(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】低分子シロキサン含有率を低減させた光学部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 1/04 20060101AFI20240709BHJP
C08J 7/02 20060101ALI20240709BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G02B1/04
C08J7/02 Z CFH
C08L83/04
(21)【出願番号】P 2020562481
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051378
(87)【国際公開番号】W WO2020138401
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2018247181
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597096161
【氏名又は名称】株式会社朝日ラバー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(74)【代理人】
【識別番号】100151068
【氏名又は名称】塩崎 進
(72)【発明者】
【氏名】本柳 翔之
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 諭
(72)【発明者】
【氏名】平栗 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】富澤 延行
(72)【発明者】
【氏名】根本 雅司
(72)【発明者】
【氏名】川口 武
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-124489(JP,A)
【文献】特開2004-9391(JP,A)
【文献】特開2009-59983(JP,A)
【文献】特開2011-219687(JP,A)
【文献】特開2008-250106(JP,A)
【文献】特開2009-185257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00- 1/08
G02B 3/00- 3/14
C08J 7/00- 7/02
C08L83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン樹脂
、シリコーン樹脂および添加剤、シリコーンゴム、シリコーンゴムおよ
び添加剤
、のいずれかで成形された、光を透過又は導光させる光学部材であって、低分子シロキサンD3~D20の含有量の合計値が100ppm以下である光学部材の製造方法であって、
低分子シロキサン除去工程(A)及びその後の前記低分子シロキサン除去工程
(A)とは異なる低分子シロキサン除去工程(B)を含み、
前記低分子シロキサン除去工程(A)が、主にD3からD10の低分子シロキサンを低減させる工程で、前記低分子シロキサン除去工程(B)が主にD11からD20の低分子シロキサンを低減させる工程である製造方法。
【請求項2】
低分子シロキサンD3~D20の含有量の合計値が65ppm以下である前記光学部材を製造する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
低分子シロキサンD3~D20の含有量の合計値が50ppm以下である前記光学部材を製造する請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
低分子シロキサンD3~D20の含有量の合計値が25ppm以下である前記光学部材を製造する請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
可視光波長領域及び近赤外波長領域380nm~1000nmの全範囲の透過率が80%以上となる前記光学部材を製造する請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記光学部材の代表製品厚
みが
30mm以下である、前記光学部材を製造する請求項1~
4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
車載用光学部材である前記光学部材を製造する請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
他の部材との位置合わせ部を有した形状とする前記光学部材を製造する請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
天然シリカ又は合成シリカを含有しない前記光学部材を製造する請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方
法。
【請求項10】
シリコーン以外の材料又は他の成形品と、一体成形又は成形後に接着接合されて一体化された
光学部材を製造する請求項1~4のいずれか一項に記載
の製造方法。
【請求項11】
前記低分子シロキサン除去工程(A)が前記光学部材の加熱処理であり、前記低分子シロキサン除去工程(B)が有機溶剤中に前
記光学部材を浸漬し低分子シロキサンの除去を行うことである、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子シロキサン含有率を低減させたヘッドライト等の車載用光学部材やプロジェクターライト等の屋内使用に用いられる光学部材、照明用光拡散又は集光レンズ、カメラ用レンズ、光学素子用レンズ、イルミネーション照明用光学部材、光導光体部材などに用いられる、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム製の光学部材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学部材は、カメラ、ヘッドライトなどの各種光学機器などに用いられており、その機器の目的に応じた特有の優れた光学特性を必要とするものである。また、その機器の使用態様に合わせて、優れた耐熱性や耐候性等の耐久特性と、軽量化、小型化若しくは大型化した特定の形状に均一で、均質に歩留まり良く大量に成形できる製造特性とが、求められている。これらのニーズに応えるため、光学部材の原材料として、無機ガラスのような透明無機材料や、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、COP(シクロオレフィンポリマー)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムのような透明高分子材料が汎用されており、中でもシリコーン樹脂又はシリコーンゴムは、無機ガラスより密度が低く、他の樹脂より耐熱性が優れている。
【0003】
しかし、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムで成形された成形体中には低分子シロキサンD3~D20が多く含有されており、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム成形体が熱された際に、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム成形体中に含有する低分子シロキサンが揮発して、電子回路や他の部材表面上に付着し、接点障害や他の部材表面の劣化又は汚染の原因となり悪影響を及ぼすことが問題となっている。
【0004】
特許文献1には、4量体(D4)及び/又は5量体(D5)の環状ジメチルポリシロキサンの含有量が100ppm以下のシリコーン樹脂粒子及びシリコーンゴム粒子の原料である、硬化性液状シリコーン又はそれを構成する液状シリコーンを、薄膜蒸留装置を用いて減圧下で加熱し、環状ジメチルポリシロキサンを揮発除去する工程を含む製造方法について開示されている。
【0005】
特許文献2には、半導体素子保護用材料が3量体(D3)から10量体(D10)までの環状シロキサン化合物を含まないか、又は3量体から10量体までの環状シロキサン化合物を500ppm以下で含み、熱伝導率が10W/m・K以上である無機フィラーの含有量が60重量%以上、92重量%以下であり、前記半導体素子保護用材料の電気伝導度が50μS/cm以下である、半導体装置について開示されている。
【0006】
特許文献3には、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物からなり、硬化物中の無官能低分子シロキサンD3~D20の含有量の合計が200ppm以下であることを特徴とするマイクロコンタクトプリント用版材について開示されている。
特許文献4には、シリコーンゴムを成形した後、得られた成形品を圧力10Pa~1×10-4Pa、温度100℃~200℃の条件で加熱減圧処理することで、低分子シロキサンを除去することを特徴とするシリコーンゴム成形品の製造方法が開示されている。
特許文献5には、シリコーンゴム製品を1-ブロモプロパンに浸漬させて、超音波処理を施す超音波処理工程を含むことを特徴としたシリコーンゴム製品の洗浄方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2では、10量体(D10)までの低分子シロキサンの低減方法となっており、11量体から20量体(D11 からD20)までの分子量が大きい低分子シロキサン含有量低減についての除去効果としては不十分である。
特許文献3では、マイクロコンタクトプリント用のシリコーンゴム版材において、非転写材であるインク材の汚染をなくすために、ベースポリマーとなる、オルガノポリシロキサン中の低分子含有レベルを、減圧下加熱ストリップによって、1000ppm以下、好ましくは500ppm以下に低減させた後、その減圧下加熱ストリップしたベースポリマーを用いて、成形した硬化物に含まれる無官能低分子シロキサンD3~D20の合計が、200ppm以下のマイクロコンタクトプリント用のシリコーンゴム版材としているが、その場合、ベースポリマーを減圧下加熱ストリップする等のベースポリマー中の低分子シロキサン除去工程の追加、また工程内での除去レベルが経済性によって左右されると記載があるため、除去設備の性能依存性があり、製品間でのバラつきが大きく生じ、製造が容易ではなく、安定的に製品を得ることが難しい。
【0008】
特許文献4の低分子量シロキサンの残留量の低減方法では、シリコーンゴム成形品の厚みが0.5mmの場合は効率良く低分子シロキサンD4~D20の残留量を20ppm以下と低減できているが、成形品の厚みが1.5mmになった場合、低分子シロキサンD4~D20の残留量が300ppm程度と効率が悪くなっており、成形品の厚みが厚い場合低減効率が低下している。
特許文献5の低減方法では、シリコーンゴム製品の平均厚みが1.0mmの場合は、環状ジメチルポリシロキサンD4~D20の残留量の合計値を10ppmと低減できているが、成形品の厚みが3.0mmの場合、低分子シロキサンD4~D20の残留量の合計値が870ppmと低減効率が悪くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-69516号公報
【文献】特開2018‐56595公報
【文献】特開2009-59983号公報
【文献】特開2004-9391号公報
【文献】特開2006-124489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、低分子シロキサンが原因として挙げられる、電子回路や他の部材表面上に付着による、接点障害や他の部材表面の劣化又は汚染について、特に光学部材にて問題視され、従来の低分子シロキサン含有量レベルよりシリコーン樹脂又はシリコーンゴムで成形された成形体中の低分子シロキサンD3~D20の更なる含有率低減が求められているが、その市場要求を達成でき、精密な光学設計が要求されるシリコーン樹脂又はシリコーンゴム製の光学部材を得ることはできなかった。
【0011】
本発明は、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム製の光学部材に含有される低分子シロキサンD3~D20の含有率を極微量まで低減し、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム製の光学部材とともに組み込まれている電子回路や他の部材表面上に付着による、接点障害や他の部材表面の劣化又は汚染を生じさせず、この光学部材においては、低分子シロキサン成分の揮発による質量変化が少ないことで形状安定性、耐熱性に優れ、透明性が高いシリコーン樹脂又はシリコーンゴム製の光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の態様を有する。
[1] シリコーン樹脂又はシリコーンゴムにより成形された、光を透過又は導光させる光学部材であって、低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が100ppm以下である光学部材。
[2] 前記光学部材の低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が65ppm以下である[1]に記載の光学部材。
[3] 前記光学部材の低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が50ppm以下である[1]に記載の光学部材。
[4] 前記光学部材の低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が25ppm以下である[1]に記載の光学部材。
[5] 前記光学部材が、可視光波長領域及び近赤外波長領域380nm~1000nmの全範囲の透過率が80%以上となる[1]~[4]のいずれかに記載の光学部材。
[6] 前記光学部材の代表厚みが30mm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の光学部材。
[7]前記光学部材が、車載用光学部材である[1]~[6]のいずれかに記載の光学部材。
[8] 前記光学部材が、他の部材との位置合わせ部を有した形状とする[1]~[7]のいずれかに記載の光学部材。
[9] 前記光学部材が、天然シリカ又は合成シリカを含有しない[1]~[8]のいずれかに記載の光学部材。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の光学部材が、シリコーン以外の材料又は他の成形品と、一体成形又は成形後に接着接合されて一体化された光学部材。
[11] 低分子シロキサン除去工程(A)及び前記低分子シロキサン除去工程とは異なる低分子シロキサン除去工程(B)を含む[1]~[9]のいずれかに記載の光学部材の製造方法。
[12] 前記低分子シロキサン除去工程(A)が、主にD3からD10の低分子シロキサンを低減させる工程で、前記低分子シロキサン除去工程(B)が主にD11からD20の低分子シロキサンを低減させる工程である、[11]に記載の製造方法。
[13] 前記低分子シロキサン除去工程(A)が前記光学部材の加熱処理であり、前記低分子シロキサン除去工程(B)が有機溶剤中に前記光学部材を浸漬し低分子シロキサンの除去を行うことである、[11]または[12]に記載の製造方法。
【0013】
なお、本明細書においては、対象物の低分子シロキサン含有率の数値は、クロマト用浸漬液に一定時間浸漬した後、浸漬液をガスクロマトグラフィーにかけて浸漬液中含有量を測定し、測定された含有量を対象物質量で除した値をppmで表示する。したがって、浸漬液を特定しなければ、含有率の意味は確定しない。本明細書においては、特に明示のない場合、ヘキサン浸漬による値であるものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学部材は、低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が100ppm以下であることから、光学部材とともに組み込まれている電子回路や他の部材表面上に付着による、接点障害や他の部材表面の劣化又は汚染のリスクを低減し、成形品の加熱による光学部材の質量変化が少なく、シリコーンの優れた、耐熱性や耐候性等の耐久特性と、軽量化、小型化若しくは大型化した特定の形状に均一で、均質に歩留まり良く大量に成形できる製造特性、無機ガラスより密度が小さい特性を活用できる光学部材の提供が可能となる。
また、高い透明性を有することで、光源からの光をロスなく透過又は導光することができ、光学部材の形状によって、光の拡散や集光などの機能性を持たせることが可能となる。
また、ある一定の製品厚みがあるシリコーン樹脂又はシリコーンゴム製の光学部材でも、低分子シロキサン含有率が低減されていることにより、電子回路や他の部材表面上に付着による、接点障害や他の部材表面の劣化又は汚染のリスクを従来よりも低減させることが可能となる。
【0015】
また、シリコーンが無機ガラスより密度が小さいことで、無機ガラス光学部材の代替として自動車へ搭載された場合、無機ガラス製の光学部材と比較して、光学部材が軽量化されることにより自動車の燃費性能向上が見込まれ、更に、ベース材料をシリコーン樹脂又はシリコーンゴムとすることで、無機ガラスでは困難であった複雑な形状の光学部材の成形も可能となる。
また、他の部材との位置合わせ部を有した形状とすることで、他の部材に装着を行うことが容易になる。
更に、この光学部材は、ベース材料となるシリコーン樹脂又はシリコーンゴムと、シリコーン以外の材料又は他の成形品と、一体成形又は成形後に接着接合することで、より複雑な形状や様々な特性を有する光学部材を得ることが可能となる。
【0016】
この光学部材の製造方法として、成形された光学部材中の低分子シロキサンを除去する工程(A)と、前記低分子シロキサンを除去する工程とは異なる低分子シロキサンを除去する工程(B)を含むことによって、2種類以上の低分子シロキサン除去工程を設けることで、成形された光学部材中の低分子シロキサンを精度が高くかつ効率的に低減させることができ、異なる低分子シロキサン除去工程を組み合わせることで1つの低分子シロキサン除去工程への負荷を軽減でき、1種類では低減が困難な低分子シロキサン成分の低減が可能となる。
この光学部材の製造方法として、成形された光学部材中の低分子シロキサンを除去する工程(A)は、加熱処理をすることで、簡易的に低分子シロキサン(主にD3からD10)の含有率を低減でき、前記低分子シロキサンを除去する工程とは異なる低分子シロキサンを除去する工程(B)は、有機溶剤中に前記光学部材を浸漬し光学部材中の低分子シロキサンを抽出、除去することで、加熱処理のみでは低減が困難な低分子シロキサン(主にD11からD20)を低減させる。この時、加熱処理にて、先に前記光学部材中に含有されている低分子シロキサンを低減させておくことで、次工程にある、有機溶剤にて光学部材中の低分子シロキサンを抽出、除去し低減させる全体量が少なくなることで、前工程で加熱処理をせずに有機溶剤に浸漬工程のみで低分子シロキサンを除去する場合と比較して、一回当たりの低分子シロキサン抽出量が減少することにより、工程に使用される有機溶剤の交換頻度の減少に繋がり、有機溶剤の廃棄量低減による環境負荷が低減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本願の発明の、表1に示す実験結果のグラフである。
【
図2】
図2は、本願の発明の、透過率を示すグラフである。
【
図3a】
図3aは、本願発明の、光学部材の代表厚みを説明する図である。
【
図3b】
図3bは、本願発明の、光学部材の代表厚みを説明する図である。
【
図3c】
図3cは、本願発明の、光学部材の代表厚みを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の光学部材は、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムで成形され光を透過又は導光させる光学部材であって、光学部材の低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が例えば1000ppmのように多く含有されている場合と比べ、低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が100ppm以下であることから、光学部材とともに組み込まれている電子回路や他の部材表面上に付着による、接点障害や他の部材表面の劣化又は汚染のリスクを低減でき、光学部材が加熱され含有する低分子シロキサンの揮発が原因となる、光学部材の質量変化を少なくすることができる。好ましくは、低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が65ppm以下、より好ましくは低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が50ppm以下、さらに好ましくは低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が25ppm以下の場合、より電子回路や他の部材表面上に付着による、接点障害や他の部材表面の劣化又は汚染のリスク低減と加熱による光学部材の低分子シロキサンの揮発が原因となる、質量変化を少なくすることに繋がるためよい。
【0019】
また、光学部材の低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が例えば1000ppmのように多く含有されている場合、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムで成形された光学部材が、直近に存在するLED光源等の発光による発熱や外気の温度環境によって加熱された場合、含有する低分子シロキサンが揮発することで、光学部材の質量が減少して製品寸法が変化することにより、所望する光学特性が失われてしまう。そのことから、低分子シロキサンの揮発による製品寸法の変化が少ない、低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が100ppm以下、好ましくは低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が65ppm以下、より好ましくは低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が50ppm以下、さらに好ましくは低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が25ppm以下に設定することがよい。これにより、例えば光学部材がハイパワーLED光源と直近に存在する場合、光学部材が発光による発熱で加熱され、低分子シロキサンの揮発することによる、光学部材の質量が減少して製品寸法の変化が起きることを防ぐことができるため、所望する光学特性を保持することが可能である。光学部材の質量が減少して製品寸法の変化が±2%以下、好ましくは±1%以下であることにより、光学部材に所望する光学特性を保持することができる。
【0020】
本発明の光学部材は、形状について限定されず、光源からの光を集光や拡散、導光など所望される光学部材の機能や特性に合わせた形状とすることができる。さらに、本発明の光学部材に位置合わせ部を有した形状を有することにより、他の部材との装着を行うことが容易になるため、好ましい。この時の光源は、LED光源やLD光源、エレクトロルミネセンス、キセノンランプ、ハロゲンランプ、太陽光などを指す。
【0021】
本発明の光学部材の代表厚みについては、長時間の低分子シロキサン除去工程が必要となってしまうことから、産業上効率良く、製品を得るために本発明の光学部材の代表厚みが30mm以下、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下であれば、長時間の低分子シロキサン除去工程が必要とされず、低分子シロキサンD
3~D
20の含有率の合計値が100ppm以下とすることができることから好ましい。
代表厚みとは、光学部材の代表とする厚みのことであり、例えば
図3a~3cに示すように光学部材の最大の辺、または円筒形や円錐形等円径を含むものでは直径をDとし、円筒や円錐等の光学部材の高さをHとした時に、H>DならばDを代表厚みとし、H<DならばHを代表厚みとする。これは、肉薄部では肉厚部よりも低分子シロキサン除去が容易であるため、同一体積であってもその形状によって除去効果に差が生じることを考慮し、形状に依存せずに除去効果を予測する指標とするためである。
図3aの直方体を例にとる場合、最大の辺D、最小辺である高さHを設定した直方体の代表厚さはHとなる。また、
図3bの円柱形上を例にとる場合、円が真円ならばその直径をD、そうでない場合には、短軸側の直径をD、高さをHと設定した円柱体の場合、Dの方が小さい場合には代表厚みはDとなる。そして、DよりもHの方が小さい場合にはHが代表厚みとなる。円錐の場合も同様に、HよりもDの方が小さければDが代表厚みである。
さらに
図3cの、直方体上にレンズが複数ある形状の場合、最大の辺D、高さは光学部材の高さをHおよびH′と設定した複雑な形状の代表厚みは、D>H>H′の場合Hとなる。
図3a~3cに示す形状例以外の形状においても、前記有機溶剤の浸透距離の観点から、代表厚みを、対象物全体を概略の立体形状と捉えた場合に最も薄い厚み、と適宜設定することで、低分子シロキサン除去の効果予測および処理内容の設定を適切に行うことができる。
【0022】
本発明の光学部材の硬度は、特に限定されず、製品に所望される形状や用途、特性に合わせベースとなるシリコーン樹脂又はシリコーンゴム材料を選択できる。JIS K 7215(プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法)の方法により測定されるショアD硬度、及びJIS K 6253(ゴムのデュロメータ硬さ試験方法)の方法により測定されるショアA硬度で、例えば、柔軟性を持つ光学部材とし、かつ、形状の自立性を考慮する場合はショアA硬度10~20であればよい。ある程度の弾性を有し、外力に対する復元力のある機能性とする場合は、ショアA硬度20~70であればよい。弾性を持たせつつ光学部材表面に傷が付くのを防ぐ場合はショアA硬度70~ショアD硬度50の範囲で硬度を調節することができる。好ましくはショアA硬度75~ショアD硬度30、より好ましくはショアA硬度80~ショアD硬度30であることがよい。
本発明の光学部材は、厚み2mmの時に、可視光波長領域及び近赤外波長領域380nm~1000nmの全範囲の透過率は、光拡散カバーや光透過カバーなど要求される光学特性が低く、コストを優先させる場合であっても80%以上が好ましく、光路長の短い導光部材などではコストと光学特性を両立させる場合は85%以上が好ましく、より高い光学特性を必要とする場合は90%以上が好ましい。
【0023】
本発明の光学部材は、天然シリカ又は合成シリカ含有の有無については、求められる特性に合わせ選択でき、成形品に高い透明性及び透過率を得る場合は天然シリカ又は合成シリカを添加しないことが好ましい。耐熱性の向上や光源からの光拡散性付与等の場合は天然シリカ又は合成シリカを添加することが好ましく、その配合量は、透過率が可視光波長領域及び近赤外波長領域380nm~1000nmの全範囲の透過率が80%以上になるよう、所望する機能性に合わせ調整することができる。例えば、0.01~0.5質量%が好ましい。
また、本発明の光学部材は、帯電防止剤や硬化遅延剤、紫外線吸収剤、顔料など添加剤を含有することは本発明の効果を損なわない範囲であれば限定されず、その配合量は所望する機能性に合わせ調整できる。
【0024】
本発明の光学部材においては、ベース材料がシリコーン樹脂又はシリコーンゴムであれば特に限定されず、硬化前で固形状のシリコーン樹脂又はシリコーンゴムや硬化前で半固形状のシリコーン樹脂又はシリコーンゴムや硬化前で液状のシリコーン樹脂又はシリコーンゴムが挙げられ、シリコーンの硬化方法に関しても、熱硬化性のシリコーン樹脂又はシリコーンゴムや光硬化性のシリコーン樹脂又はシリコーンゴム、光硬化性熱硬化性のシリコーン樹脂又はシリコーンゴム等、又はそれらの組み合わせでもよく、所望される光学部材の機能や光学部材の形状等に合わせて選択的に用いることができる。その中でも硬化前で液状のシリコーン樹脂又はシリコーンゴムが好ましく用いられ、複雑な光学部材の形状にも成形が可能である。さらに、硬化前で液状の付加反応硬化型のシリコーン樹脂又はシリコーンゴムであれば、複雑な光学部材の形状に成形でき、縮合反応硬化型のシリコーン樹脂又はシリコーンゴムと比較して反応途中に生成される不純物が少なく、高い透明性を有する光学部材を得ることができるため、より好ましい。
【0025】
付加反応硬化型のシリコーン樹脂又はシリコーンゴムであれば、特に限定されない。中でも、熱硬化性の付加反応硬化型のシリコーン樹脂又はシリコーンゴムの場合、容易に光学部材を得ることができるため好ましい。例えば、オルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系触媒等の重金属系触媒を含む組成物が挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンや触媒の種類や量は、架橋度や硬化速度を考慮して適宜決定すればよく、より耐熱性の機能性が必要な場合はベースポリマーを、ジメチルポリシロキサンやジメチルシロキサンを選択すればよく、より高い屈折率の機能性が必要な場合はベースポリマーを、メチルフェニルシロキサン共重合体を選択すればよい。
【0026】
本発明の光学部材の成形方法については、特に限定されず、公知の成形方法を用いることができる。例えば、コンプレッション成形やインジェクション成形、トランスファー成形、押出し成形、カレンダー成形、コーティング成形、インサート成形、3Dプリンターによる成形等が挙げられる。
光学設計に基づく立体形状の光学部材についてはコンプレッション成形やインジェクション成形が好ましい。中でもインジェクション成形は、ベース材のロスが少なく、さらに、ベース材が硬化前で液状の付加反応硬化型のシリコーン樹脂又はシリコーンゴムを用いることで、複雑な形状で、成形サイクルが早く光学部材を得ることができるため好ましい。
【0027】
また、本発明の光学部材が、ベース材料となるシリコーン樹脂又はシリコーンゴムと、シリコーン以外の材料又は他の成形品と、一体成形又は成形後に接着接合した場合であってもよい。例えば、光源からの光が透過又は導光する必要部分以外で、遮光性や反射性を有する材料や金属、ベース材料となるシリコーン樹脂又はシリコーンゴムに添加剤等を配合することにより、遮光性や反射性を持つ部材又はその組成物、他の樹脂などと組み合わせることで、効率良く光を取り出すことでもよく、製品設計に合わせて選択的に成形することができる。この時、インサート成形を行うことで、容易に一体成形も可能である。ここで、シリコーン以外の材料は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の樹脂材料、エンプラ、スーパーエンプラなどの熱可塑、熱硬化樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP)、ポリエーテルサルフォン樹脂(PES)などの光学的に優れた樹脂、アルミニウムやチタン、ステンレス、金、銀、銅といった金属、ガラスやセラミック等が挙げられる。また、他の成形品とは、別形状をした光学部材などの別工程で成形された成形品等を指す。
【0028】
本発明の光学部材の製造方法は、低分子シロキサン除去工程(A)及び前記低分子シロキサン除去工程とは異なる低分子シロキサン除去工程(B)を含む製造方法であり、光学部材中に含有されている低分子シロキサンを、2種類以上の低分子シロキサン除去工程を行うことで、低分子シロキサンD3~D20の含有率の合計値が100ppm以下の光学部材を得ることが可能であり、低分子シロキサン除去工程は、成形した光学部材を加熱処理、真空又は減圧環境下で加熱処理や有機溶剤にて浸漬、有機溶剤の蒸気で洗浄、臨界流体抽出等の工程を選択し組み合わせて行える。その中でも、低分子シロキサン除去工程(A)を加熱処理、低分子シロキサン除去工程(B)を有機溶剤にて浸漬とする場合、生産効率良く本発明の光学部材の生産を行うことができるため好ましい。この時、減圧環境下や真空環境下で加熱処理を行った後、有機溶剤の浸漬等による低分子シロキサン除去工程を行うことで、より効率的に低分子シロキサンを除去できる。更に、有機溶剤の浸漬にて低分子シロキサンを除去する工程において、処理時に併せて超音波処理や撹拌等を施すことで、より効率的に短い処理時間で低分子シロキサンを除去することができ好ましい。
【0029】
成形した光学部材を、有機溶剤の浸漬にて低分子シロキサン除去する工程で使用する有機溶剤は、光学部材のベース材であるシリコーンとの溶解度パラメータ(SP値)が近い有機溶剤であることが好ましく、溶解度パラメータ(SP値)が6~9である有機溶剤が特に好ましい。例えば、n-ブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、1-ブロモプロパン、1-ブロモブタンなどが挙げられる。
【0030】
処理時間および温度の調節により、含有率の合計値は、50ppm以下とすることも、さらには25ppm以下とすることも可能である。
また、本発明の光学部材の製造方法は、有機溶剤にて浸漬する低分子シロキサン除去工程の後工程として、光学部材中の有機溶剤を乾燥させる乾燥工程を有してもよく、乾燥の温度は特に限定されない。
【0031】
本発明の光学部材は、D20までという、低分子シロキサンであって比較的大きい分子まで、既存の部材では考えられないほどに含有率を著しく低めているため、高温になる箇所における使用においても、電子回路や他の部材表面上に付着による、接点障害や他の部材表面の劣化又は汚染する揮発成分の発生が有効に防止される。
また、本発明の光学部材は、従来のものよりもはるかに分厚い部材であっても、低分子シロキサン含有率を著しく低めているため、厚みを必要とする部材として、揮発成分が著しく少ないという格別の効果を有する。
部材の厚みが厚いほど、低分子シロキサン含有率を低下させることは困難になるが、以下に記載する実施例からわかるように、本願発明の光学部材は、厚みの大きさが同じ部材であっても、従来の部材では考えられない低い含有率まで低分子シロキサンの含有率が低下していることに特徴がある。
また、本発明の方法によれば、従来よりもはるかに含有率を低下させる操作を、短時間で大量に行うことが可能となる。
【実施例】
【0032】
実施例において、加熱温度は130℃以上が好ましく、ガスクロマトグラフィー測定のための溶媒抽出時間は1時間以上20時間以下の範囲で材料特性に合わせて適宜選択することが好ましい。
また、光学部材の加熱による形状の安定性を評価するため、形状変化率判定は120℃500時間の試験にて、形状の変化率が±1%以内で○(合格)、それ以外は×(不合格)とした。
(実施例1)
70mm角で代表厚みが0.5mmのシリコーン製の光学部材を成形し、加熱オーブンにて光学部材を3~6時間加熱処理した後に、ビーカーに1-ブロモプロパンを2リットル入れて光学部材を浸漬し6~12時間撹拌を実施した。その後、光学部材を1-ブロモプロパンから取り出し、光学部材を乾燥させた。含有している低分子シロキサンD3~D20を測定するため、乾燥させた光学部材を1~2mm角に切断し、それを0.5gサンプリングして、特級クロマト用ヘキサン5ミリリットルに16時間浸漬し、光学部材に含有している低分子シロキサンD3~D20を溶出した。これをガスクロマトグラフィーで定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0033】
(実施例2)
70mm角で代表厚みが2.0mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、実施例1と同様に処理及びガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0034】
(実施例3)
70mm角で代表厚みが5.0mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、実施例1と同様に処理及びガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0035】
(実施例4)
70mm角で代表厚みが10mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、実施例1と同様に処理及びガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0036】
(実施例5)
70mm角で代表厚みが20mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、実施例1と同様に処理及びガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0037】
(実施例6)
70mm角で代表厚みが30mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、実施例1と同様に処理及びガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0038】
(比較例1)
70mm角で代表厚みが40mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、実施例1と同様に処理及びガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0039】
(比較例2)
70mm角で代表厚みが50mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、実施例1と同様に処理及びガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0040】
(比較例3)
70mm角で代表厚みが0.5mmのシリコーン製の光学部材を成形し、実施例1のような低分子シロキサンの除去のための処理を行わず、光学部材中に含有している低分子シロキサンD3~D20を測定するため、乾燥させた光学部材を1~2mm角に切断し、それを0.5gサンプリングして、特級クロマト用ヘキサン5ミリリットルに16時間浸漬し、光学部材に含有している低分子シロキサンD3~D20を溶出した。これをガスクロマトグラフィーで定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0041】
(比較例4)
70mm角で代表厚みが2.0mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例3と同様に低分子シロキサンの除去のための処理を行わず、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0042】
(比較例5)
70mm角で代表厚みが5.0mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例3と同様に低分子シロキサンの除去のための処理を行わず、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0043】
(比較例6)
70mm角で代表厚みが10mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例3と同様に低分子シロキサンの除去のための処理を行わず、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0044】
(比較例7)
70mm角で代表厚みが20mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例3と同様に低分子シロキサンの除去のための処理を行わず、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0045】
(比較例8)
70mm角で代表厚みが30mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例3と同様に低分子シロキサンの除去のための処理を行わず、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0046】
(比較例9)
70mm角で代表厚みが40mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例3と同様に低分子シロキサンの除去のための処理を行わず、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0047】
(比較例10)
70mm角で代表厚みが50mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例3と同様に低分子シロキサンの除去のための処理を行わず、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0048】
(比較例11)
70mm角で代表厚みが0.5mmのシリコーン製の光学部材を成形し、低分子シロキサンの除去のための3~6時間加熱処理のみを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンD3~D20を測定するため、乾燥させた光学部材を1~2mm角に切断し、それを0.5gサンプリングして、特級クロマト用ヘキサン5ミリリットルに16時間浸漬し、光学部材に含有している低分子シロキサンD3~D20を溶出した。これをガスクロマトグラフィーで定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0049】
(比較例12)
70mm角で代表厚みが2.0mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例11と同様に低分子シロキサンの除去のための3~6時間加熱処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0050】
(比較例13)
70mm角で代表厚みが5.0mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例11と同様に低分子シロキサンの除去のための3~6時間加熱処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0051】
(比較例14)
70mm角で代表厚みが10mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例11と同様に低分子シロキサンの除去のための3~6時間加熱処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0052】
(比較例15)
70mm角で代表厚みが20mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例11と同様に低分子シロキサンの除去のための3~6時間加熱処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0053】
(比較例16)
70mm角で代表厚みが30mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例11と同様に低分子シロキサンの除去のための3~6時間加熱処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0054】
(比較例17)
70mm角で代表厚みが40mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例11と同様に低分子シロキサンの除去のための3~6時間加熱処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0055】
(比較例18)
70mm角で代表厚みが50mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例11と同様に低分子シロキサンの除去のための3~6時間加熱処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0056】
(比較例19)
70mm角で代表厚みが0.5mmのシリコーン製の光学部材を成形し、ビーカーに1-ブロモプロパンを2リットル入れて光学部材を浸漬し20~30時間撹拌を実施した。その後、光学部材を1-ブロモプロパンから取り出し、光学部材を乾燥させた。含有している低分子シロキサンD3~D20を測定するため、乾燥させた光学部材を1~2mm角に切断し、それを0.5gサンプリングして、特級クロマト用ヘキサン5ミリリットルに16時間浸漬し、光学部材に含有している低分子シロキサンD3~D20を溶出した。これをガスクロマトグラフィーで定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0057】
(比較例20)
70mm角で代表厚みが2.0mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例19と同様に低分子シロキサンの除去のための20~30時間有機溶剤浸漬処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0058】
(比較例21)
70mm角で代表厚みが5.0mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例19と同様に低分子シロキサンの除去のための20~30時間有機溶剤浸漬処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0059】
(比較例22)
70mm角で代表厚みが10mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例19と同様に低分子シロキサンの除去のための20~30時間有機溶剤浸漬処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0060】
(比較例23)
70mm角で代表厚みが20mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例19と同様に低分子シロキサンの除去のための20~30時間有機溶剤浸漬処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0061】
(比較例24)
70mm角で代表厚みが30mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例19と同様に低分子シロキサンの除去のための20~30時間有機溶剤浸漬処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0062】
(比較例25)
70mm角で代表厚みが40mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例19と同様に低分子シロキサンの除去のための20~30時間有機溶剤浸漬処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0063】
(比較例26)
70mm角で代表厚みが50mmのシリコーン製の光学部材を成形した以外は、比較例19と同様に低分子シロキサンの除去のための20~30時間有機溶剤浸漬処理のみを実施し、ガスクロマトグラフィーを実施し、光学部材中に含有している低分子シロキサンを定量し、光学部材中に含まれる低分子シロキサンD3~D20の含有率を算出した。
【0064】
上記実施例及び比較例の結果を下記表1に示す。
【表1】
【0065】
表1の結果より、加熱処理及び有機溶剤浸漬処理を行った実施例1~6は、光学部材中に含有している低分子シロキサンD3~D20の含有率は極微量であることから、光学部材とともに組み込まれている電子回路や他の部材表面上に付着による、接点障害や他の部材表面の劣化又は汚染のリスクを低減でき、光学部材が加熱され、含有する低分子シロキサンの揮発が原因となる、光学部材の質量変化が少なく、形状変化率も±1%となっている。比較例19~21も低分子シロキサンD3~D20は極微量であるが、実施例1~6より長時間の有機溶剤浸漬処理を実施しなければならず、含有率も高い。本発明では、より短い時間で低分子シロキサンD3~D20を除去することができ、低分子シロキサンD3~D20の更なる含有量低減の市場要求を達成でき、精密な光学設計が要求されるシリコーン樹脂又はシリコーンゴム製の光学部材を提供することができる。