(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ボールねじ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20240709BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F16H25/22 C
F16H25/24 J
(21)【出願番号】P 2024504257
(86)(22)【出願日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2023041416
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】391033045
【氏名又は名称】株式会社第一測範製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】武石 正和
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-032364(JP,A)
【文献】特開2019-196833(JP,A)
【文献】特開2015-117780(JP,A)
【文献】独国実用新案第202018103321(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状の第1ねじ溝が設けられたねじ軸と、
前記ねじ軸の外周側に取り付けられ、内周面に螺旋状の第2ねじ溝が設けられており、前記ねじ軸の長手方向に移動可能であって、径方向に貫通する長穴を有するナットと、
前記第1ねじ溝と前記第2ねじ溝との間に形成される転動路を転動する複数のボールと、
前記長穴を覆うように前記ナットに取り付けられ、所定の前記第1ねじ溝内にある前記ボールが前記ねじ軸のねじ山を乗り越えて隣の前記第1ねじ溝内に入るよう前記ボールを案内する循環路が設けられたコマ部材と、を備え、
前記コマ部材は、
前記循環路の一部を構成する第1凹溝が設けられた第1部材と、
前記循環路の一部を構成する第2凹溝が設けられており、前記第1部材と組み合わされて前記循環路を形成する第2部材と、
前記循環路側に露出して前記ボールと接触する接触部を有する給脂部材と、
前記給脂部材の外径側を覆うようにして前記給脂部材を保持する第3部材と、を含む、ボールねじ。
【請求項2】
前記給脂部材は、板状である、請求項1に記載のボールねじ。
【請求項3】
前記給脂部材は、前記第3部材と前記第2部材との間に挟み込まれるようにして保持される、請求項1または請求項2に記載のボールねじ。
【請求項4】
前記接触部は、前記循環路側に突出する突出領域を有しており、
前記第2部材には、前記突出領域を収容する収容溝が設けられている、請求項1
または請求項2に記載のボールねじ。
【請求項5】
前記突出領域の突出長さは、前記ボールの直径の30%以上70%以下の長さである、請求項4に記載のボールねじ。
【請求項6】
前記第3部材には、前記給脂部材を収容する収容凹部が設けられている、請求項1
または請求項2に記載のボールねじ。
【請求項7】
前記第1部材および前記第3部材はそれぞれ、ねじにより前記ナットに取り付けられ、
前記第2部材は、前記第1部材および前記第3部材によって挟み込まれる、請求項1
または請求項2に記載のボールねじ。
【請求項8】
前記コマ部材は、周方向に間隔をあけて複数備えられる、請求項1
または請求項2に記載のボールねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボールねじに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ねじ軸と、ナットと、複数のボールと、ボールを循環させるコマ部材と、を備えるボールねじが知られている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-54710号公報
【文献】特開2015-232346号公報
【文献】特開2018-40455号公報
【文献】特開2010-71411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボールねじについては、長期にわたるボールの円滑な転動および循環が求められる。また、ボールねじについては、メンテナンス時や組み立て時における作業性の向上も求められる。
【0005】
そこで、長期にわたるボールの円滑な転動および循環を確保しつつ、作業性の向上を図ることができるボールねじを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従ったボールねじは、外周面に螺旋状の第1ねじ溝が設けられたねじ軸と、ねじ軸の外周側に取り付けられ、内周面に螺旋状の第2ねじ溝が設けられており、ねじ軸の長手方向に移動可能であって、径方向に貫通する長穴を有するナットと、第1ねじ溝と第2ねじ溝との間に形成される転動路を転動する複数のボールと、長穴を覆うようにナットに取り付けられ、ボールが第1ねじ軸のねじ山を乗り越えて隣の転動路内に入るようボールを案内する循環路が設けられたコマ部材と、を備える。コマ部材は、循環路の一部を構成する第1凹溝が設けられた第1部材と、循環路の一部を構成する第2凹溝が設けられており、第1部材と組み合わされて循環路を形成する第2部材と、循環路側に露出してボールと接触する接触部を有する給脂部材と、給脂部材の外径側を覆うようにして給脂部材を保持する第3部材と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
上記ボールねじによれば、長期にわたるボールの円滑な転動および循環を確保しつつ、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態1におけるボールねじの概略斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1中のIII-IIIで示す断面で切断した場合の一部の概略断面図である。
【
図4】
図4は、ボールねじに含まれるナットを示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、コマ部材の外観を示す概略斜視図である。
【
図7】
図7は、コマ部材の一部を切断した場合の概略断面図である。
【
図8】
図8は、コマ部材をナットの内径側から見た概略斜視図である。
【
図9】
図9は、第1部材と第2部材とを組み合わせた状態を示す概略斜視図である。
【
図10】
図10は、第1部材と第2部材とを組み合わせた状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
本開示のボールねじは、外周面に螺旋状の第1ねじ溝が設けられたねじ軸と、ねじ軸の外周側に取り付けられ、内周面に螺旋状の第2ねじ溝が設けられており、ねじ軸の長手方向に移動可能であって、径方向に貫通する長穴を有するナットと、第1ねじ溝と第2ねじ溝との間に形成される転動路を転動する複数のボールと、長穴を覆うようにナットに取り付けられ、ボールが第1ねじ軸のねじ山を乗り越えて隣の転動路内に入るようボールを案内する循環路が設けられたコマ部材と、を備える。コマ部材は、循環路の一部を構成する第1凹溝が設けられた第1部材と、循環路の一部を構成する第2凹溝が設けられており、第1部材と組み合わされて循環路を形成する第2部材と、循環路側に露出してボールと接触する接触部を有する給脂部材と、給脂部材の外径側を覆うようにして給脂部材を保持する第3部材と、を含む。
【0010】
本開示のボールねじによると、コマ部材は、1つの部品から構成されるのではなく、第1部材、第2部材、第3部材および給脂部材を組み合わせて構成されている。そして、循環路は、第1凹溝と第2凹溝とを組み合わせて形成される。このようにすることにより、給脂部材以外の部材については、循環路に求められる機能や取り付けの容易性等に応じて適切な材質や形状の部材を選択して組み合わせることができる。給脂部材は、循環路に露出してボールと接触する接触部を有するため、この接触部により循環路を通るボールに給脂することができる。そうすると、長期にわたってボールの円滑な転動および循環を確保することができる。また、第3部材は、給脂部材の外径側を覆うように配置されているため、給脂部材が外径側に露出せず、その結果、給脂部材の乾燥等を防ぐことができる。給脂部材は、第3部材によって保持されているため、給脂部材の交換等の際には、第3部材をナットから取り外して行うことができる。そうすると、第1部材および第2部材をナットから取り外すことなく給脂部材の交換等を行うことができるため、組み立て工数が増加するおそれを低減して、作業性の向上を図ることができる。以上より、上記ボールねじによると、長期にわたるボールの円滑な転動および循環を確保しつつ、作業性の向上を図ることができる。
【0011】
上記ボールねじにおいて、給脂部材は、板状であってもよい。このようにすることにより、給脂部材の厚さ方向をボールねじの径方向に配置させて、特に径方向に体積が大きくなるのを抑制しながら、比較的多くの潤滑油を給脂部材に含浸させることができる。また、給脂部材の取り扱い性を良好にすることができる。
【0012】
上記ボールねじにおいて、給脂部材は、第3部材と第2部材との間に挟み込まれるようにして保持されてもよい。このようにすることにより、コマ部材内において、給脂部材の姿勢を安定して保持することができる。したがって、長期にわたりより安定してボールに給脂することができる。
【0013】
上記ボールねじにおいて、接触部は、循環路側に突出する突出領域を有してもよい。第2部材には、突出領域を収容する収容溝が設けられていてもよい。このようにすることにより、突出領域から徐々に潤滑油を染み出させて、ボールに給脂することができる。この場合、収容溝に突出領域が収容されているため、突出領域の安定した保持および給脂位置のずれの抑制を図ることができる。したがって、長期にわたりより確実にボールに給脂することができる。
【0014】
上記ボールねじにおいて、突出領域の突出長さは、ボールの直径の30%以上70%以下の長さであってもよい。このようにすることにより、ボールと突出領域とを確実に接触させることができる。したがって、より確実にボールに給脂することができる。なお、より好適には、突出領域の突出長さとして、ボールの直径の40%以上60%以下の長さが選択される。
【0015】
上記ボールねじにおいて、第3部材には、給脂部材を収容する収容凹部が設けられていてもよい。このようにすることにより、給脂部材を第3部材に設けられた収容凹部に嵌め込んで収容することができ、給脂部材をより安定して保持することができる。また、給脂部材を収容凹部に嵌め込んで第3部材を取り付けることができ、作業性の向上を図ることができる。
【0016】
上記ボールねじにおいて、第1部材および第3部材はそれぞれ、ねじによりナットに取り付けられてもよい。第2部材は、第1部材および第3部材によって挟み込まれてもよい。このようにすることにより、ねじにより第1部材および第3部材を確実にナットに固定することができると共に、ねじを回して第1部材および第3部材の取り外しを行うことができる。また、第2部材は、第1部材および第3部材によって挟み込まれているため、より確実にナット側に固定することができる。すなわち、このような構成を採用すると、コマ部材の着脱を容易にすることができる。そうすると、給脂部材の交換等を容易に行うことができる。したがって、より作業性の向上を図ることができる。
【0017】
上記ボールねじにおいて、コマ部材は、周方向に間隔をあけて複数備えられてもよい。このようにすることにより、複数のボールを複数のコマ部材で円滑に循環させることができる。したがって、より円滑にボールを循環させることができる。
【0018】
[実施形態の具体例]
次に、本開示のボールねじの具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0019】
(実施の形態1)
まず、本開示の実施の形態である実施の形態1について説明する。
図1は、本開示の実施の形態1におけるボールねじの概略斜視図である。
図2は、
図1に示すボールねじの概略側面図である。
図2は、
図1に示す矢印Yの向きと逆向きに見た図である。
図3は、
図1中のIII-IIIで示す断面で切断した場合の一部の概略断面図である。
図1以下に示す図において、矢印Zで示す方向を後述するねじ軸の長手方向とし、矢印Xで示す方向および矢印Yで示す方向を径方向とする。矢印Xで示す方向と矢印Yで示す方向は直交している。
【0020】
図1、
図2および
図3を参照して、実施の形態1におけるボールねじ10aは、ねじ軸11aと、ナット12aと、複数の転動体としてのボール13aと、複数、本実施形態においては3つのコマ部材14aと、を含む。ボール13aとしては、例えば鋼球が用いられる。ねじ軸11aは、長手方向(Z方向)に延びる形状である。ねじ軸11aの外周面には、長手方向の全域にわたって螺旋状の第1ねじ溝16aが設けられている。ボールねじ10aを側面から見て、隣り合う第1ねじ溝16aの間には第1ねじ山17aが配置される。
【0021】
図4は、ボールねじ10aに含まれるナット12aを示す概略斜視図である。
図4を併せて参照して、ナット12aは、ねじ軸11aの外周側に取り付けられる。ナット12aは、中空円筒状の筒状部21aと、筒状部21aの長手方向の一方側に配置されるフランジ部22aと、を含む。フランジ部22aは、ねじ軸11aの長手方向となる厚さ方向から見て矩形状、具体的には4つの角が面取りされた四角形状である。ナット12aは、筒状部21aとフランジ部22aとを長手方向に繋げた形状である。
【0022】
ナット12a、具体的には、ナット12aに含まれる筒状部21aには、径方向に貫通する複数、本実施形態においては、3つの長穴23a,23b,23cが設けられている。筒状部21aには、周方向、具体的には120度ずつ間隔をあけて外周面が内径側に凹む凹み24aが3つ設けられている。長穴23a,23b,23cは、この3つの凹み24aの位置する領域に、それぞれ設けられている。長穴23aはそれぞれ、周方向に間隔をあけて設けられている。本実施形態においては、長穴23a,23b,23cは、周方向に120度ずつ間隔をあけて設けられている。長穴23a,23b,23cはそれぞれ、軸方向(長手方向(Z方向))にも間隔をあけて設けられている。長穴23a,23b,23cはそれぞれ、軸方向に傾斜して設けられている。長穴23a,23b,23cはそれぞれ、ねじ軸11aの外周側にナット12aが取り付けられた際に、外径側から見て隣り合う2つの第1ねじ溝16aに跨るように開口している。長穴23a,23b,23cが跨る2つの第1ねじ溝16aは、それぞれ1つずつずれている。この長穴23a,23b,23cにはそれぞれ、ボール13aを循環させるコマ部材14aが取り付けられる。これについては、後に詳述する。なお、長穴23a,23b,23cの周囲には、コマ部材14aを取り付けるためのねじ穴が複数設けられている。また、フランジ部22aの四隅に近い部分には、ナット12aへの他の部材の取り付け用の貫通穴が四つ設けられている。
【0023】
ナット12aの内周面には、螺旋状の第2ねじ溝18aが設けられている。第1ねじ溝16aと第2ねじ溝18aとの間に形成される転動路19aに、複数のボール13aが配置される。ボール13aは、転動路19aを転動する。ナット12aは、ボール13aが転動しながら循環することにより、ねじ軸11aの長手方向に移動可能である。ナット12aは、ねじ軸11aに対して直線往復運動が可能である。
【0024】
なお、ナット12aは、筒状部21aが配置される長手方向の一方側に取り付けられる円環状の第1シールリング25aと、フランジ部22aが配置される長手方向の他方側に取り付けられる円環状の第2シールリング26aと、を含む。第1シールリング25aは、筒状部21aの内周側に設けられた第1嵌め込み凹部27aに嵌め込まれており、第2シールリング26aは、フランジ部22aの内周側に設けられた第2嵌め込み凹部28aに嵌め込まれている。第1シールリング25aおよび第2シールリング26aの内周面には、それぞれねじ軸11aの第1ねじ溝16aに噛み合うねじ溝が形成されている。
【0025】
次に、コマ部材14aの構成について説明する。コマ部材14aは、上記したようにナット12aに設けられた3つの長穴23a,23b,23cのそれぞれを覆うようにナット12aに取り付けられる。コマ部材14aには、所定の第1ねじ溝16a内にあるボール13aがねじ軸11aのねじ山を乗り越えて隣の第1ねじ溝16a内に入るようボール13aを案内する循環路29aが設けられている。なお、ボールねじ10aには、転動路19aから循環路29aへボール13aを順次供給するすくい爪15aが設けられている。
【0026】
コマ部材14aは、第1部材31aと、第2部材32aと、第3部材33aと、給脂部材34aと、を含む。第1部材31a、第2部材32aおよび第3部材33aは、剛性を有する部材、例えば、金属製である。具体的には、第1部材31a、第2部材32aおよび第3部材33aの材質としては、例えばポリアセタールのような樹脂や、炭素鋼およびステンレス鋼のうちの少なくともいずれか一つが選択される。
【0027】
図5は、コマ部材14aの外観を示す概略斜視図である。
図6は、コマ部材14aの分解斜視図である。
図7は、コマ部材14aの一部を切断した場合の概略断面図である。
図8は、コマ部材14aをナット12aの内径側から見た概略斜視図である。
図9および
図10はそれぞれ、第1部材31aと第2部材32aとを組み合わせた状態を示す概略斜視図である。
図9と
図10とは、それぞれ異なる角度から見た図である。
図11は、第1部材31aを示す概略斜視図である。
図12は、第2部材32aを示す概略斜視図である。
図13は、第3部材33aを示す概略斜視図である。なお、理解を容易にする観点から、
図5、
図7および
図8において転動する複数のボール13aを併せて図示し、
図9において第1のねじ42aを併せて図示している。
【0028】
図5~
図13を併せて参照して、第1部材31aは、循環路29aの一部を構成する第1凹溝36aが設けられている。また、第1部材31aは、第2部材32aとの組み合わせ時において第2部材32aと接触する第1接触面37aを有する。第2部材32aは、循環路29aの一部を構成する第2凹溝38aが設けられている。第2部材32aは、第1部材31aとの組み合わせ時において第1部材31aと接触する第2接触面39aを有する。第2接触面39aの形状は、第1接触面37aと対応する形状である。第1接触面37aと第2接触面39aとを接触させるようにして第1部材31aと第2部材32aとを組み合わせることにより、第1凹溝36aおよび第2凹溝38aから構成される循環路29aが形成される。
【0029】
第1部材31aには、第1部材31aをナット12a側に取り付ける第1取り付け穴41aが設けられている。第1取り付け穴41aは、丸穴状である。第1取り付け穴41aは、取り付け用の第1のねじ42aの胴部が通り、頭部が引っ掛かるよう径の異なる部分を有する形状である。第1のねじ42aおよび後述する第2のねじ47aとしては、例えば皿ねじが用いられる。第1のねじ42aを第1取り付け穴41aに入れて締め付けた際に、第1のねじ42aの頭部が第1取り付け穴41a内に収まるよう構成されている。なお、第2部材32aには、後述する給脂部材34aの接触部52aの突出領域53aを収容する収容溝43aが設けられている。
【0030】
給脂部材34aは、板状である。より具体的には、給脂部材34aは、平板状である。給脂部材34aは、含油部材とも呼ばれる。給脂部材34aは、例えば潤滑油を含浸した部材から構成されている。給脂部材34aとしては、具体的には例えば、多孔質の焼結された樹脂部材を加熱成形し、潤滑剤を含浸したものが選択される。また、焼結された樹脂部材のパウダーと潤滑剤を混合し、加熱成形した固形潤滑剤を採用することにしてもよい。
【0031】
給脂部材34aは、平板部51aと、循環路29a側に露出してボール13aと接触する接触部52aと、を含む。平板部51aは、厚さ方向に見て多角形状である。接触部52aは、平板部51aから循環路29a側に突出する突出領域53aを有する。突出領域53aから染み出るようにしてボール13aに給脂、すなわち、潤滑油が供給されていく。平板部51aの領域で含浸している潤滑油は、徐々に突出領域53a側に供給されていく。本実施形態においては、突出領域53aの突出長さLは、ボール13aの直径Dの30%以上70%以下の長さである。本実施形態においては、突出領域53aの突出長さLは、ボール13aの直径Dの40%以上60%以下の長さである。(特に
図5および
図6参照)。また、本実施形態においては、
図7中の矢印Pで示す突出領域53aの循環路29a側への突出する長さは、例えば
図6中の突出領域53aの突出長さLの40%以上60%以下の長さである。
【0032】
第3部材33aは、給脂部材34aの外径側を覆うようにして給脂部材34aを保持する。第3部材33aには、給脂部材34aを収容する収容凹部45aが設けられている。収容凹部45aの形状は、板状の給脂部材34aの外形形状、主に平板部51aの外形形状に沿って凹むように設けられている。第3部材33aには、第3部材33aをナット12a側に取り付ける第2取り付け穴46aが設けられている。第2取り付け穴46aは、丸穴状である。第2取り付け穴46aは、第1取り付け穴41aと同様に、取り付け用の第2のねじ47aの胴部が通り、頭部が引っ掛かるよう径の異なる部分を有する形状である。なお、第3部材33aには、取り付け時において第1部材31aの第1接触面37aと接触する第3接触面48aが設けられている。
【0033】
第1部材31aは、第1のねじ42aによりナット12aに取り付けられる。第3部材33aは、第2のねじ47aによりナット12aに取り付けられる。第2部材32aは、第1部材31aおよび第3部材33aによって挟み込まれる。給脂部材34aは、第2部材32aと第3部材33aとの間に挟み込まれる。
【0034】
上記コマ部材14aの取り付けについて簡単に説明すると、以下の通りである。第1接触面37aと第2接触面39aとが接触するように第1部材31aと第2部材32aとを組み合わせ、第1のねじ42aを用いて第1部材31aをナット12aに固定する。この場合、第1のねじ42aの胴部を第1取り付け穴41aに通し、ナット12aに設けられたねじ穴を利用して第1のねじ42aを取り付け、第1部材31aを固定する。次に、収容凹部45aに給脂部材34aを収容し、接触部52aの突出領域53aが、第2部材32aの収容溝43aに収容するようにして外径側から第3部材33aをあてがう。または、接触部52aの突出領域53aが、第2部材32aの収容溝43aに収容するようにして外径側から給脂部材34aを置き、給脂部材34aが収容凹部45aに収容されるように外径側から第3部材33aをあてがう。これらの場合、給脂部材34aは、径方向において第2部材32aと第3部材33aとに挟み込まれた状態となる。その後、第1接触面37aと第3接触面48aとが接触するようにして、第2のねじ47aを用いて第3部材33aをナット12aに固定する。この場合、第2のねじ47aの胴部を第2取り付け穴46aに通し、ナット12aに設けられたねじ穴を利用して第2のねじ47aを取り付け、第3部材33aを固定する。
【0035】
上記構成のボールねじ10aによると、コマ部材14aは、1つの部品から構成されるのではなく、第1部材31a、第2部材32a、第3部材33aおよび給脂部材34aを組み合わせて構成されている。そして、循環路29aは、第1凹溝36aと第2凹溝38aとを組み合わせて形成される。このようにすることにより、給脂部材34a以外の部材については、循環路29aに求められる機能や取り付けの容易性等に応じて適切な材質や形状の部材を選択して組み合わせることができる。給脂部材34aは、循環路29aに露出してボール13aと接触する接触部52aを有するため、この接触部52aにより循環路29aを通るボール13aに給脂することができる。そうすると、長期にわたってボール13aの円滑な転動および循環を確保することができる。また、第3部材33aは、給脂部材34aの外径側を覆うように配置されているため、給脂部材34aが外径側に露出せず、その結果、給脂部材34aの乾燥等を防ぐことができる。給脂部材34aは、第3部材33aによって保持されているため、給脂部材34aの交換等の際には、第3部材33aをナット12aから取り外して行うことができる。そうすると、第1部材31aおよび第2部材32aをナット12aから取り外すことなく給脂部材34aの交換等を行うことができるため、組み立て工数が増加するおそれを低減して、作業性の向上を図ることができる。以上より、上記ボールねじ10aによると、長期にわたるボール13aの円滑な転動および循環を確保しつつ、作業性の向上を図ることができる。
【0036】
本実施形態においては、給脂部材34aは、板状である。よって、給脂部材34aの厚さ方向をボールねじ10aの径方向に配置させて、特に径方向に体積が大きくなるのを抑制しながら、比較的多くの潤滑油を給脂部材34aに含浸させることができる。また、給脂部材34aの取り扱い性を良好にすることができる。
【0037】
本実施形態においては、給脂部材34aは、第3部材33aと第2部材32aとの間に挟み込まれるようにして保持される。よって、コマ部材14a内において、給脂部材34aの姿勢を安定して保持することができる。したがって、長期にわたりより安定してボール13aに給脂することができる。
【0038】
本実施形態においては、接触部52aは、循環路29a側に突出する突出領域53aを有する。第2部材32aには、突出領域53aを収容する収容溝43aが設けられている。よって、突出領域53aから徐々に潤滑油を染み出させて、ボール13aに給脂することができる。この場合、収容溝43aに突出領域53aが収容されているため、突出領域53aの安定した保持および給脂位置のずれの抑制を図ることができる。したがって、長期にわたりより確実にボール13aに給脂することができる。
【0039】
本実施形態においては、突出領域53aの突出長さLは、ボール13aの直径Dの30%以上70%以下の長さである。よって、ボール13aと突出領域53aとをより確実に接触させることができる。したがって、より確実にボール13aに給脂することができる。
【0040】
本実施形態においては、第3部材33aには、給脂部材34aを収容する収容凹部45aが設けられている。よって、給脂部材34aを第3部材33aに設けられた収容凹部45aに嵌め込んで収容することができ、給脂部材34aをより安定して保持することができる。また、給脂部材34aを収容凹部45aに嵌め込んで第3部材33aを取り付けることができ、作業性の向上を図ることができる。
【0041】
本実施形態においては、第1部材31aおよび第3部材33aはそれぞれ、ねじ42a,47aによりナット12aに取り付けられる。第2部材32aは、第1部材31aおよび第3部材33aによって挟み込まれる。よって、ねじ42a,47aにより第1部材31aおよび第3部材33aを確実にナット12aに固定することができると共に、ねじ42a,47aを回して第1部材31aおよび第3部材33aの取り外しを行うことができる。また、第2部材32aは、第1部材31aおよび第3部材33aによって挟み込まれているため、より確実にナット12a側に固定することができる。すなわち、このような構成を採用すると、コマ部材14aの着脱を容易にすることができる。そうすると、給脂部材34aの交換等を容易に行うことができる。したがって、より作業性の向上を図ることができる。
【0042】
本実施形態においては、コマ部材14aは、周方向に間隔をあけて複数備えられる。よって、複数のボール13aを複数のコマ部材14aで円滑に循環させることができる。したがって、より円滑にボール13aを循環させることができる。
【0043】
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態においては、長穴およびコマ部材をそれぞれ3つ設けることとしたが、これに限らず、ボールねじにおいて、長穴およびコマ部材をそれぞれ2つ設けることにしてもよいし、4つ以上設けることにしてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態においては、ボールの外径側において接触部とボールの転動面とが接触することとしたが、これに限らず、ボールの軸方向の一方側において接触部とボールの転動面とが接触することとしてもよい。
【0045】
なお、上記実施の形態においては、給脂部材は、板状であることとしたが、これに限らず、給脂部材は、例えばブロック状であってもよいし、球状であってもよい。
【0046】
また、上記実施の形態においては、第1部材および第3部材は、ねじでナット側に取り付けられることとしたが、これに限らず、第1部材および第3部材は、例えば、スナップフィットによる篏合によりナット側に取り付けられてもよい。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
10a ボールねじ、11a ねじ軸、12a ナット、13a ボール、14a コマ部材、15a すくい爪、16a 第1ねじ溝、17a 第1ねじ山、18a 第2ねじ溝、19a 転動路、21a 筒状部、22a フランジ部、23a,23b,23c 長穴、24a 凹み、25a 第1シールリング、26a 第2シールリング、27a 第1嵌め込み凹部、28a 第2嵌め込み凹部、29a 循環路、31a 第1部材、32a 第2部材、33a 第3部材、34a 給脂部材、36a 第1凹溝、37a 第1接触面、38a 第2凹溝、39a 第2接触面、41a 第1取り付け穴、42a ねじ(第1のねじ)、43a 収容溝、45a 収容凹部、46a 第2取り付け穴、47a ねじ(第2のねじ)、48a 第3接触面、51a 接触部、52a 突出領域。
【要約】
ボールねじは、外周面に螺旋状の第1ねじ溝が設けられたねじ軸と、ねじ軸の外周側に取り付けられ、内周面に螺旋状の第2ねじ溝が設けられており、ねじ軸の長手方向に移動可能であって、径方向に貫通する長穴を有するナットと、第1ねじ溝と第2ねじ溝との間に形成される転動路を転動する複数のボールと、長穴を覆うようにナットに取り付けられ、ボールが第1ねじ軸のねじ山を乗り越えて隣の転動路内に入るようボールを案内する循環路が設けられたコマ部材と、を備える。コマ部材は、循環路の一部を構成する第1凹溝が設けられた第1部材と、循環路の一部を構成する第2凹溝が設けられており、第1部材と組み合わされて循環路を形成する第2部材と、循環路側に露出してボールと接触する接触部を有する給脂部材と、給脂部材の外径側を覆うようにして給脂部材を保持する第3部材と、を含む。