(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】歯根模型
(51)【国際特許分類】
G09B 23/30 20060101AFI20240709BHJP
A61C 5/40 20170101ALI20240709BHJP
【FI】
G09B23/30
A61C5/40
(21)【出願番号】P 2020070529
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】507294395
【氏名又は名称】株式会社ホクシンエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100155882
【氏名又は名称】齋藤 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154678
【氏名又は名称】齋藤 博子
(72)【発明者】
【氏名】藤肥 いずみ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 育美
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-141214(JP,A)
【文献】特開2015-036811(JP,A)
【文献】特開2011-085614(JP,A)
【文献】米国特許第05503562(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/28-23/34
A61C 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面に対向する第2面とを備え、
前記第1面に設けられた第1開口と、前記第2面に設けられた第2開口と、
前記第1開口及び前記第2開口を連通する連通路と、
を備える歯根模型であって、
前記連通路には、
断面積が前記第1開口の開口面積より小さくかつ前記第2開口の開口面積よりも小さい小径部を備え、
前記小径部の直径は0.1~0.3mmであり、前記小径部から前記第2面までの寸法は0.5~1.0mmであることを特徴とする歯根模型。
【請求項2】
前記連通路には、前記第1開口から前記小径部に向かって
断面積が小さくなる第1テーパ部と、前記第2開口から前記小径部に向かって
断面積が小さくなる第2テーパ部とをさらに設けることを特徴とする請求項1記載の歯根模型。
【請求項3】
前記第1面及び前記第2面の間に位置する周面を備え、
前記連通路は、少なくとも
一部が前記周面から視認可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の歯根模型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯科学生や研修医等の根管治療実習用に用いる歯根模型に関し、より詳細には電気的根管長測定器を用いた根管治療実習用に用いることができる根管模型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気的根管長測定器を用いた根管治療実習に歯根模型が用いられていた。特許文献1によれば、歯根模型は象牙質を含む歯根部と、歯根部の内側に位置する根管部とを備える。このような歯根模型を電気的根管長測定器に固定し、根管部にファイルを挿入することによって根管治療の実習をおこなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の歯根模型は、実際の歯根とは根管の形状が異なっていた。実際の歯根の根管は、その先端部分の根尖から約0.5~1.0mm内側に生理学的根尖と言われるものがある。すなわち、実際の歯根の根管は根尖の手前約0.5~1.0mm内側の位置で最も細くなり、そこからさらに広がっている。この最も細くなった部分を生理学的根尖と呼ぶ。根管の最も狭い部分、すなわち生理学的根尖の直径は約0.1~0.3mmであり、根尖孔の直径は約0.2~0.5mmである。
【0005】
このように、実際の歯根の形状と、歯根模型との形状とが異なることから、実際の歯根に即した実習ができていないという問題があった。
【0006】
この発明は、歯根模型の根管の形状を実際の歯根に近づけることによって、より実物に近い感覚で実習することができる歯根模型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、第1面と、前記第1面に対向する第2面とを備え、前記第1面に設けられた第1開口と、前記第2面に設けられた第2開口と、前記第1開口及び前記第2開口を連通する連通路と、を備える歯根模型であって、前記連通路には、断面積が前記第1開口の開口面積より小さくかつ前記第2開口の開口面積よりも小さい小径部を備え、前記小径部の直径は0.1~0.3mmであり、前記小径部から前記第2面までの寸法は0.5~1.0mmであることを特徴とする。
連通路に小径部を設けることにより、実際の歯根に存在する生理学的根尖を再現することができ、より実物に近い実習が可能となる。
【0008】
前記連通路には、前記第1開口から前記小径部に向かって断面積が小さくなる第1テーパ部と、前記第2開口から前記小径部に向かって断面積が小さくなる第2テーパ部とをさらに設けることを特徴とする。
上記のような形状にすることによって、さらに実際の歯根の根管に近い形状とすることができる。
【0010】
前記第1面及び前記第2面の間に位置する周面を備え、前記連通路は、少なくとも一部が前記周面から視認可能であることを特徴とする。
周面から連通路を確認しながら実習することができるので、感覚的な技術を習得するために有効である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る歯根模型によれば、実際の歯根に存在する生理学的根尖を再現することができ、より実物に近い実習が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施形態に係る歯根の使用状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~
図3を参照すれば、歯根模型10は、第1面1と、第1面1に対向する第2面2と、これら第1面1及び第2面2との間に位置する周面3とを備える。この実施形態において、歯根模型10は直方体である。より詳細には、第1面1及び第2面2は正方形であり、周面3は二対の対向する長方形からなる。この実施形態において、第1面1及び第2面2の一片は約13~25mmであり、周面3を構成する一つの面の高さは約7~15mmである。なお、この実施形態において第1面1及び第2面2を正方形としているが、これに限定されるものではなく、長方形、その他の多角形、又は円形等であってもよい。
【0014】
このような歯根模型10は、第1面1に設けられた第1開口11と、第2面2に設けられた第2開口12と、第1開口11及び第2開口12を連通する連通路4とを備える。連通路4には、その断面積が第1開口11の開口面積より小さくかつ第2開口12の開口面積よりも小さい小径部41を備える。さらに、連通路4は、第1開口11から小径部41に向かってその断面積が小さくなる第1テーパ部42と、第2開口12から小径部41に向かってその断面積が小さくなる第2テーパ部43とを設ける。この実施形態において、第1テーパ部42は、第1開口11側に位置するとともに傾斜角が大きい部位11aと、傾斜角が小さい部位11bとを有し、部位11bと第2テーパ部43との間に小径部41が設けられる。
【0015】
上記のような構成において、第1開口11は楕円形を有し、短径が約1.75mm、長径が約3.0mmである。第2開口12の直径は約0.15~2.0mm、小径部41の直径は約0.1~0.3mmである。第2テーパ部43における小径部41から第2面2までの長さ寸法は約0.5~1.0mmであり、第1面11から小径部41までの長さ寸法は、第2面12から小径部41までの寸法よりも大きい。
【0016】
この実施形態において、歯根模型10は透明なエポキシ樹脂によって形成される。したがって、周面3から連通路4を視認可能である。ただし、小径部41は連通路4全体に対して非常に小さく、肉眼での識別は困難である。ここでいう視認可能とは、その細部にわたってまで識別するという意図ではなく、全体としてそこにあることを理解できるというものである。
【0017】
上記のような歯根模型10は図示しない電気的根管長測定器に固定され、実習に用いられる。より具体的には、歯根模型10を電気的根管長測定器に固定し、連通路4に根管治療に用いる針状のファイルを挿入することによって、歯根模型10を歯根に、連通路4を根管に見立てて根管治療の実習訓練を行う。電気的根管長測定器及びファイルは、実際の根管治療に用いられるものを用いることができる。実際の根管治療において、電気的根管長測定器とファイルは電気的に接続され、ファイル先端と根尖孔との離間距離に応じて音や光等が変化し、その距離が分かるようになっている。ファイルは、根管内の汚染された組織を掻き出すための器具で、その先端が根尖孔近傍にまで達するように使用するのが好ましい。一方で根尖孔を突き出ると患者に強い痛みが生じてしまう。したがって、ファイル先端がどこまで届いているのかが治療において重要になる。また、近年の電気的根管長測定器は、技術の進歩により、根尖孔のみならず生理学的根尖からファイル先端までの離間距離をも検知可能となっている。
【0018】
この実施形態の歯根模型10において、連通路4には小径部41を備えているから、歯根に存在する生理学的根尖を再現することができる。このような歯根模型10を用い、電気的根管長測定器及びファイルにより測定することによって実際の歯根に近い状況での実習訓練が可能となる。
【0019】
連通路4は、周面3から視認可能であるので、指先の感覚と実際のファイルの位置とを確認しながら実習を行うことができ、感覚的な技術を習得するために有効である。実際の歯根の治療においては、歯根及び根管を視認することができず、手探りでの作業になるが、指先の感覚とファイルの位置とを実習時に確認することによって、実際の治療に活かすことができる。
【0020】
この実施形態において、連通路4はひとつのみであるが、複数あってもよい。また、歯根模型10全体の形状は直方体に限定されるものではない。さらに、歯根模型10に別途歯牙模型を取り付けることもできる。また、連通路4の内側を着色することもできる。
【符号の説明】
【0021】
1 第1面
2 第2面
3 周面
4 連通路
10 歯根模型
11 第1開口
12 第2開口
41 小径部
42 第1テーパ部
43 第2テーパ部