(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物の生成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240709BHJP
G01N 33/32 20060101ALI20240709BHJP
G01J 3/46 20060101ALI20240709BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20240709BHJP
【FI】
C09D201/00
G01N33/32
G01J3/46 Z
C09D11/00
(21)【出願番号】P 2021556358
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2020056959
(87)【国際公開番号】W WO2020187786
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロエル、オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ブランダ、ガエタノ
(72)【発明者】
【氏名】シルバー、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ビットーフ、サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】イスケン、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】フセン、インガ
(72)【発明者】
【氏名】ショーネベルグ、ウルフ
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-189835(JP,A)
【文献】特開平07-200614(JP,A)
【文献】特表2016-503359(JP,A)
【文献】特表2009-510247(JP,A)
【文献】特表2011-506961(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0244558(US,A1)
【文献】米国特許第06421612(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
G01J 1/00-4/04
G01J 7/00-9/04
G06N 3/00-99/00
G06F 18/00-18/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物を生成する方法であって、
塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の前記組成物は固形物および分散剤を有しており、前記組成物はコンピュータシステム(100)により生成され、前記コンピュータシステム(100)はデータベース(200)にアクセスするものであり、前記データベースにおいては、固形物含量および分散剤濃度に関する特定の組成物の各測定点が、既知の組成物の固形物および分散剤の組み合わせに関して記憶されており、更に各例において、既知の組成物の固形物および分散剤の組み合わせに関して測定点が記憶されており、前記特定の組成物の各測定点に関して、流動特性および彩色特性が記憶されており、
以下の工程、すなわち、
a.前記コンピュータシステム(100)のユーザーインターフェース(101)を通して、組成物の第一コンポーネントおよび第二コンポーネントに関する望ましい組み合わせの指定を入力する工程であって、前記第一コンポーネントおよび第二コンポーネントが固形物および分散剤である工程(10)と、
b.探索基準として前記第一コンポーネントおよび前記第二コンポーネントに関する前記望ましい組み合わせのデータベース検索を実行する工程(11)であって、
(1)前記データベース検索が前記探索基準を満たす既知の組成物を提供する場合には、前記既知の組成物が出力され(13)、
(2)反対の場合には、前記2つのコンポーネントのうちの1つ並びにもう一つのコンポーネントの代わりの代替コンポーネントを有する候補組成物を見出すため、前記探索基準として機能する、前記第一コンポーネントおよび前記第二コンポーネントを有する組成物の更なるデータベース検索(14)が実行され、
i.前記2つのコンポーネントのうちのもう一つ並びに第三コンポーネントを有する第一の既知の比較組成物を見出すため、データベース検索(15)が実行され、
ii.もう一つのコンポーネントの代わりの代替コンポーネント並びに前記第三コンポーネントを有する第二の既知の比較組成物を見出すため、データベース検索(16)が実行され、
iii.前記データベースに記憶されている前記第一の既知の比較組成物および前記第二の既知の比較組成物の前記測定点に関して、類似基準を調べることにより、前記第一の既知の比較組成物および前記第二の既知の比較組成物が比較され、前記第一の既知の比較組成物および前記第二の既知の比較組成物が十分類似していると評価された場合には、
iv.前記組成物が生成され(19)、前記代替コンポーネントは前記候補組成物において前記2つのコンポーネントのうちのもう一つと置き換えられ、
v.前記生成された組成物が出力される(13)ものである工程とを有するものである
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、工程b(2)において複数の候補組成物が見い出され、前記類似基準を満足するのが前記複数の候補組成物の少なくとも1つに関して確立されるまで工程i~iiiが反復され、斯かる候補組成物に関して工程ivが実行されるものである方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、工程b(2)において複数の候補組成物が見い出され、前記類似基準を満足するのが前記複数の候補組成物に関して確立されるまで工程i~iiiが複数回反復され、前記候補組成物を選別する更なる工程において、前記候補組成物は選別基準として類似性レベルを用いて選別され、最高度の類似性を有する候補組成物が選択され、斯かる候補組成物に関して工程ivが実行されるものである方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記流動特性の極値の第一距離および前記彩色特性の極値(M1、M2、M3)の第二距離(A1、A2)が、各例において分散剤濃度および固形物含量との関係で、前記類似性レベルに関して、前記第一の既知の比較組成物および前記第二の既知の比較組成物の間で考慮されるものである方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、異なる保存期間の測定点が前記データベースに記憶された
組成物用に記憶されており、工程b(2)iiiは、前記保存期間の各々について前記第一距離および前記第二距離を確認するため、異なる保存期間の測定点に関して実行されるものである方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の方法において、前記類似性レベルは、前記極値の前記第一距離および前記第二距離の組み合わせから得られるものである方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法において、前記測定点の次元のうちの少なくとも1つの指定を入力する更なる工程を有するものであり、選択される前記次元は前記組み合わせにおいて優位なものである方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法において、前記測定点の値範囲に関する指定を入力する更なる工程を有するものであり、工程b(2)iiiにおいて、前記測定点は、前記指定される値範囲においてのみ評価されるものである方法。
【請求項9】
請求項3に記載の方法において、前記類似性レベルは前記測定点の曲線の比較に対応しており、前記比較は、最小二乗、差の二乗、分散分析、測定点範囲の文字列比較、または相関の方法によって実行されるものである方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法において、工程b(2)iにおける前記第一の既知の比較組成物は、前記2つのコンポーネントのうちのもう一つ並びに前記第三コンポーネントに加え、更なるコンポーネントを有するものであり、工程b(2)iiにおける前記第二の既知の比較組成物は、前記第三コンポーネント並びに前記代替コンポーネントに加え、前記更なるコンポーネントのうちの1つ以上または全てを有するものである方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法において、前記更なるコンポーネントは、色素、充填剤、着色剤、蛍光増白剤、セラミック材料、磁性材料、ナノ分散固形物、金属、殺生物剤、農薬、薬品、結合剤、溶媒、湿潤剤、補助均染剤、硬化剤、および消泡剤から成る群から選択されるものである方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法において、前記固形物は無機色素、有機色素、またはカーボンブラック色素である方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法において、前記分散剤は化学的な両親媒性、イオン性、非イオン性または低分子量化合物、および/または高分子量化合物である方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法において、前記候補組成物の2つのコンポーネントのうちの1つが固形物である場合、前記固形物は無機色素、有機色素、またはカーボンブラック色素であり、従って前記第三コンポーネントは、同様に、無機色素、有機色素、またはカーボンブラック色素であり、前記候補組成物の2つのコンポーネントのうちの1つが分散剤である場合、前記分散剤は単純な低分子量化合物および/または複雑な高分子量化合物であり、従って前記第三コンポーネントは、同様に、単純な低分子量化合物および/または複雑な高分子量化合物である方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法において、前記データベース(200)に記憶される前記第一の既知の比較組成物および前記第二の既知の比較組成物の測定点は、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の
組成物の製造並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の
組成物の検査を実行するための装置(500)を用いて、分散剤濃度および固形物含量に関連した前記流動特性および彩色特性に関して行われた以前の検査によって得られたものである方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法において、前記コンピュータシステム(100)は、前記データベース(200)および/または塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の
組成物の製造並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の
組成物の検査のための装置(500)を用いて、通信インターフェースを通して通信するものであり、前記通信インターフェースは、USB、イーサーネット、WLAN、LAN、ブルートゥース(登録商標)または別のネットワークインターフェースによって実施されるものである方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法において、前記生成された組成物は、工程b(1)の後または工程b(2)vの後、前記コンピュータシステム(100)の前記ユーザーインターフェース(101)へ出力されるものである方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法において、前記生成された組成物は、工程b(1)の後または工程b(2)vの後、プロセッサ(102)へ出力され、前記プロセッサ(102)は、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の
組成物の製造並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の
組成物の検査のための装置(500)を制御するものであり、前記装置(500)は少なくとも2つの処理ステーションを有し、前記少なくとも2つの処理ステーションは、前記
組成物および/または前記生成された
組成物のコンポーネントを輸送するため、自動推進式の手段が前記処理ステーション間を移動できるようになっている輸送システムを通して、相互に連結されており、前記プロセッサ(102)は、前記生成された組成物を製造するための装置(500)を作動し、前記生成された組成物の製造、および前記
組成物の前記分散剤濃度および固形物含量に関連した、前記流動特性および彩色特性の検査が、前記少なくとも2つの処理ステーションで行われ、前記生成された組成物の製造および前記
組成物の前記分散剤濃度および固形物含量に関連した、前記流動特性および彩色特性の検査結果は、前記ユーザーインターフェース(101)へ出力され(13)、および/または前記生成された組成物の製造および前記
組成物の前記分散剤濃度および固形物含量に関連した、前記流動特性および彩色特性の検査結果は、前記データベース(200)に記憶されるものである方法。
【請求項19】
塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物を生成するためのコンピュータシステム(100)であって、
データベース(200)およびユーザーインターフェース(101)を有しており、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたものである
コンピュータシステム(100)。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法を実行するための、プロセッサ(102)によって実行可能な命令を含む、コンピュータプログラム、デジタル記憶媒体、またはコンピュータプログラム製品。
【請求項21】
システムであって、
塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の
組成物の製造プロセス並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の
組成物の検査を実施するための装置(500)であって、少なくとも2つの処理ステーションを有し、前記少なくとも2つの処理ステーションは、前記
組成物および/または前記生成された
組成物のコンポーネントを輸送するため、自動推進式の手段が前記処理ステーション間を移動できるようになっている輸送システムを通して、相互に連結されており、前記
組成物の製造、および各
組成物の分散剤濃度および固形物含量に関連した、流動特性および彩色特性の検査の両方が、前記少なくとも2つの処理ステーションで行われるものである装置(500)と、
請求項19に記載のコンピュータシステムとを有するものである、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物(固形物および分散剤を含む)の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、ワニス、印刷インキの組成物、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤は原料の複雑な混合体である。従来の塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物、配合、または調剤は、約20の原料(以後、コンポーネントとも呼ばれる)を有している。斯かる組成物は、例えば、固形物、例えば色素および/または充填剤、結合剤、溶媒、樹脂、硬化剤、および種々の添加剤、例えば増粘剤、分散剤、湿潤剤、接着促進剤、消泡剤、表面変性剤、均染剤、触媒的に活性な添加剤、例えば、乾燥剤および触媒、並びに特定作用の添加剤、例えば殺生物剤、光開始剤、および腐食阻害剤から選択される原料で構成される。
【0003】
従来、特定の好ましい特性を有する新しい組成物または調剤は、経験値に基づいて特定され、その後化学的に合成され、試験されている。化学的、物理的、光学的、触覚的、および他の計測学的に検出可能な特性に関する特定の期待を満たす新しい組成物または調剤の構成は、相互作用の複雑さの故に、当業者にはほとんど予測不可能である。原料の広範囲な相互作用、およびそれに関連した複数の(部分的には手動で実行される)実験および不合格試験の故に、斯かる方法は膨大な時間や経費を要するものである。
【0004】
一般的に、液体媒体中の固形物(例えば、色素、充填剤、または着色剤)を分散させるため、すなわち固形物の効果的な分散を達成し、分散に必要な機械的剪断力の減少、並びに可能な限り最大の充填レベルを達成するため、分散剤(分散添加剤とも呼ばれる)が使用される。分散剤は、凝集の分解を促進し、表面活性剤として機能し、分散対象の固形物または粒子の表面を湿潤および/または被覆して、好ましくない再凝集に対して斯かる固形物または粒子を安定させる。
【0005】
分散剤は、外観および斯かるシステムの物理化学的特性を相当規模で決定し、重要な組成物成分として機能する、色素、着色剤、および充填剤などの固形物の導入を簡略化するので、塗料、ワニス、印刷インキの組成物、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の製造中にも使用されるものである。最適使用のためには、斯かる固形物は、調剤中に均一に分配されると同時に、一旦分配が達成されたならば安定化されるものでなければならない。
【0006】
固形物用の分散剤として複数の異なる物質が今日使用されている。極めて単純な低分子量化合物、例えばレシチン、脂肪酸、およびそれらの塩およびアルキルフェノールエトキシレートに加え、更に複雑な高分子量の構造体も分散剤として使用されている。広く使用されているのは、特に、アミノ官能性およびアミド官能性システムである。
【0007】
例えば、特許文献1、2、3、および4は、ポリエステル修飾ポリアミンに基づく分散剤を記載している。特許文献5は、色素および充填剤用の分散剤として、ポリアミン塩およびその使用を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第4224212号明細書
【文献】欧州特許第0208041号明細書
【文献】国際公開第00/024503号
【文献】国際公開第01/021298号
【文献】西独国特許第19732251号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
時間を節約し費用効果を高くすることにより、新しい組成物の開発または再調製方法の開発の達成方法を提供するのが、本発明の目的である。
【0010】
上記目的は、請求項1記載の、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物(固形物および分散剤を有する)を生成する方法、並びに対応するコンピュータシステムおよびコンピュータプログラム製品によって達成される。本発明の実施形態は従属請求項に記載されている。本発明の実施形態は、互いに排除し合うものでない限り、自由に相互に組み合わせることができる。
【0011】
1つの態様において、本発明は塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物に関しており、当該組成物はコンピュータシステムによって生成されるものである。コンピュータシステムは、既知の組成物および/または調剤が記憶されているデータベースにアクセスできる。
【0012】
本明細書では、「組成」は、少なくとも化学製品を形成する原料(「コンポーネント」)のタイプを特定する、当該化学製品の明細を意味するものと理解されたい。
【0013】
本明細書では、「調剤」は、コンポーネントの情報に加え、特定のコンポーネントに関する量または濃度情報を追加的に有する組成物を意味するものと理解されたい。
【0014】
実施形態次第ではあるが、以下に組成物に関して記載される場合、それは調剤が存在していることも意味している。
【0015】
各々固形物および分散剤を有する既知の組成物に関して言えば、各例において、固形物含量および分散剤濃度または分散剤含量がデータベースに記憶されている。
【0016】
例えば、各既知の組成物に関して、複数の測定点がデータベースに記憶されているであろう。例えば、種々の分散剤含量を有する(確定した)固形物含量、または種々の固形物含量を有する(確定した)分散剤含量に関して、複数の測定点がデータベースに記憶されているであろう。当該方法の一部として、各例において、各組成物の各測定点、例えば割り当てられた固形物含量を有する各試験済みの分散剤濃度に関して、少なくとも1つの流動特性および彩色特性がデータベースに記憶されている。
【0017】
流動特性は、例えば、特定の組成物の粘度であってもよい。彩色特性は、例えば、特定の組成物の色の濃さであってもよい。
【0018】
組成物は、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤、例えば(便利な製品としての)特定の原料のプレミックス、固形物の分散体、懸濁物、水性組成物および溶媒含有組成物、(水および溶媒を全く含まない)100%組成物、またはUVベースの塗料およびワニスシステムであってもよい。
【0019】
本発明の意味における分散剤または表面活性剤は、化学的な両親媒性、イオン性、非イオン性または低分子量化合物、および/または高分子量化合物であってもよい。
【0020】
分散剤または表面活性剤は、ポリエーテル修飾脂肪酸、ポリエーテル修飾脂肪酸アミドアミン、ポリエーテル修飾アミン誘導体、ジェファミン誘導体、ポリエーテル修飾油、脂肪およびその誘導体、リン酸化誘導体、特に脂肪アルコールベースのマレイン酸樹脂またはポリエーテル修飾スチレンマレイン酸コポリマーであってよい。
【0021】
マレイン酸は、多価アルコールで完全または部分的にエステル化が可能な、マレイン酸またはフマル酸とコロホニウムとのディールスアルダー付加物である。斯かる方法により、異なる融点、機能性、およびその結果としての溶解度を有する広範囲な硬質樹脂が製造できる。
【0022】
分散剤または表面活性化合物は、色素親和基で修飾されたポリエステルであってもよい。
【0023】
分散剤または表面活性化合物は、非イオン性のエトキシル化された糖ベースの表面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートなどであってよい。
【0024】
分散剤または表面活性化合物は、代替物として、ポリアルキレングリコールエーテルの群から選択される、市販の脂肪アルコールエトキシレートであってもよい。
【0025】
分散剤または表面活性化合物は、色素表面に親和性のある1つ以上の機能性を有していてもよい。
【0026】
本発明の意味における固形物は、原則的に、あらゆる固形の有機材料、無機材料、またはカーボンブラックであってよい。
【0027】
斯かる固形物は、例えば、色素、充填剤、着色剤、蛍光増白剤、セラミック材料、磁性材料、ナノ分散固形物、金属、殺生物剤、農薬、および医薬品である。
【0028】
好ましい固形物は、例えば、カラーインデックス版(1971)並びにその後の改訂版および表題「色素」の章のその付録に記載されている公認色素群の中の色素である。
【0029】
色素は有機色素、無機色素、またはカーボンブラック色素であるのが好ましい。
【0030】
例えば、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタンは無機色素として挙げられる。
【0031】
適切な有機色素は、例えば、アゾ色素、金属錯体色素、アントラキノイド色素、フタロシアニン色素、多環式色素、特に、チノインジゴ、キナクリドン、ジオキサジン、ピロロピロール、ナフタレンテトラカルボン酸、ペリレン、イソアミドリン(オン)、フラバンスロン、ピランスロン、またはイソビオランスロンシリーズである。
【0032】
ガスブラック、フレイムブラック、またはファーネスブラックはカーボンブラックとして使用可能である。斯かるカーボンブラックは追加的に後酸化したり、および/またはペレット化したりしてもよい。
【0033】
更なる好ましい固形物は、増量剤および充填剤、例えば、タルク、カオリン、シリコン、二酸化物、バライト、およびチョーク、微粒子状のセラミック材料、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、窒化シリコン、窒化ホウ素、シリコンカーバイド、ボロンカーバイド、シリコン/窒化アルミニウムおよび金属チタン酸塩の混合体、微粒子状の磁気材料、例えば遷移金属、特に鉄およびクロムの磁気酸化物、例えばγFe2O3、Fe3O4、コバルトをドープした酸化鉄、酸化カルシウム、フェライト、特にバリウムフェライトおよび金属粒子、特に金属鉄、ニッケル、コバルトおよびそれらの合金、農薬、例えば殺真菌剤フルトリアフェン、カルベンダジム、クロロタロニル、およびマンコゼブなどである。
【0034】
上述したように、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物は、固形物および分散剤を有する。
【0035】
固形物、特に色素、および分散剤の適切な組み合わせは、組成物のマトリックス内において、分散剤による固形物表面の最適な湿潤、および固形物、特に色素の最適な分配および安定化が達成できる。
【0036】
色素の湿潤度は必ずしも既知ではない、または直接測定可能ではないので、粘度などの流動特性および色の濃さなどの彩色特性がインジケーターとして役立つ。
【0037】
分散剤およびその濃度を選択することにより、色の濃さの面で譲歩することなく、例えば色素などの高価な固形物の使用の削減が可能である。更に、色素などの固形物を含有する液体媒体の粘度が、使用される分散剤によって有意に決定できる。この点に関して言えば、液体塗料およびワニスの粘度が可能な限り低く、それが保存中にも維持できる分散剤が特に求められている。
【0038】
請求項1記載の方法は、コンピュータシステムのユーザーインターフェースを通して、組成物の第一コンポーネントおよび第二コンポーネントの望ましい組み合わせの指定をまず入力することにより実行される。コンピュータシステムはデータベースにアクセスできる。
【0039】
本発明の意味におけるデータベースは、データ、特に構造化データを記憶できる任意の記憶装置であってよい。データベースは、テキストファイル、スプレッドシートファイル、ディレクトリツリーのディレクトリであるデータベース、あるいはMySQLやPostgreSQLなどのデータベース管理システム(DBMS)のデータベースであってよい。
【0040】
本方法において、組成物すなわち第一コンポーネントおよび第二コンポーネントは固形物および分散剤である。
【0041】
第一コンポーネントが固形物ならば、第二コンポーネントは分散剤である。更に、第一コンポーネントが分散剤ならば、第二コンポーネントは固形物である。
【0042】
本方法の工程をより良く理解するため、以下において、第一コンポーネントは第一コンポーネント(A)と呼び、第二コンポーネントは第二コンポーネント(B)と呼ぶ。
【0043】
第一コンポーネント(A)および第二コンポーネント(B)の望ましい組み合わせが指定された後、当該第一コンポーネント(A)および第二コンポーネント(B)の望ましい組み合わせが探索基準として実行される。
【0044】
データベース検索が第一コンポーネント(A)および第二コンポーネント(B)の探索基準を満たす既知の組成物を提供する場合、第一コンポーネント(A)および第二コンポーネント(B)を有する既知の組成物が出力される。斯かる方法において、固形物含有量および分散剤濃度の測定点は既知の組成物に関して既に記憶されており、粘度および色の濃さは各測定点に関して記憶されている。
【0045】
データベース検索が第一コンポーネント(A)および第二コンポーネント(B)の探索基準を満たす既知の組成物を提供しない場合、2つのコンポーネントのうちの1つ(第一コンポーネント(A)または第二コンポーネント(B))並びにもう一つのコンポーネント(第二コンポーネント(B)または第一コンポーネント(A))の代わりの代替コンポーネントを含む候補組成物を見出すため、第一コンポーネント(A)および第二コンポーネント(B)に関する別のデータベース検索が実行される。
【0046】
本発明の理解を簡便化するため、候補組成物に存在する2つのコンポーネントのうちの1つを例えば第二コンポーネント(B)とし、候補組成物に存在しないもう一つのコンポーネントを第一コンポーネント(A)とする。2つのコンポーネントのうちの1つを第一コンポーネント(A)とし、もう一つのコンポーネントを第二コンポーネント(B)としてもよいことは理解されたい(しかし本発明の理解の簡便化のため、この例は使用されない)。
【0047】
理解を簡便化するため、この例では、代替コンポーネントは代替コンポーネント(X)とする。
【0048】
従って、この例では、候補組成物は、代替コンポーネント(X)および第二コンポーネント(B)を有する。
【0049】
次に、2つのコンポーネントのうちもう一つ(この例では第一コンポーネント(A))並びに第三コンポーネント(理解の簡便化のため、この例では、第三コンポーネント(C)と呼ぶ)を有する第一の既知の比較組成物を見出すため、データベース検索が実行される。
【0050】
従って、この例では、第一の既知の比較組成物は、第一コンポーネント(A)および第三コンポーネント(C)を有する。
【0051】
次の工程において、もう一つのコンポーネントの代わりの代替コンポーネント(この例では理解の簡便化のため、代替コンポーネント(X)と呼ぶ)並びに第三コンポーネント(C)を有する第二の既知の比較組成物を見出すため、データベース検索が実行される。
【0052】
従って、この例では、第二の既知の比較組成物は、代替コンポーネント(X)および第三コンポーネント(C)を有する。
【0053】
別の工程において、第一および第二の既知の比較組成物が、データベースに記憶された第一および第二の既知の比較組成物の測定点に関して、類似基準(例えば、所定の閾値)を調べることにより比較される。
【0054】
第一および第二の既知の比較組成物が十分類似していると評価された場合、その組成物が生成され、候補組成物において、代替コンポーネント(X)が2つのコンポーネントのうちのもう一つ(この例では第一コンポーネント(A))と置き換えられる。
【0055】
次に、生成された組成物が出力される。
【0056】
候補組成物において、望ましくない代替コンポーネント(X)が第一コンポーネント(A)と置き換えられ得るという結論を、十分類似した比較組成物が可能にしており、それにより、実際に使用可能な組成物または調剤の予測が取得されるという驚くべき発見を、本発明の実施形態は用いている。組成物または調剤は、その後、大量処理環境(HTE)装置によって生成および検査されることにより正当化できる。
【0057】
本発明の1つの実施形態において、複数の候補組成物が見出された場合、複数の候補組成物のうちの少なくとも1つが類似基準を満たすことが確立されるまで、第一および第二の比較組成物のデータベース検索工程、更に比較組成物の比較工程が反復され、当該組成物がこの候補組成物用に生成され、その結果、代替コンポーネント(X)がこの候補組成物において2つのコンポーネントのうちのもう1つと置き換えられる。最高レベルの類似性を有する選択候補組成物が、特に信頼できる予測が実際的に使用可能な組成物用に提供されるので、斯かるやり方は有利である。
【0058】
1つの実施形態において、複数の候補組成物が見出された場合、複数の候補組成物において類似基準が満たされることが確立されるまで、第一および第二の比較組成物のデータベース検索工程、更に比較組成物の比較工程が複数回反復される。斯かるプロセスにおいて、類似性レベルを選別基準として用いて候補組成物が選別されるという別の工程が実行され、最高レベルの類似性を有する選択候補組成物が選択され、当該組成物を生成する工程が実行され、その結果、代替コンポーネント(X)がこの候補組成物において2つのコンポーネントのうちのもう1つと置き換えられる。
【0059】
本発明の上述の実施形態の全てにおいて、流動特性(例えば粘度)の極値の第一距離および彩色特性(例えば色の濃さ)の極値の第二距離が、分散剤濃度および固形物含量の種々の割合に関し、第一および第二の既知の比較組成物の間で、類似性レベル用に各例で考慮される。
【0060】
距離は、例えば、第一および第二の既知の比較組成物間の極値の最短の長さであってもよい。同様に、距離は、ユークリッド空間における費用関数の極値間の直線の長さ、あるいは多次元距離であってもよく、後者の場合には、次元(一定の固形物含量における種々の分散剤濃度に関する測定パラメーター、例えば粘度測定値および/または色の濃さの測定値)の数、または測定点当たりの複数値に依存する。
【0061】
更に、類似性レベル用に、データベースに記憶された組成物用に異なる保存期間の測定点が記憶され、各保存期間用に第一および第二距離を確認するため、異なる保存期間の測定点に関して、第一および第二比較組成物の比較工程が実行される。
【0062】
組成物のマトリックス中の固形物の不均一性または沈殿傾向を試験するため、組成物は1つ以上の保存期間後(例えば、摂氏50度で2週間の保存後、摂氏50度で4週間の保存後など)に再び測定され、組成物中の固形物の潜在的な安定性不足、不均一性、または沈殿傾向に関する情報が提供される。
【0063】
更に、類似性レベルは極値の第一および第二距離の組み合わせから得られる。
【0064】
従って、比較組成物間の各2つの距離は、次元(測定パラメーター、例えば一定の固形物含量における種々の分散剤濃度、または一定の分散剤濃度における種々の固形物含量に関する、粘度または色の濃さ)毎に相互に加算されてもよいし、あるいは全体的に加算されてもよい。距離の組み合わせが所定の閾値を満たさないあるいは超えている場合、類似性レベルは満たされていると見なされる。
【0065】
別の工程として、測定点の次元のうちの少なくとも1つの指定が入力されるが、その場合、選択次元は斯かる組み合わせにおいて優位なものである。選択次元は、例えば、粘度または色の濃さである。
【0066】
あるいは、別の工程が提供され、測定点の値範囲に関して指定が入力され、第一および第二の既知の比較組成物を比較する工程において、データベースに記憶された第一および第二の既知の比較組成物の測定点に関して類似基準が検査されるが、測定点は特定された値範囲においてのみ評価される。入力されるのは、例えば顧客要求、例えば望ましい色の濃さの範囲、望ましい保存安定性の範囲、望ましい粘度などである。
【0067】
あるいは、類似性レベルは測定点の曲線の比較に対応しており、その場合、比較は、最小二乗、差の二乗、分散分析、測定点の文字列比較、相関などの方法によって実行される。
【0068】
比較組成物の測定点の各曲線は2つの情報として解釈されてもよく、その類似性は、例えば、ファジー検索可能手法(例えば、S.Miyamotoによる「Two approaches for information retrieval through fuzzy associations,IEEE Trans. Sys. Man Cybernet. SMC-19 123-30-1990b Fuzzy Sets in Information Retrieval and Cluster Analysis, 1989,Dordrecht: Kluwer」)によって評価可能である。
【0069】
本方法の上述の全ての実施形態において、第一の既知の比較組成物は、2つのコンポーネントのうちのもう一つ(A)並びに第三コンポーネント(C)に加え、少なくとも1つの更なるコンポーネント(例えば、D、D+E、D+E+F、…)を有するものであり、第二の既知の比較組成物は、第三コンポーネント(C)並びに代替コンポーネント(X)に加え、前記更なるコンポーネントのうちの1つ(D)、いくつか(D+E、D+E+F)、または全て(D+E+F、…)を有するものである。
【0070】
少なくとも1つの更なるコンポーネントは、色素、充填剤、着色剤、蛍光増白剤、セラミック材料、磁性材料、ナノ分散固形物、金属、殺生物剤、農薬、医薬品、結合剤、溶媒、湿潤剤、補助均染剤、硬化剤、および消泡剤から成る群から選択される。
【0071】
更に、固形物は無機色素、有機色素、またはカーボンブラック色素である。
【0072】
分散剤は化学的な両親媒性、イオン性、非イオン性または低分子量化合物、および/または高分子量化合物であってよい。
【0073】
更に、本方法の上述の全ての実施形態において、候補組成物の2つのコンポーネントのうちの1つが固形物である場合、固形物は無機色素、有機色素、またはカーボンブラック色素であり、従って第三コンポーネント(C)は、同様に、無機色素、有機色素、またはカーボンブラック色素であり、候補組成物の2つのコンポーネントのうちの1つが分散剤である場合、分散剤は単純な低分子量化合物および/または複雑な高分子量化合物であり、従って第三コンポーネント(C)は、同様に、単純な低分子量化合物および/または複雑な高分子量化合物である。
【0074】
斯かる手法により、2つのコンポーネントのうちの1つおよび第三コンポーネントは、例えば、色、サイズ、構造、重量、荷電などの特性の面で類似であると言える。
【0075】
データベースに記憶される第一および第二の既知の比較組成物または比較調剤の測定点は、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の製造並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の検査のための装置を用いて、分散剤濃度および固形物含量に関連した流動特性(例えば粘度)および彩色特性(色の濃さ)に関して行われた以前の検査によって得られたものである。
【0076】
塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の製造並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の検査を実行するための適切な装置は、例えば、WO 2017/072351 A2に記載されているChemspeed Technologies AG製の大量処理環境(HTE)装置、またはEP 2 420 817 B1の第 0077節に記載されている大量処理研究装置(大量処理装置)である。
【0077】
コンピュータシステムは、データベースおよび塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の製造並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の検査を実行するための装置を用いて、通信インターフェースを通して通信するものであり、通信インターフェースは、USB、イーサーネット、WLAN、LAN、ブルートゥース(登録商標)、または別のネットワークインターフェースによって実施されるものである。
【0078】
生成された組成物または調剤は、コンピュータシステムのユーザーシステムに出力されてもよい。加えてまたはその代わりに、調剤は生成された組成物用に記憶されてもよいし、あるいは生成された組成物から、例えば試験計画プログラムによって1つ以上の調剤が生成されてもよく、記憶されている調剤または試験計画プログラムによって生成される調剤はプロセッサへ出力され、プロセッサは、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の製造並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の検査のための装置を制御する。
【0079】
装置は少なくとも2つの処理ステーションを有し、少なくとも2つの処理ステーションは、調剤および/または生成された調剤のコンポーネントを輸送するため、自動推進式の手段(例えば、調剤または調剤が適用される基質(いわゆるパネル)を受納するのに適した容器)が処理ステーション間を移動できるようになっている輸送システムを通して、相互に連結されている。生成された調剤は、例えば、調剤を受納するのに適した容器、特にプラスチックまたはガラス製の容器に入れられ、処理ステーション間を輸送される。同様に、生成された調剤は基質またはパネルに適用され、基質またはパネルは適用された調剤と一緒に処理ステーション間を輸送される。基質またはパネルは、調剤がユーザーによって適用可能な任意の素材、例えば、特にガラス、プラスチック、コンクリート、木材、金属、石などで構成されていてもよい。プロセッサは、生成された組成物または調剤を製造するための装置を作動し、生成された調剤の製造、および調剤の分散剤濃度および固形物含量に関連した流動特性および彩色特性の検査が、少なくとも2つの処理ステーションで行われる。例えば、流動特性および彩色特性の検査が行われる。その結果、流動特性および彩色特性の検査結果は、コンピュータシステムのユーザーインターフェースへ出力され、および/または流動特性および彩色特性の検査結果はデータベースに記憶される。従って、その結果またはデータベースに記憶された調剤の測定点が、以後のプロセスで使用可能となる。
【0080】
本発明の別の態様は、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物を生成するための、データベースおよびユーザーインターフェースを有するコンピュータシステムであり、当該コンピュータシステムは、上述の方法を実行するように構成されている。
【0081】
本発明の別の態様は、上述の方法を実行するための、プロセッサによって実行可能な命令を含む、コンピュータプログラム、デジタル記憶媒体、またはコンピュータプログラム製品である。
【0082】
本発明の別の態様は、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の製造プロセス並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の検査を実施するための装置であって、少なくとも2つの処理ステーションを有し、少なくとも2つの処理ステーションは、組成物および/または生成された調剤のコンポーネントを輸送するため、自動推進式の手段が処理ステーション間を移動できるようになっている輸送システムを通して、相互に連結されており、調剤の製造、および各組成物の分散剤濃度および固形物含量に関連した、流動特性(例えば粘度)および彩色特性(例えば色の濃さ)の検査の両方が、少なくとも2つの処理ステーションで行われるものであり、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物を生成するためのコンピュータシステムは、データベースおよびユーザーインターフェースを有しており、上述の方法を実行するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0083】
以下の図面において、本発明の実施形態が更に詳細に例示的に記載される。
【0084】
【
図1】塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物の生成方法のフローチャートを示しており、当該塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物は、固形物および分散剤を含んでいる。
【
図2】コンピュータシステム、データベース、およびHTE装置を有するシステムのブロック図を示す。
【
図3A】酸化第二鉄赤色素および分散剤を有する組成物、粘度測定値、および当該分散剤を有する組成物の色の濃さを各々示す図である。
【
図3B】酸化第二鉄赤色素および分散剤を有する組成物、粘度測定値、および当該分散剤を有する組成物の色の濃さを各々示す図である。
【
図3C】酸化第二鉄赤色素および分散剤を有する組成物、粘度測定値、および当該分散剤を有する組成物の色の濃さを各々示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
図1は、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の組成物の生成方法のフローチャートを示している。
【0086】
本方法は、コンピュータシステム、例えば、制御コンピュータ、ノートブック、標準コンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォンなどで実行可能である。
【0087】
本方法は、一般的に、化学実験室において使用可能である。一連の個別分析装置および大量処理環境(HTE)装置、すなわち塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の製造プロセス並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の検査を実施するための装置が実験室には備わっている。HTE装置は複数のユニットやモジュールを有しており、それらは、物質および物質混合体の様々な化学的または物理的パラメータを分析したり測定したり、ユーザーが入力するレシピまたは調剤に基づいて、複数の様々な化学製品を組み合わせたり合成したりできる。
【0088】
コンピュータシステムはデータベースにアクセスでき、データベースには、既知の組成物または調剤が記憶されているし、固形物含量および分散剤濃度用に関する特定の調剤の各測定点が、既知の調剤の固形物および分散剤の組み合わせ用に記憶されている。流動特性および彩色特性が、特定の調剤の各測定点用に記憶されている。
【0089】
流動特性は粘度であってもよく、彩色特性は色の濃さであってもよい。流動特性および彩色特性の両方がHTE設置によって確認できる。
【0090】
第1工程10において。新しい組成物または調剤を開発したいと思っているユーザー(例えば研究者)は、コンピューターシステム100のユーザーインターフェース101を通して、組成物の第一コンポーネントおよび第二コンポーネントに関する望ましい組み合わせの指定を入力する。
【0091】
本発明の方法によれば、第一コンポーネントおよび第二コンポーネントは固形物および分散剤である。
【0092】
次の工程11において、探索基準として、第一コンポーネントおよび第二コンポーネントの望ましい組み合わせを用いて、データベース検索が実行される。
【0093】
データベース検索が、探索基準を満たす既知の組成物または調剤を提供するならば、当該既知の組成物または調剤が、次の工程13において出力される。
【0094】
データベース検索が、探索基準を満たす既知の組成物または調剤を提供しない場合、次の工程14において、2つのコンポーネントのうちの1つ並びにもう1つのコンポーネントの代わりの代替コンポーネントを有する候補組成物または候補調剤を見出すため、探索基準として、第一コンポーネントおよび第二コンポーネントを有する組成物または調剤のデータベース検索が実行される。
【0095】
斯かる目的のため、次の工程15において、2つのコンポーネントのうちのもう1つ並びに第3コンポーネントを有する第一の既知の比較組成物または比較調剤を見出すため、データベース検索が実行される。
【0096】
更に、次の工程16において、もう1つのコンポーネントの代わりの代替コンポーネント並びに第三コンポーネントを有する第二の既知の比較組成物または比較調剤を見出すため、データベース検索が実行される。
【0097】
工程15および16の後、工程17において、データベースに記憶された第一および第二の既知の比較組成物または比較調剤に関連して、類似性基準(例えば、所定の閾値)を調べることにより、第一および第二の既知の比較組成物または比較調剤の比較が実行され、第一および第二の既知の比較組成物が十分類似していると評価された場合には、その組成物または調剤が次の工程19で出力され、その結果、候補組成物または候補調剤において、代替コンポーネントが2つのコンポーネントのうちのもう1つと置き換えられ、生成された組成物または調剤が出力される(工程13を参照)。
【0098】
第一および第二の既知の比較組成物が十分類似していないと評価された場合には、工程14~18が再び実行される。
【0099】
図2は、コンピューターシステム100と、データベース200と、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の製造プロセス並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の検査を実施するための装置(HTE装置)500とを有するシステムのブロック図を示している。
【0100】
システムのコンポーネントおよびそのコンポーネントの基本的機能は、
図1との関連で既に記載されている。コンピュータシステム100は、例えば、ユーザー007によって操作されるノートブック、標準コンピュータ、タブレットコンピュータ、またはスマートフォンであってよい。ユーザー007は、例えば、コンピュータシステムのインターフェース101を通して、組成物または調剤の望ましい組み合わせの指定を入力する(
図1の工程10も参照)。以下に記載される組成物は調剤であってもよい。
【0101】
コンピュータシステム100はデータベースにアクセスでき、データベースには、既知の組成物または調剤が記憶されているし、固形物含量および分散剤濃度用に関する特定の調剤の各測定点が、既知の組成物の固形物および分散剤の組み合わせ用に記憶されている。
【0102】
加えて、コンピュータシステム100は、アプリケーションプログラム並びにHTE装置500のプロセッサ520を制御するための駆動装置を含むプロセッサ102を有する。図示されているように、HTE装置500は、物質および物質混合物の様々な化学的または物理的パラメーターを分析および測定できる複数のユニットおよびモジュール506~514を有している。例えば、ユニット506は、粘度を調整および決定可能な分析装置である。例えば、ユニット508は、(いわゆるL*a*b値を用いて)一体型分光光度計に基づき、明度を確認可能な分析装置である。例えば、ユニット510はミキサーであり、ユニット512、ユニット514は合成ユニットである。ユーザー7はユーザーである。
【0103】
加えて、コンピュータシステム100は主記憶装置103を有しており、それには、候補組成物K0および更なる候補組成物K1~Kn(nは2以上)並びに比較組成物IおよびIIが記憶できる。
【0104】
図示されているように、コンピュータシステム100は、データベース200に、データ、例えば組成物および/または測定値、およびコンポーネントの特性を記憶できるし、データベース200からデータを検索することもできる。同様に、コンピュータシステム100は、データ(例えば要求)をHTE装置500に送信したり、その結果を受信したりできる。その後、結果は、データベースシステム200および/または(インターフェース101を通して)ユーザー007へ送信できる。加えて、HTE装置500によって確認された結果は、データベース200へ直接入力できる。
【0105】
図3A、
図3B、および
図3Cは、各々酸化第二鉄赤色素および分散剤を有する組成物に関する3つの図を示す。
【0106】
図3Aは、酸化第二鉄赤色素の一定濃度における異なる(または種々の)分散剤濃度と関連付けて、分散剤1および酸化第二鉄赤色素を有する組成物の色の濃さおよび粘度の測定値を曲線形式で示したものである。
【0107】
図3Bは、酸化第二鉄赤色素の一定濃度における異なる(または種々の)分散剤濃度と関連付けて、分散剤2および酸化第二鉄赤色素を有する組成物の色の濃さおよび粘度の測定値を曲線形式で示したものである。
【0108】
図3Cは、酸化第二鉄赤色素の一定濃度における異なる(または種々の)分散剤濃度と関連付けて、分散剤3および酸化第二鉄赤色素を有する組成物の色の濃さおよび粘度の測定値を曲線形式で示したものである。
【0109】
図3A~3Cに示される分散剤1、2、および3は、色素親和基を有するコポリマーの異なる水溶液である。分散剤1、2、および3は、コポリマー、その外観(澄明、濁り、または色)、酸価(mg KOH/g)、粘度(摂氏25度におけるmPa・s)、引火点(摂氏)、および/または融点(摂氏)において相互に異なっている。
図3A~3Cにおいて、粘度および色の濃さの測定値が種々の分散剤含量を有する組成物に関して示されており、分散剤の含量は、酸化第二鉄赤色素の一定量(この場合65%)に対し、1%~30%の範囲で異なっている。組成物の残りは、更なる組成物、この場合、添加物、消泡剤、水、および殺生物剤から成っている。
【0110】
図3A、3B、および3Cは、更に、異なる保存期間後の(同一の分散剤を異なる含量で有する)各組成物の色の濃さおよび粘度の測定値も示している。異なる保存期間とは、i)生成後(測定点は色の濃さに関して十字形で示され、粘度に関しては正方形で示されている)、ii)組成物を摂氏50度で2週間保存した後(測定点は色の濃さに関して三角形で示され、粘度に関しては星形で示されている)、iii)組成物を摂氏50度で2週間保存した後(測定点は色の濃さに関して菱形で示され、粘度に関しては円形で示されている)である。
【0111】
色の濃さおよび粘度の測定値は、塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の製造並びに塗料、ワニス、印刷インキ、研削用樹脂、色素濃縮物、または他のコーティング剤の調剤の検査を実行するための適切な装置(WO 2017/072351 A2に記載されている、Chemspeed Technologies AG製のHTE装置)によって測定された。保存安定性は、不均一性または沈殿傾向に基づいて測定され、その場合、プレート/スピンドルが下降移動中の垂直抗力を測定することにより、離液や沈殿などの不均一性が検出された。同様に、組成物の粘度測定(希釈による粘度調整を含む)は、ブレードアジテーターによって輸送手段(ガラス製の容器)中の組成物の粘度を決定することにより、HTE装置を用いて実施された。同様に、組成物の明度も、一体型分光光度計に基づきHTE装置によって測定された(いわゆるL*a*b値)。
【0112】
本発明の方法において、第一の既知の比較組成物(
図1の工程15を参照)は、
図3Aにおける1つ以上の組成物である。従って、酸化第二鉄赤色素が第三コンポーネントであり、分散剤1が2つのコンポーネントのうちのもう1つである。更に、第二の既知の比較組成物(
図1の工程16を参照)は、
図3Bにおける1つ以上の組成物である。従って、酸化第二鉄赤色素は第三コンポーネントであり、分散剤2が代替コンポーネントである。
【0113】
本発明の方法によれば、データベースに記憶されている第一および第二の既知の比較組成物の測定点に関して、類似性基準(例えば、以前に確立された閾値)を調べることにより、第一および第二の既知の比較組成物間での比較が行われる。
【0114】
例えば、粘度の極値の第一距離および/または色の濃さの極値の第二距離が、各例において、第一(
図3A)および第二(
図3B)の既知の比較組成物間で、類似性レベルのために、分散剤濃度および固形物含量に関して考慮される。
【0115】
図3Aおよび
図3Bの比較により明らかなように、色の濃さは、全ての測定された組成物に関し、16%~19%の分散剤含量を有する組成物において極値(この場合、約100%)を示している(
図3AのM1および
図3BのM3に示されている)。分散剤含量に関して、
図3Aおよび
図3B間の色の濃さの極値M1、M2は相互に離れていない、あるいは相互に余り離れていない(距離A1を参照)ので、第一(
図3A)および第二(
図3B)の既知の比較組成物は十分類似していると評価される。この場合、極値の距離は、例えば、分散剤濃度の約2%であってよい。例えば、距離が分散剤濃度の3%未満であることを、閾値として機能する類似基準が特定しているならば、比較組成物は類似していると評価される。同様に、
図3Aおよび3Bの組成物に関して、保存期間曲線の交差点を比較しても、余り相互に離れていない(分散剤濃度の3%未満)ことは、
図3Aおよび3Bから明白である。従って、斯かる交差点も、同様に、類似性レベルの距離であると評価され、従って、第一(
図3A)および第二(
図3B)の既知の比較組成物は十分類似していると評価される。類似性レベルは、測定点の曲線の比較に対応するものであり、比較は、最小二乗、差の二乗、分散分析、測定点の文字列比較、相関などの方法によって行われる。
図3Aおよび3Bにおいて、異なる分散剤を有する組成物に関して示されるように、製造後の組成物の測定値の曲線は、極めて類似した挙動を示しており、従って十分類似していると評価できる。
【0116】
第一および第二の既知の比較組成物が十分類似していると評価されたのであるから、特許請求されている方法に従って、当該組成物は生成できる、すなわち候補組成物において、代替コンポーネント(分散剤2)が2つのコンポーネントのうちのもう1つと置き換えられ、その結果、生成された組成物が出力される。
【0117】
更に、本発明の方法によれば、第一の既知の比較組成物(
図1の工程15を参照)は
図3Aの1つ以上の組成物である。従って、酸化第二鉄赤色素が第三コンポーネントであり、分散剤1が2つのコンポーネントのうちのもう1つであり、第二の既知の比較組成物(
図1の工程16を参照)は
図3Cの1つ以上の組成物である。従って、酸化第二鉄赤色素が第三コンポーネントであり、分散剤3が代替コンポーネントである。
【0118】
図3Cから明白なように、約13%の分散剤含量を有する組成物に関して、色の濃さの極値は約100%の割合でM3であり、粘度(mPas)は、約15~23%の分散剤含量において最小値である。少なくとも
図3Aおよび3Bの色の濃さの極値M1およびM2が、
図3Cの色の濃さの極値M3の極値から(かなり)離れている(距離は分散剤濃度の約5%)ので、第一(
図3A)および第二(
図3C)の既知の比較組成物は十分類似してはいないと評価される。同様に、保存期間曲線の交差点は、少なくとも色の濃さに関しては、互いに(かなり)離れていることが、
図3Aおよび3Cから明白である。従って、この場合、斯かる交差点は類似性レベルの距離として同様に考慮でき、第一(
図3A)および第二(
図3C)の既知の比較組成物は十分類似してはいないと評価される。
【符号の説明】
【0119】
10~19:工程
7:ユーザー
100:コンピュータシステム
101:インターフェース
102:プロセッサ
103:主記憶装置
200:データベース
500:HTE装置
506:ユニット(分析装置)
508:ユニット(分析装置)
510:ユニット(ミキサー)
512:ユニット(合成ユニット)
514:ユニット(合成ユニット)
520:プロセッサ
M1:
図3Aの組成物の色の濃さの極値
M2:
図3Bの組成物の色の濃さの極値
M3:
図3Cの組成物の色の濃さの極値
A1:
図3Aと
図3Bを比較した場合の、M1およびM2間の距離
A2:
図3Bと
図3Cを比較した場合の、M2およびM3間の距離