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特許7517710非接触型入力装置、非接触型入力方法及び非接触型入力プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】非接触型入力装置、非接触型入力方法及び非接触型入力プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G06F3/041 580
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022037927
(22)【出願日】2022-03-11
(65)【公開番号】P2023132547
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 裕章
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-170302(JP,A)
【文献】国際公開第2013/089190(WO,A1)
【文献】特開2014-063265(JP,A)
【文献】特開2009-259110(JP,A)
【文献】特開2016-207115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0187820(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0257809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041 - 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
前記表示部の手前側に配される平面状の第1検知領域における現在の指示物の位置を検知する第1センサと、
前記第1検知領域よりも手前側に配される平面状の第2検知領域における前記現在の指示物の位置を検知する第2センサと、
事前に収集された試行データとして、種々の形状の指示物が前記表示部を指し示した際に前記第1検知領域及び前記第2検知領域に現れる形状パターンを前記種々の形状の指示物の形状毎に記憶する形状パターン記憶部と、
前記表示部と前記第1検知領域との間の距離である距離Dと、前記第1検知領域と前記第2検知領域との間の距離である距離dと、前記第1検知領域における前記現在の指示物の位置座標である第1座標と、前記第2検知領域における前記現在の指示物の位置座標である第2座標とに基づいて、前記現在の指示物が指し示す前記表示部上の指示座標を算出する指示座標算出部と、を備え、
前記第1センサが前記現在の指示物の位置を前記第1検知領域内の第1範囲として検知し、
前記第2センサが前記現在の指示物の位置を前記第2検知領域内の第2範囲として検知し、
前記指示座標算出部が、前記第1範囲及び前記第2範囲の形状パターンと前記形状パターン記憶部に記憶された形状パターンとを照合して前記現在の指示物の形状を推測し、推測された前記現在の指示物の形状に応じて前記第1座標及び前記第2座標を決定する、
非接触型入力装置。
【請求項2】
前記第1座標を(x1,y1)とし、前記第2座標を(x2,y2)とした場合に、
前記指示座標算出部が、以下の計算式に従って前記指示座標である(x,y)を算出する、請求項1に記載の非接触型入力装置、
tanθ=(x2-x1)/d、
x=x1-D*tanθ
tanθ=(y2-y1)/d、
y=y1-D*tanθy、
なお、θは前記表示部の垂線に対するx成分の傾斜角度を表し、θは前記表示部の垂線に対するy成分の傾斜角度を表し、*は乗算を表す。
【請求項3】
前記第1座標を(x1,y1)とし、前記第2座標を(x2,y2)とした場合に、
前記指示座標算出部が、以下の計算式に従って前記指示座標である(x,y)を算出する、請求項1に記載の非接触型入力装置、
x=x1-(x2-x1)*D/d、
y=y1-(y2-y1)*D/d、
なお、*は乗算を表す。
【請求項4】
前記指示座標算出部が、推測された前記現在の指示物の形状に基づいて前記第1座標及び前記第2座標を決定する際に、前記第1検知領域及び前記第2検知領域内の検知箇所の中で不要な箇所をマスク処理する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の非接触型入力装置。
【請求項5】
表示部の手前側に配される平面状の第1検知領域における現在の指示物の位置を前記第1検知領域内の第1範囲として検知するステップと、
前記第1検知領域よりも手前側に配される平面状の第2検知領域における前記現在の指示物の位置を前記第2検知領域内の第2範囲として検知するステップと、
事前に収集された試行データとして記憶される形状パターンと、前記第1範囲及び前記第2範囲の形状パターンとを照合して前記現在の指示物の形状を推測するステップと、
ここで、試行データとして記憶される形状パターンは、種々の形状の指示物が前記表示部を指し示した際に前記第1検知領域及び前記第2検知領域に現れる前記種々の形状の指示物の形状毎の形状パターンであり、
推測された前記現在の指示物の形状に応じて、前記第1検知領域における前記現在の指示物の位置座標である第1座標及び前記第2検知領域における前記現在の指示物の位置座標である第2座標を決定するステップと、
前記表示部と前記第1検知領域との間の距離である距離Dと、前記第1検知領域と前記第2検知領域との間の距離である距離dと、前記第1座標と、前記第2座標とに基づいて、前記現在の指示物が指し示す前記表示部上の指示座標を算出するステップと、
を含む、非接触型入力装置による非接触型入力方法。
【請求項6】
表示部の手前側に配される平面状の第1検知領域における現在の指示物の位置を前記第1検知領域内の第1範囲として検知する処理と、
前記第1検知領域よりも手前側に配される平面状の第2検知領域における前記現在の指示物の位置を前記第2検知領域内の第2範囲として検知する処理と、
事前に収集された試行データとして記憶される形状パターンと、前記第1範囲及び前記第2範囲の形状パターンとを照合して前記現在の指示物の形状を推測する処理と、
ここで、試行データとして記憶される形状パターンは、種々の形状の指示物が前記表示部を指し示した際に前記第1検知領域及び前記第2検知領域に現れる前記種々の形状の指示物の形状毎の形状パターンであり、
推測された前記現在の指示物の形状に応じて、前記第1検知領域における前記現在の指示物の位置座標である第1座標及び前記第2検知領域における前記現在の指示物の位置座標である第2座標を決定する処理と、
前記表示部と前記第1検知領域との間の距離である距離Dと、前記第1検知領域と前記第2検知領域との間の距離である距離dと、前記第1座標と、前記第2座標とに基づいて、前記現在の指示物が指し示す前記表示部上の指示座標を算出する処理と、
をコンピュータに実行させる非接触型入力プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型入力装置、非接触型入力方法及び非接触型入力プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、伝染病の流行時などでは感染予防のために、不特定多数のヒトが触れるモノ(例えばATM(Automatic Teller Machine)の操作端末や、飲食店のオーダー端末など)に対する接触を極力回避することが望まれる。また、手が汚れる作業(例えば、工事作業、食品加工作業)の最中に端末を操作したいという要望がある。
【0003】
このようなニーズに対して、特許文献1~4に開示されるように、電子機器への入力操作を非接触式で行うための技術が存在する。特に、特許文献2には、表示画面に表示されたサムネイル画像を指でさし示す動作を検知して、当該サムネイル画像を押下する入力操作とみなす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-160717号公報
【文献】特開2012-155506号公報
【文献】特開2016-062410号公報
【文献】特開2020-170311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下の分析は、本発明の観点からなされたものである。なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【0006】
特許文献1~4に開示される技術では、ユーザが意図する指示箇所を的確に判定できず、使い勝手が良くないという問題がある。すなわち、特許文献1~4の技術では、サムネイル画像等を表示画面に対して垂直に指さすことを前提としている。しかしながら、実際には、ユーザはサムネイル画像等に向かって指を出すため、ユーザと表示画面の位置関係によっては表示画面に対して垂直な指示操作が行われず、その結果、ユーザが意図する指示箇所とは別の箇所を押下する入力操作とみなすことがある。
【0007】
そこで、本発明では、ユーザが意図する指示箇所を的確に判定することが可能な非接触型入力装置、非接触型入力方法及び非接触型入力プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の視点によれば、
表示部と、
前記表示部の手前側に配される平面状の第1検知領域における指示物の位置を検知する第1センサと、
前記第1検知領域よりも手前側に配される平面状の第2検知領域における前記指示物の位置を検知する第2センサと、
前記表示部と前記第1検知領域との間の距離である距離Dと、前記第1検知領域と前記第2検知領域との間の距離である距離dと、前記第1検知領域における指示物の位置座標である第1座標と、前記第2検知領域における指示物の位置座標である第2座標とに基づいて、前記指示物が指し示す前記表示部上の指示座標を算出する指示座標算出部と、
を備える非接触型入力装置が提供される。
【0009】
本発明の第2の視点によれば、
表示部の手前側に配される平面状の第1検知領域における指示物の位置を検知するステップと、
前記第1検知領域よりも手前側に配される平面状の第2検知領域における前記指示物の位置を検知するステップと、
前記表示部と前記第1検知領域との間の距離である距離Dと、前記第1検知領域と前記第2検知領域との間の距離である距離dと、前記第1検知領域における指示物の位置座標である第1座標と、前記第2検知領域における指示物の位置座標である第2座標とに基づいて、前記指示物が指し示す前記表示部上の指示座標を算出するステップと、
を含む、非接触型入力装置による非接触型入力方法が提供される。
【0010】
本発明の第3の視点によれば、
表示部の手前側に配される平面状の第1検知領域における指示物の位置を検知する処理と、
前記第1検知領域よりも手前側に配される平面状の第2検知領域における前記指示物の位置を検知する処理と、
前記表示部と前記第1検知領域との間の距離である距離Dと、前記第1検知領域と前記第2検知領域との間の距離である距離dと、前記第1検知領域における指示物の位置座標である第1座標と、前記第2検知領域における指示物の位置座標である第2座標とに基づいて、前記指示物が指し示す前記表示部上の指示座標を算出する処理と、
をコンピュータに実行させる非接触型入力プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の各視点によれば、ユーザが意図する指示箇所を的確に判定することに貢献する非接触型入力装置、非接触型入力方法及び非接触型入力プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の概要を説明するための図である。
図2】非接触型入力装置100の一例を示す図である。
図3】本発明を概念的に説明する図である。
図4】計算式1を概念的に説明する図である。
図5】計算式2を概念的に説明する図である。
図6】非接触型入力装置100による処理の流れを示すフローチャート図である。
図7】非接触型入力装置100の一例を示す図である。
図8】指示物が第1検知領域及び第2検知領域において円形の範囲として検知されないケースの一例を示す図である。
図9】指示物が第1検知領域及び第2検知領域において円形の範囲として検知されないケースの一例を示す図である。
図10】非接触型入力装置100による処理の流れを示すフローチャート図である。
図11】マスク処理を説明するための図である。
図12】非接触型入力装置100としてのコンピュータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のとり得る好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、各図におけるブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。さらに、本願開示に示す回路図、ブロック図、内部構成図、接続図などにおいて、明示は省略するが、入力ポート及び出力ポートが各接続線の入力端及び出力端のそれぞれに存在する。入出力インターフェイスも同様である。
【0014】
先ず、本発明の一概要について説明する。図1に示すように、本発明の非接触型入力装置100は、表示部10と、第1センサ20と、第2センサ30と、指示座標算出部40とを備える。具体的な非接触型入力装置100の一例としては、図2に示すように表示部10と、第1センサ20と、第2センサ30と、指示座標算出部40とが個別の筐体として構成され得る。第1センサ20は、表示部10の手前側に配される平面状の第1検知領域における指示物の位置を検知する。なお、第1検知領域は図2においてパネル状の構造として描写されるが、概念的描写に過ぎず物体としては実在しない。ここで、表示部10と第1検知領域との間の距離を「距離D」とする。第2センサ30は、第1検知領域よりも手前側に配される平面状の第2検知領域における指示物の位置を検知する。なお、第2センサ30も図2において第1検知領域のようにパネル状の構造として描写されるが、概念的描写に過ぎず物体としては実在しない。ここで、第1検知領域と第2検知領域との間の距離を「距離d」とする。指示座標算出部40は、距離Dと、距離dと、第1検知領域における指示物の位置座標である第1座標と、第2検知領域における指示物の位置座標である第2座標とに基づいて、指示物が指し示す表示部10上の指示座標を算出する。
【0015】
この非接触型入力装置100によれば、ユーザが意図する指示箇所を的確に判定することが可能となる。
【0016】
概念的に説明すると、指示物、第1検知領域、第1座標、距離D、第2検知領域、距離d、第2座標、指示座標の位置関係は図3に示すものとなる。ここで、ユーザは、図3に示すように、指示座標に存在するアイコンを狙って表示部10に対して斜めに指(指示物)を差し出す。このような場合に、表示部10に対して垂直に指さすことを前提とする従来技術では、第1座標又は第2座標が指示されたと認識することになる。一方で、本発明では、指の延長線上に存在する指示座標が指示されたと認識する。つまり、本発明では、ユーザが意図する指示箇所を的確に判定することが可能となる。
【0017】
[実施形態1]
以下では、上記一概要として説明した非接触型入力装置100を実施形態1として詳細に説明する。
【0018】
実施形態1の非接触型入力装置100は、上記一概要と同様に表示部10と、第1センサ20と、第2センサ30と、指示座標算出部40とを備える(図1参照)。
【0019】
表示部10は、ディスプレイや電子パネルなどであり、ユーザによる操作のためのアイコンなどを表示する。言い換えると、表示部10は、GUI(Graphical User Interface
)に相当する。
【0020】
第1センサ20は第1検知領域における指示物の位置を検知し、第2センサ30は第2検知領域における指示物の位置を検知する。ここで、第1センサ20及び第2センサ30による指示物の位置の検知は種々の既存の技術を採用することができる。例えば、第1センサ20及び第2センサ30は、照射した赤外線の反射を受信して指示物の位置を検知することができる。あるいは、第1センサ20及び第2センサ30をカメラとして構成して指示物の位置を検知しても良い。なお指示物は、図3のようにユーザの指によって例示されるが、指示棒などであっても良い。
【0021】
指示座標算出部40は、以下の計算式1又は計算式2に従って指示物が指し示す表示部10上の指示座標を算出する。本発明では、表示部10と第1検知領域との間の距離を「距離D」とし、第1検知領域と第2検知領域との間の距離を「距離d」とする。また、第1検知領域における指示物の位置座標である第1座標を(x1,y1)とし、第2検知領域における指示物の位置座標である第2座標を(x2,y2)とし、指示物が指し示す表示部10上の指示座標を(x,y)とする。なお、図3における上下方向をx軸とみなし、手前奥行方向をy軸とみなす。
【0022】
(計算式1)
tanθ=(x2-x1)/d、
x=x1-D*tanθ
tanθ=(y2-y1)/d、
y=y1-D*tanθy、
θは、表示部の垂線に対するx成分の傾斜角度を表し、θは、表示部の垂線に対するy成分の傾斜角度を表し、*は乗算を表す。
なお、計算式1におけるx成分に着目して概念的に表すと図4のものとなる。
【0023】
(計算式2)
x=x1-(x2-x1)*D/d、
y=y1-(y2-y1)*D/d、
*は乗算を表す。
なお、計算式2におけるx成分に着目して概念的に表すと図5のものとなる。
【0024】
指示座標算出部40によって算出された指示座標は、指でユーザが指し示した指示箇所とみなされる。すなわち、指示座標にアイコンが存在する場合に、非接触型入力装置100は、当該アイコンを押下する操作をユーザが行ったと判断し、当該アイコンによって規定された処理を実行する。
【0025】
以下では、非接触型入力装置100による処理の流れを説明する。図6に示すように、非接触型入力装置100は、第1検知領域における指示物の位置を検知し(ステップS11)、第2検知領域における指示物の位置を検知する(ステップS12)。そして、非接触型入力装置100は、距離D、距離d、第1座標及び第2座標に基づいて指示座標を算出し(ステップS13)、指示座標に存在するアイコンによって規定された処理を実行する(ステップS14)。
【0026】
[実施形態2]
実施形態1では、第1センサ20及び第2センサ30が人差し指(棒状の指示物)を検知する例を説明した(例えば図3参照)。実施形態1では指示物が円形の範囲として認識されるため、円形の範囲の中央の座標を第1座標及び第2座標とすれば良い。しかしながら、指示物が第1検知領域及び第2検知領域において円形の範囲として検知されるとは限らない。そこで、実施形態2では、指示物が円形以外の範囲として検知される場合について説明する。
【0027】
実施形態2の非接触型入力装置100は、図7に示すように形状パターン記憶部50を更に備える。形状パターン記憶部50は、事前に収集された試行データとして、種々の形状の指示物が表示部10を指し示した際に第1検知領域及び第2検知領域に現れる形状パターンを指示物の形状毎に記憶する。第1センサ20は現在の指示物の位置を第1検知領域内の第1範囲として検知し、第2センサ30は現在の指示物の位置を第2検知領域内の第2範囲として検知する。指示座標算出部40は、第1範囲及び第2範囲の形状パターンと形状パターン記憶部50に記憶された形状パターンとを照合して現在の指示物の形状を推測し、推測された現在の指示物の形状に応じて第1座標及び第2座標を決定する。
【0028】
以下では具体的なケースを挙げて説明する。
【0029】
ケース1:人差し指を折り曲げて指示するケース
図8(A)に示すように、ユーザが人差し指を折り曲げた状態で表示部10上のアイコンを指し示すケースがある。このケースでは、第1センサ20は、図8(B)に示すように指示物の位置を第1検知領域内の円形の第1範囲として検知する。また、第2センサ30は図8(C)に示すように指示物の位置を第2検知領域内の楕円形の第2範囲として検知する。指示座標算出部40は、第1範囲及び第2範囲の形状パターンと形状パターン記憶部50に記憶された形状パターンとを照合して指示物が折り曲げた指であると推測する。そして、指示座標算出部40は、第1範囲の中央に第1座標を設定するとともに、第2範囲の中央に第2座標を設定する。
【0030】
ケース2:折り曲げた指も検知されるケース
図9(A)に示すように、ユーザが人差し指を伸ばした状態で表示部10上のアイコンを指し示しているが、折り曲げた中指、薬指、小指もセンサによって検知されるケースがある。このケースでは、第1センサ20は、図9(B)に示すように指示物の位置を第1検知領域内の円形の第1範囲として検知する。また、第2センサ30は図9(C)に示すように指示物の位置を非円形の第2範囲として検知する。指示座標算出部40は、第1範囲及び第2範囲の形状パターンと形状パターン記憶部50に記憶された形状パターンとを照合して、指示物が人差し指を伸ばしかつ中指、薬指、小指を折り曲げた手であると推測する。そして、指示座標算出部40は、第1範囲の中央に第1座標を設定するとともに、第2範囲内の人差し指に相当する位置(図9(C)内のX印のあたり)に第2座標を設定する。
【0031】
実施形態2の非接触型入力装置100による処理の流れを説明する。図10に示すように、非接触型入力装置100は、第1検知領域における指示物の位置を第1範囲として検知し(ステップS21)、第2検知領域における指示物の位置を第2範囲として検知する(ステップS22)。続いて、非接触型入力装置100は、第1範囲及び第2範囲の形状パターンから現在の指示物の形状を推測し(ステップS23)、推測された現在の指示物の形状に応じて第1座標及び第2座標を決定する(ステップS24)。そして、非接触型入力装置100は、距離D、距離d、第1座標及び第2座標に基づいて指示座標を算出し(ステップS25)、指示座標に存在するアイコンによって規定された処理を実行する(ステップS26)。
【0032】
以上のように、実施形態2の非接触型入力装置100によれば、指示物が円形以外の範囲として検知される場合であってもユーザが意図する指示箇所を的確に判定することが可能となる。
【0033】
[実施形態3]
上述の非接触型入力装置100において、ユーザが意図しない物体がセンサによって検知される場合もあり得る。その場合には、意図しない物体の検知結果に対してマスク処理(言い換えると、無視する処理)を行った上で、指示箇所を判定することが好ましい。
【0034】
例えば、図11に示すように、折り曲げた中指、薬指、小指に加えて親指も第2センサ30によって検知される場合がある。この場合に、指示座標算出部40は、第1範囲及び第2範囲の形状パターンと形状パターン記憶部50に記憶された形状パターンとを照合する。ここで指示座標算出部40は、まず指示物が人差し指を伸ばしかつ中指、薬指、小指を折り曲げた手であり、親指も検知されていると推測する。続いて指示座標算出部40は、親指の検知結果に関しては第2座標の設定及び指示座標の算出に何ら役立たないため、親指の検知結果をマスクする処理を行う。以降の処理は実施形態2と同様である。
【0035】
以上のように、実施形態3の非接触型入力装置100によれば、意図しない物体を検知した場合であっても、ユーザが意図する指示箇所を的確に判定することが可能になる。
【0036】
なお、意図しない物体は、親指に限らず、アクセサリや袖口などであっても良い。また、親指、アクセサリ、袖口などを含む形状パターンを形状パターン記憶部50に記憶しておいても良い。
【0037】
[変化形態]
以下では、種々の変化形態について説明する。
【0038】
上述の実施形態では、指示座標にアイコンが存在する場合にアイコンを押下する操作をユーザが行ったと判断する場合を説明したが、指示座標にポインタを表示し、特定のアクションを検知した場合にアイコンを押下する操作と認識しても良い。特定のアクションとしては、例えば、数秒間アイコンにポインタで指示された場合に、非接触型入力装置100が当該アイコンを押下する操作と認識しても良い。言い換えると、本発明ではユーザが意図する指示箇所を的確に判定できれば良く、その判断結果に基づく処理に関しては何ら限定されない。
【0039】
指示物の位置を検知するセンサは2つに限定されない。要するに指示物の延長線上に存在する指示座標が指示されたと認識するためには、少なくとも2つセンサが必要であるが、3つ以上であっても良い。
【0040】
本発明は、非接触型入力装置100としてのコンピュータによって実現することも可能である。具体的には、図12に示すように非接触型入力装置100としてのコンピュータはメモリ、インターフェイス、CPU(Central Processing Unit)などを備える。インターフェイスは、表示部10、第1センサ20及び第2センサ30と接続される。CPUは、メモリからプログラムを読み出して指示座標算出部40に相当する処理モジュールを実現する。
【0041】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0042】
(付記1)
表示部と、
前記表示部の手前側に配される平面状の第1検知領域における指示物の位置を検知する第1センサと、
前記第1検知領域よりも手前側に配される平面状の第2検知領域における前記指示物の位置を検知する第2センサと、
前記表示部と前記第1検知領域との間の距離である距離Dと、前記第1検知領域と前記第2検知領域との間の距離である距離dと、前記第1検知領域における指示物の位置座標である第1座標と、前記第2検知領域における指示物の位置座標である第2座標とに基づいて、前記指示物が指し示す前記表示部上の指示座標を算出する指示座標算出部と、
を備える非接触型入力装置。
【0043】
(付記2)
前記第1座標を(x1,y1)とし、前記第2座標を(x2,y2)とした場合に、
前記指示座標算出部が、以下の計算式に従って前記指示座標である(x,y)を算出する、付記1に記載の非接触型入力装置、
tanθ=(x2-x1)/d、
x=x1-D*tanθ
tanθ=(y2-y1)/d、
y=y1-D*tanθy、
なお、θは前記表示部の垂線に対するx成分の傾斜角度を表し、θは前記表示部の垂線に対するy成分の傾斜角度を表し、*は乗算を表す。
【0044】
(付記3)
前記第1座標を(x1,y1)とし、前記第2座標を(x2,y2)とした場合に、
前記指示座標算出部が、以下の計算式に従って前記指示座標である(x,y)を算出する、付記1に記載の非接触型入力装置、
x=x1-(x2-x1)*D/d、
y=y1-(y2-y1)*D/d、
なお、*は乗算を表す。
【0045】
(付記4)
事前に収集された試行データとして、種々の形状の指示物が前記表示部を指し示した際に前記第1検知領域及び前記第2検知領域に現れる形状パターンを前記指示物の形状毎に記憶する形状パターン記憶部を更に備え、
前記第1センサが現在の指示物の位置を前記第1検知領域内の第1範囲として検知し、
前記第2センサが現在の指示物の位置を前記第2検知領域内の第2範囲として検知し、
前記指示座標算出部が、前記第1範囲及び前記第2範囲の形状パターンと前記形状パターン記憶部に記憶された形状パターンとを照合して前記現在の指示物の形状を推測し、推測された指示物の形状に応じて前記第1座標及び前記第2座標を決定する、
付記1~3のいずれか1つに記載の非接触型入力装置。
【0046】
(付記5)
前記指示座標算出部が、推測された指示物の形状に基づいて前記第1座標及び前記第2座標を決定する際に、前記第1検知領域及び前記第2検知領域内の検知箇所の中で不要な箇所をマスク処理する、
付記1~4のいずれか1つに記載の非接触型入力装置。
【0047】
(付記6)
表示部の手前側に配される平面状の第1検知領域における指示物の位置を検知するステップと、
前記第1検知領域よりも手前側に配される平面状の第2検知領域における前記指示物の位置を検知するステップと、
前記表示部と前記第1検知領域との間の距離である距離Dと、前記第1検知領域と前記第2検知領域との間の距離である距離dと、前記第1検知領域における指示物の位置座標である第1座標と、前記第2検知領域における指示物の位置座標である第2座標とに基づいて、前記指示物が指し示す前記表示部上の指示座標を算出するステップと、
を含む、非接触型入力装置による非接触型入力方法。
【0048】
(付記7)
表示部の手前側に配される平面状の第1検知領域における指示物の位置を検知する処理と、
前記第1検知領域よりも手前側に配される平面状の第2検知領域における前記指示物の位置を検知する処理と、
前記表示部と前記第1検知領域との間の距離である距離Dと、前記第1検知領域と前記第2検知領域との間の距離である距離dと、前記第1検知領域における指示物の位置座標である第1座標と、前記第2検知領域における指示物の位置座標である第2座標とに基づいて、前記指示物が指し示す前記表示部上の指示座標を算出する処理と、
をコンピュータに実行させる非接触型入力プログラム。
【0049】
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとし、必要に応じて本発明の基礎ないし一部として用いることが出来るものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本発明の趣旨に則り、本発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれるものと、みなされる。
【符号の説明】
【0050】
10 :表示部
20 :第1センサ
30 :第2センサ
40 :指示座標算出部
50 :形状パターン記憶部
100 :非接触型入力装置
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