(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】EBウイルスBNLF2b遺伝子によりコードされるポリペプチド及び検出におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/38 20060101AFI20240709BHJP
C07K 14/05 20060101ALI20240709BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240709BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240709BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240709BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240709BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240709BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240709BHJP
C07K 16/08 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
C12N15/38
C07K14/05 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
G01N33/574 A
C07K16/08
(21)【出願番号】P 2022540998
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 CN2020139310
(87)【国際公開番号】W WO2021136082
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】202010001204.2
(32)【優先日】2020-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512287595
【氏名又は名称】シアメン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】XIAMEN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.422 Siming Nan Road,Siming District Xiamen Fujian,361005 CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】520192784
【氏名又は名称】シァメン・イノドックス・バイオテック・カンパニー・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】508198258
【氏名又は名称】ベイジン ワンタイ バイオロジカル ファーマシー エンタープライズ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】リー ティントン
(72)【発明者】
【氏名】コー ションシアン
(72)【発明者】
【氏名】クオ シアオイー
(72)【発明者】
【氏名】ホン ツォンミン
(72)【発明者】
【氏名】ソン リウウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウェン シュンホア
(72)【発明者】
【氏名】タン チアパオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン チュン
(72)【発明者】
【氏名】シア ニンシャオ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106706921(CN,A)
【文献】Database Genbank, Accession No. YP_401720.3 [online], 2018.08.13 [検索日 2023.09.05], インターネット:<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/yp_401720.3>
【文献】Database Genbank, Accession No. QAC21817.1 [online], 2019.01.18 [検索日 2023.09.05], インターネット:<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/QAC21817>
【文献】Database Genbank, Accession No. QAQ81516.1 [online], 2019.01.18 [検索日 2023.09.05], インターネット:<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/QAQ81516.1>
【文献】Database Genbank, Accession No. QAC38599.1 [online], 2019.01.18 [検索日 2023.09.05], インターネット:<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/QAC38599.1>
【文献】Database Genbank, Accession No. QAH68330.1 [online], 2019.01.18 [検索日 2023.09.05], インターネット:<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/QAH68330.1>
【文献】The Journal of Immunology,2013年,Vol. 191, No. 11,pp. 5398-5409
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/38
C07K 14/05
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/63
G01N 33/574
C07K 16/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が鼻咽頭がんを有するか、又は鼻咽頭がんのリスクがあるかを決定するためのキットであって、前記キットが捕捉試薬を含み、該捕捉試薬が単離されたポリペプチド及びそのバリアントから選択され、ここで、単離されたポリペプチドが、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の
15~74個の連続したアミノ酸残基で構成され、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基5~11、アミノ酸残基16~23、アミノ酸残基31~39、又はアミノ酸残基53~60から選択される少なくとも
2つの配列を含
み、
ここで、バリアントは
、1、2、
または3
つのアミノ酸残基の置換
によってのみ誘導され
、抗EBV抗体によって認識および結合される活性
を保持
するポリペプチドは異なり;前記バリアントは、配列番号101に示されるアミノ酸位置を参照して、以下の位置:6、9、10、11、16、31、33、38、39、53、54、56、57、58、59、95、96、および97に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を含まない、上記キット。
【請求項2】
BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質が、配列番号101に示される配列を有する、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
単離されたポリペプチドが、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質
のアミノ酸残基5~23、アミノ酸残基16~39、アミノ酸残基31~60、アミノ酸残基5~39、アミノ酸残基16~60、又はアミノ酸残基5~60を含む、請求項1に記載の
キット。
【請求項4】
単離されたポリペプチドが、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基1~25、アミノ酸残基14~52、アミノ酸残基1~52、アミノ酸残基14~74、アミノ酸残基11~65、アミノ酸残基11~74、またはアミノ酸残基1~74を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
アミノ酸残基1~25が配列番号102に示される配列を有し、アミノ酸残基14~52が配列番号88に示される配列を有し;アミノ酸残基1~52が配列番号91に示される配列を有し;アミノ酸残基14~74が配列番号90に示される配列を有し;アミノ酸残基11~65が配列番号103に示される配列を有し;アミノ酸残基11~74が配列番号104に示される配列を有し;アミノ酸残基1~74が配列番号89に示される配列を有する、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
単離されたポリペプチドが、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質
のアミノ酸残基1~25、アミノ酸残基14~52、アミノ酸残基1~52、アミノ酸残基14~74、アミノ酸残基11~65、アミノ酸残基11~74、又はアミノ酸残基1~74からなる群から選択される配列からなる、請求項1~
5のいずれか1項に記載の
キット。
【請求項7】
バリアントが、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質に示されるアミノ酸位置に対して、以下の位置:5、7、8、12、13、14、15、19、22、24、25、32、34、35、36、37、40、41、42、52、55、60、61、89、91、93または98位に対応す
る1、2、
又は3
つのアミノ酸位置においてアミノ酸置換を含
む、
請求項1に記載のキット。
【請求項8】
バリアントが、5位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、7位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、8位に対応する位置でのアミノ酸のGによる置換、12位に対応する位置でのアミノ酸のG、T、D又はSによる置換、13位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、14位に対応する位置でのアミノ酸のGによる置換、15位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、22位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、24位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、25位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、32位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、34位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、35位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、36位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、37位に対応する位置でのアミノ酸のA、N、Q、SまたはRによる置換、40位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、41位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、42位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、52位に対応する位置でのアミノ酸のK、H、A、SまたはDによる置換、55位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、60位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、61位に対応する位置でのアミノ酸のK、H、SまたはAによる置換、89位に対応する位置でのアミノ酸のA又はTによる置換、91位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、93位に対応する位置でのアミノ酸のQによる置換、98位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換からなる群から選択され
る1、2、
又は3
つ)のアミノ酸置換を含
む、
請求項1に記載のキット。
【請求項9】
捕捉試薬が、固体支持体の表面に結合しているか、又は固体支持体に結合することができる修飾基を有
する請求項1に記載のキット。
【請求項10】
修飾基がビオチン又はアビジンである、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
固体支持体が、磁性ビーズ及びマイクロタイタープレートからなる群から選択される、請求項9に記載のキット。
【請求項12】
検出試薬をさらに含み、検出試薬
が検出可能な標識を有する単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択され
、前記単離されたポリペプチド又はそのバリアントが請求項1~8のいずれか1項に定義される、請求項
1~11のいずれか1項に記載のキット。
【請求項13】
検出可能な標識が、酵素、化学発光試薬、蛍光色素又はビオチンからなる群から選択される、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
検出試薬をさらに含み、検出試薬が、検出可能な標識を有する二次抗体から選択され
る、請求項1~11のいずれか1項に記載のキット。
【請求項15】
検出可能な標識が、酵素、化学発光試薬、蛍光色素又はビオチンからなる群から選択される、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
二次抗体が、検出される抗体が由来する種の抗体に特異的である、請求項14に記載のキット。
【請求項17】
二次抗体が、抗IgG抗体、抗IgM抗体、又は抗IgA抗体である、請求項14に記載のキット。
【請求項18】
キットが、(i)試料を収集又は保存するためのデバイス
;(ii)
緩衝液、希釈液、ブロッキング溶液、及び/又は標準から選択される、検出を行うために必要な追加の試薬
からなる群から選択される1つ以上の試薬又はデバイスをさらに含む、請求項
1~
11のいずれか1項に記載のキット。
【請求項19】
キットの製造において、BNLF2b遺伝子によりコード化されたタンパク質に特異的な抗体のレベルを決定することができる試薬の使用であって、
該キットは、対象が鼻咽頭がんを有するか、又は鼻咽頭がんのリスクがあるかどうかを決定するために使用され
、
ここで、BNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体のレベルを決定することができる試薬が、請求項1~
8のいずれか1項に
定義される単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択される
捕捉試薬を含
む、上記試薬の使用。
【請求項20】
捕捉試薬が、請求項9~11のいずれか1項に定義される単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
BNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体のレベルを決定することができる試薬がさらに検出試薬を含み、検出試薬が
検出可能な標識を有する単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択され、
前記単離されたポリペプチド又はそのバリアントが請求項1~8のいずれか1項に定義される、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
検出可能な標識が、酵素、化学発光試薬、蛍光色素又はビオチンからなる群から選択される、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
BNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体のレベルを決定することができる試薬が、さらに検出試薬を含み、検出試薬が、検出可能な標識を有する二次抗体から選択され
る、
請求項19に記載の使用。
【請求項24】
検出可能な標識が、酵素、化学発光試薬、蛍光色素又はビオチンからなる群から選択される、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
二次抗体が、検出される抗体が由来する種の抗体に特異的である、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
二次抗体が、抗IgG抗体、抗IgM抗体又は抗IgA抗体である、請求項23に記載の使用。
【請求項27】
対象がヒトである、請求項19~26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
試料が血液試料である、請求項19~26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
試料が、全血、血漿又は血清である、請求項19~26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
試薬が、免疫学的アッセイによってBNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体のレベルを決定することができる、請求項19~26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項31】
免疫学的アッセイが、酵素免疫アッセイ、化学発光免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ又はラジオイムノアッセイからなる群から選択される、請求項30に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、免疫学的検出、特に腫瘍の免疫学的診断の分野に関する。具体的には、本発明は、抗エプスタイン-バーウイルス(EBV)抗体のレベルに基づいて鼻咽頭がんを診断する方法、及び本方法で使用するためのキットを提供する。また、本発明は、上記診断に使用されるEBV BNLF2b遺伝子によりコードされるポリペプチド、及び鼻咽頭がんの診断におけるその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
鼻咽頭がんは、上咽頭腔の上壁及び外側壁に発生する悪性腫瘍であり、その発生率は耳、鼻及び咽頭の悪性腫瘍の中で第1位である。中国は鼻咽頭がんの高発生地域であり、広東及び広西で最も高い発生率を示す[1]。鼻咽頭がんの発生は、EBV感染、遺伝因子、環境因子などの多くの因子に関係する[2]。鼻咽頭がんの初期症状は明らかではなく、発生部位が比較的隠れているため、ほとんどの鼻咽頭がんは進行期まで発見できない[3]。しかしながら、早期鼻咽頭がんの5年生存率は90%以上に達するが、進行鼻咽頭がんの予後は有意に低い[3]。一方、早期鼻咽頭がんは局所放射線療法で治療可能であり、進行鼻咽頭がんは化学療法による治療を必要とする。したがって、早期診断は、鼻咽頭がん患者の生存率及び生活の質を改善するための鍵である。
【0003】
早くも1976年に、Werner Henleらは、鼻咽頭がん患者の血清中のEBV IgA抗体が有意に増加したことを明らかにした[4]。その後、鼻咽頭がん患者の血清中のEBNA1、EA-D、VCA、及び他のタンパクに対する抗体レベルが有意に上昇することが複数の研究で明らかにされた[5-12]。初期のEBV抗体検出は主に免疫蛍光法に基づくもので、処理能力が低く、時間がかかり、主観性が高いため、大規模スクリーニング[13-15]の必要性を満たすことは困難であった。酵素免疫測定法(ELISA)の開発に伴い、各国の研究者らは検出スループットと客観性を大幅に向上させた多数のEBV抗体ELISA検出キットを確立した[16-23]。さらに、EBNA1-IgAとVCA-IgAの組み合わせが最も広く使用されている様々な血清学的マーカーの組み合わせによって、鼻咽頭がんスクリーニングの感度及び特異度がさらに改善される可能性があることも複数の研究で明らかにされている[24-26]。プロスペクティブコホート研究の結果から、スクリーニングによって鼻咽頭がんの早期診断率が10~20%から60%以上に上昇する可能性があることが示された[27-29]。これに基づき、著者らの研究グループは2段階スクリーニング戦略を提案した。すなわち、EBNA1-IgAとVCA-IgAを用いた組み合わせスクリーニングに基づいて、第一段階で同定された高リスク集団においてEAD-IgAのさらなる検出を行い、EAD-IgA陽性患者を鼻咽頭内視鏡で確認した。2段階スクリーニングでは、鼻咽頭がんスクリーニングの陽性予測値が4.69%から18.52%に上昇した[30]。
【0004】
EBV抗体レベルに加えて、鼻咽頭がん患者の血中のEBV DNA及びマイクロRNAのレベルも有意に上昇した[31-33]。香港のAllan Chanらが実施したプロスペクティブ研究の結果から、EBV DNAの持続陽性結果を鼻咽頭がんスクリーニングの標準として用いることにより、鼻咽頭がんスクリーニングの特異度が有意に改善されることが示された。初回スクリーニングでEBV DNA陽性であった1112人の患者(5.5%)のうち、EBV DNAの持続陽性を示したのはわずか309人で、そのうち34人が最終的に鼻咽頭がんと診断された[34]。スクリーニング基準としてEBVの陽性結果が持続した場合、感度及び特異度はそれぞれ97.1%及び98.6%に達し、陽性予測値は3.06%から11%に上昇し、鼻咽頭がんの早期診断率はスクリーニングによって20%から71%に上昇した[34]。
【0005】
1段階のスクリーニングと比較して、2段階のスクリーニングの陽性予測値は有意に改善され、大規模な鼻咽頭がんスクリーニングの必要性を満たすことができる。しかしながら、2段階スクリーニングのプロセスはより複雑であり、血清学的スクリーニング又はDNAスクリーニングのいずれにもコストがかかる。さらに、DNAの陽性結果が持続すると、さらに採血が必要となり、スクリーニングの困難さがさらに増す。したがって、血清学的抗体スクリーニングのワン工程法は有意に費用対効果が高いが[35]、2段階スクリーニングがより費用対効果が高いかどうかについては、さらなる評価が必要である。さらに、鼻咽頭がんスクリーニングの現在報告されている方法の最も高い陽性予測値は18.52%に過ぎず、スクリーニングを受けた高リスク集団の非鼻咽頭がん患者の少なくとも71.48%が上咽頭内視鏡検査を受けるべきである。しかしながら、上咽頭内視鏡は、鼻咽頭がんスクリーニングのスケールを直接制限する長い時間を要すると同時に、スクリーニングで陽性である非鼻咽頭がん患者にも心理的負担をもたらす。
【0006】
従って、既存の方法よりも高い特異性及び陽性予測値を有し、大規模スクリーニングの必要性を満たすために高いスループット及び低コストの特徴を有し、それによってスクリーニングから利益を得ることができる人の数を増加させる鼻咽頭がんのための新しいスクリーニング方法を開発することが、当技術分野において依然として必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の内容
広範な研究の後、本出願の発明者らは、鼻咽頭がん患者が、対象の血清中のEBV BNLF2b遺伝子によりコードされるタンパク質に特異的な抗体レベルに基づいて、健常な対照と効率的に区別することができることを予期せず発見した(これは、例えば、コーティングのための抗原としてBNLF2b遺伝子によりコードされるタンパク質又はポリペプチド断片を用いる間接法又は二重抗原サンドイッチ法により検出することができる)。加えて、本発明者らは、かなりの創造的努力により、捕獲試薬(例えば、ELISAにおけるコーティングのための抗原)として特に適したBNLF2b遺伝子によりコードされるポリペプチド断片を得た。したがって、本発明者らは、EBV BNLF2b遺伝子によりコードされるタンパク質に対する抗体レベルの検出に基づいて鼻咽頭がんを診断するための方法及びプラットフォームを確立することに成功し、鼻咽頭がんスクリーニングの特異性及び陽性予測値を有意に改善することができる。
【0008】
単離されたポリペプチド又はそのバリアント
第1の実施形態において、本発明は、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質の少なくとも7つの連続するアミノ酸残基からなり、以下の配列:BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基5-11、アミノ酸残基16-23、アミノ酸31-39、またはアミノ酸残基53-60(例えば、アミノ酸残基53-61)の少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つすべて)を含む、単離されたポリペプチドまたはその変異体を提供し;
ここで、バリアントは、それが由来するポリペプチドと、1つまたはいくつか(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、または9個)のアミノ酸残基であり、それが由来するポリペプチドの生物学的機能(例えば、抗EBV抗体によって認識および結合される活性)を保持する。
【0009】
ある実施形態において、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質は、配列番号101に示される配列を有する。
【0010】
本明細書において、本発明のポリペプチド又はそのバリアントの生物学的機能は、限定されるものではないが、エピトープペプチドとしての抗EBV抗体(例えば、BNLF2b遺伝子によりコードされるタンパク質に特異的な抗体)によって認識され、結合される活性を含む。
【0011】
特定の実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基53~60(例えば、アミノ酸残基53~61)、アミノ酸残基5~23、アミノ酸残基16~39、アミノ酸残基31~60(例えば、アミノ残基31~61)、アミノ酸残基5~39、アミノ酸残基16~60(例えば、アミノ酸残基16~61)、またはアミノ酸残基5~60(例えば、アミノ酸残基5~61)を含む。
【0012】
一実施形態において、単離されたポリペプチドは、少なくとも8個(例えば、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも14個、または少なくとも15個)の連続したアミノからなる。BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基であり、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基53~60を含む。
【0013】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基53~61を含む。
【0014】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基51~65を含む。
【0015】
ある実施形態において、アミノ酸残基51~65は、配列番号97に示される配列を有する。
【0016】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の少なくとも15個の連続したアミノ酸残基からなる。
【0017】
1つの実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の少なくとも19個(例えば、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個)の隣接アミノ酸残基からなり、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基5-23を含む。
【0018】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基1~25を含む。
【0019】
ある実施形態において、アミノ酸残基1~25は、配列番号102に示される配列を有する。
【0020】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の少なくとも25個の連続するアミノ酸残基からなる。
【0021】
一実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質の。少なくとも24個(例えば、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個)からなる。BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質の少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、または少なくとも39個の連続したアミノ酸残基を含み、アミノ酸残基16~39を含む。
【0022】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基14~52を含む。
【0023】
ある実施形態において、アミノ酸残基14~52は、配列番号88に示される配列を有する。
【0024】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の少なくとも39個の連続したアミノ酸残基からなる。
【0025】
1つの実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の少なくとも30個の連続したアミノ酸残基からなり、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基31~60を含む。
【0026】
ある実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基31~61を含む。
【0027】
一実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によってコードされた野生型タンパク質の少なくとも35個(例えば、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個)の連続したアミノ酸残基からなり、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基5~39を含む。
【0028】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基1~52を含む。
【0029】
ある実施形態において、アミノ酸残基1~52は、配列番号91に示される配列を有する。
【0030】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の少なくとも53個の連続したアミノ酸残基からなる。
【0031】
一実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質の少なくとも45個(例えば、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、少なくとも50個、少なくとも51個、少なくとも52個、少なくとも53個、少なくとも54個、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、少なくとも63、または少なくとも64)の連続したアミノ酸残基からなり、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基16~60を含む。
【0032】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基16~61を含む。
【0033】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基14~74(例えば、配列番号90に示される配列)を含む。ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の少なくとも61個の連続したアミノ酸残基からなる。
【0034】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基11~65(例えば、配列番号103に示される配列)を含む。ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の少なくとも55個の連続するアミノ酸残基からなる。
【0035】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基11~74(例えば、配列番号104に示される配列)を含む。ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の少なくとも64個の連続したアミノ酸残基からなる。
【0036】
一実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質の少なくとも56個(例えば、少なくとも57個、少なくとも58個、少なくとも59個、少なくとも60個、少なくとも61個、少なくとも62個、少なくとも63個、少なくとも64個、少なくとも65個、少なくとも66個、少なくとも67個、少なくとも68個、少なくとも69個、少なくとも70個、少なくとも71個、少なくとも72個、少なくとも73個、または少なくとも74個)の連続したアミノ酸残基からなり、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基5~60を含む。
【0037】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基5~61を含む。
【0038】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基1~74を含む。
【0039】
ある実施形態において、アミノ酸残基1~74は、配列番号89に示される配列を有する。
【0040】
ある実施形態において、ポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の少なくとも74個の連続したアミノ酸残基からなる。
【0041】
特定の例示的実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基51~56、アミノ酸残基1~25、アミノ酸残基14~52、アミノ酸残基1~52、アミノ酸残基14~74、アミノ酸残基11~65、アミノ酸残基11~74、又はアミノ酸残基1~74からなる群から選択される配列からなる。特定の例示的実施形態において、単離されたポリペプチドは、配列番号88~91、97、102~104からなる群から選択される配列からなる。
【0042】
ある実施形態において、本発明のバリアントは、1、2、3又は4個のアミノ酸残基の置換(例えば、保存的置換又は非保存的置換)によってのみ誘導されるポリペプチドと異なり、それが由来するポリペプチドの生物学的機能(例えば、抗EBV抗体によって認識され、結合される活性)を保持する。
【0043】
特定の実施形態において、バリアントは、次の位置に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を含まない:BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質に示されるアミノ酸位置に対して、6、9、10、11、16、31、33、38、39、53、54、56、57、58、59、95、96、97位。
【0044】
特定の実施形態において、バリアントは、以下の位置に対応する1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)のアミノ酸位置にアミノ酸置換を含む:BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質に示されるアミノ酸位置に対して、5、7、8、12、13、14、15、19、22、24、25、32、34、35、36、37、40、41、42、52、55、60、61、89、91、93または98位。
【0045】
特定の実施形態において、バリアントは、以下の位置に対応する1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のアミノ酸位置にアミノ酸置換を含む:BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質に示されるアミノ酸位置に対して、5、7、8、12、13、14、22、25、32、34、35、36、40、41、42、52、55、60、61、89、91、93または98位。
【0046】
特定の実施形態において、バリアントは、以下からなる群から選択される1つまたはいくつか(例えば、1、2、3、または4)のアミノ酸置換を含む:5位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、7位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、8位に対応する位置でのアミノ酸のGによる置換、12位に対応する位置でのアミノ酸のG、T、D又はSによる置換、13位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、14位に対応する位置でのアミノ酸のGによる置換、15位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、22位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、24位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、25位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、32位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、34位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、35位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、36位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、37位に対応する位置でのアミノ酸のA、N、Q、SまたはRによる置換、40位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、41位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、42位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、52位に対応する位置でのアミノ酸のK、H、A、SまたはDによる置換、55位に対応する位置でのアミノ酸のSによる置換、60位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、61位に対応する位置でのアミノ酸のK、H、SまたはAによる置換、89位に対応する位置でのアミノ酸のAまたはTによる置換、91位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、93位に対応する位置でのアミノ酸のQによる置換、98位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換。
【0047】
特定の実施形態において、バリアントは、以下からなる群から選択される1つまたはいくつか(例えば、1、2、3、または4)のアミノ酸置換を含む:5位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、7位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、8位に対応する位置でのアミノ酸のGによる置換、12位に対応する位置でのアミノ酸のG、T、DまたはSによる置換、13位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、14位に対応する位置でのアミノ酸のGによる置換、22位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、25位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、32位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、34位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、35位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、36位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、40位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、41位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、42位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、52位に対応する位置でのアミノ酸のK、H、A、SまたはDによる置換、55位に対応する位置でのアミノ酸のSによる置換、60位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、61位に対応する位置でのアミノ酸のK、H、SまたはAによる置換、89位に対応する位置でのアミノ酸のAまたはTによる置換、91位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換、93位に対応する位置でのアミノ酸のQによる置換、98位に対応する位置でのアミノ酸のAによる置換。
【0048】
特定の実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によってコードされる野生型タンパク質の97個以下(例えば、96個以下、95個以下、94個以下、93個以下、92個以下、91個以下、90個以下、89個以下、88個以下、87個以下、86個以下、85個以下、84個以下、83個以下、82個以下、81個以下、80個以下、79個以下、78個以下、76個以下、75個以下、または74個以下)の連続するアミノ酸残基からなる。
【0049】
ある実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の15~80個(例えば、15~74個)の連続するアミノ酸残基からなる。ある実施形態において、単離されたポリペプチドは、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の39~74個の連続するアミノ酸残基からなる。
【0050】
1つの実施形態において、単離されたポリペプチド又はそのバリアントは、固体支持体の表面に結合されるか、又は固体支持体に結合され得る修飾基を有する。ある実施形態において、単離されたポリペプチド又はそのバリアントのC末端は、固体支持体の表面に結合されるか、又は固体支持体に結合され得る修飾基を有する。ある実施形態において、修飾基は、ビオチン又はアビジンである。ある実施形態において、固体支持体は、磁気ビーズ又はマイクロタイタープレート(例えば、マイクロウェルプレート又はELISAプレート)から選択される。
【0051】
別の実施形態において、単離されたポリペプチド又はそのバリアントは、検出可能な標識を有する。ある実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジンエステル化合物)、蛍光色素、又はビオチンからなる群より選択される。
【0052】
ポリペプチドの調製
本発明のポリペプチド又はそのバリアントは、その製造方法によって限定されず、例えば、遺伝子工学的方法(組換え技術)又は化学合成方法によって製造することができる。
【0053】
別の実施形態において、本発明は、本発明のポリペプチド又はそのバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を提供する。
【0054】
別の実施形態において、本発明はまた、上記のように単離された核酸分子を含むベクターを提供する。本発明のベクターは、クローニングベクター又は発現ベクターであり得る。好ましい実施形態において、本発明のベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、コスミドなどである。
【0055】
別の実施形態において、本発明はまた、本発明の単離された核酸分子又はベクターを含む宿主細胞を提供する。このような宿主細胞には、限定されないが、大腸菌細胞などの原核細胞、酵母細胞などの真核細胞、昆虫細胞、植物細胞、および動物細胞(例えば、マウス細胞、ヒト細胞等)が含まれる。本発明の細胞はまた、293T細胞のような細胞株であってもよい。
【0056】
別の実施形態において、本発明はまた、本発明のポリペプチド又はそのバリアントを調製する方法を提供し、該方法は、ポリペプチド又はそのバリアントの発現を可能にする条件下で本発明の宿主細胞を培養し、培養宿主細胞の培養物からポリペプチド又はそのバリアントを回収することを含む。
【0057】
検出キット
第2の実施形態において、本発明は、捕捉試薬を含むキットを提供し、捕捉試薬は、第1の実施形態の単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択される。ある実施形態において、キットは、さらに、試料中のBNLF2b遺伝子によりコード化されたタンパク質に特異的な抗体を検出する捕捉試薬として単離されたポリペプチド又はその変異体を使用するための指示、又は、対象由来の試料中のBNLF2b遺伝子によりコード化されたタンパク質に特異的な抗体レベルを検出するための捕捉試薬として単離されたポリペプチド又はその変異体を使用するための指示、を含み、それによって、対象が鼻咽頭がんを有するか、又は鼻咽頭がんのリスクがあるかを決定する。
【0058】
ある実施形態において、対象は、ヒトなどの哺乳動物である。
【0059】
いくつかの実施形態において、捕捉試薬は、固体支持体の表面に付着される。ある実施形態において、捕捉試薬のC末端は、固体支持体に結合される。本明細書で使用される場合、固体支持体には、高分子材料、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド若しくはセルロース、で作製またはコーティングされた凹型ウェルプレート、試験管、ビーズ(例えば、ラテックス粒子)またはメンブレン(例えば、ニトロセルロースメンブレン)、あるいはは官能基(アミノ、カルボキシル、ビオチン、アビジンなど)でプレコートされた磁気ビーズが含まれる。ある実施形態において、固体支持体は、磁気ビーズ又はマイクロタイタープレート(例えば、マイクロウェルプレート又はELISAプレート)から選択される。
【0060】
他の実施形態において、捕獲試薬は、固体支持体に結合することができる修飾基を有する。ある実施形態において、捕獲試薬のC末端は、固体支持体に結合することができる修飾基を有する。そのような実施形態において、キットは、固体支持体上に捕捉試薬をコーティングするためのコーティング緩衝液(例えば、炭酸塩緩衝液、リン酸緩衝液、トリス-HCL緩衝液、又はホウ酸緩衝液)のようなコーティング試薬をさらに含み得る。固体支持体上のタンパク質又はポリペプチドをコーティングする方法は当技術分野で周知であり、その例としては、物理的吸着、アミノ化又はカルボキシル化表面を介した共有結合カップリング、又はアビジン-ビオチンシステムによって媒介される結合、ポリリジンで予めコーティングされた表面、又はプロテインA又はプロテインGで予めコーティングされた表面が挙げられる。
【0061】
ある実施形態において、キットは、別々の容器内又は単一容器ユニットの別々の区画内に、アビジン又はストレプトアビジンでコーティングされた少なくとも固体支持体、及び上記捕捉試薬を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、対象からの試料中の抗エプスタイン-バーウイルス(EBV)抗体レベルを検出することによって、対象が鼻咽頭がんを有するか、又は鼻咽頭がんのリスクがあるかを決定する方法は、ダブル抗原サンドイッチ法によって実施される。二重抗原サンドイッチ法による試料中の抗体レベルの検出は、当業者に周知である。このような検出において、「捕捉抗原」及び「検出抗原」は、試料中の抗体が、2つの特異的抗原間の架橋を形成することを可能にし、従って、2つの抗原は、通常、同一であるか、同一のコアエピトープを有するか、又は免疫学的交差反応性を有し、1つの抗体が2つの抗原に結合することを可能にする。
【0063】
従って、ある実施形態において、キットは、検出試薬をさらに含み、検出試薬は、第1の実施形態の単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択される。
【0064】
ある実施形態において、検出試薬は、検出可能な標識を有する。ある実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジンエステル化合物)、蛍光色素、又はビオチンからなる群より選択される。特定の例示的実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)から選択される。
【0065】
ある実施形態において、検出試薬及び捕捉試薬は、同一又は実質的に同一のポリペプチド配列を含む。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が同一のコア断片を含み、コア断片が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基5~11、アミノ酸残基16~23、アミノ酸残基31~39、及び/又はアミノ酸残基53~60(例えば、アミノ酸残基53~61)からなる群から選択されることを指す。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基53~60(例えば、アミノ酸残基53~61)、アミノ酸残基5~23、アミノ酸残基16~39、アミノ酸残基5~39、アミノ酸残基16~60(例えば、アミノ酸残基16~61アミノ酸残基)、又はアミノ酸残基5~60(例えば、アミノ酸残基5~61)の両方を含むことを指す。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基51~56、アミノ酸残基1~25、アミノ酸残基14~52、アミノ酸残基1~52、アミノ酸残基14~74、アミノ酸残基11~65、アミノ酸残基11~74、又はアミノ酸残基1~74の両方を含むことを指す。
【0066】
他の実施形態において、対象からの試料中の抗エプスタイン-バーウイルス(EBV)抗体のレベルを検出することによって、対象が鼻咽頭がんを有するか、又は鼻咽頭がんのリスクがあるかを決定する方法は、間接的方法によって実施される。間接的方法による試料中の抗体のレベルの検出は、当業者に周知である。そのような検出において、「捕捉抗原」は、まず、試料中の抗体と免疫複合体を形成し、次いで、捕捉された抗体は、二次抗体(例えば、抗免疫グロブリン抗体)によって検出される。
【0067】
従って、ある実施形態において、キットは、検出試薬をさらに含み、検出試薬は、検出可能な標識を有する二次抗体から選択される。ある実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジンエステル化合物)、蛍光色素、又はビオチンからなる群より選択される。特定の例示的実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)から選択される。
【0068】
ある実施形態において、二次抗体は、試験される抗体が由来する種(例えば、ヒト)の抗体に特異的である。
【0069】
ある実施形態において、二次抗体は、抗免疫グロブリン抗体である。
【0070】
ある例示的実施形態において、キットは、抗EBV IgG抗体を検出するために使用される。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgG抗体のような抗IgG抗体から選択される。
【0071】
ある例示的実施形態において、キットは、抗EBV IgM抗体を検出するために使用される。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgM抗体のような抗IgM抗体から選択される。
【0072】
ある例示的実施形態において、キットは、抗EBV IgA抗体を検出するために使用される。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgA抗体のような抗IgA抗体から選択される。
【0073】
ある実施形態において、本発明のキットは、さらに、(i)対象から試料を収集又は保存するためのデバイス(例えば、採血デバイス);(ii)検出を実施するために必要な追加の試薬(例えば、緩衝液、希釈液、ブロッキング溶液、及び/又は標準)からなる群から選択される1つ以上の試薬又はデバイスを含んでもよい。
【0074】
検出の用途及び方法
第3の実施形態において、本発明は、以下の工程を含む、試料中のBNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体を検出するための方法を提供する:
(1)試料を捕捉試薬と接触させて抗原-抗体免疫複合体を得;ここで、捕捉試薬は、第1の実施形態において記載された単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択される;
(2)工程(1)で得られた抗原-抗体免疫複合体の量の決定。
【0075】
ある実施形態において、工程(2)において、免疫複合体の量は、免疫学的アッセイによって決定される。
【0076】
ある実施形態において、免疫学的アッセイは、酵素免疫アッセイ(例えば、ELISA)、化学発光免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ、又はラジオイムノアッセイから選択される。
【0077】
いくつかの実施形態において、捕捉試薬は、固体支持体の表面に付着される。
【0078】
他の実施形態において、捕獲試薬は、固体支持体に結合することができる修飾基を有する。そのような実施形態において、工程(1)の前に、本方法は、固体支持体の表面上に捕捉試薬をコーティングする工程をさらに含む。
【0079】
ある実施形態において、捕捉試薬のC末端は、固体支持体の表面に結合されるか、又は固体支持体に結合され得る修飾基を有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、検出は、二重抗原サンドイッチ法によって実施される。二重抗原サンドイッチ法による試料中の抗体のレベルの検出は、当業者に周知である。このような検出において、「捕捉抗原」及び「検出抗原」は、試料抗体が2つの特異的抗原の間の架橋を形成することを可能にする。このように、2つの抗原は、通常、同一であるか、同一のコアエピトープを有するか、又は免疫学的交差反応性を有し、1つの抗体が2つの抗原に結合することを可能にする。
【0081】
従って、ある実施形態において、工程(2)において、免疫複合体の量は、第1の実施形態において記載される単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択される検出試薬を使用することによって検出される。
【0082】
ある実施形態において、検出試薬は、第1の実施形態の単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択され、単離されたポリペプチド又はそのバリアントは、検出可能な標識を有する。ある実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジンエステル化合物)、蛍光色素、又はビオチンからなる群より選択される。特定の例示的実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)から選択される。
【0083】
ある実施形態において、検出試薬及び捕捉試薬は、同一又は実質的に同一のポリペプチド配列を含む。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が同一のコア断片を含み、コア断片が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基5~11、アミノ酸残基16~23、アミノ酸残基31~39、及び/又はアミノ酸残基53~60(例えば、アミノ酸残基53~61)からなる群から選択されることを指す。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基53~60(例えば、アミノ酸残基53~61)、アミノ酸残基5~23、アミノ酸残基16~39、アミノ酸残基5~39、アミノ酸残基16~60(例えば、アミノ酸残基16~61アミノ酸残基)、又はアミノ酸残基5~60(例えば、アミノ酸残基5~61)の両方を含むことを指す。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基51~56、アミノ酸残基1~25、アミノ酸残基14~52、アミノ酸残基1~52、アミノ酸残基14~74、アミノ酸残基11~65、アミノ酸残基11~74、又はアミノ酸残基1~74の両方を含むことを指す。
【0084】
他の実施形態において、検出は間接的方法によって行われる。間接的方法による試料中の抗体のレベルの検出は、当業者に周知である。このような検出において、「捕捉抗原」は、まず、試料中の抗体と免疫複合体を形成し、次いで、捕捉された抗体は、二次抗体(例えば、抗免疫グロブリン抗体)によって検出される。
【0085】
従って、ある実施形態において、工程(2)において、検出可能な標識を有する二次抗体から選択される検出試薬を用いて、免疫複合体の量が検出される。
【0086】
ある実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジンエステル化合物)、蛍光色素、又はビオチンからなる群より選択される。
【0087】
ある実施形態において、二次抗体は、試験される抗体が由来する種(例えば、ヒト)の抗体に特異的である。
【0088】
ある実施形態において、二次抗体は、抗免疫グロブリン抗体である。
【0089】
特定の例示的実施形態において、検出される抗体は、IgG抗体である。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgG抗体のような抗IgG抗体から選択される。
【0090】
特定の例示的実施形態において、検出される抗体は、IgM抗体である。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgM抗体のような抗IgM抗体から選択される。
【0091】
特定の例示的実施形態において、検出される抗体は、IgA抗体である。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgA抗体のような抗IgA抗体から選択される。
【0092】
別の実施形態において、本発明はまた、試料中のBNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体を検出するためのキットの製造における、第1の実施形態の単離されたポリペプチド又はそのバリアントの使用に関する。ある実施形態において、キットは、第3の実施形態に記載される方法によって、試料中のBNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体を検出する。
【0093】
診断上の使用及び方法
第4の実施形態において、本発明は、対象が鼻咽頭がんを有するか、又は鼻咽頭がんのリスクがあるかを決定するための方法を提供し、以下を含む:
(1)対象由来の試料中のBNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体のレベルを決定すること。
(2)参照値とレベルの比較。
【0094】
ある実施形態において、レベルが参照値を超える場合、対象は、鼻咽頭がんを有するか、又はそのリスクがあると考えられる。
【0095】
ここで、参照値は、鼻咽頭がんのない対象又は健常な対象(例えば、検出可能な疾患がなく、がん又は鼻咽頭がんの病歴がない対象)から得られた値、又は鼻咽頭がんのない対象又は健常な対象から得られた対応する試料中のBNLF2b遺伝子にコード化されたタンパク質に特異的な抗体のレベルである。
【0096】
ある実施形態において、試料は、全血、血漿、又は血清などの血液試料である。
【0097】
ある実施形態において、対象は、ヒトなどの哺乳動物である。
【0098】
ある実施形態において、試料中のBNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体のレベルは、免疫学的アッセイによって決定される。ある実施形態において、免疫学的アッセイは、酵素免疫アッセイ(例えば、ELISA)、化学発光免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ、又はラジオイムノアッセイからなる群より選択される。
【0099】
ある実施形態において、検出は、捕捉試薬として、第1の実施形態の単離されたポリペプチド又はそのバリアントを使用することを含む。
【0100】
ある実施形態において、工程(1)は、以下の工程を含む。
(1a)対象由来の試料を捕捉試薬と接触させて抗原-抗体免疫複合体を得;ここで、捕捉試薬は、第1の実施形態において記載された単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択される;
(1b)工程(1a)で得られた抗原-抗体免疫複合体の量を決定する工程。
【0101】
ある実施形態において、工程(1b)において、免疫複合体の量は、免疫学的アッセイによって決定される。ある実施形態において、免疫学的アッセイは、酵素免疫アッセイ(例えば、ELISA)、化学発光免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ、又はラジオイムノアッセイから選択される。
【0102】
いくつかの実施形態において、捕捉試薬は、固体支持体の表面に付着される。
【0103】
他の実施形態において、捕獲試薬は、固体支持体に結合することができる修飾基を有する。そのような実施形態において、工程(1)の前に、本方法は、固体支持体の表面上に捕捉試薬をコーティングする工程をさらに含む。
【0104】
ある実施形態において、捕捉試薬のC末端は、固体支持体の表面に結合されるか、又は固体支持体に結合され得る修飾基を有する。
【0105】
いくつかの実施形態において、検出は、二重抗原サンドイッチ法によって実施される。二重抗原サンドイッチ法による試料中の抗体のレベルの検出は、当業者に周知である。このような決定において、「捕捉抗原」及び「検出抗原」は、試料中の抗体が2つの特異的抗原の間に架橋を形成することを可能にし、従って、2つの抗原は、通常、同一であるか、同一のコアエピトープを有するか、又は免疫学的交差反応性を有し、1つの抗体が2つの抗原に結合することを可能にする。
【0106】
従って、ある実施形態において、工程(1b)において、免疫複合体の量は、検出試薬を用いて検出され、検出試薬は、第1の実施形態において記載された単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択される。
【0107】
ある実施形態において、検出試薬は、第1の実施形態の単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択され、単離されたポリペプチド又はそのバリアントは、検出可能な標識を有する。ある実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジンエステル化合物)、蛍光色素、又はビオチンからなる群より選択される。特定の例示的実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)から選択される。
【0108】
ある実施形態において、検出試薬及び捕捉試薬は、同一又は実質的に同一のポリペプチド配列を含む。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が同一のコア断片を含み、コア断片が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基5~11、アミノ酸残基16~23、アミノ酸残基31~39、及び/又はアミノ酸残基53~60(例えば、アミノ酸残基53~61)からなる群から選択されることを指す。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基53~60(例えば、アミノ酸残基53~61)、アミノ酸残基5~23、アミノ酸残基16~39、アミノ酸残基5~39、アミノ酸残基16~60(例えば、アミノ酸残基16~61アミノ酸残基)、又はアミノ酸残基5~60(例えば、アミノ酸残基5~61)の両方を含むことを指す。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基51~56、アミノ酸残基1~25、アミノ酸残基14~52、アミノ酸残基1~52、アミノ酸残基14~74、アミノ酸残基11~65、アミノ酸残基11~74、又はアミノ酸残基1~74の両方を含むことを指す。
【0109】
他の実施形態において、検出は間接的方法によって行われる。間接的方法による試料中の抗体のレベルの検出は、当業者に周知である。そのような検出において、「捕捉抗原」は、まず、試料中の抗体と免疫複合体を形成し、次いで、捕捉された抗体は、二次抗体(例えば、抗免疫グロブリン抗体)によって検出される。
【0110】
従って、ある実施形態において、工程(1b)において、ある量の免疫複合体が、検出試薬を用いて検出され、検出試薬は、検出可能な標識を有する二次抗体から選択される。
【0111】
ある実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジンエステル化合物)、蛍光色素、又はビオチンからなる群より選択される。
【0112】
ある実施形態において、二次抗体は、試験される抗体が由来する種(例えば、ヒト)の抗体に特異的である。
【0113】
ある実施形態において、二次抗体は、抗免疫グロブリン抗体である。
【0114】
特定の例示的実施形態において、検出される抗体は、IgG抗体である。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgG抗体のような抗IgG抗体から選択される。
【0115】
特定の例示的実施形態において、検出される抗体は、IgM抗体である。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgM抗体のような抗IgM抗体から選択される。
【0116】
特定の例示的実施形態において、検出される抗体は、IgA抗体である。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgA抗体のような抗IgA抗体から選択される。
【0117】
ある実施形態において、本方法は、工程(1)の前に、対象からの試料を提供する工程をさらに含む。
【0118】
ある実施形態において、本方法は、工程(2)の後、鼻咽頭がんを治療することができる抗腫瘍療法(例えば、化学療法、放射線療法、及び/又は免疫療法)の治療有効量を、鼻咽頭がんを有するか又は鼻咽頭がんのリスクがあると考えられる対象に投与する工程をさらに含む。
【0119】
特定の実施形態において、鼻咽頭がんを治療することができる抗腫瘍療法は、手術、放射線療法(例えば、外部放射線療法EBRT、小線源治療)、または化学療法(例えば、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、メトトレキサート)、標的療法(例えば、セツキシマブ)、免疫療法(例:PD-1 mAb)、および様々な治療法の組み合わせ(例えば、放射線療法+化学療法、放射線療法+手術)からなる群から選択される。
【0120】
別の実施形態において、本発明はまた、キットの製造におけるBNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体レベルを検出することができる試薬の使用に関し、このキットは、対象が鼻咽頭がんを有するか、又は鼻咽頭がんのリスクがあるかを決定するために使用される。
【0121】
ある実施形態において、試薬は、免疫学的アッセイによってBNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体レベルを検出することができる。ある実施形態において、免疫学的アッセイは、酵素免疫アッセイ(例えば、ELISA)、化学発光免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ、又はラジオイムノアッセイからなる群より選択される。
【0122】
ある実施形態において、対象は、ヒトなどの哺乳動物である。
【0123】
ある実施形態において、試料は、全血、血漿、又は血清などの血液試料である。
【0124】
ある実施形態において、キットは、対象が鼻咽頭がんを有するか、又は鼻咽頭がんのリスクがあるかを、以下の方法によって決定する:
(1)対象由来の試料中のBNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体レベルを検出すること。
(2)参照値とレベルの比較。
【0125】
ある実施形態において、そのレベルが参照値より高い場合、対象は、鼻咽頭がんを有するか、又は鼻咽頭がんのリスクがあると考えられる。
【0126】
ある実施形態において、BNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体レベルを検出することができる試薬は、捕捉試薬を含み、捕捉試薬は、第1の実施形態の単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択される。
【0127】
特定の実施形態において、上記工程(1)は、以下の工程を含む。
(1a)対象由来の試料を捕捉試薬と接触させて抗原-抗体免疫複合体を得;ここで、捕捉試薬は、第1の実施形態において記載された単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択される;
(1b)工程(1a)で得られた抗原-抗体免疫複合体の量を決定する工程。
ある実施形態において、工程(1b)において、免疫複合体の量は、免疫学的アッセイによって決定される。ある実施形態において、免疫学的アッセイは、酵素免疫アッセイ(例えば、ELISA)、化学発光免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ、又はラジオイムノアッセイから選択される。
【0128】
いくつかの実施形態において、捕捉試薬は、固体支持体の表面に付着される。
【0129】
他の実施形態において、捕獲試薬は、固体支持体に結合することができる修飾基を有する。そのような実施形態において、上記工程(1)の前に、本方法は、固体支持体の表面上に捕捉試薬をコーティングする工程をさらに含む。
【0130】
ある実施形態において、捕捉試薬のC末端は、固体支持体の表面に結合されるか、又は固体支持体に結合され得る修飾基を有する。
【0131】
いくつかの実施形態において、BNLF2b遺伝子によりコードされたタンパク質に特異的な抗体のレベルを決定することができる試薬は、検出試薬をさらに含み、検出試薬は、第1の実施形態において記載された単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択される。
【0132】
ある実施形態において、上記工程(1b)において、検出試薬は、免疫複合体の量を検出するために使用される。
【0133】
ある実施形態において、検出試薬は、第1の実施形態の単離されたポリペプチド又はそのバリアントから選択され、単離されたポリペプチド又はそのバリアントは、検出可能な標識を有する。ある実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジンエステル化合物)、蛍光色素、又はビオチンからなる群より選択される。特定の例示的実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)から選択される。
【0134】
ある実施形態において、検出試薬及び捕捉試薬は、同一又は実質的に同一のポリペプチド配列を含む。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が同一のコア断片を含み、コア断片が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基5~11、アミノ酸残基16~23、アミノ酸残基31~39、及び/又はアミノ酸残基53~60(例えば、アミノ酸残基53~61)からなる群から選択されることを指す。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基53~60(例えば、アミノ酸残基53~61)、アミノ酸残基5~23、アミノ酸残基16~39、アミノ酸残基5~39、アミノ酸残基16~60(例えば、アミノ酸残基16~61アミノ酸残基)、又はアミノ酸残基5~60(例えば、アミノ酸残基5~61)の両方を含むことを指す。ある実施形態において、用語「実質的に同一」は、検出試薬及び捕捉試薬に含まれる2つのポリペプチド配列が、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基51~56、アミノ酸残基1~25、アミノ酸残基14~52、アミノ酸残基1~52、アミノ酸残基14~74、アミノ酸残基11~65、アミノ酸残基11~74、又はアミノ酸残基1~74の両方を含むことを指す。
【0135】
他の実施形態において、BNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質に特異的な抗体レベルを検出することができる試薬は、検出試薬をさらに含み、検出試薬は、検出可能な標識を有する二次抗体から選択される。
【0136】
ある実施形態において、上記工程(1b)において、検出試薬は、免疫複合体の量を検出するために使用される。
【0137】
ある実施形態において、検出可能な標識は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えば、アクリジンエステル化合物)、蛍光色素、又はビオチンからなる群より選択される。
【0138】
ある実施形態において、二次抗体は、試験される抗体が由来する種(例えば、ヒト)の抗体に特異的である。
【0139】
ある実施形態において、二次抗体は、抗免疫グロブリン抗体である。
【0140】
特定の例示的実施形態において、検出される抗体は、IgG抗体である。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgG抗体のような抗IgG抗体から選択される。
【0141】
特定の例示的実施形態において、検出される抗体は、IgM抗体である。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgM抗体のような抗IgM抗体から選択される。
【0142】
特定の例示的実施形態において、検出される抗体は、IgA抗体である。そのような実施形態において、抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒトIgA抗体のような抗IgA抗体から選択される。
【0143】
用語の定義
本発明では、特に断らない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用されるウイルス学、生化学、及び免疫学の実験手順は、全て、対応する分野で広く使用されるルーチン手順である。一方、本発明をよりよく理解するために、関連用語の定義及び説明を以下に提供する。
【0144】
本明細書で使用される場合、用語「BNLF2b」は、当業者に周知であるEpstein-Barrウイルス(EBV)のBNLF2b遺伝子を指す(例えば、NCBI GENBANKデータベース受託番号:CAA24811.1を参照されたい)。BNLF2b遺伝子によりコードされる全長タンパク質は98個のアミノ酸を含み、その配列は配列番号101に示される。本明細書において、BNLF2b遺伝子によりコードされる全長タンパク質は、BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質、又はBNLF2b遺伝子によりコードされるタンパク質とも呼ばれ得る。
【0145】
本明細書で使用されるように、BNLF2b遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ酸配列を参照する場合、それは配列番号101に示される配列を参照して記載される。例えば、発現「BNLF2b遺伝子によりコードされる野生型タンパク質のアミノ酸残基53~60」は、配列番号101に示されるポリペプチドのアミノ酸残基53~60を指す。しかしながら、当業者は、BNLF2b遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列において、突然変異又は変異は、その生物学的機能に影響を与えることなく、天然に生成され得るか、又は人工的に導入され得ることを理解する。従って、本発明においては、用語「BNLF2b遺伝子によりコードされたタンパク質」及び類似の発現は、例えば、配列番号101に示される配列及びその天然又は人工の変異体を含む、全てのかかる配列を含むものとする。また、BNLF2b遺伝子によりコードされたタンパク質の配列断片を記載する場合、配列番号101の配列断片のみならず、その天然又は人工バリアントの対応する配列断片も含む。例えば、「BNLF2b遺伝子にコードされたタンパク質のアミノ酸残基53~60」の発現は、配列番号101のアミノ酸残基53~60、及びその(天然又は人工)変異体における対応する断片を含む。本発明によれば、「対応する配列断片」又は「対応する断片」という表現は、配列が最適に整列されたとき、すなわち、配列が整列されて最高の同一性パーセントを得るときに、比較される配列の等価な位置に位置する断片を指す。
【0146】
本明細書で使用される場合、用語「特異的結合」は、2つの分子(すなわち、結合分子及び標的分子)間の非ランダム結合反応、例えば、抗体とそれが向けられる抗原との間の反応を指す。2つの分子間の結合親和性はKD値で表すことができる。KD値は、KD(特異的結合分子-標的分子相互作用の解離速度;koffとしても知られる)とka(特異的結合分子-標的分子相互作用の会合速度;konとしても知られる)の比から導かれる解離定数、又はモル濃度(M)として表されるkd/kaを指す。KDが小さければ小さいほど、2つの分子間の結合は強くなり、親和性は高くなる。ある実施形態において、抗原(又は抗原に特異的な抗体)に特異的に結合する抗体は、抗体が約10-5M未満、例えば約10-6M未満、10-7M、10-8M、10-9M又は10-10M以下の親和性(KD)で抗原に結合することを指す。KD値は、バイコア装置における表面プラズモン共鳴を用いるなど、当技術分野で周知の方法によって決定することができる。
【0147】
本明細書で使用される場合、用語「免疫学的アッセイ」は、抗原-抗体間の特異的相互作用/結合親和性を利用するアッセイを指し、これは、一般に、試料中の特異的抗原又は抗体の存在又はレベルを検出するために使用することができる。そのような免疫学的アッセイは、当業者に周知であり、限定されるものではないが、酵素免疫アッセイ、化学発光免疫アッセイ、ラジオイムノアッセイ、蛍光免疫アッセイ、ウエスタンブロッティング、免疫濁度法、表面プラズモン共鳴法などを含む。ある実施形態において、免疫学的アッセイは、ELISAアッセイ、エリスポットアッセイ、又はCLEIAアッセイなどの酵素免疫アッセイである。免疫学的アッセイの詳細については、例えば、Fundamental Immunology, Ch. 7 Paul, W., ed., 2nd ed., Raven Press, N.Y. (1989)を参照されたい。
【0148】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」は、免疫グロブリン又は抗体によって特異的に結合される抗原上の部位を指す。「エピトープ」は、当技術分野において「抗原決定基」としても公知である。例えば、エピトープは典型的には、固有の空間コンフォメーションで少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の連続または非連続アミノ酸を含み、それは「線状」または「立体」であり得る。線状エピトープでは、タンパク質と相互作用する分子(例えば抗体)との間のすべての相互作用部位は、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線的に存在する。コンホメーションエピトープにおいては、相互作用部位は、タンパク質中で互いに分離されたアミノ酸残基を横切って存在する。
【0149】
本明細書で使用される場合、用語「検出可能な標識」は、蛍光、分光、光化学、生化学、免疫学、電気、光学又は化学的手段によって検出可能な任意の物質であり得る。そのような標識は、免疫学的検出(例えば、酵素結合イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、化学発光イムノアッセイなど)における使用に適していることが特に好ましい。そのような標識は当技術分野で周知であり、限定されないが、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼなど)、放射性核種(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド、ローダミン、量子ドットまたはシアニン誘導体(例えば、Cy7、Alexa 750)、発光物質(例えば、アクリジンエステル化合物などの化学発光物質)、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(登録商標))、金コロイドまたは着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズなどの比色標識、および上記標識で修飾されたアビジン(例えば、ストレプトアビジン)に結合させるためのビオチンが含まれる。このような標識の使用を教示する特許には、限定されないが、米国特許第3,817,837号;同第3,850,752号;同第3,939,350号;同第3,996,345号;同第4,277,437号;同第4,275,149号;および同第4,366,241号(それらのすべては参照により本明細書に組み込まれる)が含まれる。本発明に包含される標識は、当技術分野で公知の方法によって検出することができる。例えば、放射性標識は、写真フィルム又はシンチレーション計算機を用いて検出することができ、蛍光標識は、発光を検出するために光検出器を用いて検出することができる。酵素標識は、一般に、基質を酵素に提供し、基質上の酵素の作用によって生成された反応生成物を検出することによって検出され、熱量測定標識は、着色標識を単純に可視化することによって検出される。ある実施形態において、上記のような検出可能な標識を、異なる長さのリンカーを介して検出抗体又は抗原に付着させて、潜在的な立体障害を低減することができる。
【0150】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、一般に2対のポリペプチド鎖(各対は1つの軽鎖(LC)及び1つの重鎖(HC)を有する)からなる免疫グロブリン分子を指す。抗体軽鎖はκ(κ)軽鎖とλ(λ)軽鎖に分類される。重鎖はμ、δ、γ、α、εに分類できるので、抗体のアイソタイプはそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、IgEと定義される。軽鎖及び重鎖内では、可変領域及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約3個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2、CH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は1つのドメインCLからなる。定常ドメインは、抗原に対する抗体の結合に直接関与するのではなく、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系第一成分(C1q)を含む、宿主組織又は因子との免疫グロブリンの結合を媒介するなどの種々のエフェクター機能を示す。VH及びVL領域はまた、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域を散在させた、高い可変性の領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に細分することもできる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端までのFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列された3つのCDR及び4つのFRからなる。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VH及びVL)は、抗原結合部位を形成する。
【0151】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」又は「単離されている」は、自然状態から人工的に得られたものを指す。「単離された」物質又は成分が天然に存在する場合には、それは、その自然環境の変化、又はその物質の自然環境からの分離、又はその両方によることがある。例えば、ある単独のポリヌクレオチド又はポリペプチドは、生きている動物中に天然に存在し、この天然状態から単離された高純度の同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは、「単離される」と呼ばれる。「単離された」又は「単離されている」という用語は、人工物質又は合成物質の混合物、又は物質の活性に影響を及ぼさない他の不純物の存在を排除するものではない。
【0152】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、ポリヌクレオチドが挿入され得る核酸送達ビヒクルを指す。ベクターが挿入されたポリヌクレオチドによりコードされたタンパク質の発現を可能にする場合、ベクターは発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、形質転換、形質導入又はトランスフェクションによって宿主細胞に導入することができ、それによって運ばれる遺伝物質エレメントを宿主細胞内で発現させることができる。ベクターは当業者に周知であり、プラスミド;ファージミド;コスミド;酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体;λファージ又はM13ファージなどのファージ及び動物ウイルスを含むが、これらに限定されない。ベクターとして使用できる動物ウイルスには、限定されないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(SV40)が含まれる。ベクターは、限定されるものではないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、及びレポーター遺伝子を含む、発現を制御する種々のエレメントを含むことができる。さらに、ベクターは複製起点を含んでもよい。
【0153】
本明細書で使用する場合、「宿主細胞」という用語は、ベクターを導入することができる細胞を指し、限定されないが、原核細胞、例えば、大腸菌または枯草菌、真菌細胞、例えば、酵母細胞またはアスペルギルス、昆虫細胞、例えば、S2ショウジョウバエ細胞またはSf9、あるいは動物細胞、例えば、線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞、ヒト細胞が含まれる。
【0154】
本明細書で使用される場合、用語「同一性」は、2つのポリペプチド間又は2つの核酸間の一致度を指す。比較のための2つの配列がある部位に同じ塩基又はアミノ酸のモノマーサブユニットをもつ場合(たとえば、2つのDNA分子のそれぞれがある部位にアデニンをもつ場合、又は2つのポリペプチドのそれぞれがある部位にリシンをもつ場合)、2つの分子はその部位で同一である。2つの配列間の同一性%は、比較のための全部位数×100に対して2つの配列が共有する同一部位の数の関数である。例えば、2つの配列の10個の部位のうち6個が一致する場合、これらの2つの配列は60%の同一性を有する。例えば、DNA配列:CTGACT及びCAGGTTは50%の同一性を共有する(6つの部位のうち3つは一致する)。一般に、2つの配列の比較は、最大の同一性を生じるような方法で行われる。このようなアラインメントは、Needlemanら(J. Mol. Biol. 48:443-453, 1970)の方法に基づくアラインプログラムのようなコンピュータプログラムを用いて行うことができる。2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、PAM120重量残留テーブル、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Miller (Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988))のアルゴリズムを用いて決定することもできる。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージは、Needleman及びWunsch(J.Mol)のアルゴリズムによって決定することができる。さらに、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、16、14、12、10、8、6または4のギャップの重み、1、2、3、4、5、または6の長さの重みを用いる、GCGソフトウェア(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:444-453(1970))のアルゴリズムによって、2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージを決定することができる。
【0155】
本明細書で使用される場合、用語「保存的置換」とは、アミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの予想される特性に不利に影響を及ぼさず、又は変化しないアミノ酸置換を指す。例えば、保存的置換は、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発のような当技術分野で公知の標準的技術によって導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基、例えば、物理的又は機能的に類似の残基(例えば、類似のサイズ、形状、電荷、共有結合又は水素結合を形成する能力を含む化学的性質など)で対応するアミノ酸残基と置換される置換を含む。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を持つアミノ酸(リジン、アルギニン、ヒスチジンなど)、酸性側鎖を持つアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸など)、荷電していない極性側鎖を持つアミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を持つアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を持つアミノ酸(スレオニン、バリン、イソロイシンなど)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンなど)が含まれる。したがって、対応するアミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基で置換される。アミノ酸の保存的置換を同定する方法は、当該分野で周知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれるBrummell et al., Biochem. 32: 1180-1187 (1993); Kobayashi et al., Protein Eng. 12(10): 879-884 (1999); and Burks et al., Proc. Natl Acad. Set USA 94: 412-417 (1997)を参照されたい。
【0156】
本明細書でカバーする20種類の従来のアミノ酸は、従来の用法に従うように書かれている。例えば、参照により本明細書に組み込まれるImmunology-A Synthesis (2nd Edition, E. S. Golub and D. R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))を参照されたい。本発明において、用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、同じ意味を有し、互換的に使用される。また、本発明において、アミノ酸は、一般に、当該技術分野で周知の1文字及び3文字の略号によって表される。例えば、アラニンはA又はAlaで表すことができる。
【0157】
本明細書で使用する「対象」という用語は、限定されるものではないが、種々の動物、特にヒトのような哺乳動物を含む。
【0158】
有益な効果
本発明は、EBV BNLF2b遺伝子によりコードされるタンパク質に対する抗体のレベルが、鼻咽頭がんの診断又は鼻咽頭がんのリスクの評価に使用可能であり、その診断性能が、鼻咽頭がんスクリーニングの特異性及び陽性予測値を有意に改善することができる既存のマーカーよりも有意に優れていることを初めて発見する。また、本発明は、EBV BNLF2b遺伝子によってコードされるタンパク質又はポリペプチド断片に基づく鼻咽頭がんの血清学的スクリーニングキットを初めて提供する。
【0159】
従来技術と比較して、本発明の技術的解決策は、EBV抗体の既知の組み合わせ検出に匹敵する検出感度、及びより良好な検出特異性を達成することができ、迅速かつ高スループット検出を実現することができ、それにより、有意な臨床的価値を有する。
【0160】
本発明の実施形態は、図面及び実施例を参照して以下に詳細に説明されるが、当業者は、以下の図面及び実施例は、本発明の範囲を制限するのではなく、本発明を例示するためにのみ使用されることを理解するであろう。本発明の種々の目的及び有利な実施形態は、添付の図面及び好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【
図1】
図1は、実施例2及び3における87のEBVポリペプチド(番号1-87)と、鼻咽頭がん(NPC)の1つのプール血清試料及び健常な対照(H1-H3)の3つの血清試料におけるIgA及びIgG抗体の反応性を示す。左図はIgA抗体、右図はIgG抗体、横軸は異なる血清試料、縦軸は異なるEBVポリペプチドを表し、色が濃いほど反応性が高い。
【
図2】
図2は、実施例2及び3における異なるEBVポリペプチドを有する鼻咽頭がん患者及び健常対照者由来の血清試料中の抗体の反応性を示し、横座標はEBVポリペプチドを表し、縦座標は反応OD値(対数スケール)を表す。
【
図3】
図3は、実施例4におけるBNLF2bコード化タンパク質aa14-52と鼻咽頭がん患者及び健常対照者の血清試料におけるIgG抗体の反応性を示す。
図3Aは、異なる試料の検出されたOD値(対数目盛)を示す。
図3BはROC曲線分析の結果を示し、横座標は100特異性%、縦座標は感度%を表す。
【
図4】
図4は、実施例4におけるBNLF2bコード化タンパク質aa1-74と鼻咽頭がん患者及び健常な対照の血清試料におけるIgA、IgM及びIgG抗体の反応性を示す。
図4Aは検出されたOD値を示し、横座標は血清分類を示し、縦座標はOD値(対数目盛)であり;
図4BはROC曲線分析の結果を示し、横座標は100特異性%、縦座標は感度%を示す。
図4Cは、健常対照の血清試料中のIgA及びIgM抗体のBNLF2bコード化タンパク質aa1-74との反応性を示し、横座標は抗体型を示し、縦座標はOD値(対数目盛)を示す。
【
図5】
図5は、実施例5におけるBNLF2b抗体についての二重抗原サンドイッチ法による、鼻咽頭がんの50の血清試料及び健常対照の500の血清試料の検出結果を示す。
図5Aは検出OD値、横座標は血清分類、縦座標はOD値(対数目盛);
図5BはROC曲線分析の結果、横座標は100特異性%、縦座標は感度%を示す。
【
図6】
図6は、鼻咽頭がんの74の血清試料及び健常対照の250の血清試料のEBNA1/IgA検出及びVCA/IgA検出、ならびに実施例6における2の組み合わせ検出によって算出された鼻咽頭がんの確率を示す。横座標は血清分類を表し、縦座標は図に示す。
図6A及び
図6Bは、検出されたOD値(対数目盛)、及び図中の座標を表す。
図6Cは鼻咽頭がんの確率を表す。
【
図7】
図7は、実施例6におけるBNLF2b抗体についての二重抗原サンドイッチ法により検出された鼻咽頭がん患者及び健常対照者の血清試料の検出結果を示し、横座標は血清分類を表し、縦座標は反応OD値を表す。
【
図8】
図8は、実施例6におけるBNLF2b抗体のための二重抗原サンドイッチ法及びEBNA1/IgA+VCA/IgAの複合検出のROC曲線を示し、横座標は100特異性%を表し、縦座標は感度%を表す。
【
図9】
図9は、実施例10におけるBNLF2bコード化タンパク質の異なるペプチド断片と鼻咽頭がんの血清試料中のIgG抗体の反応性を示し、ここで横座標は異なるBNLF2bポリペプチドを表し、縦座は鼻咽頭がんのプール血清試料のシリアル番号を表し、色が濃いほど反応性が高い。
【
図10】
図10は、鼻咽頭がんの2つのプールされた血清試料におけるIgG抗体の実施例10におけるBNLF2bコード化タンパク質の異なるペプチドセグメントとの反応性を示し、ここで、AからDは、鼻咽頭がんの血清試料のaa1-25セグメントにおける切断されたペプチド、aa31-45セグメントにおける切断されたペプチド、aa51-65セグメントにおける切断されたペプチド、及びaa81-98セグメントにおける切断されたペプチドのそれぞれに対する反応性を表し、横軸は、ポリペプチド位置(例えば、1-25アミノ酸が1-25を表す)を表し、縦軸は、未切断セグメントの検出されたOD値に対する検出されたOD値の比を表す。
【
図11】
図11は、実施例10におけるaa1-25セグメント内の異なる切断されたポリペプチドを有する鼻咽頭がんの血清試料の反応性を示す。
図11Aは、aa1-25、aa1-15及びaa11-25、及び図と鼻咽頭がん患者の異なる血清試料の反応性を示す。
図11Bは、これらの血清試料のaa1-25及びその切断されたポリペプチドとの反応性を示す。横軸は合成ペプチドのアミノ酸位置を表し、縦軸は鼻咽頭がん血清の数を表し、色が濃いほど反応性が高い。
【
図12】
図12は、実施例10におけるBNLF2bコード化タンパク質突然変異体を有する鼻咽頭がん患者におけるIgG抗体の反応性を示し、ここで、A~Dは、鼻咽頭がんの血清試料のaa1~25セグメント内の突然変異体、aa31~45セグメント内の突然変異体、aa51~65セグメント内の突然変異体、及びa81~98セグメント内の突然変異体との反応性を表し、横軸は突然変異位置を表し、縦軸は、対応する突然変異なしセグメントの検出されたOD値に対する検出されたOD値の比を表す。
【
図13】
図13は、実施例11における異なるBNLF2bコード化ポリペプチドを有する鼻咽頭がん患者及び健常対照者の血清試料におけるIgG抗体の反応性を示し、ここで横座標はポリペプチド断片を表し、縦座標は検出されたOD値を表す。
【発明を実施するための形態】
【0162】
配列情報
【0163】
【0164】
【実施例】
【0165】
実施例1:エプスタイン-バーウイルス遺伝子にコードされたポリペプチドの合成
GenBank(GenBank ID:V01555.2)のEBV B95-8株の86オープンリーディングフレーム(ORF)によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列情報に基づき、各タンパク質のB細胞エピトープをバイオインフォマティクスツールによりオンラインで予測した;予測結果によれば、各タンパク質に対して1~2個の可能性のあるB細胞エピトープペプチドを選択し、合成のためにXiamen Jingju Biotechnology Co.,Ltd.に委託した。合成中、ビオチンをポリペプチドのN末端に結合させ、その後の実験を容易にした。最後に、87のEpstein-Barrウイルス遺伝子にコードされたポリペプチド(配列番号1~87)の合成に成功し、これらのポリペプチドは68のORFに由来し、その特異的情報を表1に示した。
【0166】
実施例2:EBVポリペプチドと血清IgA抗体との反応性の評価
実施例1で得られたビオチン標識ポリペプチド(1~87番)をそれぞれ500ng/mlに希釈し、ストレプトアビジン被覆96ウェルマイクロウェルプレートにウェル当たり100μLで添加し、37℃で2時間反応させた。反応後、PBSTで2回洗浄し、ブロッキング液200μLを各ウェルに加え、37℃で2時間ブロッキングした後、ブロッキング液を捨て、1:20希釈鼻咽頭がん患者血清又は陰性対照血清100μLを各ウェルに加え、37℃で30分間反応させた。反応後、PBSTで5回洗浄し、1:20,000希釈のHRP標識ヤギ抗ヒトIgA(KPL,Gaithersburg,MD)を加え、37℃で30分間反応を続け、PBSTで5回洗浄した後、各ウェルにTMB発色溶液100μLを加え、37℃で15分間インキュベートした後、各ウェルに50μLの停止溶液を加え、混合後、450及び630nmの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0167】
結果を
図1に示した。87のポリペプチドのうち、8つのポリペプチドは、鼻咽頭がんプール血清との反応に対して0.3を超えるOD値を有した(表2-1)。これらの8つのポリペプチドのうち、BSRL1、BLF1b、BGLF3、BDLF2及びBVRF2遺伝子によりコードされる5つのポリペプチドは、以前の研究で鼻咽頭がんの補助診断について報告されていなかった。
【0168】
さらに、36の陰性血清試料を通してこれら5つのポリペプチドの特異性を評価し、結果を図に示した。BSRF1、BGLF3及びBVRF2遺伝子によりコードされる3つのポリペプチドの特異性は比較的良好であった。同時に、鼻咽頭がんの12の血清試料を通して上記3つのポリペプチドの検出感度を評価し、その結果を
図2に示した。これら3つのポリペプチドの反応性は低く、BSRF1及びBVRF2にコードされたポリペプチドは6つの血清試料と0.1より高い反応性を示したが、BGLF3にコードされたポリペプチドはわずか3つの血清試料と0.1より高い反応性を示した。
【0169】
【0170】
【0171】
実施例3:EBVポリペプチドと血清IgG抗体との反応性の評価
実施例1で合成した87ポリペプチド(1~87)と血清IgGとの反応性を実施例2の方法に従って検出し、ここで、1:5000で希釈したHRP標識マウス抗ヒトIgG(Wanyu Meilan、北京)を用いてヤギ抗ヒトIgAを置換した。結果を
図1に示した。これらのポリペプチドのうち、BZLF1及びBRLF1などの遺伝子によりコードされる5つのポリペプチドは、鼻咽頭がんのプール血清と0.1より高い反応性を有し(表3-1)、BNLF1(ZTA)、BRLF1(RTA)及びBILF2(gp78)が報告されていた。
【0172】
さらに、36の陰性血清試料を介してBVRF2-及びBNLF2b-コード化ポリペプチドの特異性を評価し、その結果を図に示した。BNLF2b遺伝子にコードされたポリペプチドと36の陰性血清試料との反応のOD値が全て0.034より低かった表2及び表3-2は、良好な特異性を示している。同時に、12の鼻咽頭がん血清試料によりBNLF2b遺伝子にコードされたポリペプチドの検出感度を評価し、その結果を図に示した。2例では、鼻咽頭がん患者12例の血清検体のうち6例でOD値が0.1を超えていた。
【0173】
【0174】
【0175】
実施例4:抗BNLF2b抗体の間接法の確立と予備的性能評価
さらに、DNASTARソフトウェアパッケージ中のProteanソフトウェアを介してBNLF2b(配列番号101)によりコードされるタンパク質の親水性、疎水性及び抗原性を分析し、間接的検出のためのコーティング抗原として使用された2つのポリペプチドaa14-52(配列番号88)及びaa1-74(配列番号89)を合成した。
【0176】
4.1 ポリペプチドa14-52に基づく間接的検出
ポリペプチドaa14-52を炭酸塩緩衝液(pH9.6)で125ng/mlに希釈し、100μL/ウェルでコーティングした。実施例3の方法によれば、鼻咽頭がん患者の86の血清試料及び健常なヒトの195の血清試料が検出に使用された。結果を
図3Aに示し、aa14-52をコーティング抗原として用いた場合、鼻咽頭がん患者の86血清試料中57試料はOD値が0.1を超え、健常人の195血清試料中全てのOD値が0.025未満であった。同時に、EBNA1/IgA+VCA/IgA組み合わせスクリーニング(組み合わせ検出方法については実施例6を参照のこと)により高リスクであるが最終的に非鼻咽頭がんと診断された122人の対象の血清試料を検出するために同じ方法を使用し、その結果を図に示した。3AではOD値が0.1を超えたのは3例のみであった。MedCalc 16.2.1ソフトウェア(MedCalc Software,Ostend,Belgium)によるROC曲線解析を、ポリペプチドa14-52に基づく上述の間接検出のデータについて実施し、その結果を図に示した。曲線下面積AUCが0.942、カットオフ値が0.025、Youden指数が0.80、特異度が100%、感度が80.23%(69/86)であった3B。
【0177】
4.2 ポリペプチドaa1-74に基づく間接検出
コーティング抗原としてポリペプチドaa1-74を用いて、4.1と同じ方法で、健常人の63の血清試料及び鼻咽頭がんの221の血清試料を検出した。
図4Aに示すように、鼻咽頭がん患者63例の血清試料のうち55例はOD値が0.1を超えていたが、健常な対照の221例の血清試料のうち、OD値が0.1を超えていたのは10例のみであった。ポリペプチドaa1-74に基づく上述の間接法のROC曲線分析をさらに実施し、その結果を
図4Bに示した。この方法が鼻咽頭がん患者を健常人から効率的に識別できることを示し、AUCは0.950であった。カットオフ値を0.1に設定した場合、感度は87.30%(55/63)、特異度は95.48%(211/221)であった。
【0178】
さらに、ポリペプチドaa1-74は、間接法により健常な対照の221の血清試料中のIgA及びIgM抗体のレベルを検出するためのコーティング抗原としても使用され、IgA抗体検出には1:20000希釈HRP標識ヤギ抗ヒトIgA(KPL、Gaithersburg、MD)を使用し、IgM抗体検出には1:50000希釈HRP標識ヤギ抗ヒトIgM(Wanyu Meilan、北京)を使用した。結果を
図4Cに示した。抗BNLF2b IgA抗体及び抗BNLF2b IgM抗体の検出は良好な特異性を示し、4及び7の血清試料のみがそれぞれ0.1より高い検出値を示し、特異性はそれぞれ98.19%(217/221)及び96.83%(214/221)であった。
【0179】
鼻咽頭がんと非鼻咽頭がんを区別する上述の方法の性能を表4に示した。その結果、コーティング抗原としてポリペプチドa14-52を用いたIgG抗体の間接法、又はコーティング抗原としてポリペプチドa1-74を用いたIgG、IgA及びIgM抗体の間接法が、鼻咽頭がんを健常対照と効果的に区別でき、良好な検出感度及び特異性を有するかどうかが示された。
【0180】
【0181】
実施例5:抗BNLF2b抗体の二重抗原サンドイッチ法の確立
実施例4の結果は、3種類の抗体IgA、IgM及びIgGが全て鼻咽頭がんのリスク予測において良好な特異性を有することを示したため、BNLF2bに対する全抗体を検出することにより、鼻咽頭がんのリスクを予測することができた。これに基づき、本実施例では、抗BNLF2b抗体を検出するためのダブル抗原サンドイッチ法を確立し、鼻咽頭がんのスクリーニングにおけるその性能を評価した。
【0182】
BNLF2bコード化ポリペプチドaa1-74を炭酸塩緩衝液(pH9.6)で100ng/mLに希釈し、ウェル当たり100μLで標準96ウェルマイクロウェルプレートに添加し、37℃で2時間反応させた。反応後、PBSTで2回洗浄し、ブロッキング溶液200μLを各ウェルに加え、ブロッキングを37℃で2時間行った。ブロッキング後、ブロッキング溶液を廃棄し、67ng/mlビオチン化ポリペプチドaa1-74及び50μLの鼻咽頭がん患者血清又は陰性対照血清を含む50μLの希釈液を各ウェルに添加し、反応を37℃で60分間行った。反応後、PBSTで5回洗浄し、1:5000希釈HRP標識ストレプトアビジン及び1:15000希釈HRP標識aa1-74を加え、37℃で30分間反応を続け、PBSTで5回洗浄した後、各ウェルにTMB発色溶液100μLを加え、37℃で15分間インキュベートした後、各ウェルに50μLの停止溶液を加え、混合後、450nm及び630nmの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。この方法を用いて、鼻咽頭がん患者の50の血清試料及び健常人の500の血清試料を検出し、その結果を
図5Aに示した。鼻咽頭がん患者50例中46例でOD値が0.1を超え、陰性血清500例中1例のみでOD値が0.1を超えていた。上記の結果をさらにROC曲線分析に供し、その結果を図に示した。曲線下面積が0.977であり、カットオフ値が0.1の場合、試薬の感度及び特異度はそれぞれ92.0%及び99.8%であり、Youden指数は0.91であった。
【0183】
加えて、鼻咽頭がんの診断における異なるBNLF2bペプチドの性能を比較するために、aa1~74に加えて、2つのペプチドa1~52(配列番号91)及びaa14~74(配列番号90)を合成し、それらの両方をC末端でビオチン標識した。鼻咽頭がん患者の別の175点の血清試料が、同じ方法に従って採取され、検出された。その結果を以下の表に示した。カットオフ値が0.1の場合、3つのポリペプチドの全ての感度は85%より高く、この方法は被覆抗原としてaa1-52、aa14-74又はaa1-74を用いることにより高い検出感度と特異性を有することを示した。
【0184】
【0185】
実施例6:抗BNLF2b抗体の二重抗原サンドイッチ法と既存の鼻咽頭がんスクリーニング試薬の比較
Zhongshan BioのEBNA1/IgA検出キット、EU(Cat番号:EI2791-9601A)のVCA/IgA検出キット、及び実施例5の二重抗原サンドイッチ法(aa1-74)を用いて、鼻咽頭がん患者の74の血清試料と健常人の250の血清試料の同時検出を行った。EBNA1/IgAの検出結果を
図6Aに示し、及びVCA/IgAの検出結果を
図6Bに示した。通常、スクリーニング指標としてEBNA1/IgAとVCA/IgAを組み合わせて使用し、2つの抗体を組み合わせて使用した場合、鼻咽頭がんの確率は、LogitP=-3.934+2.203×VCA/IgA+4.797×EBNA1/IgA(Liu, Z., et al. 2013, Am J Epidemiol)と算出され、カットオフ値は0.98であった。EBNA1/IgA+VCA/IgAの組み合わせ検出の結果を
図6Cに示した。鼻咽頭がん患者74人中69人及び健常人250人中8人が0.98より高い確率を有し、感度及び特異度はそれぞれ93.64%及び96.80%であった。
【0186】
抗BNLF2b抗体の検出結果を
図7に示した。ここでは、鼻咽頭がん患者の血清試料70例と健常人の血清試料1例のOD値が0.1を超え、0.1をカットオフ値とした場合、抗BNLF2b抗体検出の感度と特異度は、それぞれ94.59%と99.60%であった。結果をさらにSPSSソフトウェアを用いたカイ2乗検定により分析し、抗BNLF2b抗体の検出とEBNA1/IgA+VCA/IgAの組み合わせは感度に有意差を示さなかったが(P=1.00)、抗BNLF2b抗体はEBNA1/IgA+VCA/IgAの組み合わせより有意に高い特異性を示した(P=0.037)。
【0187】
上記の抗BNLF2b抗体検出及びEBNA1/IgA+VCA/IgAの組み合わせの結果について、それぞれROC曲線分析を行った。結果を
図8に示した。抗BNLF2b抗体検出とEBNA1/IgA+VCA/IgAの組み合わせのAUC値がそれぞれ0.97と0.99であり、全体的に有意差はなかったが(P=0.316)、特異度が94.59%以下の場合、抗BNLF2b抗体検出は常に組み合わせ検出より高い感度を示した。さらに、鼻咽頭がん患者74人中28人がI/II期であり、この28人のうち1人はBNLF2b検出及びEBNA1/IgA+VCA/IgAの組み合わせの両方で偽陰性であり、従って感度は96.43%であった。
【0188】
実施例5及び実施例6のデータを組み合わせて計算したところ、抗BNLF2b抗体検出の感度は93.55%(116/124)、特異度は99.73%(748/750)であった。文献(Liu, Z., et al. 2013, Am J Epidemiol)の発生率計算式によると、抗BNLF2b抗体検出の陽性予測値は33.2%で、EBNA1/IgA+VCA/IgA複合検出の陽性予測値(4.4%,38/862)と比較して有意な改善を示した(P<0.0001)。上記の結果は、抗BNLF2b抗体検出が、EBNA1/IgA+VCA/IgAスクリーニング法の既存の組み合わせと比較して、鼻咽頭がんスクリーニングの特異性及び陽性予測値を有意に改善できることを示した。
【0189】
実施例7:鼻咽頭がんスクリーニングにおける抗BNLF2b抗体二重抗原サンドイッチ法の適用
集団スクリーニングは広東省中山市(府社と南朗鎮)の高発生率地域の2つの町で実施され、計1325人が登録され、府社で496人、南朗鎮で829人が登録された。実施例6の方法(以下、抗BNLF2b抗体検出と称する)に従い、これらの試料をEBNA1/IgA、VCA/IgA、及び抗BNLF2b抗体について並行して検出した;EBNA1/IgAとVCA/IgA(LogitP=-3.934+2.203×VCA/IgA+4.797×EBNA1/IgA)の組み合わせにより、鼻咽頭がんを発症する確率を算出した。その結果、1325名のうち、EBNA1/IgA、VCA/IgA、抗BNLF2b抗体陽性者はそれぞれ163名、218名、32名であった。0.98を超える確率指数を有する126人のうち、5人が最終的に鼻咽頭がんと診断されたが、0.98未満の確率を有する人のうち、腫瘍登録システムによると、鼻咽頭がんと事前に診断された者はいなかった。鼻咽頭がんと診断された5検体のうち、VCA/IgAは1検体のみ検出できたが、他の方法は100%検出できた。1320の非鼻咽頭がん検体において、抗BNLF2b抗体検出の特異性及び陽性予測値は、それぞれ97.95%及び15.63%であり、EBNA1/IgA、VCA/IgA及びそれらの組み合わせよりも高かった。
【0190】
【0191】
実施例8:抗BNLF2b抗体二重抗原サンドイッチ法と既存の鼻咽頭がんスクリーニング試薬の併用
実施例6及び実施例7のデータを合わせると、鼻咽頭がん79例、非鼻咽頭がん1570例であった。鼻咽頭がん検体79検体の検出結果を表7-1に示すが、抗BNLF2b抗体検出陽性例はEBNA1/IgA、VCA/IgA、確率でそれぞれ70例、67例、72例であった。非鼻咽頭がん1570例の検出結果を表7-2に示したが、抗BNLF2b抗体検出陽性例はEBNA/IgA、VCA/IgA、確率ともに5例、5例、4例であった。EBNA/IgA、VCA/IgA、EBNA/IgA/VCA/IgAによる抗BNLF2b抗体検出のさらなる組み合わせ検出の結果を表7-3に示し、EBNA/IgAと組み合わせた検出後、陽性予測値は15.15%から50%に増加し、検出と組み合わせた後、陽性予測値は15.15%から55.56%に増加したことを示した。
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
さらに、中山人民病院のEBNA1/IgA+VCA/IgAの組み合わせにより予備的スクリーニングコホートで高リスクと同定された227症例(試料II)を収集し、そのうち8例が上咽頭内視鏡により鼻咽頭がんと診断された。結果を表8に示し、抗BNLF2b抗体陽性24例、そのうち7例が鼻咽頭がんであり、併用検出の感度及び陽性予測値はそれぞれ87.50%及び29.17%であった。
【0196】
試料II及び試料Iを合わせると、試料Iは、実施例6の250人の健常対照者において確率>0.98の8症例、及び実施例7の1325人のスクリーニングコホートにおいて確率>0.98の126症例(5症例は鼻咽頭がん)を含んでいた。2つの試料を統合した後、合計13例の鼻咽頭がん症例と348例の非鼻咽頭がん症例が得られ、EBNA1/IgA+VCA/IgAの組み合わせの陽性予測値は3.60%であった。これに基づき、抗BNLF2b抗体検出後、13例の鼻咽頭がんのうち12例が陽性であったが、非鼻咽頭がん348例中21例のみが陽性であったため、併用検出の陽性予測値は36.36%に上昇した(表8)。従って、抗BNLF2b抗体とEBNA1/IgA+VCA/IgAの組み合わせ検出は、鼻咽頭がんスクリーニングの特異性と陽性予測値をさらに改善することができた。仕事量を減らすために、抗BNLF2b抗体を最初に検出し、続いてEBNA1/IgA及びVCA/IgAをさらに検出することができた。
【0197】
【0198】
実施例9:鼻咽頭がんの補助診断における抗BNLF2b抗体二重抗原サンドイッチ法の適用
鼻咽頭がんの臨床症状は、他の頭頸部疾患との鑑別には不十分である。臨床的に疑われる症例は、主に鼻咽頭内視鏡検査及び病理学的検査により診断される。鼻咽頭がんが疑われた63例を収集し、そのうち31例が最終的に鼻咽頭がんと診断された。これら63例の検体を実施例6の方法による二重抗原サンドイッチ法により検出した結果、鼻咽頭がん31例中0.1、30例のカットオフ値がBNLF2b抗体陽性であったのに対し、非鼻咽頭がん32例中2例のみがBNLF2b抗体陽性であった。BNLF2b抗体検出は96.78%(30/31)の感度、93.75%(30/32)の特異度、93.75%(30/32)の陽性予測値を示した。以上の結果から、外来症例では、BNLF2b抗体の検出により、不要な鼻咽頭内視鏡検査の数が有意に減少し、患者の経済的及び身体的負担が軽減されることが示された。
【0199】
実施例10:BNLF2bコード化タンパク質の免疫優性エピトープの研究
BNLF2b遺伝子は、全部で98個のアミノ酸(配列番号101)をコードする。BNLF2bによりコードされるタンパク質の免疫優性エピトープを分析するために、著者らは9つの重複ポリペプチドを設計した。各ポリペプチドは15個のアミノ酸を有し(最後のポリペプチドは18個のアミノ酸を有し)、2つの隣接するポリペプチドは5個のアミノ酸によって重なり合い、C末端はその後の検出のためにビオチンで標識された(配列番号92-100)。実施例3の方法によれば、上述のポリペプチド断片をコーティング抗原として用いることにより、鼻咽頭がん患者の1:300希釈血清試料中のIgGの検出を行った。結果を
図9に示した。これは、BNLF2bコードタンパク質のエピトープが主に4つのセグメント:aa1-25、aa31-45、aa51-65及びaa81-98に位置することを示した。
【0200】
さらに、実施例3の方法に従った鼻咽頭がんの43の血清試料を介して、鼻咽頭がんスクリーニングにおける4つのセグメントポリペプチドaa1-25(配列番号102)、aa31-45(配列番号95)、aa51-65(配列番号97)、aa81-98(配列番号100)の感度を予め評価した。その結果、カットオフ値が0.1の場合、検出感度はaa51-65に対して76.7%(33/43)、aa1-25に対して72.1%(31/43)であり、他の2つのペプチドの感度は55.8%(24/43)であった。aa14-52及びaa1-74の感度は90.7%(39/43)及び93.0%(40/43)であり、3つの血清試料についてはaa1-74の検出に失敗したが、4つのポリペプチドの全ては陰性であり、aa14-52及びaa1-74の血清試料の反応はaa51-65と共に0.393であった。
【0201】
これらのエピトープを構成する重要なアミノ酸をさらに決定するために、aa1-25、aa31-45、aa51-65及びaa81-98に基づいてN末端及びC末端切断をさらに行い、一連のポリペプチドを合成した。この実験では、鼻咽頭がんの40の血清試料を混合してプール血清の2つの試料を形成し、1:300希釈後、実施例3の方法に従ってIgG検出を行い、結果を
図10に示した。
【0202】
(1)aa1-25セグメント(
図10A):C末端が変化せず、N末端が16位に切断された場合、鼻咽頭がん血清中のIgGに結合することができたが、19位に切断された場合、鼻咽頭がん血清中のIgGとの反応性は完全に失われた;同様に、N末端が変化せず、C末端が7位に切断された場合、ポリペプチドは鼻咽頭がん血清中のIgGと反応することができたが、C末端が4位に切断された場合、鼻咽頭がん血清中のIgGとの反応性は完全に失われた。したがって、aa1-15及びaa11-25は、それぞれ鍵アミノ酸aa5-7及びaa16-18を有する2つの独立したエピトープを含んでいた。
(2)aa31-45セグメント(
図10B):N末端切断を有するかC末端切断を有するかにかかわらず、ポリペプチドは37~39位のアミノ酸EDRなしで鼻咽頭がん血清中のIgGとの反応性を完全に失った。従って、KER(aa31-33)とEDR(aa37-39)はこのエピトープを構成する重要なアミノ酸であった。
(3)aa51-65セグメント(
図10C):N末端がaa54-56を含まない場合、又はC末端がaa60を含まない場合、ポリペプチドは鼻咽頭がん血清との反応性を完全に失った。
(4)aa81-98セグメント(
図10D):N末端がaa87-89を含まない場合、又はC末端がaa96-98を含まない場合、ポリペプチドは鼻咽頭がん血清との反応性を完全に失った。
【0203】
aa1-25セグメントがaa1-15及びaa11-25セグメントに及ぶエピトープを含むかどうかを分析するために、aa1-15、aa11-25及びaa1-25をそれぞれ被覆抗原として用いることにより、鼻咽頭がんの43の血清試料中にIgGを検出した。結果を
図11Aに示した。14の血清試料がaa1~25との反応のOD値を有し、aa1~15とaa11~25との反応の値の合計よりも高かったことを示した。14の血清試料を、コーティング抗原としてaa1-25セグメント中の異なる切断ポリペプチドを用いることによってさらに検出し、結果を
図11Bに示した。陽性血清と反応し得るポリペプチドが少なくともaa10-16を含有することを示した。
【0204】
加えて、上記の4つの主要セグメントに対して、自然及び人工変異体を含む一連の変異体も合成した。実施例3の方法によれば、これらの変異体は、鼻咽頭がんの1:300希釈プール血清試料中のIgGとの反応性を検出するためのコーティング抗原として使用され、結果が
図12に示された。
【0205】
(1)aa1-25(
図12A):6、9~11および16位のアミノ酸の突然変異後に最も明らかな減少が観察された。12位にはT、D及びSの3つの自然の突然変異があり、これら3つのアミノ酸へのアラニンの変異は、aa1-25と鼻咽頭がん血清との反応性を有意に低下させなかった。さらに、5、7、8、13、14、15、19、22、24、および25位のアミノ酸変異は、比較的ほとんど影響を示さなかった。
(2)aa31-45(
図12B):K31、R33、およびD38とR39がアラニンに変異された後、ポリペプチドの鼻咽頭がん血清との反応性は著しく低下し、これらのアミノ酸がエピトープを構成する重要なアミノ酸であることが示された;さらに、32、34、35、36、37、40、41、および42位のアミノ酸変異は、比較的ほとんど影響を示さなかった。
(3)aa51-65(
図12C):R53とN54、およびaa56-59がアラニンに変異した場合、ポリペプチドの鼻咽頭がん血清との反応性は有意に低下したが、52、55、60および61位は比較的影響が少なかった。
(4)aa81-98(
図12D):aa95-97の3つのアミノ酸がアラニンに変異した場合、ポリペプチドの鼻咽頭がん血清との反応性は最も顕著に低下した。さらに、89、91、93、および98位のアミノ酸変異は、比較的ほとんど影響を示さなかった。
【0206】
上記の結果は、BNLF2bにコードされたタンパク質のaa5-11、aa16-23、aa31-33、aa37-39、a53-60及びaa89-98がコアセグメントであることを示した。
【0207】
実施例11:鼻咽頭がんスクリーニング性能に及ぼすBNLF2bコード化タンパク質の異なるエピトープの併用の効果
上記a14-52、aa1-74、aa1-52及びaa1-25の合成ポリペプチドに基づき、別の2つのポリペプチドaa11-65(配列番号103)及びaa11-74(配列番号104)をさらに合成し、それらのC-末端でビオチン標識した。実施例3の方法によれば、これらのポリペプチドの、鼻咽頭がん患者の84の血清試料及び健常なヒトの168の血清試料との反応が、それぞれ検出された。鼻咽頭がんの血清試料との6つのポリペプチドの反応性は、健常対照との反応性よりも有意に高かった(
図13)。MedcalソフトウェアによるROC曲線分析の結果は、6つのポリペプチドのすべてが0.95を超える曲線下面積、89%を超える感度及び96%を超える特異性を有することを示した(表9)。上記の結果は、1つ以上のコアセグメント(aa5-11、aa16-23、aa31-33、a37-39、a53-60)を含むBNLF2bコード化ポリペプチド断片が鼻咽頭がんの優れたスクリーニング性能を有することを示した。
【0208】
【0209】
本発明の特定の実施形態を詳細に説明したが、当業者であれば、公表されたすべての教示に照らして、詳細に対して種々の修正及び変更を行うことができ、これらの変更はすべて本発明の範囲内にあることを理解するであろう。本発明の完全な分割は、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって与えられる。
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【配列表】