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特許7517640喫煙物品用フィルターおよびこれを含む喫煙物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】喫煙物品用フィルターおよびこれを含む喫煙物品
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/10 20060101AFI20240709BHJP
   A24D 3/14 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A24D3/10
A24D3/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021531752
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 KR2021002806
(87)【国際公開番号】W WO2021215649
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0048511
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェオン、ボン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジン チュル
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-509872(JP,A)
【文献】特表2013-514801(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069386(WO,A1)
【文献】特開昭54-128070(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130154(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/00- 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙構造を有するフィルター物質と、前記フィルター物質に添加された液状物質とを含むフィルタープラグを含み、
前記フィルター物質は、親水性基の分子量が疎水性基の分子量より大きいかまたは同じ物質であり、
前記液状物質は、疎水性であり、
前記液状物質は前記フィルター物質の前記空隙構造に収容され(前記液状物質がカプセルに含まれ、前記カプセルの破裂によって前記液状物質が前記フィルター物質に分散される場合を除く)
前記フィルター物質は、バルク(bulk)が2.0cm/g以上のセルロース物質を含み、
前記液状物質は、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCTG)と加香物質を含む香液であり、
前記加香物質は、20℃で結晶性固体で存在する物質であり、
前記香液の前記加香物質の含量は、50重量%以下である、喫煙物品用フィルター。
【請求項2】
前記フィルター物質は、複数の単位体で構成され、
前記複数の単位体の親水性基の分子量が、疎水性基の分子量より大きいかまたは同一である、請求項1に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項3】
前記フィルター物質は、紙を含む、請求項1または2に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項4】
前記フィルタープラグの全体面積と前記フィルター物質の面積の比は、2:1~20:1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項5】
前記フィルタープラグの全体面積と前記フィルター物質の面積の比が10:1であるとき、前記液状物質の添加量は、2.0mg/mm~8.0mg/mmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項6】
前記液状物質は、加香物質としてメントールを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項7】
前記液状物質が添加された前記フィルター物質からなるフィルタープラグと、前記液状物質の添加前の前記フィルター物質からなるフィルタープラグとの円周の差異は、前記液状物質の添加前の前記フィルター物質からなるフィルタープラグの円周の10%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項8】
前記液状物質が添加された前記フィルター物質からなるフィルタープラグと、前記液状物質の添加前の前記フィルター物質からなるフィルタープラグとの吸引抵抗の差異は、前記液状物質の添加前の前記フィルター物質からなるフィルタープラグの吸引抵抗の15%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の喫煙物品用フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、喫煙物品用フィルターおよびこれを含む喫煙物品に関する。
【背景技術】
【0002】
喫煙者の好みを満たすために、喫煙物品(e.g.巻きタバコ)には、多様な方式で加香処理が行われる。代表的な加香処理方式の例としては、喫煙物品を構成する喫煙物質またはフィルタープラグに香液を直接添加(e.g.噴射)することが挙げられる。しかし、例示された方式は、香液添加量に制限があったり、意図した香りが発現しなかったり、喫煙中に香り発現性が急激に落ちるなどの問題がある。
【0003】
具体的に、喫煙物質に香液を添加する方式は、香液が喫煙物質と相互凝集することができて、多量の香液を添加し難い。また、喫煙時に高い加熱温度(または燃焼温度)によって香液が変質するにつれて、意図しない香りが発現することができる。
【0004】
次に、フィルタープラグに香液を添加する方式は、前述した方式に比べて多量の香液を添加することができるが、これも、添加量に限界が存在する。フィルタープラグを構成する代表的なフィルター物質であるセルロースアセテート繊維は、通常、押出方式で製造されるが、このように製造された繊維は、空隙構造が発達しなくて、多量の香液を収容できないためである。それだけでなく、セルロースアセテート繊維は、構造的特性上、空隙に浸透した香液の揮発を十分に抑制しないが、このような場合、香液の大部分が喫煙序盤に放出されて、喫煙後半に行くほど香り発現性が急激に落ちることがある。また、セルロースアセテート繊維に過量の香液が添加されると、膨潤現象によってフィルターの物性(e.g.吸引抵抗、円周など)が変わってしまう問題も発生することがある。
【0005】
一方、いかなる方式であっても、香液が収容限界以上で添加されると、フィルタープラグまたは喫煙物質を包んでいるラッパー(wrapper)がぬれて汚染される問題が発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示のいくつかの実施例を通じて解決しようとする技術的課題は、過度な物性変化なしに多量の液状物質を収容できる喫煙物品用フィルターおよびこれを含む喫煙物品を提供することにある。
【0007】
本開示のいくつかの実施例を通じて解決しようとする他の技術的課題は、香り発現性(香り発現強度)が増進された喫煙物品用フィルターおよびこれを含む喫煙物品を提供することにある。
【0008】
本開示のいくつかの実施例を通じて解決しようとするさらに他の技術的課題は、喫煙中に香り発現性が持続的に維持され得る喫煙物品用フィルターおよびこれを含む喫煙物品を提供することにある。
【0009】
本開示の技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていないさらに他の技術的課題は、下記の記載から本開示の技術分野における通常の技術者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を解決するための、本開示のいくつかの実施例による喫煙物品用フィルターは、フィルター物質を含むフィルタープラグと、前記フィルタープラグに添加された液状物質と、を含むことができる。この際、前記フィルター物質は、親水性基の分子量が、疎水性基の分子量より大きいかまたは同じ物質でありうる。
【0011】
いくつかの実施例において、前記フィルター物質は、複数の単位体で構成され、前記単位体の親水性基の分子量は、疎水性基の分子量より大きいかまたは同じであってもよい。
【0012】
いくつかの実施例において、前記フィルター物質は、バルク(bulk)が1.0cm/g以上のセルロース物質を含むことができる。
【0013】
いくつかの実施例において、前記フィルター物質は、バルク(bulk)が2.0cm/g以上のセルロース物質を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施例において、前記フィルター物質は、紙を含むことができる。
【0015】
いくつかの実施例において、前記フィルタープラグの全体面積と前記フィルター物質の面積の比は、2:1~20:1でありうる。
【0016】
いくつかの実施例において、前記フィルタープラグの全体面積と前記セルロース物質の面積の比が10:1であるとき、前記液状物質の添加量は、2.0mg/mm~8.0mg/mmでありうる。
【0017】
いくつかの実施例において、前記液状物質は、疎水性でありうる。
【0018】
いくつかの実施例において、前記液状物質は、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCTG)と加香物質を含むことができる。
【0019】
いくつかの実施例において、前記液状物質は、加香物質を含み、加香物質は、20℃で結晶性固体で存在する物質でありうる。
【0020】
いくつかの実施例において、前記液状物質は、加香物質を含む香液であり、前記香液の加香物質の含量は、50重量%以下でありうる。
【0021】
いくつかの実施例において、前記液状物質は、加香物質としてメントールを含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
上述した本開示の多様な実施例によれば、親水性基の分子量が疎水性基の分子量より大きいかまたは同じ物質が、フィルター物質として利用され得る。このような場合、多量の液状物質(e.g.疎水性香液)が添加されても、膨潤(swelling)程度が低くてフィルターの物性変化が最小化され得る。
【0023】
また、バルク(bulk)が基準値以上のセルロース物質がフィルターに適用され得る。バルクが高いセルロース物質は、発達した空隙構造を有するので、フィルターの香液収容量を大きく増大させることができる。ひいては、このようなフィルターが喫煙物品に適用されることによって、喫煙物品の香り発現強度が大きく増進され得る。それだけでなく、バルクが高いセルロース物質は、複雑な空隙構造を通じて香液(加香物質)の急激な揮散を抑制することによって、喫煙物品の香り持続性も共に向上させることができる。
【0024】
また、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCTG)を香液の溶媒として利用することによって、疎水性の香液(加香物質)の揮散がさらに良好に抑制され得る。これは、喫煙序盤に大部分の香りが発現するのを防止することによって、喫煙物品の香り持続性をさらに向上させることができる。
【0025】
また、加香物質と溶媒を適正量の割合で構成することによって、香液の添加によってフィルターの物性が変化することがさらに最小化され得る。例えば、加香物質が過飽和状態で沈殿および結晶化されてフィルターの吸引抵抗を増加させる問題が防止され得る。
【0026】
本開示の技術的思想による効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていないさらに他の効果は、下記の記載から通常の技術者に明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示のいくつかの実施例による喫煙物品用フィルターを概略的に示す例示的な図である。
図2】本開示の多様な実施例で参照され得るセルロース物質の断面図である。
図3】フィルター物質の一種であるセルロースアセテート繊維の断面図である。
図4】本開示の他のいくつかの実施例による喫煙物品用フィルターを概略的に示す例示的な図である。
図5】本開示のいくつかの実施例によるフィルターを含む喫煙物品を概略的に示す例示的な図である。
図6】香り発現強度および香り持続性に関する官能評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照して本開示の好ましい実施例を詳細に説明する。本開示の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述している実施例を参照すると明確になるだろう。しかしながら、本開示の技術的思想は、以下の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現され得、単に本実施例は、本開示の技術的しそうを完全にし、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本開示は、請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0029】
各図面の構成要素に参照符号を付加するに際して、同じ構成要素に対しては、たとえ他の図面上に表示されても、できるだけ同じ符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本開示を説明するに際して、関連した公知構成または機能に対する具体的な説明が本開示の要旨を不明にすることができると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0030】
他の定義がないと、本明細書において使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解され得る意味で使用され得る。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解釈されない。本明細書で使用された用語は、実施例を説明するためのものであって、本開示を制限しようとするものではない。本明細書で、単数型は、文言において特に言及しない限り、複数型も含む。
【0031】
また、本開示の構成要素を説明するに際して、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語により当該構成要素の本質や手順または順序などが限定されない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載された場合、その構成要素は、当該他の構成要素に直接的に連結されるか、または接続され得るが、各構成要素の間にさらに他の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」され得ると理解されなければならない。
【0032】
本開示で使用される「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作および/または素子は、1つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除しない。
【0033】
まず、本明細書で使用されるいくつかの用語について明確にすることとする。
【0034】
本明細書で、「喫煙物品」(smoking article)とは、タバコ、タバコ派生物、膨化タバコ(expanded tobacco)、再生タバコ(reconstituted tobacco)またはタバコ代用物に基づくかに関係なく、喫煙可能な任意の製品または喫煙体験を提供できる任意の製品を意味し得る。例えば、喫煙物品は、巻きタバコ、葉巻きたばこ(cigar)および細い葉巻きたばこ(cigarillo)などのような喫煙可能製品、喫煙代替製品などを含むことができる。
【0035】
本明細書で、「喫煙物質」(smoking material)とは、煙(smoke)および/またはエアロゾル(aerosol)を発生させたり、喫煙に利用される物質を意味し得る。例えば、喫煙物質は、タバコ物質を含むことができる。タバコ物質は、たとえば、タバコの葉切れ、タバコ幹またはこれらから加工された物質などを含むことができる。さらに具体的な例として、タバコ物質は、粉砕されたタバコの葉、粉砕された再構成タバコ、膨化刻み、膨化主脈および板状葉などを含むことができる。
【0036】
本明細書で、「上流」(upstream)または「上流方向」は、喫煙者の口部から遠ざかる方向を意味し、「下流」(downstream)または「下流方向」は、喫煙者の口部から近づく方向を意味し得る。上流および下流という用語は、喫煙物品を構成する要素の相対的位置を説明するために利用され得る。例えば、図5に示された喫煙物品2において、フィルター部21は、喫煙物質部22の下流または下流方向に位置し、喫煙物質部22は、フィルター部21の上流または上流方向に位置する。
【0037】
以下では、本開示の多様な実施例について添付の図面により詳細に説明する。
【0038】
図1は、本開示のいくつかの実施例による喫煙物品用フィルター1を示す例示的な図である。
【0039】
図1に示されたように、フィルター1は、フィルタープラグ10およびこれを包んでいるフィルターラッパー11を含むことができる。ただし、図1には、本開示の実施例と関連した構成要素のみが示されている。したがって、本開示の属する技術分野における通常の技術者なら、図1に示された構成要素の他に他の汎用的な構成要素がさらに含まれ得ることが分かる。以下、フィルター1の各構成要素について説明することとする。
【0040】
フィルタープラグ10は、フィルター物質と液状物質を含むことができる。フィルター物質は、煙および/またはエアロゾルに対する濾過機能を具備する一つ以上の物質を含むことができる。例えば、フィルター物質は、紙のようなセルロース物質を含むことができる。液状物質は、例えば加香物質を溶媒に溶かした香液を含むことができる。このような場合、フィルター1は、喫煙物品(e.g.図5の2)の香り発現性を増進させるための加香フィルターとして利用され得る。他の例として、液状物質は、グリセリンおよび/またはプロピレングリコールからなる保湿物質を含むことができる。このような場合、フィルター1は、喫煙物品(e.g.図5の2)の霧化量などを増進させるための保湿フィルターとして利用され得る。その他にも、液状物質は、フィルター1の用途に応じて多様な種類の物質で構成され得る。したがって、本開示の範囲は、前記例示により限定されない。ただし、以下では、理解の便宜を提供するために、液状物質が香液であることを仮定して説明を継続することとする。液状物質は、噴射などの方式でフィルター物質に添加され得る。
【0041】
フィルタープラグ10は、円筒形の形状を有することができるが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。必要に応じて、フィルタープラグ10は、他の形状を有するように製造されることもできる。
【0042】
いくつかの実施例において、フィルター物質は、基準値以上のバルク(bulk)を有するセルロース物質を含むことができる。セルロース物質は、例えば紙(paper)でありうるが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。バルクは、厚さを坪量で割った値を意味するが、バルクが高いセルロース物質は、内部に多くの空隙を含むので、多量の香液(すなわち、液状物質)を収容することができる。それだけでなく、バルクが高いセルロース物質は、複雑な空隙構造を通じて揮発性香液(または加香物質)の急激な揮散を抑制できるので、フィルター1の香り持続性を向上させることができる。ひいては、フィルター1に添加された加香物質が喫煙前に(すなわち、保管中に)揮発する問題も防止され得る。さらに理解の便宜を提供するために、図2および図3を参照して付加説明する。
【0043】
図2および図3は、それぞれ、SEM(Scanning Electron Microscope)で撮影した紙とセルロースアセテート繊維の断面写真を示している。図2に示されたように、基準値以上のバルクを有する紙は、Z軸方向(厚さ方向)に多数の空隙を含むことになる。これに対し、セルロースアセテート繊維(図3参照)は、繊維自体に空隙が発達しなくて、香液の収容量が少ないだけでなく、香液の揮散もよく抑制しない。
【0044】
セルロース物質のバルク数値は、セルロース物質の目標空隙度(または目標香液収容量)に基づいて変更され得るが、略1cm/g以上になることが好ましい。より好ましくは、セルロース物質のバルクは、略2cm/g、2.5cm/gまたは3.0 cm/g以上でありうる。このような数値範囲で、セルロース物質の香液収容量が大きく増大することができる。香液収容量に関しては、実験例1をさらに参照することとする。
【0045】
いくつかの実施例において、フィルター物質は、親水性基の分子量が疎水性基の分子量より大きいかまたは同じ物質でありうる。例えば、フィルター物質が複数の単位体で構成される場合、前記フィルター物質は、単位体の親水性基の分子量が疎水性基の分子量以上の物質または全体単位体の親水性基の分子量(e.g.個別単位体の親水性基の分子量の合計)が疎水性基の分子量以上の物質でありうる。このような物質の例としては、親水性のセルロース物質が挙げられる。しかし、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。
【0046】
親水性のセルロース物質は、疎水性の香液に対して効果的でありうるが、これは、セルロースアセテート繊維とは異なって、親水性のセルロース物質は、疎水性香液によりよく膨潤(swelling)しないためである。より具体的に、セルロースアセテート繊維(トウ)は、セルロースをアセチル基で置換した物質であって、置換度が約2.45の非親水性素材に該当する。このような素材に類似した性質(e.g.疎水性)を有する香液が添加される場合、素材が膨潤してフィルタープラグ10の物性に否定的な影響(e.g.吸引抵抗の増加)を及ぼすことができる。しかし、親水性のセルロース物質は、多量の疎水性香液が添加されても、よく膨潤しないため、香液によってフィルタープラグ10の物性が変化するのを防止することができる。例えば、香液の添加前後でフィルタープラグ10の円周、吸引抵抗などの物性の差異が非常に少ない。フィルタープラグ10の物性変化に関しては、実験例2および3をさらに参照することとする。
【0047】
親水性セルロース物質の例としては、紙が挙げられる。しかし、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。いくつかの実施例において、フィルタープラグ10の少なくとも一部は、シート(sheet)状の紙をたたんだり、ぐるぐる巻いてまとめることによって形成され得るが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。
【0048】
一方、フィルタープラグ10の全体面積とセルロース物質の面積間の比率は、略2:1~20:1であることが好ましい。より好ましくは、前記比率は、略2:1~10:1、2:1~9:1、2:1~8:1または3:1~7:1でありうる。または、前記比率は、略2:1~7:1、3:1~6:1、2:1~5:1または3:1~5:1でありうる。このような面積比は、フィルタープラグ10内のセルロース物質の含量と関連しているが、セルロース物質の含量が過度に少ない場合、香液の収容量が減少することができる。反対に、含量が過度に多い場合には、他の物質の含量が減少して、フィルター1の性能が減少することができる。したがって、フィルタープラグ10の全体面積とセルロース物質の面積比が上述した数値の範囲に属することが好ましい。
【0049】
フィルタープラグ10に添加される香液は、溶媒と加香物質で構成され得る。溶媒の例としては、プロピレングリコール(propylene glycol;以下「PG」と略称する)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(medium chain fatty acid triglyceride;以下「MCTG」と略称する)が挙げられる。しかし、本開示の範囲がこのような例示に限定されるものではない。PGは、極性(または親水性)溶媒であるから、加香物質が極性(または親水性)である場合に効果的であり得、MCTGは、非極性(または疎水性)溶媒であるから、加香物質が非極性(または疎水性)の場合に効果的でありうる。非極性のMCTGは、非極性の加香物質をよく溶解させることができ、揮発性を有する加香物質の揮散もよく抑制することができるためである。例えば、加香物質がメントールである場合、MCTGが溶媒として効果的でありうる。このような場合、MCTGがメントールの揮散を抑制して喫煙中にメントール香の発現強度が急激に落ちるのを防止することができる。すなわち、喫煙序盤にメントール香が過発現し、喫煙中盤以降にメントール香がよく発現しない問題が一層緩和され得る。
【0050】
加香物質は、メントールなどのように香りが発現することができる任意の物質を全部含むことができる。したがって、本開示の範囲は、特定の種類の加香物質に限定されない。
【0051】
いくつかの実施例において、加香物質は、常温(e.g.20±5)で結晶性固体で存在する物質(e.g.L-メントール)でありうる。このような場合、溶媒と加香物質間の含量比が重要であるが、これは、溶媒の含量が少ない場合、加香物質がフィルター物質内に固体状で沈殿してフィルタープラグ10の吸引抵抗と硬度などが急激に増加することができるためである。本実施例において、加香物質の好ましい含量は、略60重量%以下でありうる。より好ましくは、前記含量は、略50重量%または40重量%以下でありうる。このような数値範囲内で、フィルタープラグ10の物性変化が最小化されることが示されたが、これと関連しては、下記の実験例2および3を参照することとする。
【0052】
一方、香液の添加量は、フィルタープラグ10内セルロース物質の含量(または面積)によって変わることができるが、略1.0mg/mm~9.0mg/mmまたは2.0mg/mm~8.0mg/mmであることが好ましい。より好ましくは、香液の添加量は、略2.0mg/mm~7.0mg/mm、3.0mg/mm~7.0mg/mm、3.0mg/mm~6.0mg/mmまたは2.0mg/mm~6.0mg/mmでありうる。このような数値範囲内で、香り発現性が増加し、ラッパーがぬれる問題が最小化され、喫煙時に過度に強い香りが発現して喫煙者がかえって拒否感を感じる問題が防止され得る。
【0053】
一方、いくつかの実施例において、フィルタープラグ10は、当該技術分野において広く知られた一つ以上の他のフィルター物質をさらに含むことができる。例えば、フィルタープラグ10は、炭素を含む吸着剤、活性炭などを含むことができる。
【0054】
次に、フィルターラッパー11は、フィルタープラグ10を包んでいるラッパーを意味し得る。フィルターラッパー11は、適切な坪量を有する紙で製造され得るが、フィルターラッパー11の坪量、素材などは変わることもできる。
【0055】
いくつかの実施例において、フィルターラッパー11には、耐油性を有する耐油フィルム(不図示)がラミされ得る。ここで、耐油フィルムは、例えばセルロースフィルムであってもよいが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。オイル特性を有する香液(すなわち、疎水性香液)により接着力が落ちるのを防止するために、耐油フィルムは、水溶性接着剤により付着することができる。本実施例によれば、オイル特性(e.g.疎水性)を有する香液が過量添加されても、フィルターラッパー11またはこれを包んでいるチップペーパー(不図示)が汚染されるのが防止され得る。
【0056】
一方、以上で説明したフィルター1またはフィルタープラグ10の構造、直径、長さなどの物理的仕様は、適用される喫煙物品を考慮して多様に設計され得る。例えば、図4に示されたように、フィルター1は、第1フィルター部12と第2フィルター部13を含む二重フィルター構造または多重フィルター構造を有することができ、複数のフィルター部の間に形成されるキャビティ(cavity)をさらに含むこともできる。また、喫煙物品の香り発現性をさらに増大させるために、キャビティには、香液が含有されたカプセルが配置されることもできる。フィルター1が多重フィルター構造を有する場合、複数のフィルター部のうち一つ以上のフィルター部は、セルロースアセテート繊維に基づいて製造され得る。かくして、フィルター1の香り発現性が増進されると同時に、高いフィルター性能も確保され得る。
【0057】
以上では、図1図4を参照して本開示のいくつかの実施例による喫煙物品用フィルター1について説明した。上述したところによれば、バルクが基準値以上のセルロース物質を適用することによって、フィルタープラグ10の香液収容量(すなわち、液状収容量)が大きく増大することができる。また、バルクが高いセルロース物質は、複雑な空隙構造を通じて香液(加香物質)の急激な揮散を抑制できるので、フィルター1の香り持続性も共に向上することができる。
【0058】
上述したフィルター1は、喫煙物質ロッド(rod)と結合されて、喫煙物品を構成することができる。このような喫煙物品は、燃焼により煙および/またはエアロゾルを発生させる物品であってもよく、電子デバイス(device)に挿入されて電気的加熱により煙および/またはエアロゾルを発生させる物品であってもよい。以下では、フィルター1を含む喫煙物品の例について説明することとする。
【0059】
図5は、本開示のいくつかの実施例による喫煙物品2を概略的に示す例示的な図である。
【0060】
図5に示されたように、喫煙物品2は、フィルター部21と喫煙物質部22を含むことができる。ただし、図5には、本開示の実施例と関連した構成要素のみが示されている。したがって、本開示の属する技術分野における通常の技術者なら、図5に示された構成要素の他に他の汎用的な構成要素がさらに含まれ得ることが分かる。
【0061】
フィルター部21は、喫煙物質部22の下流に配置されて、喫煙物質部22で発生した煙および/またはエアロゾルのフィルターとして作用することができる。フィルター部21を通過した煙および/またはエアロゾルは、喫煙者の口部を通じて吸入され得る。フィルター部21は、前述したフィルター1に対応することができる。
【0062】
フィルター部21は、フィルタープラグ211と、これを包んでいるフィルターラッパー212とを含むことができる。また、フィルター部21は、喫煙物質部22の両端部のうち少なくとも一つの端部と連結され得る。例えば、フィルター部21と喫煙物質部22は、円柱状を有し、長軸方向に整列され、フィルター部21の上流の端部に喫煙物質部22が位置することができる。フィルター部21と喫煙物質部22は、ティッピングラッパー(tipping wrapper)23により連結され得るが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。
【0063】
図5は、フィルター部21が単一フィルターからなることを例示しているが、本開示の範囲がこれに限定されるものではなく、フィルター部21は、多重フィルターからなることもでき、多重フィルターの間に形成されたキャビティを含むこともできる。
【0064】
いくつかの実施例において、喫煙物品2の香味または風味をさらに増進させるために、フィルター部21の内部には、香液が含有されたカプセル(不図示)が含まれ得る。カプセルは、例えばキャビティ内に位置することができる。カプセルは、香液を皮膜で包んだ構造であり得、例えば、球形または円筒形の形状を有することができる。カプセルの皮膜を形成する材料は、天然素材、デンプンおよび/またはゲル化剤でありうる。例えば、天然素材の皮膜の場合、寒天、ペクチン、ソジウムアルギネートおよびグリセリンなどで組成され得る。ゲル化剤としては、ジェランガムやゼラチンが使用され得る。また、カプセルの皮膜を形成する材料としてゲル化助剤がさらに利用されることもできる。ゲル化助剤としては、例えば塩化カルシウムが使用され得る。また、カプセルの皮膜を形成する材料として可塑剤がさらに利用されることもできる。ここで、可塑剤としては、グリセリンおよび/またはソルビトールが利用され得る。また、カプセルの皮膜を形成する材料として着色料がさらに利用されることもできる。
【0065】
いくつかの実施例において、フィルターラッパー212の内側面には、耐油フィルムまたはアルミホイルが付着していてもよい。
【0066】
次に、喫煙物質部22は、喫煙物質221と、これを包んでいるラッパー222とを含むことができる。喫煙物質221は、加熱されることによって、煙および/またはエアロゾルを発生させることができる。喫煙物質部22は、細長型の円柱形状を有する喫煙物質ロッドで具現され得るが、本開示の範囲がこれに限定されるものではない。
【0067】
いくつかの実施例において、喫煙物質221は、原料葉タバコ、板状葉または葉タバコと板状葉が配合された混合物を含むことができる。前記混合物は、シート形態または刻み形態で喫煙物質部22に充填され得る。
【0068】
また、いくつかの実施例において、喫煙物質221は、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびオレイルアルコールのうち少なくとも一つのエアロゾル発生物質を含むことができる。
【0069】
また、いくつかの実施例において、喫煙物質221は、風味剤、湿潤剤および/またはアセテート化合物のような他の添加物質を含有することができる。例えば、風味剤は、甘草、ショ糖、果糖シロップ、イソ甘味剤(isosweet)、ココア、ラベンダー、シナモン、カルダモム、セロリ、コロハ、カスカリラ、ビャクダン、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、バラオイル、バニラ、レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル、ケイヒ、キャラウェイ、コニャック、ジャスミン、カモミール、メントール、ケイヒ、イランイラン、サルビア、スペアミント、ショウガ、コエンドロまたはコーヒー、クローブ物質物(またはクローブ粉末、クローブ抽出物)などを含むことができる。また、湿潤剤は、グリセリンまたはプロピレングリコールなどを含むことができる。
【0070】
また、いくつかの実施例において、喫煙物質221は、原料葉タバコおよび板状葉を粉砕した後、溶媒および多様な添加物を混合してスラリー形態で製造し、乾燥させて、シートを形成した後、このようなシートを加工して、棒などのような切片形態で形成された再構成タバコ物質を含むことができる。例えば、喫煙物質221は、複数個の再構成タバコ物質ストランドを含み、このようなストランド1個は、長さが略10mm~14mm (例えば、12mm)、幅が略0.8mm~1.2mm(例えば、1mm)および厚さが略0.08mm~0.12mm(例えば、0.1mm)でありうるが、これに制限されない。
【0071】
いくつかの実施例において、ラッパー222には、グリセリンと、触媒作用などにより喫煙物質の完全燃焼を促進させるためのK-citrateおよび/またはNA-citrateなどの助燃剤が添加され得、ひいては、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化マグネシウムなどの充填剤(filler)が含まれることもできる。
【0072】
また、いくつかの実施例において、ラッパー222は、二重ラッピング構造を有することができる。具体的に、ラッパー222は、喫煙物質部22に接し、喫煙物質部22を包むインナーラッパー(inner wrapper)と、インナーラッパーと接し、インナーラッパーの外部を包むアウターラッパー(outer wrapper)とを含むことができる。
【0073】
また、いくつかの実施例において、ラッパー222は、一つ以上の低発火性(Low Ignition Propensity,LIP)バンド(不図示)が形成された低発火性のタバコ用巻紙でありうる。LIPバンドは、ラッパー222の気孔度を低減することができ、これにより、喫煙物質221の燃焼がLIPバンドに到達すると、喫煙物質部22に流入する酸素量が減少して、燃焼中であった喫煙物品2が消火され得る。ここで、LIPバンドは、ラッパー222の内側および/または外側面に形成されるコーティング層でありうる。
【0074】
上記で説明したように、フィルターラッパー212により包装されたフィルター部21およびラッパー222により包装された喫煙物質部22は、ティッピングラッパー23により結合され得る。すなわち、ティッピングラッパー23は、ラッパー222の少なくとも一部分(例えば、下流の一部の領域)およびフィルターラッパー212の外郭に囲まれることができる。一方、ティッピングラッパー23は、不燃性物質を含み、喫煙物質部22の燃焼によってフィルター部21も燃焼する現象を防止することもできる。
【0075】
以上では、図5を参照して本開示のいくつかの実施例による喫煙物品2について説明した。喫煙物品2の香り発現強度と香り持続性は、香液が添加されたフィルター1が適用されることによって、大きく向上できるが、これと関連しては、実験例4を参照することとする。上記で説明したように、保湿物質が添加されたフィルター1が適用される場合には、喫煙物品2の霧化量が増大することができる。
【0076】
以下では、実施例と比較例を通じて前述したフィルター1の構成および効果についてより詳細に説明することとする。しかし、以下の実施例は、前述したフィルター1の一部の例示に過ぎないので、本開示の範囲がこのような実施例に限定されるものではない。
【0077】
実施例1
下記の表1に記載された条件によって円周23.8mmと長さ96mmのフィルターロッドを製作した。フィルターロッドのラッパーとしては、坪量が21vのラッパーを利用し、プラグ内比率(%)は、フィルタープラグの全体面積に対するフィルター物質の面積比率であって、フィルター物質の含量と関係がある。また、フィルター物質としてバルクが2.40cm/gの紙を利用した。
【0078】
【表1】
【0079】
比較例1
下記の表2に記載された条件によって円周23.8mmと長さ96mmのフィルターロッドを製造した。実施例1と同一に、フィルターロッドのラッパーとして、坪量が21g/mのラッパーを利用した。
【0080】
【表2】
【0081】
実験例1:香液の最大収容量(添加量)の比較
実施例1および比較例1によるフィルターロッドに対して香液の最大収容量(e.g.単位mm当たり最大添加量)を測定する実験を進めた。香液の最大収容量は、フィルターロッドのラッパーがぬれたか否かを基準として測定され、ラッパーがぬれたか否かは、肉眼観察を通じて判別した。本実験例に対する結果は、下記の表3に記載されている。
【0082】
【表3】
【0083】
前記表3に示されたように、同じ含量のフィルター物質を適用しても、実施例1の香液収容量が、比較例1より略6倍ほど高いことを確認することができる。これは、空隙が発達した高バルクのセルロース物質がセルロースアセテート繊維より非常に多い香液を収容できることを意味する。また、香り発現性の観点から、高バルクのセルロース物質が適用された喫煙物品が、従来の喫煙物品(すなわち、セルロースアセテートトウが適用された喫煙物品)より顕著に優れていることを意味する。
【0084】
実施例2~8
下記の表4に記載された条件によってフィルターロッドを製造した。他の条件(e.g.バルク、フィルターロッドの円周、長さなど)は、実施例1と同一にした。また、実施例2~4の場合、香液の溶媒としてPGを使用し、実施例5~8の場合、香液の溶媒としてMCTGを使用した。
【0085】
【表4】
【0086】
比較例2
香液を添加せず、実施例1と同じ条件(香液条件は除外)を有するフィルターロッドを製造した。
【0087】
実験例2:加香物質の含量によるフィルターの物性変化の比較
上記で説明したように、溶媒に対して加香物質の含量が過度に多いと、加香物質がさらに固体状で沈殿して、フィルターの物性を変化させることができる。したがって、加香物質の含量を適切に調節する必要があり、これを調べてみるために、実施例2~8と比較例2によるフィルターロッドに対する物性(e.g.円周、吸引抵抗、硬度)の変化を測定した。
【0088】
参考として、比較例2は、測定誤差を考慮するために、実験対象に追加したものであり、セルロースアセテートトウ基盤のフィルターを比較例に追加しないことは、セルロースアセテートトウには、同じ量の香液を添加できなくて、比較例に入るのに適していないためである。
【0089】
実験例2-1:円周に対する物性変化の比較
フィルターロッドの円周長さに対する変化程度を測定する実験を進めた。実験の正確性のために、香液がフィルターの物性にこれ以上影響を及ぼさない時点(約14日が経過した時点)まで待機し、当該時点と香液を添加する前の時点との物性差異を測定した。これに対する実験結果は、表5および表6に記載されている。
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【0092】
表5および表6を参考すると、加香物質の含量が40重量%である場合(実施例5~8)には、香液添加量が増加しても、フィルターロッドの円周がほとんど変化しないことを確認することができる。たとえば、加香物質の含量が40重量%であり、香液の添加量が6mg/mmである場合(実施例8)にも、フィルターロッドの円周は、香液の添加前後で差異がないことが示された。これは、親水性のセルロース物質をフィルター素材として利用する場合、香液による膨潤現象がほとんど起こらないことを示すと判断される。
【0093】
その一方で、加香物質の含量が70重量%である場合(実施例2~4)には、香液添加量が増加するにつれて、フィルターロッドの円周変化も大きくなることが示された。ただし、これは、膨潤現象によるものというよりは、加香物質がフィルター物質の間ごとに固体状で沈殿して現れる現象であると判断される。
【0094】
実験例2-2:吸引抵抗に対する物性変化の比較
フィルターロッドの吸引抵抗に対する変化程度を測定する実験を進めた。実験方法は、前記実験例と同じ方式で行われ、実験結果は、表7および表8に記載されている。
【0095】
【表7】
【0096】
【表8】
【0097】
表7および表8を参考にすると、加香物質の含量が40重量%である場合(実施例5~8)には、香液添加量が増加しても、フィルターロッドの吸引抵抗がほとんど変化しないことを確認することができる。たとえば、加香物質の含量が40重量%であり、香液の添加量が6mg/mmである場合(実施例8)にも、フィルターロッドの吸引抵抗は、香液の添加前後で差異が殆どないことが示された。これは、セルロース物質の香液収容量に優れ、溶媒と加香物質の含量比が適切で、加香物質が常温でも液状(すなわち、溶解した状態)を維持しているためであると判断される。
【0098】
これに対し、加香物質の含量が70重量%である場合(実施例2~4)には、香液添加量が増加するにつれてフィルターロッドの吸引抵抗も次第に増加することが示された。これは、高含量の加香物質がフィルター物質の間ごとに固体状で沈殿して現れる現象と判断される。
【0099】
実験例2-3:硬度に対する物性変化の比較
フィルターロッドの硬度に対する変化程度を測定する実験を進めた。全般的な実験方法は、前記実験例と同じ方式で行われ、フィルターロッドの硬度は、下記の数式1に基づいて測定された。
【0100】
下記の数式1は、フィルターロッドの硬度を百分率(%)で求める数式であり、下記の数式1で、Dは、荷重Fが印加される前のロッド(すなわち、押圧されない状態のロッド)の厚さ(e.g.直径)を意味し、Dは、荷重が印加された後のロッド(すなわち、押圧された状態のロッド)の厚さを意味する。下記数式1によれば、ロッドが丈夫であるほど(すなわち、押圧程度が小さいほど)、硬度が100%にさらに近づくことになる。
【0101】
[数式1]
硬度(%)=D/D*100
【0102】
フィルターロッドの硬度は、約20秒間約300gの重りで荷重を与え、フィルターロッドの前後の厚さを測定することによって算出された。参考として、このような測定のために公知のデンシメーターデバイスが利用され得るが、硬度測定は、他の方式で行われても関係ない。本実験例による実験結果は、表9および表10に記載されている。
【0103】
【表9】
【0104】
【表10】
【0105】
表9および表10を参考にすると、加香物質の含量が40重量%である場合(実施例5~8)には、香液添加量が増加しても、フィルターロッドの硬度がほとんど変化しないことを確認することができる。これは、溶媒と加香物質の含量比が適切で、加香物質が常温でも液状(すなわち、溶解した状態)を維持しているためであると判断される。
【0106】
これに対し、加香物質の含量が70重量%である場合(実施例2~4)には、香液添加量が増加するにつれてフィルターロッドの硬度も次第に増加することが示された。これは、高含量の加香物質が固体状でフィルター物質の間ごとに沈殿して現れる現象と判断される。
【0107】
実験例2による実験結果を整理してみると、香液を構成する加香物質(e.g.常温で結晶性固体で存在する加香物質)と溶媒の含量比がフィルターの物性に影響を及ぼすことが分かる。また、加香物質の含量が40重量%である場合には、フィルターの物性変化がほとんど現れず、加香物質の含量が70重量%である場合には、香液添加量が増加するにつれてフィルターの物性変化が次第に大きく現れることを確認することができる。これにより、香液を構成するとき、加香物質の含量が70重量%以下であることが好ましく、フィルターの物性変化を最小化するためには、加香物質の含量が60重量%または50重量%以下になることが好ましいことが分かる。
【0108】
実施例9~12
下記の表11に記載された条件によってフィルターロッドを製造した。他の条件(e.g.バルク、フィルターロッドの円周、長さなど)は、実施例1と同一にした。表11で、紙幅は、紙の縦長さを意味する。たとえば、実施例9によるフィルターロッドは、96mm(=フィルターロッドの横長さ)*220mmの紙をフィルター物質として利用して製造された。
【0109】
【表11】
【0110】
実験例3:フィルター物質の紙幅(paper width)による物性変化の比較実験
香液添加量が6mg/mmであり、加香物質の含量が40重量%であるフィルターロッドに対するディープ実験を進めた。具体的に、同じ香液条件でフィルター物質の紙幅(すなわち、含量)が変わっても、フィルターの主な物性(円周、吸引抵抗)がそのまま維持されるかに関する実験を進め、実験方法は、上記実験例と同じ方式で行われた。
【0111】
本実験例による実験結果は、下記の表12および表13に記載されている。下記の表12には、円周に対する測定結果が記載されており、表13には、吸引抵抗に対する測定結果が記載されている。
【0112】
【表12】
【0113】
【表13】
【0114】
表12および表13を参照すると、加香物質の含量が40重量%である場合には、フィルター物質の紙幅増加(すなわち、フィルター物質の含量増加)が、フィルターロッドの物性(円周、吸引抵抗)の変化にほとんど影響を及ぼさないことを確認することができる。ただし、紙幅が増加すると、フィルターロッドのフィルター性能と香液収容量が増加すると同時に、基本吸引抵抗も増加するので、このような要素を総合的に考慮して適切に紙幅を調節する必要がある。
【0115】
実験例4:香り発現強度および香り持続性に関する官能評価
喫煙期間が5年以上である30人のパネルを対象に香り発現強度および持続性に関する官能評価を行った。具体的に、比較例1と実施例5~8によるフィルターロッドを利用して喫煙物品を製造し、製造された喫煙物品に対してパフ回次による香り強度を測定した。下記のように5個の等級を基準として官能評価を行い、評価誤差を減らすために、評価結果から最小および最大等級を除いて、パネルの平均等級を当該喫煙物品の香り強度として算定した。
5:強い
4:若干強い
3:普通
2:若干弱い
1:弱い
【0116】
本実験例による結果は、図6に示されているが、図6のグラフで、x軸は、パフ回次を意味し、y軸は、香り強度を意味する。
【0117】
図6を参照すると、比較例1による喫煙物品の場合、喫煙後半に行くほど香り発現強度が急激に落ちることを確認できるが、これは、加香物質の揮散を抑制しないセルロースアセテートトウの構造的特性のためであると判断される。
【0118】
その一方で、実施例5~8による喫煙物品の場合には、香り発現強度が急激に落ちることなく、一定水準以上の香りが持続的に発現することを確認することができる。これは、高バルクのセルロース物質とMCTGが加香物質の揮散を抑制する作用をするためであると判断される。
【0119】
特に、実施例7および8による喫煙物品では、強度等級3以上の香りが持続的に発現することが示されたが、これは、香液添加量が他の喫煙物品に比べて多いためであると判断される。
【0120】
以上の結果を総合すると、セルロース物質に適切な含量比を有する香液を添加すると、フィルターの物性に影響を及ぼすことなく、セルロースアセテートトウ基盤の喫煙物品に比べて、香り発現性および香り持続性に顕著に優れた喫煙物品が製造され得ることが分かる。
【0121】
以上では、多様な実施例と比較例を通じて本開示の実施例によるフィルター1の構成および効果について詳細に説明した。
【0122】
以上、添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者は、その技術的思想や必須の特徴を変更することなく、本開示が他の具体的な形態で実施され得ることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施形態は、すべての面において例示的なものであり、限定的なものでないことを理解しなければならない。本開示の保護範囲は、下記の請求範囲により解釈されるべきであり、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は、本開示により定義される技術的思想の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6