行な方向となる。すなわち、
図4に示す例では、上記2つの定義のいずれによっても、第1方向Xは同じ方向に定義される。ここで、幅方向Hの一方側(本実施形態では、第1方向第1側X1と一致)を幅方向第1側H1とし、幅方向第1側H1とは反対側(本実施形態では、第1方向第2側X2と一致)を幅方向第2側H2とする。
【0036】
図4に示すように、本実施形態では、第1出力部材61は、回転電機1及びインバータ装置90の双方が配置される第2方向Yの位置において、回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれて配置されている。第1出力部材61における回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に挟まれる部分は、回転電機1と軸方向Aの配置領域が重複すると共に、インバータ装置90と軸方向Aの配置領域が重複するように配置されている(
図3参照)。そして、
図4に示すように、出力ギヤ30は、軸方向視で、回転電機1とインバータ装置90とのそれぞれと重複するように配置されている。具体的には、出力ギヤ30における第1方向第2側X2の部分が軸方向視で回転電機1と重複し、出力ギヤ30における第1方向第1側X1の部分が軸方向視でインバータ装置90と重複するように、出力ギヤ30が配置されている。
図3に示すように、出力ギヤ30は、回転電機1及びインバータ装置90に対して軸方向Aの一方側(具体的には、軸方向第2側A2)に配置されている。そして、回転電機1及びインバータ装置90は、それぞれの軸方向Aの配置領域が重複するように配置されている。本実施形態では、車両搭載状態において、インバータ装置90の少なくとも一部(
図4に示す例では、一部のみ)が、第2軸心C2よりも下側V2に配置される。なお、車両搭載状態において、インバータ装置90の全体が、第2軸心C2よりも上側V1に配置される構成とすることもできる。
【0037】
上記のように、本実施形態では、出力ギヤ30は、軸方向視で、回転電機1とインバータ装置90とのそれぞれと重複するように配置されている。そのため、
図4及び
図5に示すように、インバータ装置90は、軸方向視で出力ギヤ30と重複するように配置された重複部分95を備えている。そして、コネクタ80(具体的には、低電圧コネクタ80L及び高電圧コネクタ80H)は、ケース2における、重複部分95(言い換えれば、軸方向視で重複部分95と重複するケース2の部分)よりも上側V1であって、軸方向視でインバータ装置90と重複する領域(以下、「対象領域」という)に配置されている。
図2に示すように、コネクタ80は、ケース2における軸方向Aの端面に配置されている。
【0038】
図4に示すように、本実施形態では、一例として、インバータ装置90は、第2軸心C2よりも下側V2から出力ギヤ30の上端よりも上側V1までの上下方向Vの範囲に亘って配置されている。インバータ装置90がこのように配置されるため、ケース2における軸方向視でインバータ装置90と重複する領域における、重複部分95よりも上側V1の部分が、デッドスペースとなりやすい。この車両用駆動装置100では、コネクタ80が上記の対象領域に配置されるため、デッドスペースとなりやすい領域を有効に利用してコネクタ80を配置することが可能となっている。
【0039】
図4~
図6に示すように、本実施形態では、一例として、低電圧コネクタ80Lと高電圧コネクタ80Hとが、インバータ装置90を挟んで軸方向Aの互いに反対側に配置されている。具体的には、低電圧コネクタ80Lが、ケース2における軸方向第2側A2の端面に配置され(
図2参照)、高電圧コネクタ80Hが、ケース2における軸方向第1側A1の端面に配置されている。このような構成とは異なり、低電圧コネクタ80Lと高電圧コネクタ80Hとがインバータ装置90に対して軸方向Aの同じ側に配置される場合、低電圧コネクタ80Lと高電圧コネクタ80Hとの距離が短くなりやすく、高電圧コネクタ80Hが中継する電圧の影響によって、低電圧コネクタ80Lが中継する電圧(例えば、制御信号)にノイズがのる可能性がある。これに対して、上記のように低電圧コネクタ80Lと高電圧コネクタ80Hとをインバータ装置90を挟んで軸方向Aの互いに反対側に配置することで、低電圧コネクタ80Lと高電圧コネクタ80Hとの距離を長く確保して、上記のノイズの問題を発生し難くすることができる。
【0040】
本実施形態では、コネクタ80は、ケース2における軸方向Aの端面に配置され、車両用駆動装置100は、軸方向Aが車両左右方向に沿う向きで車両200に搭載される。このように、コネクタ80を、ケース2における車両前後方向L(前側L1又は後側L2)の端面やケース2における下側V2の端面ではなく、ケース2における車両左右方向(左側又は右側)の端面に配置することで、車両200の衝突時の衝突荷重の影響を受けにくい位置にコネクタ80を配置することができる。また、例えば、車両用駆動装置100を車両200の後部に搭載する場合には、上下方向Vにおける搭載制約が厳しくなりやすいが、コネクタ80を、ケース2における上側V1の端面ではなく、ケース2における車両左右方向(左側又は右側)の端面に配置することで、車両用駆動装置100の上下方向Vの寸法を小さく抑えて、車両用駆動装置100の車両200への搭載性を確保しやすくなる。
【0041】
図4に示すように、回転電機1の回転軸心である第1軸心C1、出力ギヤ30の回転軸心(言い換えれば、一対の出力部材6の回転軸心)である第2軸心C2、及び、カウンタギヤ機構4の回転軸心である第3軸心C3は、インバータ装置90の上下方向Vの配置領域内に配置されている。本実施形態では、第3軸心C3は、軸方向視で、第2軸心C2に対して第1方向Xにおけるインバータ装置90側とは反対側(すなわち、第1方向第2側X2)に配置されている。本実施形態では、第3軸心C3は、軸方向視で、第1軸心C1に対しても第1方向第2側X2に配置されている。また、本実施形態では、第2軸心C2と第3軸心C3とは、軸方向視で、第1軸心C1に対して第2方向Yにおける同じ側(ここでは、第2方向第2側Y2)に配置されている。すなわち、第2軸心C2は、軸方向視で、第1軸心C1に対して第2方向第2側Y2に配置されている。ここでは、第2軸心C2は、車両搭載状態において、軸方向視で、仮想直線Eに対して下側V2に配置される。また、第3軸心C3は、軸方向視で、第1軸心C1に対して第2方向第2側Y2に配置されている。ここでは、第3軸心C3は、車両搭載状態において、軸方向視で、仮想直線Eに対して下側V2に配置される。また、本実施形態では、第3軸心C3は、軸方向視で、第1軸心C1と第2軸心C2とを通る仮想直線に対してインバータ装置90の中心90a側とは反対側に配置されている。
【0042】
図4に示す例では、第2軸心C2とインバータ装置90との双方が配置された上下方向Vの領域において、第2軸心C2は、インバータ装置90に対して幅方向第2側H2に配置されている。また、回転電機1の幅方向第2側H2の端部は、第2軸心C2よりも幅方向第2側H2に配置されている。そして、第3軸心C3は、回転電機1(例えば、ステータコア12又は本体部12a)の幅方向第2側H2の端部よりも幅方向第1側H1に配置されている。このように第2軸心C2及び第3軸心C3が配置されるため、回転電機1の幅方向第2側H2の端部とインバータ装置90との幅方向Hの間に全体又は大部分が収まるように、出力ギヤ30及びカウンタギヤ機構4を配置することができる。よって、車両用駆動装置100の幅方向Hにおける小型化を図ることができる。
図4に示す例では、回転電機1の幅方向第2側H2の端部とインバータ装置90の幅方向第1側H1の端部との幅方向Hの間に、出力ギヤ30の全体及びカウンタギヤ機構4の全体が配置されている。
【0043】
図4に示す例では、第3軸心C3は、第2軸心C2よりも幅方向第2側H2に配置されている。また、回転電機1(具体的には、ステータコア12)は、カウンタギヤ機構4よりも大径に形成されており、第1軸心C1は、第3軸心C3よりも幅方向第1側H1に配置されている。そして、カウンタギヤ機構4の全体が、回転電機1(例えば、ステータコア12又は本体部12a)の幅方向第2側H2の端部よりも幅方向第1側H1に配置されている。このように回転電機1及びカウンタギヤ機構4を配置することで、カウンタギヤ機構4が回転電機1に対して幅方向第2側H2に突出しない範囲内で、回転電機1を幅方向Hでインバータ装置90の側に寄せて配置することができる。よって、車両用駆動装置100の幅方向Hにおける小型化を図ることができる。
図4に示す例では、第1軸心C1は、第2軸心C2よりも幅方向第2側H2に配置されている。
【0044】
また、
図4に示す例では、第2軸心C2及び第3軸心C3は、第1軸心C1よりも下側V2に配置されている。後述するように、油(潤滑や冷却のための油)を貯留する油貯留部ORがケース2の下部に形成されており(
図4参照)、このように第2軸心C2及び第3軸心C3を配置することで、油貯留部ORに貯留された油を、第2軸心C2に配置された出力ギヤ30と、第3軸心C3に配置されたギヤ(本例では、カウンタ入力ギヤ40a)との双方によって掻き揚げる構成とすることができる。よって、潤滑性能や冷却性能の向上を図ることができる。
図4に示す例では、出力ギヤ30の下端部が、回転電機1の下端部及びカウンタギヤ機構4の下端部のいずれよりも下側V2に配置されている。これにより、出力ギヤ30による油の掻き揚げを効率的に行うことができる。
【0045】
図4に示す例では、インバータ装置90は、第2軸心C2よりも下側V2から回転電機1(例えば、ステータコア12又は本体部12a)の上端よりも上側V1までの上下方向Vの範囲に亘って配置されている。このようにインバータ装置90が配置される場合、インバータ装置90の上下方向Vの配置領域内に全体又は大部分が収まるように、回転電機1を配置することができる。よって、車両用駆動装置100の上下方向Vにおける小型化を図ることができる。
【0046】
油貯留部ORは、回転電機収容室S1(具体的には、回転電機収容室S1の下部)と、伝達機構収容室S3(具体的には、伝達機構収容室S3の下部)との、少なくとも一方に設けられる。本実施形態では、
図4及び
図5に示すように、油貯留部ORは、回転電機収容室S1と伝達機構収容室S3との双方に亘って設けられている。図示は省略するが、回転電機収容室S1と伝達機構収容室S3とを連通する連通孔が、回転電機収容室S1と伝達機構収容室S3とを区画する中間壁28(
図3参照)に形成されている。この連通孔を介して、回転電機収容室S1と伝達機構収容室S3との間で油が流動可能となっている。
【0047】
図5に示す例では、回転電機収容室S1にオイルポンプOPが設けられている。オイルポンプOPとして、例えば、電動モータで駆動される電動オイルポンプを用いることができる。オイルポンプOPは、油貯留部ORに貯留された油を吸引する。オイルポンプOPから吐出された油は、例えば、回転電機1の冷却対象部位(コイルエンド部13等)に対して冷却のために供給される。オイルポンプOPは、回転電機収容室S1において、軸方向視で出力ギヤ30と重複するように配置されている。このようにオイルポンプOPを配置することで、回転電機収容室S1における軸方向視で出力ギヤ30と重複する空間をオイルポンプOPの配置空間として有効に利用して、車両用駆動装置100の小型化を図ることができる。なお、オイルポンプOPは、軸方向視で回転電機1と重複しないように配置されている。
【0048】
図5に示す例では、オイルポンプOPは、第1軸心C1と第2軸心C2との幅方向Hの間であって、第1軸心C1及び第2軸心C2よりも下側V2に配置されている。このようにオイルポンプOPを第1軸心C1と第2軸心C2との幅方向Hの間に配置することで、例えば、オイルポンプOPやそれに接続されるストレーナ(図示せず)を、エア吸いの発生を抑制しやすい幅方向Hの中央部分やその近くに配置しやすくなる。また、オイルポンプOPを、第1軸心C1及び第2軸心C2よりも下側V2に配置することで、ケース2の下部に形成された油貯留部ORの近くにオイルポンプOPを配置して、油の吸引抵抗を低く抑えやすくなる。
【0049】
図4~
図6に示す例では、オイルポンプOPが吐出した油は、オイルクーラ9(
図4及び
図6参照)を通った後、回転電機1に供給される。オイルクーラ9は、油と冷媒との間での熱交換によって油を冷却する。本例では、オイルクーラ9は、冷媒として冷却水を用いる水冷式のオイルクーラであり、
図4及び
図6に示すように、オイルクーラ9には、冷却水をオイルクーラ9に導入するための第1接続口P1と、冷却水をオイルクーラ9から排出するための第1接続口P1とが設けられている。
【0050】
本例では、第1接続口P1は、ケース2における上側V1の外面に配置されている。また、本例では、インバータ装置90には、当該インバータ装置90を冷却するための冷却水路が設けられている。そして、
図6に示すように、この冷却水路に冷却水を導入するための第2接続口P2と、この冷却水路から冷却水を排出するための第2接続口P2とが、ケース2における上側V1の外面に配置されている。このように、第1接続口P1と第2接続口P2とをケース2における同じ外面(同じ側の外面)に配置することで、これらの第1接続口P1や第2接続口P2に対する配管部材(ホース等)の接続作業が容易になる。また、配管部材の長さを短く抑えてコストの低減を図ることも可能である。
【0051】
図6に示す例では、オイルクーラ9は、平面視(上下方向Vに沿う方向視)で、回転電機収容室S1と伝達機構収容室S3との境界部を跨ぐように配置されている。本例では、ケース2における上側V1の外面に、下側V2に窪む凹部が形成されている。この凹部は、ケース2の内部空間における空きスペースを利用して形成されており、この凹部にオイルクーラ9が配置されている(
図4参照)。そのため、オイルクーラ9は、回転電機収容室S1(具体的には、回転電機収容室S1における上記凹部に対して軸方向第1側A1の部分)と伝達機構収容室S3(具体的には、伝達機構収容室S3における上記凹部に対して軸方向第2側A2の部分)との軸方向Aの間に配置されている。このように空きスペースを利用してオイルクーラ9を配置することで、車両用駆動装置100の大型化を抑制することができる。また、ケース2の下部に形成された油貯留部ORの車両200の走行時における油面の傾きを考慮して、オイルポンプOPやストレーナ(図示せず)は、軸方向Aの中央部分やその近くに配置されることが多いが、上記のようにオイルクーラ9を回転電機収容室S1と伝達機構収容室S3との軸方向Aの間に配置することで、オイルクーラ9と、オイルポンプOP及びストレーナとを、軸方向Aの同じ或いは近い位置に配置することができる。これにより、油路の複雑化を抑制することができる。なお、
図4に示す例では、オイルクーラ9は、第1軸心C1とインバータ装置90との幅方向Hの間に配置されている。
【0052】
図4に示すように、本実施形態では、第1出力部材61は、第2方向Yに沿う方向視で、回転電機1と重複するように配置されている。すなわち、第1出力部材61は、回転電機1と第1方向Xの配置領域が重複するように配置されている。ここでは、第1出力部材61における第1方向第2側X2の部分が第2方向Yに沿う方向視で回転電機1と重複するように、第1出力部材61が配置されている。一方、本実施形態では、第1出力部材61は、第2方向Yに沿う方向視で、インバータ装置90と重複しないように配置されている。なお、
図4に示す各部品の軸方向視での配置構成は一例であり、この配置構成は適宜変更することができる。例えば、
図4の配置構成を第1方向Xに反転させた構成、
図4の配置構成を第2方向Yに反転させた構成、或いは、
図4の配置構成を第1方向X及び第2方向Yの双方に反転させた構成とすることができる。
【0053】
図5に示すように、車両用駆動装置100は、回転電機1とインバータ装置90とを接続する配線91を備えている。そして、配線91が挿通される貫通孔26が、隔壁25を貫通して形成されている。なお、
図4は、車両用駆動装置100を軸方向第2側A2から見た場合の、車両用駆動装置100の各部品の軸方向視での配置関係を示しているのに対して、
図5は、車両用駆動装置100を軸方向第1側A1から見た場合の、車両用駆動装置100の各部品の軸方向視での配置関係を示している。貫通孔26には、端子93を備えた端子台が取り付けられており、当該端子93を介して、コイルエンド部13から引き出された動力線92とインバータ装置90に接続された電源線(図示せず)とが電気的に接続されている。これらの電源線、端子93、及び動力線92が、回転電機1とインバータ装置90との間で電力(回転電機1を駆動するための電力や回転電機1が発電した電力)を伝達するための配線91を構成している。本実施形態では、回転電機1を駆動する交流電力の相数が“3”であることに対応して、3つの動力線92が設けられており、3つの貫通孔26が隔壁25に形成されている。
【0054】
図5に示すように、本実施形態では、車両搭載状態において、貫通孔26(ここでは、3つの全ての貫通孔26)が、第2軸心C2よりも上側V1であって回転電機1及びインバータ装置90の双方が配置される高さ(上下方向Vの位置)において、軸方向視で回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に配置される。なお、ここでは、回転電機1が配置される高さには、ステータコア12の上述した突出部12bが配置される高さを含めている。
図5に示す例では、車両搭載状態において、貫通孔26(ここでは、3つの全ての貫通孔26)が、第1軸心C1よりも上側V1であって回転電機1及びインバータ装置90の双方が配置される高さにおいて、軸方向視で回転電機1とインバータ装置90との第1方向Xの間に配置される。
【0055】
図5及び
図6に示すように、車両用駆動装置100はブリーザ装置8を備えている。ブリーザ装置8は、ケース2の内部と外部との間の圧力差を低減するための装置である。ブリーザ装置8は、ケース2の内部と外部とを連通させるブリーザ室8aを有している。ブリーザ室8aは、ケース2の内部におけるブリーザ室8aの外側の空間に連通するように形成されている。本実施形態では、ブリーザ室8aは、軸方向第1側A1(
図5における紙面手前側)に向かって開口するように形成されており、当該開口部を介して回転電機収容室S1に連通している。
図5では省略しているが、ブリーザ室8aの軸方向第1側A1の開口部には、カバー部材が取り付けられており、当該カバー部材とブリーザ室8aの壁部との間に形成される隙間、或いは、当該カバー部材に形成された孔部を介して、ブリーザ室8aと回転電機収容室S1との間で空気が流動するように構成されている。
【0056】
上記のように、本実施形態では、ブリーザ室8aは、ケース2の内部において回転電機収容室S1と連通している。回転電機収容室S1は、ケース2の内部の他の収容室(例えば、伝達機構収容室S3)と、孔部や隙間等を介して空気の流動が可能に連通している。そのため、ブリーザ室8aを回転電機収容室S1に連通するように形成することで、ケース2の内部と外部との間の圧力差を低減することができる。
【0057】
図5に示す例では、ブリーザ室8aとケース2の外部とを連通させるブリーザ孔8bが、ケース2における上側V1の外面に開口するように形成されている。そして、ブリーザ装置8は、ブリーザ孔8bに対してケース2の外部から取り付けられるブリーザプラグ8cを備えている。ブリーザプラグ8cは、ブリーザ孔8bからケース2の外部に油が漏出することを抑制するためや、水や異物等がケース2の外部からブリーザ孔8bに入ることを抑制するために設けられている。
【0058】
図5に示すように、第2軸心C2は、第1軸心C1に対して幅方向第1側H1に配置されている。そして、インバータ装置90は、第2軸心C2に対して幅方向第1側H1に配置されていると共に、上下方向Vの配置領域が回転電機1と一対の出力部材6とに重複するように配置されている。そのため、軸方向視で、回転電機1の外周面とインバータ装置90とにより幅方向Hの両側及び下側V2の三方から囲まれたような形状の空間である対象空間Tが形成されている。
図5に示す例では、対象空間Tは、上述した突出部12bを含む回転電機1を用いて形成されており、対象空間Tの最上部は、突出部12bとインバータ装置90との幅方向Hの間に形成されている。なお、本実施形態では、第1軸心C1は、出力ギヤ30の上下方向Vの配置領域内に配置されている。また、本実施形態では、第2軸心C2は、第1軸心C1よりも下側V2に配置されている。
【0059】
ブリーザ室8aは、上記の対象空間Tを利用して配置されている。具体的には、
図5に示すように、ブリーザ室8aの少なくとも一部(本例では、ブリーザ室8aの少なくとも下部)が、幅方向Hにおける回転電機1とインバータ装置90との間であって、上下方向Vの配置領域が回転電機1とインバータ装置90とに重複し、且つ、第1軸心C1よりも上側V1に配置されている。ここでは、ブリーザ室8aの少なくとも一部(本例では、ブリーザ室8aの少なくとも下部)が、回転電機1及びインバータ装置90の双方が配置された上下方向Vの領域に配置されている。このように対象空間Tを利用してブリーザ室8aを配置することで、上下方向Vにおける車両用駆動装置100における小型化や、幅方向Hにおける車両用駆動装置100の小型化を図ることができる。
【0060】
図5に示すように、本実施形態では、ブリーザ室8aが、軸方向視で配線91(具体的には、配線91における回転電機収容室S1に配置される部分)と重複するように配置されている。ブリーザ室8aは、伝達機構収容室S3に比べて油の飛散の少ない回転電機収容室S1に開口するように形成されている。配線91は、油面に浸かることを極力避けるために、回転電機収容室S1における上側V1に配置されるが、回転電機収容室S1の内部には、一般に、ステータコア12の軸方向Aの長さに応じた空きスペースが、配線91に対して軸方向Aの一方側に形成される。
図5に示す例では、配線91が、ステータコア12における軸方向第1側A1(
図5における紙面手前側)の端部或いはその近傍に配置されているため、ステータコア12の軸方向Aの長さに応じた空きスペースが、配線91に対して軸方向第2側A2(
図5における紙面奥側)に形成されている。ブリーザ室8aを、軸方向視で配線91と重複する位置に設けることで、この空きスペースを有効に利用して、油の飛散し難い比較的上側V1の位置に、追加のスペースを必要とせずに或いは追加のスペースを最小限に抑えつつ、ブリーザ室8aを形成することが可能となっている。
【0061】
本実施形態では、
図6に示すように、ブリーザ室8aの軸方向Aの配置領域の全体が、回転電機1の軸方向Aの配置領域に収まっている。また、本実施形態では、
図5に示すように、ブリーザ室8aの幅方向Hの配置領域の全体が、回転電機1の幅方向Hの配置領域に収まっている。
図5に示す例では、ブリーザ室8aの幅方向第1側H1の部分は、回転電機1が備える突出部12bの幅方向Hの配置領域に配置されている。すなわち、
図5に示す例では、回転電機1の幅方向Hの配置領域には、突出部12bのみが配置された領域も含まれる。更に、本実施形態では、
図6に示すように、ブリーザ室8aは、上下方向視で一対の出力部材6の少なくとも一方と重複するように配置されている。具体的には、ブリーザ室8aは、一対の出力部材6よりも上側V1に配置されている。そして、ブリーザ室8aは、上下方向視で第1出力部材61と重複するように配置されている。
【0062】
ところで、回転電機1とインバータ装置90とが互いに異なる方向に変位しようとした場合、配線91に荷重(例えば、引っ張り荷重)が作用して、配線91を構成する部材(バスバー等)に応力が発生したり、配線91における異なる部材同士の接続部94(
図5に示す例では、動力線92と端子93とのボルトによる締結部)に荷重が加わったりするおそれがある。回転電機1とインバータ装置90との互いに異なる方向への変位は、伝達機構3による駆動力の伝達時に第1軸心C1と第2軸心C2とが互いに異なる方向に変位することで生じ得る。この点に関し、
図5に示す例では、締結部材14によってケース2に固定されるステータコア12の突出部12bが、軸方向視で配線91(具体的には、接続部94)と出力部材6(具体的には、第1出力部材61)との間に配置されるように、回転電機1がケース2に固定されている。言い換えれば、接続部94と突出部12bと第1出力部材61とが軸方向視で一直線上に並ぶように、回転電機1がケース2に固定されている。このように回転電機1をケース2に固定することで、伝達機構3による駆動力の伝達時に第1軸心C1と第2軸心C2とが互いに異なる方向に変位し難くして、配線91に大きな荷重が作用し難くすることができる。
【0063】
図5に示す例では、軸方向視で配線91と出力部材6との間に配置される突出部12b以外に、2つの突出部12bを、ステータコア12が備えている。すなわち、ステータコア12は、3つの突出部12bを備えている。これら3つの突出部12bは、周方向(第1軸心C1を基準とする周方向)に分散して配置されており、
図5に示す例では、これら3つの突出部12bは周方向に沿って均等な間隔で配置されている。そして、
図5に示す例では、ステータコア12の幅方向第2側H2の端部が、本体部12aの幅方向第2側H2の端部となるように(言い換えれば、全ての突出部12bが、本体部12aの幅方向第2側H2の端部よりも幅方向第1側H1に配置されるように)、回転電機1がケース2に固定されている。これにより、車両用駆動装置100の幅方向Hにおける大型化を抑制しつつ回転電機1を配置することが可能となっている。
【0064】
〔その他の実施形態〕
次に、車両用駆動装置のその他の実施形態について説明する。
【0065】
(1)上記の実施形態では、第2軸心C2が、第1軸心C1よりも下側V2に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2軸心C2が、第1軸心C1と上下方向Vの同じ位置に配置される構成や、第2軸心C2が、第1軸心C1よりも上側V1に配置される構成とすることもできる。
【0066】
(2)上記の実施形態では、第1軸心C1が、出力ギヤ30の上下方向Vの配置領域内に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1軸心C1が、出力ギヤ30の上下方向Vの配置領域内に配置されない構成とすることもできる。例えば、第1軸心C1が、出力ギヤ30の最上部よりも上側V1に配置される構成とすることができる。
【0067】
(3)上記の実施形態では、ブリーザ室8aの軸方向Aの配置領域の全体が、回転電機1の軸方向Aの配置領域に収まり、ブリーザ室8aの幅方向Hの配置領域の全体が、回転電機1の幅方向Hの配置領域に収まっている構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、ブリーザ室8aの軸方向Aの配置領域が、回転電機1の軸方向Aの配置領域に収まらない構成とすることもできる。この場合であっても、ブリーザ室8aが、回転電機1と軸方向Aの配置領域が重複するように配置される構成とすると好適である。また、ブリーザ室8aの幅方向Hの配置領域が、回転電機1の幅方向Hの配置領域に収まらない構成とすることもできる。この場合であっても、ブリーザ室8aが、回転電機1と幅方向Hの配置領域が重複するように配置される構成とすると好適である。
【0068】
(4)上記の実施形態では、ブリーザ室8aが、上下方向視で一対の出力部材6の少なくとも一方と重複するように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、ブリーザ室8aが上下方向視で一対の出力部材6のいずれとも重複しない位置(具体的には、一対の出力部材6とは幅方向Hの異なる位置)に配置される構成とすることもできる。
【0069】
(5)上記の実施形態では、ブリーザ室8aが、軸方向視で配線91と重複するように配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、ブリーザ室8aが軸方向視で配線91と重複しない位置(例えば、配線91よりも上側V1の位置)に配置される構成とすることもできる。
【0070】
(6)上記の実施形態では、ブリーザ室8aが、ケース2の内部において回転電機収容室S1と連通している構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、ブリーザ室8aが、ケース2の内部において伝達機構収容室S3と連通している構成とすることもできる。
【0071】
(7)上記の実施形態では、油貯留部ORが、回転電機収容室S1と伝達機構収容室S3との双方に亘って設けられる構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、油貯留部ORが、回転電機収容室S1と伝達機構収容室S3との一方のみ(例えば、伝達機構収容室S3のみ)に設けられる構成とすることもできる。
【0072】
(8)上記の実施形態では、伝達機構3が、回転電機1と出力ギヤ30との間の動力伝達経路にカウンタギヤ機構4を備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、例えば、カウンタギヤ機構4に代えて、入力ギヤ17及び出力ギヤ30の双方に噛み合うアイドラギヤ設けられる構成とし、或いは、入力ギヤ17と出力ギヤ30とが噛み合う構成とすることもできる。
【0073】
(9)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0074】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置の概要について説明する。
【0075】
車両用駆動装置(100)は、回転電機(1)と、一対の車輪(W)にそれぞれ駆動連結される一対の出力部材(6)と、前記回転電機(1)と一対の前記出力部材(6)との間で駆動力を伝達する伝達機構(3)と、前記回転電機(1)を駆動制御するインバータ装置(90)と、前記インバータ装置(90)、前記回転電機(1)、及び、前記伝達機構(3)を収容すると共に、内部に油貯留部(OR)が設けられたケース(2)と、前記ケース(2)の内部と外部とを連通させるブリーザ室(8a)を有するブリーザ装置(8)と、を備え、前記回転電機(1)と一対の前記出力部材(6)とは、互いに平行な2つの軸に分かれて配置され、前記回転電機(1)の回転軸心を第1軸心(C1)とし、一対の前記出力部材(6)の回転軸心を第2軸心(C2)とし、前記第1軸心(C1)及び前記第2軸心(C2)に平行な方向を軸方向(A)とし、上下方向視で前記軸方向(A)に直交する方向を幅方向(H)とし、前記幅方向(H)の一方側を幅方向第1側(H1)として、前記第2軸心(C2)は、前記第1軸心(C1)に対して前記幅方向第1側(H1)に配置され、前記インバータ装置(90)は、前記第2軸心(C2)に対して前記幅方向第1側(H1)に配置されていると共に、上下方向(V)の配置領域が前記回転電機(1)と一対の前記出力部材(6)とに重複するように配置され、前記ブリーザ室(8a)の少なくとも一部が、前記幅方向(H)における前記回転電機(1)と前記インバータ装置(90)との間であって、上下方向(V)の配置領域が前記回転電機(1)と前記インバータ装置(90)とに重複し、且つ、前記第1軸心(C1)よりも上側(V1)に配置されている。
【0076】
本構成によれば、インバータ装置(90)が、上下方向(V)の配置領域が回転電機(1)と一対の出力部材(6)とに重複するように配置されるため、インバータ装置(90)を配置することによる車両用駆動装置(100)の上下方向(V)の大型化を抑制することができる。そして、本構成では、第2軸心(C2)が、第1軸心(C1)に対して幅方向第1側(H1)に配置され、インバータ装置(90)が、第2軸心(C2)に対して幅方向第1側(H1)に配置される。そのため、軸方向(A)に沿う軸方向視で、回転電機(1)の外周面とインバータ装置(90)とにより幅方向(H)の両側及び下側(V2)の三方から囲まれたような形状の空間(以下、「対象空間(T)」という)が形成され、本構成によれば、この対象空間(T)を利用してブリーザ室(8a)を配置することができる。よって、ブリーザ室(8a)を有するブリーザ装置(8)の上下方向(V)における突出量(具体的には、軸方向視でのケース(2)の最上部からの突出量)を少なく抑えやすく、上下方向(V)における車両用駆動装置(100)の小型化を図りやすい。
【0077】
なお、上記のように対象空間(T)を利用してブリーザ室(8a)を配置することで、回転電機(1)とインバータ装置(90)との少なくとも一方が配置された軸方向(A)の領域にブリーザ室(8a)の少なくとも一部を配置することも容易となる。よって、本構成によれば、軸方向(A)における車両用駆動装置(100)の小型化も図りやすい。
【0078】
以上のように、本構成によれば、車両用駆動装置(100)がインバータ装置(90)及びブリーザ装置(8)を備える場合に、車両用駆動装置(100)の小型化を図りやすくなっている。
【0079】
ここで、前記伝達機構(3)は、前記回転電機(1)の側から伝達される駆動力を一対の前記出力部材(6)に分配する差動歯車機構(5)を備えると共に、一対の前記出力部材(6)に駆動連結される出力ギヤ(30)を一対の前記出力部材(6)と同軸に備え、前記出力ギヤ(30)は、前記差動歯車機構(5)が備える差動ケース部(50)と一体的に回転するように当該差動ケース部(50)に連結され、前記第1軸心(C1)は、前記出力ギヤ(30)の上下方向(V)の配置領域内に配置されていると好適である。
【0080】
本構成によれば、第1軸心(C1)が出力ギヤ(30)の上下方向(V)の配置領域内に配置されない場合に比べて、回転電機(1)と出力ギヤ(30)とのそれぞれの上下方向(V)の配置領域が重複する割合を高めやすい。よって、上下方向(V)における車両用駆動装置(100)の小型化を図りやすい。
【0081】
前記の構成において、前記第2軸心(C2)は、前記第1軸心(C1)よりも下側(V2)に配置されていると好適である。
【0082】
本構成によれば、第2軸心(C2)が第1軸心(C1)よりも上側(V1)に配置される場合に比べて、ブリーザ室(8a)を配置するために利用する上述した対象空間(T)を、上下方向(V)に大きく確保しやすい。よって、ブリーザ装置(8)の上下方向(V)における突出量が少なく抑えられるようにブリーザ室(8a)を配置しやすい。
【0083】
上記の各構成において、前記ブリーザ室(8a)の前記軸方向(A)の配置領域の全体が、前記回転電機(1)の前記軸方向(A)の配置領域に収まっていると好適である。
【0084】
本構成によれば、ブリーザ室(8a)を配置したことによる車両用駆動装置(100)の軸方向(A)の寸法の拡大を抑制することができ、軸方向(A)における車両用駆動装置(100)の小型化を図りやすい。
【0085】
また、前記ケース(2)は、前記回転電機(1)を収容する回転電機収容室(S1)と、前記伝達機構(3)を収容する伝達機構収容室(S3)と、を備え、前記回転電機収容室(S1)と前記伝達機構収容室(S3)とが前記軸方向(A)に並んで配置され、前記ブリーザ室(8a)は、前記ケース(2)の内部において前記回転電機収容室(S1)と連通していると好適である。
【0086】
本構成によれば、例えば、伝達機構(3)を構成する各ギヤが回転することにより、油が伝達機構収容室(S3)内の上部に掻き上げられた場合であっても、そのように掻き上げられた油がブリーザ室(8a)に到達し難いようにすることができる。従って、ブリーザ室(8a)への油の浸入を規制するためにブリーザ室(8a)の形状が複雑化することを回避しやすい。
【0087】
前記の構成において、前記油貯留部(OR)は、前記回転電機収容室(S1)と前記伝達機構収容室(S3)との双方に亘って設けられていると好適である。
【0088】
本構成によれば、油貯留部(OR)が回転電機収容室(S1)及び伝達機構収容室(S3)の一方のみに設けられる場合に比べて、油貯留部(OR)の油面が高くなり過ぎることを回避しつつケース(2)内の油量を十分に確保することが容易となる。よって、伝達機構(3)を構成する各ギヤによる油の攪拌を少なく抑えて、当該油の攪拌による駆動力の損失を低減しつつ、潤滑又は冷却のために必要な量の油を車両用駆動装置(100)の各部に適切に供給することができる。
【0089】
上記の各構成において、前記回転電機(1)と前記インバータ装置(90)とを接続する配線(91)を備え、前記ブリーザ室(8a)は、前記軸方向(A)に沿う軸方向視で前記配線(91)と重複するように配置されていると好適である。
【0090】
本構成によれば、ブリーザ室(8a)を軸方向視で配線(91)と重複しないように配置した場合に比べて、幅方向(H)及び上下方向(V)における車両用駆動装置(100)小型化を図りやすい。また、ブリーザ室(8a)及び配線(91)は、通常、いずれも油の飛散し難い比較的上側(V1)の位置に配置することが望ましいが、本構成によれば、ブリーザ室(8a)と配線(91)との軸方向(A)の配置位置をずらすことで、これらを上下方向(V)の同じ領域に配置することができる。そのため、これらの双方を比較的上側(V1)の位置に配置しやすい。
【0091】
また、前記ブリーザ室(8a)は、上下方向視で一対の前記出力部材(6)の少なくとも一方と重複するように配置されていると好適である。
【0092】
本構成によれば、ブリーザ室(8a)を上下方向視で一対の出力部材(6)のいずれとも重複しないように配置した場合に比べて、幅方向(H)における車両用駆動装置(100)の小型化を図りやすい。
【0093】
また、前記ブリーザ室(8a)の前記幅方向(H)の配置領域の全体が、前記回転電機(1)の前記幅方向(H)の配置領域に収まっていると好適である。
【0094】
本構成によれば、ブリーザ室(8a)を配置したことによる車両用駆動装置(100)の幅方向(H)の寸法の拡大を抑制することができ、幅方向(H)における車両用駆動装置(100)の小型化を図りやすい。
【0095】
本開示に係る車両用駆動装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0096】
1:回転電機、2:ケース、3:伝達機構、5:差動歯車機構、6:出力部材、8:ブリーザ装置、8a:ブリーザ室、30:出力ギヤ、50:差動ケース部、90:インバータ装置、91:配線、100:車両用駆動装置、A:軸方向、C1:第1軸心、C2:第2軸心、H:幅方向、H1:幅方向第1側、OR:油貯留部、S1:回転電機収容室、S3:伝達機構収容室、V:上下方向、V1:上側、V2:下側、W:車輪