(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】装置、熱交換器、および蒸発器
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240709BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F28D15/02 101L
F28D15/04 B
(21)【出願番号】P 2019229838
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100128886
【氏名又は名称】横田 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】長野 方星
(72)【発明者】
【氏名】小田切 公秀
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-247930(JP,A)
【文献】特開2014-052110(JP,A)
【文献】特開2014-052109(JP,A)
【文献】特開2018-170317(JP,A)
【文献】特開2007-315740(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235552(WO,A1)
【文献】特開2005-180907(JP,A)
【文献】特開2016-156534(JP,A)
【文献】国際公開第2009/154323(WO,A1)
【文献】米国特許第08567486(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、
前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、当該蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に環流させる熱交換器と
を備える装置において、
前記蒸発器は、
液相の作動流体が内部を流れる液管から、予め定められた一方向に沿う向きで内部に流入する液相の作動流体を、毛細管力により外面へ導き蒸発させる蒸発体と、
前記蒸発体を収容するとともに、前記外面と対向する内面を有する収容体と
を備え、
前記蒸発体は、前記外面において前記収容体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成される蒸発体突出部を有し、
前記収容体は、前記内面において前記蒸発体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成され、前記蒸発体突出部と噛み合う収容体突出部を有し、
前記収容体突出部の先端および前記蒸発体の前記外面が互いに離間して配置され、当該先端および当該外面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第1蒸気溝を有し、
前記蒸発体突出部の先端および前記収容体の前記内面が互いに離間して配置され、当該先端および当該内面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第2蒸気溝を有する
装置。
【請求項2】
前記一方向と直交する断面において、前記蒸発体突出部および前記収容体突出部が接触する接触領域の長さは、当該蒸発体突出部の先端の幅の半分の長さよりも長い
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第1蒸気溝内であって前記収容体突出部の先端と前記蒸発体突出部の側面とにより形成される第1隅部に、液相の作動流体が滲み出るとともに、
前記第2蒸気溝内であって前記蒸発体突出部の先端と前記収容体突出部の側面とにより形成される第2隅部に、液相の作動流体が滲み出る
請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記蒸発体突出部の根元は当該蒸発体突出部の先端よりも幅が広く、かつ前記収容体突出部の根元は当該収容体突出部の先端よりも幅が広い
請求項1乃至3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記蒸発体突出部および前記収容体突出部が接触する接触領域において当該蒸発体突出部および当該収容体突出部の一方が突出し他方が当該突出する部分と噛み合うよう凹む請求項1乃至4のいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記内面および前記外面の少なくとも一方に、前記一方向と交差する方向に形成され、前記
第1蒸気溝と前記
第2蒸気溝とを連続させる交差溝を有する
請求項
1項記載の装置。
【請求項7】
外部から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、当該蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に環流させる熱交換器において、
前記蒸発器は、
液相の作動流体が内部を流れる液管から、予め定められた一方向に沿う向きで内部に流入する液相の作動流体を、毛細管力により外面へ導き蒸発させる蒸発体と、
前記蒸発体を収容するとともに、前記外面と対向する内面を有する収容体と
を備え、
前記蒸発体は、前記外面において前記収容体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成される蒸発体突出部を有し、
前記収容体は、前記内面において前記蒸発体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成され、前記蒸発体突出部と噛み合う収容体突出部を有し、
前記収容体突出部の先端および前記蒸発体の前記外面が互いに離間して配置され、当該先端および当該外面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第1蒸気溝を有し、
前記蒸発体突出部の先端および前記収容体の前記内面が互いに離間して配置され、当該先端および当該内面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第2蒸気溝を有する
熱交換器。
【請求項8】
液相の作動流体が内部を流れる液管から、予め定められた一方向に沿う向きで内部に流入する液相の作動流体を、毛細管力により外面へ導き蒸発させる蒸発体と、
前記蒸発体を収容するとともに、前記外面と対向する内面を有する収容体と
を備え、
前記蒸発体は、前記外面において前記収容体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成される蒸発体突出部を有し、
前記収容体は、前記内面において前記蒸発体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成され、前記蒸発体突出部と噛み合う収容体突出部を有し、
前記収容体突出部の先端および前記蒸発体の前記外面が互いに離間して配置され、当該先端および当該外面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第1蒸気溝を有し、
前記蒸発体突出部の先端および前記収容体の前記内面が互いに離間して配置され、当該先端および当該内面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第2蒸気溝を有する
蒸発器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置、熱交換器、および蒸発器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、設置角度の如何に関わらず効率的に発熱部品を冷却するべく、蒸発部、凝縮部、及び液戻り管の内部にそれぞれ設けられるとともに、毛細管力を生じさせるウィックを有するループ型ヒートパイプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、電子機器などの装置が小型化および高性能化することにともない、装置における発熱密度が増大している。そのため、装置に設けられる発熱体からの高い熱流束を効率よく除去することが求められている。
そこで、本発明は、熱交換率を向上させた装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、発熱体と、前記発熱体から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、当該蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に環流させる熱交換器とを備える装置において、前記蒸発器は、液相の作動流体が内部を流れる液管から、予め定められた一方向に沿う向きで内部に流入する液相の作動流体を、毛細管力により外面へ導き蒸発させる蒸発体と、前記蒸発体を収容するとともに、前記外面と対向する内面を有する収容体とを備え、前記蒸発体は、前記外面において前記収容体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成される蒸発体突出部を有し、前記収容体は、前記内面において前記蒸発体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成され、前記蒸発体突出部と噛み合う収容体突出部を有し、前記収容体突出部の先端および前記蒸発体の前記外面が互いに離間して配置され、当該先端および当該外面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第1蒸気溝を有し、前記蒸発体突出部の先端および前記収容体の前記内面が互いに離間して配置され、当該先端および当該内面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第2蒸気溝を有する装置である。
請求項2に記載の発明は、前記一方向と直交する断面において、前記蒸発体突出部および前記収容体突出部が接触する接触領域の長さは、当該蒸発体突出部の先端の幅の半分の長さよりも長い請求項1記載の装置である。
請求項3に記載の発明は、前記第1蒸気溝内であって前記収容体突出部の先端と前記蒸発体突出部の側面とにより形成される第1隅部に、液相の作動流体が滲み出るとともに、
前記第2蒸気溝内であって前記蒸発体突出部の先端と前記収容体突出部の側面とにより形成される第2隅部に、液相の作動流体が滲み出る請求項1または2記載の装置である。
請求項4に記載の発明は、前記蒸発体突出部の根元は当該蒸発体突出部の先端よりも幅が広く、かつ前記収容体突出部の根元は当該収容体突出部の先端よりも幅が広い請求項1乃至3のいずれか1項記載の装置である。
請求項5に記載の発明は、前記蒸発体突出部および前記収容体突出部が接触する接触領域において当該蒸発体突出部および当該収容体突出部の一方が突出し他方が当該突出する部分と噛み合うよう凹む請求項1乃至4のいずれか1項記載の装置である。
請求項6に記載の発明は、前記内面および前記外面の少なくとも一方に、前記一方向と交差する方向に形成され、前記第1蒸気溝と前記第2蒸気溝とを連続させる交差溝を有する請求項1項記載の装置である。
請求項7に記載の発明は、外部から熱を吸収して液相の作動流体を蒸発させる蒸発器を有し、当該蒸発器から流出した気相の作動流体を凝縮させ当該蒸発器に環流させる熱交換器において、前記蒸発器は、液相の作動流体が内部を流れる液管から、予め定められた一方向に沿う向きで内部に流入する液相の作動流体を、毛細管力により外面へ導き蒸発させる蒸発体と、前記蒸発体を収容するとともに、前記外面と対向する内面を有する収容体とを備え、前記蒸発体は、前記外面において前記収容体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成される蒸発体突出部を有し、前記収容体は、前記内面において前記蒸発体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成され、前記蒸発体突出部と噛み合う収容体突出部を有し、前記収容体突出部の先端および前記蒸発体の前記外面が互いに離間して配置され、当該先端および当該外面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第1蒸気溝を有し、前記蒸発体突出部の先端および前記収容体の前記内面が互いに離間して配置され、当該先端および当該内面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第2蒸気溝を有する熱交換器である。
請求項8に記載の発明は、液相の作動流体が内部を流れる液管から、予め定められた一方向に沿う向きで内部に流入する液相の作動流体を、毛細管力により外面へ導き蒸発させる蒸発体と、前記蒸発体を収容するとともに、前記外面と対向する内面を有する収容体とを備え、前記蒸発体は、前記外面において前記収容体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成される蒸発体突出部を有し、前記収容体は、前記内面において前記蒸発体に向けて突出するとともに、前記一方向に沿って形成され、前記蒸発体突出部と噛み合う収容体突出部を有し、前記収容体突出部の先端および前記蒸発体の前記外面が互いに離間して配置され、当該先端および当該外面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第1蒸気溝を有し、前記蒸発体突出部の先端および前記収容体の前記内面が互いに離間して配置され、当該先端および当該内面の間で蒸発した作動流体を前記一方向に沿って案内する第2蒸気溝を有する蒸発器である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、熱交換率を向上させた装置を提供することができる。
請求項2記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、蒸発体突出部と収容体突出部との接触領域を確保することができる。
請求項3記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、熱交換率を向上させた装置を提供することができる。
請求項4記載の発明によれば、蒸発体突出部と収容体突出部とが接触した状態を維持することができる。
請求項5記載の発明によれば、蒸発体突出部と収容体突出部との接触面積を増加させることができる。
請求項6記載の発明によれば、収容体が受ける熱量が増加した場合においても、三相界線を形成することができる。
請求項7記載の発明によれば、収容体が受ける熱量が増加した場合においても、気相の作動流体の流路を確保することができる。
請求項8記載の発明によれば、熱交換率を向上させた装置を提供することができる。
請求項9記載の発明によれば、熱交換率を向上させた熱交換器を提供することができる。
請求項10記載の発明によれば、熱交換率を向上させた蒸発器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態に係るループ型ヒートパイプを示す概略構成図である。
【
図2】(a)は、本実施の形態に係る蒸発器の軸方向における断面図を示し、(b)は、(a)のIIb-IIb面で切断した断面図である。
【
図5】(a)乃至(c)は変形例1を説明するための図である。
【
図7】(a)および(b)は変形例3を説明するための図である。
【
図8】(a)乃至(c)は変形例3におけるウィックなどの斜視図である。
【
図9】ループ型ヒートパイプを備える携帯電話を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について詳細に説明する。
<ループ型ヒートパイプ100の構成>
図1は、本実施の形態に係るループ型ヒートパイプ100を示す概略構成図である。
まず、
図1を参照して、本実施の形態が適用されるループ型ヒートパイプ100の構成を説明する。本実施の形態が適用されるループ型ヒートパイプ100は、例えば電子機器等の筺体の内部に備えられる、コンピュータのCPUなどの発熱体200を、外部から動力を供給することなく冷却するため、作動流体を循環させるよう構成されている。
【0009】
詳細に説明すると、冷却素子の一例であるループ型ヒートパイプ100は、作動流体が気化する際の潜熱を利用して発熱体200を冷却するため作動流体を蒸発させる蒸発器(Evaporator)101と、この蒸発器101で気化された作動流体を放熱して液化する凝縮器(Condenser)107とを有する。また、ループ型ヒートパイプ100は、蒸発器101で気化された作動流体を凝縮器107まで送る蒸気管(Vapor Line)105と、凝縮器107で液化された作動流体を蒸発器101まで送る液管(Liquid Line)109とを備えている。そして、ループ型ヒートパイプ100内には液相および気相の間で相変化する作動流体が充填されている。なお、作動流体は、例えば、水、アルコール、アンモニア等が用いられる。
【0010】
<ループ型ヒートパイプ100の動作>
次に、
図1を参照して、ループ型ヒートパイプ100内の動作を説明する。
発熱体200において発生する熱は、蒸発器101に伝達される(矢印C1参照)。蒸発器101において熱を吸収した作動流体は気化し、蒸気管105を通って(矢印A1参照)凝縮器107へ送られる(矢印A2参照)。凝縮器107へ送られた作動流体は、熱を放出して(矢印C2参照)液化する。そして、液化した作動流体は、液管109を通って(矢印A3参照)再び蒸発器101へと送られる(矢印A4参照)。
【0011】
<蒸発器101の構成>
図2(a)は、本実施の形態に係る蒸発器101の軸方向における断面図を示し、
図2(b)は、
図2(a)のIIb-IIb面で切断した断面図である。
【0012】
次に、
図1及び
図2を参照して、本実施の形態が適用される蒸発器101の構成を説明する。
図2(a)に示すように、蒸発器101は、電子機器(図示せず)に備えられ、発熱体200からの熱を伝達するよう設けられる蒸発器本体110と、この蒸発器本体110と接続され内部に液相および気相の作動流体を収容する液溜め部120とを有する。また、蒸発器101は、蒸発器本体110の内部に挿入されるウィック130と、一端がウィック130の内部に配置されるとともに他端が液管109と接続されウィック130内に液相の作動流体を導入する導入管(ベイオネット管)150とを有する。
【0013】
蒸発器本体110は、中空管状の金属からなり、一端が蒸気管105(
図1参照)と接続され他端が液溜め部120と接続される。
液溜め部120は、蒸発器本体110と内部が連続するように設けられた中空管状の部材を有する。なお、図示の例においては、液溜め部120には、液管109を挿入する挿入口129が設けられている。
【0014】
ウィック130は、多孔質金属(ポーラスメタル)からなる部材である。ウィック130は、作動流体に毛細管力を発生させ、結果として作動流体を移動させる。
【0015】
また、ウィック130は、一端が閉塞されているとともに、他端が開放されている中空管状の部材である。ウィック130は、蒸発器本体110の内周面(内面)111に接触して設けられる。なお、蒸発器101を組み立てる際には、例えば蒸発器本体110と液溜め部120とを接続する前に、ウィック130が蒸発器本体110の内部に挿入される。
【0016】
ウィック130は、細孔径が50nmよりも大きい所謂マクロ孔を有する。具体的には、ウィック130の実効細孔径(あるいは平均細孔径)は、例えば0.1~25μmである。なお、この平均細孔径は、バブルポイント法により測定されたものであるが、他の測定方法により測定されたものであってもよい。
【0017】
なお、ウィック130は、多孔質金属に限定されるものではなく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂多孔質、セラミック多孔質、ガラス多孔質、多孔質繊維などから形成されてもよい。また、ウィック130の空孔率は、25%~70%である。さらに、ウィック130として、熱伝導率が低い材質を用いると、蒸発器本体110から液溜め部120への熱リークを低減することができる。なお、熱リークをより低減したい場合、一般的には、熱伝導率が金属よりも低い非金属を用いることが好ましい。
【0018】
また、ウィック130の外径は、例えば3mm~100mmの範囲であり、好ましくは、4mm~80mmの範囲であり、より好ましくは6mm~60mmの範囲である。なお、図示の例におけるウィック130は円筒状の部材であるが、ウィック130の形状は板状(直方体)等他の形状であってもよい(後述)。
【0019】
導入管150は、ウィック130内に設けられる中空管状の部材である。図示の例においては、蒸発器本体110と、ウィック130と、導入管150とは同軸に設けられている。
【0020】
なお、以下の説明においては、ウィック130の周方向を、単に周方向ということがある。また、ウィック130の軸方向を、単に軸方向ということがある。この軸方向は、導入管150を通って液相の作動流体が流入する方向(矢印B1参照)、あるいは蒸気管105を通って気相の作動流体が流出する方向(矢印A1参照)に沿う方向である。
【0021】
<蒸発器101の動作>
次に、
図2を参照しながら蒸発器101内の動作について説明する。
まず、液管109によって蒸発器101へと送られた液相の作動流体は、導入管150を介して蒸発器本体110内へと流入する(矢印B1参照)。
【0022】
蒸発器本体110内へ流入した作動流体は、蒸発器本体110内でウィック130に浸透する。また、蒸発器本体110内へと流入した作動流体の一部は、液溜め部120に供給され(矢印B3参照)、液溜め部120内に保留される。
ウィック130に浸透した作動流体は、ウィック130の毛細管力により、外周面に向けて移動する(矢印B2参照)とともに、発熱体200の熱により加熱され気化する。この気化した作動流体は、蒸発器本体110とウィック130との間隙(後述)を通過しながら、蒸気管105側へと移動する(矢印B4参照)。また、蒸発器本体110内の作動流体がウィック130に浸透することにともない、液溜め部120内の作動流体は蒸発器本体110へと供給される。
【0023】
ここで、ウィック130の外周面(外面)131では、気化された作動流体が蒸気管105側へと移動することにともない、ウィック130に浸透した液相の作動流体がウィック130の外周面131に向けて移動する。そして、この液相の作動流体は、気化し蒸気管105へと移動する。このようにして、ウィック130の外周面131において作動流体の流れが途切れることなく、上記のサイクルが繰り返される。そして、発熱体200において発生した熱が、上述のように蒸発器101から凝縮器107(
図1参照)へ輸送される。
【0024】
<蒸発器本体110およびウィック130>
図3は、
図2(b)のIII内の拡大図である。言い替えると、
図3は、軸方向と直交する面における断面図である。
図4は、
図3のIV内の拡大図である。
次に、
図2乃至
図4を参照して、本実施の形態が適用される蒸発器本体110およびウィック130について詳細に説明する。
【0025】
まず、
図2(b)に示すように、蒸発器本体110は、ウィック130と対向する内周面111を有する。また、ウィック130は、蒸発器本体110と対向する外周面131を有する。ウィック130の外周面131は、蒸発器本体110の内周面111によって支持される。
【0026】
ここで、
図2(b)に示すように、蒸発器本体110は、内周面111に容器凹部113を有する。この容器凹部113は、軸方向に延びる溝である。図示の容器凹部113は、蒸発器本体110の内周面111における軸方向全体にわたって形成されるが、軸方向における一部に設けられる構成であってもよい。また、容器凹部113は、蒸発器本体110の内周面111に複数設けられている。さらに説明をすると、容器凹部113は、周方向において所定の間隔で複数設けられている。
【0027】
ここで、
図3に示すように、蒸発器本体110は、内周面111に容器凹部113同士に挟まれる部分である容器凸部112が形成されている構成と捉えることができる。この容器凸部112は、容器凹部113に沿って形成される。すなわち、容器凸部112は軸方向に延びる突起である。
【0028】
また、
図3に示すように、容器凸部112および容器凹部113は、各々の断面が略長方形である。また、蒸発器本体110の内周面111は、径方向に沿う面である容器側面114と、容器凸部112の頂面であり周方向に沿う面である容器頂面116と、容器凹部113の底面であり周方向に沿う面である容器底面118とにより形成される。ここで、容器凸部112の周方向長さを容器凸部幅X1とし、容器凹部113の周方向長さを容器凹部幅X2とし、容器凸部112の径方向長さ(高さ)を容器凸部高さX3とする。
【0029】
また、
図2(b)に示すように、ウィック130は、外周面131にウィック凹部133を有する。このウィック凹部133は、軸方向に延びる溝である。図示のウィック凹部133は、ウィック130の外周面131における軸方向全体にわたって形成されるが、軸方向における一部に設けられる構成であってもよい。また、ウィック凹部133は、ウィック130の外周面131に複数設けられている。さらに説明をすると、ウィック凹部133は、周方向において所定の間隔で複数設けられている。
【0030】
ここで、ウィック130は、外周面131にウィック凹部133同士に挟まれる部分であるウィック凸部132が形成されている構成と捉えることができる。このウィック凸部132は、ウィック凹部133に沿って形成される。すなわち、ウィック凸部132は、軸方向に延びる突起である。
【0031】
また、
図3に示すように、ウィック凸部132およびウィック凹部133は、各々の断面が略長方形である。また、ウィック130の外周面131は、径方向に沿う面であるウィック側面134と、ウィック凸部132の頂面であり周方向に沿う面であるウィック頂面136と、ウィック凹部133の底面であり周方向に沿う面であるウィック底面138とにより形成される。ここで、ウィック凸部132の周方向長さをウィック凸部幅W1とし、ウィック凹部133の周方向長さをウィック凹部幅W2とし、ウィック凸部132の径方向長さ(高さ)をウィック凸部高さW3とする。また、ウィック130の内周面137からウィック底面138までの径方向長さをウィック厚さW4とする。
【0032】
ここで、
図3に示すように、蒸発器本体110内にウィック130を配置した状態においては、容器凹部113内にウィック凸部132が挿入される。また、ウィック凹部133内に容器凸部112が挿入された状態と捉えることができる。すなわち、ウィック凸部132および容器凸部112が互いに挟みこまれる構成となる。
【0033】
また、ウィック側面134と容器側面114とは互いに接触した配置となる。一方で、ウィック頂面136と容器底面118とは互いに離間した配置となる。同様に、ウィック底面138と容器頂面116とは互いに離間した配置となる。ここで、ウィック側面134と容器側面114とが接触する領域を接触領域145(
図4参照)とする。また、接触領域145の径方向長さを接触領域長さE1とする。
【0034】
さて、容器凹部113およびウィック凹部133の各々の内部は、気化した作動流体の流路である蒸気溝140として機能する。図示の蒸気溝140は、容器凹部113内に形成される外周溝141と、ウィック凹部133内に形成される内周溝143とを有する。さらに説明をすると、外周溝141は、容器側面114と、ウィック頂面136と、容器底面118とによって囲まれた(形成された)空間である。また、内周溝143は、ウィック側面134と、ウィック底面138と、容器頂面116とによって囲まれた空間である。また、外周溝141および内周溝143は、周方向において交互に配置される。また、外周溝141は、径方向において内周溝143よりも外側に配置される。
【0035】
ここで、
図4に示すように、外周溝141の内部であって、蒸発器本体110の容器側面114と、ウィック130のウィック頂面136とが交差する部分を第1隅部Cn1とする。また、内周溝143の内部であって、蒸発器本体110の容器頂面116と、ウィック130のウィック側面134とが交差する部分を第2隅部Cn2とする。
【0036】
次に、作動流体の流れについて説明をする。毛細管力によりウィック130の内周面137から外周面131に向けて移動する作動流体は、加熱され気化するとともに、蒸発器本体110とウィック130との間に形成された蒸気溝140に流出する。そして、作動流体は、蒸気溝140に沿って移動し蒸気管105(
図1参照)側へと抜ける。
【0037】
ここで、ループ型ヒートパイプ100が動作している際、
図4に示すように、外周溝141の内部の第1隅部Cn1に、液相の作動流体Lqが滲み出る、すなわち進出することがある。第1隅部Cn1に進出した液相の作動流体Lqは、蒸発器本体110の容器側面114と、ウィック130のウィック頂面136との間をつなぐ面を形成する。そして、この面は、蒸発器本体110の容器側面114と、ウィック130のウィック頂面136と、外周溝141との共通の境界において形成される、液相の作動流体Lqの架橋、すなわち液架橋Lq1として捉えることができる。なお、この液相の作動流体Lqの面(界面)は、液相の作動流体Lqの表面張力の作用により湾曲する。
【0038】
同様に、内周溝143の内部の第2隅部Cn2に液相の作動流体Lqが進出することがある。第2隅部Cn2に進出した液相の作動流体Lqは、蒸発器本体110の容器頂面116と、ウィック130のウィック側面134との間をつなぐ面を形成する。また、この面は、蒸発器本体110の容器頂面116と、ウィック130のウィック側面134と、内周溝143との共通の境界において形成される、液架橋Lq2として捉えることができる。
【0039】
また、
図4に示すように、蒸発器本体110の容器側面114において、作動流体の気液界面が形成される。同様に、蒸発器本体110の容器頂面116、ウィック130のウィック側面134、およびウィック130のウィック頂面136の各々において、作動流体の気液界面が形成される。そして、固相である容器側面114、容器頂面116、ウィック側面134、およびウィック頂面136のいずれかと、液相の作動流体Lqと、気相の作動流体との3つの相の境界線を、三相界線Bdと呼ぶことがある。この三相界線Bdの長さが長いほど、より蒸発面積が増大し、蒸発器本体110の熱伝達性能が向上する。これは、液架橋Lq1、Lq2が形成されることにより、液相の作動流体Lqの蒸発面が増加するためと考えられる。また、熱抵抗の小さな液膜(ウィック凹部133に進出した液相の作動流体Lq)を介して熱輸送が行われるためと考えることもできる。
【0040】
ここで、図示の例においては、ウィック凸部132および容器凸部112が互いに噛み合うことにより、第1隅部Cn1および第2隅部Cn2が形成される。この第1隅部Cn1および第2隅部Cn2が形成されることにより、三相界線Bdが形成される箇所が増加し、蒸発器本体110の熱伝達性能が向上し得る。
【0041】
また、図示の例においては、第1隅部Cn1および第2隅部Cn2が径方向において互いに異なる位置となる。すなわち、ウィック130内部から蒸発器本体110に向かう向きにおいて、互いに異なる位置で三相界線Bdが形成される構成である。ここで、例えば蒸発器本体110からウィック130に伝達される熱量が増加すると、液相の作動流体がウィック130内部から搬送される距離がより長い第1隅部Cn1において、三相界線Bdが形成されない状態となることがある。この場合においても、径方向内側に位置する第2隅部Cn2に三相界線Bdが形成されることによって、蒸発器本体110の熱伝達性能が維持され得る。すなわち、外周溝141において液相の作動流体が枯渇したとしても、内周溝143で三相界線Bdを確保することが可能となる。
【0042】
次に、蒸発器本体110およびウィック130の各々における寸法について説明をする。まず、容器凸部幅X1は、ウィック凹部幅W2と略等しい。ここで容器凸部幅X1とウィック凹部幅W2とが略等しいとは、長さが一致することだけでなく、容器凹部113とウィック凸部132とが嵌め合いの関係となり得る範囲で互いに異なる長さであることを含む。同様に、容器凹部幅X2は、ウィック凸部幅W1と略等しい。なお、図示の例においては、容器凸部幅X1、容器凹部幅X2、ウィック凸部幅W1、ウィック凹部幅W2は、互いに一致する長さである。また、図示の例においては、容器凸部高さX3とウィック凸部高さW3とは、互いに一致する長さであるが、異なる長さでもよい。
【0043】
また、接触領域145の接触領域長さE1は、容器凸部幅X1の1/2以上の長さであることが好ましい。このことにより、蒸発器本体110とウィック130との接触面積を大きく確保し得る。さらに説明をすると、例えば図示の例とは異なり、蒸発器本体110の内周面111に容器凸部112を設けない構成として、ウィック凸部132の容器頂面116が蒸発器本体110の内周面111と接触させる構成例が考えられる。この構成例と比較して、図示の例のように接触領域145の接触領域長さを容器凸部幅X1の1/2より長い長さとすると、蒸発器本体110とウィック130との接触面積をより大きく確保することが可能となる。
【0044】
また、図示の例においては、ウィック厚さW4がウィック凸部高さW3よりも小さい。例えば、ウィック厚さW4は、ウィック凸部高さW3の1/2以下の長さである。また、例えば熱伝導率が金属よりも低い非金属でウィック130が構成される場合、ウィック厚さW4は、ウィック凸部高さW3の1/10以下の長さでもよい。ウィック厚さW4が短くなることにより、液相の作動流体がウィック130を通過する距離が短くなり、蒸発器本体110の熱伝達性能が向上し得る。
【0045】
また、図示の例においては、ウィック側面134と容器側面114とが接触し互いに押圧することで、蒸発器本体110内におけるウィック130の位置が固定される。また、上述のようにウィック頂面136および容器底面118が離間し、ウィック底面138および容器頂面116が離間する。このことにより、蒸発器本体110およびウィック130の寸法にばらつきがあったとしても、蒸発器本体110内へウィック130を配置しやすくなる。
【0046】
なお、容器凹部113およびウィック凹部133は、例えば切削加工、レーザ加工、エッチング加工など周知の技術により形成される。また、蒸発器本体110およびウィック130を3Dプリンタにより製造することにともない、容器凹部113およびウィック凹部133を形成してもよい。
【0047】
また、容器凹部113およびウィック凹部133各々の溝幅である容器凹部幅X2およびウィック凹部幅W2が小さいほど、熱伝達係数および最大熱流束が増加する。一方で、容器凹部幅X2およびウィック凹部幅W2が小さいと、気相の作動流体が受ける抵抗が増加する。また、容器凹部幅X2およびウィック凹部幅W2が小さいと、製造コストが増加する。そこで、容器凹部幅X2およびウィック凹部幅W2は、例えば0.1mm~3.0mmの範囲が好ましい。
【0048】
<変形例1>
図5(a)乃至(c)は、変形例1を説明するための図である。なお、
図5(a)乃至(c)の各々は上記実施の形態を示す
図3に対応する図である。また、
図5(a)乃至(c)以降の説明においては、上記実施の形態と同一の構成には同一の符号をつけ、その詳細な説明は省略する。
次に、
図5(a)乃至(c)を参照しながら変形例1について説明をする。
【0049】
上記実施の形態においては、容器凸部112、容器凹部113、ウィック凸部132、およびウィック凹部133の断面が略長方形であることを説明したが、ウィック凸部132および容器凸部112が互いに噛み合う構成であれば、これに限定されない。
【0050】
例えば、
図5(a)に示す蒸発器本体210およびウィック230のように、断面略V字形の容器凹部213と、断面略台形状の容器凸部212と、断面略V字形のウィック凹部233と、断面略台形状のウィック凸部232としてもよい。
図5(a)に示す例においては、容器凸部212およびウィック凸部232は、各々の先端よりも根元が幅広くなるよう所謂テーパ状に形成されている。このテーパ状の面が互いに噛み合うことで、蒸発器本体210内におけるウィック230の位置が定まる。その結果、蒸発器本体210およびウィック230が互いに接触している状態が維持され得る。
【0051】
また、例えば、
図5(b)に示す蒸発器本体310およびウィック330のように、容器凸部312およびウィック凸部332にさらに凹凸が形成される構成であってもよい。具体的には、蒸発器本体310は、断面略長方形状の容器凹部313および容器凸部312を有する。この容器凸部312の容器側面314には、断面略長方形状の容器側面凹部316および容器側面凸部317が形成されている。また、ウィック330は、断面略長方形状のウィック凹部333およびウィック凸部332を有する。このウィック凸部332のウィック側面334には、ウィック側面凹部336およびウィック側面凸部337が形成されている。いわば、容器凸部312およびウィック凸部332に、マイクロ溝構造を形成し、フラクタル状に噛合せ構造を増加させる。
【0052】
そして、容器側面凸部317とウィック側面凸部337とが噛み合う配置となることにより、蒸発器本体310およびウィック330の接触面積が増えるとともに、三相界線Bdが形成される箇所が増加し得る。また、容器側面314およびウィック側面334の間に空間が形成されることにより、蒸気圧力損失を低減させ得る。なお、図示の例においては、容器側面314は、容器側面凹部316を2つ有し、ウィック側面334は、ウィック側面凹部336を2つ有するが、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0053】
また、例えば、
図5(c)に示す蒸発器本体410およびウィック430のように、容器凸部412およびウィック凸部432などが長方形状以外に形成されてもよい。具体的には、蒸発器本体410は、断面略台形状の容器凹部413および容器凸部412を有する。この容器凸部412の容器側面414には、断面略台形状の容器側面凸部417が形成されている。また、ウィック430は、断面略台形状のウィック凹部433およびウィック凸部432を有する。このウィック凸部432のウィック側面434には、断面略V字状のウィック側面凹部436が形成されている。なお、図示の例においては、接触する容器側面414およびウィック側面434において、容器側面凸部417およびウィック側面凹部436を各々1つ有するが、2つ以上であってもよい。
【0054】
また、図示は省略するが、上記実施の形態においては、外周溝141および内周溝143が形成されることを説明したが、これに限定されない。例えば外周溝141および内周溝143のいずれか一方のみが形成される構成でもよい。すなわち、ウィック頂面136と容器底面118とが接触する構成や、ウィック底面138と容器頂面116とが接触する構成であってもよい。
【0055】
<変形例2>
図6は、変形例2を説明するための図である。なお、
図6は変形例2におけるウィック530の斜視図である。
上記実施の形態においては、ウィック凹部133が軸方向に沿って延びる溝であることを説明したが、ウィック凹部133が軸方向と交差する方向に延びる部分を有してもよい。具体的には、
図6に示すウィック530のように、外周面531に、軸方向に延びるウィック凹部533およびウィック凸部532が形成されていることに加えて、周方向に延びるウィック周方向凹部535が形成されてもよい。このウィック周方向凹部535により、
図3に示すように蒸発器本体110内へウィック530が配置された状態において、外周溝141の内部と内周溝143の内部とが連続する構成となる。したがって、例えば外周溝141において液相の作動流体が到達しない状態であっても、ウィック周方向凹部535を介して、内周溝143からの気相の作動流体が外周溝141に流れ込むことで、気相の作動流体の流路が確保される。
【0056】
なお、ここではウィック530の外周面531にウィック周方向凹部535を形成することを説明したが、ウィック周方向凹部535とともに、あるいはウィック周方向凹部535に替えて、蒸発器本体110の内周面111に周方向に延びる凹部を形成してもよい。
【0057】
<変形例3>
図7(a)および(b)は、変形例3を説明するための図である。なお、
図7(a)および(b)は、変形例3における蒸発器本体610などの斜視図である。また、明瞭化のため
図7(a-1)および(b-1)においては、蒸発器本体610、710の一部のみを示す。
図8(a)乃至(c)は、変形例3におけるウィック830などの斜視図である。
【0058】
次に、
図7(a)および(b)を参照しながら、変形例3を説明する。
まず、
図7(a)に示すように、蒸発器本体610およびウィック630を平板状に形成してもよい。そして、
図7(a-1)に示すように、蒸発器本体610におけるウィック630と対向する面である内面611には、容器凹部613および容器凸部612が形成されている。また、
図7(a-2)に示すように、ウィック630における容器本体610と対向する面である外面631には、容器凸部612と対向する位置にウィック凹部633が形成され、容器凹部613と対向する位置にウィック凸部632が形成されている。ここで、容器凹部613、容器凸部612、ウィック凹部633、およびウィック凸部632は、導入管150(
図1参照)を通って流入する液相の作動流体の流入する方向である流れ方向(矢印B1参照)に沿って形成されている。この蒸発器本体610の内面611と、ウィック630の外面631とが対向するように配置されることで、容器凸部612およびウィック凸部632が互いに噛み合う配置となる。
【0059】
なお、容器凹部613、容器凸部612、ウィック凹部633、およびウィック凸部632は、流れ方向(矢印B1参照)に沿って連続して形成されていなくてもよい。例えば、
図7(b-1)に示すように、平板状の蒸発器本体710の内面711に、流れ方向(矢印B1参照)において互いに分離して設けられる複数の容器凸部712を設けてもよい。この容器凸部712は略直方体状である。また、
図7(b-2)に示すように、平板状のウィック730の外面731に、流れ方向(矢印B1参照)において互いに分離して設けられる複数のウィック凹部733を設けてもよい。このウィック凹部733の各々は、容器凸部712の各々と対向する位置に設けられている。また、ウィック凹部733は略直方体状の空間である。この蒸発器本体710の内面711と、ウィック730の外面731とが対向するように配置されることで、容器凸部712の先端がウィック凹部733内に挿入された配置となる。
【0060】
さらに、
図8(a)に示すウィック830のように、ウィック凹部833同士が連続する構成であってもよい。具体的に説明をすると、ウィック830の外面831において、ウィック凹部833同士を接続する接続溝835を形成してもよい。この接続溝835内を気相の作動流体が流れることにより、作動流体の流路が確保される。
【0061】
ここで、ウィック凹部833は、外面831において平面視略長方形状に開口する。そして、接続溝835は、平面視略長方形状のウィック凹部833各辺の中央同士を接続するよう形成されている。なお、接続溝835は、ウィック凹部833同士を連続するものであれば、形成される位置や向き、あるいは形状などは特に限定されない。
【0062】
例えば、
図8(b)に示すウィック930のように、外面931に接続溝935を形成してもよい。この接続溝935は、平面視略長方形状のウィック凹部933各辺の端部同士、言い替えると略長方形状の角部同士を接続するよう形成されている。さらに説明をすると、図示の接続溝935は、各ウィック凹部933が備える複数(4つ)の角部のうちの一部の角部には接続されていない。
【0063】
また、例えば、
図8(c)に示すウィック1030のように、外面1031に接続溝1035を形成してもよい。この接続溝1035は、平面視略長方形状のウィック凹部1033の対角線に沿う向きで、ウィック凹部1033各辺の端部同士を接続するよう形成されている。
【0064】
付言すると、例えば蒸発器本体710に形成される容器凸部712と、ウィック730に形成されるウィック凹部733とを入れ替え、蒸発器本体710に凹部を設け、ウィック730に凸部を設ける構成であってもよい。さらに説明をすると、上記実施の形態や変形例で説明した構成、例えば蒸発器本体110およびウィック130の各々に設けられる凹凸の一部または全部を入れ替えてもよい。
【0065】
<電子機器>
図9は、ループ型ヒートパイプ100を備える携帯電話800を説明する図である。
次に、
図9を参照しながら、ループ型ヒートパイプ100を備える携帯電話800について説明をする。
【0066】
図9に示すように、ループ型ヒートパイプ100は、携帯電話800などの電子機器に設けられる。図示の携帯電話800は、平板状の形状を有する所謂スマートフォンである。この携帯電話800は、中央演算処理装置(CPU)801と、中央演算処理装置801を冷却するループ型ヒートパイプ100と、これらを内部に収容する筺体803とを備える。そして、発熱体の一例である中央演算処理装置801において発生する熱が、蒸発器101に伝達されるとともに、凝縮器107にて放出される。なお、図示の例における凝縮器107は、放熱面積を確保するため、複数の折り返し部を有する。
【0067】
ここで、熱交換器の一例であるループ型ヒートパイプ100が設けられる装置は、上記の携帯電話800に限定されない。例えば、ループ型ヒートパイプ100は、パーソナルコンピュータやプロジェクタなどの電子機器、自動車などの輸送機器など発熱源となる部品を備えた種々の装置に設けられてもよい。
【0068】
ここで、蒸発器本体110は、収容体の一例である。ウィック130は、蒸発体の一例である。流れ方向は、予め定めた方向の一例である。容器凸部112は、収容体突出部の一例である。ウィック凸部132は、蒸発体突出部の一例である。外周溝141は、第1空間の一例である。内周溝143は、第2空間の一例である。第1隅部Cn1は、隅部の一例である。ウィック周方向凹部535は、交差溝の一例である。
【0069】
さて、上記では種々の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態や変形例同士を組み合わせて構成してももちろんよい。
また、本開示は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
100…ループ型ヒートパイプ、101…蒸発器、107…凝縮器、110…蒸発器本体、112…容器凸部、113…容器凹部、130…ウィック、132…ウィック凸部、133…ウィック凹部、141…外周溝、143…内周溝、Lq…液相の作動流体