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特許7517678着色剤、並びにこれを含むマスターバッチ、着色樹脂組成物、及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】着色剤、並びにこれを含むマスターバッチ、着色樹脂組成物、及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C09B 57/08 20060101AFI20240709BHJP
   C08K 5/3437 20060101ALI20240709BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240709BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C09B57/08 B
C08K5/3437
C08L101/00
C09B67/20 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020069257
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021165349
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000103895
【氏名又は名称】オリヱント化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日方 淳
(72)【発明者】
【氏名】古野 雄太
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 萌
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/019523(WO,A1)
【文献】ロシア国特許出願公開第00907113(RU,A)
【文献】中国特許出願公開第108559200(CN,A)
【文献】特表2009-517467(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1526789(CN,A)
【文献】特開2008-045130(JP,A)
【文献】PETERS, A. T. et al.,Amino derivatives of 1,8-naphthalic anhydride and derived dyes for synthetic-polymer fibers,Dyes and Pigments,1985年,vol.6,349-375
【文献】KINDAHL, Tomas et al.,Development and Optimization of Simple One-Step Methods for the Synthesis of 4-Amino-Substituted 1,8-Naphthalimides,European Journal of Organic Chemistry,2014年,6175-6182
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 57/08
C08K 5/3437
C08L 101/00
C09B 67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)
【化1】
(化学式(1)中、Rは置換基を有していてもよいアミノ基若しくは窒素含有複素環基であり、Rはハロゲン原子、炭素数1~3で直鎖又は分枝鎖のアルキル基、炭素数1~3で直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、及び置換基を有していてもよいアミノ基から選ばれる少なくとも一つであり、R はカルボキシ基であり、Aはベンゼン環であり、mは0~2の数であり、nは1~3の数である。)で表されるナフタルイミド化合物を含んでいることを特徴とする着色熱可塑性樹脂組成物用の着色剤。
【請求項2】
前記窒素含有複素環基が、モルホリノ基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、又はピペラジニル基であることを特徴とする請求項1に記載の着色剤。
【請求項3】
前記アミノ基、前記ピペリジニル基、前記ピロリジニル基、又は前記ピペラジニル基が、炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも一つの前記置換基を有していることを特徴とする請求項2に記載の着色剤。
【請求項4】
前記ナフタルイミド化合物が、5%熱重量減少温度を少なくとも330℃とすることを特徴とする請求項1に記載の着色剤。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の着色剤と、熱可塑性樹脂とを含むことを特徴とするマスターバッチ。
【請求項6】
前記ナフタルイミド化合物の含有率を、5~30質量%としていることを特徴とする請求項に記載のマスターバッチ。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリフェニレンサルファイド樹脂から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項又はに記載のマスターバッチ。
【請求項8】
請求項1からのいずれかに記載の着色剤、及び/又は請求項からのいずれかに記載のマスターバッチと、熱可塑性樹脂とを含んでいることを特徴とする着色樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリフェニレンサルファイド樹脂から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項に記載の着色樹脂組成物。
【請求項10】
請求項又はに記載の着色樹脂組成物で成形されていることを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するナフタルイミド化合物を含む着色剤、並びにこれを含むマスターバッチ、着色樹脂組成物、及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や鉄道のような交通分野における車両に用いられる部品、及び電子・電気機器分野の構造部品として、重い金属に代えて、ポリオレフィン樹脂やポリアミド樹脂のような軽量な熱可塑性樹脂が使われている。熱可塑性樹脂製品は、着色剤を含む樹脂組成物を成形することにより製造される成形品であり、任意の色に着色されていることが多い。
【0003】
熱可塑性樹脂の成形品の色は、その用途に応じて法令等により規定されている場合がある。例えば、モーターによって駆動するハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)には、エンジンでのみ駆動する従来の自動車に採用されているバッテリーよりも遥かに高い電圧を生じるバッテリーが搭載されている。このような高電圧バッテリーに接続する高電圧ワイヤハーネスにおいて、それのコネクタの筐体や電線の被覆材をオレンジ色とすることが米国自動車規格SAE J1673によって規定されている。高電圧ワイヤハーネスに高電圧電流が流れていることを視覚的に明確に示すのに、このオレンジ色を高明度かつ鮮明なものとすることが求められる。
【0004】
このオレンジ色の明度や鮮明度を高めるのに、黄色染料や黄色顔料が用いられている。黄色染料や黄色顔料として、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、及び含金属系顔料が知られている。例えば特許文献1に、キノフタロン系染料から誘導されるサンドプラストイエローが開示されている。
【0005】
一方、高電圧ワイヤハーネスは、バッテリー、モーター、インバーター、及びエンジン等の稼働によって温度上昇する部品から発せられる熱に長時間曝される。そのため、高電圧ワイヤハーネスを形成するのに、例えばポリアミド樹脂のような高耐熱性の熱可塑性樹脂が採用される。このような高耐熱性の熱可塑性樹脂は、250~350℃という高温下、比較的長時間で成形される場合がある。
【0006】
前記のサンドプラストイエローに用いられているC.I.Solvent Yellow 114のようなキノフタロン系黄色染料は、十分な耐熱性を有していないことの所為でポリアミド樹脂の成形時に高温かつ長時間曝されると、変色・退色したり、昇華して成形金型や成形機を汚染したりすることがある。またこの染料を含む成形品が高温高湿条件に曝されると、他の熱可塑性樹脂製品との接触によって色移りするというブリード現象を生じることがある。特に、半芳香族ポリアミド樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂のような高融点かつ高耐熱性樹脂を着色するのに、鮮明に発色し、かつ安定な構造を有する黄色系着色剤が望まれている。
【0007】
一方特許文献2に、二酸化チタン、過酸化亜鉛、及び酸化スズの粉末を混合して850℃で焼成し、得られた焼成品を粉砕することによってポリアミド樹脂用高耐熱オレンジ色無機顔料を製造する方法が記載されている。顔料は、耐昇華性及びブリード現象を生じ難いという耐ブリード性に優れているものの、鮮明性に欠け、熱履歴によって褐色や暗色に変色することがある。また、顔料は染料のように熱可塑性樹脂に溶解するのでなく、熱可塑性樹脂に分散しているため、それの引張強度や耐衝撃強度のような物性を低下させる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-309694号公報
【文献】韓国特許第10-1977321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、高い耐熱性を有することにより成形時の高温条件に曝されても変色・退色を生じず、耐ブリード性及び耐昇華性に優れていることにより成形金型及び成形機の汚染や他の樹脂部品への色移りも生じず、さらに添加される熱可塑性樹脂の物性を損なわない着色剤、並びにこれを含むマスターバッチ、着色樹脂組成物及びこの着色樹脂組成物から得られた成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた着色熱可塑性樹脂組成物用の着色剤は、下記化学式(1)
【化1】
(化学式(1)中、Rは置換基を有していてもよいアミノ基若しくは窒素含有複素環基であり、Rはハロゲン原子、炭素数1~3で直鎖又は分枝鎖のアルキル基、炭素数1~3で直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、及び置換基を有していてもよいアミノ基から選ばれる少なくとも一つであり、Rは水素原子、アミノ基、アミド基、炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基、及びスルホンアミド基から選ばれる少なくとも一つであり、Aは炭素数1~3で直鎖又は分枝鎖の炭化水素基、ベンゼン環、又はナフタレン環であり、mは0~2の数であり、nは1~3の数である。)で表されるナフタルイミド化合物を含んでいる。例えば、R はカルボキシ基であり、Aはベンゼン環であるというものである。
【0011】
着色剤は、前記窒素含有複素環基が、モルホリノ基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、又はピペラジニル基であってもよい。
【0012】
着色剤は、例えば、前記アミノ基、前記ピペリジニル基、前記ピロリジニル基、又は前記ピペラジニル基が、炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも一つの前記置換基を有しているものが挙げられる。
着色剤は、具体的には前記ナフタルイミド化合物が、5%熱重量減少温度を少なくとも330℃とするものである。
着色剤は、例えば耐ブリード性を発現させるものである。
【0013】
本発明のマスターバッチは、上記いずれかに記載の着色剤と、熱可塑性樹脂とを含む。
【0014】
マスターバッチは、前記ナフタルイミド化合物の含有率を、5~30質量%としていてもよい。
【0015】
マスターバッチは、例えば、前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリフェニレンサルファイド樹脂から選ばれる少なくとも一種を含んでいる。
【0016】
本発明の着色樹脂組成物は、上記いずれかに記載の着色剤、及び/又は上記いずれかに記載のマスターバッチと、熱可塑性樹脂とを含んでいる。
【0017】
着色樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリフェニレンサルファイド樹脂から選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の成形品は、上記の着色樹脂組成物で成形されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の着色剤はナフタルイミド化合物を必須として含むので、高耐熱性、高耐光性、耐ブリード性を示し、かつ熱可塑性樹脂との相溶性に富んでいることにより、この熱可塑性樹脂が元来有する引張強度や衝撃強度のような機械的強度特性を損なわない。
【0020】
またナフタルイミド化合物はアミノ基や窒素含有複素環基のような含窒素発色団置換基を有しているので、本発明の着色剤を含むマスターバッチ及び着色樹脂組成物から得られた成形品は、視認性に優れた高明度の黄色乃至オレンジ色を呈する。
【0021】
また本発明の着色剤を含むマスターバッチ及び着色樹脂組成物は、高耐熱性、高耐光性を有するため、変色・退色を生じないことを求められる成形品の製造に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0023】
(着色剤)
本発明の着色剤に必須として含まれるナフタルイミド化合物は、下記化学式(1)
【化2】
(化学式(1)中、Rは置換基を有していてもよいアミノ基若しくは窒素含有複素環基であり、Rはハロゲン原子、炭素数1~3で直鎖又は分枝鎖のアルキル基、炭素数1~3で直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、及び置換基を有していてもよいアミノ基から選ばれる少なくとも一つであり、Rは水素原子、アミノ基、アミド基、炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基、及びスルホンアミド基から選ばれる少なくとも一つであり、Aは炭素数1~3で直鎖又は分枝鎖の炭化水素基、ベンゼン環、又はナフタレン環であり、mは0~2の数であり、nは1~3の数である。)で表されるナフタルイミド化合物を含んでいる。このナフタルイミド化合物は、黄色乃至オレンジ色を呈する。
【0024】
化学式(1)中、Rで表される窒素含有複素環基として、モルホリノ基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、及びピペラジニル基が挙げられる。Rがアミノ基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、又はピペラジニル基である場合、これらは置換基を有していてもよい。この置換基として、炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルキル基、炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、ヒドロキシ基、及びカルボキシ基が挙げられる。このアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられ、このアルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。
【0025】
化学式(1)中、Rで表されるハロゲン原子としてF、Cl、Br、及びIが挙げられ、アルキル基としてメチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基が挙げられ、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、及びイソプロポキシ基が挙げられる。
【0026】
がアミノ基である場合、このアミノ基が有する置換基として、炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルキル基、炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、ヒドロキシ基、及びカルボキシ基が挙げられる。このアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられ、このアルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。Rの置換位置は特に限定されない。またRとしての置換基の数を示すmは、具体的に0、1、及び2の整数が挙げられ、好ましくは0、すなわちRは無置換である。
【0027】
化学式(1)中、Aで表される炭素数1~3の炭化水素基として、具体的に、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、及びプロピレン基のようなアルキレン基が挙げられる。Aで表されるベンゼン環は、2、3、又は4個の環炭素原子が有する夫々1個の水素原子を除去することにより生成される多価基であり、例えばフェニレン基のようなアリーレン基が挙げられる。また、Aで表されるナフタレン環は、2、3、又は4個の環炭素原子が有する夫々1個の水素原子を除去することにより生成される多価基であり、例えばナフチレン基が挙げられる。このナフチレン基として、1,2-ナフチレン基、1,3-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、1,6-ナフチレン基、1,7-ナフチレン基、1,8-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、及び2,6-ナフチレン基が挙げられる。
【0028】
化学式(1)中のAとして、メチレン基、又はo-フェニレン基、m-フェニレン基、若しくはp-フェニレン基がより好ましく、p-フェニレン基が一層好ましい。Aがアリーレン基であるナフタルイミド化合物は、より高い耐熱性を有する。化学式(1)中のAがアリーレン基やナフチレン基のような芳香族炭化水素基である場合、Rの置換位置は特に限定されない。
【0029】
化学式(1)中、Rで表される炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。
【0030】
が「-C(=O)N(R3a」で表されるアミド基である場合、複数のR3aは互いに独立して水素原子、炭素数1~4で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、又は炭素数1~4で直鎖若しくは分枝鎖のアルコキシ基であることが好ましい。このアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられ、このアルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。一方、Rが「-NHC(=O)R3b」で表されるアミド基である場合、このR3bとして、上記R3aと同一のものが挙げられる。
【0031】
が「-SON(R3c」で表されるスルホンアミド基である場合、複数のR3cは互いに独立して水素原子、炭素数1~4で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、又は炭素数1~4で直鎖若しくは分枝鎖のアルコキシ基であることが好ましい。R3cのアルキル基及びアルコキシ基として、上記R3aと同一のものが挙げられる。さらにRが「-NH(SO)3d」で表されるスルホンアミド基である場合、このR3dとして上記R3aと同一のものが挙げられる。
【0032】
またRとしての置換基の数を示すnは1~3の数であり、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0033】
化学式(1)で表されるナフタルイミド化合物の具体例は、下記化学式(1-1)~(1-18)で示される。
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
ナフタルイミド化合物において、Rが窒素含有複素環基であり、Aがフェニレン基であり、m=0(すなわちRは無置換)であり、Rがカルボキシ基であると、高い耐熱性及び耐ブリード性を示し、発色性に富んでいるとともに、後述する熱可塑性樹脂との相溶性に優れることから好ましい。これは、Rの窒素含有複素環基が発色団として作用するとともに耐熱性を向上させ、Aのフェニレン基が耐熱性を向上させ、Rのカルボキシ基が耐熱性及び耐ブリード性を向上させるため好ましい。特に熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂である場合、Rはカルボキシ基であることが一層好ましい。この場合、耐ブリード性が顕著に向上する。これはポリアミド樹脂分子内のアミド基やカルボキシ基と、ナフタルイミド化合物のカルボキシ基とが、分子間で水素結合を形成することによりブリード現象の発生を抑制すると推測される。
【0037】
化学式(1)で表されるナフタルイミド化合物の耐熱性を評価するための値として、5%熱重量減少温度を用いることができる。この値は、化学式(1)で表されるナフタルイミド化合物の重量が、熱重量示差熱分析の昇温過程において測定開始時(常温)の重量から5%の重量減少が測定された時点の温度である。化学式(1)で表されるナフタルイミド化合物の5%熱重量減少温度は、少なくとも280℃、好ましくは少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも330℃、より一層好ましくは少なくとも350℃である。5%熱重量減少温度が高いほど、ナフタルイミド化合物は高い耐熱性を示し、熱によって分解し難い。そのため本発明の着色剤を含む着色樹脂組成物を成形品に成形する際に変色し難くなる。また成形品は、長時間高温に曝されても退色・変色を生じ難い。
【0038】
化学式(1)で表されるナフタルイミド化合物の最大吸収波長は、それが有する置換基に応じて異なるが、385~430nmであることが好ましい。なおこの最大吸収波長は、紫外可視分光光度計を用いて、一般的な条件で測定される。
【0039】
化学式(1)、具体的に例えば化学式(1-1)で表されるナフタルイミド化合物は、下記化学式(2)及び(3)で示す反応によって得られる。まず、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒中で、4-ブロモナフタル酸無水物とモルホリンとを反応させる。モルホリンは4-ブロモナフタル酸無水物の1モルに対し、1.2~5モルであることが好ましく、2~2.5モルであることが好ましい。この反応により、4-モルホリノ-1,8-ナフタル酸無水物が得られる。
【0040】
【化5】
【0041】
次いで、NMP溶媒中で、得られた4-モルホリノ-1,8-ナフタル酸無水物と4-アミノ安息香酸とを反応させる。4-アミノ安息香酸は、4-モルホリノ-1,8-ナフタル酸無水物の1モルに対し、1~2モルであることが好ましく、1.2~1.4モルであることがより好ましい。この反応により、化学式(1-1)で表されるナフタルイミド化合物であるN-(4-カルボキシフェニル)-4-モルホリノ-1,8-ナフタルイミドが得られる。
【0042】
【化6】
【0043】
ナフタルイミド化合物を得る方法は、上記のものに限定されない。他の方法として、4-ブロモナフタル酸無水物と4-アミノ安息香酸とを反応させてN-(4-カルボキシフェニル)-4-ブロモナフタルイミドを得た後、これにモルホリンを反応させてもよい。また、下記化学式(4)に示すように、4-ブロモナフタル酸無水物、モルホリン、及び4-アミノ安息香酸を一度に反応させてもよい。4-ブロモナフタル酸無水物のようなナフタル酸無水物と反応させる1級アミンとして4-アミノ安息香酸を例示したが、「HN-A-(R(左記式中、R及びAは化学式(1)中のものと同一)」で表される1級アミンであれば、特に限定されない。
【0044】
【化7】
【0045】
なお出発物質は、4-ブロモナフタル酸無水物に限定されず、4-クロロナフタル酸無水物、及び4-ヨードナフタル酸無水物のようなモノハロゲノナフタル酸無水物や、4-ニトロナフタル酸無水物であってもよい。また出発物質として、4,5-ジブロモナフタル酸無水物、4,5-ジクロロナフタル酸無水物、及び4,5-ジヨードナフタル酸無水物のようなジハロゲノナフタル酸無水物であってもよい。このように、出発物質であるナフタル酸無水物は、R及びRで表される置換基を有していること、及び/又はR及びRに誘導される官能基を有していることが好ましい。
【0046】
化学式(1)で表されるナフタルイミド化合物に加えて用いられる上記の染料又は顔料として、最大吸収波長を400~600nm、好ましくは390~580nmとしているものが好適に用いられる。黄色乃至オレンジ色を呈するナフタルイミド化合物とこれらの染料や顔料とを混合することによって、用途に応じた様々な色を呈する着色剤を調製することができる。なおこの最大吸収波長は、上記と同様にして測定される。
【0047】
例えばオレンジ色(ナフタルイミド化合物と赤色染料又は顔料との混合)、緑色(ナフタルイミド化合物と青色染料又は顔料との混合)、茶色(ナフタルイミド化合物と赤色染料又は顔料と青色染料又は顔料との混合)、及び黒色(例えばナフタルイミド化合物と赤色染料又は顔料と青色染料又は顔料との混合や、ナフタルイミド化合物と紫色染料又は顔料との混合)が挙げられる。工業上、特にオレンジ色及び黒色の着色剤が多く用いられている。
【0048】
例えば、オレンジ色を調整するのに、上記の最大波長を有するオレンジ色及び赤色、並びに白色や黒色の染料及び/又は顔料が用いられ、なかでも蛍光を有する染料が得られるオレンジ色の明度を増大させる結果、視認性を向上させることができるので好ましい。このようなオレンジ色は、CIE-Lab色空間で表すと、L=50~100かつa=20~85かつb=30~120であり、さらにL=55~90かつa=30~65かつb=50~100であることがより好ましい。
【0049】
着色剤の調製に用いられる染料及び顔料として、本発明の効果を損なわない染料及び顔料が選択される。好ましい染料及び顔料として、アゾ系染料・顔料、アゾ系含金染料・顔料、ナフトールアゾ系染料・顔料、アゾレーキ系染料・顔料、アゾメチン系染料・顔料、アントラキノン系染料・顔料、キナクリドン系染料・顔料、ジオキサジン系染料・顔料、ジケトピロロピロール系染料・顔料、アントピリドン系染料・顔料、イソインドリノン系染料・顔料、インダンスロン系染料・顔料、ペリノン系染料・顔料、ペリレン系染料・顔料、インジゴ系染料・顔料、チオインジゴ系染料・顔料、キノリン系染料・顔料、ベンズイミダゾロン系染料・顔料、及びトリフェニルメタン系染料・顔料からなる群から選ばれる少なくとも一種の有機染顔料を挙げることができる。これらは、黄色、赤色、青色、緑色、又は黒色を呈する。
【0050】
例えば、高電圧ワイヤハーネスのコネクタや電線の被覆材に用いられる色として、RALカラーチャート上、RAL2000、2001、2002、2003、2004、2008、2009、2010、2011、及び2012で表されるオレンジ色が求められる。
【0051】
オレンジ色の染料として、下記化学式(5)
【化8】
(化学式(5)中、R及びRは互いに独立して水素原子又は置換基を有していてもよいアミノ基若しくは窒素含有複素環基でありかつ両者は同時に水素原子でなく、Rは炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基、及びスルホンアミド基から選ばれる少なくとも一つであり、pは0~2の数である。)で表されるベンゾイソキノリノン環含有縮環化合物が挙げられる。
【0052】
化学式(5)中のR及びRの窒素含有複素環基として、モルホリノ基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、及びピペラジニル基が挙げられる。RとRとがともに窒素含有複素環基である場合、両者の窒素含有複素環基は互いに同種であっても異種であってもよい。R及びRがアミノ基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、又はピペラジニル基である場合、これらは置換基を有していてもよい。この置換基として、炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルキル基、炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、ヒドロキシ基、及びカルボキシ基が挙げられる。このアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられ、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。
【0053】
化学式(5)中のRのアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。またRが「-SON(R6a」で表されるスルホンアミド基である場合、複数のR6aは互いに独立して水素原子、炭素数1~4で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、又は炭素数1~4で直鎖若しくは分枝鎖のアルコキシ基であることが好ましい。このアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられ、このアルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、及びtert-ブトキシ基が挙げられる。一方、Rが「-NHC(=O)R6b」で表されるスルホンアミド基である場合、このR6bとして、上記R6aと同一のものが挙げられる。Rの置換位置は特に限定されない。化学式(5)中のpは、0~2の数であり、好ましくは1である。
【0054】
化学式(5)で表されるベンゾイソキノリノン環含有縮環化合物として、具体的に、下記化学式(5a)で表され、同化学式中の表1に示した各置換基R、R、R6x、及びR6yを有するものが挙げられる。
【0055】
【化9】
【0056】
【表1】
【0057】
化学式(5)で表されるベンゾイソキノリノン環含有縮環化合物、例えば化合物例5-1の場合、4-ブロモナフタル酸無水物のような無水ナフタル酸誘導体とモルホリンとを反応させた後、この反応生成物と3,4-ジアミノ安息香酸とを反応させることによって得られる。
【0058】
赤色の染料として、下記化学式(6)
【化10】
(化学式(6)中、R及びRは互いに独立して水素原子又は置換基を有していてもよいアミノ基若しくは窒素含有複素環基でありかつ両者は同時に水素原子でなく、Rは炭素数1~4で直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基、及びスルホンアミド基から選ばれる少なくとも一つであり、qは0~4の数である。)で表されるベンゾイソキノリノン環含有縮環化合物が挙げられる。
【0059】
化学式(6)中のR及びRの窒素含有複素環基として、上記化学式(5)中のR及びRと同一のものを挙げることができる。RとRとがともに窒素含有複素環基である場合、両者の窒素含有複素環基は互いに同種であっても異種であってもよい。R及びRがアミノ基、ピペリジニル基、ピロリジニル基、又はピペラジニル基である場合、これらは置換基を有していてもよい。この置換基として、上記化学式(5)中のR及びRが有する置換基と同一のものを挙げることができる。化学式(6)中のRとして、具体的に、上記化学式(5)中のRと同一のものを挙げることができる。化学式(6)中のqは0~4の数であり、具体的に0、1、2、3、及び4の整数が挙げられ、好ましくは0である。
【0060】
化学式(6)で表されるベンゾイソキノリノン環含有縮環化合物として、具体的に、下記化学式(6a)で表され、同化学式中の表2に示した各置換基R、R、R9x、及びR9yを有するものが挙げられる。
【0061】
【化11】
【0062】
【表2】
【0063】
化学式(6)で表されるベンゾイソキノリノン環含有縮環化合物は、4-ブロモナフタル酸無水物のような無水ナフタル酸誘導体と1,8-ジアミノナフタレンとを反応させた後、この反応生成物と上記R又はRとなり得るアミン化合物や窒素含有複素環基を有する化合物とを反応させることによって得られる。
【0064】
また赤色の別な染料として、オリヱント化学工業株式会社製のアジン系染料であるORIENT LPI-1(最大吸収波長560nm)が挙げられる。
【0065】
オレンジ色の着色剤の明度を増加させるのに白色顔料を、これを減少させるのに黒色顔料を、必要に応じて着色剤に含ませることができる。この白色顔料として、CaCO、2PbCO・Pb(OH)、ZnO、TiO、及びZnSのような無機顔料が挙げられる。また黒色顔料として、カーボンブラック、グラファイト、及びアモルファスカーボンのような炭素系顔料や、C.I.Pigment Black 6、8、9、10、11、及び28のような市販の黒色顔料が挙げられる。また、白色及び黒色以外の顔料として、C.I.Pigment Orange 68、Sicopal(登録商標) Orange K2430(BASF社製)が挙げられる。
【0066】
例えば、上記のRAL2003(Pastel Orange)に近似した、L=60~80かつa=35~55かつb=60~90のCIE-Lab色空間で表されるオレンジ色を呈する着色剤を調製する場合、化学式(1)で表される化合物:化学式(5)及び/又は化学式(6)で表される化合物を、9:1~6:4の質量比で混合することが好ましい。明度を調整するのに白色顔料を添加する場合、化学式(1)で表される化合物:白色顔料を、1:3~3:1の質量比で混合することが好ましい。明度の調整に、微量の黒色顔料を添加してもよい。
【0067】
(マスターバッチ)
本発明のマスターバッチは、化学式(1)で表されるナフタルイミド化合物、及び必要に応じて任意の染料及び/又は顔料と熱可塑性樹脂とを含んでいる。マスターバッチは、化学式(1)で表されるナフタルイミド化合物と任意の染料及び/又は顔料とが混合された混合着色剤と熱可塑性樹脂とを含んでいるものであってもよい。この熱可塑性樹脂は着色樹脂組成物に用いられる主成分樹脂(未着色樹脂)と同種であっても異種であってもよい。着色剤として、化学式(1)、(5)、及び(6)で表される化合物や上記の顔料を含むものが挙げられる。
【0068】
マスターバッチ中、着色剤の含有率は5~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがより一層好ましい。
【0069】
マスターバッチを製造する工程として、高温押出処理等が挙げられる。本発明のナフタルイミド化合物と任意の染料及び/又は顔料とを含む着色剤は、高温によって分解、昇華、及び変色を生じ難い。そのため、化学式(1)で表されるナフタルイミド化合物からなる着色剤、及びこれと任意の染料及び/又は顔料を含む着色剤は、マスターバッチ(高濃度着色樹脂組成物)に好適に用いることができる。
【0070】
このようなマスターバッチは、次のような加熱溶融法によって得ることができる。マスターバッチのベースとなる熱可塑性樹脂の粉末又はペレット、本発明の着色剤、及び必要に応じて添加剤を、タンブラー又はスーパーミキサー等で混合し、これを押出機、バッチ式混練機、又はロール式混練機等に投入して、ペレット化又は粗粒子化する。これによりマスターバッチを得ることができる。またマスターバッチは、例えば合成後未だ溶液状態にある熱可塑性樹脂に、本発明の着色剤及び必要に応じその他の添加剤を加えた後、溶媒を除去することによっても得ることができる。なお、同様に処理することにより、後述する通常濃度の着色樹脂組成物を得ることができる。
【0071】
熱可塑性樹脂として、公知のものや市販されているものを用いることができる。例えば、ポリアミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。
【0072】
ポリアミド樹脂とは、その分子中に酸アミド基(-CONH-)を有し、加熱溶融できるポリアミド重合体である。好ましくは、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とからなる塩及び芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とからなる塩より選ばれる少なくとも1種を構成単位として含むポリアミド樹脂である。ポリアミド樹脂として、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド96、非晶質性ポリアミド、高融点ポリアミド、ポリアミドRIM、ポリアミド4、ポリアミド6I、ポリアミド56、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXD6、ポリアミドMP6、ポリアミドMP10、及びそれらの2種類以上の共重合体が挙げられる。この共重合体として、具体的に、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/66/610共重合体、ポリアミド6/66/11/12共重合体、結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミド共重合体等が挙げられる。またポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂と他の合成樹脂との混合重合体であってもよい。そのような混合重合体の例として、ポリアミド/ポリエステル混合重合体、ポリアミド/ポリフェニレンオキシド混合重合体、ポリアミド/ポリカーボネート混合重合体、ポリアミド/ポリオレフィン混合重合体、ポリアミド/スチレン/アクリロニトリル混合重合体、ポリアミド/アクリル酸エステル混合重合体、及びポリアミド/シリコーン混合重合体等が挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0073】
ポリオレフィン樹脂として、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、3-メチルブテン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1のようなα-オレフィンの単独重合体及びこれらの共重合体、並びにこれらと他の共重合可能な不飽和単量体との共重合体(共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体を挙げることができる。)等が挙げられる。具体例には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-アクリル酸エチル共重合体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体又はランダム共重合体、及びプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリブテン-1、及びポリ4-メチルペンテン-1等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ポリエチレン樹脂及び/又はポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。より好ましくは、ポリプロピレン系樹脂である。このポリプロピレン系樹脂の分子量は特に制限されず、広範囲の分子量のものを使用できる。
【0074】
ポリエステル樹脂として、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合反応によって得られるポリエチレンテレフタレート樹脂、及びテレフタル酸とブチレングリコールとの重縮合反応によって得られるポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。その他のポリエステル樹脂の例として、テレフタル酸成分中、15モル%以下(例えば0.5~15モル%)、好ましくは5モル%以下(例えば0.5~5モル%)、及び/又はエチレングリコール及びブチレングリコールのようなグリコール成分中、15モル%以下(例えば0.5~15モル%)、好ましくは5モル%以下(例えば0.5~5モル%)のように、テレフタル酸成分やグリコール成分中の一部を、例えば炭素数1~4のアルキル基のような置換基で置換した共重合体が挙げられる。またポリエステル樹脂は、単独又は複数種を混合したものであってもよい。
【0075】
ポリカーボネート樹脂は、主鎖に炭酸エステル結合を持つ熱可塑性樹脂であり、芳香族炭化水素の炭酸エステルを多数連結した直鎖状分子中、分子主鎖に嵩張ったベンゼン核とフレキシブルなカーボネートとを有している。工業的に量産されているポリカーボネート樹脂として、ビスフェノールAから得られる芳香族ポリカーボネートが挙げられ、これを用いることができる。
【0076】
ポリフェニレンサルファイド樹脂は、(-φ-S-)[φは置換又は非置換のフェニレン基]で表されるチオフェニレン基からなる繰り返し単位を主とする重合体である。ポリフェニレンサルファイド樹脂として、パラジクロロベンゼンと硫化アルカリとを高温、高圧下で反応させて合成したモノマーを、重合させて得られたものを用いることができる。
【0077】
(着色樹脂組成物)
本発明の着色樹脂組成物は、上記のマスターバッチと未着色樹脂との混合物である。着色樹脂組成物は、本発明の着色剤、未着色樹脂、及び必要に応じて後述する添加剤を、タンブラー又はスーパーミキサー等で混合し、押出機、バッチ式混練機又はロール式混練機等を用いて、加熱溶融法によりペレット化又は粗粒子化することによっても得ることができる。このような着色樹脂組成物は、コンパウンドとも呼ばれ、樹脂の成形品を得るための原料である。着色樹脂組成物を常法で成形処理することにより、均一に着色された樹脂成形品が得られる。
【0078】
未着色樹脂として、上記マスターバッチに用いられる熱可塑性樹脂と同一のものが挙げられる。着色樹脂組成物に、マスターバッチとしての着色剤、及び未着色樹脂に加えて必要に応じ、添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、補強材、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、明度調整剤、滑剤、及び離型剤が挙げられる。
【0079】
補強材は、熱可塑性樹脂の補強に用い得るものであればよく、特に限定されない。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、セピオライト、ウォラストナイト、及びロックウールのような無機繊維、並びにアラミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、及び液晶ポリマー樹脂繊維のような有機繊維が挙げられる。なかでもガラス繊維を好適に用いることができる。このようなガラス繊維の繊維長は2~15mmでありその繊維径は1~20μmである。ガラス繊維の形態については特に制限はなく、例えばロービングや、ミルドファイバーが挙げられる。これらのガラス繊維は、一種を単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。その含有量は、例えば着色剤と未着色樹脂との合計100質量部に対し、5~120質量部とすることが好ましい。5質量部未満であると、十分なガラス繊維補強効果を得られず、120質量部を超えると成形性が低下する。好ましくは10~60質量部、特に好ましくは20~50質量部である。市販されているガラス繊維含有未着色樹脂を用いてもよく、着色樹脂組成物を調製する都度未着色樹脂にガラス繊維を添加してもよい。
【0080】
紫外線吸収剤及び光安定剤として、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾエート系化合物、オギザアリド系化合物、ヒンダードアミン系化合物、及びニッケル錯塩等が挙げられる。
【0081】
難燃剤は特に制限されず、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤、アンチモン系難燃剤、リン系難燃剤、ケイ素系難燃剤、及び窒素系難燃剤が挙げられる。
【0082】
塩素系難燃剤として、例えば、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンのような塩素ポリオレフィン、ドデカクロロペンタシクロオクタデカ-7,15-ジエン、及びクロレンド酸無水物が挙げられる。
【0083】
臭素系難燃剤として、例えば、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、テトラブロモビスフェノールS(TBBS)、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、2,6-ジブロモフェノール、2,4-ジブロモフェノール2,4,6-トリブロモフェノール、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、TBBA-カーボネート・オリゴマー、TBBA-エポキシ・オリゴマー、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、1,2-ビス(2,4,6-ペンタブロモフェノキシ)エタン、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、オクタブロモジフェニルオキサイド、エチレンビスペンタブロモジフェニル、TBBA-ビス(ジブロモプロピルエーテル)、TBBA-ビス(アリールエーテル)、ポリ(ジブロモフェノール)、ヘキサブロモベンゼン、ポリブロモトリメチルフェニルインダン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、シアヌル酸トリス(2,4,6-トリブロモフェニル)、TBBA-ビス(ジブロモプロピル)、TBBS-ビス(ジブロモプロピル)、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化スチレン-無水マレイン酸重合体、臭素化ポリフェニレンエーテル、リン酸トリス[3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピル]、及びペンタブロモベンジルアクリレートが挙げられる。
【0084】
アンチモン系難燃剤として、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、及びリン酸アンチモンが挙げられる。
【0085】
リン系難燃剤として、例えば、赤リン、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、リン原子と窒素原子との結合を主鎖に有するフェノキシホスファゼン、アミノホスファゼン、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、クレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(tert-ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(イソブチル化フェニル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、1,3-フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、TBBA-ビス(ジフェニルホスフェート)、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート、2,2-ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2-クロロエチル)ホスフェート)、ビス(ノニルフェニル)フェニルホスフェート、クレジルビス(ジ2,6-キシレニル)ホスフェート、及びポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェートが挙げられる。
【0086】
ケイ素系難燃剤として、例えば、シリコーンオイル、有機シラン、及びケイ酸アルミニウムが挙げられる。
【0087】
窒素系難燃剤として、例えば、メラミン、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン、尿素、及びグアニジンが挙げられる。
【0088】
上記の難燃剤は、一種のみを用いても、複数種を用いてもよい。難燃剤の含有量は、例えば着色剤と未着色樹脂との合計100質量部に対し、1~30質量部とすることが好ましい。より好ましくは5~25質量部、特に好ましくは10~20質量部である。
【0089】
塩素系難燃剤や臭素系難燃剤のようなハロゲン系難燃剤は、これを含む熱可塑性樹脂製品の焼却廃棄の際、燃焼によって有害ガスを生じる場合があることから、リン系難燃剤や窒素系難燃剤のようなノンハロゲン系難燃剤がしばしば用いられる。本発明の着色剤に含まれるナフタルイミド化合物は、従来の着色剤に含まれる一般的な染料や顔料において発生する変色・退色を生じず、またノンハロゲン系難燃剤に起因する高温環境下における変色・退色を生じない。そのため本発明の着色剤は、ノンハロゲン系難燃剤を含有するノンハロゲン系難燃グレード樹脂の着色剤に好適である。
【0090】
難燃助剤として、例えば、三酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、及び酸化スズが挙げられる。
【0091】
酸化防止剤として、フェノール性ヒドロキシル基を有するフェノール系化合物、リン原子を有するリン系化合物、並びにイオウ原子を有するイオウ系化合物及びチオエーテル系化合物が挙げられる。
【0092】
リン系化合物として、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
【0093】
イオウ系化合物及びチオエーテル系化合物として、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N-フェニル-β-ナフチルアミン)、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、及びトリラウリルトリチオホスファイトが挙げられる。
【0094】
明度調整剤は、高電圧ワイヤハーネスのコネクタに内蔵された金属製の電気接点や、電線被覆材内の電線が外部から視認できないよう、樹脂組成物からなる成形品の透明性を喪失させるのに用いられる。明度調整剤として、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、リトポン(硫化亜鉛・硫酸バリウム混合物)、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック、チタンブラック、弁柄、ウルトラマリン、アルミン酸コバルト、クロムグリーンが挙げられる。
【0095】
滑剤として、例えばポリエチレンワックス、及びポリプロピレンワックス等の炭化水素系滑剤、ステアリン酸等の脂肪酸系滑剤、ステアリルアルコール等の高級アルコール系滑剤、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド系滑剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属せっけん等が挙げられる。
【0096】
離型剤として、例えば長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、脂肪族カルボン酸、ポリエチレンワックス、及びシリコーン等が挙げられる。
【0097】
本発明の成形品は、上記の着色樹脂組成物からなる。成形品は、例えば高電圧ワイヤハーネスのコネクタである。成形品は、通常行われる種々の手順により製造することができる。例えば、上記の着色樹脂組成物を溶融し、射出成形、押出成形、圧縮成形、発泡成形、ブロー成形、真空成形、インジェクションブロー成形、回転成形、カレンダー成形、及び溶液流延等の成形方法を採用することができる。このような成形により、種々形状の成形品を得ることができる。
【0098】
成形品の例として、高電圧ワイヤハーネスのコネクタを挙げたが、成形品はこれに限定されない。例えば、ワイヤハーネス用部品として電線被覆材が挙げられる。他の成形品として、内燃機関のインテークマニホールドやエンジンカバーのように複数の部材をレーザー溶着することによって製造されるレーザー溶着部品が挙げられる。本発明の着色剤は、耐熱性や耐ブリード性に加えて、耐光性にも優れているので、屋外で使用される成形品にも好適に使用される。成形品として、さらに、輸液や栄養剤を点滴する際に使用される医療用チューブ、流動食や飲料組成物を封入したスパウトパウチのような食品包材、及びペットボトルのキャップやラベルが挙げられる。
【実施例
【0099】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
(合成実施例1)
100mlの4つ口フラスコに4-ブロモナフタル酸無水物14.79g(0.053mol、東京化成工業株式会社製)と2-メチルピロリドン30mlを加え、完溶した。この溶液にモルホリン9.76g(0.112mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、130℃まで昇温し2時間加熱撹拌した。2時間後、4-アミノ安息香酸14.64g(0.107mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、130℃で4時間加熱撹拌を行った。65℃まで冷却後、メタノール50mlを滴下し、1時間分散した。得られた分散液を500mlのビーカーに移し、メタノール200mlを加え、一晩室温で撹拌した。その後、分散液の析出物を濾過し、メタノール100ml、イオン交換水200mlで洗浄した。得られたウエットケーキを常圧乾燥機で80℃、24時間乾燥し、下記化学式(1-1)で示されるナフタルイミド化合物として黄色固体18.87gを得た(収率88.5%)。
【0101】
得られた黄色固体を元素分析装置(株式会社パーキンエルマージャパン製、商品名:EA 2400II 全自動元素分析装置)で測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、得られたナフタルイミド化合物が下記化学式(1-1)の構造であることを確認した。
【0102】
【化12】
【0103】
元素分析値
実測値 C:68.61%、H:4.40%、N:6.86%
理論値 C:68.65%、H:4.51%、N:6.96%
【0104】
得られたナフタルイミド化合物10mgをジメチルホルムアミド100mlに溶解し測定溶液を調整し、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製 商品名:UV-1700)を用い、紫外可視分光スペクトルの測定を行った。最大吸収波長は398nmであった。
【0105】
(合成実施例2)
100mlの4つ口フラスコに4-ブロモナフタル酸無水物14.79g(0.053mol、東京化成工業株式会社製)と2-メチルピロリドン30mlを加え、完溶した。この溶液にモルホリン9.76g(0.112mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、130℃まで昇温し2時間加熱撹拌した。2時間後、3-アミノ安息香酸14.64g(0.107mol、東京化成工業株式会社製)を加え、130℃で4時間加熱撹拌を行った。65℃まで冷却後、メタノール50mlを滴下し、1時間分散した。得られた分散液を500mlのビーカーに移し、メタノール200mlを加え、一晩室温で撹拌した。その後、分散液の析出物を濾過し、メタノール100ml、イオン交換水200mlで洗浄した。得られたウエットケーキを常圧乾燥機で80℃、24時間乾燥し、下記化学式(1-2)で示されるナフタルイミド化合物として黄色固体18.78gを得た(収率88.1%)。
【0106】
【化13】
【0107】
(合成実施例3)
100mlの4つ口フラスコに4-ブロモナフタル酸無水物14.79g(0.053mol、東京化成工業株式会社製)と2-メチルピロリドン30mlを加え、完溶した。この溶液にモルホリン9.76g(0.112mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、130℃まで昇温し2時間加熱撹拌した。2時間後、5-アミノイソフタル酸19.34g(0.107mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、130℃で4時間加熱撹拌を行った。65℃まで冷却後、メタノール50mlを滴下し、1時間分散した。得られた分散液を500mlのビーカーに移し、メタノール200mlを加え、一晩室温で撹拌した。その後、分散液の析出物を濾過し、メタノール100ml、イオン交換水200mlで洗浄した。得られたウエットケーキを常圧乾燥機で80℃、24時間乾燥し、下記化学式(1-3)で示されるナフタルイミド化合物として黄色固体18.12gを得た(収率76.6%)。
【0108】
【化14】
【0109】
(合成実施例4)
100mlの4つ口フラスコに4-ブロモナフタル酸無水物14.79g(0.053mol、東京化成工業株式会社製)と2-メチルピロリドン30mlを加え、完溶した。この溶液にモルホリン9.76g(0.112mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、130℃まで昇温し2時間加熱撹拌した。2時間後、アントラニル酸14.64g(0.107mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、130℃でさらに4時間加熱撹拌した。65℃まで冷却後、メタノール50mlを滴下し、1時間分散した。得られた分散液を500mlのビーカーに移し、メタノール200mlを加え、一晩室温で撹拌した。その後、分散液の析出物を濾過し、メタノール100ml、イオン交換水200mlで洗浄した。得られたウエットケーキを常圧乾燥機で80℃、24時間乾燥し、下記化学式(1-4)で示されるナフタルイミド化合物として黄色固体19.77gの黄色粉体を得た(収率92.7%)。
【0110】
【化15】
【0111】
参考合成実施例5:以下、合成実施例5ともいう
100mlの4つ口フラスコに4-ブロモナフタル酸無水物13.33g(0.048mol、東京化成工業株式会社製)と2-メチルピロリドン30mlを加え、完溶した。この溶液に4-ピペリジンカルボン酸13.02g(0.10mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、130℃まで昇温し2時間加熱撹拌した。2時間後、アニリン9.86g(0.106mol、東京化成工業株式会社製)を加え、130℃で4時間加熱撹拌を行った。65℃まで冷却後、メタノール50mlを滴下し、1時間分散した。得られた分散液を500mlのビーカーに移し、メタノール200mlを加え、一晩室温で撹拌した。その後、分散液の析出物を濾過し、メタノール100ml、イオン交換水200mlで洗浄した。得られたウエットケーキを常圧乾燥機で80℃、24時間乾燥し、下記化学式(1-5)で示されるナフタルイミド化合物として黄色固体16.20gを得た(収率91.8%)。
【0112】
【化16】
【0113】
参考合成実施例6:以下、合成実施例6ともいう
100mlの4つ口フラスコに4-ブロモナフタル酸無水物11.08g(0.04mol、東京化成工業株式会社製)とモルホリン7.32g(0.084mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、トリエチレングリコールジメチルエーテル40ml(東邦化学工業株式会社製、商品名:ハイソルブ-MTM)を加え、室温で撹拌した後、昇温を行い、160℃で4時間撹拌して反応溶液を得た。反応終了後、500mlのビーカーにイオン交換水200mlを加え、撹拌を行いながら、静かにビーカー中に得られた反応溶液を加え、1時間分散した。分散液の析出物を濾過し、イオン交換水洗で洗浄した後、得られたウエットケーキを常圧乾燥機で乾燥を行い、下記化学式(1-6a)で示される4-モルホリノナフタル酸無水物としてオレンジ色固体10.88gを得た(収率96.0%)。
【0114】
【化17】
【0115】
100mlの4つ口フラスコにグリシン2.63g(0.035mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)とN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30mlを加え、しばらく撹拌した。その後50℃まで昇温し、前記化学式(1-6a)で示される先の反応で得られた4-モルホリノナフタル酸無水物9.7g(0.035mol)とDMF20mlを加え、150℃まで昇温し、7時間撹拌して反応溶液を得た。反応終了後、500mlのビーカーにイオン交換水300mlを加え、撹拌を行いながら、静かにビーカー中に得られた反応溶液を加え、1時間分散した。分散液の析出物を濾過し、イオン交換水洗で洗浄した後、得られたウエットケーキを常圧乾燥機で乾燥を行い、下記化学式(1-6)で示されるナフタルイミド化合物として黄色固体11.21gを得た。
【0116】
【化18】
【0117】
参考合成実施例7:以下、合成実施例7ともいう
50mlの3つ口フラスコに4-ブロモナフタル酸無水物7.40g(0.027mol、東京化成工業株式会社製)と2-メチルピロリドン15mlを加え、完溶した。この溶液にモルホリン4.88g(0.056mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、130℃まで昇温し2時間加熱撹拌した。2時間後、アニリン2.76g(0.030mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)を加え、130℃でさらに4時間加熱撹拌した。65℃まで冷却後、メタノール50mlを滴下し、1時間分散した。得られた分散液を500mlのビーカーに移し、メタノール200mlを加え、一晩室温で撹拌した。その後、分散液の析出物を濾過し、メタノール100ml、イオン交換水200mlで洗浄した。得られたウエットケーキを常圧乾燥機で80℃、24時間乾燥し、下記化学式(1-7)で示されるナフタルイミド化合物として黄色固体7.86gを得た(収率81.2%)。
【0118】
【化19】
【0119】
(耐熱性評価)
合成実施例1~7で得られたナフタルイミド化合物を、示差熱熱重量同時測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製 TG-DTA6200 EXSTAR6000)を用い、昇温条件:30℃から550℃、昇温速度:10℃/分で測定した。初期の試料重量から重量の減少値が5%となった時点の温度をチャートから読み取った。なお比較のため、下記化学式に示す市販のC.I.Solvent Yellow 116の5%重量減少温度も測定した。結果を表3に示す。
【0120】
【化20】
【0121】
【表3】
【0122】
表3から分かるように、本発明の着色剤に必須として含まれる合成実施例のナフタルイミド化合物は、C.I.Solvent Yellow 116に比較して高い5%重量減少温度を示した。このことから、化学式(1)で表されるナフタルイミド化合物は高い耐熱性を有しており、高温条件に曝されても変色・退色を生じないものであることが分かった。
【0123】
(実施例1-1)
ポリアミド66樹脂(デュポン社製、商品名:Zytel(登録商標)70G33L)の499.5gと合成実施例1で得られたナフタルイミド化合物(1-1)である着色剤の0.5gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合することにより着色剤樹脂組成物を調製した。これを、射出成形機(東洋機械金属株式会社製、商品名:Si-50)に投入し、シリンダー温度290℃、金型温度80℃で通常の方法で射出成形した。それにより、1mm厚部を有する成形品を1枚作製した。この成形品の外観及び表面光沢は良好で、色むらがない均一な黄色を呈していた。
【0124】
(実施例1-2)
実施例1-1にて調製した着色剤樹脂組成物を、射出成形機に投入してから3分間、射出成形機のシリンダー内で滞留させた後、射出成形したこと以外は、実施例1-1と同様に操作して実施例1-2の成形品を1枚作製した。
【0125】
(成形品の耐熱滞留性評価)
実施例1-1の成形品及び実施例1-2の成形品の色相を、それぞれ分光色彩計(日本電色工業株式会社製、商品名:SD7000)を用いて測定した。成形品の測定箇所を1mm厚部とした。また測定条件を、光源:D65・φ25.4mm、視野角:10度、正反射光除外、押さえ:標準白色板(スガ試験機株式会社製)とした。実施例1-1の成形品を測定し得られたL値、a値、b値から実施例1-2の成形品を測定し得られたL値、a値、b値のそれぞれの数値の変化量を取りΔL、Δa、及びΔbを求めた。これらの値を下記式に代入して色差ΔEを求めた。
ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
その結果ΔE=0.56であった。
【0126】
(隠蔽性評価)
標準黒色板及び標準白色板の2種類の押さえを使用し(ともにスガ試験機株式会社製)、上記の色相評価と同様に操作して実施例1-1の成形品と同一のプレートを使用して隠蔽性を測定した。白色板はL=73.68であり、黒色板はL=73.31であった。上記色相評価にて得られたL値を白色板Lとし、この値と、黒色板Lとを下記式に代入して隠蔽率を求めた。
隠蔽率[%]=[(黒色板L)/(白色板L)]×100
隠蔽率は、99.5%であった。
【0127】
(耐ブリード性評価)
実施例1-1の成形品と、これと同一樹脂製の被接触白色片とを重ね合わせ、さらに両者をクリップで固定して評価サンプルを作製した。この評価サンプルを、庫内を100℃一定とした加熱槽内に静置した。静置から24時間後に加熱槽から評価サンプルを取り出し、クリップを外して被接触白色片を目視で観察した。成形品から被接触白色片への色移り(ブリード)の高低に応じて次のように評価した。
〇:ブリードが見られなかった。
△:接触部にのみブリードが見られた。
×:接触部に加えて、非接触部分にも汚染が見られた(昇華・移行していた)。
その結果、被接触白色片への色移りが全くなく、〇と評価した。
【0128】
(実施例1-3)
ポリアミド66樹脂(デュポン社製、商品名:Zytel(登録商標)70G33L)の499.5gと合成実施例1で得られたナフタルイミド化合物(1-1)である着色剤の0.5gとを、ステンレス製タンブラーに入れて1時間攪拌混合することにより着色剤樹脂組成物を調製した。これを、射出成形機(東洋機械金属株式会社製、商品名:Si-50)に投入し、シリンダー温度290℃、金型温度80℃で、引張評価用成形品及び衝撃特性用成形品を作製した。これらの成形品を、JIS K7162(2014)に準拠した1A形試験片の形状を有する引張評価用試験片と、JIS K7111-1(2012)に準拠したタイプ1・ノッチ形状Aのシャルピー衝撃評価用試験片とに、加工した。
【0129】
(試験用基準板の作製)
着色剤を用いなかったこと以外は実施例1-3と同様に操作して引張評価用試験片及びシャルピー衝撃評価用試験片を作製した。
【0130】
(引張特性評価)
JIS K7161-1(2014)に準拠し、テンシロン万能試験機(株式会社オリエンテック製、商品名:RTC-1310A)を用いて、引張速度5mm/分で、実施例1-3の引張評価用試験片を引っ張った。それにより得られた引張強さは195.75MPaであった。同様に、試験用基準板の引張評価用試験片を引っ張った。それにより得られた引張強さは196.26MPaであった。実施例1-3の引張評価用試験片は、着色剤を非含有で同一樹脂成型板である試験用基準板の引張強さとほぼ同等の値となり、着色剤の含有によって機械強度が低下しないことが分かった。
【0131】
(衝撃特性評価)
JIS K7111-2(2006)に準拠し、デジタル衝撃試験機(株式会社東洋精機製作所製、商品名:DG-UB)を用いて、ハンマー容量1J、及び衝撃速度2.9m/秒にて、実施例1-3のシャルピー衝撃評価用試験片に衝撃を付与した。破壊エネルギーは0.483J、衝撃強さは15.11kJ/mであった。同様に試験用基準板のシャルピー衝撃評価用試験片に衝撃を付与した。破壊エネルギーは0.481J、衝撃強さは14.88kJ/mであった。実施例1-3のシャルピー衝撃評価用試験片は、着色剤を非含有で同一樹脂成型板である試験用基準板の衝撃強さとほぼ同等の値となり、着色剤の含有によって機械強度が低下しないことが分かった。
【0132】
参考実施例2-1:以下、実施例2-1ともいう
ポリアミド66樹脂(デュポン社製、商品名:Zytel(登録商標)70G33L)の499.5gと合成実施例6で得られたナフタルイミド化合物(1-6)である着色剤の0.5gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合することにより着色剤樹脂組成物を調製した。これを、射出成形機(東洋機械金属株式会社製、商品名:Si-50)に投入し、シリンダー温度290℃、金型温度80℃で通常の方法で射出成形した。それにより、1mm厚部を有する成形品を1枚作製した。この成形品の外観及び表面光沢は良好で、色むらがない均一な黄色を呈していた。
【0133】
参考実施例2-2:以下、実施例2-2ともいう
実施例2-1にて調製した着色剤樹脂組成物を、射出成形機に投入してから3分間、射出成形機のシリンダー内で滞留させた後、射出成形したこと以外は、実施例2-1と同様に操作して実施例2-2の成形品を1枚作製した。
【0134】
(成形品の耐熱滞留性評価)
実施例2-1の成形品及び実施例2-2の成形品の色相を、実施例1-1及び実施例1-2と同様に測定し、その結果から色差ΔEを求めた。その結果ΔE=3.15であった。
【0135】
(耐ブリード性評価)
実施例1-1と同様の操作により、実施例2-1の成形品について耐ブリード性の評価を行った。その結果、被接触白色片への色移りは全くなく〇と評価した。
【0136】
(比較例1-1)
ポリアミド66樹脂(デュポン社製、商品名:Zytel(登録商標)70G33L)の499.5gと着色剤としてのC.I.Solvent Yellow 116の0.5gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属株式会社製、商品名:Si-50)に投入し、シリンダー温度290℃、金型温度80℃で通常の方法で射出成形した。それにより、1mm厚部を有する成形品を1枚作製した。この成形品の外観及び表面光沢は良好で、色むらがない均一な黄色を呈していた。
【0137】
(比較例1-2)
比較例1-1にて調製した混合物を、射出成形機に投入してから3分間、射出成形機のシリンダー内で滞留させた後、射出成形したこと以外は、比較例1-1と同様に操作して比較例1-2の成形品を1枚作製した。
【0138】
(成形品の耐熱滞留性評価)
比較例1-1の成形品及び比較例1-2の成形品の色相を、実施例1-1及び実施例1-2と同様に測定し、その結果から色差ΔEを求めた。その結果ΔE=0.94であった。
【0139】
(耐ブリード性評価)
実施例1-1と同様の操作により、比較例1-1の成形品について耐ブリード性の評価を行った。金型の枠にまで着色が及んでいたことから、着色剤が昇華していることが分かった。その結果×と評価した。
【0140】
(比較例2-1)
ポリアミド66樹脂(デュポン社製、商品名:Zytel(登録商標)70G33L)の499.5gと着色剤としてのC.I.Disperse Yellow 201(ランクセス社製、商品名:Macrolex Yellow 6G)の0.5gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属株式会社製、商品名:Si-50)に投入し、シリンダー温度290℃、金型温度80℃で通常の方法で射出成形した。それにより、1mm厚部を有する成形品を1枚作製した。この成形品の外観及び表面光沢は良好で、色むらがない均一な黄色を呈していた。
【0141】
(比較例2-2)
比較例2-1にて調製した混合物を、射出成形機に投入してから3分間、射出成形機のシリンダー内で滞留させた後、射出成形したこと以外は、比較例2-1と同様にして比較例2-2の成形品を1枚作製した。
【0142】
(成形品の耐熱滞留性評価)
比較例2-1の成形品及び比較例2-2の成形品の色相を、実施例1-1及び実施例1-2と同様に測定し、その結果から色差ΔEを求めた。その結果ΔE=8.01であった。
【0143】
(耐ブリード性評価)
実施例1-1と同様の操作により、比較例2-1の成形品について耐ブリード性の評価を行った。金型の枠にまで着色が及んでいたことから、着色剤が昇華していることが分かった。その結果×と評価した。
【0144】
(実施例3-1)
ポリアミド9T樹脂(株式会社クラレ製、商品名:ジェネスタ(登録商標)G1300A)の499.5gと合成実施例1で得られたナフタルイミド化合物(1-1)である着色剤の0.5gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合することにより着色剤樹脂組成物を調製した。これを、射出成形機(東洋機械金属株式会社製、商品名:Si-50)に投入し、シリンダー温度320℃、金型温度135℃で通常の方法で射出成形した。それにより、1mm厚部を有する成形品を1枚作製した。この成形品の外観及び表面光沢は良好で、色むらがない均一な黄色を呈していた。
【0145】
(実施例3-2)
実施例3-1にて調製した着色剤樹脂組成物を、射出成形機に投入してから3分間、射出成形機のシリンダー内で滞留させた後、射出成形したこと以外は、実施例3-1と同様にして実施例3-2の成形品を1枚作製した。
【0146】
(成形品の耐熱滞留性評価)
実施例3-1の成形品及び実施例3-2の成形品の色相を、実施例1-1及び実施例1-2と同様に測定し、その結果から色差ΔEを求めた。その結果ΔE=2.40であった。
【0147】
(耐ブリード性評価)
実施例1-1と同様の操作により、実施例3-1の成形品について耐ブリード性の評価を行った。その結果、被接触白色片への色移りは全くなく〇と評価した。
【0148】
(比較例3-1)
ポリアミド9T樹脂(株式会社クラレ製、商品名:ジェネスタ(登録商標)G1300A)の499.5gと着色剤として下記化学式で表されるC.I.Solvent Yellow 163の0.5gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属株式会社製、商品名:Si-50)に投入し、シリンダー温度320℃、金型温度135℃で通常の方法で射出成形した。それにより、1mm厚部を有する成形品を1枚作製した。この成形品の外観及び表面光沢は良好で、色むらがない均一な黄色を呈していた。
【0149】
【化21】
【0150】
(比較例3-2)
比較例3-1にて調製した混合物を、射出成形機に投入してから3分間、射出成形機のシリンダー内で滞留させた後、射出成形したこと以外は、比較例3-1と同様にして比較例3-2の成形品を1枚作製した。
【0151】
(成形品の耐熱滞留性評価)
比較例3-1の成形品及び比較例3-2の成形品の色相を、実施例1-1及び実施例1-2と同様に測定し、その結果から色差ΔEを求めた。その結果ΔE=15.61であった。
【0152】
(耐ブリード性評価)
実施例1-1と同様の操作により比較例3-1の成形品について耐ブリード性の評価を行った。その結果、着色剤の被接触白色片への色移りが確認され△と評価した。
【0153】
実施例1-1、2-1、及び3-1、並びに比較例1-1、2-1、及び3-1の成形品の色差ΔEと庫内温度100℃でのブリード試験の結果を表4にまとめた。
【0154】
【表4】
【0155】
本発明である実施例の着色剤は、射出成形機内に高温下で保持されても、色の変化が小さい上、被接触白色片と接触させても、色移りしないことから耐ブリード性が高いことが分かった。
【0156】
(マスターバッチ実施例1)
ポリアミド66樹脂(デュポン社製、商品名:Zytel(登録商標)101NC010)の900gと合成実施例で得られたナフタルイミド化合物(1-1)である着色剤の100gとの配合物とをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、単軸押出機(エンプラ産業株式会社製、商品名:E30SV)を用いて、シリンダー温度290℃で溶融混合した。その混合物を水槽中で冷却しながら、ペレタイザーでカットして着色ペレットを得た。この後、乾燥工程を経て、着色剤濃度10質量%の黄色マスターバッチを得た。
【0157】
(実施例4-1)
ポリアミド66樹脂(旭化成株式会社製、商品名:レオナ(登録商標)FH772)の840gと、マスターバッチ実施例1のマスターバッチの10gとを、ステンレス製タンブラーに入れて1時間攪拌混合することにより着色剤樹脂組成物を調製した。これを、シリンダー温度290℃(ノズル先端温度290℃)、金型温度85℃に設定された射出成形機(東洋機械金属株式会社製、商品名:Si-50)に投入し、通常の方法により成形することにより、縦80mm×横50mmかつ1mm厚部及び3mm厚部を有する平面視矩形であり、黄色を呈した実施例4-1の成形品を1枚作製した。
【0158】
(実施例4-2)
実施例4-1にて調製した着色剤樹脂組成物を、射出成形機に投入してから3分間、射出成形機のシリンダー内で滞留させた後、射出成形したこと以外は、実施例4-1と同様にして実施例4-2の成形品を1枚作製した。
【0159】
(成形品の耐熱滞留性評価)
実施例4-1の成形品及び実施例4-2の成形品の色相を、実施例1-1及び実施例1-2と同様に測定し、その結果から色差ΔEを求めた。その結果ΔE=0.55であった。
【0160】
(耐ブリード性評価)
実施例1-1と同様の操作により、実施例4-1の成形品について耐ブリード性の評価を行った。その結果、被接触白色片への色移りは全くなく〇と評価した。
【0161】
(着色剤実施例1)
合成実施例1で得られた黄色染料であるナフタルイミド化合物(1-1)の290gと、アジン系染料(オリヱント化学工業株式会社製、商品名:ORIENT LPI-1)の6gとを、ステンレス製タンブラーに入れて1時間攪拌混合し、着色剤実施例1を調製した。
【0162】
(着色剤実施例2)
着色剤実施例1に明度調整剤としての硫化亜鉛0.2gを添加したこと以外は、着色剤実施例1と同様に操作して、着色剤実施例2を調製した。
【0163】
(着色剤比較例1)
黄色染料であるC.I.Solvent Yellow 116の100gと、アジン系染料(オリヱント化学工業株式会社製 商品名:ORIENT LPI-1)の2.5gと、オレンジ色の無機顔料(BASF社製、商品名:Sicopal(登録商標) Orange K2430)の50gと、硫化亜鉛の100gとを、ステンレス製タンブラーに入れて1時間攪拌混合し、着色剤比較例1を調製した。
【0164】
(マスターバッチ実施例2)
ポリアミド66樹脂(デュポン社製、商品名:Zytel(登録商標)101NC010)の900gと着色剤実施例2の100gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、単軸押出機(エンプラ産業株式会社製、商品名:E30SV)を用いて、シリンダー温度290℃で溶融混合した。その混合物を水槽中で冷却ししながら、ペレタイザーでカットして着色ペレットを得た。この後、乾燥工程を経て、着色剤濃度10質量%のオレンジ色マスターバッチを得た。
【0165】
(実施例5-1)
ポリアミド66樹脂(旭化成株式会社製、商品名:レオナ(登録商標)FH772)の840gと、マスターバッチ実施例2のマスターバッチの10gとを、ステンレス製タンブラーに入れて1時間攪拌混合することにより着色剤樹脂組成物を調製した。これを、シリンダー温度290℃(ノズル先端温度290℃)、金型温度85℃に設定された射出成形機(東洋機械金属株式会社製、商品名:Si-50)に投入し、通常の方法により成形することにより、縦80mm×横50mmかつ1mm厚部及び3mm厚部を有する平面視矩形であり、オレンジ色を呈した実施例5-1の成形品を1枚作製した。
【0166】
(実施例5-2)
実施例5-1にて調製した着色剤樹脂組成物を、射出成形機に投入してから3分間、射出成形機のシリンダー内で滞留させた後、射出成形したこと以外は、実施例5-1と同様にして実施例5-2の成形品を1枚作製した。
【0167】
(成形品の耐熱滞留性評価)
実施例5-1の成形品及び実施例5-2の成形品の色相を、実施例1-1及び実施例1-2と同様に測定し、その結果から色差ΔEを求めた。その結果ΔE=2.68であった。
【0168】
(耐ブリード性評価)
実施例1-1と同様の操作により、実施例5-1の成形品について耐ブリード性の評価を行った。その結果、被接触白色片への色移りは全くなく〇と評価した。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の着色剤、並びにこれを含むマスターバッチ、及び着色樹脂組成物は、着色された成形品を製造するのに用いられ、この成形品は、内燃機関のインテークマニホールドやエンジンカバーのように複数の部材をレーザー溶着することによって製造されるレーザー溶着部品、並びに輸液や栄養剤を点滴する際に使用される医療用チューブ、流動食や飲料組成物を封入したスパウトパウチのような食品包材、及びペットボトルのキャップやラベルとして用いられる。