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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】揺動連結具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/024 20060101AFI20240709BHJP
   F16G 15/04 20060101ALI20240709BHJP
   B66C 1/66 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B21D7/024 C
F16G15/04 Z
B66C1/66 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020134543
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030473
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】500536526
【氏名又は名称】浪速鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520299131
【氏名又は名称】株式会社長岡鉄工
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】堀川 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長岡 洋平
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-154781(JP,A)
【文献】実開昭55-055223(JP,U)
【文献】特開2017-094362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0210945(US,A1)
【文献】特開平11-333522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/024
F16G 15/04
B66C 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に貫通孔を有するシャックルと、前記貫通孔に内嵌される軸部を有するトラニオンとを備え、取付対象に対して螺子固定可能な揺動連結具の製造方法であって、
受け部材により棒状の前記シャックルの中途部分を芯材に当接させる当接工程と、
前記シャックルの前記中途部分を前記受け部材で支持した状態で、曲げ冶具により前記芯材の外周面に沿って前記シャックルをU字状に曲げる曲げ工程と、
前記曲げ工程でU字状に曲げられた前記シャックルの前記貫通孔を前記軸部に外嵌させる嵌合工程と、を含み、
前記曲げ冶具には、前記シャックルの外形に沿う第一溝部が形成されており、
前記曲げ工程では、前記シャックルが前記第一溝部及び前記芯材の前記外周面の間に挟持されており、
前記嵌合工程では、U字状に曲げられた前記シャックルを前記芯材から離間させて、前記シャックルの円弧状部位のうち前記受け部材側の端部を前記第一溝部に当接させた前記曲げ冶具により押圧する揺動連結具の製造方法。
【請求項2】
前記芯材の前記外周面には、前記シャックルの外形に沿う第二溝部が形成されており、
前記曲げ工程では、前記シャックルが前記第一溝部及び前記第二溝部の間に挟持されている請求項1に記載の揺動連結具の製造方法。
【請求項3】
前記芯材は、前記第二溝部が形成された円周領域と、当該円周領域を有する円盤状部材が切断された切欠領域と、を含んでいる請求項2に記載の揺動連結具の製造方法。
【請求項4】
前記受け部材は、前記シャックルの前記中途部分に面接触している請求項1から3のいずれか一項に記載の揺動連結具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端部に貫通孔を有するシャックルと、シャックルの貫通孔に内嵌される軸部を有するトラニオンとを備え、取付対象に対して螺子固定可能な揺動連結具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の揺動連結具は、取付ボルトの周囲にボス部材を設け、このボス部材にトラニオンを外挿し、トラニオンの軸部にシャックルの両端部を外嵌している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された揺動連結具は、取付ボルトを取付対象に螺合することにより揺動連結具が取付対象に固定され、シャックルがトラニオンに対して揺動自在であり、トラニオン及びシャックルは、取付ボルトの軸芯周りに回動自在となっている。
【0003】
この揺動連結具の製造方法は、棒状のシャックルを曲げ加工してU字状のシャックルにした後、シャックルの一端部をトラニオンの一方の軸部に外嵌した状態で、シャックルの他端部をプレスしてトラニオンの他方の軸部に外嵌させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-154781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の揺動連結具の製造方法において、棒状のシャックルを曲げ加工すると、シャックルの外面に傷がつきやすく、曲げ冶具で押圧したときに押圧跡が残ってしまう。また、揺動連結具の使用時、シャックルに相当な引っ張り荷重が作用するため、シャックルが開き変形しないようにトラニオンの軸部にシャックルの端部を強くプレスして外嵌する必要があった。このため、シャックルの曲げ加工を行い、トラニオンの軸部にシャックルの両端部を外嵌するときに、揺動連結具の外観に傷が残らないようにすることが困難であった。
【0006】
そこで、外観の傷を無くすことが可能な揺動連結具の製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る揺動連結具の製造方法の特徴は、両端部に貫通孔を有するシャックルと、前記貫通孔に内嵌される軸部を有するトラニオンとを備え、取付対象に対して螺子固定可能な揺動連結具の製造方法であって、受け部材により棒状の前記シャックルの中途部分を芯材に当接させる当接工程と、前記シャックルの前記中途部分を前記受け部材で支持した状態で、曲げ冶具により前記芯材の外周面に沿って前記シャックルをU字状に曲げる曲げ工程と、前記曲げ工程でU字状に曲げられた前記シャックルの前記貫通孔を前記軸部に外嵌させる嵌合工程と、を含み、前記曲げ冶具には、前記シャックルの外形に沿う第一溝部が形成されており、前記曲げ工程では、前記シャックルが前記第一溝部及び前記芯材の前記外周面の間に挟持されており、前記嵌合工程では、U字状に曲げられた前記シャックルを前記芯材から離間させて、前記シャックルの円弧状部位のうち前記受け部材側の端部を前記第一溝部に当接させた前記曲げ冶具により押圧する点にある。
【0008】
本方法では、曲げ冶具にシャックルの外形に沿う第一溝部を形成し、曲げ工程では、シャックルを第一溝部及び芯材の外周面の間に挟持している。このため、シャックルの中途部分を受け部材で支持した状態で芯材の外周面に沿ってシャックルをU字状に曲げる際、シャックルの外面に曲げ加工時の応力が均等にかかるため、シャックルの外面の一部が変形したり、該外面に傷が付いたりすることを防止できる。
【0009】
また、曲げ工程では、受け部材により棒状のシャックルの中途部分を芯材に当接させているため、シャックルの曲がり姿勢が安定し、嵌合工程においてシャックルの貫通孔を軸部に外嵌させるときの加工精度が高まる。
シャックルの端部をプレスしたとしても、シャックルの貫通孔を軸部に精度よく外嵌させることが困難である。本嵌合工程のように、U字状に曲げられたシャックルを芯材から離間させて、シャックルの円弧状部位のうち受け部材側の端部を第一溝部に当接させた曲げ冶具により押圧すれば、シャックルの外面に傷をつけずにシャックルの両端部を更に内側に近付けることが可能となり、シャックルの貫通孔を軸部に精度よく外嵌させることができる。その結果、揺動連結具の使用時、シャックルに相当な引っ張り荷重が作用することに起因してシャックルが開き変形するといった問題を解消することができる。
【0010】
このように、外観の傷を無くすことが可能な揺動連結具の製造方法を提供できた。
【0011】
他の特徴として、前記芯材の前記外周面には、前記シャックルの外形に沿う第二溝部が形成されており、前記曲げ工程では、前記シャックルが前記第一溝部及び前記第二溝部の間に挟持されている点にある。
【0012】
本方法では、芯材の外周面にはシャックルの外形に沿う第二溝部が形成されているため、受け部材により棒状のシャックルの中途部分が芯材に当接しているとき、シャックルに無理な応力が作用せず、シャックルの中途部分の変形を防止できる。
【0013】
他の特徴として、前記芯材は、前記第二溝部が形成された円周領域と、当該円周領域を有する円盤状部材が切断された切欠領域と、を含んでいる点にある。
【0014】
曲げ工程後の嵌合工程においてシャックルの貫通孔を軸部に外嵌させたとき、シャックルが開き変形しないように、シャックルの両端部が内側に近付くように若干傾斜している。そこで、本構成の芯材のように、第二溝部が形成された円周領域と切欠領域とを含んでいれば、シャックルが内側に傾斜している場合でも、この切欠領域を設けることによりシャックルの引っ掛かりを抑えて、芯材に密着した完成品を容易に取り出すことができる。
【0015】
他の特徴として、前記受け部材は、前記シャックルの前記中途部分に面接触している点にある。
【0016】
上述したように、受け部材により棒状のシャックルの中途部分が芯材に当接しているとき、芯材にシャックルの外形に沿う第二溝部を形成しているため、シャックルに無理な応力が作用せず、シャックルの中途部分の変形を防止できる。このとき、本構成の受け部材のように、棒状のシャックルの中途部分に面接触させれば、シャックルの中途部分にかかる応力を分散させて、より緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】揺動連結具の一部断面を含む正面図である。
図2】揺動連結具の製造方法を示す概略説明図である。
図3】当接工程を示す平面図である。
図4】芯材を示す図3のIV-IV線矢視図である。
図5】曲げ冶具を示す図である。
図6】曲げ工程を示す平面図である。
図7】プレス工程を示す平面図である。
図8】嵌合工程を示す平面図である。
図9】他の実施形態に係る揺動連結具の一部断面を含む側面図である。
図10】他の実施形態に係る揺動連結具の一部断面を含む正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る揺動連結具の製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下において、重力方向を下、重力方向と反対方向を上として説明することがある。
【0021】
[揺動連結具の基本構成]
図1に示すように、本実施形態に係る揺動連結具Bは、鉄等の金属で構成されており、シャックル5と、取付対象6に対する螺子止めが可能に構成されたボス部材7と、シャックル5をボス部材7に対して揺動自在に支持する揺動支持機構8と、シャックル5をボス部材7に対して回動自在に支持する回動支持機構9と、を備えている。
【0022】
ボス部材7は、ボルト孔7a付きフランジ状の下ボス7Aと、ボルト孔7b付き蓋状の上ボス7Bとを圧入した嵌合連結によって構成されており、下ボス7Aのボルト孔7a上端部にCリング逃げ溝10を形成してある。取付対象6に螺子止め自在な取付ボルト11は、両ボルト孔7a,7bを貫通して装備されると共に、そのボルト軸11aに外嵌装着されたCリング12が前述のCリング逃げ溝10に位置している。
【0023】
ボス部材7には、取付ボルト11の軸方向に沿う回動軸芯X周りで回動自在にリング状のトラニオン13を外挿してあり、トラニオン13に一体形成された一対の軸部14,14に、シャックル5の一対の端部5a,5a夫々に形成された連結用孔15,15(貫通孔の一例)を外嵌することにより、回動軸芯Xに直交する揺動軸芯Y周りでシャックル5を揺動自在な揺動支持機構8を構成してある。軸部14は、螺子部やスナップリング装着用の溝といった明確な凹凸が無く、円滑な外周面を有した状態に形成されている。
【0024】
回動支持機構9は、トラニオン13及びボス部材7によって構成されており、ボス部材7に対してトラニオン13を、即ちシャックル5を回動軸芯X周りで回動自在に支持してある。ボス部材7とトラニオン13とで支持本体19が構成されており、軸部14は、支持本体19に一体的に形成されているものである。
【0025】
U字状のシャックル5は、棒状のシャックル5を熱間(又は常温下)で曲げ加工することによって形成されるものであり、その曲げ加工時に連結用孔15を軸部14に外嵌させる工程も行われる。つまり、シャックル5は嵌め殺し的に軸部14,14に嵌合されていて、通常では抜け出ることはないが、シャックル5に相当な引張り荷重が作用する等によって、シャックル5が開き変形するおそれがある。そこで、軸部14に形成された螺子穴14aにビス16止めされたワッシャ17を設けて、シャックル5の端部5aの軸部14からの抜出しを阻止する抜出し防止手段sを構成してある。本実施形態におけるシャックル5の直径は、8mm,10mm,14mm,18mm,22mm,28mm及び32mmの7種類で構成されている。
【0026】
螺子穴14a及びその下穴は、それらの最奥部が軸部14の付け根端迄には達していないので、シャックル5からの荷重によるせん断力を受ける箇所である軸部14の最付け根部では、断面積が縮小されることが回避されており、この点からもせん断力アップに寄与している。
【0027】
[揺動連結具の製造方法]
図2に示すように、本実施形態に係る揺動連結具Bの製造方法は、当接工程と曲げ工程とプレス工程と嵌合工程とを含んでいる。当接工程では、受け部材20により棒状のシャックル5の中途部分を芯材2に当接させる。このとき、シャックル5のうち、少なくとも曲げ工程にて曲げられる曲げ領域(着色部分)は熱処理されている。曲げ工程では、曲げ治具3により芯材2の外周面に沿ってシャックル5をU字状に曲げる。プレス工程では、U字状のシャックル5の一方の連結用孔15をトラニオン13の一方の軸部14に外嵌した状態で、U字状のシャックル5の他方の連結用孔15をトラニオン13の他方の軸部14に向かってプレスする。嵌合工程では、シャックル5の連結用孔15をトラニオン13の軸部14に外嵌させる。
【0028】
図3には、当接工程を示す平面図が示されている。同図に示すように、揺動連結具Bの製造装置100は、芯材2と受け部材20と曲げ治具3と作業盤4とを備えている。製造装置100を構成する各部材は、鉄等の金属で構成されている。
【0029】
図3図4に示すように、芯材2は、半円盤状部材で構成されており、外周面には、シャックル5の外形に沿う断面半円状の凹部となる第二溝部21が形成されている。この芯材2は、第二溝部21が形成された円周領域2Aと、円周領域2Aを有する円盤状部材が切断された切欠領域2Bと、を含んでいる。本実施形態における円周領域2Aは、円周領域2Aの曲率中心Aを基準として、180度以上300度以下の範囲内に形成されており、好ましくは、180度以上270度以下の範囲内に形成されている。切欠領域2Bには、円周領域2Aの曲率中心Aを通る軸芯に垂直な平坦面23が形成されている。なお、シャックル5の直径が小径(例えば直径8mmや10mm)の場合は、大きな曲げ力を要せず、シャックル5の内側にかかる負荷が小さいため、第二溝部21を省略して、芯材2の外周面を円滑な曲面で構成しても良い。また、芯材2の外周面を円滑な曲面で構成すれば、芯材2はU字状のシャックル5の内側に配置されるため、小径のシャックル5の曲げ加工が効率的であり、仮にシャックル5の内側に傷が付いたとしても目立つことが無く、シャックル5の外形寸法が公差範囲内となり品質にも影響を及ぼすことが無い。
【0030】
円周領域2Aの外周面は、第二溝部21の両側方に、曲率中心Aからの半径が同一の一対の円弧面22,22が形成されており、第二溝部21の曲率とシャックル5の断面円の曲率とは略同一に構成されている。第二溝部21の最大深さは、シャックル5の断面円の半径よりも浅く形成されている。つまり、シャックル5が第二溝部21に挿入されたとき、シャックル5の円形断面の半円以上が視認できる。この構成により、シャックル5を円滑に曲げ加工することができる。
【0031】
図3に示すように、受け部材20は、シャックル5の中途部分に面接触する直方体形状で構成されている。この受け部材20は、作業盤4の突出部位4Aとシャックル5との間に挿入される寸法を有しており、この受け部材20により、シャックル5が芯材2に密着する状態が作り出される。また、受け部材20は、芯材2の円周領域2Aと切欠領域2Bの境界と対向する位置に一端が位置するように配置され、大半が切欠領域2Bと対向している。この構成により、シャックル5の中途部分を支点として、曲げ治具3による曲げ力が芯材2とシャックル5の当接部分に効果的に作用する。
【0032】
図3及び図5に示すように、曲げ治具3は、ブロック状部材で構成されており、背面には作業盤4の操作用部材4Cが当接している。この曲げ治具3は、直方体状の基台部31と、基台部31から延出した一対の延出部32,32とを有している(図5(b)の側面図参照)。この一対の延出部32,32の間には、シャックル5の外形に沿う断面半円状の凹部となる第一溝部33が形成されている(図5(a)の平面図及び図5(c)の断面図参照)。第二溝部21と同様に、第一溝部33の曲率とシャックル5の断面円の曲率とは略同一に構成されている。第一溝部33の最大深さは、シャックル5の断面円の半径よりも浅く形成されている。この構成により、シャックル5を円滑に曲げ加工することができる。基台部31のうち一対の延出部32,32が形成されていない部位は、シャックル5の連結用孔15,15が形成された端部5aが配置される端部配置領域31aとなっている(図3図5(a)の平面図及び図5(b)の側面図参照)。
【0033】
作業盤4は、平面視円盤状に構成されており、径方向内側に作業台40と、作業台40の径方向外側に円環状のガイドレール41と、曲げ治具3を操作する操作用部材4Cとを有している。作業台40には、上述した受け部材20が当接する突出部位4Aと、シャックル5の端部5aが支持される支持部材4Bとが、上側に突出形成されている。
【0034】
図3に示すように、当接工程では、芯材2の外周接線方向に沿って、受け部材20により棒状のシャックル5の中途部分を芯材2に当接させる。このとき、シャックル5のうち、少なくとも曲げ工程にて曲げられる曲げ領域は熱処理されている。受け部材20により棒状のシャックル5の中途部分が芯材2に当接しているとき、芯材2にシャックル5の外形に沿う第二溝部21を形成しているため、シャックル5に無理な応力が作用せず、シャックル5の中途部分の変形を防止できる。このとき、本実施形態の受け部材20は、棒状のシャックル5の中途部分に面接触しているため、シャックル5にかかる応力を分散させて、より緩和することができる。
【0035】
図6に示すように、曲げ工程では、作業盤4の支持部材4Bによりシャックル5の端部5aを支持すると共にシャックル5の中途部分を受け部材20で支持した状態で、曲げ治具3により芯材2の外周面に沿ってシャックル5をU字状に曲げる。この曲げ工程では、作業盤4のガイドレール41に案内駆動される回動部材42により、操作用部材4Cを介して曲げ治具3を円弧状に移動させる。その結果、シャックル5がU字状に曲がる。本実施形態では、芯材2にシャックル5の外形に沿う第二溝部21を形成し、曲げ治具3にシャックル5の外形に沿う第一溝部33を形成し、曲げ工程では、シャックル5を第一溝部33及び第二溝部21の間に挟持している。このため、シャックル5の中途部分を受け部材20で支持した状態で芯材2の外周面に沿ってシャックル5をU字状に曲げる際、シャックル5の外面に曲げ加工時の応力が均等にかかるため、シャックル5の外面の一部が変形したり、該外面に傷が付いたりすることを防止できる。
【0036】
また、曲げ工程では、受け部材20により棒状のシャックル5の中途部分を芯材2に当接させているため、シャックル5の曲がり姿勢が安定し、後の嵌合工程においてシャックル5の連結用孔15を軸部14に外嵌させるときの加工精度が高まる。しかも、芯材2にはシャックル5の外形に沿う第二溝部21が形成されているため、受け部材20により棒状のシャックル5の中途部分が芯材2に当接しているとき、シャックル5に無理な応力が作用せず、シャックル5の中途部分の変形を防止できる。
【0037】
図7に示すように、プレス工程では、U字状のシャックル5の一方の連結用孔15をトラニオン13の一方の軸部14に外挿した状態で、回動部材42により、操作用部材4Cを介して曲げ治具3を押し込んで、U字状のシャックル5の他方の連結用孔15をトラニオン13の他方の軸部14に向かってプレスする。このプレス工程においても曲げ工程と同様に、シャックル5を第一溝部33及び第二溝部21の間に挟持しているため、シャックル5の外面にプレス加工時の応力が均等にかかるため、シャックル5の外面の一部が変形したり、該外面に傷が付いたりすることを防止できる。
【0038】
図8に示すように、嵌合工程では、U字状に曲げられたシャックル5を芯材2から離間させて、シャックル5が曲げられて形成された円弧状部位のうち受け部材20側の端部5Aを第一溝部33に当接させた曲げ治具3により押圧し、シャックル5の連結用孔15をトラニオン13の軸部14に外嵌させる。このとき、初期位置に回動させた回動部材42により、操作用部材4Cを介して曲げ治具3を押し込んで、シャックル5の連結用孔15をトラニオン13の軸部14に外嵌させる。上述したプレス工程においてシャックル5の端部5aをプレスしたとしても、シャックル5の連結用孔15をトラニオン13の軸部14に精度よく外嵌させることが困難である。本嵌合工程のように、U字状に曲げられたシャックル5を芯材2から離間させて、シャックル5が曲げられて形成された円弧状部位のうち受け部材20側の端部5Aを第一溝部33に当接させた曲げ治具3により押圧すれば、シャックル5の外面に傷をつけずにシャックル5の両端部5a,5aを更に内側に近付けることが可能となり、シャックル5の連結用孔15をトラニオン13の軸部14に精度よく外嵌させることができる。その結果、揺動連結具Bの使用時、シャックル5に相当な引っ張り荷重が作用することに起因してシャックル5が開き変形するといった問題を解消することができる。
【0039】
本実施形態では、曲げ工程後の嵌合工程においてシャックル5の連結用孔15をトラニオン13の軸部14に外嵌させたとき、シャックル5が開き変形しないように、シャックル5の両端部5a,5aが内側に近付くように若干傾斜している。そこで、本実施形態の芯材2のように、第二溝部21が形成された円周領域2Aと切欠領域2Bとを含んでいれば、シャックル5が内側に傾斜している場合でも、この切欠領域2Bを設けることにより、例えば芯材2を90度回転させることで、シャックル5の引っ掛かりを抑えて、芯材2に密着した完成品を容易に取り出すことができる。このように、シャックル5とトラニオン13とを嵌合した後、熱処理を行う。この熱処理により、シャックル5の端部5aがトラニオン13の軸部14に対して若干開き変形し、揺動及び回動自在となる。その後、トラニオン13の軸部14に抜出し防止手段sを設けると共に、トラニオン13にボス部材7及び取付ボルト11を組付けて、揺動連結具Bが完成する(図1参照)。
【0040】
[その他の実施形態]
(1)上述した揺動連結具Bの製造方法は、図9図10に示す他の揺動連結具Bにも用いることができる。図9に示す揺動連結具Bは、取付ボルト11と支持本体19との分離を防止する分離防止機構1が設けられて構成してある。分離防止機構1は、取付ボルト11の外周部に周方向に沿って形成された嵌合凹部1Aと、取付ボルト11の径方向に沿って外周から取付ボルト11側に近接操作することによって、嵌合凹部1Aに嵌合して取付ボルト11と支持本体19との回動軸芯X方向での相対位置を規制する規制具1Bとを設けて構成してある。嵌合凹部1Aは、取付ボルト11の周方向に連続した周溝51で構成してある。規制具1Bは、トラニオン13に対して径方向に形成された雌ネジ孔mに螺合自在な抜止ボルト52と、下ボス7Aにおいて雌ネジ孔mに対応する位置に形成された貫通孔部nと周溝51に亘って介在自在な球体53とを備えて構成してある。球体53は、金属製で、取付ボルト径方向での一端部が下ボス7Aとトラニオン13との摺接面に位置すると共に、取付ボルト径方向での他端部が周溝51の内周面に位置する外径寸法に形成してある。
【0041】
従って、取付ボルト11にボス部材7とトラニオン13とを装着した状態で、雌ネジ孔mから貫通孔部nに球体53を挿入すると共に、雌ネジ孔mに抜止ボルト52を螺合させるだけで、球体53をボス部材7と取付ボルト11とに介在する状態に設置することができる。この球体53によって取付ボルト11から支持本体19が回動軸芯X方向に沿って外れるのを阻止することができる。更には、この球体53は、取付ボルト11とボス部材7とが回動軸芯X周りに相対回転する動きに対しては、周溝51に沿って追従するから回転の障害にはならない。また、この球体53は、ボス部材7とトラニオン13との回動軸芯X周りの相対回転をも阻害するものではない。
【0042】
図10に示す揺動連結具Bは、取付ボルト11が互いに径の異なる大径の第1雄ねじ部11Aと、小径の第2雄ねじ部11Bとを両端部に別々に形成した両ネジボルトから成っている。これら第1雄ねじ部11Aと第2雄ねじ部11Bとの間に、第1雄ねじ部11Aから第2雄ねじ部11Bにかけて連続的に径が変化するボルト軸部11Cを形成して、大径の第1雄ねじ部11Aを取付対象6に対する連結部に構成している。また、ボルト軸部11Cを嵌合させて係止すると共に小径の第2雄ねじ部11Bを貫通させるボルト孔11Dを支持本体19に設けている。このボルト孔11Dをボルト軸部11Cの外周面に対応して連続的に内径が変化する内面形状に形成し、ボルト孔11Dにボルト軸部11Cを嵌合させた状態でボルト孔11Dを貫通した第2雄ねじ部11Bにナット11Eを螺合させて取付ボルト11を抜け止め状態に支持本体19に一体連結してある。
【0043】
ボス部材7は、下側ほど拡径したラッパ状のボルト孔11D付きの下ボス7Aと、ボルト孔11D付き蓋状の上ボス7Bとを圧入した嵌合連結によって構成されている。取付対象6に第1雄ねじ部11Aで螺子止め自在な取付ボルト11の第2雄ねじ部11Bとボルト軸部11Cとを、両ボルト孔11Dを貫通して装備され、ナット11Eを第2雄ねじ部11Bに螺合させて取付ボルト11が支持本体19から抜けないようにしてある。尚、ナット11Eが第2雄ねじ部11Bから緩んで抜け出すのを防止するために、抜け止めピン11Fが第2雄ねじ部11Bでその径方向に沿って形成したピン孔に、挿脱自在に差し込んである。
【0044】
(2)上述した実施形態におけるシャックル5は、断面円形状に構成したが、断面多角形状に構成しても良い。この場合、第一溝部33及び第二溝部21もシャックル5の外形に沿う断面多角形状とすることが好ましい。
(3)上述した実施形態におけるボス部材7は、支持本体19を回動軸芯X周りに回動支持しやすくするために設けてあるが、ボス部材7を設けずに、トラニオン13に直接、取付ボルト11を挿通させるボルト孔を設けてあっても良い。
【0045】
(4)上述した実施形態における芯材2は、第二溝部21が形成された円周領域2Aと、円周領域2Aを有する円盤状部材が切断された切欠領域2Bと、を含んでいたが、全て円周領域2Aで構成しても良い。
(5)上述した実施形態における受け部材20は、棒状のシャックル5の中途部分に面接触させたが、点接触させる形態であっても良い。
(6)上述した実施形態におけるプレス工程を省略して、嵌合工程だけで、シャックル5の連結用孔15をトラニオン13の軸部14に外嵌させる構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、両端部に貫通孔を有するシャックルと、シャックルの貫通孔に内嵌される軸部を有するトラニオンとを備え、取付対象に対して螺子固定可能な揺動連結具に利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
2 :芯材
2A :円周領域
2B :切欠領域
3 :曲げ冶具
5 :シャックル
5A :受け部材側の端部
5a :端部(両端部)
6 :取付対象
13 :トラニオン
14 :軸部
15 :連結用孔(貫通孔)
19 :支持本体
20 :受け部材
21 :第二溝部
33 :第一溝部
B :揺動連結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10