(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】映像提供装置、映像提供システム、映像提供方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240709BHJP
H04N 21/234 20110101ALI20240709BHJP
【FI】
H04N7/18 T
H04N21/234
(21)【出願番号】P 2023534455
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2021026174
(87)【国際公開番号】W WO2023286133
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鯨井 裕章
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟
(72)【発明者】
【氏名】星 一史
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-081515(JP,A)
【文献】特開2018-025734(JP,A)
【文献】特開平09-233458(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0089996(US,A1)
【文献】国際公開第2014/024475(WO,A1)
【文献】特開2007-158860(JP,A)
【文献】特開2018-098573(JP,A)
【文献】特開2004-192632(JP,A)
【文献】特開2004-064511(JP,A)
【文献】特開2021-010081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 21/00-21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レースに出場するレーサのうち、ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得する指定手段と、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集する映像収集手段と、
指定されたレーサIDで識別されるレーサと他のレーサとの位置関係、及び前記レースの開始からの経過時間の少なくとも1つに基づいて、前記複数のカメラの各々の優先度を設定する優先度設定手段と、
前記ユーザが指定したレーサID
と、設定された前記優先度に基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成する生成手段と、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザが使用するユーザ端末に出力させる出力制御手段と
を備える映像提供装置。
【請求項2】
前記優先度設定手段は、前記レースの開始からの経過時間に基づいて前記複数のカメラの各々の優先度を設定する場合、前記経過時間毎に、前記カメラのカメラワークの種別に応じて、前記カメラの優先度を所定量加算する、
請求項1に記載の映像提供装置。
【請求項3】
前記優先度設定手段は、前記レーサと前記他のレーサとの位置関係に基づいて前記複数のカメラの各々の優先度を設定する場合、前記他のレーサとの距離が閾値以内のレーサに関連するオンボードカメラの優先度、又は、前記他のレーサとの距離が閾値以内のレーサを映しているカメラの優先度を所定量加算し、
前記オンボードカメラは、前記レーサの身体又は前記レーサが使用する用具に取り付けられ、前記レーサの移動に伴って移動するカメラである、
請求項
1に記載の映像提供装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記優先度に基づいて、前記複数のカメラから収集した映像から、前記ユーザ端末の表示手段において表示させる1又は複数の映像を選択する
請求項
1~3のいずれか一項に記載の映像提供装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記優先度に基づいて、前記ユーザ端末の表示手段において、選択した前記1又は複数の映像の表示態様を決定する
請求項
4に記載の映像提供装置。
【請求項6】
前記生成手段は、
前記ユーザが指定したレーサIDに基づいて、前記複数のカメラから収集した映像から第1ユーザ用映像を生成し、
前記ユーザが指定したレーサIDを有するレーサの位置情報又は前記レーサの生体情報に基づいて、前記レーサの状態を示す重畳画像を生成し、
前記重畳画像を前記第1ユーザ用映像に重畳させた第2ユーザ用映像を生成し、
前記出力制御手段は、前記第2ユーザ用映像を、前記ユーザ端末に出力させる
請求項1
~5のいずれか一項に記載の映像提供装置。
【請求項7】
映像提供装置と、
ユーザが使用するユーザ端末と
を備え
前記映像提供装置は、
レースに出場するレーサのうち、前記ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得する指定手段と、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集する映像収集手段と、
指定されたレーサIDで識別されるレーサと他のレーサとの位置関係、及び前記レースの開始からの経過時間の少なくとも1つに基づいて、前記複数のカメラの各々の優先度を設定する優先度設定手段と、
前記ユーザが指定したレーサID
と、設定された前記優先度に基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成する生成手段と、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザ端末に出力させる出力制御手段と
を有する映像提供システム。
【請求項8】
映像提供装置が、
レースに出場するレーサのうち、ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得し、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集し、
指定されたレーサIDで識別されるレーサと他のレーサとの位置関係、及び前記レースの開始からの経過時間の少なくとも1つに基づいて、前記複数のカメラの各々の優先度を設定し、
前記ユーザが指定したレーサID
と、設定された前記優先度に基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成し、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザが使用するユーザ端末に出力させる
映像提供方法。
【請求項9】
レースに出場するレーサのうち、ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得する指定処理と、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集する映像収集処理と、
指定されたレーサIDで識別されるレーサと他のレーサとの位置関係、及び前記レースの開始からの経過時間の少なくとも1つに基づいて、前記複数のカメラの各々の優先度を設定する優先度設定処理と、
前記ユーザが指定したレーサID
と、設定された前記優先度に基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成する生成処理と、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザが使用するユーザ端末に出力させる出力制御処理と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、映像提供装置、映像提供システム、映像提供方法及び非一時的なコンピュータ可読媒体に関し、特に、レース映像を提供する映像提供装置、映像提供システム、映像提供方法及び非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
競馬などの競技会場では、観戦客は、大型映像ディスプレイに表示される一律の競技映像を見ることにより、競技を観戦している。そして近年、観戦客がレーサのパフォーマンスを好適に観戦するための映像配信システムが開発されている。
【0003】
例えば特許文献1では、複数の選手が同時並行的に異なる位置でパフォーマンスを行うプロゴルフ競技等のライブ観戦システムが開示されている。このライブ観戦システムでは、映像収集配信設備装置が、観戦者による観視を推奨する推奨場面で所定の信号状態となる推奨フラグと、映像中に認識される選手を特定するための情報とを、放送信号に付加する。そして観戦者端末は、放送信号から推奨場面及び選手を特定するための情報を検出し、観戦者に報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで競馬等の競技観戦においては、観戦者が所望のレーサにフォーカスした自分用のレース映像を容易に観たいというニーズがある。しかし上述の特許文献1に記載のライブ観戦システムでは、映像収集配信設備装置が、各観戦者に適した映像を直接提供することができない。このため、観戦者は、放送される映像の中から所望のレーサの映像を選択して切り替えなければならないという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題に鑑み、ユーザが指定したレーサに関連するユーザ用のレース映像を好適に提供する映像提供装置、映像提供システム、映像提供方法及び非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかる映像提供装置は、
レースに出場するレーサのうち、ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得する指定手段と、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集する映像収集手段と、
前記ユーザが指定したレーサIDに基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成する生成手段と、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザが使用するユーザ端末に出力させる出力制御手段と
を備える。
【0008】
本開示の一態様にかかる映像提供システムは、
映像提供装置と、
ユーザが使用するユーザ端末と
を備え
前記映像提供装置は、
レースに出場するレーサのうち、前記ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得する指定手段と、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集する映像収集手段と、
前記ユーザが指定したレーサIDに基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成する生成手段と、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザ端末に出力させる出力制御手段と
を有する。
【0009】
本開示の一態様にかかる映像提供方法は、
レースに出場するレーサのうち、ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得し、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集し、
前記ユーザが指定したレーサIDに基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成し、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザが使用するユーザ端末に出力させる。
【0010】
本開示の一態様にかかる非一時的なコンピュータ可読媒体は、
レースに出場するレーサのうち、ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得する指定処理と、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集する映像収集処理と、
前記ユーザが指定したレーサIDに基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成する生成処理と、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザが使用するユーザ端末に出力させる出力制御処理と
をコンピュータに実行させるためのプログラムが格納される。
【発明の効果】
【0011】
本開示により、ユーザが指定したレーサに関連するユーザ用のレース映像を好適に提供する映像提供装置、映像提供システム、映像提供方法及び非一時的なコンピュータ可読媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1にかかる映像提供装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1にかかる映像提供方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】実施形態2にかかる映像提供システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態2にかかるユーザ端末の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態2にかかる映像提供装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態2にかかる映像提供方法の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施形態2にかかるユーザ端末に表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図8】実施形態2にかかるユーザ端末に表示される表示画面の他の例を示す図である。
【
図9】実施形態2にかかるユーザ端末に表示される表示画面の他の例を示す図である。
【
図10】実施形態3にかかる映像提供装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】実施形態3にかかるカメラワーク優先ルールの一例を説明するための図である。
【
図12】実施形態3にかかるユーザ端末に表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図13】実施形態4にかかる映像提供システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図14】実施形態4にかかる映像提供装置の構成を示すブロック図である。
【
図15】実施形態4にかかる映像提供方法の流れを示すフローチャートである。
【
図16】実施形態4にかかるユーザ端末に表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図17】実施形態4にかかるユーザ端末に表示される表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0014】
<実施形態1>
まず、本開示の実施形態1について説明する。
図1は、実施形態1にかかる映像提供装置10の構成を示すブロック図である。映像提供装置10は、レース競技の映像を観戦者であるユーザに提供するコンピュータ装置である。レース競技は、トラック上を複数のレーサが速さを競い合う競技であってよい。例えば、レース競技は、競馬、競艇、競輪、カーレース、陸上トラック競技、又はスピードスケート等であってよい。レーサは、競争を行う競技者、動物(例えば競走馬)、又は競争に使用する用具(例えば自動車若しくは自転車)であってよい。
【0015】
ここで、映像提供装置10は、ネットワーク(不図示)に接続される。ネットワークは、有線であっても無線であってもよい。また、当該ネットワークには、ユーザが使用するユーザ端末(不図示)が接続されている。つまり、映像提供装置10は、ネットワークを介してユーザ端末と通信可能に接続される。
【0016】
映像提供装置10は、指定部11と、映像収集部12と、生成部15と、出力制御部16とを備える。
【0017】
指定部11は、指定手段とも呼ばれる。指定部11は、レースに出場するレーサのうち、ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得する。以下では、ユーザが指定したレーサを、指定レーサと呼ぶことがある。
【0018】
映像収集部12は、映像収集手段とも呼ばれる。映像収集部12は、複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、レースに関する映像を収集する。複数のカメラは、異なるカメラワークを有するカメラを含んでよい。カメラワークとは、画角、カメラの移動の有無、又は移動態様等であってよい。時間区間とは、同じタイミング又は同じ時間帯に撮影された映像であるとユーザが認識できる程度の時間間隔であり、例えば1~数フレームレート[fps]、又は数~数十[s]といった時間間隔であってよい。時間間隔は、複数のカメラのフレームレートに基づいて予め定められてよい。
【0019】
生成部15は、生成手段とも呼ばれる。生成部15は、指定レーサのレーサIDに基づいて、上述した複数のカメラから収集した映像から、ユーザ用映像を生成する。
【0020】
出力制御部16は、出力制御手段とも呼ばれる。出力制御部16は、ユーザ用映像をユーザ端末に出力させる。例えば、出力制御部16は、ユーザ用映像のストリーミングデータをユーザ端末に送信(配信)し、ユーザ端末は、リアルタイムで表示部(不図示)にユーザ用映像を表示する。あるいは出力制御部16は、ユーザ用映像のストックデータをまとめてユーザ端末に送信し、ユーザ端末は表示部(不図示)にそのユーザ用映像を表示してもよい。以下では、このようなストリーミングデータ又はストックデータを、配信データと呼ぶことがある。
【0021】
図2は、実施形態1にかかる映像提供方法の流れを示すフローチャートである。まず映像提供装置10の指定部11は、ユーザが指定したレーサのレーサIDを取得する(S10)。次に、映像収集部12は、複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された映像を収集する(S11)。次に、生成部15は、指定部11が取得したレーサIDに基づいて、映像収集部12が収集した映像からユーザ用映像を生成する(S12)。次に、出力制御部16は、ユーザ用映像をユーザ端末に出力させる(S13)。
【0022】
このように実施形態1によれば、映像提供装置10は、ユーザが指定したレーサに関連するユーザ用のレース映像を好適に提供することができる。これにより、ユーザは所望のレース映像を好適に観ることができるため、ユーザの満足度が向上する。
【0023】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2について説明する。
図3は、実施形態2にかかる映像提供システム1000の全体構成を示すブロック図である。映像提供システム1000は、レース競技の映像を観戦者であるユーザに提供するコンピュータシステムである。映像提供システム1000は、1又は複数の固定カメラ310と、1又は複数のドローンカメラ320と、1又は複数のオンボードカメラ330と、映像提供装置100と、ユーザ端末200とを備える。固定カメラ310、ドローンカメラ320及びオンボードカメラ330と、映像提供装置100とは、無線で接続されている。本実施形態2では、固定カメラ310、ドローンカメラ320及びオンボードカメラ330と映像提供装置100とは、5G(5th Generation Mobile Communication System)又はローカル5Gのネットワークで接続されている。しかしこれに代えて、各種カメラと映像提供装置100とは、他の移動体通信システムのネットワーク、又はWi-Fi(登録商標)といった無線LAN(Local Area Network)で接続されていてもよい。あるいは、各種カメラのうち、有線で映像提供装置100と接続されているカメラがあってもよい。そして映像提供装置100とユーザ端末200とは、ネットワークNを介して互いに接続されている。ここで、ネットワークNは、有線又は無線の通信回線である。
【0024】
固定カメラ310は、レース会場の異なる場所に設置されている。例えば各固定カメラ310は、トラックのスタート地点、中盤地点及びゴール地点のそれぞれの風景を撮影できるような場所に設置されていてよい。
【0025】
ドローンカメラ320は、レース風景を空中で撮影するカメラである。ドローンカメラ320は、1又は複数のレーサに追従するように移動し、1又は複数のレーサを空中で撮影してよい。
【0026】
オンボードカメラ330は、各レーサの身体、又は各レーサが使用する用具に取り付けられ、各レーサの移動に伴って移動するカメラである。例えばオンボードカメラ330は、各レーサの視野を撮影するカメラである。
【0027】
映像提供装置100は、上述した映像提供装置10の一例である。映像提供装置100は、互いにカメラワークの異なる固定カメラ310、ドローンカメラ320、及びオンボードカメラ330の各々から、映像を収集する。そして映像提供装置100は、収集した映像に基づいて、ユーザが指定したレーサに関連するユーザ用映像を生成する。そして映像提供装置100は、生成したユーザ用映像を、ネットワークNを介してユーザ端末に送信する。
【0028】
ユーザ端末200は、ユーザが使用する情報端末である。ユーザ端末200は、映像提供装置100に対して、指定レーサのレーサIDを通知する。例えばユーザ端末200は、レースに関するウェブページ又はアプリにアクセスし、レーサの一覧を表示させてユーザにユーザIDの選択を促す。そしてユーザ端末200は、選択されたユーザIDを映像提供装置100に通知する。また例えばユーザ端末200は、ユーザが購入した投票券(例えば、馬券)に紐づけられたレーサのIDを、映像提供装置100に通知する。一例としてユーザ端末200は、購入したレースの投票券に記載されたQRコード(登録商標)を読み取ることにより、映像提供装置100に指定レーサのレーサIDを通知してよい。尚、レーサIDの通知は、ユーザ端末200に代えて、投票券の販売を管理する外部装置が行ってもよい。そしてユーザ端末200は、レースの開催時間に映像提供装置100からユーザ用映像の配信データを受信し、配信データに従ってユーザ用映像を表示する。
【0029】
図4は、実施形態2にかかるユーザ端末200の構成を示すブロック図である。ユーザ端末200は、記憶部220と、通信部230と、表示部240と、音声出力部245と、入力部250と、制御部260とを備える。
【0030】
記憶部220は、ユーザ端末200の各機能を実現するためのプログラムが格納される記憶装置である。通信部230は、ネットワークNとの通信インタフェースである。表示部240は、表示装置である。音声出力部245は、音声を出力するスピーカを含む。入力部250は、入力を受け付ける入力装置である。表示部240及び入力部250は、タッチパネルのように、一体的に構成されていてもよい。制御部260は、ユーザ端末200が有するハードウェアの制御を行う。
【0031】
例えば、制御部260は、通信部230を介して映像提供装置100から、レーサIDを指定するための入力画面を受信したことに応じて、受信した入力画面を表示部240に表示する。そして、制御部260は、入力部250を介してレーサIDの入力を受け付けた場合、通信部230を介して、レーサIDを映像提供装置100に送信する。あるいは、制御部260は、購入した投票券に記載されたQRコードを読み取ることで取得したレーサIDを、映像提供装置100に送信する。そして制御部260は、通信部230を介して映像提供装置100から、ユーザ用映像を含む配信データを受信したことに応じて、受信した配信データに基づいて、ユーザ用映像を表示部240に表示する。
【0032】
図5は、実施形態2にかかる映像提供装置100の構成を示すブロック図である。映像提供装置100は、記憶部110、メモリ120、通信部130、及び制御部140を備える。
【0033】
記憶部110は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶装置である。記憶部110は、プログラム111と、ユーザDB112と、レーサDB113と、カメラDB114とを記憶する。プログラム111は、本実施形態2にかかる映像提供方法の処理が実装されたコンピュータプログラムである。
【0034】
ユーザDB112は、ユーザID1121と、レーサID1122とを対応付けるデータベースである。ここで、ユーザID1121は、ユーザを識別する情報である。そしてレーサID1122は、ユーザが指定した指定レーサを識別する情報である。
【0035】
レーサDB113は、レーサID1131と、特徴情報1132とを対応付けるデータベースである。レーサID1131は、レースに出場する各レーサを識別する情報である。特徴情報1132は、レーサID1131を有するレーサを撮影した画像から抽出される特徴量を示す情報である。例えばレーサが選手である場合、特徴情報1132は顔の特徴量を示す情報であってよい。特徴情報1132は、これに代えて、レーサが装着する服装(例えばユニフォーム若しくはゼッケン)、又はレーサが使用する用具(例えば自動車若しくは自転車)を撮影した画像から抽出される特徴量を示す情報であってもよい。例えばレーサがゼッケンを装着している場合、特徴情報1132は、ゼッケンの数字の特徴量を示す情報であってよい。
【0036】
カメラDB114は、カメラID1141と、カメラワーク種別1142と、位置情報1143と、映像データ1144とを対応付けるデータベースである。
カメラID1141は、固定カメラ310、ドローンカメラ320、及びオンボードカメラ330に含まれる各カメラを識別する情報である。カメラワーク種別1142は、そのカメラのカメラワークの種別を示す情報である。上述の通り、カメラワークとは、画角、移動の有無、又は移動態様等であってよく、カメラワーク種別1142は、固定カメラ310、ドローンカメラ320、及びオンボードカメラ330の別を示す情報であってよい。位置情報1143は、そのカメラの位置情報である。例えばカメラが固定カメラ310である場合、位置情報1143はそのカメラの設置場所の位置情報であってよい。またカメラがドローンカメラ320やオンボードカメラ330である場合、位置情報1143は、そのカメラが受信したGPS(Global Positioning System)情報であってよい。映像データ1144は、そのカメラが撮影し、映像提供装置100がそのカメラから取得した映像データである。
【0037】
メモリ120は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶装置であり、制御部140の動作時に一時的に情報を保持するための記憶領域である。通信部130は、ネットワークNとの通信インタフェースと、各カメラとの通信インタフェースとを含む。
【0038】
制御部140は、映像提供装置100の各構成を制御するプロセッサつまり制御装置である。制御部140は、記憶部110からプログラム111をメモリ120へ読み込ませ、プログラム111を実行する。これにより、制御部140は、指定部141、映像収集部142、関連度算出部143、優先度設定部144、生成部145及び出力制御部146の機能を実現する。
【0039】
指定部141は、上述した指定部11の一例である。指定部141は、ユーザ端末200からネットワークNを介してデータを受信する。ここで、受信したデータには、指定レーサのレーサIDに加えて、ユーザ端末200のユーザのユーザIDが含まれてよい。そして指定部141は、ユーザDB112に、ユーザIDに対応付けてレーサIDを登録する。指定部141は、レースの開催時間になった場合、ユーザIDに対応付けられたレースIDを、ユーザDB112から取得し、関連度算出部143に供給する。
【0040】
映像収集部142は、上述した映像収集部12の一例である。映像収集部142は、所定のフレームレートで、固定カメラ310、ドローンカメラ320及びオンボードカメラ330を含む複数のカメラの各々から、映像データを受信し、同じ時間区間に撮影された複数の映像データを収集する。
【0041】
関連度算出部143は、関連度算出手段とも呼ばれる。関連度算出部143は、複数のカメラの各々から収集した映像データと、レーサIDとの間の関連度を算出する。関連度は、その映像データに指定レーサが映っているか否かに基づいて、算出されてよい。例えば、まず関連度算出部143は、各映像データについて、レーサDB113において指定レーサのレーサIDに対応付けられた特徴情報1132を用いて、関連度を算出する。具体的には、関連度算出部143は、各映像データについて、その映像データのフレーム画像から特徴情報を抽出し、抽出した特徴情報と特徴情報1132とを比較することで関連度を算出する。また関連度は、その映像データに指定レーサが映っているか否かに加えて、指定レーサの画像領域の大きさ、フレーム画像におけるその画像領域の位置及びピントがどの程度合っているか等に基づいて算出されてもよい。
【0042】
ここで、関連度算出部143は、カメラワーク種別ごとに、そのカメラワーク種別を有するカメラの各々から収集した映像データと、レーサIDとの間の関連度を算出してよい。例えば関連度算出部143は、複数の固定カメラ310から収集した映像データの各々について、レーサIDとの間の関連度を算出し、複数のオンボードカメラ330から収集した映像データの各々について、レーサIDとの間の関連度を算出してよい。
【0043】
尚、オンボードカメラ330の場合、撮影した映像は取り付け先のレーサと関連性が強いものの、映像中に取り付け先のレーサが映らない。このため、上述の方法では、関連度が正しく算出されない可能性がある。したがって、上述した方法により関連度を算出するのは、オンボードカメラ330を除くカメラの映像データについてのみであってよい。そして関連度算出部143は、オンボードカメラ330の映像については、そのオンボードカメラ330が指定レーサに取り付けられているか否かに基づいて関連度を算出してよい。
【0044】
また、関連度算出部143は、映像を撮影したタイミングのレーサの位置情報が把握できる場合には、レーサの位置情報と、映像の撮影元のカメラの位置情報とに基づいて、関連度を算出してもよい。具体的には、まず関連度算出部143は、収集した各映像データについて、その映像を撮影したカメラのカメラIDに対応する位置情報1143をカメラDB114から特定する。そして関連度算出部143は、指定レーサの近くに位置するカメラほど、関連度が高くなるように関連度を算出してよい。尚、関連度算出部143は、レーサの位置情報を、オンボードカメラ330の位置情報から推定してよい。この場合も、この方法により関連度を算出するのは、オンボードカメラ330を除くカメラの映像データについてのみであってよい。
【0045】
優先度設定部144は、優先度設定手段とも呼ばれる。優先度設定部144は、固定カメラ310、ドローンカメラ320及びオンボードカメラ330を含む、複数のカメラの各々の優先度を設定する。本実施形態2では、優先度設定部144は、関連度算出部143が算出した、各映像データについての関連度に基づいて、各カメラの優先度を設定する。例えば優先度設定部144は、レーサIDとの間の関連度が高い映像データを撮影したカメラほど、優先度を高く設定する。これにより、指定レーサと関連性が強い映像、例えばそのレーサがメインとして映っている映像の優先度を高めて、ユーザ端末200に表示することができる。
【0046】
生成部145は、上述した生成部15の一例である。生成部145は、優先度設定部144が設定した優先度に基づいてユーザ用映像の配信データを生成する。例えば生成部145は、優先度に基づいて、複数のカメラから収集した映像データから、ユーザ端末200の表示手段において表示させる1又は複数の映像データを選択する。このとき生成部145は、カメラワーク種別ごとに、優先度に基づいて、そのカメラワーク種別を有するカメラの各々から収集した映像データから映像データを選択してよい。一例として、生成部145は、複数の固定カメラ310の映像データから1の映像データを、複数のドローンカメラ320の映像データから1の映像データを、複数のオンボードカメラ330の映像データから1の映像データを選択してよい。そして生成部145は、選択した映像データが複数ある場合、優先度に基づいて、ユーザ端末200の表示部240において選択した映像データの表示態様を決定してよい。表示態様とは、表示位置若しくは表示サイズであってもよいし、その映像データを表示部240上でアクティブにさせるか否かであってもよい。例えば生成部145は、選択した映像データのうち、優先度が高い映像データほど表示部240の画面中心に表示されるように、又は表示サイズが大きくなるように、表示態様を決定してよい。また例えば生成部145は、選択した映像データのうち、優先度が最も高い映像データを、表示部240上でアクティブに表示される映像データとして決定してよい。
【0047】
そして生成部145は、選択した映像データと、表示態様に関する情報とを含むユーザ用映像の配信データを、出力制御部146に供給する。
【0048】
出力制御部146は、上述した出力制御部16の一例である。出力制御部146は、ユーザ用映像の配信データを、ユーザ端末200に送信し、ユーザ端末200の表示部240にユーザ用映像を表示させる。
【0049】
図6は、実施形態2にかかる映像提供方法の流れを示すフローチャートである。まず映像提供装置100の指定部141は、レースの開催時間になったことに応じて、ユーザが指定したレーサのレーサIDであって、ユーザIDに対応付けられたレーサIDを、ユーザDB112から取得する(S20)。指定部141は、レーサIDを関連度算出部143に供給する。次に、映像収集部142は、複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された映像データの収集を開始する(S21)。次に、関連度算出部143は、各映像データについて、レーサID及びその映像データに基づいて、その映像データと指定レーサとの間の関連度を算出する(S22)。次に、優先度設定部144は、各映像データの関連度に基づいて、その映像データを撮影したカメラの優先度を設定する(S23)。次に、生成部145は、各カメラの優先度に基づいて、ユーザ用映像の配信データを生成する(S24)。例えば生成部145は、各カメラの優先度に基づいて選択された映像データと、各カメラの優先度に基づいて決定した表示態様に関する情報とを、ユーザ用映像の配信データとして生成する。そして出力制御部146は、配信データを、ネットワークNを介してユーザ端末200に送信し、ユーザ端末200にユーザ用映像を表示させる(S25)。
【0050】
図7は、実施形態2にかかるユーザ端末200に表示される表示画面の一例を示す図である。一例としてユーザは、レーサID「2」のレーサ(競走馬)を指定したとする。
図7に示すように、配信データに含まれるユーザ用映像には、レーサID「2」のレーサが映った固定カメラ310の映像501と、レーサID「2」のレーサに取り付けられたオンボードカメラ330の映像502とが含まれている。そしてユーザ端末200は、配信データに含まれる表示態様に関する情報に基づいて、映像501及び映像502を、2画面構成になるように表示部240に表示している。尚、表示部240には、上述したユーザ用映像に加えて、指定レーサに関する情報を表示してもよい。指定レーサに関する情報は、指定レーサの氏名、レーサ番号(馬番や枠番)、年齢、性別、戦績、並びに、指定レーサが馬である場合は騎手の名前を含んでよい。
【0051】
図8及び
図9は、実施形態2にかかるユーザ端末200に表示される表示画面の他の例を示す図である。例えば配信データには、上述した固定カメラ310の映像501と、レーサID「2」のレーサが映ったドローンカメラ320の映像504(不図示)と、上述したオンボードカメラ330の映像502とが含まれる。ユーザ端末200は、配信データに含まれる映像のうち1の映像のみを表示部240にアクティブに表示し、残りの映像については非アクティブに表示する(つまり、隠す)。
図8では、ドローンカメラ320の映像502がアクティブに表示され、残りの映像は非アクティブに表示されている。ユーザは、表示部240に表示された、カメラワーク種別を示すタブをタップにより選択することで、アクティブな映像を切り替えることができるようになっている。例えば、ユーザは、指定レーサが位置する集団の俯瞰映像を観たい場合、「ドローンカメラに切替」というタブを選択する。ユーザ端末200は、タブ選択が切り替わったことに応じて、切替前にアクティブ表示されていた映像を非アクティブに変更し、切替後のタブに対応するカメラの映像をアクティブ表示に切り替えてよい。
【0052】
さらに、配信データには、優先度が低い(例えば指定レーサとの関連性が低い)カメラの映像データも含まれてよい。本例では、配信データには、先頭の競走馬の映像503(不図示)が含まれる。例えば映像503は、いずれかの固定カメラ310の映像であってよい。例えばユーザが、「先頭の馬の映像に切替」というタブを選択することで、
図8に示す表示画面が
図9に示す表示画面に移行する。
図9では、先頭の競走馬が映る固定カメラ310の映像503がアクティブに表示されている。
【0053】
また、優先度が低いカメラの他の例としては、レース会場全体を俯瞰するカメラが挙げられる。そしてユーザ端末200の表示画面には、上記カメラの映像に切り替えるタブがあってもよい。ユーザが上記タブを選択することにより、上記カメラの映像をアクティブ表示に切り替えることができる。
【0054】
このように実施形態2によれば、映像提供装置100は、指定したレーサと関連度の高いカメラ映像が優先的に表示されるように構成されるユーザ用映像を、ユーザに提供することができる。これにより、ユーザは所望のレーサのレース映像を好適に観ることができるため、ユーザの満足度が向上する。
【0055】
<実施形態3>
次に、本開示の実施形態3について説明する。現状のレース映像においては、レースの序盤、中盤及び終盤等の段階に応じて、放送するカメラ映像を手動で選択して、編集している。また、レーサのパフォーマンスに応じて、放送するカメラ映像を手動で選択して、編集している。実施形態3は、映像提供装置がこのようなレースの状況に応じて各カメラの優先度を変化させ、これによりユーザ用映像を自動編集することに特徴を有する。
【0056】
図10は、実施形態3にかかる映像提供装置100aの構成を示すブロック図である。映像提供装置100aは、映像提供装置100と基本的に同様の構成及び機能を有するが、記憶部110及び制御部140に代えて、記憶部110a及び制御部140aを備える点で相違する。
【0057】
記憶部110aは、プログラム111に代えてプログラム111aを記憶する。プログラム111aは、実施形態3にかかる映像提供方法の処理が実装されたコンピュータプログラムである。
また記憶部110aは、カメラワーク優先ルール115を記憶する。カメラワーク優先ルール115は、レースの状況に応じて優先度を変化させるためのルールである。本実施形態4では、カメラワーク優先ルール115は、各カメラワーク種別について、そのカメラワークを有するカメラの優先度を示すカメラワーク優先度を定めるためのルールである。レースの状況とは、各レーサの位置情報、レーサ同士の位置関係及びレースの開始からの経過時間のうち少なくとも1つであってよい。
【0058】
制御部140aは、優先度設定部144に代えて優先度設定部144aを有する点で制御部140と相違する。
【0059】
優先度設定部144aは、関連度及びカメラワーク優先ルール115に基づいて、各カメラの優先度を設定する。例えばまず優先度設定部144aは、カメラワーク優先ルール115に基づいて各カメラワーク種別について、カメラワーク優先度を設定する。つまり優先度設定部144aは、指定レーサの位置情報、指定レーサと他レーサとの位置関係及びレースの開始からの経過時間の少なくとも1つに基づいて、各カメラワーク種別についてカメラワーク優先度を設定する。また優先度設定部144aは、上述の実施形態2と同様に、複数のカメラから収集した映像データの関連度に基づいて、そのカメラの個別優先度を設定する。個別優先度の設定方法は、実施形態2にかかる優先度の設定方法と同様であってよい。そして優先度設定部144aは、カメラワーク優先度及び個別優先度に基づいて、各カメラの優先度を設定する。
【0060】
そして生成部145は、優先度設定部144aが設定した優先度に基づいてユーザ用映像の配信データを生成する。
【0061】
図11は、実施形態3にかかるカメラワーク優先ルール115の一例を説明するための図である。本図のカメラワーク優先ルール115は、レースの開始からの経過時間に応じた、優先対象となるカメラワーク種別を定めている。例えば、優先度設定部144aは、レースの開始からt
1~t
2では、カメラワーク種別が固定カメラであるカメラのカメラワーク優先度を所定量加算する。また例えば、優先度設定部144aは、レースの開始からt
2~t
3では、カメラワーク種別がドローンカメラであるカメラのカメラワーク優先度を所定量加算する。また例えば、優先度設定部144aは、レースの開始からt
3~t
4では、カメラワーク種別がオンボードカメラであるカメラのカメラワーク優先度を所定量加算する。また例えば、優先度設定部144aは、レースの開始からt
4以降では、カメラワーク種別が固定カメラであるカメラのカメラワーク優先度を所定量加算する。
【0062】
尚、カメラワーク優先ルール115に加えて又は代えて、優先度設定部144aは、何らかのイベントを検出した場合に、その場面を撮影しているカメラの優先度を所定量高めると定めたルールを採用してもよい。何らかのイベントとは、例えばレーサ同士が競っており、互いに近い距離にいる場合や衝突した場合、あるいは、レーサが馬であれば騎手が落馬した場合であってよい。具体的には、優先度設定部144aは、レーサ同士の距離が所定閾値以内である場合や、いずれかのレーサから衝撃を検出した場合に、そのレーサのオンボードカメラの優先度やそのレーサを映しているカメラの優先度を所定量加算してよい。また、優先度設定部144aは、所定の地点(例えばゴール地点)付近に到達したレーサがいる場合、ゴール地点付近に設置された固定カメラの優先度を所定量加算すると定めたルールを採用してもよい。具体的には、優先度設定部144aは、各レーサの位置情報に基づいて、いずれかのレーサが所定の地点から所定距離以内に到達したと判定した場合、ゴール地点付近に設置された固定カメラの優先度を所定量加算してよい。上述のようなイベントを検出した場合には、その場面を撮影しているカメラの優先度を他のカメラよりも高くなるように設定してよい。これにより、その場面の映像をユーザ端末200上で確実に割り込み表示させることができる。
【0063】
図12は、実施形態3にかかるユーザ端末200に表示される表示画面の一例を示す図である。
図12は、レースの開始からt
1~t
2におけるユーザ用映像を示している。本例の配信データに含まれるユーザ用映像には、指定レーサが映っている固定カメラ310の映像501と、指定レーサが映っているドローンカメラ320の映像504と、指定レーサに取り付けられたオンボードカメラ330の映像502とが含まれる。レースの開始からt
1~t
2においては、固定カメラが優先されるため、映像501の表示サイズが大きくなっている。そして固定カメラに比べて優先度の低いドローンカメラ320の映像504及びオンボードカメラ330の映像502は、映像501よりも小さく表示されている。
【0064】
このように実施形態3によれば、映像提供装置100aは、レースの状況に応じて定められるカメラワーク優先ルール115に沿って、ユーザ用映像を自動で編集することができる。例えば映像提供装置100aは、レース初期は引きの固定カメラを、レース中盤はドローンカメラやオンボードカメラを、レース終盤はゴール付近の寄りの固定カメラを優先表示させるといった編集が可能となり、ユーザの満足度をさらに高めることができる。
【0065】
尚、優先度設定部144aは、レースの状況に合わせてカメラワーク優先度を出力する学習済のカメラワーク優先度設定モデルを用いて、各カメラのカメラワーク優先度を設定してもよい。例えばカメラワーク優先度設定モデルは、放送された映像のカメラワーク種別とその放送タイミングとを入力とし、各カメラワーク種別の、所定のタイミングでのカメラワーク優先度を出力するモデルであってよい。学習を重ねることで、より自然なカメラワークの自動切替を実現することができる。
【0066】
<実施形態4>
次に、本開示の実施形態4について説明する。実施形態4は、映像提供装置が指定レーサの位置情報又はバイタル(生体情報)に基づいて、映像に指定レーサの状態を表現した演出を施すことに特徴を有する。
【0067】
図13は、実施形態4にかかる映像提供システム1000bの全体構成を示すブロック図である。映像提供システム1000bは、映像提供装置100aに代えて、映像提供装置100bと、1又は複数の生体情報計測器400と、1又は複数の位置情報計測器410とを備える。
【0068】
生体情報計測器400は、各レーサの身体に装着され、各レーサの生体情報を計測する計測器である。生体情報は、例えば心拍、脈拍及び血圧等である。生体情報計測器400は、計測した生体情報を、レーサIDとともに映像提供装置100bに送信する。
【0069】
位置情報計測器410は、各レーサの身体、又は各レーサが使用する用具に取り付けられ、各レーサの位置情報を計測する計測器である。位置情報計測器410は、オンボードカメラ330に実装されていてもよい。位置情報計測器410は、GPS情報を受信することで、位置情報を計測してよい。位置情報計測器410は、計測した位置情報を、レーサIDとともに映像提供装置100bに送信する。
【0070】
映像提供装置100bは、各レーサの生体情報及び各レーサの位置情報のうち少なくとも1つを用いて、ユーザ用映像の配信データを生成する。そして映像提供装置100bは、配信データをユーザ端末200に送信する。
【0071】
図14は、実施形態4にかかる映像提供装置100bの構成を示すブロック図である。映像提供装置100bは、記憶部110a及び制御部140aに代えて、記憶部110b及び制御部140bを備える点で、映像提供装置100aと相違する。
【0072】
記憶部110bは、プログラム111aに代えてプログラム111bを記憶する。プログラム111bは、実施形態4にかかる映像提供方法の処理が実装されたコンピュータプログラムである。
【0073】
制御部140bは、生成部145に代えて生成部145bを備える点で制御部140aと相違する。まず生成部145bは、優先度設定部144aが設定した優先度に基づいて、複数のカメラから収集した映像から第1ユーザ用映像を生成する。優先度は、指定レーサのレーサIDに基づいて算出された関連度に基づいて設定される。尚、本実施形態4では、優先度は、上述の実施形態3と同様に、関連度に加えてカメラワーク優先ルール115に基づいて設定される。尚、第1ユーザ用映像の生成方法については、実施形態2にかかるユーザ用映像の生成方法と同様であってよい。
【0074】
次に生成部145bは、指定レーサの状態を示す重畳画像を生成する。指定レーサの状態は、指定レーサの位置情報又は生体情報であってよい。言い換えると生成部145bは、指定レーサの位置情報に基づいて、位置情報を示す重畳画像を生成したり、指定レーサの生体情報に基づいて、生体情報を示す重畳画像を生成する。そして生成部145bは、生成した重畳画像を第1ユーザ用映像に重畳させた第2ユーザ用映像を生成する。尚、生成部145bは、第1ユーザ用映像に含まれる映像を撮影したカメラのカメラワーク種別に応じて、重畳画像を重畳させるか否か、及び重畳画像の重畳位置を決めてよい。また生成部145bは、当該カメラワーク種別に応じて、重畳させる重畳画像の種別(生体情報を示す重畳画像か、位置情報を示す重畳画像か)を決めてもよい。生成部145bは、第2ユーザ用映像と、表示態様に関する情報とを含むユーザ用映像の配信データを生成し、出力制御部146に供給する。
【0075】
出力制御部146は、上述した第2ユーザ用映像を含む配信データをユーザ端末200に送信し、ユーザ端末200の表示部240に第2ユーザ用映像を表示させる。
【0076】
図15は、実施形態4にかかる映像提供方法の流れを示すフローチャートである。
図15に示すステップは、
図6に示すS20~S22に加えて、S30~S36を含む。
【0077】
関連度算出部143が各映像データについて指定レーサとの間の関連度を算出した後(S22)、優先度設定部144aは、関連度及びカメラワーク優先ルール115に基づいて、各カメラの優先度を設定する(S30)。次に、生成部145bは、各カメラの優先度に基づいて、第1ユーザ用映像を生成する(S31)。次に、生成部145bは、指定レーサの生体情報又は位置情報を、生体情報計測器400又は位置情報計測器410から取得する(S33)。次に、生成部145bは、指定レーサの生体情報又は位置情報に基づいて、レーサの状態を示す重畳画像を生成する(S34)。次に、生成部145bは、第1ユーザ用映像に重畳画像を重畳させた第2ユーザ用映像の配信データを生成する(S35)。そして出力制御部146は、配信データをユーザ端末200に送信し、ユーザ端末200に第2ユーザ用映像を表示させる(S36)。
【0078】
図16~
図17は、実施形態4にかかるユーザ端末200に表示される表示画面の一例を示す図である。
図16は、指定レーサに取り付けられたオンボードカメラ330の映像502に対して、指定レーサの生体情報を示す重畳画像600を重畳させた第2ユーザ用映像を示している。本図の重畳画像600は、指定レーサの心拍数がどの程度高まっているかを示している。これにより、ユーザは指定レーサの現在の状態を容易に把握してレースの臨場感をより感じることができる。尚、本図では、第2ユーザ用映像には、指定レーサの速度を示す重畳画像601を含んでおり、指定レーサの現在の状態がより詳細に示されている。
【0079】
また
図17は、指定レーサが映るドローンカメラ320の映像504に対して、指定レーサの位置情報を示す重畳画像602を重畳させた第2ユーザ用映像を示している。本図の重畳画像602は、指定レーサがトラックのどの位置を走行しているかを示している。尚、重畳画像602は、先頭のレーサの位置をさらに示していてもよい。これにより、ユーザは、指定レーサの状態を映像で確認しながら、レース全体の状況を容易に把握することができる。
【0080】
このように、指定レーサの状態を表現した演出を施したユーザ用映像を提供することで、ユーザの満足度をさらに高めることができる。
【0081】
上述の実施形態では、ハードウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではない。本開示は、任意の処理を、プロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0082】
上述の例において、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0083】
尚、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば実施形態4では、映像提供装置100bは、各レーサの身体に装着された生体情報計測器400からの生体情報を用いて、ユーザ用映像の配信データを生成してよいとした。ここでレーサが馬である場合、生体情報計測器400は、馬の身体に装着されるが、これに代えて又は加えて、騎手の身体に装着され、騎手の生体情報を計測してもよい。そして映像提供装置100bは、各騎手の生体情報を用いて、ユーザ用映像の配信データを生成してよい。またレーサが競艇の選手である場合は、選手が使用する船の状態を計測する計測器が、船に取り付けられてよい。そして映像提供装置100bは、指定レーサが使用する船の状態を取得し、船の状態を示す重畳画像を第1ユーザ用映像に重畳させることで、ユーザ用映像の配信データを生成してよい。このように指定レーサの騎手や船の状態を表現した演出を施したユーザ用映像を提供することで、ユーザの満足度をさらに高めることができる。
【0084】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
レースに出場するレーサのうち、ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得する指定手段と、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集する映像収集手段と、
前記ユーザが指定したレーサIDに基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成する生成手段と、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザが使用するユーザ端末に出力させる出力制御手段と
を備える映像提供装置。
(付記2)
前記複数のカメラの各々の優先度を設定する優先度設定手段をさらに備え、
前記生成手段は、前記優先度に基づいて前記ユーザ用映像を生成する
付記1に記載の映像提供装置。
(付記3)
前記優先度設定手段は、前記複数のカメラの各々から収集した映像と、前記レーサIDとの間の関連度に基づいて、前記複数のカメラの各々の優先度を設定する
付記2に記載の映像提供装置。
(付記4)
前記優先度設定手段は、前記レーサIDを有するレーサの位置情報及び前記レースの開始からの経過時間の少なくとも1つに基づいて、前記複数のカメラの各々の優先度を設定する
付記3に記載の映像提供装置。
(付記5)
前記生成手段は、前記優先度に基づいて、前記複数のカメラから収集した映像から、前記ユーザ端末の表示手段において表示させる1又は複数の映像を選択する
付記2から4のいずれか一項に記載の映像提供装置。
(付記6)
前記生成手段は、前記優先度に基づいて、前記ユーザ端末の表示手段において、選択した前記1又は複数の映像の表示態様を決定する
付記5に記載の映像提供装置。
(付記7)
前記生成手段は、
前記ユーザが指定したレーサIDに基づいて、前記複数のカメラから収集した映像から第1ユーザ用映像を生成し、
前記ユーザが指定したレーサIDを有するレーサの位置情報又は前記レーサの生体情報に基づいて、前記レーサの状態を示す重畳画像を生成し、
前記重畳画像を前記第1ユーザ用映像に重畳させた第2ユーザ用映像を生成し、
前記出力制御手段は、前記第2ユーザ用映像を、前記ユーザ端末に出力させる
付記1から6のいずれか一項に記載の映像提供装置。
(付記8)
映像提供装置と、
ユーザが使用するユーザ端末と
を備え
前記映像提供装置は、
レースに出場するレーサのうち、前記ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得する指定手段と、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集する映像収集手段と、
前記ユーザが指定したレーサIDに基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成する生成手段と、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザ端末に出力させる出力制御手段と
を有する映像提供システム。
(付記9)
レースに出場するレーサのうち、ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得し、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集し、
前記ユーザが指定したレーサIDに基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成し、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザが使用するユーザ端末に出力させる
映像提供方法。
(付記10)
レースに出場するレーサのうち、ユーザが指定したレーサを識別するレーサIDを取得する指定処理と、
複数のカメラの各々から、同じ時間区間に撮影された、前記レースに関する映像を収集する映像収集処理と、
前記ユーザが指定したレーサIDに基づいて、前記複数のカメラから収集した映像からユーザ用映像を生成する生成処理と、
前記ユーザ用映像を、前記ユーザが使用するユーザ端末に出力させる出力制御処理と
をコンピュータに実行させるためのプログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
【符号の説明】
【0085】
10,100,100a,100b 映像提供装置
11,141 指定部
12 映像収集部
142 映像収集部
15,145,145b 生成部
16,146 出力制御部
110,110a,110b 記憶部
111,111a,111b プログラム
112 ユーザDB
1121 ユーザID
1122 レーサID
113 レーサDB
1131 レーサID
1132 特徴情報
114 カメラDB
1141 カメラID
1142 カメラワーク種別
1143 位置情報
1144 映像データ
115 カメラワーク優先ルール
120 メモリ
130 通信部
140,140a,140b 制御部
143 関連度算出部
144 優先度設定部
144a 優先度設定部
200 ユーザ端末
220 記憶部
230 通信部
240 表示部
245 音声出力部
250 入力部
260 制御部
310 固定カメラ
320 ドローンカメラ
330 オンボードカメラ
400 生体情報計測器
410 位置情報計測器
501,502,503,504 映像
600,601 重畳画像
1000,1000b 映像提供システム
N ネットワーク