IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-超音波モータ 図1
  • 特許-超音波モータ 図2
  • 特許-超音波モータ 図3
  • 特許-超音波モータ 図4
  • 特許-超音波モータ 図5
  • 特許-超音波モータ 図6
  • 特許-超音波モータ 図7
  • 特許-超音波モータ 図8
  • 特許-超音波モータ 図9
  • 特許-超音波モータ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】超音波モータ
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/16 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
H02N2/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023559489
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2022037799
(87)【国際公開番号】W WO2023084972
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021184942
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 亜香里
(72)【発明者】
【氏名】樫浦 英秋
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-44858(JP,A)
【文献】実開平6-17392(JP,U)
【文献】特開平10-248273(JP,A)
【文献】特開2002-171717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材と、
対向し合う第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面に接続されている側面と、を含む板状部と、前記軸部材を支持している第1の軸受け部と、を有する、第1のケース部材と、
前記第1のケース部材の前記第2の主面側に配置されており、前記第1のケース部材と共にケースを構成しており、底部と、前記底部に接続されている側壁部と、を含むカップ状部と、前記軸部材を支持している第2の軸受け部と、を有する、第2のケース部材と、
前記ケース内に配置されており、対向し合う第3の主面及び第4の主面を含む板状の振動体と、前記振動体の前記第3の主面上に設けられている圧電素子と、を有するステータと、
前記ケース内に配置されており、前記軸部材に固定されており、前記振動体の前記第4の主面に接触しているロータと、
を備え、
前記第2のケース部材の前記側壁部が、内側に突出しており、前記第1のケース部材の前記第2の主面を支持している少なくとも3つの複数の支持部と、前記第1のケース部材の前記第1の主面及び前記側面のうち少なくとも一方を固定している、少なくとも3つの複数の固定部と、を有する、超音波モータ。
【請求項2】
平面視において、前記第2のケース部材の前記複数の固定部が均等に配置されている、請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記第1のケース部材が、外部に取り付けられる取り付け部を有し、
前記軸部材が延びる方向において、前記第2のケース部材の前記複数の固定部が、前記取り付け部よりも外側に位置していない、請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項4】
平面視において、前記複数の支持部及び前記複数の固定部が重なっている、請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項5】
平面視における、前記第2のケース部材の前記側壁部の周回方向に沿う、前記支持部及び前記固定部のそれぞれの寸法を、前記支持部及び前記固定部のそれぞれの幅としたときに、前記支持部の幅が、前記固定部の幅よりも広い、請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記第1のケース部材が、前記第2のケース部材によって、かしめ構造により固定されている、請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記第2のケース部材の前記複数の支持部がそれぞれ、前記側壁部が外側から内側に切り起こされた切り起こし部である、請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項8】
前記第1の軸受け部及び前記第2の軸受け部が樹脂からなる滑り軸受けである、請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項9】
前記軸部材の一方の端部が錐状の形状を有する、請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項10】
前記軸部材の一方の先端に、錐状の凹部が設けられている、請求項1に記載の超音波モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子によりステータを振動させる超音波モータが種々提案されている。下記の特許文献1には、超音波モータの一例が開示されている。この超音波モータにおいては、基台及びカバーにより構成されたケース内に、ステータ及びロータが収納されている。基台の載置部の上面にステータが載置されている。ステータの上方にロータが配置されている。基台の挿入孔、ステータの貫通孔及びロータの挿入孔に、軸部材が挿通されている。なお、ステータは、基台の載置部に、ねじ留め、ろう付けまたは接着により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-248273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような超音波モータにおいては、製造時などにおいて、回転軸の角度にずれが生じる場合がある。そのため、超音波モータの特性が劣化するおそれがある。また、超音波モータの十分な小型化は困難である。
【0005】
本発明の目的は、軸部材の角度のずれをより確実に抑制することができ、かつ小型化することができる、超音波モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る超音波モータは、軸部材と、対向し合う第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面に接続されている側面とを含む板状部と、前記軸部材を支持している第1の軸受け部とを有する、第1のケース部材と、前記第1のケース部材の前記第2の主面側に配置されており、前記第1のケース部材と共にケースを構成しており、底部と、前記底部に接続されている側壁部とを含むカップ状部と、前記軸部材を支持している第2の軸受け部とを有する、第2のケース部材と、前記ケース内に配置されており、対向し合う第3の主面及び第4の主面を含む板状の振動体と、前記振動体の前記第3の主面上に設けられている圧電素子とを有するステータと、前記ケース内に配置されており、前記軸部材に固定されており、前記振動体の前記第4の主面に接触しているロータとを備え、前記第2のケース部材の前記側壁部が、内側に突出しており、前記第1のケース部材の前記第2の主面を支持している少なくとも3つの複数の支持部と、前記第1のケース部材の前記第1の主面及び前記側面のうち少なくとも一方を固定している、少なくとも3つの複数の固定部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る超音波モータによれば、軸部材の角度のずれをより確実に抑制することができ、かつ小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波モータの断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態におけるケースの斜視図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係る超音波モータの分解斜視図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態における第1のケース部材の斜視図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態における第2のケース部材の斜視図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態におけるステータの平面図である。
図7図7は、本発明の第1の実施形態における第1の圧電素子の正面断面図である。
図8図8(a)~図8(c)は、本発明の第1の実施形態において励振される進行波を説明するための、ステータの模式的平面図である。
図9図9は、本発明の第2の実施形態における軸部材の先端部付近、及び位置決めの治具の例を示す正面断面図である。
図10図10は、本発明の第2の実施形態の変形例における軸部材の先端部付近、及び位置決めの治具の例を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0010】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波モータの断面図である。図2は、第1の実施形態におけるケースの斜視図である。図3は、第1の実施形態に係る超音波モータの分解斜視図である。なお、図1は、図2中のI-I線に沿う断面図である。
【0012】
図1に示すように、超音波モータ1は、ステータ2と、ロータ4と、ケース5と、軸部材10とを有する。ケース5はステータ2及びロータ4を収納している。図2に示すように、ケース5は、第1のケース部材6及び第2のケース部材8により構成されている。図1に戻り、ステータ2とロータ4とは接触している。より具体的には、ステータ2は振動体3を有する。振動体3の一方主面にロータ4が接触している。ステータ2において生じた進行波により、ロータ4が回転する。一方で、軸部材10は、ステータ2及びロータ4に挿通されており、ケース5の外側に至っている。ロータ4は軸部材10に固定されている。よって、ロータ4の回転に伴い、軸部材10が回転する。
【0013】
以下において、超音波モータ1の具体的な構成を説明する。本明細書において軸方向Zとは、ステータ2の振動体3の両主面を結ぶ方向であって、回転中心に沿う方向をいう。軸部材10は、軸方向Zと平行に延びている。本明細書においては、軸方向Zから見る方向を、平面視と記載する。なお、平面視は、図1における上方から見る方向である。例えば、第1のケース部材6側から第2のケース部材8側に見る方向が平面視である。さらに、本明細書において内側及び外側とは、ケース5を基準とした内側及び外側である。
【0014】
図4は、第1の実施形態における第1のケース部材の斜視図である。
【0015】
第1のケース部材6は、本実施形態ではフランジである。第1のケース部材6は、板状部7Aと、第1の軸受け部18とを有する。板状部7Aは、第1の主面7aと、第2の主面7bと、側面7dとを含む。第1の主面7a及び第2の主面7bは互いに対向している。第1の主面7aはケース5における外側に位置している。図1に示すように、板状部7Aの中央部には、第1の突出部7B及び第2の突出部7Cが設けられている。第1の突出部7Bは、板状部7Aから、ケース5の外側に突出している。第2の突出部7Cは、板状部7Aから、ケース5の内側に突出している。第1の突出部7B及び第2の突出部7Cは軸方向Zに延びている。第1の突出部7B及び第2の突出部7Cは円筒状である。なお、第1の突出部7B及び第2の突出部7Cの形状は上記に限定されず、筒状であればよい。
【0016】
第1の突出部7B及び第2の突出部7Cに、連続した1つの貫通孔7cが設けられている。第1の突出部7Bの内径は、第2の突出部7Cの内径よりも大きい。第1の突出部7B内に第1の軸受け部18が設けられている。軸部材10は第1の軸受け部18に挿通されている。軸部材10は、第1の軸受け部18を通り、ケース5の外側に突出している。なお、第1のケース部材6には、第2の突出部7Cは設けられていなくともよい。
【0017】
図3に示すように、第1のケース部材6は取り付け部7Dをさらに有する。取り付け部7Dは、板状部7Aから、軸方向Zと直交する方向に突出している。超音波モータ1は、取り付け部7Dにおいて外部に取り付けられる。本実施形態では、板状部7Aは円板状の形状を有する。もっとも、板状部7Aの形状は円板状には限定されない。第1のケース部材6は、取り付け部7Dを必ずしも有していなくともよい。
【0018】
第1のケース部材6の板状部7A、第1の突出部7B、第2の突出部7C及び取り付け部7Dは樹脂からなる。もっとも、第1のケース部材6の上記各部分の材料は樹脂に限定されず、例えば、金属またはセラミックスを用いることもできる。
【0019】
第2のケース部材8は、第1のケース部材6の第2の主面7b側に配置されている。第2のケース部材8は、カップ状部9Aと、第2の軸受け部19とを有する。カップ状部9Aは、底部9aと、側壁部9bとを含む。側壁部9bは底部9aに接続されている。図1に示すように、カップ状部9Aは開口部9fを含む。開口部9fは、底部9a及び側壁部9bにより囲まれている。底部9aの中央部には突出部9Bが設けられている。突出部9Bは、底部9aからケース5の外側に突出している。突出部9Bは円筒状である。なお、突出部9Bの形状は上記に限定されず、筒状であればよい。
【0020】
突出部9B内に第2の軸受け部19が設けられている。軸部材10は、第2の軸受け部19に挿通されている。軸部材10は、第2の軸受け部19を通り、ケース5の外側に突出している。第2のケース部材8のカップ状部9A及び突出部9Bには、例えば、金属、セラミックスまたは樹脂などを用いることができる。
【0021】
第1の軸受け部18及び第2の軸受け部19としては、樹脂からなる滑り軸受けが好適に用いられる。もっとも、第1の軸受け部18及び第2の軸受け部19の材料は樹脂には限定されない。さらに、第1の軸受け部18及び第2の軸受け部19は滑り軸受けには限定されず、例えば、ベアリングなどであってもよい。
【0022】
図5は、第1の実施形態における第2のケース部材の斜視図である。
【0023】
第2のケース部材8における側壁部9bは、4つの支持部9dを有する。各支持部9dは、側壁部9bにおいて、内側(軸部材中心側)に突出している部分である。各支持部9dは、第1のケース部材6を支持している。本実施形態では、各支持部9dは切り起こし部である。切り起こし部とは、側壁部9bが外側から内側に切り起こされた部分である。さらに、側壁部9bは、4つの固定部9eを有する。第2のケース部材8の各固定部9eは、後述するかしめ構造によって第1のケース部材6を固定している。各固定部9eは、側壁部9bの開口端の一部が、内側に折り曲げられた構成を有する。より詳細には、超音波モータ1の製造に際し、本実施形態の各固定部9eは、かしめ構造によって側壁部9bの開口端の一部が折り曲げられることにより形成されている。ここでいう、支持部9d及び固定部9eの構成を示す内側とは、軸方向Zと直交する方向における、ケース5の内側をいう。なお、支持部9d及び固定部9eの構成は上記に限定されない。
【0024】
図1に示すように、第1のケース部材6は、各固定部9eによるかしめ構造により固定されている。より詳細には、平面視において、複数の支持部9d及び複数の固定部9eが重なっている。固定部9e及び支持部9dによって、第1のケース部材6の板状部7Aが挟まれている。これにより、第1のケース部材6が第2のケース部材8に固定されている。
【0025】
本実施形態の特徴は、第2のケース部材8の側壁部9bが、少なくとも3つの複数の支持部9dと、少なくとも3つの複数の固定部9eとを有し、複数の固定部9eにより第1のケース部材6が固定されていることにある。それによって、軸部材10の角度のずれをより確実に抑制することができ、かつ小型化することができる。これを以下において説明する。
【0026】
超音波モータ1の製造時においては、軸部材10を第1のケース部材6及び第2のケース部材8に挿通させた状態において、第1のケース部材6を第2のケース部材8に固定することにより、ケース5を形成する。この固定に際しては、第1のケース部材6及び第2のケース部材8を、軸方向Zにおいて互いに密着させる方向に力が加えられる。このとき、3つ以上の支持部9dによって第1のケース部材6が支持されるため、第1のケース部材6の姿勢を安定化することができる。これに伴い、軸部材10の姿勢も安定化させることができ、軸部材10の傾きを抑制することができる。加えて、3つ以上の固定部9eにより第1のケース部材6の固定を行うため、力を均一に加えることができる。これにより、第1のケース部材6の第2のケース部材8に対する位置ずれ及び傾きを、より確実に抑制することができる。よって、軸部材10の直角度をより確実に高めることができる。従って、軸部材10の角度のずれをより確実に抑制することができる。なお、直角度とは、第1のケース部材6の基準面に対する直角度である。第1のケース部材6の基準面は、板状部7Aの第1の主面7aであってもよく、第2の主面7bであってもよい。
【0027】
さらに、本実施形態においては、第1のケース部材6が、第2のケース部材8によって、かしめ構造により固定されている。そのため、第1のケース部材6及び第2のケース部材8のねじ留めなどを要しない。従って、超音波モータ1を低背化することができ、小型化することができる。
【0028】
以下において、本実施形態の構成をさらに詳細に説明する。
【0029】
図1に示すように、軸部材10には止め輪17が設けられている。止め輪17は、円環状の形状を有する。平面視において、止め輪17は軸部材10を囲んでいる。より詳細には、止め輪17の内周端縁部は軸部材10内に位置する。止め輪17は第1の軸受け部18に、軸方向Zにおける外側から当接している。これにより、軸部材10の角度のずれを抑制することができる。軸部材10及び止め輪17の材料としては、例えば、金属または樹脂などを用いることができる。
【0030】
図6は、第1の実施形態におけるステータの平面図である。
【0031】
ステータ2は振動体3を有する。振動体3は円板状である。振動体3は第3の主面3a及び第4の主面3bを有する。第3の主面3a及び第4の主面3bは互いに対向している。振動体3の中央部には貫通孔3cが設けられている。貫通孔3cには、第1のケース部材6の第2の突出部7Cが挿通されている。
【0032】
なお、貫通孔3cの位置は上記に限定されない。貫通孔3cは、軸方向中心を含む領域に位置していればよい。平面視における貫通孔3cの形状は特に限定されず、例えば、円形または楕円形、あるいは、正六角形、正八角形または正十角形などの正多角形などであってもよい。さらに、振動体3の形状は円板状には限定されない。平面視における振動体3の形状は、例えば、正六角形、正八角形または正十角形などの正多角形であってもよい。振動体3は適宜の金属からなる。なお、振動体3は必ずしも金属からなっていなくともよい。振動体3は、例えば、セラミックス、シリコン材料または合成樹脂などの他の弾性体により構成されていてもよい。
【0033】
振動体3の第3の主面3aには、複数の圧電素子が設けられている。より具体的には、複数の圧電素子は、第1の圧電素子13A、第2の圧電素子13B、第3の圧電素子13C及び第4の圧電素子13Dである。複数の圧電素子は、軸方向Zに平行な軸を中心として周回する進行波を発生させるように、該進行波の周回方向に沿って分散配置されている。軸方向Zから見たときに、第1の圧電素子13A及び第3の圧電素子13Cは軸を挟んで対向し合っている。第2の圧電素子13B及び第4の圧電素子13Dは軸を挟んで対向し合っている。
【0034】
図7は、第1の実施形態における第1の圧電素子の正面断面図である。
【0035】
第1の圧電素子13Aは圧電体14を有する。圧電体14は第5の主面14a及び第6の主面14bを有する。第5の主面14a及び第6の主面14bは対向し合っている。第1の圧電素子13Aは、第1の電極15A及び第2の電極15Bを有する。圧電体14の第5の主面14a上に第1の電極15Aが設けられており、第6の主面14b上に第2の電極15Bが設けられている。第2の圧電素子13B、第3の圧電素子13C、及び第4の圧電素子13Dも、第1の圧電素子13Aと同様に構成されている。上記各圧電素子の平面視における形状は矩形である。なお、各圧電素子の平面視における形状は上記に限定されず、例えば楕円形などであってもよい。
【0036】
ここで、第1の電極15Aは、振動体3の第3の主面3aに接着剤により貼り付けられている。この接着剤の厚みは非常に薄い。従って、第1の電極15Aは振動体3に電気的に接続される。
【0037】
なお、進行波を発生させるためには、ステータ2は、少なくとも第1の圧電素子13A及び第2の圧電素子13Bを有していればよい。あるいは、複数の領域に分割された、1個の圧電素子を有していてもよい。この場合には、例えば、圧電素子の各領域が互いに異なる方向に分極されていてもよい。
【0038】
図3に示すように、振動体3の第4の主面3b上において、複数の突起部3eが設けられている。複数の突起部3eは、振動体3における、ロータ4に接触している部分である。各突起部3eは、振動体3の第4の主面3bから軸方向Zに突出している。平面視において、複数の突起部3eは円環状に並んでいる。複数の突起部3eは、第4の主面3bの他の部分から軸方向Zに突出しているため、振動体3において進行波が生じたとき、複数の突起部3eの先端はより一層大きく変位する。そして、第4の主面3bにおける突起部3eにロータ4が接触している。よって、ステータ2において生じさせた進行波によって、ロータ4を効率的に回転させることができる。なお、複数の突起部3eは必ずしも設けられていなくともよい。
【0039】
ロータ4は円板状である。図1に示すように、ロータ4の中央部には貫通孔4cが設けられている。もっとも、貫通孔4cの位置は上記に限定されない。貫通孔4cは、軸方向中心を含む領域に位置していればよい。さらに、ロータ4の形状は上記に限定されない。ロータ4の形状は、平面視において、例えば、正六角形、正八角形または正十角形などの正多角形であってもよい。
【0040】
ロータ4は、凹部4aと、側壁部4bとを有する。凹部4aは、軸方向Zから見たときに円形である。側壁部4bは、凹部4aを囲んでいる部分である。ロータ4は側壁部4bの端面4dにおいて、ステータ2と接触している。もっとも、凹部4a及び側壁部4bは設けられていなくともよい。ロータ4の材料としては、例えば、金属またはセラミックスなどを用いることができる。本実施形態では、ロータ4と軸部材10とは別体として構成されている。もっとも、ロータ4及び軸部材10が一体として構成されていてもよい。
【0041】
ロータ4におけるステータ2側の面には、摩擦材が固定されていてもよい。それによって、ステータ2の振動体3とロータ4との間に加わる摩擦力を安定化させることができる。この場合には、ロータ4を効率的に回転させることができ、超音波モータ1を効率的に回転駆動させることができる。
【0042】
ロータ4上には弾性部材12が設けられている。弾性部材12は、軸方向Zにおいて、ステータ2と共にロータ4を挟んでいる。弾性部材12は円環状の形状を有する。なお、弾性部材12の形状は上記に限定されない。弾性部材12の材料としては、例えば、ゴムまたは樹脂などを用いることができる。もっとも、弾性部材12は設けられていなくともよい。
【0043】
弾性部材12の第2の軸受け部19側には、バネ部材16が配置されている。より具体的には、本実施形態のバネ部材16は金属からなる板バネである。バネ部材16の中央部には、貫通孔16cが設けられている。貫通孔16cに軸部材10が挿通されている。軸部材10は幅広部10aを有する。軸部材10の幅広部10aにおける幅は、軸部材10における他の部分の幅よりも広い。なお、軸部材10の幅は、軸部材10の軸方向Zと直交する方向に沿う寸法である。幅広部10aに、バネ部材16の内周端縁部が当接している。これにより、バネ部材16及び軸部材10の間の位置ずれを抑制することができる。もっとも、バネ部材16の材料及び構成は上記に限定されない。軸部材10の構成も上記に限定されるものではない。
【0044】
バネ部材16から弾性部材12を介して、ロータ4に弾性力が付与されている。これにより、ロータ4がステータ2に押し当てられている。この場合には、ステータ2及びロータ4の間の摩擦力を高めることができる。よって、ステータ2からロータ4に進行波を効果的に伝搬させることができ、ロータ4を効率的に回転させることができる。従って、超音波モータ1を効率的に回転駆動させることができる。
【0045】
ステータ2において、複数の圧電素子を周回方向に分散配置し、駆動することにより進行波を発生させる構造については、例えば、WO2010/061508A1に開示されている。なお、この進行波を発生させる構造については、以下の説明だけでなく、WO2010/061508A1に記載の構成を本明細書に援用することにより、詳細な説明は省略することとする。
【0046】
図8(a)~図8(c)は、第1の実施形態において励振される進行波を説明するための、ステータの模式的平面図である。なお、図8(a)~図8(c)では、グレースケールにおいて、黒色に近いほど一方の方向の応力が大きく、白色に近いほど他方の方向の応力が大きいことを示す。
【0047】
図8(a)には、三波の定在波Xが示されており、図8(b)には、三波の定在波Yが示されている。第1~第4の圧電素子13A~13Dが、中心角90°の角度を隔てて配置されているとする。この場合、三波の定在波X,Yが励振されるため、進行波の波長に対する中心角は120°となる。中心角は、一波の角度120°に3/4を掛けた角度90°で決定する。三波の定在波Xの振幅が大きい所定の場所に第1の圧電素子13Aを配置し、中心角90°間隔で第2~第4の圧電素子13B~13Dを配置する。この場合、振動の位相が90°異なる三波の定在波X,Yが励振され、両者が合成されて、図8(c)に示す進行波が生じる。
【0048】
なお、図8(a)~図8(c)における、A+、A-、B+、B-は、圧電体14の分極方向を示す。+は、厚み方向において、第5の主面14aから第6の主面14bに向けて分極されていることを意味する。-は、逆方向に分極されていることを示す。Aは、第1の圧電素子13A及び第3の圧電素子13Cであることを示し、Bは、第2の圧電素子13B及び第4の圧電素子13Dであることを示す。
【0049】
なお、三波の例を示したが、これに限定されず六波、九波、十二波などの場合も同様に位相が90°異なる2つの定在波が励振され、両者の合成により進行波が生じる。本発明において、進行波を発生させる構成は、図8(a)~図8(c)に示した構成に限らず、従来より公知の様々な進行波を発生させる構成を用いることができる。
【0050】
以下において、本発明の好ましい形態の例を説明する。図5に示すように、平面視において、第2のケース部材8の複数の固定部9eが均等に配置されていることが好ましい。それによって、第1のケース部材6を第2のケース部材8に固定するに際し、力をより一層均一に加えることができる。加えて、第1のケース部材6を均等に固定することができる。それによって、第1のケース部材6の第2のケース部材8に対する位置ずれ及び傾きをより一層確実に抑制することができ、軸部材10の角度のずれをより一層確実に抑制することができる。
【0051】
平面視において、第2のケース部材8の複数の支持部9dが均等に配置されていることが好ましい。それによって、第1のケース部材6を第2のケース部材8に固定する際に、第1のケース部材6をより一層安定して支持することができる。従って、軸部材10の角度のずれをより一層確実に抑制することができる。
【0052】
平面視において、複数の支持部9d及び複数の固定部9eが重なっていることが好ましい。この場合には、第1のケース部材6を第2のケース部材8に固定するに際し、各固定部9eから第1のケース部材6に加わる力を、各支持部9dに効果的に分散させることができる。従って、第1のケース部材6を第2のケース部材8に安定して固定することができる。
【0053】
本実施形態においては、支持部9dの幅は2.3mmである。固定部9eの幅は2mmである。なお、支持部9d及び固定部9eのそれぞれの幅は、平面視における、第2のケース部材8の側壁部9bの周回方向に沿う、支持部9d及び固定部9eのそれぞれの寸法である。このように、支持部9dの幅が、固定部9eの幅よりも広いことが好ましい。それによって、第1のケース部材6を第2のケース部材8に固定するに際し、各固定部9eから第1のケース部材6に加わる力を、各支持部9dに、より一層分散させることができる。従って、第1のケース部材6を第2のケース部材8に、より一層安定して固定することができる。
【0054】
ところで、図2に示すように、第1のケース部材6は1対の取り付け部7Dを有する。1対の取り付け部7Dは、板状部7Aを挟み互いに対向している。図1に示すように、板状部7Aは、第2のケース部材8の開口部9f内に位置している。他方、図2に戻り、取り付け部7Dは第2のケース部材8の外側に延びている。より具体的には、第2のケース部材8の側壁部9bには切り欠き部9gが設けられている。取り付け部7Dは、切り欠き部9gから第2のケース部材8の外側に延びている。
【0055】
超音波モータ1は、取り付け部7Dにおいて外部に取り付けられる。例えば、取り付け部7Dにおいて、外部にねじ留めされてもよく、あるいは、接着剤等により外部に接合されてもよい。なお、取り付け部7Dの個数及び配置は上記に限定されない。1個の取り付け部7Dが設けられていてもよく、3個以上の取り付け部7Dが設けられていてもよい。
【0056】
軸方向Zにおいて、第2のケース部材8の複数の固定部9eが、取り付け部7Dよりも外側に位置していないことが好ましい。より具体的には、軸方向Zにおいて、複数の固定部9eが取り付け部7Dよりも内側に位置することが好ましい。または、複数の固定部9e及び取り付け部7Dの軸方向Zにおける位置が同じであることが好ましい。これにより、第1のケース部材6を第2のケース部材8に固定するに際し、容易に均一に力を加えることができる。よって、軸部材10の直角度を容易に高めることができる。加えて、超音波モータ1を、取り付け部7Dにおいて外部に容易に取り付けることができる。よって、超音波モータ1を外部に取り付ける際の精度を高めることができる。
【0057】
図2及び図4に示すように、本実施形態においては、板状部7Aの第1の主面7aにおける外周縁、及び取り付け部7Dの外部に接触する部分の軸方向Zにおける位置は同じである。なお、該外周縁における、第2のケース部材8の各固定部9eに接触する部分付近が凹状となっている。このように、第1のケース部材6において、各固定部9eに接触する部分は、軸方向Zにおいて、取り付け部7Dにおける外部に接触する部分よりも内側に位置することが好ましい。このような構成とすることにより、軸方向Zにおいて、第2のケース部材8の複数の固定部9eを、より確実に、取り付け部7Dよりも外側に位置しないようにすることができる。
【0058】
上記のように、第1のケース部材6は、第2のケース部材8によって、かしめ構造により固定されていることが好ましい。この場合には、第1のケース部材6を第2のケース部材8に固定するに際し、第1のケース部材6に対して、第1の主面7a側からケース5の内側に相当する方向に、均一に力を加えることができる。これにより、第1のケース部材6の第2のケース部材8に対する位置ずれ及び傾きを、より一層確実に抑制することができる。よって、軸部材10の直角度をより一層確実に高めることができる。従って、軸部材10の角度のずれをより一層確実に抑制することができる。加えて、第1のケース部材6及び第2のケース部材8のねじ留めなどを要しないため、生産性を高めることができる。さらに、超音波モータ1を低背化することができ、小型化することができる。
【0059】
もっとも、第1のケース部材6の固定は、かしめ構造による固定には限定されない。例えば、第2のケース部材8の複数の固定部9eは、接着剤により第1のケース部材6を固定している部分であってもよく、溶接により第1のケース部材6を固定している部分であってもよい。
【0060】
さらに、第1のケース部材6は、第2のケース部材8に圧入されていてもよい。例えば、第1のケース部材6における板状部7Aの側面7dが、軸方向Zに直交する方向における外側に突出した3つ以上の凸部を有していてもよい。この場合、複数の固定部9eは、側壁部9bにおける、板状部7Aの複数の凸部に当接している部分である。あるいは、第2のケース部材8の側壁部9bが、第1のケース部材6を圧入により固定するための3つ以上の凸部を有していてもよい。該凸部は、側壁部9bから軸方向Zに直交する方向における内側に突出している。この場合、該凸部が固定部9eである。本発明においては、固定部9eは、板状部7Aの第1の主面7a及び側面7dのうち少なくとも一方を固定していればよい。
【0061】
図5に示すように、第2のケース部材8の複数の支持部9dがそれぞれ、切り起こし部であることが好ましい。より具体的には、各支持部9d及び側壁部9bは一体として構成されており、かつ第2のケース部材8は、支持部9d及び側壁部9bにより囲まれた開口部9hを有する。それによって、支持部9dが側壁部9bから剥離することを抑制することができ、かつ支持部9dの軸方向Zと直交する方向に沿う寸法を大きくすることができる。よって、第1のケース部材6をより一層確実に支持することができる。加えて、支持部9dを容易に設けることができる。従って、生産性を高めることができ、かつ軸部材10の角度のずれをより一層確実に抑制することができる。
【0062】
もっとも、支持部9dは、側壁部9bと別体として設けられていてもよい。支持部9d及び側壁部9bの材料が互いに異なっていてもよく、支持部9dが側壁部9bに接合されていてもよい。
【0063】
図9は、第2の実施形態における軸部材の先端部付近、及び位置決めの治具の例を示す正面断面図である。
【0064】
本実施形態は、軸部材20の一方の端部20aが錐状の形状を有する点において第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の超音波モータは第1の実施形態の超音波モータ1と同様の構成を有する。超音波モータの軸部材20以外の部分の説明には、第1の実施形態の説明に用いた図面及び符号を援用する。なお、本明細書において、錐状は、先端が曲面状である場合も含む。
【0065】
図9に示す端部20aは、軸部材20の第2のケース部材8側の端部である。端部20aが錐状の形状を有することにより、超音波モータの位置決めを容易に行うことができる。例えば、図9に示す治具29には、円錐状の凹部29cが設けられている。この凹部29c及び端部20aを互いに嵌合させることにより、ケース5を形成するに際し、軸部材20の位置決めを容易に、かつより確実に行うことができる。よって、軸部材20の直角度をより確実に、効果的に高めることができる。加えて、図1に示すように、第1の実施形態と同様に、第2のケース部材8の側壁部9bが、少なくとも3つの複数の支持部9dと、少なくとも3つの複数の固定部9eとを有し、複数の固定部9eにより第1のケース部材6が固定されている。従って、軸部材20の角度のずれを効果的に抑制することができる。
【0066】
なお、軸部材20の端部20aの形状は円錐状に限定されず、角錐状であってもよい。さらに、軸部材20の両端部のうち少なくとも一方が錐状の形状を有していればよい。よって、軸部材20の第1のケース部材6側の端部が錐状の形状を有していてもよい。
【0067】
本実施形態においては、軸部材20の端部20aは凸状となっている。もっとも、端部20aは凹状となっていてもよい。例えば、図10に示す第2の実施形態の変形例においては、軸部材30の端部30aは錐状の凹部30cを有する。より具体的には、軸部材30の先端30bに凹部30cが設けられている。凹部30cは円錐状である。もっとも、凹部30cは角錐状であってもよい。例えば、図10に示す治具39には、円錐状の凸部39aが設けられている。この凸部39a及び凹部30cを互いに嵌合させることにより、軸部材30の位置決めを容易に、かつより確実に行うことができる。よって、軸部材30の直角度をより確実に、効果的に高めることができる。従って、軸部材30の角度のずれを効果的に抑制することができる。
【0068】
加えて、軸部材30に凸部を設ける必要がないため、軸部材30を短くすることができる。従って、超音波モータを低背化することができ、小型化することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…超音波モータ
2…ステータ
3…振動体
3a,3b…第3,第4の主面
3c…貫通孔
3e…突起部
4…ロータ
4a…凹部
4b…側壁部
4c…貫通孔
4d…端面
5…ケース
6…第1のケース部材
7A…板状部
7B,7C…第1,第2の突出部
7D…取り付け部
7a,7b…第1,第2の主面
7c…貫通孔
7d…側面
8…第2のケース部材
9A…カップ状部
9B…突出部
9a…底部
9b…側壁部
9d…支持部
9e…固定部
9f…開口部
9g…切り欠き部
9h…開口部
10…軸部材
10a…幅広部
12…弾性部材
13A~13D…第1~第4の圧電素子
14…圧電体
14a,14b…第5,第6の主面
15A,15B…第1,第2の電極
16…バネ部材
16c…貫通孔
17…止め輪
18,19…第1,第2の軸受け部
20…軸部材
20a…端部
29…治具
29c…凹部
30…軸部材
30a…端部
30b…先端
30c…凹部
39…治具
39a…凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10