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特許7517643植物の灌水量の低減剤、及び植物の灌水量を低減する方法
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  • 特許-植物の灌水量の低減剤、及び植物の灌水量を低減する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】植物の灌水量の低減剤、及び植物の灌水量を低減する方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/02 20060101AFI20240709BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20240709BHJP
   A01N 3/02 20060101ALI20240709BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20240709BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20240709BHJP
   A01G 5/06 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A01N37/02
A01P21/00
A01N3/02
A01N25/02
A01G7/06 A
A01G5/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022071066
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2019547014の分割
【原出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2022097560
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2017195288
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】518456306
【氏名又は名称】アクプランタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 鍾明
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09258954(US,B2)
【文献】特開昭61-203195(JP,A)
【文献】特開2016-054668(JP,A)
【文献】特開2005-281184(JP,A)
【文献】特開平09-309804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0232181(US,A1)
【文献】特開平06-239701(JP,A)
【文献】特開平07-033603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N、A01P、A01G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
総体積に対して0.01~0.5体積%の範囲の酢酸若しくはその塩を有効成分として、及び少なくとも水を含む1種以上の溶媒を含有し、且つ4~8の範囲のpHを有する、キク科植物、ナス科植物、アブラナ科植物、イネ科植物、マメ科植物、ヒルガオ科植物、ヤナギ科植物、トウダイグサ科植物、ヒルガオ科植物、ミカン科植物、バラ科植物、ラン科植物、リンドウ科植物、サクラソウ科植物、スミレ科植物、ユリ科植物、ヒユ科植物、ブドウ科植物、ヒノキ科植物、モクセイ科植物、及びマツ科植物からなる群より選択される植物の灌水量の低減剤であって、灌水する通常の生育条件で生育した前記植物に施用することにより、非施用の対照の植物の集団と比較して90%以下まで該植物の吸水量を低減させる、前記植物の灌水量の低減剤。
【請求項2】
植物が、土壌中で生育するものである、請求項1に記載の植物の灌水量の低減剤。
【請求項3】
総体積に対して0.01~0.5体積%の範囲の酢酸若しくはその塩と、少なくとも水を含む1種以上の溶媒と、1種以上の農業上許容される成分とを含有し、且つ4~8の範囲のpHを有する、キク科植物、ナス科植物、アブラナ科植物、イネ科植物、マメ科植物、ヒルガオ科植物、ヤナギ科植物、トウダイグサ科植物、ヒルガオ科植物、ミカン科植物、バラ科植物、ラン科植物、リンドウ科植物、サクラソウ科植物、スミレ科植物、ユリ科植物、ヒユ科植物、ブドウ科植物、ヒノキ科植物、モクセイ科植物、及びマツ科植物からなる群より選択される植物の灌水量を低減するための農業化学組成物であって、灌水する通常の生育条件で生育した前記植物に施用することにより、非施用の対照の植物の集団と比較して90%以下まで該植物の吸水量を低減させる、前記農業化学組成物。
【請求項4】
植物が、土壌中で生育するものである、請求項3に記載の農業化学組成物。
【請求項5】
農業上有効な量の請求項1又は2に記載の植物の灌水量の低減剤又は請求項3又は4に記載の農業化学組成物を、灌水する通常の生育条件下で生育したキク科植物、ナス科植物、アブラナ科植物、イネ科植物、マメ科植物、ヒルガオ科植物、ヤナギ科植物、トウダイグサ科植物、ヒルガオ科植物、ミカン科植物、バラ科植物、ラン科植物、リンドウ科植物、サクラソウ科植物、スミレ科植物、ユリ科植物、ヒユ科植物、ブドウ科植物、ヒノキ科植物、モクセイ科植物、及びマツ科植物からなる群より選択される植物、該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用することにより、非施用の対照の植物の集団と比較して90%以下まで該植物の吸水量を低減させることを含む、該植物の灌水量を低減する方法。
【請求項6】
植物が、土壌中で生育するものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
キク科植物、ナス科植物、アブラナ科植物、イネ科植物、マメ科植物、ヒルガオ科植物、ヤナギ科植物、トウダイグサ科植物、ヒルガオ科植物、ミカン科植物、バラ科植物、ラン科植物、リンドウ科植物、サクラソウ科植物、スミレ科植物、ユリ科植物、ヒユ科植物、ブドウ科植物、ヒノキ科植物、モクセイ科植物、及びマツ科植物からなる群より選択される植物の生育に関する1個以上の情報を取得すること、
取得した1個以上の情報に基づき、請求項1又は2に記載の植物の灌水量の低減剤又は請求項3又は4に記載の農業化学組成物を、灌水する通常の生育条件下で生育した該植物、該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用することにより、非施用の対照の植物の集団と比較して90%以下まで該植物の吸水量を低減させる条件を決定すること、
を含む、該植物の生育を管理する方法。
【請求項8】
植物が、土壌中で生育するものである、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸を有効成分として含有する植物の灌水量の低減剤、及び植物の灌水量を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水は、植物の成長及び生命維持において、栄養と並び必須の要素である。例えば、作物の栽培において、水の供給作業、すなわち灌水は、収穫物の収量及び品質に影響し得ることから、非常に重要な作業である。しかしながら、作物の栽培期間に亘って必要な水を供給することは、農業者にとって、時間及び労力の両面で大きな負担となっている。それ故、植物の灌水量を低減できれば、農業者の負担を削減し、結果として作物の生産コストを削減し得る。
【0003】
他方、近年の世界的な気候変動による水不足は、作物の品質低下及び収穫量減少等、農業に重大な影響を与えている。植物における過度の水不足は、植物にとって乾燥ストレスとなり得る。植物においては、様々な乾燥ストレス応答性遺伝子群が存在し、乾燥ストレスに対する抵抗性の獲得に関与していることが示唆されている。
【0004】
このような場合、植物自体の乾燥ストレス耐性を向上させることにより、該乾燥ストレスによる影響を回避できる可能性がある。植物自体の乾燥ストレス耐性を向上させる手段として、乾燥ストレス応答性遺伝子を改変した遺伝子組み換え植物の作出、及び乾燥ストレス耐性を向上させる化学的又は生物学的調節剤の施用を挙げることができる。
【0005】
例えば、特許文献1は、植物の乾燥ストレス耐性を向上させる方法であって、10 mM以上の酢酸を灌注によって植物の根に施用し、該植物を乾燥ストレス条件下で生育させる工程を含む、前記方法を記載する。当該文献は、前記方法により、乾燥ストレス条件下で且つ酢酸非存在下で栽培した同種の対照植物と比較して、処理植物の乾燥ストレス耐性が、乾燥ストレス条件下でも生育できるように向上することを記載する。
【0006】
非特許文献1は、ジャスモン酸シグナル経路を刺激して、解糖系から酢酸合成へと動的に代謝フラックスを転換する引き金を引くことで、植物が乾燥耐性を獲得する、乾燥応答のネットワークを記載する。当該文献は、シロイヌナズナにおけるこのネットワークのスイッチは、ヒストン脱アセチル化酵素6(HDA6)に直接的に依存していることを記載する。当該文献は、外的な酢酸が、新規のジャスモン酸合成及びヒストンH4のアセチル化濃縮を促進して、植物の乾燥耐性に対するジャスモン酸シグナル経路の準備刺激に影響を与えることを記載する。当該文献はまた、外的な酢酸の施用により、シロイヌナズナ、アブラナ、トウモロコシ、イネ及びコムギ植物において乾燥耐性が向上したことを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第9,258,954号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Kim, J.M.ら, Nature Plants, Vol. 3, 17097 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
植物の栽培において、植物の生育を維持しつつ灌水量を低減することができれば、植物を栽培する農業者の時間及び労力の両面における負担を削減することができる。また、水の消費量が減少するため、水の費用も削減することができる。それ故、植物の灌水量の低減により、結果として植物の生産コストを削減し得る。
【0010】
植物の栽培において、灌水量は、栽培環境だけでなく、植物の吸水量にも大きく影響される。このため、植物の生育を維持しつつ植物の吸水量を低減することができれば、植物の灌水量を低減し得る。しかしながら、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、植物の吸水量を低減する手段は知られていなかった。例えば、前記のように、酢酸の施用により、植物において乾燥ストレス耐性を向上し得ることが知られている(特許文献1及び非特許文献1)。しかしながら、酢酸の施用が、通常の生育条件、すなわち非乾燥ストレス条件下で生育する植物に対して与える影響は明らかになっていなかった。例えば、酢酸の施用により乾燥ストレス耐性が向上した植物において、水の吸収量が変動し得るかは明らかになっていなかった。
【0011】
それ故、本発明は、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、植物の灌水量を低減できる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者は、植物の乾燥ストレス耐性に関与する酢酸が、通常の生育条件、すなわち非乾燥ストレス条件下において、植物の吸水量を低減し得ることを見出した。また、本発明者は、灌水量を低減した場合であっても、植物が良好に生育し得ることを見出した。本発明者は、前記知見に基づき本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0014】
(1) 酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、植物の灌水量の低減剤。
(2) 少なくとも水を含む1種以上の溶媒をさらに含有し、且つ4~8の範囲のpHを有する、前記実施形態(1)に記載の植物の灌水量の低減剤。
(3) 少なくとも水を含む1種以上の溶媒をさらに含有し、且つ総体積に対して0.01~0.5体積%の範囲の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を含有する、前記実施形態(1)又は(2)に記載の植物の灌水量の低減剤。
(4) 酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と、1種以上の農業上許容される成分とを含有する、植物の灌水量を低減するための農業化学組成物。
(5) 少なくとも水を含む1種以上の溶媒をさらに含有し、且つ4~8の範囲のpHを有する、前記実施形態(4)に記載の農業化学組成物。
(6) 少なくとも水を含む1種以上の溶媒をさらに含有し、且つ総体積に対して0.01~0.5体積%の範囲の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を含有する、前記実施形態(4)又は(5)に記載の農業化学組成物。
(7) 農業上有効な量の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を、植物、該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用することを含む、該植物の灌水量を低減する方法。
(8) 植物の生育に関する1個以上の情報を取得すること、
取得した1個以上の情報に基づき、前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の植物の灌水量の低減剤又は前記実施形態(4)~(6)のいずれかに記載の農業化学組成物を、該植物、該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用する条件を決定すること、
を含む、該植物の生育を管理する方法。
(9) 酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、切り花の保存剤。
(10) 少なくとも水を含む1種以上の溶媒をさらに含有し、且つ4~8の範囲のpHを有する、前記実施形態(9)に記載の切り花の保存剤。
(11) 少なくとも水を含む1種以上の溶媒をさらに含有し、且つ総体積に対して0.01~0.5体積%の範囲の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を含有する、前記実施形態(9)又は(10)に記載の切り花の保存剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、植物の灌水量を低減できる手段を提供することが可能となる。
【0016】
前記以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【0017】
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願第2017-195288号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区の切り花の外観及び吸水量を示す図である。(a):試験開始時の切り花の全体の外観を示す写真、(b):5日間の生育後の切り花の全体の外観を示す写真、(c):5日間の生育後の切り花の茎の切断部付近及び試験溶液の外観を示す写真。
図2図2は、対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区の切り花の外観を示す図である。(a):試験開始時の切り花の全体の外観を示す写真、(b):7日間の生育後の切り花の全体の外観を示す写真。
図3図3は、5日間生育後の対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区の切り花の外観を示す図である。
図4図4は、4週間生育後の対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区のポット苗の外観を示す図である。
図5図5は、4週間生育後の対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区のポット苗の外観を示す図である。(a):対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区のポット苗の全体の外観を示す写真、(b):0.2体積%酢酸処理区のポット苗に形成された果実(ミニトマト)を示す写真。
図6図6は、非処理区、対照区及び酢酸施用区のトマト植物体の生存率を示す図である。
図7図7は、試験期間における非処理区、対照区及び酢酸施用区のトマト植物体の外観を示す図である。(a):移植時点の各区のトマト植物体の写真、(b):移植から15日目の各区のトマト植物体の写真、(c):移植から22日目の各区のトマト植物体の写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明者は、植物の乾燥ストレス耐性に関与する酢酸が、通常の生育条件、すなわち非乾燥ストレス条件下において、植物の吸水量を低減し得ることを見出した。また、本発明者は、灌水量を低減した場合であっても、植物が良好に生育し得ることを見出した。通常の生育条件、すなわち非乾燥ストレス条件下において、酢酸の施用がこのような効果を奏することは、本発明者が見出した新規の知見である。それ故、本発明の一態様は、酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、植物の灌水量の低減剤に関する。本態様の一実施形態は、酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する、植物の吸水量の低減剤である。本態様の植物の灌水量の低減剤を植物に施用することにより、植物の吸水量を低減して、結果として植物の灌水量を低減することができる。
【0021】
本発明の一態様の植物の灌水量の低減剤を、植物の一部分である切り花に施用する場合、該切り花の灌水量及び/又は吸水量を低減することにより、鮮度を保持しながら該切り花を保存することができる。それ故、本発明の別の一態様は、酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する切り花の保存剤に関する。本態様の切り花の保存剤を切り花に施用することにより、該切り花の灌水量及び/又は吸水量を低減して、結果として鮮度を保持しながら該切り花を保存することができる。
【0022】
本発明の一態様の植物の灌水量の低減剤を植物に施用することにより、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。また、本発明の一態様の切り花の保存剤を切り花に施用することにより、該切り花の灌水量及び/又は吸水量を低減して、結果として鮮度を保持しながら該切り花を保存することができる。それ故、本発明の別の一態様は、酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する農業化学製剤又は農薬に関する。本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を植物に施用することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。また、本発明の各態様の切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬を切り花に施用することにより、切り花の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該切り花の灌水量及び/又は吸水量を低減して、結果として鮮度を保持しながら該切り花を保存することができる。
【0023】
本発明の各態様において、有効成分として使用される酢酸は、工業用途だけでなく、食品用途、及び木酢液のような農業用途にも使用される安全且つ安価な化合物である。それ故、本発明の各態様を実施することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、安全且つ低コストで該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。
【0024】
本発明の各態様において、有効成分として使用される酢酸は、それ自体だけでなく、その塩も包含する。酢酸の塩としては、限定するものではないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、又は置換若しくは非置換のアンモニウムイオンのようなカチオンとの塩が好ましい。酢酸が前記の塩の形態である場合、植物の灌水量及び/又は吸水量の低減効果、並びに植物に対する安全性を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる。
【0025】
本発明の各態様において、有効成分として使用される酢酸は、それ自体又はその塩だけでなく、それらの溶媒和物も包含する。酢酸又はその塩と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、水、又は低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール)のような1~6の炭素原子数を有するアルコール)、高級アルコール(例えば、1-ヘプタノール若しくは1-オクタノールのような7以上の炭素原子数を有するアルコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノールアミン若しくは酢酸エチルのような有機溶媒、或いはそれらの混合物が好ましい。酢酸又はその塩が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合、植物の灌水量及び/又は吸水量の低減効果、並びに植物に対する安全性を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる。
【0026】
本発明の各態様において、「植物の灌水量を低減する」とは、植物の集団に本発明を適用することにより、生育不能(枯死)、生育不良(例えば、植物の全体若しくはその部分(例えば葉若しくは花)の白化若しくは黄化、根長の減少若しくは葉数の減少、又は倒伏)、生育速度の低下、又は植物体重量若しくは作物収量の減少のような、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、本発明を適用しない対照の植物の集団と比較して、通常は90%以下、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下、特に好ましくは50%以下、より特に好ましくは25%以下まで、灌水量を低減できることを意味する。本発明の各態様を実施することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、前記範囲まで該植物の灌水量を低減することができる。
【0027】
本発明の各態様において、「植物の吸水量を低減する」とは、植物の集団に本発明を適用することにより、生育不能(枯死)、生育不良(例えば、植物の全体若しくはその部分(例えば葉若しくは花)の白化若しくは黄化、根長の減少若しくは葉数の減少、又は倒伏)、生育速度の低下、又は植物体重量若しくは作物収量の減少のような、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、本発明を適用しない対照の植物の集団と比較して、通常は90%以下、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下、特に好ましくは50%以下、より特に好ましくは25%以下まで、該植物の吸水量を低減できることを意味する。本発明の各態様を実施することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、前記範囲まで該植物の吸水量を低減することができる。
【0028】
本発明の各態様において、植物の灌水量及び吸水量は、限定するものではないが、以下の手段によって評価することができる。例えば、対象となる植物を、一定量の試験溶液(水及び場合により通常の栄養成分を含む)中で、通常の生育条件下、すなわち非乾燥ストレス条件下で生育させる。一定期間生育させた後、減少した試験溶液の体積、すなわち吸水量を測定する。前記試験を、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を含む試験溶液(試験区)、又はそれらを含まない試験溶液(対照区)を用いて実施し、対照区の吸水量と試験区の吸水量とを対比する。対照区の吸水量と試験区の吸水量との差を、試験区において低減され得る灌水量と推定する。このような手段により、試験区における灌水量及び吸水量の低減効果を決定することができる。
【0029】
或いは、植物の灌水量及び吸水量は、以下の手段によって評価することもできる。例えば、対象となる植物を、培養液又は土壌中で、通常の生育条件下、すなわち非乾燥ストレス条件下で、所定量の試験溶液を所定の間隔で施用しながら生育させる。前記試験を、所定量の本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を含む試験溶液(試験区)、又はそれらを含まない試験溶液(対照区)を用いて実施する。対照区の植物と試験区の植物とを対比して、対照区の試験溶液の体積と、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じていない試験区の試験溶液の体積との差を、試験区において低減され得る灌水量及び吸水量と推定する。このような手段により、試験区における灌水量及び吸水量の低減効果を決定することができる。
【0030】
本発明の各態様において、植物の灌水量及び/又は吸水量の低減効果は、植物の生育自体に対する効果、例えば、茎葉部若しくは根部の伸張、葉数の増加、開花若しくは結実の促進、花若しくは果実の数の増加、植物体重量若しくは作物収量の増加、緑化、又は分蘖の促進のような生育の促進効果を包含してもよく、包含しなくてもよい。例えば、本発明の各態様において、植物の灌水量及び/又は吸水量の低減効果は、植物の生育を実質的に促進しつつ、植物の灌水量及び/又は吸水量を特異的に低減することを包含する。或いは、本発明の各態様において、植物の灌水量及び/又は吸水量の低減効果は、植物の生育を実質的に促進することなく、植物の灌水量及び/又は吸水量を特異的に低減することを包含する。いずれの場合も本発明の各態様の実施形態に包含される。
【0031】
酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を植物に施用することにより、該植物の生育を促進し得る場合があることが判明した。それ故、本発明の各態様の特定の実施形態において、植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬は、植物の生育を促進するために使用することができる。この場合において、植物の生育の促進は、例えば、茎葉部若しくは根部の伸張、葉数の増加、開花若しくは結実の促進、花若しくは果実の数の増加、植物体重量若しくは作物収量の増加、緑化、又は分蘖の促進であり、特に、茎葉部若しくは根部の伸張、開花若しくは結実の促進、又は花若しくは果実の数の増加である。本発明の各態様の特定の実施形態において、植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を植物に施用することにより、植物の灌水量及び/又は吸水量を低減するだけでなく、該植物の生育を促進することができる。
【0032】
本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬は、例えば、固体(例えば粉末若しくは粒状物)、液体(例えば溶液若しくは懸濁液)、又は気体のような任意の形態で使用することができる。本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬は、溶液又は懸濁液のような液体の形態で使用することが好ましい。本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を前記形態で植物に施用することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。また、本発明の各態様の切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬を切り花に施用することにより、切り花の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該切り花の灌水量及び/又は吸水量を低減して、結果として鮮度を保持しながら該切り花を保存することができる。
【0033】
本発明の各態様の農業化学製剤又は農薬において、酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として単独で使用してもよく、1種以上の農業上許容される成分と組み合わせて使用してもよい。本発明の各態様の農業化学製剤又は農薬は、所望の施用方法に応じて、当該技術分野で通常使用される様々な剤形に製剤されることができる。それ故、本発明の各態様の農業化学製剤又は農薬はまた、酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と、1種以上の農業上許容される成分とを含有する農業化学組成物の形態で提供されることもできる。本態様の農業化学組成物に使用される農業上許容される成分としては、溶媒若しくは担体、賦形剤、結合剤、溶解補助剤、安定剤、増粘剤、膨化剤、潤滑剤、界面活性剤、油性液、緩衝剤、殺菌剤、不凍剤、消泡剤、着色剤、酸化防止剤、添加剤、肥料、及びさらなる薬剤等を挙げることができる。農業上許容される溶媒若しくは担体としては、水、ケロセン若しくはディーゼル油のような鉱油画分、植物若しくは動物由来の油、環状若しくは芳香族炭化水素(例えばパラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン類若しくはそれらの誘導体、又はアルキル化ベンゼン類若しくはそれらの誘導体)、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセロール又はシクロヘキサノール)、ケトン(例えばシクロヘキサノン)、若しくはアミン(例えばN-メチルピロリドン)、又はこれらの混合物のような農業上許容される溶媒若しくは液体担体が好ましく、少なくとも水を含む1種以上の溶媒がより好ましい。肥料としては、油粕若しくは牛糞のような有機肥料、又は硫安、石灰窒素若しくは熔成リンのような無機肥料が好ましい。
【0034】
本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬が、少なくとも水を含む1種以上の溶媒をさらに含有する場合、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬は、好ましくは4~8の範囲、より好ましくは5~7.5の範囲、さらに好ましくは6~7の範囲のpHを有する。本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬は、対象の植物への施用時点で前記範囲のpHを有することが好ましい。本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬のpHは、塩酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水又は酢酸アンモニウムのような、酸、アルカリ又は緩衝剤を用いて調整すればよい。或いは、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬を施用する土壌、培地又は培養液のpH緩衝作用を利用して、前記範囲のpHに調整してもよい。この場合、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬のpHが、対象の植物への施用前に前記範囲外であっても、施用時点において、前記pH範囲に調整され得る。本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬のpHが、施用時点において前記範囲外の場合、生育不能(枯死)、生育不良(例えば、植物の全体若しくはその部分(例えば葉若しくは花)の白化若しくは黄化、根長の減少若しくは葉数の減少、又は倒伏)、生育速度の低下、又は植物体重量若しくは作物収量の減少のような、植物の生育における好ましくない影響を生じる可能性がある。本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬が前記範囲のpHを有することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。また、本発明の各態様の切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬が前記範囲のpHを有することにより、切り花の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該切り花の灌水量及び/又は吸水量を低減して、結果として鮮度を保持しながら該切り花を保存することができる。
【0035】
本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬が、少なくとも水を含む1種以上の溶媒をさらに含有する場合、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬は、総体積に対して好ましくは0.01~0.5体積%の範囲、より好ましくは0.05~0.5体積%の範囲、さらに好ましくは0.05~0.2体積%の範囲又は0.075~0.25体積%の範囲、とりわけ好ましくは0.09~0.2体積%の範囲、特に好ましくは0.1~0.2体積%の範囲の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を含有する。本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬における酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の含有量が前記上限値を超える場合、生育不能(枯死)、生育不良(例えば、植物の全体若しくはその部分(例えば葉若しくは花)の白化若しくは黄化、根長の減少若しくは葉数の減少、又は倒伏)、生育速度の低下、又は植物体重量若しくは作物収量の減少のような、植物の生育における好ましくない影響を生じる可能性がある。本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬が前記範囲の含有量の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。また、本発明の各態様の切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬が前記範囲の含有量の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有することにより、切り花の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該切り花の灌水量及び/又は吸水量を低減して、結果として鮮度を保持しながら該切り花を保存することができる。
【0036】
本態様の農業化学組成物が1種以上の添加剤を含有する場合、該添加剤としては、クエン酸、リンゴ酸及びプロピオン酸のような有機酸、グリシン、グルタミン酸、イソロイシン、プロリン、メチオニン及びアスパラギン酸のようなアミノ酸、アスコルビン酸、α-トコフェロール及び葉酸のようなビタミン、並びにDNA及びRNAのような核酸を挙げることができる。本態様の農業化学組成物が前記のような1種以上の添加剤を含有する場合であっても、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。
【0037】
本態様の農業化学組成物が1種以上のさらなる薬剤を含有する場合、該さらなる薬剤としては、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、2-クロロエチルホスホン酸(商品名:エスレル(登録商標))、カーバイド、ベンジルアデニン、ブラシノステロイド、ストリゴラクトン及びジャスモン酸等を含む、当該技術分野で通常使用される植物ホルモン、植物化学調節剤及び農薬を挙げることができる。本態様の農業化学組成物が前記のような1種以上のさらなる薬剤を含有する場合であっても、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。
【0038】
本発明の各態様において、対象となる植物は、特に限定されない。被子植物及び裸子植物を含む様々な植物に対して、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬を施用することができる。本発明の各態様において、施用対象となる植物としては、限定するものではないが、例えば、キク及びガーベラのようなキク科植物、ジャガイモ、トマト及びナスのようなナス科植物、ナタネ及びアブラナのようなアブラナ科植物、イネ、トウモロコシ、コムギ、サトウキビ及びオオムギのようなイネ科植物、ダイズのようなマメ科植物、アサガオのようなヒルガオ科植物、ポプラのようなヤナギ科植物、トウゴマ、キャッサバ及びジャトロファのようなトウダイグサ科植物、サツマイモのようなヒルガオ科植物、オレンジ及びレモンのようなミカン科植物、サクラ及びバラのようなバラ科植物、コチョウランのようなラン科植物、トルコキキョウのようなリンドウ科植物、シクラメンのようなサクラソウ科植物、パンジーのようなスミレ科植物、ユリのようなユリ科植物、テンサイのようなヒユ科植物、ブドウのようなブドウ科植物、スギ及びヒノキなどのヒノキ科植物、オリーブ及びキンモクセイなどのモクセイ科植物、並びにアカマツのようなマツ科植物を挙げることができる。前記植物は、該植物の全体(すなわち完全な植物体)だけでなく、組織若しくは器官(例えば、切り花、又は根茎、塊根、球茎若しくはランナー等の栄養繁殖器官)、培養細胞及び/又はカルス等の該植物の部分であってもよい。また、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬は、発芽前又は発芽後を含む任意の生育段階にある前記植物の全体又はその部分(例えば、種子、幼苗又は成熟植物の全体又はその部分)に施用することができる。前記のような植物に本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を施用することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。また、前記のような植物の切り花に本発明の各態様の切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬を施用することにより、切り花の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該切り花の灌水量及び/又は吸水量を低減して、結果として鮮度を保持しながら該切り花を保存することができる。
【0039】
本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬は、前記植物自体だけでなく、該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用することができる。それ故、本発明の別の一態様は、農業上有効な量の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を、植物、該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用することを含む、該植物の灌水量を低減する方法に関する。本態様の方法において、施用される酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は、前記で説明した特徴を有する本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬であればよい。また、本態様の方法において、植物に施用するための資材としては、限定するものではないが、例えば、水、肥料、土壌、培地又は培養液のような、当該技術分野で通常使用される各種の資材を挙げることができる。前記のような生育段階にある植物、該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を施用することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。
【0040】
農業上有効な量の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、特に本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬は、植物の灌水量を低減する前及び/又はその間、該植物自体、或いは該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用することができる。植物の灌水量を低減する間、農業上有効な量の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、特に本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を施用することが好ましい。前記時期に農業上有効な量の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、特に本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を施用することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。
【0041】
一実施形態において、本態様の方法は、所望により、農業上有効な量の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物に加えて、さらなる薬剤を、植物、該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用することをさらに含んでもよい。さらなる薬剤としては、前記で説明した農業化学組成物のさらなる薬剤であることが好ましい。この場合、農業上有効な量の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物と、さらなる薬剤とを、植物、該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用する順序は特に限定されない。例えば、農業上有効な量の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物とさらなる薬剤とを同時に(単一の若しくは別々の製剤として)植物、該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用してもよく、又は逐次的に施用してもよい。農業上有効な量の酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物に加えて、さらなる薬剤を植物等に施用することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。
【0042】
本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬の剤形は、特に限定されない。当該技術分野で通常使用される、乳剤、水和剤、液剤、水溶剤、粉剤、粉末剤、ペースト剤又は粒剤等の剤形に製剤することができる。本発明の各態様において、酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は、農業上有効な量で含有又は施用される。本発明の各態様において、酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の農業上有効な量は、例えば、施用時の総質量に対して、0.01~0.5質量%の範囲であり、通常は、施用時の総質量に対して、0.05~0.5質量%の範囲であり、典型的には、施用時の総質量に対して、0.05~0.2質量%の範囲又は0.075~0.25質量%の範囲であり、さらに典型的には、施用時の総質量に対して、0.09~0.2質量%の範囲であり、特に、施用時の総質量に対して、0.1~0.2質量%の範囲である。例えば、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬が液体形態の剤形である場合、酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の農業上有効な量は、例えば、施用時の総体積に対して、0.01~0.5体積%の範囲であり、通常は、施用時の総体積に対して、0.05~0.5体積%の範囲であり、典型的には、施用時の総体積に対して、0.05~0.2体積%の範囲又は0.075~0.25体積%の範囲であり、さらに典型的には、施用時の総質量に対して、0.09~0.2体積%の範囲であり、特に、施用時の総質量に対して、0.1~0.2体積%の範囲である。
【0043】
植物の栽培において、植物の生育の状態に基づき、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を、該植物等に施用する条件を適切に設定することにより、該植物の灌水量及び/又は吸水量を軽減しつつ、該植物の生育を安定的に管理することができる。それ故、本発明の別の一態様は、植物の生育に関する1個以上の情報を取得すること(以下、「情報取得工程」とも記載する)、取得した1個以上の情報に基づき、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬、好ましくは本発明の一態様の農業化学組成物を、該植物、該植物に施用するための資材、又はそこから該植物が生育する土壌、培地若しくは培養液に施用する条件を決定すること(以下、「施用条件決定工程」とも記載する)を含む、該植物の生育を管理する方法に関する。
【0044】
情報取得工程において取得する、植物の生育に関する1個以上の情報としては、限定するものではないが、例えば、茎葉部若しくは根部の伸張、葉数の増加、開花若しくは結実の促進、花若しくは果実の数の増加、植物体重量若しくは作物収量の増加、緑化、又は分蘖の促進のような生育の促進効果に関する種々の情報、並びに、生育不能(枯死)、生育不良(例えば、植物の全体若しくはその部分(例えば葉若しくは花)の白化若しくは黄化、根長の減少若しくは葉数の減少、又は倒伏)、生育速度の低下、又は植物体重量若しくは作物収量の減少のような植物の生育における好ましくない影響に関する種々の情報を挙げることができる。前記で例示した1個以上の情報を取得することにより、植物の生育の状態を評価することができる。
【0045】
施用条件決定工程において決定される、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬、好ましくは本発明の一態様の農業化学組成物を施用するための条件は、当該施用を実施することによって植物の灌水量及び/又は吸水量を軽減することができるように、適宜設定される。本工程において決定される条件は、例えば、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬、好ましくは本発明の一態様の農業化学組成物の組成、pH、施用量及び施用時期、並びに有効成分として含有される酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の含有量からなる群より選択される1種以上の条件から選択することができる。これらの条件の具体的な値は、本明細書において例示した範囲から適宜設定することができる。本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬、好ましくは本発明の一態様の農業化学組成物を施用するための適切な条件を決定することにより、植物の灌水量及び/又は吸水量を軽減しつつ、該植物の生育を安定的に管理することができる。
【0046】
本態様の植物の生育を管理する方法において、情報取得工程及び施用条件決定工程の回数及び順序は特に限定されない。例えば、情報取得工程及び施用条件決定工程をこの順序で1回ずつ実施してもよく、情報取得工程、施用条件決定工程、次いでさらなる情報取得工程をこの順序で実施してもよく、1回目の情報取得工程、1回目の施用条件決定工程、2回目の情報取得工程、及び2回目の施用条件決定工程のように、情報取得工程及び施用条件決定工程の組み合わせを複数回繰り返し実施してもよい。
【0047】
本態様の植物の生育を管理する方法を実施することにより、植物の生育の状態に基づき、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を該植物等に施用する条件を適切に設定して、該植物の灌水量及び/又は吸水量を軽減しつつ、該植物の生育を安定的に管理することができる。
【0048】
本明細書において詳細に説明したように、本発明により、安価で入手できる酢酸若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有する植物の灌水量の低減剤、切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬を提供することができる。それ故、本発明の各態様の植物の灌水量の低減剤、農業化学製剤又は農薬を植物に施用することにより、安全且つ低コストで、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該植物の灌水量及び/又は吸水量を低減することができる。また、本発明の各態様の切り花の保存剤、農業化学製剤又は農薬を切り花に施用することにより、安全且つ低コストで、切り花の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、該切り花の灌水量及び/又は吸水量を低減して、結果として鮮度を保持しながら該切り花を保存することができる。
【実施例
【0049】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
<I:切り花に対する灌水量の低減試験(1)>
市販のスプレー菊の切り花(品種:スプレーマム、同じ生産者が同時期に出荷した植物体)を準備した。4株ずつの切り花を、500 mLの試験溶液中、室内で室温の条件下で5日間生育させた。生育後の試験溶液の体積を測定した。試験溶液は、水(対照区)、0.1体積%の酢酸水溶液(0.1体積%酢酸処理区、酢酸:水=1:1000、pH未調整)又は0.2体積%の酢酸水溶液(0.2体積%酢酸処理区、酢酸:水=1:500、pH未調整)であった。酢酸は、市販の食品添加用の氷酢酸(小堺製薬株式会社、東京)を、水は、水道水を、それぞれ使用した。
【0051】
対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区の切り花の外観及び吸水量を図1に示す。図中、(a)は、試験開始時の切り花の全体の外観を示す写真であり、(b)は、5日間の生育後の切り花の全体の外観を示す写真であり、(c)は、5日間の生育後の切り花の茎の切断部付近及び試験溶液の外観を示す写真である。図1(a)及び(b)に示すように、対照区及び0.1体積%酢酸処理区では、植物体の生育に顕著な差は観察されなかった。これに対し、0.2体積%酢酸処理区の場合、対照区と比較して、葉の黄変等の、植物体の生育に顕著な差が観察された。5日間の生育後の試験溶液の体積は、対照区の場合、約50 mLであった。これに対し、5日間の生育後の試験溶液の体積は、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区の場合、それぞれ約120 mL又は約150 mLであった(図1(c)、白抜き矢印)。すなわち、切り花の吸水量は、対照区の場合、約450 mLであったのに対し、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区の場合、それぞれ約380 mL又は約350 mL(それぞれ対照区に対して約84%又は約78%)であった。
【0052】
本試験の結果から、酢酸を施用することにより、植物の吸水量を低減できることが示された。特に、0.1体積%酢酸水溶液を施用することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、植物の吸水量を低減できることが示された。
【0053】
<II:切り花に対する灌水量の低減試験(2)>
市販のガーベラの切り花(品種:サングロー、同じ生産者が同時期に出荷した植物体)を準備した。4株ずつの切り花を、8 mLの試験溶液中、室内で室温の条件下で2日間生育させた。その後、残余の試験溶液を捨て、500 μLの新鮮な試験溶液に交換した。前記の手順で毎日試験溶液を交換しながら、切り花を、室内で室温の条件下でさらに5日間(合計7日間)生育させた。試験溶液は、水(対照区)、0.1体積%の酢酸水溶液(0.1体積%酢酸処理区、酢酸:水=1:1000、pH未調整)又は0.2体積%の酢酸水溶液(0.2体積%酢酸処理区、酢酸:水=1:500、pH未調整)であった。酢酸及び水は、前記Iと同様のものをそれぞれ使用した。
【0054】
対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区の切り花の外観を図2に示す。図中、(a)は、試験開始時の切り花の全体の外観を示す写真であり、(b)は、7日間の生育後の切り花の全体の外観を示す写真である。図2(a)及び(b)に示すように、対照区及び0.1体積%酢酸処理区では、75%以上の植物体で花の倒伏(首折れ)が観察された。また、試験開始時の植物体と比較して、倒伏していない花も茶色の変色が観察された。これに対し、0.2体積%酢酸処理区の場合、略100%の植物体が良好に生育し、花の倒伏又は変色は観察されなかった。
【0055】
本試験の結果から、酢酸を施用することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、植物の灌水量を低減できることが示された。
【0056】
<III:切り花に対する灌水量の低減試験(3)>
市販のスプレー菊の切り花(品種:スプレーマム、同じ生産者が同時期に出荷した植物体)を準備した。4株ずつの切り花を、500 mLの試験溶液中、室内で室温の条件下で5日間生育させた。生育後の試験溶液の体積を測定した。試験溶液は、水(対照区)、0.1体積%の酢酸水溶液(0.1体積%酢酸処理区、酢酸:水=1:1000、pH6~7)又は0.2体積%の酢酸水溶液(0.2体積%酢酸処理区、酢酸:水=1:500、pH6~7)であった。酢酸水溶液のpHは、KOH水溶液及びpH試験紙を用いて調整した。酢酸及び水は、前記Iと同様のものをそれぞれ使用した。
【0057】
5日間生育後の対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区の切り花の外観を図3に示す。図3に示すように、対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区では、いずれの植物体も良好に生育し、花の倒伏又は変色は殆ど観察されなかった。特に、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区の場合、対照区と比較して、茎部が伸長した。また、前記Iの試験結果と同様に、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区の場合、対照区と比較して、吸水量の低減が観察された。
【0058】
本試験の結果から、pH6~7の酢酸水溶液を施用することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、植物の生育を促進しつつ、植物の吸水量を低減できることが示された。
【0059】
<IV:ミニトマト苗に対する灌水量の低減試験>
市販のミニトマトの苗(品種:ミニキャロル)を9株準備した。この苗を、1株ずつ、約200 mLの培土を入れたプラスチック製ポットに移植した。ポット苗を、雨を避けられる屋外に設置したオープンラックに配置した。全てのポット苗の培土に、十分な量の水を施用し、オープンラックに配置したまま屋外環境下で一晩放置した。次いで、全てのポット苗の培土に、100 mLの水を施用し、過剰量の水がポットの下部より流出しなくなるまで1時間放置した。生育が揃ったポット苗を6株選抜し、対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区に、それぞれ2株ずつ使用した。ポット苗の培土に、30 mLの試験溶液を施用した。試験溶液は、水(対照区)、0.1体積%の酢酸水溶液(0.1体積%酢酸処理区、酢酸:水=1:1000、pH未調整)又は0.2体積%の酢酸水溶液(0.2体積%酢酸処理区、酢酸:水=1:500、pH未調整)であった。対照区及び酢酸処理区のポット苗を、オープンラックに配置したまま屋外環境下で4週間生育させた。生育期間中、1週間毎に、30 mLの試験溶液を施用した。
【0060】
4週間生育後の対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区のポット苗の外観を図4及び5に示す。図5中、(a)は、対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区のポット苗の全体の外観を示す写真であり、(b)は、0.2体積%酢酸処理区のポット苗に形成された果実(ミニトマト)を示す写真である。図4に示すように、対照区、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区では、いずれの植物体も良好に生育し、主茎部若しくは側枝部の倒伏又は変色は殆ど観察されなかった。特に、0.1体積%酢酸処理区及び0.2体積%酢酸処理区の場合、対照区と比較して、主茎部が伸長し、苗全体が大きく成長した。さらに、0.2体積%酢酸処理区の場合にのみ、結実が観察された(図5(b))。結果は示していないが、移植直後から通常の条件で灌水を継続して生育させたポット苗の場合、0.2体積%酢酸処理区のポット苗と比較して主茎部がより伸長し、苗全体がより大きく成長したものの、開花又は結実は観察されなかった。
【0061】
本試験の結果から、酢酸を施用することにより、植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、植物の生育を促進しつつ、植物の灌水量を低減できることが示された。
【0062】
<V:トマト圃場栽培における灌水量の低減試験>
播種及び出荷時期が揃った市販のトマトの苗(品種:ホーム桃太郎)を購入した。この苗を、1株ずつ、約200 mLの培土を入れたプラスチック製ポットに移植して、ポット苗を得た。
【0063】
ビニールハウス圃場に、木枠を設置した。地表から木枠の内部へ水分が浸透することを防止するため、木枠の底面及び側面にビニールフィルムを貼付した。この木枠の内部に、十分に乾燥させた市販の黒土(肥料等を含有しない基本土)を30 cmの深さになるように入れた。木枠の内部の黒土を、試験用耕地として用いた。
【0064】
1試験区あたり4個のポット苗を、1 Lの水を入れたバットに一晩静置した(苗の前処理)。苗の前処理により、ポットの底面から十分な量の水を培土に吸収させて、各ポット苗の培土の水分量を揃えた。前処理後のポット苗を、試験用耕地に直接移植した。
【0065】
移植から7、14及び21日目に、非処理区は1個体あたり100 mLの水を、酢酸施用区は1個体あたり100 mLの10 mM(0.057体積%、pH未調整)酢酸水溶液を、対照区は1個体あたり400 mLの水を、それぞれ施用した。酢酸は、市販の食品添加用の氷酢酸(小堺製薬株式会社、東京)を、水は、水道水を、それぞれ使用した。移植から21日目までの施用量は、非処理区及び酢酸施用区は1個体あたり300 mL、対照区は1個体あたり1200 mLであった。すなわち、非処理区、酢酸施用区及び対照区のトマト植物体のいずれも、継続的に灌水する非乾燥ストレス条件下で栽培された。
【0066】
移植から22日目に、各トマト植物体の生育状態を目視で確認した。前記手順の試験を、3回反復で実施した。非処理区、対照区及び酢酸施用区の総個体数に対する生存した個体数の百分率を、生存率(%)として算出した。非処理区、対照区及び酢酸施用区のトマト植物体の生存率を、図6に示す。図中、生存率の値は、3回反復試験の平均値である。また、試験期間における非処理区、対照区及び酢酸施用区のトマト植物体の外観を、図7に示す。図中、(a)は、移植時点の各区のトマト植物体の写真であり、(b)は、移植から15日目の各区のトマト植物体の写真であり、(c)は、移植から22日目の各区のトマト植物体の写真である。
【0067】
図6に示すように、移植から22日目において、非処理区の平均の生存率は、約5%であった。これに対し、対照区及び酢酸施用区の平均の生存率は、それぞれ約85%及び90%であった。また、非処理区のトマト植物体は、移植から15日目の時点で一部が枯死しており、移植から22日目の時点で完全に枯死したことが観察された(図7(b)及び(c))。これに対し、酢酸施用区のトマト植物体は、非処理区のトマト植物体が枯死した場合と同量の灌水量であっても、枯死することなく、対照区のトマト植物体と実質的に同等の生育を示した。酢酸施用区の灌水量(1個体あたり300 mL)及び対照区の灌水量(1個体あたり1200 mL)の比較から、酢酸施用区では、対照区と比較して、25%まで灌水量を低減できることが確認された。
【0068】
本試験の結果から、酢酸を施用することにより、枯死等の植物の生育における好ましくない影響を実質的に生じることなく、植物の生育を促進しつつ、植物の吸水量を低減できることが示された。
【0069】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
図1
図2
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図5
図6
図7