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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240709BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20240709BHJP
   F25B 30/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/18 110
B01D53/18 130
B01D53/18 150
B01D53/18 160
F25B30/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020012253
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021115553
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】前田 基秀
(72)【発明者】
【氏名】岸本 啓
(72)【発明者】
【氏名】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】重久 卓夫
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 毅
(72)【発明者】
【氏名】則永 行庸
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187553(JP,A)
【文献】特開2018-176027(JP,A)
【文献】特開平10-015334(JP,A)
【文献】特開2007-245011(JP,A)
【文献】特開2019-098226(JP,A)
【文献】特開2017-039105(JP,A)
【文献】特開2018-202298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14 - 53/18
B01D 53/50 - 53/62
F25B 37/00
F25B 15/00
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから前記酸性化合物を分離するガス処理装置であって、
前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、
前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器とを備え、
前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも前記再生器は、少なくとも1個のタンクを含み、
前記タンクは、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる1または複数の界面面積増大部を含
前記1または複数の界面面積増大部の1つとして、前記処理液を撹拌する攪拌機が含まれる、
ガス処理装置。
【請求項2】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから前記酸性化合物を分離するガス処理装置であって、
前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、
前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器とを備え、
前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも前記再生器は、少なくとも1個のタンクを含み、
前記タンクは、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる1または複数の界面面積増大部を含み、
前記1または複数の界面面積増大部の1つとして、前記処理液内に気泡を送り込む気泡ノズルまれる
ス処理装置。
【請求項3】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから前記酸性化合物を分離するガス処理装置であって、
前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、
前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器とを備え、
前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも前記再生器は、少なくとも1個のタンクを含み、
前記タンクは、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる1または複数の界面面積増大部を含み、
前記1または複数の界面面積増大部の1つとして、前記処理液を前記タンク内に噴射させる噴射ノズルまれる
ス処理装置。
【請求項4】
前記噴射ノズルから噴射される前記処理液のスプレーパターンは、前記噴射の方向に対する交差断面で、中実状または環状で、かつ、その外形状が点状、線状、円状および多角形状のうちの何れかである、
請求項に記載のガス処理装置。
【請求項5】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから前記酸性化合物を分離するガス処理装置であって、
前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、
前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器とを備え、
前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも前記再生器は、少なくとも1個のタンクを含み、
前記タンクは、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる1または複数の界面面積増大部を含み、
前記1または複数の界面面積増大部の1つとして、前記処理液の液膜を形成する濡れ壁まれる
ス処理装置。
【請求項6】
水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから前記酸性化合物を分離するガス処理装置であって、
前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、
前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器とを備え、
前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも前記再生器は、少なくとも1個のタンクを含み、
前記タンクは、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる1または複数の界面面積増大部を含み、
前記1または複数の界面面積増大部の1つとして、前記タンク内の空間を複数に隔てる充填剤まれる
ス処理装置。
【請求項7】
前記吸収器と前記再生器との間で熱を移送するヒートポンプをさらに備える、
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載のガス処理装置。
【請求項8】
前記吸収器は、複数であり、
前記再生器は、複数であり、
前記ヒートポンプは、前記複数の吸収器と前記複数の再生器とを1対1で熱を移送させる複数のヒートポンプ、または、前記複数の吸収器から成る吸収器セットと前記複数の再生器から成る再生器セットとの間で熱を移送させるヒートポンプである、
請求項に記載のガス処理装置。
【請求項9】
前記ヒートポンプは、並流または向流によって前記加熱を行う、
請求項に記載のガス処理装置。
【請求項10】
前記再生器に対して前記加熱を行う、前記ヒートポンプとは別個の独立した熱源をさらに備える、
請求項に記載のガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の処理液を用いることによって被処理ガスから所定の物質を分離するガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理ガスから所定の物質を分離するガス処理装置およびガス処理方法が知られている。例えば、特許文献1には、化学吸収分離法を用いて二酸化炭素ガスを分離して回収する二酸化炭素ガス回収装置が開示されている。この特許文献1に開示された二酸化炭素ガス回収装置は、二酸化炭素ガスを含有する被分離ガスとリーン吸収液とを導入して接触させ、前記被分離ガス中の前記二酸化炭素ガスを吸収液に吸収させてリッチ吸収液を生成する吸収塔と、前記吸収塔から前記リッチ吸収液が供給されるとともに、前記リッチ吸収液を加熱して前記二酸化炭素ガスを分離させることにより前記リーン吸収液に再生する再生塔と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-212510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物質を分離する方法として、第1相部分と第2相部分とに液相で相分離(液相分離)する処理液を用いる方法がある(例えば特開2018-187553号公報参照)。この液相分離する処理液を用いる方法では、効率よく相互作用させる観点から、吸収側では処理液表面での気/液の界面における面積(接触面積)が広いほど好ましく、再生側では処理液表面および液相分離した処理液内での気/液/液の各界面における各面積(接触面積)が広いほど好ましい。前記処理液表面には、前記処理液の外表面だけで無く、例えば気泡等によって前記処理液中に生じる表面を含む。前記特許文献1に開示された装置に、この液相分離する処理液を用いる前記方法を適用しようとすると、前記特許文献1では、吸収塔や再生塔の塔が用いられているため、塔径に制約され、前記界面の面積(接触面積)を広げることが難しい。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、液相分離の処理液を用いる場合に、効率よく相互作用できるガス処理装置およびガス処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかるガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから前記酸性化合物を分離する装置であって、前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器とを備え、前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも前記再生器は、少なくとも1個のタンクを含み、前記タンクは、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる1または複数の界面面積増大部を含む。前記1または複数の界面面積増大部の1つとして、前記処理液を撹拌する攪拌機が含まれる。
【0007】
このようなガス処理装置は、前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも前記再生器が少なくとも1個のタンクを含む。前記タンクでは、塔径の制約を受けないので、上記ガス処理装置は、前記界面の面積(接触面積)を広げることが可能となり、効率よく相互作用できる。ここで、タンクとは、本書において、タンクの水平断面の形状が円形である場合、タンクの直径に対する高さの比が3.5未満を言い((タンク高さ)/(タンク直径)<3.5))、タンクの水平断面の形状が楕円形や多角形である場合、水平断面の面積が等しい円(等価円)が求められ、この求められた等価円の直径(換算直径)が前記タンク直径とされる((タンク高さ)/(換算直径)<3.5)。
また、前記タンクが、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる界面面積増大部を備えるので、効率よく相互作用できる。効率よく相互作用できるので、ガス処理装置のコンパクト化を図ることができる。界面の面積を増大させるので、処理液の性能の最大化を図ることができる。前記タンクが前記再生器に含まれるため、前記界面面積増大部により、液相分離した処理液内での液/液の各界面における接触を促進でき、再生側で効率よく相互作用できる。
さらに、攪拌機による撹拌によって、界面の面積を増大でき、効率よく相互作用できる。
【0008】
他の一態様では、上述のガス処理装置において、前記吸収器と前記再生器との間で熱を移送するヒートポンプをさらに備える。
【0009】
このようなガス処理装置は、ヒートポンプを備えるので、省エネルギーを図ることができ、再生のために外部から再生器に投入されるエネルギーを低減できる。
【0010】
他の一態様では、上述のガス処理装置において、前記吸収器は、複数であり、前記再生器は、複数であり、前記ヒートポンプは、前記複数の吸収器と前記複数の再生器とを1対1で熱を移送させる複数のヒートポンプ、または、前記複数の吸収器から成る吸収器セットと前記複数の再生器から成る再生器セットとの間で熱を移送させるヒートポンプである。
【0011】
このようなガス処理装置は、複数の吸収器および複数の再生器に対しヒートポンプを設けるので、複数の吸収器と複数の再生器との間で熱を有効に活用できる。
【0012】
他の一態様では、これら上述のガス処理装置において、前記ヒートポンプは、並流または向流によって前記加熱を行う。
【0013】
ヒートポンプでは、一般に、熱交換する相互間の温度差が少ないほど交換効率が良い(高い)。上記ガス処理装置は、ヒートポンプが配設される吸収器および再生器の各温度分布に応じて並流または向流が選ばれることにより、ヒートポンプにおける熱の回収効率を向上できる。
【0014】
他の一態様では、これら上述のガス処理装置において、前記再生器に対して前記加熱を行う、前記ヒートポンプとは別個の独立した熱源をさらに備える。
【0015】
このようなガス処理装置は、独立の熱源を備えるので、ヒートポンプの熱に加えて独立の熱源の熱を再生器に供給できる。特に、ヒートポンプの熱が再生に不足する場合に、その不足分を独立の熱源で補うことができる。
【0020】
本発明の他の一態様にかかるガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから前記酸性化合物を分離する装置であって、前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器とを備え、前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも前記再生器は、少なくとも1個のタンクを含み、前記タンクは、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる1または複数の界面面積増大部を含む。前記1または複数の界面面積増大部の1つとして、前記処理液内に気泡を送り込む気泡ノズルまれる
【0021】
このようなガス処理装置は、前記タンクが、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる界面面積増大部を備えるので、効率よく相互作用できる。効率よく相互作用できるので、ガス処理装置のコンパクト化を図ることができる。界面の面積を増大させるので、処理液の性能の最大化を図ることができる。前記タンクが前記再生器に含まれるため、前記界面面積増大部により、液相分離した処理液内での液/液の各界面における接触を促進でき、再生側で効率よく相互作用できる。また、気泡を送り込むことによって、界面の面積を増大でき、効率よく相互作用できる。
【0024】
本発明の他の一態様にかかるガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから前記酸性化合物を分離する装置であって、前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器とを備え、前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも前記再生器は、少なくとも1個のタンクを含み、前記タンクは、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる1または複数の界面面積増大部を含む。前記1または複数の界面面積増大部の1つとして、前記処理液を前記タンク内に噴射させる噴射ノズルまれる。好ましくは、上述のガス処理装置において、前記噴射ノズルから噴射される前記処理液のスプレーパターンは、前記噴射の方向に対する交差断面で、中実状または環状で、かつ、その外形状が点状、線状、円状および多角形状のうちの何れかである。ここで、円状には、真円だけでなく、楕円を含む。
【0025】
このようなガス処理装置は、前記タンクが、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる界面面積増大部を備えるので、効率よく相互作用できる。効率よく相互作用できるので、ガス処理装置のコンパクト化を図ることができる。界面の面積を増大させるので、処理液の性能の最大化を図ることができる。前記タンクが前記再生器に含まれるため、前記界面面積増大部により、液相分離した処理液内での液/液の各界面における接触を促進でき、再生側で効率よく相互作用できる。また、噴射ノズルで処理液を拡散することによって、界面の面積を増大でき、効率よく相互作用できる。
【0026】
本発明の他の一態様にかかるガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから前記酸性化合物を分離する装置であって、前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器とを備え、前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも前記再生器は、少なくとも1個のタンクを含み、前記タンクは、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる1または複数の界面面積増大部を含む。前記1または複数の界面面積増大部の1つとして、前記処理液の液膜を形成する濡れ壁まれる
【0027】
このようなガス処理装置は、前記タンクが、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる界面面積増大部を備えるので、効率よく相互作用できる。効率よく相互作用できるので、ガス処理装置のコンパクト化を図ることができる。界面の面積を増大させるので、処理液の性能の最大化を図ることができる。前記タンクが前記再生器に含まれるため、前記界面面積増大部により、液相分離した処理液内での液/液の各界面における接触を促進でき、再生側で効率よく相互作用できる。また、濡れ壁で液膜を形成することによって、界面の面積を増大でき、効率よく相互作用できる。
【0028】
本発明の他の一態様にかかるガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから前記酸性化合物を分離する装置であって、前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器とを備え、前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも前記再生器は、少なくとも1個のタンクを含み、前記タンクは、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる1または複数の界面面積増大部を含む。前記1または複数の界面面積増大部の1つとして、前記タンク内の空間を複数に隔てる充填剤まれる
【0029】
このようなガス処理装置は、前記タンクが、液相分離した処理液の液相部分同士の界面接触を促進させる界面面積増大部を備えるので、効率よく相互作用できる。効率よく相互作用できるので、ガス処理装置のコンパクト化を図ることができる。界面の面積を増大させるので、処理液の性能の最大化を図ることができる。前記タンクが前記再生器に含まれるため、前記界面面積増大部により、液相分離した処理液内での液/液の各界面における接触を促進でき、再生側で効率よく相互作用できる。また、充填剤でタンク内の空間を複数に隔てることによって、界面の面積を増大でき、効率よく相互作用できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかるガス処理装置およびガス処理方法は、液相分離の処理液を用いる場合に、効率よく相互作用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1実施形態におけるガス処理装置の構成を概略的に示す図である。
図2】第2実施形態におけるガス処理装置の構成を概略的に示す図である。
図3】第3実施形態におけるガス処理装置の構成を概略的に示す図である。
図4】前記ガス処理装置のタンクに備えられる第1態様の界面面積増大部を説明するための図である。
図5】前記ガス処理装置のタンクに備えられる第2および第3態様の各界面面積増大部を説明するための図である。
図6】前記ガス処理装置のタンクに備えられる第4態様の界面面積増大部を説明するための図である。
図7】前記第4態様の界面面積増大部におけるスプレーパターンを説明するための図である。
図8】前記ガス処理装置のタンクに備えられる第5および第6態様の各界面面積増大部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0035】
実施形態におけるガス処理装置は、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含む被処理ガスと、前記酸性化合物の吸収により相分離する処理液とを用い、前記被処理ガスから前記酸性化合物を分離する装置である。このガス処理装置は、前記処理液に前記被処理ガスを接触させる吸収器と、前記被処理ガスと接触した前記処理液を加熱して酸性化合物を分離させる再生器とを備える。そして、このガス処理装置では、前記吸収器および前記再生器のうちの少なくとも何れかは、少なくとも1個のタンクを含む。以下、このようなガス処理装置を第1ないし第3実施形態を用いてより具体的に説明する。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態におけるガス処理装置の構成を概略的に示す図である。図1Aは、吸収器でヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが向流であって再生器でヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが並流であるヒートポンプが用いられる場合を示し、図1Bは、これとは逆に、吸収器でヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが並流であって再生器でヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが向流であるヒートポンプが用いられる場合を示す。
【0037】
第1実施形態におけるガス処理装置S1a、S1bは、1個の吸収器10と、1個の再生器21を備え、この1個の再生器21が1個のタンクを含む。このような第1実施形態におけるガス処理装置S1a、S1bにおいて、まず、図1Aに示すヒートポンプHPaを用いたガス処理装置S1aについて説明し、続いて、図1Bに示すヒートポンプHPbを用いたガス処理装置S1bについて説明する。
【0038】
このガス処理装置S1aは、例えば、図1Aに示すように、吸収器10と、再生器21と、第1流路31と、第2流路32と、並流のヒートポンプHPaとを備える。
【0039】
第1流路31は、吸収器10から処理液を抜き出して再生器21に導入させる部材であり、第2流路32は、再生器21から処理液を抜き出して吸収器10に還流させる部材である。第1および第2流路31、32によって、処理液を吸収器10と再生器21との間で循環させる循環路が形成される。本実施形態では、吸収器10から再生器21へ向かう処理液と、再生器21から吸収器10へ向かう処理液との間で熱を交換する熱交換器44が、第1流路上かつ第2流路上に備えられる。熱交換器44は、例えばプレート熱交換器またはマイクロチャネル熱交換器を備えて構成される。これにより、エネルギー効率を向上することができる。なお、この熱交換器44は、省略されても構わない。
【0040】
吸収器10は、被処理ガスと処理液とを接触させる装置であり、第1実施形態では、被処理ガスと処理液とを収容する塔の容器を備えて構成される。前記被処理ガスは、水への溶解で酸を生じる酸性化合物を含むガスであり、例えば燃焼排ガス等である。前記処理液は、酸性化合物の吸収により液相で相分離する液であり、所定の条件に従い酸性化合物を吸収、分離する。吸収器10は、被処理ガスと処理液とを接触させることによって、被処理ガス中の酸性化合物を処理液に吸収させ、酸性化合物が除去されたガス(処理ガス)を排出し、酸性化合物を吸収した処理液を貯留する。このような吸収器10は、被処理ガスと処理液とを連続的に接触させられる装置であれば構わず、例えば、被処理ガスの流路に処理液を噴霧するもの、被処理ガスの流路に配置される充填剤を伝って処理液を流下させるもの、被処理ガスおよび処理液をそれぞれ多数の微細な流路に導入して被処理ガスの微細流路と処理液の微細流路とをそれぞれ合流させるもの等を用いることができる。なお、吸収器10における、処理液への酸性化合物の吸収では、発熱反応が生じる。酸性化合物が二酸化炭素である場合、二酸化炭素の吸収量1t当たりの発熱量は、約1.8GJである。吸収器10で発生する反応熱は、被処理ガスおよび処理液の温度を上昇させる。
【0041】
吸収器10には、被処理ガスを供給するガス供給路12と、処理後の処理ガスを排出するガス排出路13と、処理液を再生器21に送るための第1流路31と、再生器21から処理液を吸収器10に戻すための第2流路32と、が接続される。ガス供給路12は、吸収器10の下部に接続され、ガス排出路13は、吸収器10の上端部に接続される。第1流路31は、吸収器10の下端部または下端部近傍に接続される。すなわち、第1流路31は、吸収器10内に溜まった処理液を抜き出すことができる位置に接続される。第1流路31には、所定の圧力で処理液を送り出すポンプ42と、処理液の流量を調節する制御弁43とが配設される。図1Aに示す例では、吸収器10と熱交換器44との間に、ポンプ42および制御弁43が配設されている。ポンプ42は、例えば、羽根状の回転子を有するポンプ(遠心ポンプ、軸流ポンプ等)、ギアポンプ、スクリューポンプ、往復動ポンプ等である。第2流路32は、吸収器10の上部に接続される。すなわち、第2流路32は、再生器21から還流された処理液を上から流下できる位置に接続される。第2流路32には、処理液を冷却する冷却器41が配設される。図1Aに示す例では、吸収器10と熱交換器44との間に、冷却器41が配設されている。
【0042】
ここで、下端部とは、容器の底であり、上端部とは、容器の天井であり、下端部近傍とは、容器における底近傍の壁であり、上端部近傍とは、容器における天井近傍の壁である。
【0043】
再生器21は、吸収器10で被処理ガスと接触した処理液を加熱して酸性化合物を分離させる装置であり、第1実施形態では、処理液と酸性化合物とを収容するタンクの容器を備えて構成される。タンクとは、本書において、タンクの水平断面の形状が円形である場合、タンクの直径に対する高さの比が3.5未満を言い((タンク高さ)/(タンク直径)<3.5))、タンクの水平断面の形状が楕円形や多角形である場合、水平断面の面積が等しい円(等価円)が求められ、この求められた等価円の直径(換算直径)が前記タンク直径とされる((タンク高さ)/(換算直径)<3.5)。以下も同様である。この定義に従い、一例では、直径1mであって高さ3mの中空な円柱形状の容器は、本書でのタンクに該当する一方、直径1mであって高さ4mの中空な円柱形状の容器は、本書でのタンクに該当せず、塔に該当する。タンクは、例えば、水平断面の形状が円形や楕円形や多角形等である中空な箱体であり、一例では、有底有蓋の中空な円柱形状の容器や、有底有蓋の中空な直方体形状の容器等である。再生器21は、吸収器10からの処理液が貯留され、この貯留された処理液を加熱することによって、酸性化合物を脱離させる。再生器21における、処理液からの酸性化合物の脱離では、吸熱反応が生じる。再生器21は、処理液を加熱すると、酸性化合物が脱離するだけでなく、処理液中の水が蒸発する。
【0044】
再生器21には、第1流路31と、第2流路32とが接続される。第1流路31は、再生器21の上部に接続されており、吸収器10から導出された処理液を再生器21内に導入させる。第2流路32は、再生器21の下端部または下端部近傍に接続されており、再生器21内に貯留された処理液を導出させる。第2流路32には、所定の圧力で処理液を送り出すポンプ46と、処理液の流量を調節する制御弁45とが配設される。図1Aに示す例では、再生器21と熱交換器44との間に、ポンプ46および制御弁45が配設されている。
【0045】
再生器21には、供給部50と熱源57とが設けられている。
【0046】
供給部50は、再生器21内で得られた酸性化合物を供給先に供給する装置である。供給部50は、例えば、第1供給路51と、凝縮器(コンデンサ)52と、収容容器53と、第2供給路54と、第3供給路55とを備える。第1供給路51は、その一方が再生器21の上端部に接続され、その他方が収容容器53の上部に接続され、再生器21で処理液から蒸発した酸性化合物のガスと水蒸気との混合気体を再生器21から収容容器53へ送る。第1供給路51には、凝縮器52が設けられ、凝縮器52は、前記混合気体を冷却することによって水蒸気を凝縮し、前記混合気体から水蒸気を水として分離する。凝縮器52としては、川水等の安価な冷却水を用いた熱交換器を用いることができる。収容容器53は、酸性化合物のガスと水とを収容する。第2供給路54は、収容容器53の上端部に接続され、酸性化合物のガスを前記供給先へ送る。第3供給路55は、その一方が収容容器53の下端部に接続され、その他方が再生器21の上部に接続され、収容容器55に貯留された水を再生器21へ戻す。
【0047】
熱源57は、再生器21に対して加熱を行う装置であり、ヒートポンプHPaとは別個の独立した装置である。熱源57は、再生器21内の処理液を加熱できれば、様々な形態を用いることができる。例えば、熱源57は、再生器21の下部に接続され、処理液を再生器21から導出して再び前記再生器21内に導入させる加熱循環路と、前記加熱循環路に設けられた加熱器とを備えて構成される。前記加熱器は、例えば、電気、蒸気、バーナー等で加熱する装置である。あるいは、例えば、熱源57は、再生器21の内部に設けられ、処理液を直接的に加熱する加熱器を備えて構成される。
【0048】
ヒートポンプHPaは、吸収器10と再生器21との間で熱を移送する装置である。図1Aに示す例では、ヒートポンプHPaは、吸収器10ではヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが向流であり、再生器21ではヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが並流である。そして、このヒートポンプHPaは、再生器21に導入される、吸収器10で被処理ガスと接触した処理液に対し冷媒を並流させて前記処理液の加熱を行う。並流のヒートポンプは、吸収液の流れを基準に、熱交換を行う2流体が同方向に流れる装置であり、したがって、ヒートポンプHPaにおける再生器21では、熱交換の際に前記処理液と冷媒とが基本的に同方向に流れる。このようなヒートポンプHPaは、例えば、蒸発器60と、往路流路61と、圧縮器62と、凝縮器63と、復路流路64と、膨張器65とを備える。往路流路61は、その一方が吸収器10の上部に接続され、吸収器10内に配設された蒸発器60の他方と接続され、その他方が再生器21の上部に接続され、再生器21内に配設された凝縮器63の一方と接続される。復路流路64は、その一方が再生器21の下部に接続され、再生器21内に配設された凝縮器63の他方と接続され、その他方が吸収器10の下部に接続され、吸収器10内に配設された蒸発器60の一方と接続される。したがって、蒸発器60、往路流路61、凝縮器63および復路流路64は、この順で順次に接続され、復路流路64が蒸発器60に接続されることで、閉ループ状の循環路が形成され、この循環路内の冷媒が封入される。圧縮器62は、往路流路61に設けられ、膨張器65は、復路流路64に設けられる。蒸発器60は、例えば1または複数の伝熱管を備えて構成され、吸収器10内に配置される。吸収器10内では、上述のように発熱反応が生じている。蒸発器60内を流れる液状の冷媒は、この熱によって加熱されて蒸発する。ガス状の冷媒は、圧縮器62よって圧縮されて往路流路61を介して凝縮器63内に流入する。凝縮器63は、再生器21に導入される、吸収器10で被処理ガスと接触した処理液に対し冷媒を並流させる例えば1または複数の伝熱管を備えて構成され、再生器21内に配置される。再生器21内では、上述のように吸熱反応が生じている。凝縮器63内を流れるガス状の冷媒は、この吸熱反応により凝縮する。この凝縮した液状の冷媒は、膨張器65によって膨張して復路流路64を介して蒸発器60に戻る。このように、冷媒の循環によって、吸収器10の反応熱が再生器21へ熱輸送される。
【0049】
ここで、熱交換の伝熱速度は、伝熱面積に依存する。第1実施形態では、吸収器10は、塔の容器を備えて構成されるので、塔の吸収器10内に配設される伝熱管は、塔径によって制約され、したがって、伝熱面積も塔径によって制約される。一方、再生器21は、タンクの容器を備えて構成されるので、塔径による伝熱面積の制約から解放され、再生器21の高さを高くすることなく幅および奥行きの少なくとも一方を延ばすことで、十分な伝熱面積を確保し易くなる。この結果、ヒートポンプの熱交換量が向上できる。
【0050】
次に、ヒートポンプHPbを用いたガス処理装置S1bについて説明する。このガス処理装置S1bは、図1Bに示すように、図1Aに示すガス処理装置S1aにおいて、ヒートポンプHPaに代え、ヒートポンプHPbを用いる点を除き、残余の構成が図1Aに示すガス処理装置S1aと同様である。以下、相違点のヒートポンプHPbのみを説明し、残余の構成の説明を省略する。
【0051】
ヒートポンプHPbは、吸収器10と再生器21との間で熱を移送する装置である。図1Bに示す例では、ヒートポンプHPbは、吸収器10ではヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが並流であり、再生器21ではヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが向流である。そして、このヒートポンプHPbは、再生器21に導入される、吸収器10で被処理ガスと接触した処理液に対し冷媒を向流させて前記処理液の加熱を行う。向流のヒートポンプは、吸収液の流れを基準に、熱交換を行う2流体が互いに向き合う方向に流れる装置であり、したがって、ヒートポンプHPbにおける再生器21では、熱交換の際に前記処理液と冷媒とが基本的に対向方向に流れる。このようなヒートポンプHPbは、例えば、蒸発器66と、復路流路67と、膨張器68と、凝縮器69と、往路流路70と、圧縮器71とを備える。往路流路70は、その一方が吸収器10の下部に接続され、吸収器10内に配設された蒸発器66の他方と接続され、その他方が再生器21の下部に接続され、再生器21内に配設された凝縮器69の一方と接続される。復路流路67は、その一方が再生器21の上部に接続され、再生器21内に配設された凝縮器69の他方と接続され、その他方が吸収器10の上部に接続され、吸収器10内に配設された蒸発器66の一方と接続される。したがって、蒸発器66、往路流路70、凝縮器69および復路流路67は、この順で順次に接続され、復路流路67が蒸発器66に接続されることで、閉ループ状の循環路が形成され、この循環路内の冷媒が封入される。圧縮器71は、往路流路70に設けられ、膨張器68は、復路流路70に設けられる。蒸発器66は、例えば1または複数の伝熱管を備えて構成され、吸収器10内に配置される。吸収器10内では、上述のように発熱反応が生じている。蒸発器66内を流れる液状の冷媒は、この熱によって加熱されて蒸発する。ガス状の冷媒は、圧縮器71よって圧縮されて往路流路67を介して凝縮器69内に流入する。凝縮器69は、再生器21に導入される、吸収器10で被処理ガスと接触した処理液に対し冷媒を向流させる例えば1または複数の伝熱管を備えて構成され、再生器21内に配置される。再生器21内では、上述のように吸熱反応が生じている。凝縮器69内を流れるガス状の冷媒は、この吸熱反応により凝縮する。この凝縮した液状の冷媒は、膨張器68によって膨張して復路流路67を介して蒸発器66に戻る。このように、冷媒の循環によって、吸収器10の反応熱が再生器21へ熱輸送される。
【0052】
次に、これらガス処理装置S1a、S1bにおける酸性酸化物および処理液について、説明する。
【0053】
酸性化合物は、水溶液が酸性となるものであれば特に限定されない。例えば塩化水素、二酸化炭素、二酸化硫黄、二硫化炭素等が挙げられる。
【0054】
処理液(吸収剤)は、酸性化合物を可逆的に吸収脱離できる吸収剤である。処理液は、例えば、水、アミン化合物および有機溶剤を含むアルカリ性の吸収剤である。アミン化合物は、30wt%、有機溶剤は、60wt%、水は、10wt%とすることが望ましい。
【0055】
アミン化合物は、例えば2-アミノエタノール(MEA:溶解度パラメータ=14.3(cal/cm1/2、2-(2-アミノエトキシ)エタノール(AEE:溶解度パラメータ=12.7(cal/cm1/2 )等の1級アミン、例えば2(メチルアミノ)エタノール(MAE)、2-(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2-(ブチルアミノ)エタノール(BAE)等の2級アミン、例えばトリエタノールアミン(TEA)、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル等の3級アミン等が挙げられる。
【0056】
有機溶剤は、例えば、1-ブタノール(溶解度パラメータ=11.3(cal/cm1/2)、1-ペンタノール(溶解度パラメータ=11.0(cal/cm1/2)、オクタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDEE)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)等が挙げられ、複数種を混合して用いられても構わない。
【0057】
アミン化合物および有機溶剤のそれぞれの溶解度パラメータが所定の範囲に収まっていることが好ましい。溶解度パラメータは、以下の式1で示される。
式1;δ=((△H-RT)/V)1/2
ここで、ΔHは、モル蒸発潜熱であり、Rは、ガス定数であり、Tは、絶対温度であり、Vは、モル体積である
【0058】
表1に示すように、水、アミン化合物および有機溶剤を含む吸収剤において、アミン化
合物の溶解度パラメータから有機溶剤の溶解度パラメータを減じた値が1.1(cal/cm3)1/2以上4.2(cal/cm3)1/2以下となるように、アミン化合物および有機溶剤の組合せを選択することによって、酸性化合物の吸収により酸性化合物の含有率が高い相と酸性化合物の含有率が低い相とに2相分離される。溶解度パラメータの差が前記下限値に満たない場合、処理液が酸性化合物を吸収しても2相に分離しないおそれがある。一方、溶解度パラメータの差が前記上限値を超える場合、処理液が酸性化合物を吸収する前から2相に分離し、処理液を酸性化合物を含む被処理ガスに接触させる工程において、処理液と被処理ガスとの接触状態が不均一となり、吸収効率が低下するおそれがある。なお、表1において、「良好」とは、二酸化炭素の吸収前は単一液相であり、二酸化炭素の吸収により2液相に分離したことを意味する。「混和せず」とは、二酸化炭素の吸収前から2液相状態で単一液相を形成しなかったことを意味する。「分離せず」とは、二酸化炭素の吸収後でも単一液相であったことを意味する。
【0059】
【表1】
【0060】
このような第1実施形態におけるガス処理装置S1a、S1bでは、まず、吸収器10において、被処理ガスと処理液とが接触される(吸収工程)。より具体的には、吸収器10には、ガス供給路12を通して少なくとも二酸化炭素を含むプロセスガス等の被処理ガスが供給される。吸収器10には、第2流路32を通して吸収液が導入される。吸収液は、吸収器10内を流下し、被処理ガスに含まれる二酸化炭素と接触して該二酸化炭素を吸収する。吸収器10内には、二酸化炭素を吸収した処理液が貯留される。二酸化炭素と接触した処理液は、二酸化炭素の含有率が高い第1相部分と二酸化炭素分離の含有率が低い第2相部分とに相分離する。この二酸化炭素と接触した処理液は、吸収器10から第1流路31に導出され、ポンプ42で圧力調整され、制御弁43で流量が調整され、再生器21に導入される。前記吸収により、発熱反応が生じ、蒸発器60、66内を流れる液状の冷媒は、この熱によって加熱されて蒸発する。ガス状の冷媒は、圧縮器62、71よって圧縮されて往路流路61、70を介して凝縮器63、69内に流入する。
【0061】
次に、再生器21において、処理液を加熱することにより、処理液から二酸化炭素が分離される(再生工程)。より具体的には、再生器21内では、処理液が流下しながら加熱され、処理液から二酸化炭素が分離される。処理液が加熱されると処理液から蒸発した水蒸気が得られることがある。処理液から分離された二酸化炭素および水蒸気は、供給部50を流れる。供給部50において、水蒸気は、凝縮器52で凝縮し、収容容器53および第3供給路55を介して再生器21に戻される。前記分離では、吸熱反応が生じ、凝縮器63、69内を流れるガス状の冷媒は、この吸熱反応により凝縮する。この凝縮した液状の冷媒は、膨張器65、68によって減圧して復路流路64、67を介して蒸発器60、66に戻る。
【0062】
以上説明したように、第1実施形態におけるガス処理装置S1a、S1bは、吸収器10および再生器21のうちの少なくとも何れかが少なくとも1個のタンクを含む。上述の例では、再生器21が1個のタンクを含む。前記タンクでは、塔径の制約を受けないので、上記ガス処理装置S1a、S1bは、前記界面の面積(接触面積)を広げることが可能となり、効率よく相互作用できる。
【0063】
上記ガス処理装置S1a、S1bは、ヒートポンプHPa、HPbを備えるので、省エネルギーを図ることができ、再生のために外部から再生器21に投入されるエネルギーを低減できる。
【0064】
ヒートポンプでは、一般に、熱交換する相互間の温度差が少ないほど交換効率がよい(高い)。上記ガス処理装置S1a、S1bは、ヒートポンプが配設される吸収器10および再生器21の各温度分布に応じて並流または向流が選ばれることにより、ヒートポンプにおける熱の回収効率を向上できる。
【0065】
上記ガス処理装置S1a、S1bは、独立の熱源57を備えるので、ヒートポンプHPa、HPbの熱に加えて独立の熱源57の熱を再生器21に供給できる。特に、ヒートポンプHPa、HPbの熱が再生に不足する場合に、その不足分を独立の熱源57で補うことができる。
【0066】
なお、上述の第1実施形態におけるガス処理装置S1a、S1bは、塔を含む吸収器10と、タンクを含む再生器21とを備えたが、タンクを含む吸収器と、塔を含む再生器とを備えて構成されても構わない。
【0067】
次に、別の実施形態について説明する。
【0068】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態におけるガス処理装置の構成を概略的に示す図である。図2Aは、吸収器で吸収液の流れに対して向流(すなわち、ヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが向流)であって再生器で吸収液の流れに対して並流(すなわち、ヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが並流)であるヒートポンプが用いられる場合を示し、図2Bは、これとは逆に、吸収器でヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが並流あって再生器でヒートポンプ内の冷媒と吸収液との流れが向流であるヒートポンプが用いられる場合を示す。
【0069】
第1実施形態におけるガス処理装置S1a、S1bは、タンクを含む再生器21を備える一方、塔を含む吸収器10を備えたが、第2実施形態におけるガス処理装置S2a、S2bは、タンクを含む再生器21を備えるとともに、タンクを含む吸収器11を備える。すなわち、第2実施形態におけるガス処理装置S2a、S2bは、1個の吸収器11と、1個の再生器21とを備え、この1個の吸収器11が1個のタンクを含み、この1個の再生器21が1個のタンクを含む。そして、第2実施形態におけるガス処理装置S2aは、ヒートポンプHPaを備え、第2実施形態におけるガス処理装置S2bは、ヒートポンプHPbを備える。
【0070】
これら第2実施形態におけるガス処理装置S2a、S2bは、それぞれ、図2Aおよび図2Bに示すように、図1Aおよび図1Bに示すガス処理装置S1a、S1bにおいて、塔を含む吸収器10に代え、タンクを含む吸収器11を用いる点を除き、残余の構成が図1Aおよび図1Bに示すガス処理装置S1a、S1bと同様である。以下、相違点の吸収器11のみを説明し、残余の構成の説明を省略する。
【0071】
吸収器11は、第1実施形態と同様に、被処理ガスと処理液とを接触させる装置であり、第2実施形態では、被処理ガスと処理液とを収容するタンクの容器を備えて構成される。タンクは、再生器21のタンクと同様に、例えば、水平断面の形状が、円形、楕円形または多角形等である中空な箱体であり、一例では、中空な直方体形状の容器である。吸収器11は、被処理ガスと処理液とを接触させることによって、被処理ガス中の酸性化合物を処理液に吸収させ、酸性化合物が除去された処理ガスを排出し、酸性化合物を吸収した処理液を貯留する。このような吸収器11も、第1実施形態の吸収器10と同様に、被処理ガスと処理液とを連続的に接触させられる装置であれば構わない。吸収器11で発生する反応熱は、被処理ガスおよび処理液の温度を上昇させる。
【0072】
吸収器11には、ガス供給路12、ガス排出路13、第1および第2流路31、32が接続される。ガス供給路12は、吸収器11の下部に接続され、ガス排出路13は、吸収器11の上端部に接続される。第1流路31は、吸収器11の下端部または下端部近傍に接続される。すなわち、第1流路31は、吸収器11に溜まった処理液を抜き出すことができる位置に接続される。第2流路32は、吸収器11の上部に接続される。すなわち、第2流路32は、再生器21から還流された処理液を上から流下できる位置に接続される。
【0073】
このような第2実施形態におけるガス処理装置S2a、S2bは、第1実施形態におけるガス処理装置S1a、S1bと同様の作用効果を奏する。
【0074】
次に、別の実施形態について説明する。
【0075】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態におけるガス処理装置の構成を概略的に示す図である。図3Aは、複数の吸収器と複数の再生器との間で、1対1で熱を移送する複数のヒートポンプが用いられる場合を示し、図3Bは、複数の吸収器および複数の再生器それぞれを1群に纏めて熱を移送させるヒートポンプが用いられる場合を示す。図3Aおよび図3Bは、吸収器で吸収液の流れに対して向流であって再生器で吸収液の流れに対して並流であるヒートポンプが用いられる場合を示す。
【0076】
第1および第2実施形態におけるガス処理装置S1a、S1b;S2a、S2bは、1個の吸収器10、11と、1個の再生器21と、1個のヒートポンプHPa、HPbを備えて構成されたが、第3実施形態におけるガス処理装置S3a、S3cは、複数の吸収器10、11と、複数の再生器21を備えて構成される。そして、ガス処理装置S3aは、前記複数の吸収器10、11と前記複数の再生器21とを1対1で熱を移送させる複数のヒートポンプを備えて構成される。一方、ガス処理装置S3cは、前記複数の吸収器10、11から成る吸収器セットと前記複数の再生器21から成る再生器セットとの間で熱を移送させるヒートポンプを備えて構成される。このような第3実施形態におけるガス処理装置S3a、S3cにおいて、まず、1対1でのヒートポンプを用いたガス処理装置S3aについて説明し、続いて、セットでのヒートポンプを用いたガス処理装置S3cについて説明する。以下の説明では、2個の吸収器11(11-1、11-2)が2段で構成され、2個の再生器21(21-1、21-2)が2段で構成される例について説明するが、これに限定されるものではなく、第3実施形態におけるガス処理装置S3a、S3cは、複数の吸収器11が3個以上(例えば3個または4個等)であって、複数の再生器21が3個以上(例えば3個または4個等)であって、3段以上(例えば3段または4段等)で構成されても構わない。
【0077】
この第3実施形態におけるガス処理装置S3aは、図3Aに示すように、図2Aに示すガス処理装置S2aにおいて、1個の吸収器11に代え、2個の第1および第2吸収器11-1、11-2を用いる点、1個の再生器21に代え、2個の第1および第2再生器21-1、21-2を用いる点、および、1個のヒートポンプHPaに代え、2個の第1および第2ヒートポンプHPa-1、HPa-2を用いる点を除き、残余の構成が図2Aに示すガス処理装置S2aと同様である。以下、これら上述の相違点のみを説明し、残余の構成の説明を省略する。
【0078】
これら2個の第1および第2吸収器11-1、11-2は、それぞれ、第2実施形態と同様に、被処理ガスと処理液とを接触させる装置であり、被処理ガスと処理液とを収容するタンクの容器を備えて構成される。そして、第3実施形態では、これら2個の第1および第2吸収器11-1、11-2は、2段で構成され、このため、ガス処理装置S3aは、これら2個の第1および第2吸収器11-1、11-2の間を連通(連絡)する第1および第2吸収側連通路(吸収側連絡路)14、15を備える。
【0079】
第1吸収器11-1には、ガス排出路13と、第2流路32と、第1および第2吸収側連通路14、15とが接続される。ガス排出路13は、第1吸収器11-1の上端部に接続され、第2流路32は、第1吸収器11-1の上部に接続される。第1吸収側連通路14は、第1吸収器11-1の下端部に接続され、第2吸収側連通路15は、第1吸収器11-1の下部に接続される。
【0080】
第2吸収器11-2には、ガス供給路12と、第1流路31と、第1および第2吸収側連通路14、15とが接続される。ガス供給路12は、第2吸収器11-2の下部に接続され、第1流路31は、第2吸収器11-2の下端部または下端部近傍に接続される。第1吸収側連通路14は、第2吸収器11-2の上部に接続され、第2吸収側連通路15は、上流側の吸収器11-2の上端部に接続される。
【0081】
2個の第1および第2再生器21-1、21-2は、それぞれ、第2実施形態と同様に、吸収側で被処理ガスと接触した処理液を加熱して酸性化合物を分離させる装置であり、処理液と酸性化合物とを収容するタンクの容器を備えて構成される。そして、第3実施形態では、これら2個の第1および第2再生器21-1、21-2は、2段で構成され、このため、ガス処理装置S3aは、これら2個の再生器21-1、21-2の間を連通(連絡)する第1および第2再生側連通路(再生側連絡路)22、23を備える。
【0082】
第1再生器21-1には、第1流路31と、第1および第2再生側連通路22、23とが接続され、供給部50と、熱源57と同様な熱源57-1とが、付設される。第1流路31は、第1再生器21-1の上部に接続される。第1再生側連通路22は、第1再生器21-1の下部に接続され、第2再生側連通路23は、第1再生器21-1の下端部に接続される。供給部50の第1供給路51は、第1再生器21-1の上端部に接続され、供給部50の第3供給路55は、第1再生器21-1の上部に接続される。
【0083】
第2再生器21-2には、第2流路32と、第1および第2再生側連通路22、23とが接続され、熱源57と同様な熱源57-2が付設される。第2流路32は、第2再生器21-2の下端部または下端部近傍に接続される。第1再生側連通路22は、第2再生器21-1の上端部に接続され、第2再生側連通路23は、第2再生器21-2の上部に接続される。
【0084】
ここで、この図3に示す例では、処理液中の酸性化合物をより効率的に分離するために、第1流路31は、より詳しくは、熱交換器44の下流側で、2個に分岐して第1A流路31-1および第1B流路31-2を備え、第1A流路31-1が第1再生器21-1の上部に接続され、第1B流路31-2が第2再生器21-2の上部に接続されている。流量を調整するために(流量が0の場合を含む)、第1A流路31-1には、制御弁47-1が設けられ、第1B流路31-2には、制御弁47-2が設けられている。なお、第1流路31は、分岐せずに、第1再生器21-1のみに接続されても構わない。
【0085】
第2吸収器11-2は、ガス供給路12から供給された被処理ガスと、第2再生器21-2から第2流路32、第1吸収器11-1および第1吸収側連通路14を介して導入される処理液(吸収側での中段液)とを接触させることによって、被処理ガス中の酸性化合物を処理液に吸収させて処理する。この処理後のガス(吸収側での中段ガス)は、第2吸収側連通路15を介して第1吸収器11-1に供給される。前記処理後の処理液は、第2吸収器11-2に貯留され、第1流路31で抜き出され、第1流路31で再生側へ導出される。より詳しくは、図3に示す例では、前記処理後の処理液は、第1A流路31-1を介して第1再生器21-1に供給され、第1B流路31-2を介して第2再生器21-2に供給される。
【0086】
第1吸収器11-1は、第2吸収側連通路15から供給された被処理ガス(吸収側での中段ガス)と、第2再生器21-2から第2流路32を介して導入される処理液とを接触させることによって、被処理ガス中の酸性化合物を処理液に吸収させて処理する。この処理後のガス(処理ガス)は、ガス排気路13から排出される。前記処理後の処理液(吸収側での中段液)は、第1吸収器11-1に貯留され、第1吸収側連通路14で抜き出され、その第1吸収側連通路14を介して第2吸収器11-2に供給される。
【0087】
これら第1および第2吸収器11-1、11-2は、それぞれ、第2実施形態の吸収器11と同様に、被処理ガスと処理液とを連続的に接触させられる装置であれば構わない。第1および第2吸収器11-1、11-2それぞれで発生する各反応熱は、第1および第2吸収器11-1、11-2それぞれで、被処理ガスおよび処理液の温度を上昇させる。
【0088】
このようにガス処理装置S3aは、ガス供給路12から供給される被処理ガスを、第2吸収器11-2および第1吸収器11-1それぞれで、2段階で処理液に接触させ、被処理ガス中の酸性化合物を処理液により確実に吸収させ、被処理ガスから酸性化合物をより確実に除去する。被処理ガスの視点から見ると、第2吸収器11-2で処理され、第1吸収器11-1で処理され、第2吸収器11-2が上流側となり、第1吸収器11-1が下流側となる。一方、処理液の視点から見ると、第1吸収器11-1で処理され、第2吸収器11-2で処理され、第1吸収器11-1が上流側となり、第2吸収器11-2が下流側となる。
【0089】
第1再生器21-1は、吸収側から第1A流路31-1を介して導入された処理液が貯留され、この貯留された処理液を加熱して処理する。この処理によって脱離された酸性化合物は、供給部50を介して供給先に供給される。前記処理後の処理液(再生側での中段液)は、第1再生器21-1に貯留され、第2吸収側連通路23で抜き出され、その第2吸収側連通路23を介して第2再生器21-2に供給される。
【0090】
第2再生器21-2は、吸収側から第1B流路31-2を介して導入された処理液および第1再生器21-1から第2再生側連通路23を介して導入された処理液(再生側での中段液)が貯留され、この貯留された処理液を加熱して処理する。この処理によって脱離された酸性化合物(ガス状の酸性化合物(再生側での中段ガス))は、第1再生側連通路22を介して第1再生器21-1に供給される。前記処理後の処理液は、第2再生器21-2に貯留され、第2流路32で抜き出され、第2流路31を介して第1吸収器11-1に供給される。
【0091】
このようにガス処理装置S3aは、吸収側で処理され吸収側から供給された処理液を、第1再生器21-1および第2再生器21-2それぞれで加熱され、処理液から酸性化合物をより効率よく脱離させる。第1再生器21-1で加熱された処理液は、第2再生器21-2で再び加熱され、処理液から酸性化合物をより確実に脱離させる。処理液の視点から見ると、第1再生器21-1で処理され、第2再生器21-2で処理され、第1再生器21-1が上流側となり、第2再生器21-2が下流側となる。
【0092】
第1および第2ヒートポンプHPa-1、HPa-2は、複数の吸収器11と複数の再生器21とを1対1で熱を移送させる。図3Aに示す例では、第1ヒートポンプHPa-1は、第1吸収器11-1と第1再生器21-1とを1対1で熱を移送させ、第2ヒートポンプHPa-2は、第2吸収器11-2と第2再生器21-2とを1対1で熱を移送させる。第1ヒートポンプHPa-1は、第1蒸発器60-1と、第1往路流路61-1と、第1圧縮器62-1と、第1凝縮器63-1と、第1復路流路64-1と、第1膨張器65-1とを備える。これら第1ヒートポンプHPa-1における第1蒸発器60-1、第1往路流路61-1、第1圧縮器62-1、第1凝縮器63-1、第1復路流路64-1および第1膨張器65-1は、それぞれ、第1実施形態のヒートポンプHPaにおける蒸発器60、往路流路61、圧縮器62、凝縮器63、復路流路64および膨張器65と同様であるので、その説明を省略する。第2ヒートポンプHPa-2は、第2蒸発器60-2と、第2往路流路61-2と、第2圧縮器62-2と、第2凝縮器63-2と、第2復路流路64-2と、第2膨張器65-2とを備える。これら第2ヒートポンプHPa-2における第2蒸発器60-2、第2往路流路61-2、第2圧縮器62-2、第2凝縮器63-2、第2復路流路64-2および第2膨張器65-2は、それぞれ、第1実施形態のヒートポンプHPaにおける蒸発器60、往路流路61、圧縮器62、凝縮器63、復路流路64および膨張器65と同様であるので、その説明を省略する。
【0093】
次に、第3実施形態におけるガス処理装置S3cについて説明する。このガス処理装置S3cは、図3Bに示すように、図3Aに示すガス処理装置S3aにおいて、第1および第2ヒートポンプHPa-1、HPa-2に代え、ヒートポンプHPcを用いる点を除き、残余の構成が図3Aに示すガス処理装置S3aと同様である。以下、相違点のヒートポンプHPcのみを説明し、残余の構成の説明を省略する。
【0094】
このヒートポンプHPcは、複数の吸収器11から成る吸収器セットと複数の再生器21から成る再生器セットとの間で熱を移送させる。図3Bに示す例では、ヒートポンプHPcは、第1および第2吸収器11-1、11-2から成る吸収器セットと第1および第2再生器21-1、21-2から成る再生器セットとの間で熱を移送させる。ヒートポンプHPcは、例えば、図3Bに示すように、吸収器11-1、11-2で吸収液の流れに対して向流であって再生器21-1、21-2で吸収液の流れに対して並流であり、第1Aおよび第1B往路流路72-1、72-2と、往路合流器73と、第2往路流路74と、圧縮器75と、往路分流器76と、第3Aおよび第3B往路流路77-1、77-2と、第1および第2制御弁78-1、78-2と、第1および第2凝縮器79-1、79-2と、第1Aおよび第1B復路流路80-1、80-2と、復路合流器81と、第2復路流路82と、復路分流器83と、第3Aおよび第3B復路流路84-1、84-2と、第1および第2膨張器85-1、85-2と、第1および第2蒸発器86-1、86-2とを備える。
【0095】
第1A往路流路72-1は、その一方が第1吸収器11-1の上部に接続され、第1吸収器11-1内に配設された第1蒸発器86-1の他方と接続され、その他方が往路合流器73に接続される。第1B往路流路72-2は、その一方が第2吸収器11-2の上部に接続され、第2吸収器11-2内に配設された第2蒸発器86-2の他方と接続され、その他方が往路合流器73に接続される。第2往路流路74は、その一方が往路合流器73に接続され、その他方が往路分流器76に接続され、第2往路流路74には、圧縮器75が設けられる。第3A往路流路77-1は、その一方が往路分流器76に接続され、その他方が第1再生器21-1の上部に接続され、第1再生器21-1内に配設された第1凝縮器79-1の一方と接続される。第3A往路流路77-1には、第1制御弁78-1が設けられる。第3B往路流路77-2は、その一方が往路分流器76に接続され、その他方が第2再生器21-2の上部に接続され、第2再生器21-2内に配設された第2凝縮器79-2の一方と接続される。第3B往路流路77-2には、第2制御弁78-2が設けられる。
【0096】
第1A復路流路80-1は、その一方が第1再生器21-1の下部に接続され、第1再生器21-1内に配設された第1凝縮器79-1の他方と接続され、その他方が復路合流器81に接続される。第1B復路流路80-2は、その一方が第2再生器21-2の下部に接続され、第2再生器21-2内に配設された第2凝縮器79-2の他方と接続され、その他方が復路合流器81に接続される。第2復路流路82は、その一方が復路合流器81に接続され、その他方が復路分流器83に接続される。第3A復路流路84-1は、その一方が復路分流器83に接続され、その他方が第1吸収器11-1の下部に接続され、第1吸収器11-1内に配設された第1蒸発器86-1の一方と接続される。第3A復路流路84-1には、第1膨張器85-1が設けられる。第3B復路流路84-2は、その一方が復路分流器83に接続され、その他方が第2吸収器11-2の下部に接続され、第2吸収器11-2内に配設された第2蒸発器86-2の一方と接続される。第3B復路流路84-2には、第2膨張器85-2が設けられる。このような構成のヒートポンプHPc内には、冷媒が封入される。
【0097】
第1蒸発器86-1は、例えば1または複数の伝熱管を備えて構成され、第1吸収器11-1内に配置される。第2蒸発器86-2は、例えば1または複数の伝熱管を備えて構成され、第2吸収器11-2内に配置される。第1および第2吸収器11-1、11-2内それぞれでは、発熱反応が生じている。第1蒸発器86-1内を流れる液状の冷媒は、この熱によって加熱されて蒸発し、第1A往路流路72-1を介して往路合流器73へ導出される。第2蒸発器86-2内を流れる液状の冷媒は、この熱によって加熱されて蒸発し、第1B往路流路72-2を介して往路合流器73へ導出される。往路合流器73は、第1A往路流路72-1からの冷媒と第1B往路流路72-2からの冷媒とを合流させ、第2往路流路74を介して往路分流器76へ導出される。この際に、第2往路流路74に設けられた圧縮器75によって、ガス状の冷媒は、圧縮される。往路分流器76は、冷媒を分流し、その一方を第3A往路流路77-1を介して第1凝縮器79-1へ導出し、その他方を第3B往路流路77-2を介して第2凝縮器79-2へ導出する。第1凝縮器79-1は、第1再生器21-1に導入される、吸収側で被処理ガスと接触した処理液に対し冷媒を並流させる例えば1または複数の伝熱管を備えて構成され、第1再生器21-1内に配置される。第2凝縮器79-2は、第2再生器21-2に導入される、吸収側で被処理ガスと接触した処理液に対し冷媒を並流させる例えば1または複数の伝熱管を備えて構成され、第2再生器21-2内に配置される。第1および第2再生器21-1、21-2内それぞれでは、吸熱反応が生じている。第1凝縮器79-1内を流れるガス状の冷媒は、この吸熱反応により凝縮し、第1A復路流路80-1を介して復路合流器81へ導出される。第2凝縮器79-2内を流れるガス状の冷媒は、この吸熱反応により凝縮し、第1B復路流路80-2を介して復路合流器81へ導出される。復路合流器81は、第1A復路流路80-1からの冷媒と第1B復路流路80-2からの冷媒とを合流させ、第2復路流路82を介して復路分流器83へ導出される。復路分流器83は、冷媒を分流し、その一方を第3A復路流路84-1を介して第1蒸発器86-1へ導出し、その他方を第3B復路流路84-2を介して第2蒸発器86-2へ導出する。前記第1蒸発器86-1へ導出される際に、第1膨張器85-1は、凝縮した液状の冷媒を減圧して第1蒸発器86-1に供給する。前記第2蒸発器86-2へ導出される際に、第2膨張器85-2は、凝縮した液状の冷媒を減圧して第2蒸発器86-2に供給する。
【0098】
第1蒸発器86-1、第1A往路流路72-1、往路合流器73、第2往路流路74、往路分流器76、第3A往路流路78-1、第1凝縮器79-1、第1A復路流路80-1、復路合流器81、第2復路流路82、復路分流器83および第3A復路流路84-1は、この順で接続され、第3A復路流路84-1が第1蒸発器86-1に接続されることで、閉ループ状の循環路が形成されるとともに、第1蒸発器86-1、第1A往路流路72-1、往路合流器73、第2往路流路74、往路分流器76、第3B往路流路77-2、第2凝縮器79-2、第1B復路流路80-2、復路合流器81、第2復路流路82、復路分流器83および第3A復路流路84-1は、この順で接続され、第3A復路流路84-1が第1蒸発器86-1に接続されることで、閉ループ状の循環路が形成される。そして、第2蒸発器86-2、第1B往路流路72-2、往路合流器73、第2往路流路74、往路分流器76、第3A往路流路77-1、第1凝縮器79-1、第1A復路流路80-1、復路合流器81、第2復路流路82、復路分流器83および第3B復路流路84-2は、この順で接続され、第3B復路流路84-2が第2蒸発器86-2に接続されることで、閉ループ状の循環路が形成されるとともに、第2蒸発器86-2、第1B往路流路72-2、往路合流器73、第2往路流路74、往路分流器76、第3B往路流路77-2、第2凝縮器79-2、第1B復路流路80-2、復路合流器81、第2復路流路82、復路分流器83および第3B復路流路84-2は、この順で接続され、第3B復路流路84-2が第2蒸発器86-2に接続されることで、閉ループ状の循環路が形成される。
【0099】
このように第1および第2吸収器11-1、11-2での発熱反応による熱は、往路合流器73によって纏められ、往路分流器76によって第1および第2再生器21-1、21-2それぞれに分配される。第1および第2再生器21-1、21-2での吸熱反応による熱は、復路合流器81によって纏められ、復路分流器83によって第1および第2吸収器11-1、11-2それぞれに分配される。
【0100】
第1および第2実施形態における並流または向流の利用と同様に、第3実施形態において、図3Aに示す1対1でのヒートポンプ、または、図3Bに示すセットでのヒートポンプが選ばれることにより、ヒートポンプにおける熱の回収効率を向上できる。
【0101】
このような第3実施形態におけるガス処理装置S3a、S3bは、第1および第2実施形態におけるガス処理装置S1a、S1b;S2a、S2bと同様の作用効果を奏する。
【0102】
上記第3実施形態におけるガス処理装置S3a、S3bは、複数の吸収器11および複数の再生器21に対しヒートポンプHPを設けるので、複数の吸収器11と複数の再生器21との間で熱を有効に活用できる。
【0103】
なお、上述の第3実施形態におけるガス処理装置S3aは、2個のヒートポンプHPa-1、HPa-2を備えて構成されたが、ヒートポンプHPbと同様な2個のヒートポンプを備えて構成されても構わない。同様に、上述の第3実施形態におけるガス処理装置S3cは、吸収器11-1、11-2で向流であって再生器21-1、21-2で並流であるヒートポンプHPcを備えて構成されたが、吸収器11-1、11-2で並流であって再生器21-1、21-2で向流であるヒートポンプを備えて構成されても構わない。
【0104】
また、上述の第3実施形態におけるガス処理装置S3cは、吸収側の複数の吸収器11を1群に纏めるとともに、再生側の複数の再生器21を1群に纏めた、セットでの1個のヒートポンプHPcを備えて構成されたが、吸収側の複数の吸収器11および再生側の複数の再生器21のうちの少なくとも一方を複数の群に纏めたヒートポンプを備えて構成されても構わない。例えば、4個の吸収器11を2個ずつの2群に纏めるとともに、4個の再生器21を2個ずつの2群に纏めた、セットでの2個のヒートポンプHPc(HPc-1、HPc-2)が用いられても構わない。
【0105】
また、上述の第3実施形態におけるガス処理装置S3a、S3cにおいて、図3Aに示すような1対1でのヒートポンプと、図3Bに示すようなセットでのヒートポンプとが混在しても構わない。例えば、3個の吸収器11のうちの2個を1群に纏めるとともに、3個の再生器21のうちの2個を1群に纏めた、セットでの1個のヒートポンプHPcと、残余の吸収器11および再生器21に対する1対1でのヒートポンプHPaが用いられても構わない。
【0106】
また、上述の第3実施形態におけるガス処理装置S3a、S3cは、吸収側と再生側とで互いに同数の吸収器11および再生器21を備えて構成されたが、吸収側と再生側とで互いに異数の吸収器11および再生器21を備えて構成されても構わない。吸収器11および再生器21が互いに異数であって、1対1で複数のヒートポンプが用いられる場合、ヒートポンプを備えない吸収器11または再生器21が生じることになるが、この場合でも、1対1でのヒートポンプとセットでのヒートポンプとを混在で用いることによって、ヒートポンプを備えない吸収器11または再生器21が生じることはない。
【0107】
また、これら第1ないし第3実施形態におけるガス処理装置S1a、S1b;S2a、S2b;S3a、S3cでは、吸収器10;11;11-1、11-2で吸収液の流れに対して向流であって再生器21;21;21-1、21-2で吸収液の流れに対して並流であるヒートポンプHPa;HPa;HPa-1、HPa-2;HPcが用いられたり、吸収器10;11;11-1、11-2で吸収液の流れに対して並流であって再生器21;21;21-1、21-2で吸収液の流れに対して向流であるヒートポンプHPb;HPb;HPb-1、HPb-2が用いられたりした。ただし、ヒートポンプは、これらに限定されるものではなく、並流および向流を組み合わせたヒートポンプ、または、吸収液ではなく冷媒を基準に、熱交換を行う2流体が差交(例えば直交または斜交)して流れるヒートポンプであっても構わない。このような組み合わせでは、例えば、吸収器10;11;11-1、11-2において、冷媒を基準に、被処理ガスが並流で流れ、処理液が向流で流れる。前記交差では、例えば、吸収器10;11;11-1、11-2において、冷媒に対し、被処理ガスおよび処理液それぞれが直交して流れる。なお、この交差において、冷媒が複数の管内を流通する場合に、各管内の各冷媒が同方向に流れても構わす、各管内の各冷媒が互い違いの方向で(方向を交互にして)流れても構わない。再生器21;21;21-1、21-2でも、同様に、前記組み合わせが用いられても構わず、前記差交が用いられても構わない。
【0108】
また、これら第1ないし第3実施形態におけるガス処理装置S1a、S1b;S2a、S2b;S3a、S3cにおいて、タンクは、界面の面積を増大させる1または複数の界面面積増大部を含んでも構わない。前記界面面積増大部は、後述の第1ないし第5態様のように、その停止中における前記界面の面積より、その稼働中における前記界面の面積を増大させる。このようなガス処理装置S(S1a、S1b;S2a、S2b;S3a、S3c)は、前記界面面積増大部を備えるので、効率よく相互作用できる。効率よく相互作用できるので、ガス処理装置Sのコンパクト化を図ることができる。界面の面積を増大させるので、処理液の性能の最大化を図ることができる。前記タンクが吸収器11に含まれる場合、前記界面面積増大部は、処理液表面での気/液の界面における面積を増大でき、吸収側で効率よく相互作用できる。前記タンクが再生器21に含まれる場合、前記界面面積増大部は、処理液表面および液相分離した処理液内での気/液/液の各界面における各面積を増大でき、再生側で効率よく相互作用できる。
【0109】
この界面面積増大部は、例えば吸収器11での吸収速度および再生器21での分離速度等を考慮することによって、吸収器11および再生器21のうちの何れか一方、または、吸収器11および再生器21の双方に設けられる。接触効率を改善し連続的に操業するために例えば吸収器11での吸収速度と再生器21での分離速度とがバランスするように、前記界面面積増大部が設けられる。このため、吸収側に設けられる前記界面面積増大部の個数と再生側に設けられる前記界面面積増大部の個数とは、同数であっても構わず、異数であっても構わない。
【0110】
図4は、前記ガス処理装置のタンクに備えられる第1態様の界面面積増大部を説明するための図である。図4Aは、吸収器11に含まれるタンクが、第1態様の界面面積増大部の一例である攪拌機を備えた場合を示し、図4Bは、再生器21に含まれるタンクが、前記攪拌機を備えた場合を示す。図5は、前記ガス処理装置のタンクに備えられる第2および第3態様の各界面面積増大部を説明するための図である。図5Aは、第2態様の界面面積増大部を示し、図5Bは、第3態様の界面面積増大部を示す。図6は、前記ガス処理装置のタンクに備えられる第4態様の界面面積増大部を説明するための図である。図6Aは、第1スプレーパターンでの第4態様の界面面積増大部を示し、図6Bは、第2スプレーパターンでの第4態様の界面面積増大部を示す。図7は、前記第4態様の界面面積増大部におけるスプレーパターンを説明するための図である。図7Aないし図7Fは、第1ないし6態様のスプレーパターンを示し、上段は、側面視の形状を示し、下段は、噴射の方向に直交する水平断面の形状を示す。図8は、前記ガス処理装置のタンクに備えられる第5および第6態様の各界面面積増大部を説明するための図である。図8Aは、第5態様の界面面積増大部を示し、図8Bは、第6態様の界面面積増大部を示す。
【0111】
前記界面面積増大部は、一例では、処理液を撹拌する攪拌機であっても構わない(第1態様)。このような攪拌機を備えるガス処理装置Sは、撹拌によって、界面の面積を増大でき、効率よく相互作用できる。
【0112】
このような攪拌機91aは、例えば、図4Aに示すように、吸収器11のタンク内に配置され、吸収器11において、タンク内の処理液を撹拌する。また例えば、図4Bに示すように、攪拌機101aは、再生器21のタンク内に配置され、再生器21において、タンク内の処理液を撹拌する。攪拌機91a、101aは、例えば、1または複数枚の羽根と、前記羽根を回転させる例えばモータ等のアクチュエータとを備える。
【0113】
図4Aおよび図4Bは、図2Aに示す第2実施形態のガス処理装置S2aにおける吸収器11および再生器21の各タンクに、前記界面面積増大部の一例としての攪拌機91a、101aを備える場合を示す。他のガス処理装置S1a、S1b;S2b;S3a、S3cが前記界面面積増大部を備える場合も同様に図示できるが、その図示を省略する。
【0114】
図4Aおよび図4Bから分かるように、吸収器11には、上述したガス供給路12、ガス排出路13、第1流路31および第2流路32が接続され、ヒートポンプHPに使用される熱交換器が付設される一方、再生器21には、上述した第1流路31および第2流路32が接続され、ヒートポンプHPに使用される熱交換器、供給部50および熱源57が付設される点で異なるが、吸収器11のタンクでも、再生器21のタンクでも、界面面積増大部の第1態様としての攪拌機91a、101aが設けられる点では、同様であるので、以下、第2ないし第6態様における各界面面積増大部のより具体的な説明では、図4のように、界面面積増大部が吸収器11のタンクに設けられる場合と、界面面積増大部が再生器21のタンクに設けられる場合とを区別すること無く、第2ないし第6態様における各界面面積増大部を纏めて説明する。なお、図5図6および図8では、再生器21での符号は、吸収器11での符号に続けて括弧書きで記載されている。
【0115】
前記界面面積増大部は、他の一例では、処理液内に気泡を送り込む気泡ノズルであっても構わない(第2態様)。このような気泡ノズルを備えるガス処理装置Sは、気泡を送り込むことによって、界面の面積を増大でき、効率よく相互作用できる。
【0116】
このような気泡ノズル91b(101b)は、例えば、図5Aに示すように、タンク11(21)内に設けられ、タンク11(21)内に気泡BLを送り込む。気泡ノズル91b(101b)は、例えば、タンク11(21)内に延設され、気泡BLを生じさせる複数の孔を開口形成した送気管と、前記送気管に気体を供給する、例えばコンプレッサー等の気体供給装置とを備える。前記送気管は、断面円形の円管状であっても構わず、断面矩形の板状であっても構わない。前記気泡BLとなる前記気体は、任意の気体であって構わない。なお、前記孔に代え、気泡を生じさせるノズルが前記送気管に設けられても構わない。
【0117】
前記界面面積増大部は、他の一例では、処理液をタンクから導出して再び前記タンク内に導入させる循環機であっても構わない(第3態様)。このような循環機を備えるガス処理装置Sは、循環で流れを生成することによって撹拌でき、界面の面積を増大でき、効率よく相互作用できる。
【0118】
このような循環機91c(101c)は、例えば、図5Bに示すように、一方がタンク11(21)の下端部に接続され、他方が前記タンク11(21)の上部に接続された循環路92(102)と、前記循環路92(102)に設けられたポンプ93(103)とを備える。ポンプ93(103)を稼働することによって、タンク11(21)内の処理液がその下端部から循環路92(102)に吸い込まれて循環路92(102)を流れ、タンク11(21)の上部で循環路92(102)から吐出され、再びタンク11(21)内に戻される。循環路92(102)から処理液を吐出する位置は、処理液下であっても、処理液上であっても構わない。
【0119】
なお、循環機91cが吸収器11に設けられる場合では、循環路92の一部が第1流路31の一部と兼用され、ポンプ93がポンプ42と兼用されても構わない。また、循環機101cが再生器21に設けられる場合では、循環路92の一部が第2流路32の一部と兼用され、ポンプ93がポンプ46と兼用されても構わない。
【0120】
前記界面面積増大部は、他の一例では、処理液をタンク内に噴射させる噴射ノズルであっても構わない(第4態様)。このような噴射ノズルを備えるガス処理装置Sは、噴射ノズルで処理液を拡散することによって、界面の面積を増大でき、効率よく相互作用できる。
【0121】
このような噴射ノズル91da(101da);91db(101db)は、例えば、図6Aおよび図6Bに示すように、タンク11(21)内に設けられ、その上部から下部に向けて、タンク11(21)内に処理液を噴霧する。前記噴射ノズルから噴射される処理液のスプレーパターンは、図7に示すように、種々のタイプであっても構わない。例えば、スプレーパターンは、図7Aおよび図6Aに示すように、噴射の方向に対する交差断面で、中実状で、かつ、その外形状が円状、より詳しくは真円であっても構わない。あるいは、例えば、スプレーパターンは、図7Bに示すように、噴射の方向に対する交差断面で、環状(中空状)で、かつ、その外形状が円状であっても構わない。あるいは、例えば、スプレーパターンは、図7Cおよび図6Bに示すように、噴射の方向に対する交差断面で、中実状で、かつ、その外形状が点状であっても構わない。あるいは、例えば、スプレーパターンは、図7Dに示すように、噴射の方向に対する交差断面で、中実状で、かつ、その外形状が線状であっても構わない。あるいは、例えば、スプレーパターンは、図7Eに示すように、噴射の方向に対する交差断面で、中実状で、かつ、その外形状が円状、より詳しくは楕円であっても構わない。円状には、真円状だけでなく、楕円状も含む。あるいは、例えば、スプレーパターンは、図7Fに示すように、噴射の方向に対する交差断面で、中実状で、かつ、その外形状が多角形状、例えば四角形であっても構わない。なお、図7Eおよび図7Fに示す例では、中実状であるが中空状(環状)であっても構わない。
【0122】
前記界面面積増大部は、他の一例では、処理液の液膜を形成する濡れ壁であっても構わない(第5態様)。このような濡れ壁を備えるガス処理装置Sは、濡れ壁で液膜を形成することによって、界面の面積を増大でき、効率よく相互作用できる。
【0123】
このような濡れ壁91e(101e)は、例えば、図8Aに示すように、タンク11(21)内に設けられ、タンク11(21)内に処理液の液膜を形成する。濡れ壁91e(101e)は、例えば、タンク11(21)内に延設され、処理液を流出する複数の孔を延設方向に間隔を開けて開口形成した送液管と、前記送液管から流出した処理液を液膜状で流下させる液膜板とを備える。あるいは、濡れ壁91e(101e)は、タンク11(21)内で上部から下部に延設された複数の管を備え、各管の壁面で処理液の液膜が形成されても構わない。
【0124】
前記界面面積増大部は、他の一例として、タンク内の空間を複数に隔てる充填剤であっても構わない(第6態様)。このような濡れ壁を備えるガス処理装置Sは、充填剤でタンク内の空間を複数に隔てることによって、界面の面積を増大でき、効率よく相互作用できる。
【0125】
このような充填剤91f(101f)は、例えば、図8Bに示すように、例えば球形または多角形体等の立体形状を持つ複数の部材(充填剤子)を備え、前記複数の充填剤子がタンク11(21)内に充填される。タンク11(21)内には、前記充填剤子間に複数の空間(隙間)が形成される。これら複数の空間は、何れかの空間同士で連通され、液体および/または気体の通り道(流路)が形成される。前記充填剤子は、例えばセラミック、ステンレス、ニッケル合金または樹脂等の処理液と無反応な材料で形成される。
【0126】
吸収器または再生器が塔の容器で構成される場合、処理液が重量落下しているため、相分離した第1および第2相部分同士が混じり難い。しかしながら、ガス処理装置Sが前記界面面積増大部を備えることで、撹拌または拡散によって、相分離した第1および第2相部分同士が混じり易くなり、相互作用できる。このため、再生器21がタンクを含み、このタンクに、前記界面面積増大部を備えることが好ましい。
【0127】
吸収器または再生器が塔の容器で構成される場合、前記界面面積増大部の大きさ(サイズ)は、塔径によって制約され、効率よく相互作用させるために例えば比較的大型の羽根を持つ攪拌機91a(101a)または比較的大面積の濡れ壁91e(101e)等の、前記界面面積増大部の態様によっては、塔は、前記界面面積増大部を収容し難い。しかしながら、前記界面面積増大部は、タンクに設けられるので、収容され易い。
【0128】
吸収器または再生器が塔の容器で構成される場合、処理液を均一な状態に為すために、塔の高さ方向に塔の高さに応じて前記界面面積増大部を複数個設ける必要が生じてしまうが、前記界面面積増大部は、タンクに設けられるので、高さ方向に複数個設けなくても処理液を均一な状態に為し易い。
【0129】
そして、前記界面面積増大部は、これら攪拌機、気泡ノズル、循環機、噴射ノズル、濡れ壁および充填剤のうちから選択された複数の組み合わせであっても構わない。これによって界面の面積がより増大でき、より効率よく相互作用ができる。図6Aおよび図6Bには、気泡ノズル91b(101b)と噴射ノズル91da(101da);91db(101db)とを組み合わせた例が示されている。図8Aには、攪拌機91a(101a)と濡れ壁91e(101e)とを組み合わせた例が示されている。図8Bには、気泡ノズル91b(101b)と循環機91c(101c)と噴射ノズル91da(101da)と充填剤91f(101f)とを組み合わせた例が示されている。図6および図8は、例示であって、例えば攪拌機91a(101a)と気泡ノズル91b(101b)との組み合わせ、気泡ノズル91b(101b)と循環機91c(101c)との組み合わせ、または、気泡ノズル91b(101b)と循環機91c(101c)と噴射ノズル91da(101da)と充填剤91f(101f)との組み合わせ等の、他の組み合わせであっても構わない。この他の様々な組み合わせが可能である。
【0130】
また、複数の吸収器11および複数の再生器21が用いられる場合、これら複数の吸収器11および複数の再生器21に備えられる各界面面積増大部は、同態様であっても構わず、異態様であっても構わない。例えば、2個の吸収器11および2個の再生器21それぞれに攪拌機91a(91a-1、91a-2)、101a(101a-1、101a-2)が用いられる。あるいは、例えば、2個の吸収器11および1個の再生器21それぞれに攪拌機91a(91a-1、91a-2)、101aが用いられ、他の1個の再生器21に噴射ノズル101daが用いられる。あるいは、例えば、2個の吸収器11それぞれに攪拌機91a(91a-1、91a-2)が用いられ、2個の再生器21それぞれに噴射ノズル101da(101da-1、101da-2)が用いられる。
【0131】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0132】
S1a、S1b、S2a、S2b、S3a、S3c ガス処理装置
HPa、HPb、HPa-1、HPa-2、HPc ヒートポンプ
10、11 吸収器
21 再生器
91a、101a 攪拌機
91b、101b 気泡ノズル
91c、101c 循環機
91da、91db 噴射ノズル
91e、101e 濡れ壁
91f、101f 充填剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8